JP4779173B2 - マイクロリアクタ - Google Patents

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本発明は、二以上の溶液を流路に流通させながら反応させるマイクロリアクタに関するものである。
近年、マイクロリアクタに関しての関心が高まっており、既に、分析システムやDNA診断の装置として実用化されている。さらに、最近では、マイクロリアクタを利用した化学合成が注目を集めており、将来的には、これを化学製品或いはエネルギー生産の設備として利用する計画も持ち上がっている。ところで、ここでいうマイクロリアクタとは、数μm〜数mmのサイズ(マイクロサイズ)を有する反応器のことであり、その最大の特徴は、単位体積当りの表面積が大きいことである。
このことにより、高い伝熱速度を有することになって、反応温度の精密制御による反応率や収率の向上が可能になる。また、二種の異相界面での反応流体体積当りの界面積が飛躍的に大きくなることによる反応率の向上も見込まれる。さらに、流体には、重力、慣性力、粘性力及び界面張力が働くが、リアクタをダウンサイジングすると、界面張力と粘性力の影響が非常に大きくなり、マクロスケールの混合とは異なる様々に有利な混合が得られるといわれている。加えて、ダウンサイジングによって化学プラントがデスクトップ上にコンパクトに構築できることになる(必要な量はナンバリングアップで確保すればよい)。
マイクロリアクタは、要するに、二以上の反応液を接触させて反応させるマイクロサイズの機器のことであり、その原理、手法には種々のものがあるが、下記特許文献1には、二種以上の反応液を同芯の円筒層流に形成するものが開示されている。この先行例のものは、各反応液を積層された円筒形の層流として流通させながら反応させるものであるから、制御が容易であるとともに、流通速度を低下させないといった利点はある。しかし、この先行例のものは、流通の全過程でこの積層が維持できることを前提としているが、実際問題は、この積層は早期に崩れる。また、円筒層流は一つであるから、界面面積の割合はそれほど大きくならない。
また、下記特許文献2には、粒子を液に分散させる分散液の作成において、一つの反応液を互いに離間した薄液膜に分割し、この薄液膜を他の反応液と合体させる手法が示されており、これにおいて、液体を粒子に細分化するために機械式発信器によるものが示されている。この先行例のものは、二つの反応液の界面面積が大きくなる利点はあるものの、機械式発信器が必要になる等、構造が複雑になる欠点がある。
特開2004−344877公報 WO 00/62913公報
本発明は、二つ(或いはそれ以上)の反応液を合流させる時点で、その合流態様を反応に対して好条件に統一することで、その後の反応を促進するとともに、性能を安定化させようとするものであり、これに好適な合流デバイスを提案したものである。
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、上流側から第1及び第2流入口を順に配し、下流側に流出口が形成された筐体内で第1及び第2流入口から別々に供給される二つの反応液を接触させて筐体内を流通させながら反応させるマイクロリアクタにおいて、筐体内に、筐体内の第1流入口と第2流入口の間を複数のノズルが形成されたノズル形成体で仕切り、第1流入口から一の反応液を供給してノズルの下流直後にノズルの形状に即した流体である島部とするとともに、ノズル形成体の下流における第2流入口から他の反応液を供給して海部とし、島部と海部とを合流させる一方、筐体を各反応液が合流した時点から下流側に向かって先細りにして流出口に続けた海島合流デバイスを設けたことを特徴とするマイクロリアクタを提供するとともに、これにおけるノズルの形態として、請求項2〜4の、各ノズルが同一又は異種の形状をしている手段、各ノズルの断面形状が円形をしている手段、各ノズルの断面形状が非円形をしている手段を提供する。さらに、請求項5に記載した、第2流入口の下流にノズル形成体のノズル径よりも大きな径を有するノズルが形成された第2ノズル形成体を挿設するとともに、第2ノズル形成体の下流に第3流入口を形成する構成を順に構築し、各流入口からそれぞれ反応液を供給して三以上の反応液を合流させて反応させる手段を提供する。
