(第1の実施の形態)
以下、適宜図面を参照して、本発明に係る第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る識別情報記録システムの一形態を示したブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態における識別情報記録システムは、光ディスク原盤D1を製造し、この光ディスク原盤D1から複数の光ディスクD2を製造する光ディスク製造装置600と、識別情報の光ディスク原盤D1への記録を管理する識別情報記録管理装置700とから構成される。
映画スタジオMSは、光ディスクに記録するコンテンツを暗号化後、オーサリングして、オーサリングされたコンテンツを光ディスク製造装置600へ送付する。このようにして、映画スタジオMSは、光ディスクに記録するコンテンツを光ディスク製造装置600に提供する。
光ディスク製造装置600は、コンテンツ及び識別情報を光ディスク原盤D1に記録する光ディスク原盤記録装置601と、光ディスク原盤記録装置601で記録した識別情報記録済光ディスク原盤D1を、複数の光ディスク基盤に転写して、複数の光ディスクD2を製造する光ディスク原盤複製装置602とから構成される。ここで、識別情報は、光ディスク原盤記録装置601ごとに固有に付与されている装置固有情報を含み、光ディスクD2にコピーの困難な形態で記録される。
光ディスク原盤記録装置601は、保持部603、通信部604、識別情報生成部605、識別情報記録部606及び記録制御部607を備える。映画スタジオMSからコンテンツが送付され、このコンテンツを含む光ディスク原盤D1に識別情報を記録する前に、通信部604は、光ディスク原盤記録装置601の保持部603が装置ごとに固有に保持している装置固有情報を識別情報記録管理装置700へ出力する。
識別情報記録管理装置700は、識別情報再生部701、登録部702及び判定部703を備える。識別情報記録管理装置700の判定部703は、光ディスク原盤記録装置601からの装置固有情報を基に、装置固有情報を保持する光ディスク原盤記録装置601によって識別情報の記録が可能かを判定して、記録が可能と判定した場合は、光ディスク原盤記録装置601へ利用承認を出力する。
光ディスク原盤記録装置601の記録制御部607は、識別情報記録管理装置700から利用承認を通知されると、識別情報生成部605及び識別情報記録部606による光ディスク原盤D1への識別情報の記録動作を制御する。識別情報生成部605は、光ディスク原盤記録装置601に固有の装置固有情報を基に、光ディスク原盤D1に記録する識別情報を生成し、識別情報記録部606は、映画スタジオMSからのコンテンツとともに、識別情報を光ディスク原盤D1に記録する。
光ディスク原盤複製装置602は、光ディスク原盤記録装置601によって製造された識別情報記録済みの光ディスク原盤D1を、複数の光ディスク基盤に転写して、複数の光ディスクD2を製造する。
識別情報記録管理装置700の識別情報再生部701は、光ディスクD2等を再生して、当該光ディスクに記録されている識別情報を抽出する。具体的には、識別情報再生部701は、市場に流通する光ディスクのうち、映画スタジオMSなどの著作権者によって不正と判別された光ディスクを再生して、不正ディスクに記録された識別情報を抽出する。
識別情報記録管理装置700の登録部702は、不正ディスクから抽出した識別情報に付与されている装置固有情報を抽出して、識別情報を記録した光ディスク原盤記録装置601を特定し、この装置固有情報をブラックリストとして登録する。
ブラックリストに装置識別情報を登録された光ディスク原盤記録装置601の通信部604は、光ディスク原盤にコンテンツ情報と識別情報とを記録する前に、保持部603に保持されている光ディスク原盤記録装置601の装置ごとに固有の装置固有情報を識別情報記録管理装置700へ通知する。
識別情報記録管理装置700の判定部703は、光ディスク原盤記録装置601から、装置固有情報が通知されると、登録部702に持つブラックリスト内に、通知された装置固有情報が登録されているかを判定する。
判定部703は、光ディスク原盤記録装置601から通知された装置固有情報がブラックリストに登録されていない場合は、光ディスク原盤記録装置601へ、光ディスク原盤に識別情報の記録を許可する利用承認(記録制御情報)を送信する。一方、判定部703は、光ディスク原盤記録装置601から通知された識別情報がブラックリストに登録されている場合には、光ディスク原盤記録装置601に利用承認を送信しない。よって、識別情報記録管理装置700のブラックリストに登録された装置固有情報を保持する光ディスク原盤記録装置601は、以降、光ディスク原盤D1に少なくとも識別情報の記録を行うことができない。
上記のように、本実施の形態では、光ディスクにコピーの困難な形態で識別情報を記録することができるとともに、識別情報を記録するための光ディスク原盤記録装置601を不正に使用して光ディスク原盤が作成された場合でも、以後、不正使用された光ディスク原盤記録装置601による識別情報の記録動作を無効化できるため、不正ディスクの拡散を最小限に抑えることができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態による識別情報記録システムについて説明する。図2は、本実施の形態に係る光ディスク原盤への識別情報を記録するための識別情報記録システムの一実施の形態の例の概要を示すブロック図であり、管理サーバ1と記録装置2とが、汎用のネットワークNWなどによって互いに通信可能に接続されている構成を示す。
管理サーバ1は、識別情報再生装置10、無効装置固有情報登録部11、通信部12、制限解除判定部13、解除情報作成部14及び暗号化部15を備える。また、識別情報再生装置10は、再生部101及び装置固有情報抽出部102を備える。
管理サーバ1は、映画会社などの著作権者CRなどによって持ち込まれた不正なコンテンツの記録された光ディスク100から、その識別情報を読み出して管理する。管理サーバ1は、記録装置2からの記録制限解除要求に従って、記録制限解除要求を出した記録装置2による識別情報の記録に関する制限が解除可能かを判定して、解除可能である場合にのみ制限解除情報(記録制御情報)を記録装置2へ送信する。
記録装置2は、識別情報記録装置20、マスタリング装置21及び通信部22を備える。記録装置2は、映画会社などの著作権者CRから持ち込まれた映画タイトルなどのコンテンツ情報と識別情報とを光ディスク原盤200に記録する。
識別情報記録装置20は、装置固有情報記憶部209、乱数生成部201、識別情報生成部202、記録制限部204、制限記憶部205、記録制限判定部206、解読部207及び制限解除部208を備える。識別情報記録装置20は、光ディスク原盤200に、識別情報が記録可能かを判定して、識別情報の記録が制限されている場合には、管理サーバ1に制限の解除を要求する。
初めに、市場に流通している光ディスクが、著作権者CRによって不正ディスクであると判定された場合の、不正ディスクを作成した識別情報記録装置20の識別情報の登録手順を説明する。
まず、映画会社などの著作権者CRによって、市場に流通している光ディスクのうち、不正に製造された光ディスク100が管理サーバ1に持ち込まれると、識別情報再生装置10の再生部101は、光ディスク100から識別情報を読み出して装置固有情報抽出部102へ出力する。
次に、図3〜5によって管理サーバ1の識別情報再生装置10における再生部101を詳細に説明する。なお、図3〜5では、光ディスクに凹凸マークによって記録されたコンテンツ情報や光ディスクの管理情報を主情報、また、凹凸マークをラジアル方向に変位して記録される識別情報を副情報として説明する。
図3は、図2に示す再生部101の主要部を示したブロック図である。図3に示すように、再生部101は、再生ヘッド1101、再生チャネル1102、クロック抽出器1103、再生信号処理回路1104、乱数発生器1105、PE(Phase Encoding)変調器1106、TE信号AD変換器1107及び副情報検出器1108を備えている。
再生ヘッド1101は、光ディスク100上の記録マークに光ビームを集光して照射し、その反射光をフォトディテクタにより電気信号に変換することによって、記録マークにより記録された情報の再生信号であるRF信号を生成し、再生チャネル1102へ出力する。これとともに、再生ヘッド1101は、記録マークのラジアル変位を示すアナログTE(トラッキング誤差)信号を生成し、TE信号AD変換器1107へ出力する。アナログTE信号は、光ディスク100上に螺旋状に記録された記録マークの中心位置に光ビームの中心位置を追従させた結果として得られる信号である。
図4は、図3に示す再生ヘッド1101において記録マークのラジアル方向の変位を示すアナログTE信号を生成するための主な構成を示すブロック図である。
