JP4772806B2 - シアノジチオカルビメート(Cyanodithiocarbimate)を使用する殺真菌性組成物および方法 - Google Patents

シアノジチオカルビメート(Cyanodithiocarbimate)を使用する殺真菌性組成物および方法 Download PDF

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Description

本発明は、ハイド(hide)のなめし工程中、動物のハイド上の真菌増殖を制御するシアノジチオカルビメートの使用に関する。より詳細には、本発明は、真菌の攻撃および分解からウェットブルーハイドを保護することに関する。
周知のように、皮革は、ハイドをなめすことから始まる多段工程によって動物のハイドから製造する。ハイドは、ハイドに構造を与え柔軟性をもたらす脂肪およびタンパク質(エラスチン、コラーゲン、ケラチン)の複雑な組合せである。皮革なめし工程は、利用する温度、pH、および化学反応の種類によって大きく変化する。皮革なめし工場はまた、微生物が増殖する独特の環境でもある。皮革なめし工場は、なめし工程の一部として、プロセス用水、ハイドまたはスキン、ならびに他の加工材料から微生物が多数流入する比較的開放的な産業設備である。流入生物は、受け入れた材料によって変わる。季節的気候変化はまた、なめし工場の加工用水中の微生物に影響を及ぼす。
典型的なハイドなめし工程には、ハイドを中間の形状、すなわち、なめし加工済みのハイドに処理する段階がいくつか含まれている。典型的なクロムタンニング工程では、前記の段階には、例えば、水および界面活性剤でハイドを洗浄して、残骸を除去すること;洗浄したハイドを水性の酵素浴(水、酵素(プロテアーゼ)、界面活性剤、およびアルカリ)に浸して、ハイドを再水和し、原線維間のタンパク質を除去すること;「ヘアバーン(hairburn)」工程においてアミン、硫化ナトリウム、および石灰(CaO)を使用してハイドを除毛すること;硫酸アンモニウム、水、および多数の洗浄剤を添加してハイドを脱灰して、除毛中に使用したアルカリを除去し、ハイドのpHを調整すること;ハイドを浸して(プロテアーゼを添加)、部分的に加水分解したコラーゲンおよびケラチンを除去すること;硫酸などの酸を使用してハイドを酸洗いすること(ハイドのpHを低下させてクロムタンニング用に調製すること);クロムを添加してなめし、酸化マグネシウムを添加して塩基性化(クロム定着)すること;続いて、洗い流すことが含まれる。得られたハイドは、しばしば青色を呈している。この段階で、処理した、またはクロムでなめしたハイドは、ウェットブルーハイドとして公知である。ウェットブルーは、さらに加工し皮革に仕上げるために通常別の場所に保管または配送される単なる中間物である。
(「ウェットブルー」ハイドを製造する)クロムタンニングの他に、真菌汚染からの保護が必要な他のなめし方法としては、ベジタブルタンニング、「ウェットホワイト」タンニングハイド(アルミニウムなめし、ジルコニウムなめし、アルデヒドなめし、およびホスホニウムなめしを含む)、およびオイルタンニングが挙げられる。金属を含まないなめしの例としては、油、アルデヒド、またはホスホニウム塩の使用が挙げられる。これらのなめし工程から得られるなめし加工済みのハイドは、ベジタブルタンニングハイド、ウェットホワイトハイド、およびオイルタンニングハイドとして公知である。
なめし工程の各段階は、独特の化学的環境ならびに独特の微生物的環境である。なめし工程の微生物環境は、処理しているハイドに影響を及ぼす。一般に、なめし工程中に真菌の攻撃からハイドを保護する必要はない。なめして、なめし加工済みのハイドを得た後、ハイドは、真菌の攻撃を受けるようになり、カビが発生するのは目で見て判る。また、真菌が蔓延するのは、なめし加工済みのハイドの保管/配送中である。なめし加工済みのハイドは、暖かく、湿っており、ウェットブルーハイドの外観を損なう真菌の増殖およびカビを促進させる栄養源である。
殺生物剤は、真菌からなめし加工済みのハイドを保護するのに使用される。真菌の攻撃は、なめし加工済みのハイドを変色させ、時には黒色斑点の原因となる。黒色コウジ菌(Aspergillus niger)は、皮革製品を攻撃して変色を引き起こす典型的な真菌である。この真菌による変色は、除去が困難であり、なめし加工済みのハイドまたは完成した皮革を駄目にする恐れがある。
