JP4776216B2 - 新規な植物細胞死誘導因子NbCD1 - Google Patents

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本発明は、新規な植物細胞死誘導因子に関する。より詳しくは、過剰発現により植物に細胞死を誘導するベンサミアナタバコ由来の新規植物細胞死誘導因子NbCD1に関する。
植物に細胞死を引き起こす因子は、特にバイオテクノロジーに関する2つの目的において重要である。その第一は、細胞死因子を用いて、植物に組織特異的に細胞死を誘導する目的であり、その第二は、同因子を用いて植物に病原菌侵入時特異的に細胞死を誘導する目的である。
第一の目的である組織特異的細胞死誘導が最も重要視されるのは、植物の花粉不稔化技術の場面である。現在までに数多くの遺伝子組換え植物が作出されているが、それらを一般圃場で栽培することに対しては反対意見がある。その最も大きな理由は、遺伝子組換え作物由来の花粉が飛散し、非組換え作物や近縁種に交雑する結果、組換え体作出に用いた遺伝子が生態系に拡散する可能性が懸念されるからである。こうした懸念を払拭する目的で、遺伝子組換え植物の雄性不稔化技術が検討されている。例えば、植物に細胞死を誘導する因子の遺伝子を葯特異的プロモーターもしくは花器特異的プロモーターに連結して、形質転換をおこなえば、不稔植物を作出することが可能である。実際、現在までにヒト由来の細胞死因子Baxを植物で発現させて不稔化する試みがなされている(非特許文献1)が、社会的受容の面で、植物由来の細胞死因子の利用が強く望まれている。
第二の目的である病原菌侵入時特異的細胞死誘導は、死細胞に病原菌を封じ込めることで、病気の拡大を防ぐことができるという点で重要である。すなわち、植物病理学でいうところの「過敏感細胞死」を人工的に誘発することにより耐病性の増強をはかることが可能になる。こうした背景から、植物由来の強力な細胞死因子が必要とされている。
第26回日本分子生物学会年会一般講演(ポスター)2PC-188, 河岡明義ら「部位特異的組換え系を用いた遺伝子発現制御による不稔化植物の開発」
近年、植物における遺伝子工学的手法の進歩により、外来遺伝子を組織特異的、環境特異的に発現させる技術が利用可能になってきた。こうした背景のもと、本発明は、新規な植物細胞死誘導因子の提供と、これを利用した植物における組織特異的、環境特異的な細胞死の誘導を目的とする。
本発明者らは、ベンサミアナタバコのcDNAライブラリーを作製し、各cDNAを過剰発現させた際に細胞死を誘導する遺伝子を網羅的にスクリーニングすることによって、強力な細胞死誘導因子NbCD1を単離した。
すなわち、本発明は、以下の(a)または(b)のDNAからなる植物に細胞死を誘導する因子NbCD1遺伝子を提供する。
(a)配列番号1で表される塩基配列を含むDNA
(b)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物細胞死誘導活性を有するタンパク質をコードするベンサミアナタバコ由来のDNA
前記NbCD1遺伝子は、以下の(c)、(d)または(e)のタンパク質をコードする。
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞死誘導活性を有するタンパク質
(e)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ植物細胞死誘導活性を有するタンパク質
但し、上記(d)および(e)において、NbCD1活性に不可欠なAP2ドメイン(配列番号2のアミノ酸番号20〜84)、AD(同200〜219)、EARモチーフ(同220〜226)の配列は保存されるものとする。
本発明は、上記(c)、(d)または(e)に示すNbCD1組換えタンパク質も提供する。
本発明はまた、本発明のNbCD1遺伝子を含むベクターを提供する。該ベクターは、本発明の遺伝子に機能しうる態様で連結されたプロモーターを含む。前記プロモーターとしては、構成性のプロモーターを使用してもよいが、条件特異的に活性化されて、その下流の遺伝子を発現させるプロモーターを用いることもできる。そのような条件特異的に活性化されるプロモーターの例としては、例えば、キャベツのBcp1遺伝子プロモーターなどの葯特異的プロモーターや、パセリのPR1遺伝子プロモーターなどの病原菌エリシター応答性プロモーター等を挙げることができる。
本発明はまた、前記ベクターを宿主に導入して得られる、形質転換体(宿主細胞)を提供する。
ある態様において、前記形質転換体は、本発明のNbCD1遺伝子を宿主植物に導入して得られる、トランスジェニック植物である。前記トランスジェニック植物において、本発明の遺伝子を条件特異的に活性化されるプロモーターに連結して導入すれば、宿主植物に条件特異的に細胞死を引き起こすことができる。本発明は、そのような植物に条件特異的細胞死を引き起こす方法や、条件特異的細胞死を起こすトランスジェニック植物も提供する。
本発明の新規細胞死誘導因子NbCD1は、植物において、組織特異的または環境特異的に細胞死を誘導することができる。これにより、遺伝子組換え植物の雄性不稔化や、過敏感細胞死の人工的誘発による植物の耐病性増強が可能になる。
1.植物細胞死誘導因子NbCD1
本発明は、過剰発現によって植物に細胞死を誘導する因子NbCD1に関する。
1.1 NbCD1のクローニング
植物にストレスやエリシター処理を施すと、時間をおいて細胞死が誘導されることが知られている。そこで、ストレスあるいはエリシター処理後、細胞死にいたる過程で植物において発現する遺伝子を対象として、目的とする植物細胞死誘導因子のスクリーニングを行った。