再生ヘッド1101は、光学系1202により、光ディスク100上の記録マークに焦点が合うように、半導体レーザ1201からの出射光を集光させる。また、光学系1202は、光ディスク100に照射するレーザビームと光ディスク100からの反射光とを分離し、フォトディテクタ1203、1204は、上記の反射光を電気信号へ変換する。フォトディテクタ1203、1204は、記録マークの中心線に対し、外周側及び内周側に対称に設けられている。フォトディテクタ1203、1204は、外周側あるいは内周側のそれぞれで反射光の明度を電気的に判別するので、フォトディテクタ1203の信号レベルとフォトディテクタ1204の信号レベルとの差分を取ることによって、記録マークのラジアル方向への変位を抽出することができ、記録マークのラジアル変位を示すアナログTE信号ATEを得ることができる。
通常、トラッキングサーボにより、記録マークの中心位置にレーザビームの中心がトラッキングしているが、例えば、記録マークが外周方向へ変位している場合には、フォトディテクタ1203で感知する反射光の方が、フォトディテクタ1204よりも高いため、アナログTE信号ATEとして“+”電位が出力される。一方、記録マークの中心位置が内周側へ変位している時、フォトディテクタ1203で感知する反射光の方が、フォトディテクタ1204よりも低いため、“−”電位がアナログTE信号ATEとして出力される。また、このようなTE信号は、記録マークのアナログの読み取り信号であるRF信号と同帯域で出力される。
再び、図3を参照して、再生チャネル1102は、再生ヘッドからのRF信号に対して波形等化や整形を行うことによりRF信号をデジタル読み出し信号に変換し、クロック抽出器1103及び再生信号処理回路1104へ出力する。
クロック抽出器1103は、再生チャネル1102によってデジタル化されたデジタル読み出し信号からこのデジタル読み出し信号に同期したクロック信号を抽出するためのPLL(Phase Locked Loop)回路を内蔵している。また、クロック抽出器1103は、後に述べる再生信号処理回路1104からの同期信号のタイミングで、PLL回路から抽出したクロック信号を16分周することによって、デジタル読み出し信号の16ビット単位に同期したバイトクロックと、デジタル読み出し信号の16ビット単位に前8ビット“High”、後8ビット“Low”となるPE信号とを生成する。クロック抽出器1103は、バイトクロックを再生信号処理回路1104、乱数発生器1105、TE信号AD変換器1107及び副情報検出器1108へ出力し、PE信号をPE変調器1106へ出力する。
再生信号処理回路1104は、再生チャネル1102からのデジタル読み出し信号とクロック抽出器1103からのバイトクロックとから、同期符号が検出されたことを示す同期信号を生成し、上記の同期符号の検出位置を基準として、デジタル読み出し信号を16ビット単位で1バイト(8ビット)の主情報に復調することにより、主情報MIを再生する。また、再生信号処理回路1104は、デジタル読み出し信号から同期符号を検出した結果として生成される同期信号を、クロック抽出器1103、乱数発生器1105及び副情報検出器1108へ出力する。
乱数発生器1105は、マスタリング装置21の後述する乱数発生器403と同一の機能を有し、再生信号処理回路1104からの同期信号の“High”のタイミングで、内部に秘密に記憶している初期値をプリセットして、クロック抽出器1103からのバイトクロックのタイミングで乱数系列(相関系列)を1ビットずつ発生させ、PE変調器1106へ出力する。
また、再生信号処理回路1104は、上記の同期符号から、現在再生しているセクタ内のフレーム番号を判断し、セクタ内の第1フレーム、第26フレーム及び同期符号が検出される区間で“Low”、上記以外のデータ部では“High”となる相関検出許可信号を生成し、副情報検出器1108へ出力する。
PE変調器1106は、マスタリング装置21の後述するPE変調器405と同一の機能を有し、排他的論理和ゲートにより構成され、乱数発生器1105からの乱数系列(相関系列)とクロック抽出器1103からのPE信号との排他的論理和を算出することにより、PE変調相関系列を生成し、副情報検出器1108へ出力する。
TE信号AD変換器1107は、再生ヘッド1101からのアナログTE信号をクロック抽出器1103からのバイトクロックのタイミングでサンプリングしてデジタル信号へ変換する。AD変換されたデジタルTE信号は、副情報検出器1108へ出力される。
副情報検出器1108は、クロック抽出器1103からのバイトクロックと、再生信号処理回路1104からの同期信号及び相関検出許可信号と、PE変調器1106からのPE変調相関系列と、TE信号AD変換器1107からのデジタルTE信号とを基に、副情報SIを検出する。
図5は、図3に示す副情報検出器1108の構成を示すブロック図である。図5に示すように、副情報検出器1108は、セレクタ1301、副情報更新タイミング生成器1302、レベル積分器1303及びしきい値判定器1304を備えている。
セレクタ1301は、TE信号AD変換器1107によって出力されたデジタルTE信号DTEを、PE変調器1106からのPE変調相関系列PEに応じてレベル変換し、レベル積分器1303へ出力する。なお、本実施の形態では、デジタルTE信号DTEは、記録マークが中心位置にある場合を0レベルとし、かつ、外周側へ記録マークが変位している時には“+”レベル、内周側へ記録マークが変位している時には“−”レベルとし、かつ、2の補数表現をとる。
セレクタ1301は、デジタルTE信号DTEに対して、例えば、PE変調器1106からのPE変調相関系列PEが“1”の場合には、“+”レベルは“+”レベル、“−”レベルは“−”レベルとそのままの状態で、レベル積分器1303へ出力する。逆に、PE変調相関系列PEが“0”の場合には、“+”レベルは“−”レベルへ、“−”レベルは“+”レベルへと反転させた状態で、レベル積分器1303へ出力する。
副情報更新タイミング生成器1302は、クロック抽出器1103からのバイトクロックCLKと、再生信号処理回路1104からの同期信号SSとをカウントすることにより、再生しているセクタ内のフレーム番号を算出し、セクタ内の第1及び第26フレームを除いた全24フレーム内で、3フレーム単位に副情報を更新するタイミング信号を生成し、レベル積分器1303及びしきい値判定器1304へ出力する。
レベル積分器1303は、再生信号処理回路1104からの相関検出許可信号RAが“High”の区間において、セレクタ1301から出力される、一部反転された2の補数表現のデジタルTE信号の積分値を算出する。また、レベル積分器1303は、副情報更新タイミング生成器1302から3フレームに一度出力される副情報更新タイミング信号のタイミングで、積分結果をしきい値判定器1304へ出力するとともに、レベル積分器1303内部の積分値をクリアする(0にする)。
従って、レベル積分器1303の出力は、PE変調相関系列PEが“1”で且つデジタルTE信号DTEが“+”レベル、あるいはPE変調相関系列PEが“0”で且つデジタルTE信号DTEが“−”レベルの場合に、積分値として正の値へ増加し続ける。一方、レベル積分器1303の出力は、PE変調相関系列PEが“1”でデジタルTE信号DTEが“−”レベル、あるいはPE変調相関系列PEが“0”でデジタルTE信号DTEが“+”レベルの場合に、積分値として負の値へ減少し続ける。
しきい値判定器1304は、内部に正のしきい値及び負のしきい値を記憶しており、レベル積分器1303から3フレーム毎へ出力される積分値を上記の正負のしきい値によるしきい値判定を行うことにより、副情報SIの有無を示す検出フラグDFと副情報SIが存在する場合には、その副情報SIを出力する。
しきい値判定器1304のしきい値判定処理において、レベル積分器1303から出力された積分値が正のしきい値以上である場合には、副情報SIとしてビット値“0”が出力されるとともに、検出フラグとして“High”が出力される。また、積分値が負のしきい値以下である場合には、副情報SIとしてビット値“1”が出力されるとともに、検出フラグDFとして“High”が出力される。一方、積分値が正のしきい値に満たず、かつ、負のしきい値よりも大きい場合(すなわち、正負のしきい値に比べ、0付近の積分値)である場合には、副情報SIが検出されなかったことを表すために、検出フラグDFとして“Low”が出力される。
図6は、図2に示す再生部101で再生された識別情報の一例の構成を示す概念図である。光ディスク100に記録された識別情報500は、上位ビットから、装置固有情報511、マスタリングメーカID512、乱数513、マスタリング日時514及びマスタリング回数515で構成される。
装置固有情報511は、識別情報500を記録した、あるいは記録のための信号生成を行った識別情報記録装置20を識別するための装置ごとに固有の情報である。マスタリングメーカID512は、光ディスク100を製造するための光ディスク原盤を製造した製造メーカに固有のID情報である。乱数513は、光ディスク100を製造するための光ディスク原盤に固有の情報として、光ディスク原盤の作成ごとに固有となる乱数値である。マスタリング日時514は、光ディスク100を製造するための光ディスク原盤を作成したタイムスタンプ情報である。マスタリング回数515は、光ディスク原盤ごとに唯一の識別情報を生成した回数であり、識別情報記録装置20によって光ディスク原盤を作成した回数を表す情報と同意である。