なめし加工済みのハイド(ウェットブルーハイド、植物なめし加工済みハイド、ウェットホワイトハイド、オイルタンニングハイドなど)を保護するために、殺真菌剤を、なめし工程で使用するなめし液に添加する。殺真菌剤を、なめし工程の後半の一段階でしばしば添加する。しばしば、殺真菌剤を、強い酸性の条件下で行う酸洗い段階で添加する。なめし工程の完了時からなめし加工済みのハイドが本物の皮革に仕上がるまで、殺真菌剤は、ハイドを保護するためになめし加工済みのハイドの表面に残存しなければならない。これを行うために、殺真菌剤は、添加段階の化学的環境においても、およびどの後続段階の化学的環境においても残存していなければならない。その際に有効であるためには、殺真菌剤は、酸性条件下で安定であり、紫外線に安定であり、他のなめし工程の化学薬品と比較的反応せず、なめしているハイドに高い親和性を持たなくてはならない。殺真菌剤を利用できるなめし工程の他の部分としては、皮革仕上げの保管寿命が長くしたり、加脂剤(fat liquor)の保存を長くしたり、および乳化加脂工程中が挙げられる。
C. Fieseler、W. Walek、およびU. Thust、Tag.-Ber. Akad. Landwirtsch.-Wiss. DDR、ベルリン(1990)291.317-321 独国特許出願公開DD275433号明細書 「Standard Practice for Determining Resistance of Synthetic Polymeric Materials to Fungi」、ASTM Standards on Materials and Environmental Microbiology、第1版、1987年
皮革業界では、有効な殺真菌剤であるだけでなくハイドなめし工程の化学的環境にも耐えられる化合物が必要とされている。本発明は、この必要性に応えるものである。
本発明は、なめし加工済ハイド上の少なくとも一種の真菌類の増殖を制御する方法を提供する。この方法は、なめし前、なめし中、またはなめし後のハイドを、有効量のシアノジチオカルビメートと接触させて、なめし加工済みのハイド上の少なくとも1種の真菌の増殖を制御することを含む。使用することができるシアノジチオカルビメートは、式(I)のものである。
Figure 0004772806
式(I)のシアノジチオカルビメートは、なめし加工済みのハイドの真菌攻撃、分解、または劣化をハイドなめし工程で起こらないように、防止するのに有用である。なお、なめし加工済みのハイドには、ウェットブルーハイド、ウェットホワイトハイド、ベジタブルタンニングハイド、およびオイルタンニングハイドが含まれるが、それらだけに限定されない。式(I)の新規なシアノジチオカルビメートは、本発明の別の実施形態を提示する。
前述のように、本発明は、なめし工程において殺真菌剤として式(I)のシアノジチオカルビメートを使用して、なめし加工済みのハイドを保護することに関する。
Figure 0004772806
また、式(I)のシアノジチオカルビメートの混合物を使用することもできる。
式(I)では、Xは、ハロゲン、好ましくは、Cl、Br、またはIである。最も好ましくは、Xは、Clである。
置換基Rは、置換もしくは非置換C〜C14アルキル基、置換もしくは非置換C〜C14アルケニル基、または置換もしくは非置換C〜C14アルキニル基とすることができる。置換基Rはまた、Y−Ar−(CH−またはZ−(CH−で定義される置換または非置換の基とすることもできる。Y−Ar−(CH−基では、mは、0〜3の範囲である。Arは、フェニルおよびナフチルから選択される置換または非置換アリール基である。Yは、H、ハロゲン、NO、R、RO、またはRNである。RがZ−(CH−で定義される基である場合、Zは、NC、RO、ROC(O)、またはROCHCH(OCHCHであり、ここでは、pは0〜3の範囲である。nの値は、0〜3の範囲である。RおよびRは、それぞれ独立に、H、置換または非置換C〜Cアルキルである。
好ましい実施態様では、Rは、置換または非置換C〜Cアルキル基、置換または非置換C〜Cアルケニル基、Y−Ar−(CH−またはZ−(CH−で定義される置換または非置換の基である。nの値は、0〜3の範囲である。Y−Ar−(CH−基では、mは、0または1である。Arは、好ましくはフェニルである。Yは、H、Cl、Br、I、NO、R、RO、またはRNである。RがZ−(CH−で定義される基である場合、式中、Zは、NC、RO、ROC(O)、またはROCHCH(OCHCHであり、ここでは、pは、0〜3の範囲である。RおよびRは、それぞれ独立に、H、メチル、またはエチルである。好ましいシアノジチオカルビメートを以下の表1に示す。
