従来より、自動車においては、衝突時の衝撃を吸収して人身や車体を保護するために、車体フレームに種々の衝撃吸収部材が採用されている。例えば、車体フレームの前後部には、自動車の衝突時に衝撃エネルギを吸収するためのバンパが取付けられている。このようなバンパは、一般的に、車体フレームにねじ止め等により取付けられた鉄製のクラッシュボックスと、クラッシュボックスの外側に取付けられた鉄製のバンパビームと、バンパビームの外側に取付けられた樹脂製のバンパフェイシアとから構成されている。
このバンパは、低速走行中等に発生する軽衝突時には、柔軟な樹脂からなるバンパフェイシアが衝突相手にソフトに衝突して弾性変形することにより衝撃エネルギを吸収する。これにより、衝突相手側へのダメージを軽減することができ、特に歩行者等の人身を保護することができる。しかし、衝突相手側へのダメージを少なくするためには、バンパフェイシアの充分な弾性変形量が必要であり、その分バンパフェイシアの大きな変形スペースが必要となる。
また、高速走行中等に車体どうしや車体と構造物等との衝突により発生する重衝突時には、鉄製のバンパビームやクラッシュボックスが塑性変形して潰れることにより大きな衝撃エネルギを吸収する。これにより、車体や乗員等に及ぼされるダメージを軽減することができる。これらバンパビームやクラッシュボックスは、一般的には、鉄系やアルミニウム系等の金属により形成されていることから、重量の増大を回避するため、その内部に中空部を有するような中空構造にされている。なお、バンパビームの強度を向上させるためには、補強板を追加したり(特許文献1参照。)、バンパビームを形成する金属板の肉厚を厚くしたり、バンパビームの中空部に発泡ウレタン等の発泡弾性体を充填したりする(特許文献2参照。)等の手法が採用されている。
ところで、近年においては、歩行者との衝突時における歩行者の安全性がより高いレベルで要求されるようになり、特に、歩行者と衝突する恐れの高いバンパに対しても、より高い衝撃エネルギ吸収機能を有することが要求されるようになっている。
そこで、この要求に対処するため、対人衝突に見合った低い衝突荷重でエネルギ吸収に必要な断面方向の変形を生じさせることができるようにした対人保護用エネルギ吸収部材が提案されている(特許文献3参照。)。このエネルギ吸収部材は、車体前後方向に略平行に設けられた前面フランジと後面フランジ及びこれらのフランジ間をつなぐ略平行に設けられた左右のウエブとから構成され、各ウエブは各々外側方に向かって湾曲しているアルミニウム合金中空形材からなるものである。しかし、このエネルギ吸収部材は、アルミニウム合金中空形材からなるものであることから、樹脂材料と比較して重量の増加を招きやすく、燃費の点で不利になる。
また、従来より、比較的低い衝撃荷重が入力したときに衝撃エネルギを吸収する衝撃吸収部材として、樹脂材料で所定形状に形成された成形体が知られており、この衝撃吸収部材は、大きく二つに分類できる。
一つは、発泡ウレタンや発泡PP(ポリプロピレン)等の発泡弾性体であって、例えば、バンパに形成された中空部内に充填配置されて使用される(特許文献1の図49参照。)。しかし、この発泡弾性体は、衝撃荷重入力時の荷重と変位量の関係を表す線図において比較的フラットな特性曲線を示し、エネルギ吸収効率は比較的良好であるが、潰れ残りが大きく、スペース効率が悪いという点で問題となる。
もう一つは、PPやPE(ポリエチレン)、ABS樹脂等で形成されたリブ構造体である。このリブ構造体は、衝撃入力方向に延びるように配置されたリブが衝撃入力時に座屈変形することによって衝撃エネルギを吸収する。しかし、このリブ構造体は、一般的に初期の衝撃荷重が大きくなり易いことから、衝突相手への衝撃が大きくなり易い点で問題となる。また、このリブ構造体は、射出成形で作製されるため、長尺のものは製造コストが高くなり易い。
本願発明者等は、上記の見地に基づいて、低い衝撃荷重が入力した際に良好な衝撃エネルギ吸収機能を発揮し、人身の保護を有利になし得る自動車用衝撃吸収部材の開発を進めた結果、衝撃荷重入力方向に対して直交する方向に延びるように配置された樹脂製の板状リブと、該板状リブの両端にそれぞれの一端が連結されるとともにそれぞれの該一端から前記板状リブと直角方向へ遠ざかるに連れて互いに接近するように傾斜して配置され、衝撃荷重入力時に前記板状リブを引張変形させる一対の板状保持部と、を備えた自動車用衝撃吸収部材を先に提案した(特願2004−359863)。この自動車用衝撃吸収部材は、自動車の前後部に装備されるバンパ等に取付けられて使用されることにより、歩行者の保護を有効になすことができる。
