JP4783218B2 - 繊維状物の分布方法及び分布装置 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維状物を集綿して例えば断熱材や吸音材のような用途向きの繊維製品を製造する際の、繊維状物の分布方法及び分布装置に関する。特に、ガラス短繊維(グラスウール)を均一で一定の厚さに散布調整する分布方法及び分布装置に関する。
無機繊維製品、特にガラス繊維で作られた製品は、代表的には連続繊維(ガラス長繊維)又は不連続繊維(ガラス短繊維)のどちらかで作られる。このうち、不連続繊維は一般的に断熱材として使用される。この場合、繊維化された不連続繊維をある一定の形状とするため、不連続繊維に結合剤として樹脂を塗布しマット状、板状又はロール状の製品とし、さらに使用目的により部分的又は全体にフェーシング等を被せる。これらの製品は住宅用及び一般建築用などの断熱材として使用される。また、不連続繊維の別の用途として吸音材が挙げられる。細繊維化された不連続繊維は、繊維空間により効率よく吸音し、各種建築物や道路等の壁面に使用することにより騒音の抑制に優れた効果を発揮している。
不連続繊維からこのような断熱材や吸音材を製造するには、繊維化された不連続繊維を均一に分布させることが重要である。従来、ガラス短繊維を均一に分布させる方法として、繊維化装置(スピナー)で繊維化されたガラス短繊維に圧縮エアを吹き付けることによりガラス短繊維を集綿用コンベア上に散布させて集綿する方法が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
この方法は、図4に示すように堆積コンベア7の幅方向にガラス短繊維(以下、繊維と略称することもある)を均一に散布させるために圧縮エアを用いるものである。すなわち、繊維化装置のスピナー1で繊維化された繊維は、バケツ2内を降下し結合剤塗布装置3から樹脂が吹き付けられた後、集綿ゾーン11(以下、フードとする)内を繊維の軌跡5として降下する。この方法は、結合剤塗布装置3を通過した直後の繊維の両側にエア吹出し装置4を堆積コンベア7の幅方向に相対向して配置し、圧縮エアを繊維に交互に吹き付けることにより、繊維を堆積コンベア7の幅方向に振り分けながら分散させて集綿する。
この方法による問題は、繊維の分散に大量の圧縮エアを使用するために、繊維をある一定の厚さに集綿するフード11内において繊維の舞い上がりを引き起こすことである。さらに、繊維には上記したように結合剤として樹脂が塗布されており、この結合剤が粘着性や接着性を持っているため、繊維の舞い上がりが酷い状況ではフード内に繊維の塊が生じ、これらが製品中に落下して製品欠陥を生じさせることである。繊維の塊を生じさせないようにするためには、定期的にフード内を清掃したり、舞い上がりそのものを抑制するために繊維集綿装置をより大型化する必要が生じる。しかしながら、繊維集綿装置を大型にするということは、その分排ガス量が増加することを意味し、排ガスを清浄化するために莫大なエネルギが必要になる。また、舞い上がりを抑制するために堆積コンベアの吸引量を増加させることが考えられるが、これも使用する電力量が増加し同様に膨大なエネルギが必要となる。ここで繊維の舞い上がりとは、コンベア上に集綿される際に、コンベア上に堆積せずにフード内の空間に飛散する繊維の集合体があることを示す現象である。
従来、これらのようにフード内に繊維の塊が発生してしまった場合の対応策として、繊維の塊を取り除いて落下を防止する方法が特許文献3に開示されている。この方法は、フード側壁体の上部に付着した繊維の塊を、落下する前に回転するベルトを使用して連続的に取り除き、結合剤むらや繊維密度むらが少ないグラスウールマットを製造するものである。しかし、このような方法は繊維の塊の根本的な解決方法といえず、単に発生してしまった繊維の塊を事後的に取り除くことで解消しているに過ぎなく、舞い上がりを抑制し繊維の魂そのものを発生させないように未然に防止するものではない。