請求項1の発明によると、二つの反応液の界面(接触)面積がその体積に比して非常に大きなものになり、その後の反応操作における反応性が高い。すなわち、合流時の島部と海部のパターンは、流通に伴って崩れて行くが、初期の界面面積が大きいことから、減少の度合いも少ない。また、界面面積が相対的に大きいということは、合流時点で両液の乱れを誘発する機会も多くなり、この点でも反応効率が高い。したがって、反応が終了するまでの時間が短くてすみ、流路も短くてよい。加えて、筐体を各反応液が合流した時点から下流側に向かって先細りにすることで、この効果を一層高める。
一方、このことは、初期条件を好適の下に一定にすることを意味するから、その後の反応も一定する。したがって、種々の反応操作を採用した場合、その評価又は比較が容易であるし、さらに、反応液を変えた場合でも、反応操作の設定が容易になるといった効果も期待できる。この点、従来から知られているY字管やT字管によるものであれば、衝突時における液の挙動がその都度違ってその後の反応が一定しないし、また、反応性の低い層流効果しか期待できない。
請求項5に記載した分離デバイスで各反応液を分離すると、反応が抽出型反応である場合に、相手方反応液からそれぞれの反応液が抽出した(或いはその逆)成分を秤量できるし、このときの分離を請求項6の比重差によるものとすれば、その構造が簡単である。さらに、請求項7のスタティックミキサを装備すれば、反応はより短い流路や時間で可能であるし、請求項8の手段によれば、三以上の反応液を反応させることも可能になる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係るマイクロリアクタに用いられる海島合流デバイスの側面断面図、図2は図1のAーA拡大断面図であるが、この海島合流デバイス(以下、海島デバイス)1は、別々に供給される二つの反応液(以下、液)を合流させるものであり、円筒形をした筐体2の上流端に一の液を受け入れる第1流入口3が形成され、以下、下流側に順に他の液を受け入れる第2流入口4、二つの液が合流したものを流出する流出口5が形成されたものである。そして、筐体2内の第1流入口3と第2流入口4との間には、ノズル6が形成されたノズル形成体7で仕切られている。
この場合のノズル6の断面形状や数は、種々のものがあり、ここでは、一々列挙しないが、本例では、中心に1個、その周囲に等配置で6個のいずれも円形をした合計7個のものを示した。なお、この海島デバイス1は、マイクロリアクタに用いられるものであるから、これらの構成部材は、それぞれ上記したマイクロサイズに設定されているのはいうまでもない。以上により、まず、第1流入口3より供給された一の液は、ノズル形成体7のノズル6の形状、配置に形成されてここから柱状で流出させられる。この柱状体の外周に第2流入口4から射出された他の液が被さり、一の液間に充填する形態を呈する。この状態を断面で見てみると、一の液は、他の液の間に海の中に島が存在しているような呈観であり、この点で、一の液を島部a、他の液を海部bと呼んだものである。なお、この呼び名は、紡糸技術の口金構造に由来している。
二つの液は、上記した島部aと海部bの状態で合流させられ、流出口5から流出させられる。したがって、島部aの数が多いほど、体積当りの接触面積、すなわち、界面面積が大きいということになる。なお、本例では、二つの液が合流した時点から流出口5に至るまでは、筐体2内を先細りに絞っている。島部a及び海部bをともに圧縮して密度を高め、反応性を高めるためである。
図3、図4はマイクロリアクタの構成図であるが、上記した流出口5には反応管8が接続され、反応管8の終端には分離デバイス9が接続されている。また、一の液の第1流入口3への供給及び他の液の第2流入口4への供給は、それぞれシリンジポンプ10、11で行っている。以上により、流出口5から流出した二液は、反応管8の中を互いに接触させられながら下流に流動し、その間に反応する。ところで、この反応の形態には、一の液と他の液とが化学変化を起こして別の物質に合成される変化型反応もあれば、一の液で他の液に含まれる成分を抽出(吸収)する(その逆もある)抽出型反応もある。マイクロリアクタは、どちらの場合にも使用されるが、いずれの場合であっても、反応の間中、界面面積を大きく保っていることは重要なことである。