まず、対象とする植物に、細胞死を誘導するような処理、例えば、ストレスあるいはエリシター処理を施す。処理後の植物体またはその一部から、SDS-フェノール法等によりにより全RNAを抽出し、この全RNAからオリゴdT-セルロースやセファロース2Bを担体とするポリ U-セファロース等を用いたアフィニティーカラム法、あるいはバッチ法によりポリ(A)+RNA(mRNA)を得る。得られたmRNAは、必要に応じて、ショ糖密度勾配遠心法等によりをさらに分画してもよい。次いで、mRNAを鋳型として、市販のキット(例えば、SuperScriptTM Plasmid System with Gateway Technology for cDNA Synthesis and Cloningキット(Life Technology Co.))等を用いて、一本鎖cDNAを合成し、該一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する。得られた二本鎖cDNAは適切なアダプターを付加した後、転写活性化ドメインを含む植物発現用ベクター(例えば、pSfinX(Plant Journal 24:275-283)等)にサブクローニングし、さらにアグロバクテリウム(例えば、Agrobacterium tumefaciens)にクローニングして、cDNAライブラリーを作製する。
次に、cDNAライブラリーの各クローンを宿主植物体(例えば、植物の葉身等)に接種し、各遺伝子を一過的に過剰発現させる。そして、接種から1週間後に接種部位を観察し、細胞死が誘導されているクローンを選択する。選択されたクローンは、さらに液体培地で培養後、宿主植物体(例えば、植物の葉身等)にAgroinfiltrationし、数日間観察して、細胞死が誘導されることを確認する。かくして、植物細胞死誘導活性を有する複数のクローンが同定された。
1.2.植物細胞死誘導因子NbCD1の構造
発明者らは、上記のようにして細胞死誘導活性が確認された複数のクローンから、最も早く細胞死を誘導するクローンを1つ選択した。そして、このクローンのcDNAをベクターより単離し、常法にしたがって塩基配列を決定したところ、配列番号1に示される塩基配列を有することが確認された。この塩基配列は、全長981塩基対からなり、配列番号2に示される231アミノ酸からなるタンパク質をコードする696 塩基対のORF(Open Reading Frame)を含むことが確認された。確認されたDNA配列および予想アミノ酸配列は公開されているDNAおよびタンパク質データベース上には報告のない新規な遺伝子、およびタンパク質であることが確認された。そこで、発明者らはこの新規な植物細胞死誘導因子をNbCD1と命名した。
GenBankに登録された配列をもとに、NbCD1タンパク質のアミノ酸配列と相同性を示す配列をBLAST(J. Mol. Biol. 215:403-410)によって検索したところ、トマト由来の遺伝子LeERF3(GenBank Accession No. AY192369)と最も高い相同性(約53.2%)を示すことがわかった。NbCD1はLeERF3と同様に、Class II型のEthylene Response Factor (ERF)あるいはEthylene responsive element-binding protein (EREBP)と呼ばれる転写因子に属するタンパク質であることが推定された(Plant Cell Physiol 41:1187-1192)。
また、NbCD1のアミノ酸配列中には、3つの特徴的なタンパク質領域、AP2ドメイン、酸性ドメイン(Acidic Domain:AD)およびERF-associated amphiphilic repression (EAR)モチーフが存在することが確認された。3つの領域は、それぞれ配列番号2に示されるアミノ酸配列上において、AP2ドメインが20〜84番目、ADが200〜219番目、EARモチーフが220〜226番目のアミノ酸の位置に存在する。
発明者らは上記の3領域がNbCD1の細胞死誘導機能に不可欠であることを確認した。これらのうち、AP2ドメインはGCC-boxと呼ばれるシスエレメントに結合するためのDNA結合ドメイン、EARモチーフは転写抑制(active repression)部位として知られており(Fujimoto et al. “Arabidopsis ethylene-responsive element binding factors act as transcriptional activatiors or repressors of GCC box-mediated gene expression” Plant Cell (2000) 12:393-404.)、ADについては具体的な機能はわかっていない。
しかしながら、これらの領域や前述のERFタンパク質と植物細胞死との関連を示す報告はなく、したがって、本発明のNbCD1の細胞死誘導機能はその構造からは予測がつかないものであった。
同定されたNbCD1クローンは配列番号1に示される塩基配列を含み、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。しかしながら、本発明のNbCD1タンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列に限定されず、それが植物細胞死誘導活性を有する限り、前記アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された他のアミノ酸配列を有するものであってもよい。かかる欠失、置換、付加等の数は、全アミノ酸数に対して好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。また、配列番号2に示されるNbCD1タンパク質のアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質も、それが植物細胞死誘導活性を有する限り、本発明のNbCD1タンパク質に含まれる。但し、NbCD1活性に不可欠なAP2ドメイン(配列番号2のアミノ酸番号20〜84)、AD(同200〜219)、EARモチーフ(同220〜226)の配列は保存されるものとする。