さらに、特許文献4には繊維化装置の下方にバケツを集綿用コンベアと同方向の回転軸で両側を支持して設け、繊維化されたガラス短繊維をこのバケツ内に降下させながら、該バケツを集綿用コンベアの搬送方向と直交するように揺動させることにより、ガラス繊維を集綿用コンベア上に振り分け集綿させる方法が開示されている。しかし、この方法は、バケツを揺動させるだけであるため繊維の分散性が劣り、集綿用コンベアの全幅にガラス繊維を均一に分布させることが得られなくなるおそれがあり、また繊維分布装置自体が大型化するため、機械的な故障頻度が多くなるなどの問題も発生し必ずしも満足できるものでなかった。
特公昭59−7652号公報 特表明57−500558号公報 特開平8−13307号公報 W02004/041736号公報
本発明は、繊維化された繊維状物を圧縮エアを用いないで、また繊維の塊を発生させることなく、繊維堆積コンベア上に均一に分布させる方法及びその分布装置の提供を目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために、繊維化された繊維状物の分布方法について検討した結果、スピナーの下方に回転する中空円筒状バケツを、回転軸に対し下部を所定の角度傾斜させて設置し、中空円筒状バケツ内に落下させた前記繊維状物をバケツの遠心力と抵抗の作用を用いることにより、圧縮エアを使用しなくても繊維状物をこれまで以上に均一に分散させて集綿用コンベア上に堆積できることを見出し、本発明に至ったものである。
本発明は、繊維化装置のスピナーで繊維化された繊維状物を該スピナーの下方に配置された集綿用コンベア上に堆積させる方法であって、前記スピナーの直下部に、上段部と下段部の2段の構成を有し下段部が回転軸に対して所定の角度傾斜している中空円筒状バケツを回転可能に設置し、該中空円筒状バケツ内に降下させた前記繊維状物を回転する中空円筒状バケツで分散させて集綿用コンベア上に堆積させることを特徴とする繊維状物の分布方法を提供する。
本発明の分布方法において、上記繊維状物はグラスウール(ガラス短繊維)であることが好ましい。
また、本発明の分布方法では、下段部の傾斜角度が5°〜45°の範囲にあることが好ましく、また上段部の外周は上端に向かって拡大しており、下段部の外周は先細形状になっていることが好ましい。
さらに、本発明の分布方法では、中空円筒状バケツの下段部における上端の直径は、スピナーの直径の少なくとも100%以上であることが好ましい。
本発明の分布方法では、さらに中空円筒状バケツとスピナーとの間にリング状物が配置されていることが好ましい。
本発明の分布方法において、中空円筒状バケツの回転数は10〜120回/分であることが好ましい。
さらに、本発明は、繊維化装置のスピナーで繊維化された繊維状物を該スピナーの下方に配置された集綿用コンベア上に堆積させる装置であって、前記スピナーの直下部に中空円筒状バケツが回転可能に設置されており、該中空円筒状バケツは上段部と下段部の2段から構成され下段部が回転軸に対して所定の角度傾斜しており、該中空円筒状バケツ内に降下させた前記繊維状物を回転する中空円筒状バケツで分散させて集綿用コンベア上に堆積させるように構成されていることを特徴とする繊維状物の分布装置を提供する。
本発明によれば、上記したように繊維化された繊維状物を回転する中空円筒状バケツにより得られる遠心力と抵抗の作用を用いて均一に分布させて集綿用コンベア上に堆積し、従来のように繊維状物の分布調整に圧縮エアを使用しないので、繊維状物の分布装置における排気ガス量の削減が可能となる。これにより排気ガス処理設備や清浄処理の負担を軽減できる。
また、繊維状物が回転する中空円筒状バケツにより分布調整されるので、集綿の均一性が改善されると共に、圧縮エアによる繊維の舞い上がりによってフードに付着する繊維の塊の発生が未然に防止されるため、堆積される繊維状物に上記繊維の塊を含まなく、かつ結合剤むらや繊維密度むらが少ない高品質の製品を得ることができる。