ところで、上記の自動車用衝撃吸収部材は、自動車のバンパで使用される場合、通常、樹脂により長尺筒状に形成され、自動車のバンパに対して衝撃吸収部材が横方向に延びる状態に取付けられる。このように取付けられた衝撃吸収部材を装備する自動車が低速走行中に歩行者と軽衝突する際には、衝撃吸収部材の取付位置との関係から歩行者の脚部が衝突することが多く、衝撃吸収部材への衝突パターンも区々である。そのため、歩行者の脚部が衝突した場合には、比較的低い衝撃荷重が衝撃吸収部材の横方向における一部分に入力することとなり、必ずしも衝撃吸収部材の全体に衝撃荷重が入力するようには衝突しない。また、本願発明者等が歩行者の脚部保護用の衝撃吸収部材について試験を行ったところ、衝突により衝撃吸収部材が変形する際には、中盤から後半に掛けて荷重が大きくなり過ぎる傾向にあることが判明した。
特開平6−171441号公報
特開2001−132787号公報
特開2004−90910号公報
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、歩行者の脚部等が衝突して低い衝撃荷重が部分的に入力した際に良好な衝撃エネルギ吸収機能を発揮し、歩行者の保護をより効果的になし得るようにした自動車用衝撃吸収部材を提供することを解決すべき課題とするものである。
上記課題を解決する本発明の自動車用衝撃吸収部材は、
筒状部材と、該筒状部材の内部に衝撃荷重入力方向に対して直交する方向に延びるように互いに距離を隔てて平行に配置された複数の板状リブと、を備え、樹脂材料で一体に形成された長尺筒状の成形体からなる自動車用衝撃吸収部材であって、
前記筒状部材は、複数の前記板状リブの前記衝撃荷重入力方向の前方側に配置されて入力する衝撃荷重を受ける衝撃荷重入力部と、各前記板状リブの両端にそれぞれの一端が連結されるとともにそれぞれの該一端から前記板状リブと直角方向へ遠ざかるに連れてそれぞれの他端が互いに接近するように傾斜して配置され、前記衝撃荷重入力部に入力した衝撃荷重を複数の前記板状リブに対してそれぞれ幅方向の引張方向荷重として伝達する荷重伝達部と、を有し、
複数の前記板状リブの少なくとも一つは、それ自体の引張降伏荷重と前記荷重伝達部による前記引張方向荷重の伝達効率との少なくとも一方が異ならされていることにより、前記衝撃荷重の入力時における荷重−引張方向変位特性が他の前記板状リブと異なるように構成されていることを特徴としている。
なお、本明細書において、引張降伏荷重とは、図12に示す引張試験片を用いて引張試験を行ったときに、引張試験片の伸び変位が荷重の増加なしに増加し始めるときの最大荷重のことをいう。即ち、引張試験時の荷重と変位との関係を示す図13のモデル線図においては、荷重の初期立ち上がりのピーク値が引張降伏荷重となる。また、荷重伝達部による引張方向荷重の伝達効率とは、図14のモデル図に示すように、衝撃荷重Fが衝撃荷重入力部35に入力した際に、荷重伝達部31〜34により衝撃荷重Fが板状リブ1、2に対し引張荷重Tとして伝達される効率のことをいう。この引張方向荷重の伝達効率は、衝撃荷重Fの入力方向に対する荷重伝達部31〜34の傾斜角度α、βによって変化する。
本発明の自動車用衝撃吸収部材は、通常、樹脂により長尺状に形成され、自動車のバンパに対して衝撃荷重入力部が衝撃荷重入力方向前方側(自動車の外側)に位置するようにして横方向に延びる状態に取付けられて使用される。そして、この衝撃吸収部材は、複数の板状リブが衝撃荷重入力方向に対して直交する方向に延び、互いに距離を隔てて平行となるように配置された状態に取付けられる。この場合、複数の板状リブの少なくとも一つは、衝撃荷重の入力時における荷重−引張方向変位特性が他の板状リブと異なるように構成されている。
この状態に取付けられた衝撃吸収部材に対して、例えば歩行者の脚部が衝突して衝撃荷重入力方向前方側にある衝撃荷重入力部の一部分に比較的低い衝撃荷重が入力すると、衝撃吸収部材は衝撃荷重入力部の一部分から部分的に圧縮変形を開始する。この場合、歩行者の脚部の衝撃荷重入力部への当たり面は、初期は点当たりで小さいが、時間の経過とともに当たり面積が増加する。これにより、変形初期の段階では、衝撃荷重入力方向において最も前方側に配置された第一の板状リブの両端に連結された一対の荷重伝達部の連結端部が互いに遠ざかるように変位することにより、第一の板状リブは両端が遠ざかるように引っ張られて引張変形させられる。
その後、衝撃吸収部材の圧縮変形が衝撃荷重入力方向後方側へ進むに連れて、衝撃荷重入力方向前方側から順に配置された第二、第三の板状リブが、順次、それら板状リブの両端に連結された対をなす荷重伝達部により、第一の板状リブと同様に両端が遠ざかるように引っ張られて引張変形させられ、これら各板状リブの引張変形によって衝撃エネルギが効果的に吸収される。