合流した二液が反応管8の中を流動して行くとき、島部aと海部bの上記したパターンはいつまでも続かない(崩れる)。このパターンはいつまでも保持される必要はなく、かえって互いの界面が入り乱れて相互に輻輳する方が反応性にとっては好ましい。要は、二液の境界面が体積に比して大きな面積を確保できればよいのである。事実、二液を水相と油相にした実験例では、パターンは流出口5から約3mmで崩れ、その後は界面が入り乱れてある程度の乱流になることが確認されている。反応が上記した抽出型である場合、反応管7中の二液は最後に分流デバイス9に至り、ここで、再度、一の液と他の液とに分離することになる。この分離操作にも種々の方法があるが、比重に大小があるものであれば、重力で分離することができるから(軽い液は上方に溜まり、重い液は下方に溜まるから)、簡単に構成できる。そして、分離されたそれぞれの液を回収すれば、反応は完了したことになる。
ところで、以上の海島デバイス1、反応管8及び分離デバイス9の配置については、反応管8を垂直にする上向き設置タイプ(図3)と水平にする横向き設置タイプ(図4)とがある。前者は、重力が流体の移動に影響を及ぼすものの、流動抵抗にムラを生じさせる管壁方向には影響を及ぼさない利点があり、後者は、重力が管壁の下側方向に作用するが、移動方向には影響を及ぼさない利点がある。
上記した反応管8は、単なる流路形成管であるが、この中にスタティックミキサ(SM)12を組み込むことがある。図5はスタティックミキサ12の原理を示す説明図であるが、その構造は、管の中に流体を捻転させるガイド羽根のようなエレメントを設け、これによって流通する流体に捻転運動を生じさせるものである。二液の接触を高め、反応をより促進させるためである。本例のエレメントは、180°左右に捩じった左エレメント12aと右エレメント12bとで構成し、各々の端を直交させる形態で配置している。
図6は海島デバイス1の他の例を示す側面断面図(a)と流出口5部分の拡大断面図(b)であるが、本例のものは、第2流入口4の下流位置の筐体2にノズル6と同芯の第二ノズル13を形成した第二ノズル形成体14を設けるとともに、この第二ノズル形成体14の下流に更に別の液を供給する第3流入口15を設けたものである。この場合において、下流の第二ノズルの径は、上流のノズル6の径よりも大きくしてあり、島部aと海部bがこの第二ノズル13を通過するとき、海部bがそのノズル径に削られ、ここから出た柱状体は、二層巻に積層された島部aを構成するものである。これによると、三液を反応させることができるし、さらに、ノズル体を増やせば、四液以上を反応させるデバイスも実現できる。
二つの液を水相溶液と油相溶液として一方に銅イオン、他方に銅イオン抽出剤を添加したものを試液に採用し、この海島デバイスを始めとして種々のデバイスによる合流と混合を行う他、スタティックミキサの有無や向きを種々変え、それによって二液がどのような流動状態を形成するのかを調べるとともに、水相から油相への銅イオンの正抽出及び油相から水相への銅イオンの逆抽出を行うことで、それぞれのケースの評価を行った。なお、各実施例では、実験装置と実験操作のみを説明し、評価については最後にまとめて説明した。
[第1実施例]
海島デバイスを用いたときの各液の縞模様の流動の観察と正抽出実験 なお、ここで、縞模様とあるが、これについては後述する。
「実験装置」
図1及び図4の海島デバイス、反応管及び分離デバイス等を用い、各々の諸元を次のように設定した。
・流出口の内周(海部)の直径 2.5mm
・島部の直径 260μm
・島部の数 7
・島部の断面積/海部の断面積 1:9.3
・反応管の内周の直径 4mm
・反応管の長さ(LSM) 10cm
・分離デバイスの体積 8ml
・分離デバイスにおける二液の界面面積 2cm2
「実験操作」
この場合、第1流入口から水相を流す場合を「島部:水相」、第2流入口から油相を流す場合を「海部:油相」と称す。油相に、銅イオン抽出剤として1.44mol/Lリン酸ージー(2エチルへキシル)ヘキサン溶液を添加したものを用い、水相に、0.01mol/L 硫酸銅水溶液を用いて、液は、シリンジポンプを用いて一定流量で供給した。
