JP4775001B2 - アルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビンを除去する材料 - Google Patents
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これまで、従来のビリルビン吸着材はヘパリンや凝固因子を吸着してしまう欠点を有していた。この現象を詳細に検討した結果、従来のビリルビン吸着剤はカチオン性であるために、その電気的特性により陽性の電荷を有するヘパリンや凝固因子を吸着してしまうことが判明した。そこで、鋭意検討した結果、ヘパリンの吸着能が低く、凝固活性が低く、有毒なアルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合ビリルビンを選択的に吸着する材料として、非イオン結合で水素結合形成可能な官能基を有する材料を見いだした。また、生体の有用物質であるアルブミン等のタンパクの吸着能を抑制させるためには疎水性を低下させることが有効であると考えられ、そのためにはアミノ基や尿素結合などの親水性基が有効であると考え発明に至った。なお、含窒素複素環化合物がビリルビンを吸着するとの報告があるが、この化合物のビリルビンとの相互作用はπ電子間の相互作用による結合と考えられているが、結合力は十分ではなく、親水性も低い。そのために、ビリルビンの結合とアルブミンの排除の機能分離が十分ではないという欠点があった。そこで検討した結果、水素結合が強い官能基が、アルブミン非結合かつグルクロン酸非包合ビリルビンの結合が高く、さらに凝固活性が低く、ヘパリンおよびアルブミンの吸着が抑えられることが明らかとなった。
本発明における水素結合形成可能な官能基とは水素結合が形成可能な官能基であれば特に限定はなく、例えば、尿素結合、チオ尿素結合、アミド基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、メルカプト基などが挙げられるが、含窒素官能基が好ましく、尿素結合、チオ尿素結合あるいはアミド結合、アミノ基、ピリジル基、ピリミジル基、イミダゾール基のうちの少なくとも一種であることが好ましい。なお、前記の水素結合形成可能な官能基には、それに続いた構造を有していても良い。水素結合形成可能な官能基に続く構造としては特に限定はなく、プロパン、ヘキサン、オクタン、ドデカンなどの脂肪族化合物やシクロヘキサン、シクロペンタンのような脂環族化合物を用いることができるが、親和性の高さを考慮するとベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族化合物がより好ましく用いられる。ブロモヘプタン、クロロシクロヘキサン、メチルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジフェニルメタン、クロロナフタレン等の誘導体も好適に用いられる。
本発明の材料は、好ましくは血液凝固活性の指標となるPT、APTTの変化量が体液接触前後で20%以下であり、かつヘパリンに対する吸着率が30%以下であり、かつアルブミンに対する吸着率が20%以下である、アルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビンを除去する材料である。これらの、PT、APTTの変化量やヘパリン、アルブミンに対する吸着率は、例えば、水素結合形成可能な官能基の種類や導入数、それに続く構造の種類等によってコントロールすることができる。ヘパリン、アルブミンに対する吸着率は以下のようにして求める。即ち、ヘパリンまたはアルブミンを含む体液を材料と接触させ、接触前後の濃度を測定することにより求める。ヘパリンの濃度の測定は、ベーリングコアグレーションシステム(デイドベーリング(株)製)を使用して、測定原理としてはファクターXa残存量から求める発色性合成基質法を用いて行う。アルブミン濃度の測定は、富士ドライケム(富士写真フィルム(株)製)を使用し、測定原理としてはブロムクレゾールグリーン法を用いて行う。また、ヘパリン、アルブミンに対するそれぞれの吸着率を以下の式にて算出する。