本発明のNbCD1遺伝子も、配列番号1に示される塩基配列に限定されず、それが植物細胞死誘導活性を有するタンパク質をコードする限り、前記塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるDNAであってもよい。なお、ストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が300-2000mMで温度が40-75℃、好ましくはナトリウム濃度が600-900mMで温度が65℃の条件をいう。当業者であれば、Molecular Cloning(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning :a Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 10 Skyline Drive Plainview, NY (1989))等を参照することにより、こうしたNbCD1ホモログを容易に取得することができる。
2.ベクター
本発明のベクターは、プラスミド等の公知のベクターに本発明のNbCD1遺伝子を連結(挿入)して得ることができる。前記ベクターは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。
前記プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば、 pBR322, pBR325, pUC18, pUC119, pTrcHis, pBlueBacHis 等)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、 pUB110, pTP5 等)、酵母由来のプラスミド(例えば、 YEp13, YEp24, YCp50, pYE52 等)、植物細胞宿主用プラスミド(pBI221、pBI121)等が挙げられ、ファージ DNAとしてはλファージ等が挙げられる。さらに、レトロウイルスまたはワクシニアウイルス等の動物ウイルス、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法等が採用される。本発明の遺伝子は、その遺伝子が機能しうる態様で、宿主に応じたプロモーターに連結して導入される必要がある。ここで「機能しうる態様」とは、プロモーター活性によって、その下流に配置された本発明の遺伝子が宿主中で適切に発現され、その機能を発揮することをいう。使用されるプロモーターの種類は、宿主細胞によって適宜決定されるが、その詳細は次項で説明する。本発明のベクターは、プロモーター、本発明の遺伝子のほか、所望によりエンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等)、リボソーム結合配列(SD配列)等を含んでいてもよい。
本発明では、構成的に発現するプロモーターのほか、条件特異的(例えば、組織特異的あるいは環境特異的)に活性化されるプロモーターを好適に利用することができる。こうしたプロモーターの使用により、条件特異的に本発明の遺伝子を発現させ、植物に細胞死を誘導することが可能になる。
3.形質転換体(宿主細胞)
本発明の形質転換体は、本発明のベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。宿主は、本発明の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されない。例えば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、シロイヌナズナ、タバコ、トウモロコシ、イネ、ニンジン等から株化した植物細胞やプロトプラスト、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞、あるいはSf9、Sf21等の昆虫細胞等が挙げられる。
大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。大腸菌としては、例えば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HMS174(DE3)、K12、DH1等が挙げられ、枯草菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)MI 114、207-21等が挙げられる。プロモーターとしては、大腸菌等の上記宿主中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の、大腸菌やファージに由来するプロモーターが挙げられる。また、tacプロモーター等のように、人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。細菌への組換えベクターの導入方法は、特に限定されず、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Cohen, S.N. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69:2110-2114 (1972)]や、エレクトロポレーション法等が挙げることができる。
酵母を宿主とする場合は、例えば、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、ピヒア・パストリス等が用いられる。プロモーターとしては、酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等を挙げることができる。酵母へのベクターの導入方法は、特に限定されず、例えば、エレクトロポレーション法[Becker, D.M. et al.:Methods. Enzymol., 194: 182-187 (1990)]、スフェロプラスト法[Hinnen, A.et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 75: 1929-1933 (1978)]、酢酸リチウム法[Itoh, H.:J. Bacteriol., 153:163-168 (1983)]等を挙げることができる。