このように、樹脂製の板状リブの良好な伸び特性や引張特性を利用して衝撃エネルギが吸収されることから、初期の衝撃荷重が急激に大きくならず、しかも板状リブの引張変形が継続的に行われるので初期の衝撃荷重の立ち上がり後における低下が極めて少ないため、効率良く衝撃エネルギが吸収される。また、各荷重伝達部及び各板状リブは、衝撃荷重入力方向に折り畳まれるように変形することがないので潰れ残りが小さくなるため、より大きな衝撃エネルギ吸収量の確保が可能となる。これにより、衝突相手の歩行者の脚部に及ぼされるダメージが大幅に軽減され、歩行者の保護が確実になされる。
特に、本発明の衝撃吸収部材は、複数の板状リブの少なくとも一つが、衝撃荷重の入力時における荷重−引張方向変位特性が他の板状リブと異なるように構成されていることから、複数の板状リブにおいて、衝撃荷重入力時の引張変形の態様が異なるように設定することが可能である。そのため、衝撃吸収部材の衝撃エネルギ吸収過程における変形態様を目的に応じて適宜変更することが可能となり、チューニング自由度が拡大される。
例えば、本発明の衝撃吸収部材と歩行者の脚部が衝突した場合には、衝撃吸収部材の圧縮変形が進むに連れて脚部の当たり面積が増加し、実際に圧縮される部分が増大するため荷重が上昇することから、衝撃吸収部材の変形後期において荷重を受け持つ衝撃荷重入力方向の後方側に、引張降伏荷重が小さくなるように構成された板状リブを配置するようにすれば、荷重の上昇を適度に抑制することが可能となる。即ち、実際の荷重は、(単位面積あたりの荷重)×(圧縮される面積)で表されることから、衝撃荷重入力方向の後方側に配置される板状リブの単位面積あたりの荷重が下げられることとなる。そのため、衝撃荷重入力時の荷重と変位量との関係を表す線図の後半領域において、より理想に近いフラットな荷重特性となる。よって、歩行者の脚部等と衝突して低い衝撃荷重が部分的に入力した際には、変形後期における衝撃荷重の上昇を適度に抑えて良好な衝撃エネルギ吸収機能を発揮し、歩行者の保護をより効果的になし得る。
本発明において、衝撃荷重入力方向に対して直交する方向に延びるように互いに平行に配置される複数の板状リブの少なくとも一つは、それ自体の引張降伏荷重と荷重伝達部による引張方向荷重の伝達効率との少なくとも一方が異ならされていることにより、衝撃荷重の入力時における荷重−引張方向変位特性が他の板状リブと異なるように構成されている。各板状リブの引張降伏荷重を異ならせるには、板状リブの肉厚寸法を変更したり、板状リブの形成材料を変更したりすることにより達成することができる。また、荷重伝達部による引張方向荷重の伝達効率を異ならせるには、衝撃荷重の入力方向に対する荷重伝達部の傾斜角度を変更することにより達成することができる。この場合、荷重伝達部の傾斜角度の変更は、板状リブの幅方向(引張変形方向)の長さ寸法を変更するすることにより達成することができる。なお、衝撃荷重の入力時における荷重−引張方向変位特性が異なるように構成される板状リブは、複数の板状リブの内の一又は二以上の幾つであってもよい。
なお、本発明においては、衝撃荷重入力方向において後方側に配置される板状リブが、前方側に配置されるものより引張降伏荷重が小さくなるように構成されているのが好ましい。引張降伏荷重が小さくなるように構成するには、後方側に配置される板状リブの肉厚を前方側の板状リブよりも薄くしたり、或いは、例えば2色成形を採用することにより後方側に配置される板状リブを前方側の板状リブよりも引張降伏応力が小さい樹脂材料で一体的に形成したりすることによって達成できる。
本発明における板状リブは、引張破断伸びが100%以上、引張降伏応力が15Mpa以上の樹脂材料で形成されているのが好ましい。このようにすれば、衝撃荷重入力時に荷重伝達部によって引張変形させられる板状リブの引張変形に対する良好な特性を確保することができるので、良好な衝撃エネルギ吸収性能を確保することができる。なお、本明細書において引張破断伸び及び引張降伏応力とは、JIS−K7162でそれぞれ定義する引張破断伸び及び引張降伏応力のことをいう。
本発明において、衝撃荷重入力部と複数対の荷重伝達部を有するように構成される筒状部材は、断面形状が円形や楕円に限らず、例えば八角形のような多角形のものや複数の多角形を組み合わせたものを採用することができる。この場合、複数の板状リブは、それぞれの幅方向両端が対をなす荷重伝達部のそれぞれの一端に連結された状態で筒状部材の内部に配置される。この筒状部材は、周方向において隣り合う各荷重伝達部の端部どうしを連結する板状連結部を有するように構成することができる。