また、反応管を垂直上向きに設置した場合を「上向き設置」、水平横向きに設置した場合を「横向き設置」と称し、「上向き設置」で「島部:水相」、流量比(水相:油相)=1:1の条件のときと、「横向き設置」で流量比(水相:油相)=1:1のときとで、「島部:水相」と「海部:油相」の条件について、0.5〜3ml/minの比較的遅い流速での水層と油層とが前後に塊状となって交互に流れる縞模様の流動状態について調べた。
さらに、反応管の最後の方で二液が完全に反応して水層と油層とが交互に流れる規則的な縞模様の流動状態になったときについて、水相から油相への銅イオンの正抽出実験を行った。回収した水相溶液と油相溶液を10mlメスシリンダーで量り採り、回収した水相銅イオン濃度Ca[Cu2+]mol/Lを原子吸光分光光度計で測定した。そして、抽出百分率E%を以下の(1)式より算出し、反応時間θminを反応管内での接触時間とし、以下の(2)式より算出した。また、回収した水相の銅イオン濃度をCa[Cu2+]mol/L、回収した油相の銅イオン濃度をCo[Cu2+]mol/L、回収した水相体積をVa L、回収した油相体積をVo L、反応管体積をVr Lとし、流出液の採取時間はtminである。さらに、反応管体積Vrは1.257×10-3Lである。
E[%]=[Co[Cu2+]×Vo/Co[Cu2+]+Ca[Cu2+]×Va]×100‥(1)

θ[min]=Vr/(Va+Vo)/t ‥(2)
[第2実施例]
合流部に海島デバイス及び従来から知られているY字管を使用し、反応管内にスタティックミキサを設置したときの正抽出実験
「実験装置」
上記の海島デバイスを使用するとともに、図5のスタティックミキサを使用し、その諸元を次のように設定した。なお、図7に示すものは、「上向き設置」によって反応管にスタティックミキサを組み込んだ装置である。
・エレメントの縦寸法 3.2mm
・ 〃 の横寸法 5.9mm
・スタティックミキサの長さ(LSM) 9.1cm
Y字管16については、図8に示すものを用いた。
「実験操作」
流量比(水相:油相)=1:1、流量3〜40ml/minで、合流部が海島デバイスとY字管のときのそれぞれの場合について、スタティックミキサのあるときとないときの正抽出実験を行った。
[第3実施例]
海島デバイスとスタティックミキサを用いての繰返し正抽出実験
「実験装置」
図7に示す装置を用いたが、反応管長を5cm、スタティックミキサの長さを4.8cmに変えてこれまでより小さな実験装置にした。
「実験操作」
二つの60mlシリンジに水相溶液と油相溶液とをそれぞれ満たし、「島部:水相」、流量比(水相:油相)=1:1、流量40ml/minの一定流量で装置に溶液を供給した。装置出口において、水相溶液と油相溶液をそれぞれ回収し、水相溶液3mlを測定用に採取した。残りの回収した二液をそれぞれシリンジに同量ずつ充填し、再び流量比(水相:油相)=1:1、流量40ml/minの一定流量で装置に溶液を供給した。はじめの溶液供給のときのデータを1st、二回目を2nd、三回目を3rdとして繰返し正抽出実験を行った。抽出百分率E%は(1)式で表し、反応時間θminは、反応管内での接触時間の累計とし、以下の(3)式で算出した。回収した水相体積をVa L、回収した油相体積をVoL、反応管体積をVrL、流出液の採取時間をt min、抽出操作の回数をNとする。また、反応管体積をVrLは、0.629×10-3Lである。
θ[min]=N・Vr/(Va+Vo)/t‥(3)
[第4実施例]
Y字管の合流部にプラスチック網を詰め、反応管にスタティックミキサを用いたときの逆抽出実験 これは、正抽出に比べて反応速度の遅い逆抽出を行うことで、条件の違いによる影響がより顕著に現れることを期待してのものである。
「実験装置」
図9に示す装置(「横向き設置」)を用いたが、反応管長は、5cmにおける4.8cmのものと、10cmにおける9.1cmの両方のものを使用した。この場合、海島デバイスは塩酸に対する耐蝕性が低いため、流動を乱す合流部としてY字管16の合流部にプラスチック網17を詰めたものを使用した。
「実験操作」
使用溶液として、水相溶液は1mol/L塩酸とし、油相溶液は銅イオン濃度1.8×10-3mol/Lのリン酸−ジ−(2エチルヘキシル)ヘキサン溶液を使用し、流量を3〜20ml/minまで変えることによる反応時間を変化させた逆抽出実験と、流量20ml/minの一定で繰返して逆抽出実験を行った。