植物細胞を宿主とする場合は、例えば、イネ、トウモロコシ、コムギ、シロイヌナズナ、タバコ、ニンジン等から株化した細胞や該植物から調製したプロトプラストが用いられる。この場合、プロモーターとしては植物中で発現できるものであれば特に限定されず、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35S RNAプロモーター、rd29A遺伝子プロモーター、rbcSプロモーター等が挙げられる。植物への組換えベクターの導入方法としては、アグロバクテリウム感染法等の間接導入法や、パーティクルガン法、ポリエチレングリコール法、リポソーム法、マイクロインジェクション法等の直接導入法等が挙げられる。アグロバクテリウム感染法を用いた植物細胞の形質転換については、次項でより詳細に説明する。
4.トランスジェニック植物
(1) 植物導入用組換えベクターの作製およびアグロバクテリウムの形質転換
植物細胞導入用ベクターは、本発明の遺伝子を含むDNAを適当な制限酵素で切断後、必要に応じて適切なリンカーを連結し、植物細胞用のクローニングベクターに挿入することにより得ることができる。クローニング用ベクターとしては、pBI2113Not、pBI2113、pBI101、pBI121、pGA482、pGAH、pBIG等のバイナリーベクター系のプラスミドやpLGV23Neo、pNCAT、pMON200等の中間ベクター系のプラスミドを用いることができる。
バイナリーベクター系プラスミドを用いる場合、上記のバイナリーベクターの境界配列(LB,RB)間に、目的遺伝子を挿入し、この組換えベクターを大腸菌中で増幅する。次いで、増幅した組換えベクターをアグロバクテリウム・チュメファシエンスC58、LBA4404、EHA101、C58C1RifR、EHA105等に、凍結融解法、エレクトロポレーション法等により導入し、該アグロバクテリウムを植物の形質導入用に用いる。
上記の方法以外にも、三者接合法[Nucleic Acids Research, 12:8711(1984)]によって本発明の遺伝子を含む植物感染用アグロバクテリウムを調製することができる。すなわち、目的遺伝子を含むプラスミドを保有する大腸菌、ヘルパープラスミド(例えば、pRK2013等)を保有する大腸菌、およびアグロバクテリウムを混合培養し、リファンピシリンおよびカナマイシンを含む培地上で培養することにより植物感染用の接合体アグロバクテリウムを得ることができる。
植物体内で外来遺伝子等を発現させるためには、構造遺伝子の前後に、それぞれ植物用のプロモーターやターミネーター等を配置させる必要がある。植物で利用可能なプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)由来の35S転写物[Jefferson, R.A. et al.: The EMBO J 6:3901-3907(1987)]、トウモロコシのユビキチン[Christensen, A.H. et al.: Plant Mol. Biol. 18:675-689(1992)]、ノパリン合成酵素(NOS)遺伝子、オクトピン(OCT)合成酵素遺伝子のプロモーターが、またターミネーター配列としては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス由来やノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネーター等が一般的である。しかしながら、本発明の目的においては、上記のような目的遺伝子の構成的発現を担うプロモーターのほかに、目的遺伝子の条件特異的な発現をもたらすようなプロモーターが用いられる。そのようなプロモーターとしては、例えば、花器官の葯特異的プロモーター(例えば、キャベツのBcp1遺伝子プロモーター(Xu et al. “Haploid and diploid expression of a Brassica campestris anther-specific gene promoter in Arabidopsis and tobacco.” Mol. Gen. Genet. (1993) 239: 58-65.))や、病原菌エリシター応答性プロモーター(例えば、パセリのPR1遺伝子プロモーター(Rushton et al. “Interanction of elicitor-induced DNA-binding proteins with elicitor response elements in the promoters of parsley PR1 genes” EMBO J. (1996) 15:5690-5700.))等を挙げることができる。
なお、必要であれば、プロモーター配列と本発明の遺伝子の間に、遺伝子の発現を増強させる機能を持つイントロン配列、例えば、トウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ(Adh1)のイントロン[Genes& Development 1:1183-1200(1987)]を導入してもよい。
さらに、効率的に目的の形質転換細胞を選択するために、有効な選択マーカー遺伝子を本発明の遺伝子と併用することが好ましい。その際に使用する選択マーカーとしては、カナマイシン耐性遺伝子(NPTII)、抗生物質ハイグロマイシンに対する抵抗性を植物に付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(htp)遺伝子およびビアラホス(bialaphos)に対する抵抗性を付与するホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(bar)遺伝子等から選ばれる1つ以上の遺伝子を使用することができる。本発明の遺伝子および選択マーカー遺伝子は、単一のベクターに一緒に組み込んでも良いし、それぞれ別個のベクターに組み込んだ2種類の組換えDNAを用いてもよい。
(2) 宿主への本発明の遺伝子の導入
本発明の形質転換体の宿主は特に限定されないが、植物であることが好ましい。該植物は、植物培養細胞、栽培植物の植物体全体、植物器官(例えば、葉、花弁、茎、根、根茎、種子等)、または植物組織(例えば、表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)のいずれであってもよい。植物はイネ、トウモロコシ、コムギ等の単子葉植物であることがより好ましい。植物培養細胞、植物体、植物器官または植物組織を宿主とする場合、本発明のタンパク質をコードするDNAは、採取した植物切片にベクターをアグロバクテリウム感染法、パーティクルガン法またはポリエチレングリコール法等で導入し、植物宿主を形質転換することができる。あるいはプロトプラストにエレクトロポレーション法で導入して形質転換植物を作製することもできる。