この板状連結部の肉厚は、衝撃荷重入力時に対をなす荷重伝達部の他端部の位置固定をより確実にするために、板状リブの肉厚よりも厚くされているのが好ましい。また、このように構成された筒状部材は、最も後方側に配置される板状連結部が取付固定部として利用される。この場合、最も後方側に配置される一対の荷重伝達部の他端どうしの間に、その板状連結部を排除するように軸方向に延びるスリットを形成し、そのスリットの両側に位置する荷重伝達部にそれぞれ取付固定部を設けるようにしてもよい。
本発明において、筒状部材に設けられる衝撃荷重入力部は、複数の板状リブの衝撃荷重入力方向の前方側に配置される。この衝撃荷重入力部は、最も後方側に配置される板状連結部よりも周方向の幅が大きくされているのが好ましい。このようにすれば、各板状リブの引張降伏荷重の大きさの異ならせ方や、それぞれ対をなす荷重伝達部の剛性の高低の異ならせ方に対応して、板状連結部の剛性を異ならせることができるので、各板状リブの引張変形をより円滑に且つ確実に行わせることが可能となる。
荷重伝達部の肉厚は、板状リブの肉厚よりも厚くされているのが好ましい。このようにすれば、荷重伝達部の充分な剛性が確保されるため、板状リブを確実に引張変形させることができる。また、荷重伝達部の中央部の肉厚を両端部よりも厚くすることによっても、荷重伝達部の充分な剛性を確保することができる。この荷重伝達部は、曲げ弾性率が1Gpa以上の樹脂材料で形成されているのが好ましい。このようにすれば、衝撃荷重入力時に板状リブをより確実に引張変形させることが可能となる。なお、本明細書において曲げ弾性率とは、JIS−K7171で定義する曲げ弾性率のことをいう。
なお、本発明の衝撃吸収部材の好ましい形態として、複数の板状リブは、衝撃荷重入力方向の前方側に配置される第1板状リブと、第1板状リブの衝撃荷重入力方向の後方側に配置される第2板状リブとからなり、筒状部材は、衝撃荷重入力部と、第1板状リブの両端にそれぞれの一端が連結されるとともに衝撃荷重入力部の両端にそれぞれの他端が連結される一対の第1荷重伝達部と、第2板状リブの両端にそれぞれの一端が連結される一対の第2荷重伝達部と、一対の第2荷重伝達部の他端どうしを連結する第1板状連結部と、一対の第1荷重伝達部と一対の第2荷重伝達部の一端どうしを連結する一対の第2板状連結部とからなるように構成することができる。このようにされていれば、スペース効率がよくコンパクトな構造になり、良好な衝撃吸収作用を発揮し得る好ましい衝撃吸収部材を簡易に作製することができる。
本発明において、成形体の形成に用いられる樹脂材料としては、例えば、商品名「UBEナイロン6」(宇部興産株式会社製、品番「1013IU50」)、PC(ポリカーボネート)、PC/PBT(ポリブチレンテレフタレート)アロイ、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等を好適に採用することができる。これらの樹脂材料のうちで、上記「UBEナイロン6」は、曲げ弾性率が1Gpa以上、引張破断伸びが100%以上、引張降伏応力が15Mpa以上であるため、特に好適に採用することができる。また、成形処理は、従来より公知の方法を採用することができるが、特に、長尺ものの製造に有利な押出成形等の採用が可能である。
本発明の自動車用衝撃吸収部材によれば、歩行者の脚部等が衝突して低い衝撃荷重が部分的に入力することにより衝撃吸収部材が変形する際に良好な衝撃エネルギ吸収機能を発揮し、歩行者の保護をより効果的に行うことができる。また、複数の板状リブの少なくとも一つは、それ自体の引張降伏荷重と荷重伝達部による引張方向荷重の伝達効率との少なくとも一方が異ならされていることにより、衝撃荷重の入力時における荷重−引張方向変位特性が他の板状リブと異なるように構成されていることから、衝撃吸収部材の衝撃エネルギ吸収過程における変形態様を目的に応じて適宜変更することが可能となり、チューニング自由度を拡大することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る自動車用衝撃吸収部材の軸直角方向の断面図であり、図2はその自動車用衝撃吸収部材の斜視図である。
本実施形態の衝撃吸収部材は、図1及び図2に示すように、樹脂材料で一体に形成された長尺筒状の成形体からなり、衝撃荷重入力方向に対して直交する方向に延びるように所定距離を隔てて互いに平行に配置された二つの第1及び第2板状リブ1、2と、一対の第1荷重伝達部31、32、一対の第2荷重伝達部33、34、衝撃荷重入力部35、第1板状連結部36及び一対の第2板状連結部37、38からなる筒状部材3と、から構成されている。