また、比較のため、フラスコでの実験を行なった。30ml三角フラスコに水相溶液と油相溶液をそれぞれ10mlずつ入れてマグネティックスターラを用いてニ液の界面に滴の層が見られるぐらいの状態を保つように撹拌し、1.5、10、40分後について抽出百分率を測定した。
[第5実施例]
スタティックミキサを用いた装置の正抽出実験での抽出率の再現性についての実験
「実験装置」
Y字管とスタティックミキサを用いた図7の装置と、合流部にプラスチック網を詰めたY字管による図9に示す装置を用いての正抽出実験により、再現性について調べた。
「実験操作」
実験条件は、すべて流量比(水相:油相)=1:1、流量3〜40ml/minに揃え、合流部に普通のY字管を用いたときでは3回、合流部にプラスチック網を詰めたY字管を用いたときには2回正抽出実験を行なった。
[実験結果の考察]
1.海島デバイスによる二液の合流及び流動状態の観察
反応管が[上向き設置]の場合では、層の厚さ(前後長)が不均一な油層と水層の塊が交互にできる不規則な縞模様になった。このとき、油相が壁面を伝って上にある水層を追い越すような動きが確認できたので、表面張力や重力のためと思われる。図10に反応管が[横向き設置]のときの[海部:油相]で流量3ml/minでの流動の様子を示す。この場合は、二相が交互に等しい長さの層を形成する縞模様(層状)の流動が見られている。また、図11に反応管が[横向き設置]のときの[島部:水相]と[海部:油相]における反応時間θと抽出百分率Eについて示す。これにおいて、[海部:油相]で層状の流動をさせる抽出よりも[島部:水相]で水滴の分散相を作るときの抽出の方が1/3の反応時間で足りている(前者は0.6min、後者は0.2min)。このことより、この海島デバイスを使用した場合、層状の流動よりも液滴の分散相を作る流動の方が高い抽出率を得ることができるといえる。
2.合流部に海島デバイス、反応管内にスタティックミキサを用いたときの正抽出実験
図12 にスタティックミキサを用いた実験装置の正抽出実験の結果を示す。スタティックミキサは、10ml/min以上の高流速において、その性能を大きく発揮するといえる。また、「海島+LSM9.1」と「海島+SMなし」を比べると、10ml/minでスタティックミキサの有無は抽出率に影響を与えなかった。このことより、海島デバイスは、流量10ml/minでは、合流部での合流だけでスタティックミキサによって混合が十分に行われている程度の混合状態を呈しているといえる。また、合流部に海島デバイスを用いた方が、常に高い抽出率が得られていることから、予め流動を乱していた方がY字管で単純に二液を合流させるよりも、高い抽出率が得られるといえる。すなわち、この海島デバイスは、反応率の向上に有意義であることが確認できた。
3.海島デバイスとスタティックミキサを用いての繰返し正抽出実験
図13に流量を変えて反応時間を変化させた正抽出実験の結果と、同じ装置を用いて流量を3〜40ml/minまで変化させて一回だけ流して反応時間を変化させた「流量を変えたとき」の結果と合わせて、繰返し正抽出実験の結果を示した。「流量を変えたとき」では、抽出率70%となるまでに反応時間は約6secかかるが、流量40ml/minでの繰返し正抽出では約2.5secで70%を達成できる。このことより、高流速で流動を乱す方が高い反応率を得られることがわかる。
4.合流部にプラスチック網を詰めY字管を使用し、反応管にスタティックミキサを用いたときの逆抽出実験
実験結果を図14に示すが、ここでの「流量変」の流量は、それぞれプロットの左から20、10、5、3ml/minである。また、逆抽出に用いた二液10mLずつを30mLフラスコで、マグネチックスターラーにより、二液の界面に滴の層ができ始める程の状態で撹拌を行ったフラスコでの逆抽出実験についてを図15に示した。
図14より、流量20ml/minで繰り返し逆抽出を行った方が、同じ反応時間でも反応が早く進むことを顕著に見ることができる。また、フラスコでの実験と比較しても、フラスコでは抽出平衡に至る時間が約10minなのに対して、20ml/minで繰返し逆抽出を行ったときは約10secであり、かなり早い時間で抽出平衡に至っている。これらのことより、流動を乱し易い混合部+スタティックミキサのような撹拌器を用いて高流量で液を流せば、高い反応率が得られることがわかる。この点でも、海島デバイスの有益性が確認できる。