たとえばアグロバクテリウム感染法により植物に遺伝子を導入する場合、目的の遺伝子を含むプラスミドを保有するアグロバクテリウムを植物に感染させる工程が必須であるが、これは、バキュームインフィルトレーション法[CR Acad. Sci. Paris, LifeScience, 316 :1194(1993)]により行うことができる。すなわち、植物をバーミキュライトとパーライトを等量ずつ合わせた土で生育させ、生育させた植物を本発明の遺伝子を含むプラスミドを含むアグロバクテリウムの培養液に直接浸し、これをデシケーターに入れバキュームポンプで65〜70mmHgになるまで吸引後、5〜10分間、室温に放置する。鉢をトレーに移しラップで覆い湿度を保つ。翌日ラップを取り、植物をそのまま生育させ種子を収穫する。
次いで、種子を目的の遺伝子を保有する個体を選択するために、適切な抗生物質を加えたMS寒天培地に播種する。この培地で生育した植物を鉢に移し、生育させることにより、本発明の遺伝子が導入されたトランスジェニック植物の種子を得ることができる。一般に、導入遺伝子は宿主植物のゲノム中に同様に導入されるが、その導入場所が異なることにより導入遺伝子の発現が異なるポジションイフェクトと呼ばれる現象が見られる。プローブとして導入遺伝子のDNA断片を用いたノーザン法で検定することによって、より導入遺伝子が強く発現している形質転換体を選抜することができる。
本発明の遺伝子を導入したトランスジェニック植物およびその次世代に目的の遺伝子が組み込まれていることの確認は、これらの細胞および組織から常法に従ってDNAを抽出し、公知のPCR法またはサザン分析を用いて導入した遺伝子を検出することにより行うことができる。
(3) 本発明の遺伝子の植物組織での発現による細胞死
本発明の遺伝子を導入したトランスジェニック植物では、該遺伝子の発現が活性化(過剰発現)されることにより、当該発現部位特異的に細胞死が観察される。当該部位における遺伝子の発現レベルは、これらの細胞および組織から常法に従ってRNAを抽出し、RT-PCR法またはノーザン分析を用いてNbCD1遺伝子のmRNAを検出することにより確認することができる。あるいは、NbCD1タンパク質に特異的な抗体を用いたウエスタン分析等により直接、分析することによっても行うことができる。
5.NbCD1タンパク質の製造
本発明のNbCD1タンパク質は、前述の形質転換体(宿主細胞)を適当な培地で培養し、その培養物からNbCD1活性を有するタンパク質を採取することによって得ることができる。本発明の形質転換体の培養は、常法に従って行えばよい。例えば、大腸菌や酵母等の微生物を宿主とする形質転換体の場合は、微生物が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体を効率的に培養しうる天然培地、あるいは合成培地で培養すればよい。また、植物細胞を宿主として用いている場合には、チアミン、ピリドキシン等のビタミン類を添加した植物細胞用の培地で培養すればよい。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
培地中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
培養は、通常、振盪培養または通気攪拌培養等の好気的条件下、30〜37℃位で6時間〜3日間程度行う。培養期間中、pHは7.0〜7.5程度に保持する。pHの調整は、無機または有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養後、本発明のタンパク質が菌体内または細胞内に生産される場合には、菌体または細胞を破砕することにより該タンパク質を抽出する。また、本発明のタンパク質が菌体外または細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体または細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、SDS-PAGE、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独でまたは適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のタンパク質を単離精製することができる。
6.NbCD1の利用方法
本発明のNbCD1は、過剰発現することにより、植物に細胞死を誘導する。したがって、条件特異的(例えば、組織特異的あるいは環境特異的)に活性化されるプロモーターに本発明のNbCD1遺伝子を連結して宿主植物に導入することにより、当該植物に条件特異的細胞死を誘導することが可能になる。
例えば、本発明のNbCD1遺伝子を葯特異的プロモーターもしくは花器特異的プロモーターに連結して植物に導入すれば、不稔化植物を作出することができる。このような不稔化技術は、花粉の飛散による生態系への影響が懸念される組換え植物において特に有用である。
あるいは、本発明のNbCD1遺伝子を病原菌侵入時特異的に活性化されるプロモーターに連結して植物に導入すれば、死細胞に病原菌を封じ込めることで、病気の拡大を防ぐことが可能になる。すなわち、「過敏感細胞死」を人工的に誘発することにより植物の耐病性を増強することが可能になる。
さらに、本発明のNbCD1遺伝子は、組織特異的プロモータと結合することにより、植物発生段階で各組織が将来どのような器官に発生するのかを知る実験に利用する上でも有用である。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