該水素結合形成可能な官能基としては、少なすぎるとアルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビンの吸着性能が得られにくくなり、PT、APTTの変化量、ヘパリン、アルブミンに対する吸着率については基材あるいは担体の影響を受けるため、性能を満足することができない可能性がでてくる。また、多すぎると当該水素形成可能な官能基によりPT、APTTの変化が起こり、かつ、ヘパリン、アルブミンが吸着されてしまう。例えば、アミン化合物としてポリエチレンイミンを用い、さらにイソシアネートを反応させてアミノ基と尿素結合の両方を有する官能基を用いる場合、該ポリエチレンイミンの窒素数としては2から10が好ましい。
in vitroアルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン除去試験(1)を行った。
65重量比の海成分(ポリスチレン)と35重量比の島成分(ポリプロピレン)とからなる海島型複合繊維(強度:1.0g/d、伸度:47.7%、太さ:132デニール、島の数:16)30gを、60gのN−メチロール−α−クロロアセトアミド、400gのニトロベンゼン、400gの98質量%硫酸、0.86gのパラホルムアルデヒドの混合溶液と20℃で1時間反応させた。その後、繊維をニトロベンゼンで洗浄し、その後メタノールにより反応を停止させた後、さらにメタノールで洗浄することによりα−クロロアセトアミドメチル化架橋ポリスチレン繊維(以下AMPSt繊維と略す)を得た。
作製したUAMP繊維を用いて、アルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン除去試験を行った。ビリルビンはグルクロン酸非抱合のビリルビンを用いた。ビリルビン溶液調製方法は、ビリルビンが水に不溶性のため、まず100mM水酸化ナトリウムに溶解させ、さらに、ヒト体液中ではアルブミンが存在しているため、4%ヒト血清アルブミン溶液で溶解した。被吸着溶液のビリルビンの濃度は300mg/mLとした。次にUAMP繊維30mgをこの被吸着溶液1mL中に添加し、37℃で2時間旋回攪拌しつつ吸着反応を行った。次に吸着前後のビリルビン溶液を分子量5万の限外濾過膜で分離し、アルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン溶液とアルブミン結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン溶液とに分けて吸着率を算出した。また、吸着率は次式の通り算出した。
ビリルビン濃度の測定はジアゾ化反応により、富士ドライケム(富士写真フィルム(株)製)を使用して行った。また、それぞれの溶液のアルブミン含有量は、ブロムクレゾールグリーン法により富士ドライケム(富士写真フィルム(株)製)を使用して行った。その結果を表1に示す。
in vitroアルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン除去試験(2)を行った。
65重量比の海成分(ポリスチレン)と35重量比の島成分(ポリプロピレン)とからなる海島型複合繊維(強度:1.0g/d、伸度:47.7%、太さ:132デニール、島の数:16)30gを、60gのN−メチロール−α−クロロアセトアミド、400gのニトロベンゼン、400gの98質量%硫酸、0.86gのパラホルムアルデヒドの混合溶液と20℃で1時間反応させた。その後、繊維をニトロベンゼンで洗浄し、その後メタノールにより反応を停止させた後、さらにメタノールで洗浄することによりα−クロロアセトアミドメチル化架橋ポリスチレン繊維(以下AMPSt繊維と略す)を得た。
in vitro PT、APTTの変化量測定試験ならびにヘパリン、アルブミンの吸着試験を行った。実施例1および2で作製したUAMP繊維ならびにAPAMP繊維を用いて、血液凝固活性の指標となるPTおよびAPTTの変化量測定試験、ヘパリン(抗凝固剤)およびアルブミンの吸着試験を行った。PT、APTT変化量測定試験およびアルブミン吸着試験はUAMP繊維30mgを3.8質量%クエン酸ナトリウムで処理した正常ヒト血漿1mLに、ヘパリン吸着試験は正常ヒト全血1mL中にUAMP繊維ならびにAPAMP繊維30mgをそれぞれ添加し、37℃で1時間旋回攪拌しつつ吸着実験を行った。PTおよびAPTTについては吸着前後の時間より変化率を、ヘパリンおよびアルブミンについては吸着前後の濃度より吸着率を求めた。変化率および吸着率は次式の通り算出した。