本発明において、分布させる繊維状物は、主に断熱材や吸音材として有用な無機質繊維であり、具体的には、グラスウール(ガラス短繊維)、ロックウールなどの耐熱性と耐候性に優れる無機質繊維が挙げられる。中でも低コストで製造できかつ断熱性能の優れるグラスウールは最も好ましく使用できる。このグラスウールを素材として、マット状、板状又はロール状などの種々の製品を周知の製造加工方法を用いて得ることができる。
上記繊維状物は、繊維化装置のスピナーで繊維化される。本発明はこのように繊維化された繊維状物を集綿用コンベア上に堆積させる方法と装置に関し、繊維状物を分布させるのに圧縮エアを使用しないで、回転する中空円筒状バケツで発生する遠心力と抵抗の作用で繊維状物を均一に分散させることを特徴とする。
次に、本発明を図面に基づいて具体的に説明する。以下に示す図面は本発明の好ましい実施の態様であるグラスウールの分布装置を例示したものであり、本発明はこれに限定されない。図1はグラスウールの繊維化から堆積までの装置全体を概略的に示す断面説明図である。図1に示すように繊維化装置のスピナー1で繊維化されたグラスウールは、該スピナー1の直下部に配置された中空円筒状バケツ10内に降下され、該中空円筒状バケツ10の回転による遠心力で抵抗を受けながら分散され、フード11内を繊維流れ(ベール)として降下しスピナー1の下方に設置されている集綿用コンベア7上に堆積されてマット状繊維6に形成される。この時に繊維流れの軌跡は、符号5のようになる。中空円筒状バケツ10で分散されたグラスウールには、中空円筒状バケツ10の下方に設けられた結合剤塗布装置3から結合剤として、例えばフェノール−ホルムアルデヒド系樹脂を含む水溶液が噴射されて塗布される。集綿用コンベア7はスピナー1の下方にフード11の下端に近接して配置されており、紙面に直角な方向に一定速度で駆動している。この集綿用コンベア7は通気構造を有すると共に、その下部には排ガス収集ボックス9が設けられていて、フード11内の燃焼排気ガスや空気などの気体をマット状繊維6を通して吸引し、排ガス8として取り出す構造になっている。取り出された排ガス8は清浄化処理されるが、従来のように圧縮エアでグラスウールを分散していないので、清浄する排ガス量は少なくて済む。
上記において、中空円筒状バケツ10でグラスウールを分散させる点以外は、一般に実施されているグラスウールもしくはグラスウールマットの製造技術と実質的に同一である。したがって、中空円筒状バケツ10を除いて従来の技術及び装置を適宜使用できる。例えば、スピナー1は集綿用コンベア7の進行方向に沿って、1乃至複数個を設置することができる。すなわち、マット状繊維6の厚さを厚くしたい場合、多層のグラスウールを積層することにより品質の均一化を図りたい場合、あるいは繊維径や物性の異なるグラスウールを積層したい場合などには、これらの目的に合わせて例えば2〜10個のスピナーを集綿用コンベア7上にその進行方向に沿って設置し、一定速度で進行する集綿用コンベア7上に上流側のスピナーで繊維化されたグラスウールから順次積層させることによりマット状繊維6を形成することができる。なお、スピナーによる繊維化及び分散された繊維状物の集綿に関する基本技術は、その他の無機質繊維においてもこれと実質的に同じである。
次に、中空円筒状バケツ10について説明する。図2は図1の中空円筒状バケツ10部における拡大図であり、図3は中空円筒状バケツ10の拡大図である。図3に示すように中空円筒状バケツ10は全体的には上下部が開口している断面が実質的に円形の、例えば鋼板製の回転体で、上段部13と下段部12の2段の構成となっている。上段部13と下段部12の界部には、中空円筒状バケツ10を後述するように回転可能に取り付けするための取付用フランジ17が便宜的に設けられている。上段部13の外周は、回転軸Lの周りに任意の均一の角度を有し、スピナー1で繊維化されたグラスウールが受け入れられやすいように上端に向かって拡大している。本例の中空円筒状バケツ10では、一部角度を有しない部分を前記取付用フランジ17が位置する上段部13の下端に設けているが、これは取付用フランジ17に後述のギア16を取り付けやすくするため便宜的に設けたものである。
