JP4771940B2 - 侵襲管理方法及びアディポネクチンの利用 - Google Patents

侵襲管理方法及びアディポネクチンの利用 Download PDF

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Description

本発明は、生物学、医学等の分野における侵襲管理方法及びアディポネクチンの利用に関する。
近年、肥満人口の割合が増加し、外科領域においても、肥満患者に対する周術期管理がより重要になってくると考えられる。肥満は手術自体が困難であるばかりでなく、動脈硬化、高血圧、糖尿病などいわゆるメタボリックシンドロームを合併していることが多く、術後感染を含め合併症の確率が高く、手術に際して重要なリスクファクターであると考えられている。しかしながら、これまで、こうしたリスクを持つ患者の手術ストレスに与える影響や術後合併症のリスクを数値化できなかった。アディポネクチンは、肥満患者をはじめとして、マルチプルリスクファクター症候群の患者で、低値を示すことが知られている。周術期アディポネクチンの測定は、マルチプルリスクファクター症候群患者の手術に及ぼす影響を測り知る事ができる。
一方、周術期に過大な手術侵襲により患者が不幸な転帰をたどる事がある。術後合併症、特に術後感染症の発生を未然に防ぐには術後早期に起こる過剰な炎症性サイトカインの発生をいかにコントロールするかが重要である。最近では、術後管理に迅速血中サイトカイン測定が導入しはじめられているが、サイトカインの制御法としては過剰な反応のみを制御し、基本的な生体反応そのものは維持していくことが重要ではないかと考えられている。今後、さらにきめ細かなサイトカインの制御、あるいは個々人の反応の違いを考慮したオーダーメード治療が必要となるものと考えられ、より簡便で的確なストレスマーカーが強く望まれていた。
また、近年の生物学分野の研究、医学分野における治療や研究においてエンドトキシンに関する研究が盛んに行われ、特に免疫系の賦活、サイトカイン産生刺激の作用が注目されている。これらの作用は直接、敗血症、肝不全、呼吸不全、DIC、多臓器不全(MOF)などの疾患に深くかかわっており、その対応策に以前より関心が高かった。また、最近、脂肪肝や炎症性腸疾患をはじめとする内科疾患の病態に慢性的なエンドトキシン刺激、及びこれにより誘導されるTNF−αを含めたサイトカインが関係していることが分かってきた。
これまで、エンドトキシンの中和、除去技術として幾つかの技術が開発されているが、それぞれ問題点が指摘されている。例えば、抗コア多糖LPS免疫グロブリンによるグロブリン補充療法では、感染の予防効果、ショックによる死亡率の改善には至っていない。リピドAに対するモノクローナル抗体療法においてもショックによる死亡率の改善には至っていない。ヒト好中球から発見された抗菌ペプチド(CAP18ペプチド)療法、さらに、エンドトキシン特異的受容体(TLR)を介したシグナル解析が進み、抗TLR抗体のエンドトキシンショック治療薬としての可能性が期待されているが、いずれも臨床応用に至っていない。また、唯一、臨床で使用されているポリミキシンB吸着カラムでは、体外循環を使用するため、経済性、血小板減少などの問題があり、また、敗血症の本態であるサイトカイン血症を改善しているのかどうかは不明であった。以上のように、従来の技術では効率良いエンドトキシン中和技術がなく、その改善、開発が強く望まれていた。
本発明は、上記のような従来技術の各種の問題点を解決することを意図してなされたものである。すなわち、本発明は、従来技術と全く異なった発想からのストレスマーカーを提供することを目的とする。
また、本発明は、従来技術と全く異なった発想からのエンドトキシン中和剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行った。その結果、血液中のアディポネクチンをストレスマーカーとし、その量を測定することで侵襲を管理することができることを見出した。
また、本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行った。その結果、エンドトキシン活性を抑制するのにヒトアディポネクチンが有効であることを見出した。