再び、図2を参照して、再生部101によって再生された識別情報500は、装置固有情報抽出部102へ出力され、装置固有情報抽出部102によって識別情報500内の装置固有情報511が抽出され、無効装置固有情報登録部11へ出力される。
無効装置固有情報登録部11は、装置固有情報抽出部102によって抽出された装置固有情報511を登録する。なお、無効装置固有情報登録部11は、装置固有情報抽出部102から装置固有情報511が出力されるたびに、それらを追加登録する。すなわち、映画会社等の著作権者CRによって判別された、市場に流通する不正ディスクの光ディスク原盤を製造したメーカが保有する識別情報記録装置20の装置固有情報511が、無効装置固有情報登録部11に順次登録される。以上が、不正ディスクの識別情報500を記録した識別情報記録装置20の装置固有情報511の登録手順である。
以上のように、管理サーバ1の無効装置固有情報登録部11には、不正ディスクを作成した識別情報記録装置20すなわち記録装置2を識別するための装置固有情報511が蓄積される。
次に、記録装置2を中心として、光ディスク原盤200に識別情報を記録する手順を説明する。まず、映画会社などの著作権者CRは、光ディスク原盤の製造メーカ(マスタリングメーカと同意)にテープ型記録装置300に記録したコンテンツ情報を送付し、光ディスク原盤の製造依頼を行う。製造依頼を受けたマスタリングメーカは、コンテンツの記録されたテープ型記録装置300を記録装置2のコンテンツ情報記録部210に入力する。
コンテンツ情報記録部210は、テープ型記録装置300に記録されているコンテンツ情報を基に当該コンテンツ情報のコンテンツ記録信号を生成して、カッティング部212へ出力するとともに、コンテンツ情報を記録するときの所定間隔ごとに同期符号を付与するタイミングを示す同期信号を識別情報記録部211へ出力する。
識別情報記録部211は、コンテンツ情報記録部210からの同期信号と、識別情報生成部202からの識別情報とに基づいて識別情報記録信号を生成してカッティング部212へ出力する。カッティング部212は、識別情報記録部211からの識別情報記録信号と、コンテンツ情報記録部210からのコンテンツ記録信号とに基づいて、光ディスク原盤200を作成する。
ここで、図2に示すマスタリング装置21の主なブロック構成を図7に示す。前述のように、マスタリング装置21は、コンテンツ情報記録部210、識別情報記録部211及びカッティング部212で構成されるが、ここでは、さらに詳細な構成要素を提示して説明するとともに、コンテンツ情報を主情報MI、識別情報を副情報SIとして説明する。
図7に示すマスタリング装置21は、タイミング生成器401、変調器402、乱数発生器403、XOR回路404、PE変調器405、記録チャネル406、ラジアル変調器408及び記録ヘッド407を備えている。マスタリング装置21は、光学的に読み取り可能な記録マークを光ディスク原盤200(例えば、DVD)上に螺旋状に形成することによって主情報MIを記録するとともに、主情報MIのフレーム単位に同期符号を挿入するタイミングを基準に生成した変位制御信号に従って、上記記録マークをラジアル方向に微少量変位させることによって副情報SIを記録する装置である。
タイミング生成器401は、主情報MIの記録のための基準クロック信号である記録クロックRCを受け、同期信号、バイトクロック、変位許可信号及びPE信号を生成する。タイミング生成器401は、生成した同期信号を変調器402、乱数発生器403及びXOR404回路へ、バイトクロックを乱数発生器403へ、変位許可信号をラジアル変調器408へ、PE信号をPE変調器405へ、それぞれ出力する。
ここで、同期信号は、記録クロックRCから作成され、変調器402が主情報MIを変調した結果に対して一定の間隔ごとに同期符号を挿入するタイミングを示す信号であり、DVDでは記録するフレーム先頭から32クロック区間を示す信号である。バイトクロックは、記録する主情報MIのバイト単位(16記録クロック分)に同期するクロック信号であり、DVDでは記録クロックを16分周することにより生成される。変位許可信号は、第1及び第26フレーム及び同期符号を付与するタイミングのみ“Low”となる信号であり、DVDでは変調器402によって同期符号を挿入するタイミング、及び記録するセクタ内の第1及び第26フレームの区間において“Low”となり、上記以外の区間で“High”となる信号である。PE信号は、記録する主情報のバイト単位(16記録クロック分)の前8ビットが“High”、後8ビットが“Low”となり、8クロック“High”後に8クロック“Low”を繰り返す信号である。
変調器402は、記録する主情報MIをバイト(8ビット)単位で16ビット情報へ変換(8−16変調)するとともに、タイミング生成器401からの同期信号が“High”の区間に同期符号を挿入することにより、チャネルコードを生成する。そして、変調器402は、そのチャネルコードをNRZI変換することによってチャネル信号を生成して記録チャネル406へ出力する。
乱数発生器403は、タイミング生成器401からの同期信号及びバイトクロックから、擬似乱数系列を生成し、XOR回路404へ出力する。XOR回路404は、擬似乱数系列と、記録する副情報SIとの排他的論理和を算出する部分であり、変位制御信号を生成してPE変調器405へ出力する。
PE変調器405は、XOR回路404から出力された変位制御信号と、タイミング生成器401から出力されたPE信号とから、PE変調変位制御信号を生成し、ラジアル変調器408へ出力する。PE変調器405は、排他的論理和ゲートにより構成される。
記録チャネル406は、変調器402からのチャネル信号の“1”、“0”に従って、光ディスク原盤200(例えば、DVD)に露光する記録ビームを“ON”又は“OFF”させる制御信号を生成し、記録ヘッド407へ出力する。記録ヘッド407は、記録チャネルからの“ON”又は“OFF”信号に基づいて光ディスク原盤200上に記録ビームを照射して記録マークを形成することによって、主情報MIを記録する。
ラジアル変調器408は、記録ヘッド407の近傍に設けられた電極409に印加される電圧を制御することによって、記録ヘッド407から光ディスク原盤200へ照射される記録ビームを屈折させる。これにより、記録マークをラジアル方向に微少量ずらせて記録することができる。よって、PE変調器405から入力されるPE変調変位制御信号に基づいて、照射する記録ビームをラジアル方向に屈折させて、記録マークの形成位置をラジアル方向に変位させることによって、副情報SIが記録される。
次に、図2を参照して、マスタリング装置21によって記録される識別情報の生成手順について説明する。識別情報は、装置固有情報記憶部209に記憶された、識別情報記録装置20の装置ごとに固有な装置固有情報と、乱数生成部201で生成した乱数系列と、記録制限部204内の時計204aからのタイムスタンプ情報と、カウンタ204bからの光ディスク原盤のマスタリング回数とから、図6に示す識別情報500の構成で生成される。
識別情報記録装置20の装置固有情報記憶部209は、外部からのアクセスによって更新することのできない形態で、装置固有情報を記録している。例えば、装置固有情報は、ROM型のメモリに記憶されたり、識別情報記録装置20を構成するいずれかのLSI回路内に埋め込まれる形態で記憶されている。従って、悪意の有る第三者によって装置固有情報が書き換えられ、識別情報記録装置20が他の識別情報記録装置に成りすましたり、装置固有情報によって識別情報記録装置20を識別できなくするといった不正行為を防止することができる。
識別情報生成部202は、記録制限判定部206が識別情報の記録を可能と判断した場合のみ、識別情報を生成してマスタリング装置21の識別情報記録部211へ出力する。記録制限判定部206は、光ディスク原盤200へ識別情報を記録不可能と判断した場合には、識別情報生成部202による識別情報の生成動作を停止させたり、生成した識別情報をマスタリング装置21の識別情報記録部211へ出力することを停止させたりする。
記録制限部204は、内部に時計204aとカウンタ204bとを有する。時計204aは、計時動作を実行し、現在時間を管理したり、識別情報の総記録時間あるいは稼働時間を管理する。カウンタ204bは、識別情報を光ディスク原盤に記録した回数を管理する。記録制限判定部206は、光ディスク原盤200への識別情報の記録が可能と判断した場合には、時計204aが管理する現在時間、識別情報の総記録時間及び稼働時間、並びにカウンタ204bが管理している識別情報の記録回数を識別情報生成部202へ出力する。記録制限部204は、識別情報生成部202へ時間情報やカウンタ情報を出力すると、内部のカウンタ204bを“+1”して更新する。あるいは、光ディスク原盤200への識別情報の記録の完了時にカウンタ204bをインクリメントする形態でもよい。