上記中空円筒状バケツ10において、下段部12は回転軸Lに対し所定の角度θ傾斜している。そして、このように回転軸Lに対し傾斜している下段部12の外周は、下端に向かって開口面積が連続的に小さくなるように先細形状になっていることが好ましい。下段部12が先細形状になっていると、中空円筒状バケツ10の回転による遠心力で下段部内を加速するグラスウールの抵抗と遠心力とをバランスさせてグラスウールを均一に分散させるのに有効である。また、先細形状になっていると、中空円筒状バケツ内に降下したガラス繊維の均一性を向上させることができ、さらにマット状繊維板の均一性が向上して、密度のバラツキが少なくなるなどの効果も得られる。なお、中空円筒状バケツ10によってグラスウールに生じる抵抗は、中空円筒状バケツ10内を加速されながら降下するグラスウールが中空円筒状バケツ10内で受ける空気抵抗を意味する。したがって、回転する中空円筒状バケツ10内を降下するグラスウールには、遠心力と抵抗の両方が作用する。
下段部12の上記角度θは下段部12の中心軸(下段部12の上端の中心と下端の中心を通る軸)が回転軸Lに対しなす角度である。この角度θは、集綿コンベア上に堆積されるマット状繊維6の幅、中空円筒状バケツ10の回転数、下段部12の長さ、下段部12内を降下するグラスウール量、中空円筒状バケツとコンベア間の距離、コンベア下部の排ガス収集ボックスにおける吸引量や吸引速度などにより適宜選択される。通常、角度θとしては5°〜45°が好ましく、より好ましくは10°〜40°、特に好ましくは15°〜30°である。θが5°未満では、遠心力及び抵抗が不足してグラスウールを充分に分散させること、及びグラスウールを集綿用コンベア7の全幅に均一に振り分け分布させることができなくなるおそれが生じる。また、またθが45°より大きくなると、遠心力の作用が強くなりグラスウールの外方向への振り分けが強化されるために、フードの側壁面に付着したり、集綿用コンベア7の両端部に多く分布するため、グラスウールをコンベア上に均一に堆積させることが困難となるおそれがある。
さらに、下段部12が回転軸Lに対し傾斜しているので、本例のように下段部12が先細形状になっている場合には、下段部12の外周は回転の中心側における回転軸Lとの角度αと外側における回転軸Lとの角度βとが異なっており、前者が後者より大きくなっている。角度αはコンベア上に堆積されるマット状繊維6の分布を確保するために重要であり、角度βは前述の繊維状の均一性及び抵抗を調節する上で重要である。両角度差(α−β)が大きいほど先細の程度が増す。α−βとしては、5°〜30°の範囲が前記した先細形状の効果が充分に得られるようにするうえで好ましく、10°〜20°の範囲がより好ましい。
また、中空円筒状バケツ10の下段部12の上端の直径Aは、スピナー1の直径Bの100%以上であることが好ましく、110%以上であればより好ましい。中空円筒状バケツ10の上段部13の下端と下端部12の上端とは同径であるので、下段部12の上端の直径Aがスピナー1の直径Bより小さいと、スピナー1で繊維化され中空円筒状バケツ10内に降下されたグラスウールの一部が上段部13の下部に衝突しやすくなるために、前記グラスウールを下段部12に円滑かつ群なく送給させることが困難になる。逆に、直径Aが大きくなりすぎると、グラスウールが受ける遠心力と抵抗とのバランスに影響を与えグラスウールを均一に分散させ難くなると共に、装置の大型化を招きコスト高の要因となる。したがって、下段部12の上端の直径Aはスピナー1の直径Bの約150%以下であることが好ましい。
さらに、中空円筒状バケツ10の下段部12の下端の直径Dは、スピナー1の直径Bの100%以上であることが好ましく、110%以上であればより好ましい。下段部12の下端の直径Dがスピナー1の直径Bより小さいと、スピナー1で繊維化され中空円筒状バケツ10内に降下されたグラスウールの一部が下段部12の下部に衝突しやすくなるために、前記グラスウールを円滑にバケツの下端から排出させることが困難となる。逆に、下段部12の下端の直径Dが大きくなりすぎると、グラスウールが受ける遠心力と抵抗とのバランスに影響を与えグラスウールを均一に分散させ難くなると共に、装置の大型化を招きコスト高の要因となる。