本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、次の各発明を提供する。
(1)血液中のアディポネクチンをストレスマーカーとし、その量及びストレス前とストレス後のそれぞれのアディポネクチンの量の比率(例えば、手術前のアディポネクチンの量と手術後のアディポネクチンの量と比率)を測定することを含む侵襲管理方法。
(2)上記(1)の侵襲管理方法に従う侵襲管理システム。
(3)上記侵襲管理システム(2)をサブクラスとして利用したクリニカルパス作成方法。
(4)上記侵襲管理システム(2)を利用した術後感染症発現予測方法。
(5)上記侵襲管理システム(2)を利用したメタボリックシンドローム患者の手術ストレス測定方法。
(6)敗血症、高サイトカイン血症、多臓器不全等に使用されるストレスマーカーとしてのアディポネクチン。
(7)侵襲管理におけるストレスマーカーとしてのアディポネクチンの使用。
(8)アディポネクチンを用いることを特徴とするストレス因子の分析方法。
(9)エンドトキシン活性を抑制するのに有効な量のヒトアディポネクチンを含むことを特徴とするエンドトキシン中和剤。
(10)ヒトアディポネクチンを含むエンドトキシン中和剤を直接体内投与することを特徴とするエンドトキシン活性を抑制することが必要とされる疾患の治療方法。
本発明に記載される体調管理方法を利用すれば、手術後や敗血症治療時の侵襲管理を的確にできるようになる。
また、本発明に記載されるエンドトキシン中和剤を利用すれば、例えば敗血症、多臓器不全(MOF)、DIC、呼吸不全(ARDS),肝硬変、脂肪肝、肝不全、炎症性腸疾患、腹膜炎、臓器移植、透析、熱傷、外傷、中心静脈栄養、急性重症膵炎等の治療を効率良くできるようになる。
図1は、術後血中アディポネクチン濃度の平均値および標準誤差を算出した結果を示すものである。血中アディポネクチン値が手術侵襲により低下することを示すグラフである。 図2は、術後10日目で感染している群(血中SLP値の陽性群)と陰性群で比較した結果を示すグラフである。SLP陽性群において術前後でアディポネクチン値が著しく低下していることが分かる。 図3は、アディポネクチンの生理的濃度が低濃度LPS、エンドトキシンを中和することを示すグラフである。
アディポネクチンは、大阪大学細胞工学センターにおいて発明者によりクローニングされた脂肪組織特異的内分泌因子である(Maeda K et al.:Biochem Biophys Res Commun 221(2):286−9、1996)。その血中濃度は肥満者において低下し、さらに、肥満度が同じでも、心筋梗塞や狭心症といった動脈硬化性疾患、および糖尿病で血中アディポネクチンが低下していることを明らかにされている(前田和久ら:Annual Review 2004 内分泌、代謝 p15−19)。従ってアディポネクチンは糖尿病や高血圧、高脂血症などのいわゆるメタボリックシンドローム患者において手術前後の全身状態を把握するのにも有効であると考えられる。
最近、本発明者らはアディポネクチンが直接的にエンドトキシン活性抑制作用を持つことを見出した。術後の血中にはエンドトキシンが比較的高濃度に存在する。このエンドトキシンの活性化を抑制する機能を持つアディポネクチンはその分低濃度となる。これはアディポネクチンがエンドトキシンの内因性中和物質として作用し消費され、またエンドトキシン、或いは感染症で高サイトカイン血症となり、その結果としてアディポネクチン濃度が低下するためと推測される。従って、術後の侵襲を監視する上で、このアディポネクチンに注目すれば、より一層、体調の管理に有用となる。
エンドトキシンはグラム陰性菌の菌体成分で様々な生理活性を有し、臨床的に敗血症(エンドトキシン血症)の治療はきわめて困難でいまだ有効な治療法がないため、致死率も高い。最近本発明者らは、ラットの腹膜炎モデルを作成し、血中のアディポネクチン、エンドトキシン、TNF-αを測定した。そしてこの腹膜炎モデルでは、対照群と比較し、血中エンドトキシンおよびTNF-αが増加するが、血中アディポネクチンが有意に低下し、TNF-αと鏡像関係にあることを見出した。このことは、腹膜炎という高エンドトキシン血症において、アディポネクチンはエンドトキシンの内因性中和物質として作用し消費された可能性がある。アディポネクチンはin vitroで炎症性サイトカインであるTNF-αと互いに抑制しあうことが報告されていることから、このアディポネクチンの低下はエンドトキシンにより活性化されたTNF-αの増加に伴う間接的な反応であるかもしれない。いずれにしてもアディポネクチンあるいはアディポネクチン産生増強剤は、難渋する敗血症治療のブレークスルーとなり得るかもしれない。