5.スタティックミキサを用いた装置の正抽出実験での抽出率の再現性についての実験
再現性についての実験結果を、横軸に反応時間、縦軸に抽出百分率をとったグラフで図16に示す。合流部にY字管のみの場合では、3回実験を行なった結果、10%ほど抽出率がばらついた。また、合流部にプラスチック網を詰めたY字管を用いた場合では、何もない通常のY字管を用いたものに比べてある程度の再現性が見られる結果となった。
6.まとめ
1)縞模様の流動のように、規則正しい層状の流れを作り、遅い流速で反応時間を長くするよりも、海島デバイスのような液を乱す(大きな界面面積を確保する)合流部と、スタティックミキサのように反応管での混合を促進するものを組み合わせて、早い流速で液を流し、細かく乱れた流動状態を作った方が高い反応率を得ることができる。このことより、本発明の海島デバイスは有意義であることがいえる。
2)スタティックミキサを用いて混合を行なう際に、混合前に流動を乱すような合流のさせ方によって流動を乱した方が、抽出率の再現性が高いことがわかった。この点でも、本発明にかかる海島デバイスは意義のあるものといえる。
海島合流デバイスの断面側面図である。 図1のAーA拡大断面図である。 垂直上向きの反応管を使用したマイクロリアクタの説明図である。 水平横向きの反応管を使用したマイクロリアクタの説明図である。 スタティックミキサの説明図である。 海島合流デバイスの他の例を示す断面側面図及び流出口部分の拡大断面図である。 垂直上向きの反応管にスタティックミキサを組み込んだマイクロリアクタの説明図である。 合流部にY字管を使用して水平横向きの反応管にスタティックミキサを組み込んだマイクロリアクタの説明図である。 合流部にプラスチック網を詰めたY字管を使用して水平横向きの反応管にスタティックミキサを組み込んだマイクロリアクタの説明図である。 水平横向きの反応管中を流動する液の縞模様を示す説明図である。 水平横向きの反応管中を流動する液の縞模様とそのときの正抽出結果である。 海島合流デバイス又はY字管+スタティックミキサ有無のときの抽出結果である。 海島合流デバイス+反応管での繰返し抽出結果である。 プラスチック網を詰めたY字管+スタティックミキサを用いたときの逆抽出結果である。 フラスコでの逆抽出結果である。 スタティックミキサを用いた装置での正抽出の再現性についての正抽出結果である。
1 海島合流デバイス
2 筐体
3 第1流入口
4 第2流入口
5 流出口
6 ノズル
7 ノズル形成体
8 反応管
9 分離デバイス
10 シリンジポンプ
11 シリンジポンプ
12 スタティックミキサ
12a左エレメント
12b右エレメント
13 第二ノズル
14 第二ノズル形成体
15 第3流入口
16 Y字管
17 プラスチック網
a 島部
b 海部

Claims (5)

  1. 上流側から第1及び第2流入口を順に配し、下流側に流出口が形成された筐体内で第1及び第2流入口から別々に供給される二つの反応液を接触させて筐体内を流通させながら反応させるマイクロリアクタにおいて、筐体内に、筐体内の第1流入口と第2流入口の間を複数のノズルが形成されたノズル形成体で仕切り、第1流入口から一の反応液を供給してノズルの下流直後にノズルの形状に即した流体である島部とするとともに、ノズル形成体の下流における第2流入口から他の反応液を供給して海部とし、島部と海部とを合流させる一方、筐体を各反応液が合流した時点から下流側に向かって先細りにして流出口に続けた海島合流デバイスを設けたことを特徴とするマイクロリアクタ。
  2. 各ノズルが同一又は異種の形状をしている請求項1のマイクロリアクタ。
  3. 各ノズルの断面形状が円形をしている請求項1又は2のマイクロリアクタ。
  4. 各ノズルの断面形状が非円形をしている請求項1又は2のマイクロリアクタ。
  5. 第2流入口の下流にノズル形成体のノズル径よりも大きな径を有するノズルが形成された第2ノズル形成体を挿設するとともに、第2ノズル形成体の下流に第3流入口を形成する構成を順に構築し、各流入口からそれぞれ反応液を供給して三以上の反応液を合流させて反応させる請求項1〜4いずれかのマイクロリアクタ。
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