制限記憶部205には、光ディスク原盤200に識別情報を記録するための許可情報が記憶されており、識別情報を記録することが可能な期間を示す許容期間や、識別情報を記録することが可能な回数を示す許容回数が内部に記憶されている。
記録制限判定部206は、識別情報生成部202の識別情報の生成動作前又は生成動作中に、記録制限部204から時計204aの時計情報及びカウンタ204bの回数情報(制限情報)と、制限記憶部205から識別情報を生成可能な許容期間及び許容回数(許容情報)とを参照して、光ディスク原盤200に識別情報が記録可能かを判定する。
詳細には、記録制限判定部206は、記録制限部204の時計204aの示す時期が、制限記憶部205の許容期間以内である場合には、光ディスク原盤200へ識別情報の記録が可能であると判定して、識別情報生成部202に識別情報の生成を許可する。また、記録制限判定部206は、記録制限部204のカウンタ204bの示す識別情報の生成回数が制限記憶部205の許容回数以内である場合には、光ディスク原盤200へ識別情報の記録が可能であると判定して、識別情報生成部202に識別情報の生成を許可する。
一方、記録制限部204の時計204aの示す現在時間やカウンタ204bの示す識別情報の生成回数が制限記憶部205に記憶した許容期間や許容回数を超える場合には、識別情報生成部202での識別情報の生成、あるいは識別情報記録部211への識別情報の出力を許可しない。よって、このような場合には、光ディスク原盤200に識別情報を記録することが不可能であるので、正規の光ディスクの製造が不可能となる。
また、記録制限判定部206は、識別情報生成部202による識別情報の生成が不可能と判定した場合には、識別情報の記録の制限を解除する要求である制限解除要求を生成して通信部22へ出力する。
通信部22は、記録制限判定部206から制限解除要求を受け取ると、装置固有情報記憶部209に記憶している識別情報記録装置20の装置固有情報を含む記録制限解除要求を生成し、管理サーバ1との秘匿通信ネットワークNWを確立して記録制限解除要求を管理サーバ1へ送信する。なお、秘匿通信ネットワークNWとしては、SSL(Secure Socket Layer)による暗号通信やVPN(Virtual Private Network)による仮想的なプライベートネットワークが利用可能であり、これにより、管理サーバ1と記録装置2との間に、途中改ざんや盗聴などを防止できる安全なネットワーク接続を確立できる。
管理サーバ1の通信部12は、記録装置2の通信部22から記録制限解除要求を受信すると、記録制限解除要求に含まれる要求元の記録装置2の識別情報記録装置20に対応した装置固有情報を抽出して制限解除判定部13及び暗号化部15へ出力する。
制限解除判定部13は、通信部12から受け取った記録制限解除要求内の要求元の装置固有情報を入力されると、要求元の装置固有情報が無効装置固有情報登録部11に登録されているか否かを判定する。制限解除判定部13は、要求元の装置固有情報が無効装置固有情報登録部11に登録されていなければ、その装置固有情報を持った識別情報記録装置は有効であると判断して、以後、制限解除手順を実施する。一方、制限解除判定部13は、要求元の装置固有情報が無効装置固有情報登録部11に登録されている場合には、その装置固有情報を持った識別情報記録装置は無効であると判断して、制限解除手順は実施しない。
すなわち、前述の無効装置固有情報登録手順でも説明したように、無効装置固有情報登録部11には、映画会社などの著作権者CRによって判別された市場に流通している不正光ディスク100から抽出した、その不正光ディスク100の光ディスク原盤を製造した識別情報記録装置を特定する装置固有情報が登録されている。よって、無効装置固有情報登録部11に登録されている装置固有情報を持った識別情報記録装置は不正使用されている可能性が極めて大きく、以後、識別情報の記録動作を認めるべきではない。
従って、制限解除判定部13は、要求元の装置固有情報が無効装置固有情報登録部11に登録されている場合には、以後の識別情報の記録を行わせないように記録制限解除要求を破棄する。一方、制限解除判定部13は、要求元の装置固有情報が無効装置固有情報登録部11に登録されておらず、記録制限解除要求を認可できると判定した場合には、制限解除承認を解除情報作成部14へ出力する。
解除情報作成部14は、制限解除判定部13からの制限解除承認を受領すると、識別情報記録装置20にて識別情報を記録するための制限を解除する制限解除情報を作成する。本実施の形態では、一例として、解除情報作成部14は、
(1)識別情報記録装置20の記録制限部204の時計204aを初期化する解除情報
(2)識別情報記録装置20の記録制限部204のカウンタ204bを初期化する解除情報
(3)識別情報記録装置20の制限記憶部205の許容期間を延長する解除情報
(4)識別情報記録装置20の制限記憶部205の許容回数を延長する解除情報
を制限解除情報として作成して、暗号化部15へ出力する。
暗号化部15は、通信部12から記録制限解除要求とともに受信した要求元の装置固有情報を受け、要求元の装置固有情報を暗号鍵として、解除情報作成部14の作成した制限解除情報に暗号化を行って暗号化制限解除情報を生成し、通信部12へ出力する。通信部12は、暗号化制限解除情報を受け取ると、管理サーバ1と記録制限解除要求を受け取った記録装置2と同一の記録装置2との間に秘匿通信ネットワークNWを確立する。ネットワークNWが確立すれば、通信部12は、暗号化部15で生成した暗号化制限解除情報を記録装置2に送信する。
記録装置2の通信部22は、管理サーバ1の通信部12から暗号化制限解除情報を受信して、識別情報記録装置20の解読部207へ出力する。解読部207は、通信部22から暗号化制限解除情報を入力されると、装置固有情報記憶部209に記憶している識別情報記録装置20の装置固有情報を読み出し、この装置固有情報を解読鍵として、暗号化制限解除情報を解読して制限解除情報に復調し、制限解除部208へ出力する。
制限解除部208は、入力された制限解除情報に応じて以下の動作を行うことによって、識別情報生成部202による識別情報の生成、あるいは識別情報の識別情報記録部211への出力に対する制限を解除する。
例えば、制限解除情報が、(1)識別情報記録装置20の記録制限部204の時計204aを初期化する解除情報である場合には、識別情報記録装置20の記録制限部204の時計204aを初期化して、時計204aの示す時間を、制限記憶部205に記憶している許容期間の範囲内に再設定し、識別情報を記録する制限を解除する。
また、制限解除情報が、(2)識別情報記録装置20の記録制限部204のカウンタ204bを初期化する解除情報である場合には、識別情報記録装置20の記録制限部204のカウンタ204bを初期化して、カウンタ204bの示す、識別情報を生成したカウント値を、制限記憶部205に記憶している許容回数の範囲内に再設定し、識別情報を記録する制限を解除する。
また、制限解除情報が、(3)識別情報記録装置20の制限記憶部205の許容期間を延長する解除情報である場合には、前記制限記憶部205に記憶している許容期間を延長し、識別情報を記録する制限を解除する。
また、制限解除情報が、(4)識別情報記録装置20の制限記憶部205の許容回数を延長する解除情報である場合には、制限記憶部205に記憶している許容回数を延長し、識別情報を記録する制限を解除する。
以上の一例に示すいずれかの方法で、記録制限部204の時計204a若しくはカウンタ204b、又は制限記憶部205の許容回数若しくは許容期間が初期化、再設定又は更新されることによって、記録制限判定部206で、識別情報生成部202による識別情報の生成又は識別情報記録部211への識別情報の出力が許可され、光ディスク原盤200に識別情報が記録される。
以上のように、本識別情報記録システムを利用することによって、映画会社などの著作権者CRが判定した不正光ディスク100を製造した識別情報記録装置を特定し、その装置固有情報が管理サーバ1内に登録されるとともに、光ディスク原盤200の記録装置2は、予め与えられた時間又は回数の範囲で光ディスク原盤に識別情報を記録することが可能となる。
また、記録装置2は、予め与えられた期間又は回数の範囲を超過したときには、管理サーバ1に制限の解除を要求し、管理サーバ1は、不正ディスクから登録した装置固有情報を持った識別情報記録装置である場合には、制限の解除要求には応じず、不正利用経歴のない識別情報記録装置と判別したときのみ、制限の解除要求に応じる。
よって、識別情報記録装置20を不正に利用して光ディスクを製造して流通させた光ディスク製造メーカは、一時的に許容範囲で光ディスク原盤が利用できるものの、許容範囲を超過した場合には、以後、光ディスク原盤を作成することができず、不正ディスクの流通拡大を防止することができる。