術後特に腹部外科手術後の血中にはエンドトキシンが比較的高濃度に存在すると考えられる。本発明者らは、腹部外科手術前後で血中アディポネクチン値を測定し、手術前後で血中アディポネクチン値が低下し、術後感染症を合併した症例ではこの低下率が高いことを見出した。術前後のアディポネクチン値の測定により、手術ストレスの度合いを知ることができるようになり、術後感染の予測ができるようになる。これまで、術後急性炎症反応のマーカーとしてCRPが臨床的に頻用されているが、実際の炎症の推移をリアルタイムに反映しているとはいえない。手術侵襲を含めた急性炎症時に、炎症性サイトカインやCRPのみならず、むしろ抗炎症性サイトカインとしてのアディポネクチンの動態に注目すれば、より一層、感染対策を主体とした術後管理に有用であると考えられる。この技術は患者が自分自身の治療スケジュールがどのようなものか、或いは治療のどの段階なのか知ることができる点で、最近、全国的に導入されているクリニカルパスに有用である。同時にこの方法は、包括医療、医療経済へ大きく影響する技術であると強く期待される。クリニカルパスの術後サブクラスの変更を考慮するというように、アディポネクチンを術後感染予防の治療方針の決める際に用いることも考えられる。
アディポネクチンの周術期測定の意義をまとめると以下のようになる。ここで、周術期とは、手術前から手術中、手術後までの期間を意味する。
(1)これまで数値化されていないメタボリックシンドロームのリスク評価ができるようになる。
(2)手術ストレスや術後炎症性サイトカインTNFαの上昇を反映した術後の血中アディポネクチン値の低下が手術ストレスの指標となる。
(3)術後10日目の血中SLP値とアディポネクチンの相関グラフより、術後の感染を予測できるようになる。
ここで、(3)については、術後の抗菌剤の予防投与は、欧米では基本的には手術日と術翌日に限られるが、日本では、数日間投与されることが多い。また、感染を疑った場合、細菌培養の結果を得るまで数日かかるため、それまで抗菌剤の投与が続けられることが多い。現在、複数の大学病院で、術翌日のSLP値を測定し、それ以降の抗菌剤投与継続の有無の指標にすることが可能かどうかの大規模臨床試験が始まっている。SLPは、このように術後感染の予測に使われようとしている。今回、術後10日目の血中SLP値とアディポネクチンの相関が明らかとなり、手術ストレスを反映する アディポネクチンが、周術期の感染予測にも有用であることが示された。以上のように、例えば、術前後のアディポネクチン値の測定から、クリニカルパス(工程管理手法)の術後サブクラスの変更を考慮するというように、アディポネクチンを術後感染予防の治療方針を決める際に用いることも考えられる。
本発明で対象とするアディポネクチンは、その種類において特に制約されるものではないが全長蛋白型、グロブラー蛋白型等が挙げられる。また、その動物由来も特に制約されるものではないが、ヒトの術後管理を目的とする場合は、ヒトアディポネクチンをマーカーとする。
マーカーを測定する方法は、常法に従えば良く、例えば特異的抗体でウェスタンブロッティングする方法、Linco社製ELISAキットを使用する方法等が挙げられるが、特に制約されるものではない。また、検体は血液そのものでも、血液血球成分を除去したもの、さらにそれを濃縮したものでも良い。
本発明に示す侵襲管理とは術後感染の予測、及び早期加療、クリニカルパスのサブクラスを含めた治療スケジュールの作成を目的とする。特に、今後ますます増加すると考えられるメタボリックシンドローム患者の手術ストレスに対する影響の数値化は極めて重要である。
侵襲を管理する際には、予測したい個体の手術前と手術後の血中アディポネクチン濃度を比較検討すれば良い。ここで、手術前の血中アディポネクチン濃度値を基準として少なくとも10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上に増加していると、予測したい個体はストレスによる感染症、インスリン抵抗性、敗血症、高サイトカイン血症、多臓器不全を起こしやすくなることが明確となる。