第1板状リブ1は、肉厚t1が0.8mmで、幅寸法W1が50mmとされた平板状に形成されている。第2板状リブ2は、肉厚t2が0.5mmで、第1板状リブ1と同じ幅寸法W1の平板状に形成されている。この第2板状リブ2は、第1板状リブ1よりも肉厚が薄くされていることにより引張降伏荷重が小さくなるようにされており、これにより、衝撃荷重入力方向における荷重−引張方向変位特性が第1板状リブ1と異なるように構成されている。これら第1板状リブ1と第2板状リブ2は、第2板状連結部37、38の幅寸法W5に相当する距離を隔てて平行に配置されている。
筒状部材3は、第1板状リブ1側に配置された衝撃荷重入力部35と、第1板状リブ1の両端にそれぞれの一端が連結されるとともに衝撃荷重入力部35の両端にそれぞれの他端が連結される一対の第1荷重伝達部31、32と、第2板状リブ2の両端にそれぞれの一端が連結される一対の第2荷重伝達部33、34と、一対の第2荷重伝達部33、34の他端どうしを連結する第1板状連結部36と、一対の第1荷重伝達部31、32と一対の第2荷重伝達部33、34の一端どうしを連結する一対の第2板状保持部37、38とからなり、断面形状が八角形の筒状に形成されている。
一対の第1荷重伝達部31、32は、第1板状リブ1の両端に連結されたそれぞれの一端から第1板状リブ1と直角方向へ遠ざかるに連れてそれぞれの他端どうしが接近するように傾斜して配置されている。また、一対の第2荷重伝達部33、34は、第2板状リブ2の両端に連結されたそれぞれの一端から第2板状リブ2と直角方向へ遠ざかるに連れてそれぞれの他端どうしが接近するように傾斜して配置されている。即ち、第1及び第2荷重伝達部31〜34は、衝撃荷重入力方向に向かって傾斜して対向した状態に配置されている。そして、第1板状リブ1と第2板状リブ2の一端(図1において左側)どうしは一方の第2板状連結部37により連結され、第1板状リブ1と第2板状リブ2の他端(図1において右側)どうしは他方の第2板状連結部38により連結されている。
第1及び第2荷重伝達部31〜34のそれぞれは、内面が平面とされ、外面は中央部が外方へ膨らむように湾曲面とされていることにより、中央部の肉厚が両端部よりも厚くなるようにされている。第1荷重伝達部31、32の中央部の肉厚t3は2.8mmとされ、第2荷重伝達部33、34の中央部の肉厚t4は2.0mmとされており、第2荷重伝達部33、34の方が第1荷重伝達部31、32よりも肉厚が全体的に薄くされている。第1及び第2荷重伝達部31〜34の幅寸法W2は20mmとされている。
また、第1荷重伝達部31、32の他端どうしを連結する衝撃荷重入力部35と第2荷重伝達部33、34の他端どうしを連結する第1板状連結部36は、内面及び外面が平面とされ、肉厚t7が2mmで一定となるようにされている。衝撃荷重入力部35の肉厚t5は2mmとされ、第1板状連結部36の肉厚t6は2.5mmとされている。衝撃荷重入力部35の幅寸法W3は25mmとされ、第1板状連結部36の幅寸法W4は15mmとされており、衝撃荷重入力部35の方が第1板状連結部36よりも幅寸法が大きくされている。
また、一対の第2板状連結部37、38は、内面及び外面が外側へ膨らむように湾曲面とされて肉厚t7が略一定となるようにされており、それらの幅寸法W5は20mmとされている。よって、第1及び第2荷重伝達部31〜34と衝撃荷重入力部35と第1及び第2板状連結部36〜38とからなる筒状部材3の肉厚は、第1及び第2板状リブ1、2の肉厚よりも厚くされている。
本実施形態の衝撃吸収部材は、商品名「UBEナイロン6」(宇部興産株式会社製、品番「1013IU50」)により一体形成された押出成形材を所定寸法に切断した後、所定の湾曲形状に成形加工することにより作製されている。これにより、筒状部材3の第1及び第2荷重伝達部31〜34は、曲げ弾性率が1Gpa以上とされ、第1及び第2板状リブ1、2は、引張破断伸びが100%以上、引張降伏応力が15Mpa以上とされている。なお、本実施形態では、第2板状リブ2の方が、第1板状リブ1よりも肉厚が薄くされていることにより引張降伏荷重が小さくなるようにされていることは上記のとおりである。
以上のように構成された本実施形態の自動車用衝撃吸収部材は、例えば図3及び図4に示すように、自動車の前後部に装備されるバンパに対して、衝撃吸収部材が横方向に延びるように取付けられ、歩行者保護用として使用される。この衝撃吸収部材は、車体フレーム(図示せず)の前部に一対のクラッシュボックス5、5を介して取付けられた鉄製のバンパビーム6の前面(車体フレームの後部の場合は後面)に、取付固定部となる第2板状連結部36の外面が接着剤で固着されることにより取付けられており、バンパビーム6とこれの外側に取付けられるバンパフェイシア7との間に配設されている。この場合、衝撃吸収部材は、衝撃荷重入力部35が衝撃荷重入力方向前方側(バンパフェイシア7側)に位置するとともに、第1及び第2板状リブ1、2が衝撃荷重入力方向(主として図4における矢印x方向)に対して略直交する方向(上下方向)に延びるように配置された状態に取付けられている。