ここでは、さらに理解を深めるために、実際に起こりえる問題に対して、具体的に本実施の形態における識別情報記録システムの有効性を示す事例を述べる。
(事例)
映画会社Aは、映画タイトルCの光ディスクへのパッケージ化を行うよう光ディスク製造会社Bに光ディスク製造依頼を出した。映画会社Aからの光ディスク製造要望は、1万枚であったのに対し、光ディスク製造会社Bは、5万枚を製造し、差分4万枚を闇で流通させた。よって、映画タイトルCの光ディスクの流通価格が予想外に下落した。映画会社Aは、市場調査を実施し、市場に映画タイトルCが5万枚流通していることを確認したが、光ディスク製造会社Bは姿をくらました。
この場合、従来までは、光ディスク原盤を作成できる情報を握った光ディスク製造会社Bによって、これから無尽蔵の映画タイトルCの記録された光ディスク原盤が作成されることになる。しかしながら、本実施の形態における識別情報記録システムを利用すれば、次のように不正ディスクの不正流通に歯止めをかけることが可能となる。
映画会社Aは、市場から映画タイトルCの光ディスクを管理サーバ1に持ち込む。管理サーバ1は、映画タイトルCの光ディスクの識別情報を再生して、その識別情報から、識別情報を記録した識別情報記録装置20の装置固有情報を抽出し、無効装置固有情報登録部11に登録する。一方、光ディスク製造メーカは、光ディスク原盤を作成し、識別情報の生成回数、あるいは光ディスク原盤の作成回数に応じて、以後、識別情報記録装置20による識別情報の生成が不可能となる。
よって、光ディスク製造会社Bの保有する識別情報記録装置20から、管理サーバ1に制限の解除要求がなされるが、光ディスク製造メーカBの保有する識別情報記録装置20の装置固有情報は、管理サーバ1の無効装置固有情報登録部11に登録されているため、制限解除要求は棄却される。すなわち、光ディスク製造会社Bは、以後、光ディスク原盤を作成することができなくなるので、不正ディスクの流通に歯止めがかかる。
以上のように、本実施の形態における識別情報記録システムを利用すれば、識別情報記録装置20を保有する光ディスク製造会社の不正行為によって、不正ディスクが市場に流通した場合においても、不正ディスクによる被害を最小限にとどめることができる。
なお、光ディスク原盤に記録する識別情報は、光ディスクに記録するコンテンツを暗号化するための暗号化鍵としてもよい。このときは、記録装置2のコンテンツ情報記録部210において、識別情報生成部202で生成した識別情報によって暗号化して記録する形態でもよいし、識別情報生成部202で生成した識別情報を、映画会社やオーサリングハウスに送信して、映画会社から前記識別情報で暗号化したタイトル情報をテープ型記録装置300などで受け取ってもよい。
この場合には、光ディスク原盤上の凹凸マークをラジアル変位して記録される、本実施の形態の識別情報などでは、海賊版メーカなどによって不正に複製されないというメリットがあるので、識別情報をタイトルの暗号化のための暗号鍵として利用することによって不正コピーを防止し、かつ不正な製造メーカを抑止するという2つの効果が得られる。
なお、図6の識別情報で説明したマスタリングメーカIDのように、識別情報の中に光ディスク原盤製造メーカを特定できる識別子(メーカ識別情報)を付与することが望ましい。これによって、識別情報記録装置20だけでなく、それを利用する光ディスク原盤製造メーカの特定も可能となるので、管理サーバ1に、無効装置固有情報登録部11と並列して、無効光ディスク原盤製造メーカ識別子登録部を設けることによって、複数の識別情報記録装置20を保有する光ディスク製造メーカに対して、その全ての識別情報記録装置20からの制限解除要求を棄却できるので、さらに、不正ディスクの被害を最小化できる。
また、記録装置2は、装置固有情報記憶部209と並列して、光ディスク製造メーカを特定できる光ディスク製造メーカ識別子(メーカ識別情報)を記録するメーカ識別子記憶部を設けることが望ましい。この場合、本実施の形態で述べた識別情報記録装置20の装置固有情報の一部を光ディスク製造メーカ識別子で構成して、管理サーバ1は、装置固有情報によって制限の解除の判定を行うと同時に、光ディスク製造メーカ識別子によっても制限の解除の判定を行うことができる。なお、これらの装置識別情報や光ディスク製造メーカ識別子は、識別情報記録装置20を製造及びライセンスする識別情報記録装置メーカによって設定される。
また、本実施の形態の管理サーバ1の暗号化部15及び識別情報記録装置20の解読部207は、識別情報記録装置20の装置固有情報を鍵として暗号化及び解読を行う形態で説明した。これは、装置の内部に秘密に且つ書き換え不可能に構成した、装置固有情報記憶部209で厳重管理されたものを鍵として使用することで、識別情報記録装置20の成りすましを防止できるメリットがある。しかしながら、この目的を達成するためには、異なる方法も考えられる。例えば、管理サーバ1の通信部12と記録装置2の通信部22とで、互いに持つ証明書情報に準じて相互認証を行った後、暗号化鍵のシェアリングを行うことで、成りすましのできない高度にセキュリティを確保可能な形態を実現できる。
また、識別情報内に映画会社などを示す著作権者識別子を含むことも有効である。これは、劇場映画をビデオカメラなどで撮影して、その撮影したコンテンツを基に光ディスクを製造して、流通された場合に、撮影したコンテンツを提供した映画会社(海賊映画会社)のコンテンツでは、制限の更新ができずに、不正コンテンツを提供する映画会社から提供されるコンテンツを光ディスク原盤に記録することを制限できる。
また、本実施の形態では、識別情報記録装置20内の識別情報生成部202によって識別情報を生成する形態で説明したが、これに限られない。例えば、識別情報の生成を管理サーバ1側で行う形態でもよいし、第3者機関が識別情報の生成を行う形態でもよい。この場合、管理サーバ1側や第3者機関によって、映画会社などの著作権者識別子や、光ディスク原盤製造メーカ識別子を発行する形態が望ましい。
また、識別情報記録装置20の制限記憶部205の許容回数は、複数回でもよいし、1回でもよい。1回と指定すれば、光ディスク原盤を作成するたびに、管理サーバ1に制限解除を依頼する必要があり、光ディスク原盤作成の1枚ごとに管理サーバ1によって、それを管理可能となるので、不正ディスクの流通を極限に減らすことができる。
また、本実施の形態では、光ディスク原盤の作成のための記録制限を、マスタリング回数、光ディスク原盤の作成回数、識別情報の生成回数、マスタリング期間、光ディスク原盤の作成期間、及び識別情報の生成期間を束縛する形態で説明したが、これに限られない。この本質は、不正ディスクが製造された識別情報記録装置20を、以後、ある一定許可範囲内でのみ使用可能とするものである。よって、この目的を達成するあらゆる制限は、本発明の範囲である。
次に、本実施の形態の識別情報記録システムの動作について説明する。図8は、本実施の形態の識別情報記録システムにおける管理サーバ1と記録装置2の動作の流れを示したフローチャートである。
まず、記録装置2による識別情報の記録前に、記録制限判定部206は、マスタリング回数が許容回数の範囲内か(S001)、現在時間がマスタリングの許可された許容期間内か(S002)を判定する。
マスタリング回数及びマスタリング期間がともに許容範囲内であれば、識別情報生成部202は、光ディスク原盤200に記録する識別情報を生成する(S003)。識別情報は、装置固有情報記憶部209に記憶された識別情報記録装置20の装置固有情報、乱数生成部201で生成した乱数系列、記録制限部204内の時計204aの示す現在時間やカウンタ204bの示すカウンタ情報を含めて生成される。
生成した識別情報は、識別情報記録部211へ出力され、光ディスク原盤200に記録される(S004)。識別情報記録部211が光ディスク原盤200に識別情報を記録した後、記録制限部204は、カウンタ204bを“+1”して、マスタリング回数をインクリメントする(S005)。
一方、ステップS001又はS002で、マスタリング回数が許容範囲を超過している、又は現在時間がマスタリングを行うための許容範囲外であると判定された場合には、記録制限判定部206は、管理サーバ1に送信する制限解除要求を作成する(S006)。
記録装置2の通信部22は、装置固有情報記憶部209に記録されている識別情報記録装置20の装置固有情報を制限解除要求に付加して、記録制限解除要求を管理サーバ1の通信部12へ送信する(S007)。
送信された記録制限解除要求は、管理サーバ1の通信部12によって受信される(S008)。なお、管理サーバ1と記録装置2とは、VPNやSSL通信を利用することによって、データの改変や盗聴を防止できる安全な通信路としてネットワーク接続を確立する。
次に、管理サーバ1の制限解除判定部13によって、受信した装置固有情報がブラックリストBLに登録されているかを判定する(S009)。なお、ブラックリストBLとは、管理サーバ1内の無効装置固有情報登録部11に登録されている情報を指す。