ヒトアディポネクチンは、その種類において特に制約されるものではないが全長蛋白型、グロブラー蛋白型が挙げられる。本発明においては、低濃度エンドトキシン濃度(50pg/ml〜50ng/ml)を中和するヒトアディポネクチンを0.1〜100μg/mlの濃度で含有し、好ましくは0.5〜50μg/mlの濃度で含有し、さらに好ましくは1〜10μg/mlの濃度で含有するものである。0.1μg/ml以下の濃度であれば十分な血中濃度にならず、逆に、100μg/ml以上の濃度であればヒトの生理的濃度をはずれ、好ましくない。
本発明に係わるヒトアディポネクチンは、種々の形態の製剤として用いられる。具体的には、注射剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤等が挙げられるが、特に限定されるものではない。特に注射剤の場合には、ヒトアディポネクチンを適当な溶媒に溶解させて調製されるが、緩衝剤や保存剤を添加しても良い。
また、本発明で示す中和剤とはヒトアディポネクチンが固定化された形態のものでも良い。その際、固定化方法は特に限定されるものではなく、常法として知られる縮合剤などで良い。また、吸着される担体の形状も特に限定されるものではないが、例えば、膜、繊維、中空糸、粒状物、不織布などが挙げられる。
本発明に示されるエンドトキシン中和剤としての医薬品は、その効能が認められれば特に限定されるものではないが、例えば敗血症、多臓器不全(MOF)、DIC、呼吸不全(ARDS),肝硬変、脂肪肝、肝不全、炎症性腸疾患、腹膜炎、臓器移植、透析、熱傷、外傷、中心静脈栄養、急性重症膵炎等の治療薬が挙げられる。さらに、ヒトアディポネクチンがTNF−α産生阻害や作用阻害することから、抗TNF−α作用薬としても期待される。
ヒトアディポネクチンは、その種類において特に制約されるものではないが全長蛋白型、グロブラー蛋白型が挙げられる。本発明においては、低濃度エンドトキシン濃度(50pg/ml〜50ng/ml)を中和するヒトアディポネクチンを0.1〜100μg/mlの濃度で含有し、好ましくは0.5〜50μg/mlの濃度で含有し、さらに好ましくは1〜10μg/mlの濃度で含有するものである。0.1μg/ml以下の濃度であれば十分な血中濃度にならず、逆に、100μg/ml以上の濃度であればヒトの生理的濃度をはずれ、好ましくない。
本発明に係わるヒトアディポネクチンは、種々の形態の製剤として用いられる。具体的には、注射剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤等が挙げられるが、特に限定されるものではない。特に注射剤の場合には、ヒトアディポネクチンを適当な溶媒に溶解させて調製されるが、緩衝剤や保存剤を添加しても良い。
また、本発明で示す中和剤とはヒトアディポネクチンが固定化された形態のものでも良い。その際、固定化方法は特に限定されるものではなく、常法として知られる縮合剤などで良い。また、吸着される担体の形状も特に限定されるものではないが、例えば、膜、繊維、中空糸、粒状物、不織布などが挙げられる。
本発明に示されるエンドトキシン中和剤としての医薬品は、その効能が認められれば特に限定されるものではないが、例えば敗血症、多臓器不全(MOF)、DIC、呼吸不全(ARDS),肝硬変、脂肪肝、肝不全、炎症性腸疾患、腹膜炎、臓器移植、透析、熱傷、外傷、中心静脈栄養、急性重症膵炎等の治療薬が挙げられる。さらに、ヒトアディポネクチンがTNF−α産生阻害や作用阻害することから、抗TNF−α作用薬としても期待される。
[実施例]
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
腹部外科手術例38例(男性19例、女性19例)の術前、術後血中アディポネクチン濃度を常法により測定し、その平均値および標準誤差を算出した。得られた結果を図1に示す。腹部外科手術により血中アディポネクチン濃度は低下することが分かる。術前、術後血中アディポネクチン濃度は、各々10±1.0μg/ml、8.1±0.9μg/mlと、術後アディポネクチン濃度は有意に(p<0.0001)術前に比べて、低下した。