このように衝撃吸収部材が取付けられた自動車が、低速走行中等において歩行者の脚部と衝突して、バンパフェイシア7に比較的低い衝撃荷重が入力すると、バンパフェイシア7の弾性変形に伴う変位によって、その衝撃荷重が衝撃吸収部材の衝撃荷重入力部35の横方向の一部分に入力し、衝撃吸収部材は衝撃荷重入力部35の一部分がバンパフェイシア7に押圧されて衝撃荷重入力方向前方側から部分的に圧縮変形を開始する。この場合、衝撃荷重入力部35への当たり面は、初期は点当たりで小さいが、時間の経過とともに当たり面積が増加する。これにより、変形初期の段階では、第1荷重伝達部31、32が衝撃荷重入力方向に向かって傾斜して対向した状態に配置されていることから、複数の板状リブ1、2の内で衝撃荷重入力方向において最も前方側に配置された第1板状リブ1は、その両端に連結された一対の第1荷重伝達部31、32の連結端部が互いに遠ざかるように変位することにより、その両端が遠ざかるように引っ張られて引張変形させられる。
その後、衝撃吸収部材の圧縮変形が進むに連れて、第1板状リブ1の衝撃荷重入力方向後方側に配置された第2板状リブ2は、その両端に連結された一対の第2荷重伝達部33、34が、衝撃荷重入力方向に向かって傾斜して対向した状態に配置されていることから、第2荷重伝達部33、34の連結端部が互いに遠ざかるように変位することにより、その両端が遠ざかるように引っ張られて引張変形させられ、これら第1及び第2板状リブ1、2の引張変形によって衝撃エネルギが効果的に吸収される。
このように、樹脂製の第1及び第2板状リブ1、2の良好な伸び特性や引張特性を利用して衝撃エネルギが吸収されることから、初期の衝撃荷重が急激に大きくならず、しかも第1及び第2板状リブ1、2の引張変形が継続的に行われるので初期の衝撃荷重の低下が極めて少ないため、極めて効率良く衝撃エネルギが吸収される。また、本実施形態の衝撃吸収部材の構造では、第1及び第2荷重伝達部31〜34及び板状リブ1、2が、衝撃荷重入力方向に折り畳まれるように変形することがないので潰れ残りが小さくなるため、限られた設置スペースにおいても大きな衝撃エネルギ吸収量の確保が可能となる。よって、衝突相手の歩行者の脚部に及ぼされるダメージが大幅に軽減され、歩行者の保護が確実になされる。
特に、この衝撃吸収部材の場合には、圧縮変形が進むに連れて歩行者の脚部の当たり面積が増加し、実際に圧縮される部分が増大するため荷重が上昇するが、衝撃吸収部材の変形後期において荷重を受け持つ衝撃荷重入力方向の後方側に、引張降伏荷重が小さくなるように構成された第2板状リブ2が配置されているので、荷重の上昇が適度に抑制される。即ち、実際の荷重は、(単位面積あたりの荷重)×(圧縮される面積)で表されることから、本実施形態の衝撃吸収部材においては、衝撃荷重入力方向の後方側に配置された第2板状リブ2の単位面積あたりの荷重が下げられている。そのため、後述する試験結果からも明らかなように、衝撃荷重入力時の荷重と変位量との関係を表す線図(図10参照。)の後半領域において、より理想に近いフラットな特性曲線となる。したがって、本実施形態の衝撃吸収部材は、低い衝撃荷重が入力した際に良好な衝撃エネルギ吸収機能を発揮し、歩行者の脚部の保護をより効果的になし得る。
以上のように、本実施形態の衝撃吸収部材は、樹脂材料で一体に形成された成形体からなり、衝撃荷重入力方向に対して直交する方向に延びるように互いに平行に配置される二つの第1及び第2板状リブ1、2と、第1及び第2板状リブ1、2の両端にそれぞれの一端が連結されて衝撃荷重入力時に第1及び第2板状リブ1、2を引張変形させる第1及び第2荷重伝達部31〜34を有する筒状部材3と、から構成されているため、低い衝撃荷重が負荷された際に良好な衝撃エネルギ吸収機能を発揮することができ、歩行者の保護を確実に且つ有利になすことができる。
特に、本実施形態の衝撃吸収部材においては、互いに平行に配置された二つの第1及び第2第板状リブ1、2は、衝撃荷重入力方向において後方側に配置される第2板状リブ2が前方側に配置される第1板状リブ1よりも肉厚が薄くされていることによって引張降伏荷重が小さくなるように構成されていることから、衝撃吸収部材の変形後期における衝撃荷重の上昇を適度に抑制することができるため、歩行者の脚部の保護をより効果的に行うことができる。また、本実施形態の衝撃吸収部材は、長尺ものの製造に有利な押出成形で一体的に作製することができるので、製造コストの上昇を回避することができる。