式(I)のシアノジチオカルビメートに関して、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は、分枝鎖または非分枝鎖(すなわち直鎖)とすることができる。アルケニルまたはアルキニル基は、2つ以上の位置で不飽和でもよく、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素三重結合のいずれも含むことができる。示すように、様々な基は、シアノジチオカルビメートの殺真菌活性に悪影響を及ぼさない1個または複数の基で置換されていても、置換されていなくてもよい。置換されていないとは、特定の部分が、その構成原子上に水素原子を有すること、例えば置換されていないメチルではCHを意味する。置換されたとは、基が、有機化学で公知の典型的な官能基を有することができることを意味する。こうした官能基としては、ハロゲン化物、ヒドロキシル、チオール、アミン基、カルボン酸基、ケトン、アルデヒド、ニトリル、ニトロ、アゾ、ニトロソ、エーテル、チオエーテル、アミドなどが挙げられるが、それらだけに限定されない。
Figure 0004772806
本発明の方法で使用されるシアノジチオカルビメートは、図1に示す一般的な反応式に従って調製され得る。カボナート(kabonate)を生成するのに、シアナミドを激しく撹拌しながら窒素ブランケット下でエタノール中において二硫化炭素およびKOHと反応させた。添加後の温度は、25℃未満に保持した。また、水酸化ナトリウムを使用して、ナトリウム塩であるナボナート(nabonate)を生成することもできる。相間移動触媒を含む臭化ヘキシルのアセトン溶液を冷却したカボナート水溶液にゆっくり添加すると、ヘキシルカボナートが生成された。混合物を室温になるまで放置し、撹拌を数時間継続した。その混合物を50℃で数時間加熱した。アセトンを真空下で除去し、水層を塩化メチレンまたはクロロホルムで抽出した。水性のヘキシルカボナートを、相間移動触媒を含めてブロモクロロメタン(BCM)に数時間かけて添加した。加熱を6時間継続した。冷却後、水層を除去し、有機層を水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥させた。BCMを真空下で除去して、淡いオレンジ色液体のヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートを回収した。
図1に示す一般的な反応体系に従って好ましいシアノジチオカルビメートを調製するための出発材料としては、例えば、塩化ヘキシル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化イソプロピル、臭化ブチル、臭化ヘキシル、臭化2−ヘキシル、臭化オクチル、臭化ドデシル、臭化アリル、ヨウ化メチル、ヨウ化ヘキシル、3−ブロモ−1−プロパノール、クロルエタノール、クロロエトキシエトキシエタノール、ブロモプロピオン酸、臭化ベンジル、4−メチル臭化ベンジル、4−クロロ臭化ベンジル、およびプロモプロピオニトリルが挙げられる。エチルクロロメチルシアノジチオカルビメート、プロピルクロロメチルシアノジチオカルビメート、イソプロピルクロロメチルシアノジチオカルビメート、アリルクロロメチルシアノジチオカルビメート、ベンジルクロロメチルシアノジチオカルビメートなどのシアノジチオカルビメート類に関する公開済み合成法は、C. Fieseler、W. Walek、およびU. Thust、Tag.-Ber. Akad. Landwirtsch.-Wiss. DDR、ベルリン(1990)291.317-321;ならびに独国特許出願公開DD275433号明細書のW. Walek、J. Nauman、H. D. Pfeiffer、U. Thust、K. Trautner、C. Fieseler、M. Heschel、R. Hesse、H. Kirk、およびD. Mielkeによる木材用防腐剤としてのシアノイミドジチオカルボナート(CYANOIMIDODITHIOCARBONATES as WOOD PRESERVATIVES)に報告されている。
前述のように、本発明は、なめし加工済みのハイド上の少なくとも1種の真菌の増殖を制御する方法に関する。この方法は、なめし前、なめし中、またはなめし後のハイドを、式(I)のシアノジチオカルビメートの有効量と接触させる段階を含む。
Figure 0004772806
なめし加工済みのハイド上の少なくとも1種の真菌の増殖を制御するということは、特定の生地(substrate)または系に対して所望レベルに、所望レベルで、または所望レベル未満で、所望期間にわたって制御することを意味する。これは、増殖を完全に予防または防止して、ある所望レベルおよび所望時間で制御することとは異なる可能性がある。ここに記載するようなシアノジチオカルビメートを使用すると、多くの場合、真菌の合計数が検出不可能な範囲に低減され、かなりの期間そのレベルの数が維持され得る。好ましくは、この方法は、なめし加工済みのハイド上のすべての真菌の増殖を実質的に除去または防止するのに使用され得る。したがって、本発明は、なめし加工済みのハイドを保存するのに使用してもよい。