なお、中空円筒状バケツ10の全体寸法は分布装置の設計のなかで決められるため限定されないが、一般的に下段部12の長さ(高さH)は、傾斜角度θと同様にグラスウールの遠心力に影響を与える要素の一つで、下段部12が長くなるほど遠心力が増す。本例の中空円筒状バケツにおいて、下段部12の長さHとしては50〜200mm程度が好ましい。50mmより短い下段部では、グラスウールの分散に必要な遠心力が充分に得られなくなる。また、下段部12のHが200mmより長くなると、遠心力が強くなりすぎるために、下段部12の開口部からグラスウールを偏らないように均一に分散させることが難しくなる。
本発明において上記中空円筒状バケツ10は、前記したようにスピナー1の直下部に回転可能に配置される。すなわち、図2に示すように中空円筒状バケツ10の取付用フランジ17に、中央部が切り抜かれている輸環状のギア16を取り付けし、該中空円筒状バケツ10をこのギア部でフード11(図1参照)に固定されている架台19に回転軸受18によって取り付ける。そして、ギア16をギア20等を介して駆動モータ21に駆動連結することにより、中空円筒状バケツ10は駆動モータ21によって回転される。本例のように上段部13と下段部12の界部に設けた取付用フランジ17によって、中空円筒状バケツ10を高さ方向のほぼ中央部で取り付けすると、中空円筒状バケツ10を非常に安定的に回転させることができる。しかし、中空円筒状バケツ10の取付け位置は、下段部12の高さ寸法が上段部13の高さ寸法に比べて小さいようなときは、両者の界部より上方の位置で取り付けてもよい。
本発明において、上記中空円筒状バケツ10とスピナー1との間には、次の理由から所定の間隔が設けられることが好ましい。すなわち、スピナー1による溶融ガラスの繊維化は、スピナー1の高速回転で発生する遠心力によってスピナー1の側部のオリフィスから放射された溶融ガラスを、さらにエアノズル15から噴射される圧縮空気によって吹き飛ばし細く伸延することにより得られる。したがって、スピナー1と中空円筒状バケツ10との間に一定以上の距離Cが設けられていないと、繊維化されたグラスウールのベールの流れを均一に安定化させるために、燃焼ガス及びエアノズル15からの圧縮空気以外の外部空気を取り込むことが困難となり、グラスウールの品質の低下を招くおそれがある。また、スピナー1と中空円筒状バケツ10との間のスペースは、中空円筒状バケツ10の着脱作業をしやすくする利点もある。したがって、本発明においてスピナー1の直下部というときは、スピナー1の下方に設けられる距離Cを想定する範域を指している。
さらに、この中空円筒状バケツ10とスピナー1との間には、繊維化装置及びその周辺の空気の流れを安定化し、さらに繊維化されたグラスウールの飛散を防止するために、リング状物14を設けることが好ましい。このリング状物14は耐熱性を有する金属製リングで、その直径は中空円筒状バケツ10の上端の直径とほぼ同じであり、高さは中空円筒状バケツ10とスピナー1との間の距離Cに合わせて適宜決められる。
本発明において中空円筒状バケツ10の回転数は10〜120回/分が好ましく、より好ましくは30〜80回/分、さらに好ましくは40〜60回/分である。中空円筒状バケツ10の回転数は、中空円筒状バケツ10の下段部12の傾斜角度θや外周の形状、グラスウールの分散幅、中空円筒状バケツとコンベア間の距離及びコンベア下部の排ガス収集ボックスにおける吸引量や吸引速度などを考慮してこれらの範囲内で最適に決められることが好ましい。10回/分より少ない回転数では、グラスウールを所定の幅に均一に分散させるための遠心力が実質的に得られなくなる。また、回転数が120回/分より多くなると、中空円筒状バケツ10の下段部12内において降下中のグラスウールが受ける抵抗に比べて遠心力が強くなりすぎるため、分散の偏りや分散むらが生じるおそれがある。中空円筒状バケツ10に適合する回転数にすることにより、グラスウールには丁度よい遠心力と抵抗が付与される。その結果、この遠心力と抵抗の作用を用いてグラスウールを均一に分散させ集綿用コンベア上に堆積もしくは集積させることができる。しかも、グラスウールの分散に圧縮エアを使用していないので、フード内に入るガスはスピナーでの繊維化時に吹き付けられるエアの一部がグラスウールと一緒に中空円筒状バケツ10を通して入るだけであるため、清浄化処理する排ガス量を著しく減少させることができる。