なお、上記実施形態においては、第2板状リブ2は第1板状リブ1よりも肉厚が薄くされていることにより引張降伏荷重が小さくなるようにされているが、第1板状リブ1の形成材料よりも例えば引張破断伸びや引張降伏応力が小さい形成材料を採用して第2板状リブ2を形成することによって、第2板状リブ2の引張降伏荷重を第1板状リブ1よりも小さくするようにしてもよい。また、第1板状リブ1と第2板状リブ2の引張降伏荷重を異ならせるのに代えて、第1板状リブ1と第2板状リブ2の荷重伝達部31〜34による引張方向荷重の伝達効率を異ならせることによって、第1板状リブ1と第2板状リブ2の衝撃荷重入力時における荷重−引張方向変位特性を異ならせるようにしてもよい。
また、上記実施形態の衝撃吸収部材は、筒状部材3の第1板状連結部36の外面が接着剤でバンパビーム6に固着されることによって取付固定されるように構成されているが、例えば図5に示すように、筒状部材3の対をなす第2荷重伝達部33、34の間部分に第1板状連結部36を排除するように軸方向に延びるスリットを形成し、対をなす第2荷重伝達部33、34のスリットに沿ったそれぞれの端部に、取付固定部33b、34bを設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態の衝撃吸収部材は、肉厚が異なる二つの第1及び第2板状リブ1、2を有するものであるが、例えば図6及び図7に示すように、肉厚が異なる三つの第1〜第3板状リブ11、12、13を有するように構成することができ、この場合にも、衝撃荷重入力方向において後方側に配置されるものが前方側に配置されるものより引張降伏荷重が小さくなるように構成されていることによって、上記実施形態の衝撃吸収部材と同様の作用及び効果を得ることができる。
図6に示す衝撃吸収部材は、衝撃荷重入力方向(矢印a方向)に対して直交する方向に延びるように所定距離を隔てて互いに平行に配置された三つの第1〜第3板状リブ11〜13と、一対の第1荷重伝達部131、131、一対の第2荷重伝達部132、132、一対の第3荷重伝達部133、133、一対の第4荷重伝達部137、138、衝撃荷重入力部135及び第1板状連結部136からなる多角形筒状に形成された筒状部材30と、から構成されている。この場合、衝撃荷重入力方向において最も前方側に、肉厚が最も厚くされていることにより引張降伏荷重が最も大きくなるように構成された第1板状リブ11が配置され、衝撃荷重入力方向において最も後方側に、肉厚が最も薄くされていることにより引張降伏荷重が最も小さくなるように構成された第3板状リブ13が配置されている。また、衝撃荷重入力方向において最も前方側に配置される第1荷重伝達部131、131は、肉厚が最も厚くされていることにより剛性が最も高くなるように構成され、衝撃荷重入力方向において最も後方側に配置される第3荷重伝達部133、133は、肉厚が最も薄くされていることにより剛性が最も低くなるように構成されている。
また、図7に示す衝撃吸収部材は、上記実施形態の図1に示す衝撃吸収部材に対して、一つの第3板状リブ13と、第3板状リブ13の両端にそれぞれの一端が連結されて第3板状リブ13の一面側に配置される一対の第3荷重伝達部133、133と第3板状リブ13の両端にそれぞれの一端が連結されて第3板状リブ13の他面側に配置される一対の第4荷重伝達部134、134とを有する筒状部材103とを組み付けた構造のものである。この場合、第3板状リブ13は、衝撃荷重入力方向(矢印b方向)において第1板状リブ1の前方側に配置されており、第1板状リブ1よりも肉厚が厚くされていることにより引張降伏荷重が最も大きくなるように構成されている。なお、第3荷重伝達部133、133と第4荷重伝達部134、134は、肉厚及び幅寸法が同じにされている。また、一対の第3荷重伝達部133、133の他端どうしを連結する第3板状連結部139は、衝撃荷重入力部35と肉厚及び幅寸法が同じにされており、この衝撃吸収部材の場合、衝撃荷重入力方向において最も前方側に配置されているので、衝撃荷重入力部35に代わって第3板状連結部139が衝撃荷重入力部となる。
〔試験〕
本発明の自動車用衝撃吸収部材の優れた効果を確認するため、実施例として、上記実施形態の図1に示す衝撃吸収部材を準備し、また比較例として、図8に示す衝撃吸収部材を準備して、衝撃エネルギ吸収性能を調べる試験を行った。比較例は、実施例と同じ樹脂材料で八角形の筒状に形成されたものであって、図8に示すように、衝撃荷重入力方向に対して直交する方向に延びるように互いに平行に配置された第1板状リブ1a及び第2板状リブ2aと、一対の第1荷重伝達部31a、32a、一対の第2荷重伝達部33a、34a、衝撃荷重入力部35a並びに第1及び第2板状連結部36a〜38aからなる筒状部材3aと、から構成されている。