なお、核酸およびタンパク質を扱う基本的な方法は、T. Maniatisらの「Molecular Cloning」(Cold Spring Harbor Laboratories, 1982)および、J. E. Coliganらの「Short Protocols in Protein Science」(Wiley, 2003)に従って実施した。
1.cDNAの調製
ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物葉身にジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)由来のエリシターINF1処理を施すと、約24時間で過敏感細胞死が誘導される(Plant Cell 10:1413-1426)。そこで、INF1誘導性細胞死に関わるベンサミアナタバコ遺伝子を同定する目的で、INF1処理後1、2、4時間後のベンサミアナ植物葉からSDSフェノール法(Biochemistry 13:3606-3615)により全RNAを抽出した。この全RNAよりオリゴdTカラム(Amersham Co. UK)を利用してmRNAを抽出し、次いでSuperScriptTM Plasmid System with Gateway Technology for cDNA Synthesis and Cloningキット (Life Technology Co.)を用いて、2本鎖cDNAを合成した。このキットにより、各cDNAの5’末端はSalI、3’末端は、NotIと相補的なcohesive末端となっている。
2.pSfinXベクターの調製とcDNAのクローン化
pSfinxベクター(Plant Journal 24:275-283)は、植物形質転換用のバイナリーベクターのRight Border(RB)配列とLeft Border (LB)配列間に、ジャガイモウイルスX (Potato virus X: PVX)の転写ユニットが挿入された構造を有する。本ベクター中のPVX 転写ユニットのコートプロテイン(CP)遺伝子プロモーターは、重複しており、その内の一つのCPプロモーターの下流に、目的遺伝子の断片を挿入するためのmultiple cloning site (MCS)が設けられている。このMCSの制限酵素サイトAsc1 サイトとSalIサイトをそれぞれの制限酵素で切断した後、SalI-Not1リンカー断片をライゲートして、pSfinx-SalI-NotI ベクターを作製した。なお、SalI-Not1リンカーは、リンカー1:P-5’-CGCGGTCGACGGGATATCACGCGGCCGCG-3’(配列番号3); リンカー2:P-5’-TCGACGCGGCCGCGTGATATCCCGTCGAC-3’(配列番号4)を互いにアニールして作製した。pSfinX-SalI-NotIベクターを制限酵素SalIとNotIによって消化後、ベンサミアナタバコ由来のcDNAをライゲートした。ライゲート産物を用いて、エレクトロポレーション法(GenePulser, BioRad社使用)によって大腸菌DH10Bのコンピテントセル(ElectroMAX DH10B Cells, Invitrogen)を形質転換した。しかるのち形質転換細胞を10 ppmカナマイシンを含むLB寒天培地上で選抜した。その結果、約50万個のクローンからなるcDNAライブラリーが作製された。
3.アグロバクテリウムを宿主としたcDNAライブラリーの作製
上記約50万個の大腸菌クローンから、プラスミド単離キット(QIAprep Spin Miniprep Kit, Quiagen)を用いて、プラスミドをまとめて回収した。この混合プラスミド液によって、Agrobacterium tumefaciens MOG101 株をエレクトロポレーション法(GenePulser, BioRad社使用)を用いて形質転換した。形質転換細胞は、カナマイシン50 ppm、リファンピシン 50 ppmを含むYEB寒天培地(培地1Lあたり5 g beef extract, 1 g yeast extract, 5 g tryptone, 5 g sucrose, 2 mL 1M MgSO4, 15 g Bactoagarを含有)上で選抜した。これにより、計約20万個の形質転換アグロバクテリウムクローンが得られた。これらのクローンは、滅菌した爪楊枝を用いて、15%グリセリン、カナマイシン50 ppm、リファンピシン 50 ppmを含むYEB培地を満たした384穴のマイクロタイタープレートに移し、整列させて-80度で保存した。
4.アグロバクテリウムのベンサミアナタバコ葉身への接種
上記アグロバクテリウムクローンを96個ずつ96穴マイクロタイタープレートに移し、カナマイシン50 ppm、リファンピシン 50 ppmを含むYEB液体培地で28℃1日間振とう培養した。液体培養後のクローンを塗布した爪楊枝を、ベンサミアナタバコ葉身に突き刺すことにより、アグロバクテリウムを葉に接種した。1枚の葉に50クローンを整列して接種した。
5.細胞死誘導クローンの同定
アグロバクテリウム接種後の植物を閉鎖系温室で栽培し、1週間後以降接種部位の変化を観察した。接種部位周辺が黒褐色に変色し、細胞死が認められるクローンを同定した。これらのクローンについては、再度新しい植物体の葉に接種し、細胞死誘導性を追試した。
6.Agroinfiltrationによる細胞死誘導の確認
候補クローン(Agrobacterium株)を、カナマイシン50 ppm、リファンピシン 50 ppmを含むYEB液体培地で28℃1日間振とう培養した。バクテリアを、遠心操作によって沈澱後、これを注射液(10mM MgCl2, 10mM MES, 100μM acetosyringone)に溶解し、波長600nmにおける吸光度が1.0になるように調整した。この溶液を、室温で2〜3時間静置した後、針なし注射器(1mL)によって、ベンサミアナタバコの葉身に注入した。3〜4日後に注入箇所が枯死することを確認した。
上記アグロバクテリウムクローンに含まれているpSfinXベクターのcDNA挿入配列をPCR法によって増幅し、DNA塩基配列を決定したところ、配列番号1に示されるた696塩基対のORF配列を含んでいた。このORFは、231アミノ酸からなるタンパク質に対応する。