本発明は、繊維状物を集積して例えば断熱材や吸音材のような用途向けの繊維製品を製造するのに適用でき、特に、ガラス短繊維(グラスウール)を均一で一定の厚さに散布調整して集積するのに有用である。
本発明の好ましい実施形態であるグラスウールの分布装置の概略断面図。 図1の中空円筒状バケツ取付け部の拡大図。 図1の中空円筒状バケツの拡大図。 従来のグラスウールの分布装置の概略断面図。
符号の説明
1:繊維化装置(スピナー) 2:バケツ、 3:結合剤塗布装置、
4:エア吹出し装置、 5:繊維流れの軌跡、 6:マット状繊維、
7:集綿用コンベア、 8:排ガス、 9:排ガス収集ボックス、
10:中空円筒状バケツ、 11:集綿ゾーン(フード)
12:(中空円筒状バケツ)下段部、 13:(中空円筒状バケツ)上段部、
14:リング状物、 15:エアノズル、 16:ギア、
17:取付用フランジ 18:回転軸受、 19:架台、
20:ギア、 21:駆動モータ、
L:回転軸、

Claims (12)

  1. 繊維化装置のスピナーで繊維化された繊維状物を該スピナーの下方に配置された集綿用コンベア上に堆積させる方法であって、前記スピナーの直下部に、上段部と下段部の2段の構成を有し下段部が回転軸に対して所定の角度傾斜している中空円筒状バケツを回転可能に設置し、該中空円筒状バケツ内に降下させた前記繊維状物を回転する中空円筒状バケツで分散させて集綿用コンベア上に堆積させることを特徴とする繊維状物の分布方法。
  2. 繊維状物がグラスウール(ガラス短繊維)である請求項1に記載の繊維状物の分布方法。
  3. 中空円筒状バケツの下段部を回転軸に対し5°〜45°の範囲に傾斜させる請求項1又は2に記載の繊維状物の分布方法。
  4. 上段部の外周は上端に向かって拡大しており、下段部の外周は先細形状になっている請求項1〜3のいずれかに記載の繊維状物の分布方法。
  5. 中空円筒状バケツの下段部の上端の直径は、スピナーの直径の100%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の繊維状物の分布方法。
  6. 中空円筒状バケツとスピナーとの間にリング状物を配置する請求項1〜5のいずれかに記載の繊維状物の分布方法。
  7. 中空円筒状バケツの回転数が10〜120回/分である請求項1〜6のいずれかに記載の繊維状物の分布方法。
  8. 繊維化装置のスピナーで繊維化された繊維状物を該スピナーの下方に配置された集綿用コンベア上に堆積させる装置であって、前記スピナーの直下部に中空円筒状バケツが回転可能に設置されており、該中空円筒状バケツは上段部と下段部の2段から構成され下段部が回転軸に対して所定の角度傾斜しており、該中空円筒状バケツ内に降下させた前記繊維状物を回転する中空円筒状バケツで分散させて集綿用コンベア上に堆積させるように構成されていることを特徴とする繊維状物の分布装置。
  9. 上段部の外周は上端に向かって拡大しており、下段部の外周は先細形状になっている請求項8に記載の繊維状物の分布装置。
  10. 中空円筒状バケツの下段部の上端の直径は、スピナーの直径の100%以上である請求項8又は9に記載の繊維状物の分布装置。
  11. 中空円筒状バケツの下段部が回転軸に対し角度5°〜45°の範囲で傾斜している請求項8〜10のいずれかに記載の繊維状物の分布装置。
  12. 中空円筒状バケツとスピナーとの間にリング状物が設置されている請求項8〜11のいずれかに記載の繊維状物の分布装置。
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