本発明によれば、シアノジチオカルビメートは、なめし工程後のなめし加工済みのハイド上の真菌増殖を制御するのに使用される。ハイドは、なめされる任意の種類のハイドまたはスキン、例えば、牛ハイド、ヘビスキン、ワニスキン、羊スキンなどとすることができる。本発明は、特に、なめした後の期間、かつ完成した皮革製品に加工されるまで、なめし加工済みのハイド上の真菌増殖を制御するのに有用である。この制御を実現するために、なめし工程中ハイドを、なめし加工済みのハイド上の真菌の少なくとも1種の増殖を制御するのに有効な量のシアノジチオカルビメートと接触させる。
なめしの種類としては、鉱物なめし(クロム、アルミニウム、ジルコニウム、またはチタンを使用)、ベジタブルタンニング(ミモザ、ケブラチョ、タラ、バロニアなどの天然抽出物を使用)、有機なめし(グルタルアルデヒド、THPS、またはオキサゾリジン)、およびオイルタンニング(例えば、魚油を使用してセーム革を生成)が挙げられる。多くの段階には、酸洗い段階、なめし追加段階、塩基性化段階(またはベジタブルタンニングの場合の定着段階)、およびなめし後の洗浄段階が含まれるが、それらだけに限定されない典型的ななめし工程も含まれる。なめし後には、中和段階、再なめし段階、染色段階、および乳化加脂段階が含まれ得る。式(I)のシアノジチオカルビメートを、周知の真菌の増殖が起こる可能性がある前記段階の他に、なめし工程での全加工段階中に使用することができる。各段階において、式(I)のシアノジチオカルビメートは、なめしを受けるハイドに適用する適切ななめし液の成分とすることができる。好ましくは、酸洗い段階中にハイドをシアノジチオカルビメートと接触させる。
シアノジチオカルビメートをなめし液に組み込むと、なめし工程完了後のカビ劣化からハイドが保護される。好ましくは、シアノジチオカルビメートを、例えば撹拌下で、なめし工程で使用される適切な溶液に均一に分散する。典型的ななめし液としては、例えば、鉱物なめし液、ベジタブルタンニング液、有機なめし液、オイルタンニング液、酸洗い液、なめし後洗浄液、再なめし液、染液、および加脂剤が挙げられる。この使用法は、シアノジチオカルビメートが、特になめし加工済みまたは酸洗い済みのハイドの保管および配送中、真菌の攻撃、分解、または他の微生物分解からハイドを保護するのに適用されることを保障している。
なめし加工済みのハイドを保護するのに使用される殺真菌剤の濃度は、なめし工程で使用される工程条件に依存する。本発明によれば、式(I)のシアノジチオカルビメートを、なめし業界で使用する他の殺真菌剤が適用されるのと類似の量および方法で使用することができる。真菌の制御を所望の程度達成するのに必要なシアノジチオカルビメートの有効量は、保護すべき特定のハイド、真菌増殖の状態、および所望の保護程度に応じて若干変化する可能性がある。当業者なら、量を容易に決定することができる。特定の用途では、選択量を、影響を受ける皮革生地全体を処理する前に様々な量の通常試験をして決定することができる。一般に、生地に使用される有効量は、約0.0001重量%〜約4重量%、好ましくは約0.0001重量%〜約0.2重量%の範囲である。水系では、有効量は、水系の約5〜約1000ppm、好ましくは約10〜約500ppmの範囲であり、より好ましくは約300ppmである。
なめし液へのシアノジチオカルビメートの組み込みに加えて、真菌の制御は、保護すべきハイドに式(I)のシアノジチオカルビメートの配合物を噴霧して達成され得る。真菌の制御はまた、ハイドをシアノジチオカルビメートを含む別個の浴槽に漬けるか、あるいは浸すことによって達成され得る。したがって、接触工程はまた、ハイドに当技術分野で公知の任意の方法、噴霧、浸漬(soaking)または浸漬(dipping)を行うことで実現され得る。これらは、なめす前、なめし工程の各段階の間、またはなめし工程が完了した後に行われ得る。
本発明の方法では、式(I)のシアノジチオカルビメートは、当技術分野において公知の様々な形に配合され得る。例えば、それらは、水溶液、分散液、乳濁液、もしくは懸濁液、非水溶媒中の分散液もしくは懸濁液として、または溶媒もしくは併用溶媒中に使用する化合物を溶解させることにより溶液として液体形態で調製され得る。適切な溶媒としては、グリコール類のメチルエーテル、M−パイロール、または石油蒸留物が挙げられるが、それらだけに限定されない。大豆、マツ、綿実、トウモロコシ、カノーラ、ピーナッツ、ヤシ、イネ、オリーブ、タングナッツ、ヒマの実、アマニ、シトラス、またはデーツナッツからの油を含めた植物製品などの希釈剤がある。シアノジチオカルビメートは、希釈用の濃縮物としてその目的とする使用前に調製され得る。界面活性剤、乳化剤、分散剤などの一般の添加剤を、水性の組成物または系などの液状の組成物または系の溶解性を増大させるのに、当技術分野では公知のものとして使用することができる。多くの場合、使用されるシアノジチオカルビメート化合物は、簡単な撹拌によって可溶性になり得る。