ステップS009で、受信した装置固有情報がブラックリストBLに登録されていると判定された場合は、管理サーバ1の通信部12は、受信した制限解除要求を拒否する通知を記録装置2へ送信する(S010)。記録装置2の通信部22は、管理サーバ1が送信した制限解除要求の拒否を受信する(S011)。
記録装置2の通信部22が制限解除要求の拒否を受信すると、識別情報生成部202の識別情報の生成、又は生成した識別情報の識別情報記録部211への出力が禁止され、光ディスク原盤200への識別情報の記録が制限される。また、識別情報記録装置20が管理サーバ1のブラックリストBLに登録されていることを図示しない表示装置等に表示して警告表示を行う(S012)。
一方、ステップS009で、受信した装置固有情報がブラックリストBLに登録されていないと判定された場合には、解除情報作成部14は、記録装置2において識別情報の記録制限を解除するための制限解除情報を作成する(S013)。
解除情報作成部14によって作成された制限解除情報は、管理サーバ1の通信部12によって記録装置2へ送信される(S014)。送信された制限解除情報は、記録装置2の通信部22で受信される(S015)。
制限解除情報を受信すると、識別情報記録装置20の制限解除部208は、記録制限部204の時計204a及びカウンタ204bなどの時間情報や回数情報を初期化したり、又は制限記憶部205の識別情報の記録可能な許容期間や許容回数を更新することによって、識別情報を記録するための記録制限を解除する(S016)。
制限解除部208によって識別情報を記録するための制限が解除されると、識別情報生成部202は、識別情報を生成する(S003)。生成した識別情報は、識別情報記録部211へ出力され、光ディスク原盤200に記録される(S004)。識別情報記録部211が光ディスク原盤200に識別情報を記録した後、記録制限部204は、カウンタ204bを“+1”して、マスタリング回数をインクリメントする(S005)。
以上のように、本実施の形態における識別情報記録システムを利用すれば、記録装置2は、予め与えられた制限範囲の中でしか識別情報を記録することができない。記録装置2は、識別情報を記録するための制限範囲を超過すると、制限の解除要求を管理サーバ1へ送信する。管理サーバ1は、解除要求元の識別情報記録装置20を、解除要求に付随している装置固有情報を基に判定する。管理サーバ1は、受信した装置固有情報が管理サーバ1のブラックリストBLに登録されているかを判定して、登録されていないときのみ制限の解除情報を作成して記録装置2へ送信する。記録装置2は、管理サーバ1から制限の解除情報を受信すると、識別情報を記録するための制限を解除して、光ディスク原盤200に識別情報を記録することができる。
なお、管理サーバ1に登録されているブラックリストBLは、映画会社などの著作権者によって持ち込まれた不正ディスクに記録された、その不正ディスクを記録した識別情報記録装置20の装置固有情報のリストである。従って、不正ディスクが判明すると、その不正ディスクを記録した装置固有情報が、管理サーバ1にブラックリストBLとして登録されるので、以後、その装置固有情報をもつ識別情報記録装置20からの制限解除要求が来たとしても、その要求を排除することが可能となって、不正ディスクを作成した識別情報記録装置20の識別情報の記録動作を無効にすることができるので、不正ディスクの流通を最小限に食い止めることが可能となる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図9は、本実施の形態における識別情報記録システムの特徴的な機能ブロックを示したブロック図である。
図9に示す識別情報記録システムは、識別情報再生装置10、管理装置50、識別情報通知装置60、識別情報受領装置70及び識別情報記録装置80によって構成される。
識別情報再生装置10は、再生部101及び装置固有情報抽出部102で構成され、映画会社などの著作権者によって持ち込まれた不正光ディスク100の識別情報を再生して、不正光ディスク100の識別情報を記録した識別情報記録装置80の装置固有情報を特定し、無効装置固有情報登録部501へ出力する装置で、第2の実施の形態で示した図2における識別情報再生装置10と同等の構成であり、ここでは詳細な説明を省略する。
管理装置50は、識別情報の記録を制限された識別情報記録装置80の装置固有情報を入力して、その装置固有情報を持つ識別情報記録装置80の制限の解除が可能であるかを判定する装置であり、無効装置固有情報登録部501、装置固有情報入力部502、制限解除判定部503、識別情報生成部504及び署名付与部505で構成される。
無効装置固有情報登録部501は、不正ディスクの識別情報を再生して抽出した、不正ディスクの識別情報を記録した識別情報記録装置80を特定できる装置固有情報を登録するデータベースである。
装置固有情報入力部502は、識別情報の記録を制限された識別情報記録装置80の装置固有情報を入力する部分であり、本実施の形態では、キー入力によって、装置固有情報を入力する形態を示す。なお、装置固有情報の入力形態は、これに限定されない。例えば、電子メール、郵送あるいは電話等を通して通知される装置固有情報を入力する形態でもよいし、識別情報記録装置80とネットワーク接続によって、識別情報の記録を制限された識別情報記録装置80の装置固有情報を通知する形態でもかまわない。また、半導体メモリ、光ディスクなどの可搬媒体を利用する場合には、装置固有情報入力部502は、それらの可搬媒体に対応した再生装置という形態になる。これら、いずれかの方法によって入力された装置固有情報は、制限解除判定部503へ出力される。
制限解除判定部503は、装置固有情報入力部502に入力された装置固有情報が、無効装置固有情報登録部501に既に登録されているかを判定する。もし、既に無効装置固有情報登録部501に登録されている場合には、その装置固有情報を持った識別情報記録装置80によって不正ディスクが製造されたことになるので、以後の処理を中止して、識別情報記録装置80の識別情報記録のための制限の解除を行わない。一方、無効装置固有情報登録部501に登録がない場合には、識別情報の生成許可を識別情報生成部504へ出力する。
識別情報生成部504は、制限解除判定部503から識別情報の生成許可を入力されると、装置固有情報入力部502で入力された装置固有情報に基づいて識別情報を作成する。この識別情報の作成方法は、第2の実施の形態と同様に、入力された装置固有情報に乱数系列を付与して作成したり、装置固有情報に識別情報を生成するたびにカウントするカウント値を付与したり、図示しない時計から日時・時間情報を入力して装置固有情報に付与して生成する。また、識別情報生成部504で生成する識別情報は、1つとは限らず、複数の識別情報をまとめた識別情報リストを生成してもよい。生成した識別情報は、署名付与部505へ出力される。
署名付与部505は、管理装置50内部に秘密にもつ秘密鍵に基づいて、識別情報生成部504で生成した識別情報にデジタル署名を付与する。デジタル署名の付与された識別情報は、識別情報通知装置60へ出力される。
識別情報通知装置60は、管理装置50から入力される識別情報を識別情報受領装置70へ通知する装置であり、可換媒体記録部61が、入力された識別情報を半導体メモリや光ディスクなどの可搬媒体SDに記録する形態や、email作成部62が、入力される識別情報を含む電子メールMLを作成して、識別情報受領装置70へ通知する形態で構成される。
なお、本実施の形態では、可搬媒体SDや電子メールMLによって、識別情報受領装置70に、管理装置50が生成した識別情報を通知する形態で説明したが、これに限らない。識別情報通知装置60の本質は、管理装置50にて生成された識別情報を識別情報受領装置70へ通知することであり、可換媒体や電子メール以外に、郵送、FAXあるいは電話による通知でもかまわない。
識別情報受領装置70は、識別情報通知装置60から可搬媒体SDや電子メールMLによって通知された識別情報を識別情報記録装置80へ出力する装置であり、可換媒体アクセス部71が、可搬媒体SDによって通知された識別情報を再生し、再生した識別情報を識別情報記録装置80へ出力する形態や、受信部72が、電子メールMLで通知された識別情報を受信し、受信した識別情報を識別情報記録装置80へ出力する形態でも構わない。
なお、識別情報受領装置70の本質は、識別情報通知装置60によって通知された識別情報を識別情報記録装置80へ出力することであり、識別情報通知装置60と識別情報受領装置70とがネットワークを介して識別情報を直接受信して、受信した識別情報を識別情報記録装置80へ出力する形態でもよいし、例えば、識別情報通知装置60から郵送、FAX、電話等で識別情報を通知される形態では、識別情報受領装置70は、オペレータのキー操作によって、通知された識別情報を入力して、入力した識別情報を識別情報記録装置80へ出力する形態でも構わない。
識別情報記録装置80は、識別情報受領装置70が識別情報通知装置60から通知されて受領した識別情報を、光ディスク原盤200に記録する装置であり、メモリ801、識別情報記録制御部802、署名検証部803、識別情報生成部804、識別情報記録部805及びスイッチ806で構成される。