この比較例は、第1板状リブ1aの肉厚t11と第2板状リブ2aの肉厚t12が0.9mmで同じにされている点で実施例と顕著に異なる。第1及び第2板状リブ1a、2aの幅寸法W11は50mmとされている。また、第1荷重伝達部31a、32aの中央部の肉厚t13と第2荷重伝達部33、34の中央部の肉厚t14は、3.3mmで同じにされており、第1及び第2荷重伝達部31a〜34aの幅寸法W12は25mmとされている。衝撃荷重入力部35a及び第1板状連結部36aは、外面が平面とされ、内面は中央部が内方へ膨らむように湾曲面とされており、中央部の肉厚t15、t16が3mmで同じにされている。第2板状連結部37a、38aは、内面及び外面が平面とされ、肉厚t17が2mmで一定となるようにされており、その幅寸法W15は18mmとされている。
この試験は、図9に示すように、金属プレート71の上面に各試験片の第1板状連結部36(36a)の外面を固着して配置し、試験片の上方から、直径が70mmで長さが200mmの円筒状のストライカ73を試験片と直角に交差するように衝突させて3m/sの速度で衝撃荷重を負荷し、その負荷により加わる荷重値(kN)とその際の試験片の変位量(mm)との関係を調べるものであり、その結果は図11に示されている。なお、図11において、各試験片のエネルギ吸収量は、それぞれの特性曲線と変形率を示す横軸線とによって囲まれた領域の面積に相当し、その面積が大きい程、エネルギ吸収量が大きいと評価される。また、図10(a)〜(f)には、実施例に係る衝撃吸収部材が衝撃荷重入力によって変形する様子が(a)から順に(f)まで段階的に示されている。
図11から明らかなように、比較例の場合には、荷重負荷初期の段階で、荷重値が2kNとなるまで急激に立ち上がった後、変位量が13mm程度になるまで横這い状態となり、その後、変位量が25mm程度になるまで荷重値が緩やかに上昇した後、変位量が40mm程度になるまで荷重値がやや急激に上昇している。即ち、比較例の場合には、変位量が25mm以上となった後半において荷重値が大きくなっていることから、歩行者の脚部へ与えるダメージが大きくなる。
これに対して実施例の場合には、図11から明らかなように、荷重負荷初期の段階で、荷重値が3kN付近になるまで急激に立ち上がった後、変位量が25mm程度になるまで横這い状態となり、その後、変位量が40mm程度になるまで荷重値が2.7kN程度を維持した状態で横這い状態となった後、荷重値が急激に大きく上昇している。即ち、実施例の場合には、荷重値の初期立ち上がり傾斜が比較例に比べてやや緩やかであるが、荷重値が3kN付近まで大きく立ち上がっており、しかもその後、変位量が40mm程度になるまで荷重値が大きく変動することなくフラットで高い状態を維持しており、より理想に近い荷重特性となっている。
特に、衝撃吸収部材の変形後期となる変位量が25〜40mmの範囲では、比較例に比べて荷重値の上昇が大幅に抑えられていることが解る。この違いの大きな理由は、比較例では、第1板状リブ1aと第2板状リブ2aが同じ肉厚にされているのに対して、実施例では、衝撃荷重入力方向において後方側に配置される第2板状リブ2が前方側に配置される第1板状リブ1よりも肉厚が薄くされていることによって引張降伏荷重が小さくなるように構成されていることに因るものである。なお、実施例の場合にも、全体としては比較例と略同等の大きな衝撃エネルギ吸収量が得られている。
なお、実施例の衝撃吸収部材が衝撃荷重入力によって部分的に圧縮変形する際には、図10(a)〜(f)に示すように、筒状部材3の衝撃荷重入力部35側(ストライカ73側)から変形を開始し、衝撃吸収部材の圧縮変形が衝撃荷重入力方向の後方側へ進むに連れて、衝撃荷重入力方向の前方側に配置された第1板状リブ1から後方側に配置された第2板状リブ2へと順に引張変形させられる。これら第1及び第2板状リブ1、2の引張変形が継続的におこなわれることによって、衝撃エネルギが効率良く吸収されるため、大きな衝撃エネルギ吸収量が得られる。
以上のことから、実施例のように、衝撃荷重入力方向において後方側に配置される第2板状リブ2が前方側に配置される第1板状リブ1よりも引張降伏荷重が小さくなるように構成されていれば、衝撃吸収部材の変形後期における衝撃荷重の上昇を適度に抑制することができるため、歩行者の脚部の保護をより効果的に行うことができ、歩行者の脚部保護用に最適な衝撃吸収部材が得られることが解った。