本発明の方法で使用されるシアノジチオカルビメートを含む殺真菌性組成物はまた、当技術分野において公知の方法を使用して、例えば粉末または錠剤のような固体形態で配合され得る。使用に好ましい配合物では、シアノジチオカルビメートの液体形態を、珪藻土、ゼオライト、カオリン、水溶性塩母材などのキャリアに担持して、粉末または錠剤を形成する。
別の実施態様では、本発明は、式(I)の新規なシアノジチオカルビメートに関する:
Figure 0004772806
式中、 Xは、ハロゲンであり;
Rは、置換または非置換C〜C14アルキル基、置換または非置換C〜C14アルケニル基(但し、これは−CHCH=CHではない)、置換または非置換C〜C14アルキニル基、Y−Ar−(CH−またはZ−(CH−で定義される置換または非置換の基であり;
Arは、フェニルおよびナフチルから選択される置換または非置換アリール基であり;
Yは、H、ハロゲン、NO、R、RO、RNであり;
Zは、NC、RO、ROC(O)、ROCHCH(OCHCHであり;
mは、0、2、または3であり;
nは、0〜3の範囲であり;
pは、0〜3の範囲であり;
およびRは、それぞれ独立に、H、置換または非置換C〜Cアルキルである。
式(I)の好ましいシアノジチオカルビメートは、次のものであり、ここでは:
Rは、置換または非置換C〜Cアルキル基、置換または非置換C〜Cアルケニル基(但し、これは−CHCH=CHではない)、Y−Ar−(CH−またはZ−(CH−で定義される置換または非置換の基であり;
Arは、フェニルであり;
Yは、H、Cl、Br、I、NO、R、RO、またはRNであり;
Zは、NC、RO、ROC(O)、またはROCHCH(OCHCHであり;
mは、0であり;
およびRは、それぞれ独立に、H、メチル、またはエチルである。
式(I)のより好ましいシアノジチオカルビメートは、次のものであり、ここでは:
Xは、Clであり、Rは、−(CHCH、−(CHCH、−(CH11CH3、−CH(CH、−CH(CH)(CHCH、−(CHOH、−(CHOH、−(CHCHO)CHCHOH、−(CHCOH、−CHCHCN、もしくは−CHであり;
Xは、Brであり、Rは、−(CHCHもしくは−CHであり;または
Xは、Iであり、Rは、−(CHCHもしくはCHである。
特に好ましい式(I)のシアノジチオカルビメートは、ヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートである。
実施例1〜3では、図2に示す反応式によるヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートの合成について説明する。
カボナート
エタノール2Lに固形シアナミド500gを加えた。これを溶解するまで混合し、ろ過した。次いで、それを、機械スターラー、窒素ブランケット、滴下漏斗、および温度計を備えた12L容の4ツ口フラスコに添加し、氷/水浴で0℃に冷却した。シアナミド溶液に二硫化炭素790mLを添加した。エタノール8LにKOH(85%)1547gを溶解し、温度を25℃未満に保持して、シアナミド/二硫化炭素に添加を開始した。添加を完了した後、混合を一晩継続した。沈澱物をろ過で収集し、窒素フラッシュで乾燥させた。
ヘキシルカボナート
温度計、冷却器、および機械スターラーを装備した12L容のフラスコに、カボナート364g、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)2.8g、および水2750gを添加した。溶液を10分間混合した後、アセトン5225mLをゆっくり添加した。混合物を大きな氷浴に入れ、10℃に冷却した後、アセトン中のブロモヘキサン310mLを3時間かけて滴下漏斗によって添加した。混合物を室温になるまで放置し、激しい撹拌を一晩継続した。氷浴を取り除き、加熱マントルを付け加えた。混合物を50℃で1時間加熱した。アセトンを真空下で除去した。水層を小量のクロロホルムまたは塩化メチレンで抽出した。
ヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメート
12L容のフラスコに、ブロモクロロメタン(BCM)3200mLおよびテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)6gを添加した。混合物を50℃に加熱した。水性のヘキシルカボナートを3時間かけて滴下漏斗によって添加し、加熱を6時間継続した。冷却後、溶液を分液漏斗に移動させた。水層を除去し、BCM層を水で洗浄した。BCM層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、固体をろ過した。BCMを真空下で除去して、淡いオレンジ色の液体を回収した。生成物をNMRおよびIRで同定した。純度をHPLCで決定すると、93%であった。収率は、90%を超えていた。