メモリ801は、識別情報受領装置70で受領した識別情報を記憶するメモリである。メモリ801が半導体メモリや記録再生可能な光ディスクなどの可搬媒体である場合には、可換媒体に記録されている識別情報のメモリによる記憶が完了した後、可換媒体の記憶内容を消去することが望ましい。また、一度使用した識別情報と同一の識別情報がメモリ801に入力されると、メモリ801での記憶を拒否することが望ましい。一度使用した識別情報が二度と使用できない形態とすることが必要である。
識別情報記録制御部802は、メモリ801に識別情報が記録されていないと判断すると、識別情報生成部804の生成した識別情報が識別情報記録部805へ出力されることを避けるために、識別情報出力禁止をスイッチ806へ出力して、スイッチ806が識別情報生成部804と識別情報記録部805との接続を切ることにより、識別情報生成部804の生成した識別情報が光ディスク原盤200へ記録されることを禁止する。
署名検証部803は、メモリ801から1つの識別情報を読み出し、付随するデジタル署名情報を内部に持った公開鍵情報を用いて署名検証を行う。この公開鍵は、管理装置50の内部に持った秘密鍵に対応した公開鍵である。署名検証部803は、署名検証部803でメモリ801から読み出した識別情報に付随したデジタル署名検証が、正規署名でないと判断された場合には、以後の処理を中断したり、再度、メモリ801から識別情報を読み出して、署名検証を実施したりする。署名検証部803で、正規の署名であると判断された場合のみ、デジタル署名部を削除した識別情報が識別情報生成部804へ出力される。
識別情報生成部804は、署名検証をパスした識別情報に、識別情報記録装置80の内部に持った識別情報記録装置80に固有の装置固有情報を付与して、識別情報記録部805へ出力する。
識別情報記録部805は、識別情報生成部804が自身の装置固有情報を付与することによって生成した識別情報を光ディスク原盤200に記録する装置であり、第2の実施の形態における図2の識別情報記録部211を含むマスタリング装置21と同等の構成であるので、ここでは詳細な説明を省略する。また、識別情報記録部805は、光ディスク原盤200への識別情報の記録が完了すると、記録の完了した識別情報をメモリ801から消去する。
以上のように、本実施の形態における識別情報記録システムは、識別情報記録装置80によってメモリ801に記憶された識別情報を1つずつ光ディスク原盤に記録して、記録の完了した識別情報をメモリ801から消去する。従って、自ずと識別情報記録装置80で記録できる光ディスク原盤の枚数が制限される。
また、メモリ801に記録可能な識別情報がないと識別情報記録制御部802が判断すると、管理装置50へ自身の装置固有情報を通知して、識別情報を入手する必要がある。この管理装置50への装置固有情報の通知方法は、
(1)識別情報記録装置80の識別情報記録制御部802と、管理装置50の装置固有情報入力部502とが互いに通信可能に接続され、ネットワークの確立によって装置固有情報を識別情報記録装置80から管理装置50へ通知する形態
(2)半導体メモリや光ディスクなどの可換媒体を介して通知する形態(この場合、装置固有情報入力部502は、可換媒体へのアクセス部を有する機能ブロックとなる)
(3)郵送、FAX及び電話などを利用して識別情報記録装置80の装置固有情報を管理装置50側のオペレータに通知して、管理装置50のキー操作によって、通知された装置固有情報を入力する形態
など、いずれの方法でもかまわない。
管理装置50は、入力された装置固有情報が無効装置固有情報登録部501にブラックリストとして登録されていないことを判断して、識別情報を生成し、可換媒体や電子メール等を利用して、識別情報記録装置80へ通知する。識別情報記録装置80は、管理装置50から識別情報が通知されると、それをメモリ801に格納して、光ディスク原盤200への識別情報の記録動作を再開する。
このようにすれば、市場に不正ディスクが流通すると、その不正ディスクの識別情報を再生することにより、識別情報内に記録された装置固有情報から、不正ディスクを作成した識別情報記録装置80を特定し、その装置固有情報を無効装置固有情報登録部501にブラックリストとして登録することができる。
一度、ブラックリストに登録されると、登録されている装置固有情報をもつ識別情報記録装置80へは、記録可能な識別情報を通知することを禁止し、結果として、不正ディスクを作成した識別情報記録装置80は、二度と識別情報の記録を行うことができなくなり、不正ディスクの流通拡散を最小限に抑えることができる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図10は、本発明の第4の実施の形態における識別情報記録システムを利用した光ディスクへの暗号化コンテンツの暗号化記録システムを示すブロック図であり、本実施の形態における暗号化記録システムは、鍵管理機構KK、ID記録制御サーバSV、ID生成装置GN、オーサリング装置AT、記録装置KS、及び光ディスクDKの再生装置PBで構成される。
鍵管理機構KKは、コンテンツを暗号化するときに用いるメディア鍵の生成、再生装置PBが保持するデバイス鍵を生成する機構であり、メディア鍵生成部KK1、デバイス鍵生成部KK2、暗号化部KK3、MKB生成部KK4及び署名付与部KK5を備える。
まず、鍵管理機構KKのメディア鍵生成部KK1は、メディア鍵を生成し、デバイス鍵生成部KK2は、デバイス鍵を生成し、暗号化部KK3は、生成されたメディア鍵を生成されたデバイス鍵で暗号化する。メディア鍵は、乱数によって生成されたり、内部に保持する秘密鍵に一方向性関数によってデータ変換させたりするなどして生成される。生成されたメディア鍵は、オーサリング装置ATに送付され、コンテンツの暗号化に用いられる。デバイス鍵は、乱数によって生成されたり、内部に保持する秘密鍵に一方向性関数によってデータ変換させたりするなどして生成される。デバイス鍵は、識別情報を付与されて、鍵管理機構KKごとに固有又は鍵管理機構KKを製造するメーカごとに固有となるように生成される。
全てのデバイス鍵によって暗号化された暗号化メディア鍵は、MKB生成部KK4によって、MKB(Media Key Block)というデータ形式に変換されて生成される。MKBは、鍵管理機構KKから発行されるすべてのデバイス鍵によって、一連の処理を経て、正規のメディア鍵を生成できるデータブロックである。なお、不正規の再生装置PBや、内部がハッキングされた再生ソフトなどが流通すれば、それらに対応したデバイス鍵では、正規のメディア鍵を出力しないようにMKBを再作成し、以後、流通させる光ディスクでは、新規に作成されたMKBを記録することによって、前述の不正再生ドライブやハッキングソフトによる再生を無効化する働きをする。
署名付与部KK5は、作成されたMKBに、内部に持つ秘密鍵SKによってデジタル署名を付与する。これによって、秘密鍵を知らない者からのMKBの改ざんを防止する。デジタル署名は、例えば、楕円暗号アルゴリズムなどの公開鍵アルゴリズムを用いて生成される。署名の付与されたMKBは、記録装置KSへ出力される。
ID生成装置GNは、光ディスクに記録する識別情報となるスタンパIDを生成する装置である。まず、ID生成装置GNの装置ID送信部GN1は、スタンパIDを生成する前に、ID生成装置GNの内部に保持する装置ID(装置固有情報)をID記録制御サーバSVの装置ID受信部SV1へ送信し、装置ID受信部SV1は、ID生成装置GNから装置IDを受信する。
また、ID記録制御サーバSVは、流通した不正光ディスクの識別情報となるスタンパIDを再生して、再生したスタンパIDから、このスタンパIDを生成したID生成装置GNを特定し、このID生成装置GNに対応した装置IDをスタンパIDから抽出して登録する無効装置固有情報登録部SV2を内部に持つ。よって、無効装置固有情報登録部SV2に登録される装置IDは、不正に使用されたID生成装置GNの装置IDのブラックリストである。
ID記録制御サーバSVのスタンパID記録制御部SV3は、ID生成装置GNから装置ID受信部SV1を介して装置IDを受信すると、無効装置固有情報登録部SV2に登録されているブラックリストとの比較によって、受信した装置IDがブラックリストに登録されていないかを判定して、登録されている場合には識別情報記録停止指令を、登録されていない場合には識別情報記録許可指令を、ID生成装置GNのスイッチGN3及びスイッチGN4へ出力する。また、ID生成装置GNのスタンパID生成部GN2は、ID生成装置GNが保持する装置IDに基づいてスタンパID(識別情報)を生成する。
ID生成装置GNのスイッチGN3は、ID記録制御サーバSVから識別情報記録停止指令を受信した場合には、生成されたスタンパIDを抹消して、以後の処理を中断し、識別情報記録許可指令を受信した場合には、生成されたスタンパIDを記録装置KSへ出力する。また、ID生成装置GNのスイッチGN4は、ID記録制御サーバSVから識別情報記録停止指令を受信した場合には、生成されたスタンパIDを抹消して、以後の処理を中断し、識別情報記録許可指令を受信した場合には、生成されたスタンパIDをオーサリング装置ATへ出力する。