このDNA配列、アミノ酸配列とも未報告の新規配列であった。そこで、この遺伝子をNbCD1、タンパク質をNbCD1と命名した。NbCD1タンパク質のアミノ酸配列と相同性を示す配列を、GenBankに登録された配列の中から、BLAST(J. Mol. Biol. 215:403-410)によって検索すると、NbCD1は、トマト由来の遺伝子LeERF3(GenBank Accession No. AY192369)と最も高い相同性(53.2%)を示した。NbCD1はLeERF3とともに、Class II型のEthylene Response Factor (ERF)に属するタンパク質であることが推定された(Plant Cell Physiol 41:1187-1192)。
さらに、NbCD1タンパク質発現を制御して細胞死を誘導する目的で、NbCD1遺伝子のcDNAを、グルココルチコイド誘導性植物発現ベクターpTA7000 (Plant Journal 11:605-612)にクローン化した。タンパク質発現を検出する目的で、NbCD1のC末端にYPYDVPDYAG(配列番号5)のアミノ酸配列からなるヘマグルチニン(HA)エピトープを3反復して含むtriple HAエピトープ(アミノ酸配列:ASRYPYDVPDYAGYPYDVPDYAGSYPYDVPDYASR(配列番号6))を付加して、NbCD1-triple HA cDNA を構築し、これをpTA7000に挿入して、pTA7000-NbCD1-triple HAを作製した。
pTA7000-NbCD1-triple HAによってAgrobacterium tumefaciens MOG101株を形質転換した。このアグロバクテリウムクローンを、Agroinfiltration法により、ベンサミアナタバコの葉身に注射した。注射後48時間目に、pTA7000に挿入された外来遺伝子の発現を誘導する目的で、30μM dexamethason(DEX)溶液を注射した。DEX注射後0、4、8、12、24時間目に葉を採集し、液体窒素で凍結保存した後、葉断片から総タンパク質を抽出してSDS-PAGEゲルで電気泳動し、Immobilon(Millipore社)膜に転写した。これを用いて、抗HA抗体を利用して常法にしたがってWestern解析を実施した(図1)。DEX処理後4時間目から、予想される大きさ(24.9 KDa)のNbCD1-triple HAタンパク質が検出され、24時間後まで発現していることが確認された。DEX処理個体は、処理後24時間目から葉縁部が枯死しはじめ、48時間後には全体が枯れた。一方、pTA7000-NbCD1-triple HAを有するアグロバクテリウムを注射した葉に、DEXのかわりに水を注射した個体では、NbCD1-triple HAタンパク質の発現は見られず(図1)、水処理後24時間、48時間後においても、葉は枯れなかった。これらの結果は、NbCD1-triple HAのタンパク質発現によって、迅速にベンサミアナタバコの葉に細胞死が誘導されたことを示している。
7.細胞死誘導必須領域の確認
NbCD1遺伝子全長の内、植物細胞死誘導にとって必須の領域を明らかにするために、以下に示す欠失実験をおこなった(図2)。NbCD1アミノ酸配列中には、3つの特徴的なタンパク質領域が存在する。すなわち、AP2ドメイン、酸性ドメイン(Acidic Domain:AD)およびERF-associated amphiphilic repression (EAR)モチーフである。AP2ドメインは、配列番号2の20〜84番目のアミノ酸(配列番号1の186〜380番目の塩基)に対応し、ADは配列番号2の200〜219番目のアミノ酸(配列番号1の727〜785番目の塩基)に対応し、EARモチーフは配列番号2の220〜226番目のアミノ酸(配列番号1の786〜806番目の塩基)に対応する。そこで、これらの領域を一つずつ欠失させたcDNAを作製し、pSfinXベクターに導入して、Agroinfiltration法によってベンサミアナタバコの葉身に接種して表現型を観察したところ、細胞死誘導にとって、これら3領域:AP2ドメイン、AD、EARモチーフが必須であることが確認された。AP2ドメインはGCC-boxと呼ばれるシスエレメントに結合するためのDNA結合ドメイン、EARモチーフは転写抑制(active repression)部位として知られているが、3領域のいずれも細胞死との関連についてはこれまでに報告されたことはない。したがって、NbCD1の細胞死誘導活性は、その構造からは予測がつかないものであった。
8.シロイヌナズナにおけるNbCD1の細胞死誘導効果
NbCD1はタバコ属以外の双子葉植物でも細胞死誘導効果をもつことを確認するため、NbCD1のシロイヌナズナに対する細胞死誘導効果について検討した。
PTA7000-NbCD1-triple HAを有するアグロバクテリウムを用いて、floral dip法(The Plant Journal 16735-743)により、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)wsエコタイプの植物を形質転換した。形質転換個体は、30 ng/mLハイグロマイシンで選抜した。その結果、形質転換当代T0世代の個体(系統)が、33個体(系統)得られた。これらの個体を自家交配することにより、系統毎に多数の種子(T1世代)を得た。得られたT1種子を各系統毎に約20種子播いて、個体を栽培した。1ヵ月後、生長した個体に対し50 nM dexamethason (DEX)を噴霧処理した。その結果、33系統の内、24系統で、生存個体と枯死個体が分離した。
上記24系統のうち、系統2番に注目してさらに詳細な実験を行った。まず、系統2番のT1個体を59個体栽培した。各個体毎に、NbCD1遺伝子の有無をPCR法で確認したところ、44個体がNbCD1を有し、15個体がNbCD1を有しないことがわかった。NbCD1を有する個体と有しない個体が約3:1に分離していることから、系統2番ではゲノム中1カ所にNbCD1遺伝子が挿入されていることが明らかである。