殺真菌活性
式(I)の化合物の抗真菌活性を測定して標準液体培地における黒色コウジ菌の増殖の抑制を決定した。液体の増殖培地は、ミネラル塩+酵母エキス(MSY)の溶液として記述されている。MSYブロスをASTM G 21−70(「Standard Practice for Determining Resistance of Synthetic Polymeric Materials to Fungi」、ASTM Standards on Materials and Environmental Microbiology、第1版、1987年)に記載されるように調製し、グルコース(10g/L)および酵母エキス(1g/L)で改良した。無菌培地のアリコート(250μL)を、標準的な96ウェルマイクロプレート(コーニング番号430247)の各試験ウェルに分配した。試験化合物のストック溶液を、アセトン:メタノールの9:1(v/v)溶液中に材料を溶解させて調製した。所望のppmレベルを実現するために、適切な量のストック溶液を試験ウェルに添加した。次いで、各試験ウェル(対照を加えて)に、黒色コウジ菌の標準懸濁液5μLを接種した。細胞懸濁液を、ポテトデキストロース寒天のスラントからの生細胞を無菌の脱イオン水中に懸濁させて調製した。次いで、懸濁液を調整して、OD686=0.28を得た。この密度は、約2.5×10CFU/mL−1に相当する(CFUはコロニー形成単位)。マイクロプレートを、暗所において28℃で4日間インキュベートした。次いで、各ウェルの686nmでの光学濃度を、SpectraMax 340マイクロプレートリーダー(Molecular Devices Corp.、サニーヴェール、カリフォルニア州)を使用して自動的に記録した。この計器からのデータを確証するために、ウェルすべてを視覚的に調査した。OD≦0.05である試験ウェルにより、細胞増殖が完全に阻害されたことが示されると判断した。この結果を表2に示す。
Figure 0004772806
なめし工場におけるヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートの性能試験 ヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートを30重量%含有するメチルカルビトール系配合物を、業務用なめし工場で試験した。82枚の牛ハイドを、クロムタンニングを使用して標準的な製造にかけた。試験配合物を、有効成分のヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートの濃度が300ppmとなる0.1重量%の濃度でフロート(なめし液)に添加した。なめし工程の完了時、5枚のなめし加工済みのハイド(「ウェットブルー」)を無作為に選択した。5枚の各ハイドのバット、ベリー、およびネック部分から、多数のテストピース(12×14cm)をカットした。得られたウェットブルーの合計47枚のテストピースを、ハイドの出所および位置に関してコード化し、各部分を非常な高温室につり下げた。この高温室は、なめし工程中に使用した試験用殺真菌剤を厳しく検証するように設計したカビを蔓延させた湿度室とした。各テストピースを、カビ増殖可能性の有無および範囲に関して4週間にわたって毎週視覚的に調査した。高温室での4週間の定温放置後、ヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートが存在する状態でなめされた各ピースは、真菌(カビ)の増殖がなかった。これは、ハイドなめし産業による殺真菌剤の所望性能種である。
式(I)のシアノジチオカルビメートの一般的合成体系を示す図である。 実施例1〜3に記述するヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートの合成を示す図である。

Claims (26)

  1. なめし前、なめし中、およびなめし後の皮と、式(I)のシアノジチオカルビメートをなめし加工済みの皮上の少なくとも真菌1種の増殖を抑制するのに有効な量だけ接触させる段階からなる、該なめし加工済みの皮上の少なくとも真菌1種の増殖を抑制する方法:
    Figure 0004772806
    (式中、Xは、ハロゲンであり;
    Rは、置換または非置換C〜C14アルキル基、置換または非置換C〜C14アルケニル基、置換または非置換C〜C14アルキニル基、Y−Ar−(CH−でまたはZ−(CH−で定義される置換または非置換の基であり;