腹部外科手術例38例の、血中アディポネクチン濃度の術前後の比(術後アディポネクチン濃度/術前アディポネクチン濃度)を算出し、術後10日目の血中SLP値の陽性群と陰性群で、比較した。得られた結果を図2に示す。SLP値の陽性群では0.71±0.05、陰性群では0.90±0.06と、陽性群で有意に(p<0.03)低い値を示した。このことから、術前術直後の血中アディポネクチン濃度を測定することにより、周術期の感染症を予測でき、術前後の血中アディポネクチン濃度の比は腹部外科手術の周術期感染症の予測に有用であることが分かる。ここで、SLP(Silkworm larvae plasma)テストとは、血液中の細菌の細胞壁成分であるβグルカン(真菌由来)、ペプチドグリカン(グラム陽性球菌、及びグラム陰性桿菌由来)の総体を測定する方法であり、これまでに血中へのバクテリアルトランスロケーションを反映することが示されている(文献Crit. Care.Med.,2002)。
リポポリサッカライド(大腸菌由来リポポリサッカライド、0111:B4、カタログ番号#4391、シグマ社製)水溶液(最終濃度50ng/ml、5ng/ml、500pg/ml、50pg/ml)を作成し、各々100マイクロリットルに、蒸留水100マイクロリットル もしくはアディポネクチン(テクネ社ヒトリコンビナントアディポネクチン, カタログ番号21065X)50μg/ml溶液100マイクロリットルを混合する。37℃1時間で恒温槽でインキュベート後、リポポリサッカライド濃度を比濁時間分析法にて測定した。得られた結果を図3に示す。生理的濃度のアディポネクチンが低濃度のLPSを中和することが分かる。
腹部外科手術例30例(術後感染した例15例、術後感染しなかった例15例)の術前、術後血中アディポネクチン濃度を測定した。術前のアディポネクチン濃度に対する術後血中アディポネクチン濃度の比率は、術後感染した例では0.68、術後感染しなかった例では1.00と、術後感染した例ではこの比率が有意に高いことが分かった。このことより、術前後のアディポネクチン値の測定により、手術ストレスの度合いを知ることができるようになり、術後感染の予測ができるようになる。
本発明に記載される方法であれば、術前後のアディポネクチン値の測定により、手術ストレスの度合いを知ることができるようになり、術後感染の予測ができるようになる。この技術は患者が自分自身の治療スケジュールがどのようなものか、或いは治療のどの段階なのか知ることができる点で、最近、多くの病院で導入されているクリニカルパスに有用である。従って、この方法は、例えば包括医療、医療経済へ大きく影響する技術であると強く期待される。したがって、本発明は医学、生物学等の分野における極めて有用な発明である。
また、本発明によれば、アディポネクチン投与によりエンドトキシンが中和される。そのため、エンドトキシン値の低下に加えて、エンドトキシンによるTNF−αを含めたサイトカイン産生刺激を阻害できるようになる。さらに、アディポネクチンの抗TNF−α作用を用いれば、高TNF−αによって引き起こされる病態の治療ができるようになる。この方法は、たとえば敗血症時のエンドトキシン中和、抗サイトカイン(抗TNF−α)への応用が強く期待される。したがって、本発明は医学、生物学等の分野における極めて有用な発明である。

Claims (6)

  1. 血液中のアディポネクチンをストレスマーカーとし、その量及びストレス前とストレス後のそれぞれのアディポネクチンの量の比率を測定することを含む侵襲管理方法であって、当該侵襲管理がヒトの手術後感染症管理である侵襲管理方法
  2. 侵襲管理がヒトのインスリン抵抗性の管理である、請求項1記載の侵襲管理方法
  3. 手術が移植治療である、請求項1または2記載の侵襲管理方法
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の侵襲管理方法を利用した術後感染症発現予測方法
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載の侵襲管理方法を利用したメタボリックシンドローム患者の手術ストレス測定方法
  6. 請求項1〜3のいずれか1項記載の侵襲管理におけるストレスマーカーとしてのアディポネクチンの使用
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