次にこれらの系統2番のT1個体にDEX処理を行ったところ、NbCD1を有する個体のほとんどが枯死し、NbCD1を有しない個体のほとんどが生存することが確認された。そこで、系統2番のT1世代から無作為に選んだ3個体(#2-28、#2-29、#2-30)と、非形質転換体(ws)について、各個体からDNAを抽出し、NbCD1遺伝子特異的プライマー(配列番号7および8)、pTA7000ベクター特異的プライマー(配列番号9および10)、シロイヌナズナb-tublin遺伝子特異的プライマー(配列番号11および12)を用いてPCRを行った。その結果、#2-28、#2-29は、NbCD1 遺伝子を有し、#2-30は有しないことが分かった。図3(上)にPCRの結果を示す。図中、wsは非形質転換体、#2-28、#2-29、#2-30は系統2番のT1世代3個体、NbCD1、GVG-vector、β-tublinは、それぞれNbCD1遺伝子特異的プライマー、pTA7000ベクター特異的プライマー、シロイヌナズナb-tublin遺伝子特異的プライマーによるPCRの結果を示す。
次に、これらの個体にDEX処理をおこなうと、#2-28、#2-29だけが4日後に枯死した(図3(下))。この結果は、シロイヌナズナにおいてNbCD1 を条件的に発現すると、細胞死が誘導されることを示している。従って、NbCD1は、タバコ属以外の双子葉植物でも細胞死誘導効果をもつことが明らかとなった。
以上より、NbCD1は、双子葉植物全般にわたって細胞死を引き起こせる可能性が示唆された。
産業上の利用の可能性
本発明のNbCD1を組織特異的または環境特異的に発現させることにより、任意の植物組織、任意の環境下で細胞死を誘導することができる。本技術は、遺伝子組換え植物の雄性不稔化や、過敏感細胞死の人工的誘発により植物の耐病性増強に利用することができる。
図1は、NbCD1の一過的発現におけるWestern解析結果(上)と、これによる細胞死を示す写真である(下)。 図2は、NbCD1遺伝子中の欠失実験において宿主植物に導入したNbCD1遺伝子断片(右)とその結果を示す写真(左)である。 図3は、NbCD1遺伝子導入シロイヌナズナ:系統2番のT1世代におけるPCR(上)とDEX処理(下)の結果を示す写真である。図中、wsは非形質転換体、#2-28、#2-29、#2-30は系統2番のT1世代、NbCD1、GVG-vector、β-tublinは、それぞれNbCD1遺伝子特異的プライマー、pTA7000ベクター特異的プライマー、シロイヌナズナb-tublin遺伝子特異的プライマーによるPCRの結果を示す。
配列番号1−AP2ドメイン
酸性ドメイン
EAR モチーフ
配列番号2−AP2ドメイン
酸性ドメイン
EAR モチーフ
配列番号3−人工配列の説明:合成DNA(リンカー1)
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA(リンカー2)
配列番号5−人工配列の説明:合成アミノ酸(HA エピトープ)
配列番号6−人工配列の説明:合成アミノ酸(triple HA エピトープ)
配列番号7−人工配列の説明:プライマー(NbCD1)
配列番号8−人工配列の説明:プライマー(NbCD1)
配列番号9−人工配列の説明:プライマー(GVG-vector)
配列番号10−人工配列の説明:プライマー(GVG-vector)
配列番号11−人工配列の説明:プライマー(β-tublin)
配列番号12−人工配列の説明:プライマー(β-tublin)

Claims (10)

  1. 配列番号1で表される塩基配列を含むDNAからなる遺伝子。
  2. 以下の(c)、(d)または(e)のタンパク質をコードする遺伝子。
    (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
    (d)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞死誘導活性を有するタンパク質
    (e)配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、かつ植物細胞死誘導活性を有するタンパク質
    但し、上記(d)および(e)において、配列番号2のアミノ酸番号20〜84、200〜219、および220〜226における配列は保存されるものとする。
  3. 以下の(c)、(d)または(e)の組換えタンパク質。
    (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
    (d)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物細胞死誘導活性を有するタンパク質
    (e)配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、かつ植物細胞死誘導活性を有するタンパク質
    但し、上記(d)および(e)において、配列番号2のアミノ酸番号20〜84、200〜219、および220〜226における配列は保存されるものとする。
  4. 請求項1または2記載の遺伝子を機能しうる態様でプロモーターに連結させて含む、ベクター。
  5. 前記プロモーターが、条件特異的に活性化されるプロモーターである、請求項4記載のベクター。
  6. 前記条件特異的に活性化されるプロモーターが、キャベツのBcp1遺伝子プロモーターを含む葯特異的プロモーター、およびパセリのPR1遺伝子プロモーターを含む病原菌エリシター応答性プロモーターから選ばれるいずれかのプロモーターである、請求項5記載のベクター。
  7. 請求項4〜6のいずれか1項に記載のベクターを宿主に導入して得られる、形質転換体。
  8. 請求項4〜6のいずれか1項に記載のベクターを植物に導入して得られる、トランスジェニック植物。
  9. 請求項5または6記載のベクターを植物に導入して得られる、条件特異的に細胞死を引き起こすトランスジェニック植物。
  10. 請求項5または6記載のベクターを植物に導入することにより、該植物に条件特異的細
    胞死を引き起こす方法。
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