    Arは、フェニルおよびナフチルから選択される置換または非置換アリール基であり;
    Yは、H、ハロゲン、NO、R、RO、またはRNであり;
    Zは、NC、RO、ROC(O)、またはROCHCH(OCHCHであり;
    mは、0〜3の範囲であり;
    nは、0〜3の範囲であり;
    pは、0〜3の範囲であり;
    およびRは、それぞれ独立に、H、置換または非置換C〜Cアルキルである)。
  2. Xが、Cl、Br、またはIであり;
    Rが、置換または非置換C〜Cアルキル基、置換または非置換C〜Cアルケニル基、Y−Ar−(CH−でまたはZ−(CH−で定義される置換または非置換の基であり;
    Arが、フェニルであり;
    Yが、H、Cl、Br、I、NO、R、RO、またはRNであり;
    Zが、NC、RO、ROC(O)、またはROCHCH(OCHCHであり;
    mが、0または1であり;
    およびRが、それぞれ独立に、H、メチル、またはエチルである、請求項1記載の方法。
  3. Xが、Clであり、Rが、−CH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−(CH11CH、−CH(CH、−CH(CH)(CHCH、−(CHOH、−(CHOH、−(CHCHO)CHCHOH、−(CHCOH、−CHCHCN、−CHCH=CH、もしくはCHであり;
    Xが、Brであり、Rが、−(CHCHもしくは−CHであり;または
    Xが、Iであり、Rが、−(CHCHもしくは−CHである、請求項1記載の方法。
  4. 式(I)の前記シアノジチオカルビメートが、ヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートである、請求項1記載の方法。
  5. 前記皮革生地が、ウェットブルー皮、ウェットホワイト皮、植物タンニンなめし加工済み皮、または油なめし加工済み皮である、請求項1記載の方法。
  6. 前記皮革生地が、ウェットブルー皮、ウェットホワイト皮、植物タンニンなめし加工済み皮、または油なめし加工済み皮である、請求項3記載の方法。
  7. 前記皮革生地が、ウェットブルー皮、ウェットホワイト皮、植物タンニンなめし加工済み皮、または油なめし加工済み皮である、請求項4記載の方法。
  8. 真菌の増殖に対し影響を受けやすい皮と、式(I)のシアノジチオカルビメートを含有するなめし液を該皮上の少なくとも真菌1種の増殖を抑制するのに有効な量だけ接触させる段階からなる、皮革なめし工程中に皮上の微生物の増殖を抑制する方法:
    Figure 0004772806
    (Xは、ハロゲンであり;
    Rは、置換または非置換C〜C14アルキル基、置換または非置換C〜C14アルケニル基、置換または非置換C〜C14アルキニル基、Y−Ar−(CH−でまたはZ−(CH−で定義される置換または非置換の基であり;
    Arは、フェニルおよびナフチルから選択される置換または非置換アリール基であり;
    Yは、H、ハロゲン、NO、R、RO、またはRNであり;
    Zは、NC、RO、ROC(O)、またはROCHCH(OCHCHであり;
    mは、0〜3の範囲であり;
    nは、0〜3の範囲であり;
    pは、0〜3の範囲であり;
    およびRは、それぞれ独立に、H、置換または非置換C〜Cアルキルである)。
  9. Rが、置換または非置換C〜Cアルキル基、置換または非置換C〜Cアルケニル基、Y−Ar−(CH−でまたはZ−(CH−で定義される置換または非置換の基であり;
    Arが、フェニルであり;
    Yが、H、Cl、Br、I、NO、R、RO、またはRNであり;
    Zが、NC、RO、ROC(O)、またはROCHCH(OCHCHであり;
    mが、0または1であり;
    およびRが、それぞれ独立に、H、メチル、またはエチルである、請求項8記載の方法。
  10. Xが、Clであり、Rが、−CH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−(CH11CH、−CH(CH、−CH(CH)(CHCH、−(CHOH、−(CHOH、−(CHCHO)CHCHOH、−(CHCOH、−CHCHCN、−CHCH=CH、もしくは−CHであり;
    Xが、Brであり、Rが、−(CHCHもしくは−CHであり;または
    Xが、Iであり、Rが、−(CHCHもしくは−CHである、請求項8記載の方法。
  11. 式(I)の前記シアノジチオカルビメートが、ヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートである、請求項8記載の方法。