オーサリング装置ATは、映画会社などの著作権者からコンテンツを入手し、暗号化して、オーサリングする装置である。まず、オーサリング装置ATのコンテンツ入力部AT1は、映画会社などから入手されたコンテンツ情報300を入力する。
次に、オーサリング装置ATのタイトル鍵生成部AT2は、入力したコンテンツを暗号化するためのタイトル鍵を生成する。このタイトル鍵は、乱数によって生成したり、コンテンツごとの固有値を選択したりして生成される。
また、オーサリング装置ATのメディア鍵変換部AT3は、一方向性関数(暗号化アルゴリズムにおける一方向データ変換モード)を用いて、鍵管理機構KKから入力されたメディア鍵をID生成装置GNから入力されたスタンパIDでデータ変換することにより、スタンパ鍵を生成する。
生成されたタイトル鍵は、暗号化部AT4により、スタンパ鍵で暗号化されるとともに、入力されたコンテンツは、暗号化部AT5により、生成されたタイトル鍵で暗号化される。暗号化されたタイトル鍵と、暗号化されたコンテンツとは、オーサリング部AT6によって、記録する光ディスクの種類に応じて、DVD形式、Blu−rayディスク形式、又はHD−DVD形式にオーサリングされる。オーサリングされた暗号化情報は、記録装置KSへ出力される。
記録装置KSは、鍵管理機構KKからのMKB、ID生成装置GNからのスタンパID及びオーサリング装置ATからの暗号化情報を光ディスク原盤に記録する装置である。記録装置KSは、第2の実施の形態における図2のマスタリング装置21と同様の構成であり、MKB記録部KS1及び暗号化情報記録部KS3は、MKB及び暗号化情報をコンテンツ情報(主情報)として凹凸マークによって光ディスク原盤に記録し、スタンパID記録部KS2は、暗号化情報記録部KS3から同期タイミング信号を受け、スタンパID(DK2)を識別情報(副情報)として、上記凹凸マークをラジアル方向に変位することによって光ディスク原盤に記録する。このように、製造した光ディスク原盤の凹凸マークを、ポリカーボネートなどの光ディスク基盤に転写するによって、光ディスクDKが製造され、光ディスクDKは、コンテンツ情報(主情報)として凹凸マークによって記録されたMKB(DK1)及び暗号化情報DK3と、識別情報(副情報)として上記凹凸マークをラジアル方向に変位することによって記録されたスタンパID(DK2)を有する。
従って、ID生成装置GNによってスタンパIDを不正に生成することにより、不正ディスクを作成した場合は、その不正ディスクが市場から回収され、ID記録制御サーバSVに持ち込まれることによって、不正使用されたID生成装置GNを特定する装置IDが、ID記録制御サーバSVの無効装置固有情報登録部SV2に登録され、以後、スタンパIDの生成が禁止される。これによって、不正ディスクの被害を最小限にすることができる。
再生装置PBは、光ディスクDKから暗号化されたコンテンツを再生して復号化することにより、コンテンツCNを再生する装置である。再生装置PBのMKB再生部PB1は、光ディスクDKがロードされる起動時に、光ディスクDKから署名を付与されたMKB(DK1)を再生する。MKB(DK1)は、光ディスクDK内のコントロールデータ領域やユーザ領域に凹凸マークとして記録されている。
再生装置PBの署名検証部PB2は、再生装置PBの内部に保持する公開鍵によって、MKBに付随するデジタル署名の検証を行う。署名検証部PB2は、検証の結果、正規の署名でない、すなわち、途中でMKBが改ざんされている場合や、鍵管理機構KK以外から発行されたMKBであると判断した場合には、以後の再生操作を中断する。一方、デジタル署名の検証の結果、MKBに改ざん等がないと判断された場合には、署名検証部PB2は、デジタル署名部を削除し、MKB復号処理部PB3は、MKBと内部に保持するデバイス鍵DKとのMKB復号処理によって、メディア鍵を抽出する。なお、鍵管理機構KKによって、無効化されているデバイス鍵では、メディア鍵の抽出を行うことができず、結果として、コンテンツの再生が行えない。
また、再生装置PBのスタンパID再生部PB4は、光ディスクDKの凹凸マークのラジアル変位からスタンパID(DK2)を再生する。次に、メディア鍵変換部PB5は、一方向性関数などを用いて、MKB復号処理によって抽出されたメディア鍵を、再生されたスタンパIDでデータ変換することにより、スタンパ鍵を生成する。このデータ変換は、オーサリング装置ATにおけるメディア鍵変換部AT3と同様の機能である。
また、再生装置PBの暗号化情報再生部PB7は、光ディスクDKのユーザ領域から、暗号化情報DK3として暗号化タイトル鍵DK3aと暗号化コンテンツDK3bとを再生する。復号化部PB6において、再生された暗号化タイトル鍵は、スタンパ鍵によって復号され、復号化部PB8において、再生された暗号化コンテンツは、復号されたタイトル鍵で復号され、コンテンツCNが再生される。
以上のように、本実施の形態における識別情報記録システムを利用すれば、ID記録制御サーバSVによって無効化されていないID生成装置GNで生成したスタンパIDによって、コンテンツが暗号化されるとともに、スタンパIDは光ディスクDKに記録される。よって、不正ディスクを作成したなどとして、ID記録制御サーバSVによって無効化されているID生成装置GNは、コンテンツを暗号化する鍵であるスタンパIDを出力することができず、光ディスクDKにスタンパIDを記録することが不可能になるので、正規の光ディスクを製造することが不可能となる。
上記の各実施の形態では、記録マークである凹凸マークをラジアル方向に変位させて識別情報を光ディスク原盤に記録したが、この識別情報の光ディスク原盤への記録形態について、詳細に説明する。光ディスク原盤の識別情報の記録された領域のラジアル方向における位置は、識別情報を記録しない場合に形成されるピットの位置に対して、微少量に相当する変位量だけ内周側(又は外周側)にずれている。なお、微少量は、再生時に観察されるノイズに埋もれる量であり、実際には、顕著にずれた位置にピットが形成されるものではない。
従って、上記の各実施の形態における識別情報記録システムは、光ディスク原盤上に形成する記録マークをラジアル変位することによって識別情報を記録し、光ディスク原盤から作成された光ディスクの再生装置は、記録マークのラジアル変位をトラッキングエラー信号によって読み出して、識別情報を再生する。なお、識別情報は、今までに説明してきたように、識別情報を記録した識別情報記録装置20等を特定するための装置固有情報が含まれる形式で記録されている。
なお、本発明に用いられる識別情報の記録方法は、上記の記録マークのラジアル変位だけに限られない。例えば、識別情報を重畳して形成した記録マークのトラック方向における2つのエッジそれぞれの位置が、識別情報が重畳されていない場合に形成されるピットのエッジ位置に対して、一定の微少時間に相当する変位量だけ位相が進んだ(又は遅れた)位置にずれて形成されるようにしてもよい。
すなわち、前述のように識別情報を記録マークのラジアル方向への変位によって記録するのではなく、記録マークのエッジ位置を進めた位置又は遅らせた位置に変位させるタンジェンシャル変調で記録された形態である。このようなタンジェンシャル変調で識別情報を記録する場合には、識別情報に応じて、記録マークを形成するためのレーザ照射の立ち上げ位置や立ち下げ位置を時間軸上で進める又は遅らせることによって、光ディスク表面上に形成する記録マークのエッジ位置をタンジェンシャル方向に変位させることで実現できる。また、再生時には、記録マークに同期して生成するPLL(Phase Locked Loop)回路で生成するクロック信号に対して、再生信号の立ち上がり位置、又は立ち下がり位置が進んでいるか、又は遅れているかを判定することによって、識別情報を再生することができる。
また、本発明に用いられる識別情報の記録形態は、これらに限られない。説明したラジアル変位、タンジェンシャル変位だけではなく、深さや半径方向の幅を変化させることによって識別情報を記録する形態でもかまわない。この場合、記録装置では、レーザ強度やマルチパルスで記録するときのレーザ照射幅を変更することによって、識別情報を記録することができるし、再生時は、再生波形の変調度の変化から識別情報の再生が可能である。また、識別情報の記録は、上記のレーザに特に限定されず、電子ビーム等の他の光線を用いてもよい。
また、エラービットを特定領域に強制的に挿入することによって識別情報を記録することもできるし、記録マークを記録するときの変調則を通常とは異なるものに入れ替えて、識別情報を記録する形態でもよい。さらに、コントロール領域にコンテンツ情報とは異なる暗号方式を用いて、識別情報を記録してもよい。本質は、識別情報を記録又は再生するためのライセンスを受けないメーカによって容易に識別情報が記録できない形態であれば、どのような方法でもかまわない。