測定については、PTはQuick一段法(散乱光度法)、APTTはLangdell法(散乱光度法)、ヘパリンはベーリングコアグレーションシステム(デイドベーリング(株)製)を使用して、測定原理としてはファクターXa残存量から求める発色性合成基質法で、アルブミンは富士ドライケム(富士写真フィルム(株)製)を使用し、ブロムクレゾールグリーン法で行った。その結果を表3(UAMP繊維)および表4(APAMP繊維)に示す。以上の結果より、UAMP繊維ならびにAPAMP繊維による吸着材料はPTおよびAPTTの延長率が接触前後で20%以下であり、かつヘパリンに対する吸着率が30%以下であり、かつアルブミンに対する吸着率が20%以下であることが示された。
in vitroアルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン灌流除去試験を行った。
実施例1に示すUAMP繊維をプライミングボリウム10mLの血液浄化カラムに充填し、RO水(逆浸透膜濾過水)で洗浄後、生理食塩液を充填し、カラム内の繊維のγ線滅菌を実施した。次に、そのカラムにプライミングボリウム10mLの回路を接続し、ペリスターリックポンプを用いて生理食塩液500mLを流し、洗浄した。その後、アルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン溶液を用いて灌流除去試験を行った。ビリルビンはグルクロン酸非抱合のビリルビンを用い、アルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン溶液の調製方法は実施例1に示す通りとした。灌流時の温度、時間についての条件は37℃、5時間とし、サンプリング時間は灌流開始前、灌流開始1時間後、2時間後、3時間後、4時間後および5時間後とした。サンプリングした溶液を分子量5万の限外濾過膜で分離することでアルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン溶液とアルブミン結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン溶液とに分け、吸着率を算出した。
in vitroアルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン除去試験(3)を行った。
65重量比の海成分(ポリスチレン)と35重量比の島成分(ポリプロピレン)とからなる海島型複合繊維(強度:1.0g/d、伸度:47.7%、太さ:132デニール、島の数:16)でアルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビン除去試験を行った。ビリルビンはグルクロン酸非抱合のビリルビンを用いた。なお、ヒト体液中ではアルブミンが存在しているため、4%ヒト血清アルブミン溶液でビリルビンを溶解した。試験の方法は、実施例1の方法と同様とした。その結果を表5に示す。
以上の結果より、ポリスチレン及びポリプロピレンの海島型複合繊維にアミドメチル化、TEPA化を経て尿素結合を導入したUAMP繊維はアルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合ビリルビンを高率に吸着除去することが示された。
Claims (6)
- 尿素結合、チオ尿素結合及びアミド結合からなる群から選ばれる含窒素官能基と、アミノ基、ピリジル基、ピリミジル基及びイミダゾール基からなる群から選ばれる含窒素官能基と、を有する基材あるいは担体(ただし、リン酸エステル基を有する基材あるいは担体を除く)からなる、アルブミン非結合かつグルクロン酸非抱合のビリルビンの吸着除去材料。
- 体液に接触させても、その凝固活性であるプロトロンビン時間、部分活性化トロンボプラスチン時間の変化量が接触前後で20%以下であり、かつヘパリンに対する吸着率が30%以下であり、かつアルブミンに対する吸着率が20%以下である、請求項1記載の吸着除去材料。
- 前記基材あるいは担体が繊維状、編地、織物、ビーズ状、スポンジ状、ネット状のいずれかの形態を有し、かつ合成高分子材料あるいは天然高分子材料より構成される、請求項1又は2記載の吸着除去材料。
- 高ビリルビン血症、黄疸及び脳神経障害からなる群から選ばれる疾患の治療用途に用いる、請求項1〜3のいずれか一項記載の吸着除去材料。
- 請求項1〜4のいずれか一項記載の吸着除去材料が充填されている、体外循環が可能な体液浄化カラム。
- プライミング容積が50mL以下である、請求項5記載の体液浄化カラム。
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