  12. 前記皮が、ウェットブルー皮、ウェットホワイト皮、植物タンニンなめし加工済み皮、または油なめし加工済み皮である、請求項8記載の方法。
  13. 前記皮が、ウェットブルー皮、ウェットホワイト皮、植物タンニンなめし加工済み皮、または油なめし加工済み皮である、請求項10記載の方法。
  14. 前記皮が、ウェットブルー皮、ウェットホワイト皮、植物タンニンなめし加工済み皮、または油なめし加工済み皮である、請求項11記載の方法。
  15. 前記なめし液が、酸洗い液である、請求項8記載の方法。
  16. 式(I)の前記シアノジチオカルビメートが、5〜500ppmの範囲の量でなめし液中に存在する、請求項8記載の方法。
  17. 式(I)のシアノジチオカルビメートからなる皮革なめしプロセスで使用される溶液:
    Figure 0004772806
    (Xは、ハロゲンであり;
    Rは、置換または非置換C〜C14アルキル基、置換または非置換C〜C14アルケニル基、置換または非置換C〜C14アルキニル基、Y−Ar−(CH−でまたはZ−(CH−で定義される置換または非置換の基であり;
    Arは、フェニルおよびナフチルから選択される置換または非置換アリール基であり;
    Yは、H、ハロゲン、NO、R、RO、またはRNであり;
    Zは、NC、RO、ROC(O)、またはROCHCH(OCHCHであり;
    mは、0〜3の範囲であり;
    nは、0〜3の範囲であり;
    pは、0〜3の範囲であり;
    およびRは、それぞれ独立に、H、置換または非置換C〜Cアルキルである)。
  18. Rが、置換または非置換C〜Cアルキル基、置換または非置換C〜Cアルケニル基、Y−Ar−(CH−でまたはZ−(CH−で定義される置換または非置換の基であり;
    Arが、フェニルであり;
    Yが、H、Cl、Br、I、NO、R、RO、またはRNであり;
    Zが、NC、RO、ROC(O)、またはROCHCH(OCHCHであり;
    mが、0または1であり;
    およびRが、それぞれ独立に、H、メチル、またはエチルである、請求項17記載の溶液。
  19. Xが、Clであり、Rが、−CH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−(CH11CH、−CH(CH、−CH(CH)(CHCH、−(CHOH、−(CHOH、−(CHCHO)CHCHOH、−(CHCOH、−CHCHCN、−CHCH=CH、もしくは−CHであり;
    Xが、Brであり、Rが、−(CHCHもしくは−CHであり;または
    Xが、Iであり、Rが、−(CHCHもしくはCHである、請求項17記載の溶液。
  20. 式(I)の前記シアノジチオカルビメートが、ヘキシルクロロメチルシアノジチオカルビメートである、請求項17記載の溶液。
  21. 前記溶液が、酸洗い液、クロムなめし液、ホワイトなめし液、植物タンニンなめし液、油なめし液、なめし後洗浄液、再なめし液、染液、および加脂剤(fatliquor)から選択され;前記微生物が、藻類、真菌、または細菌であり;式(I)の前記シアノジチオカルビメートが、5〜500ppmの範囲の量でなめし液中に存在する、請求項17記載の溶液。
  22. 前記溶液が、酸洗い液、クロムなめし液、ホワイトなめし液、植物タンニンなめし液、油なめし液、なめし後洗浄液、再なめし液、染液、および加脂剤から選択され;前記微生物が、藻類、真菌、または細菌であり;式(I)の前記シアノジチオカルビメートが、5〜500ppmの範囲の量でなめし液中に存在する、請求項19記載の溶液。
  23. 前記溶液が、酸洗い液、クロムなめし液、ホワイトなめし液、植物タンニンなめし液、油なめし液、なめし後洗浄液、再なめし液、染液、および加脂剤から選択され;前記微生物が、藻類、真菌、または細菌であり;式(I)の前記シアノジチオカルビメートが、5〜500ppmの範囲の量でなめし液中に存在する、請求項20記載の溶液。
  24. 前記溶液が、酸洗い液である、請求項21記載の水剤。
  25. 前記溶液が、酸洗い液である、請求項23記載の水剤。
  26. グリコール類のメチルエーテル、M−パイロール、および石油蒸留物から選択される溶媒、ならびに大豆油、マツ油、綿実油、トウモロコシ油、カノーラ油、ラッカセイ油、ヤシ油、コメ油、オリーブ油、タングナッツ油、ヒマの実油、アマニ油、柑橘油、およびデーツナッツ油から選択された希釈剤をさらに含む、請求項17記載の溶液。
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