JP4769992B2 - ロールの構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙等のシート類、ウェブ、ボード類を製造する機械装置や、前記製造物の塗工等の加工又は搬送する際に用いられるロールの構造に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
ロールは、各種製造工場において、ワーク(加工物)に塗工を施したり、艶を付与したり、プレスしてワークの厚みを揃える等の用途に、広く用いられている。また、ワークの加工以外にも、ワークの搬送にも広く用いられる。
例えば、製紙工場において紙を抄く際に用いられるロールの例を以下に述べる。製紙工場で紙を抄く場合、先ず、紙料のパルプ懸濁液をヘッドボックスからほぼ水平に張られた状態で周回するエンドレスのベルト状のメッシュ状のワイヤーの上に流し込む。
【0003】
パルプの懸濁液中の水分の大部分はワイヤー上を走行中に、自重によりメッシュの隙間から流出したり、フォイルやウェトサクションボックス、ワイヤーサクションボックス等からの吸引により搾水される。搾水されたパルプ懸濁液は、パルプ中の繊維どうしが絡み合って、ある程度の形状保持力を有する湿紙になり、次工程のプレスパートに送り込まれる。プレスパートでは、前記湿紙をエンドレスで周回するフェルト上に載せられ、プレスロールにより加圧されると同時に更に水分を吸引・搾水される。プレスパートを経たパルプのシートは、次のドライパートに送られ、加熱ロールにより乾燥される。
【0004】
図2は、製紙工場で一般に用いられている抄紙機のプレスパートの一部分の断面説明図の一例であり、図1は図2の部分拡大図である。ワイヤーパートで搾水された湿紙S(太線で表示)は、ピックアップロールR1の吸引作用によって、周回するエンドレスの第1フェルトF1に乗り移る。ピックアップロールR1は、ロール面に多数の孔があけられ、ロール内部から吸引しているので、湿紙は、搾水されるとともに、第1フェルトF1に吸い付けられて、第1フェルトF1とともに走行する。
【0005】
続いて、湿紙Sは、第1フェルトF1とともに、第1プレスロールP1とセンターロールR2とのニップ部を通過する。このニップ部で、湿紙Sは、フェルトF1を介して搾水され、続いて、第2プレスロールP2とセンターロールR2とのニップ部で再び搾水される。第2プレスロールP2とセンターロールR2のニップ部を通過した湿紙Sは、シート状の形状を保持するに十分なまでに繊維どうしが絡み合っているが、まだ水分を多量に含んでいるので、ロール離れが悪く、センターロールR2に貼り付いたままの状態である。それを第1ドクターブレードD1により、ロールから離脱させるとともに、次の工程に向けて送り出される。
【0006】
ところで、センターロールR2に貼り付いた状態の湿紙Sを次の工程に向けて送り込むには、湿紙SをセンターロールR2から剥がさなければならないが、そのため、センターロールR2には、図1に示すようにドクターブレードが1本又は2本が当接され、湿紙Sを強制的に剥がす。また、図示しないエアノズルからエアを噴射し、湿紙をロールから剥がすのを支援する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上、一般の製紙工場で用いられている抄紙機の構造の一部について述べたが、ドクターブレードはロールに、通常200g/cm〜600g/cmの線圧で当接されているので、摩耗が激しく、頻繁に交換しなければならない。湿紙Sが正常に流れているときは、湿紙Sは下流側から常時引っ張られるているので、ドクターブレードの役割はそれほど大きくないが、運転開始時の調整時や紙切れ等の異常事態が発生したときは、上流側から繰り出される湿紙Sは、ドクターブレードにより、センターロールR2から剥がされ、ドクターブレードの直下に落とし込まれ、回収されてパルプに再生される。
【0008】
ドクターブレードが摩耗してくると、湿紙の剥ぎ取りが不完全になり、湿紙が塊となってプレスロールとセンターロールのニップ部に食い込み、フェルトを損傷させてしまう。従って、運転中、ドクターブレードは、常時ロールに当接し、常に正常に働くよう、保守しておかなければならない。
上述のごとく、ドクターブレードにより湿紙を強制的にロールから剥がす必要があるので、ドクターブレードは強度の高い金属製のものが多く用いられている。ところが、従来の金属製のドクターブレードは、摩耗が激しく、頻繁に交換しなければならないため、運転中、抄紙機を一時停止させなければならない。そのため、操業率が低下するという問題点があった。
【0009】
以上、抄紙機のプレスパートにおいて、ロールに貼り付いた湿紙を剥がすときに用いられる従来技術によるドクターブレードの問題点を述べたが、同様の問題は、紙以外のシート、ウェブを製造・加工する機器においても見られる共通の問題点である。また、紙等のシート、ウェブや平板のボード等に塗工を施したり、艶を付与する他の機器においても、同様の問題点が存在する。塗工機や艶だし機等の機器に用いるロールは、ワークを加工する際に、ロールに付着した異物を除去し、ロールの表面を常時平滑に保っておく必要があり、そのため、常時ロール表面にドクターブレードが当接されている。更にまた、各種ワークの搬送用ロールにおいても、異物が付着すると支障が生じるような搬送物を扱う場合は、同様にドクターブレードが用いられる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明では、以下に述べる手段で、上記問題点を解決した。即ち、センターロールR2に2本のドクターブレードD1,D2を当接させ、前記2本のドクターブレードのうちセンターロールR2の回転方向から見て、上流側に設置されているドクターブレードD1には従来と同じ金属製のものを用い、下流側に当接されているドクターブレードD2には、カーボン板とガラス繊維板を交互に積層、接着した積層板からなるドクターブレードを用いたところ、金属製のドクターブレードD1の摩耗が殆どなくなった。
上記解決手段は、抄紙機以外の機器においても、常時ロールにドクターブレードを2枚以上当接している機器の場合に適用できる。ドクターブレードとロールとの摩擦により、ドクターブレードが摩耗することは、抄紙機の場合と同様だからである。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本件発明の実施例の説明図である。ワイヤーパートで形成された湿紙Sは、ピックアップロールR1のところで、第1フェルトF1により吸い付けられ、フェルトとともに矢印方向に走行し、第1プレスロールP1とセンターロールR2のニップ部を通過する。この第1のニップ部出口では、第1フェルトF1よりもセンターロールR2の方が表面が平滑なので、湿紙Sは、第1フェルトF1から離脱し、センターロールR2に巻き付きながら、第2プレスロールP2とセンターロールR2の間の第2のニップ部に向けて走行し、その第2のニップ部を通過する。
【0012】
第2のニップ部出口でも、湿紙Sは、第2フェルトF2から離脱し、下方に向けて落下する。運転開始時等、所定の品質、坪量の湿紙が順調に流れ、第3フェルトF3に向けて通紙する準備が整うまでは、第2のニップ部出口から出てくる湿紙Sは、第1ドクターブレードD1により、センターロールR2から剥がされ、直下に落とし込まれてパルプに再生される。第3フェルトF3に向けて通紙する準備が整うと、直下に落下している湿紙Sの左右いずれか一方からナイフを入れ、小幅のテール紙に裁断すると同時に、このテール紙がペーパーロールR3を通過し、第3フェルトF3に載るように、ほぼ水平方向にエアが噴射される。テール紙が第3フェルトF3に通紙されれば、テール紙の幅を徐々に拡げて湿紙Sの全幅を通紙させる。テール紙が通紙されると湿紙Sは、前方から引っ張られるので、エアの噴射は不要となる。従って、センターロールR2に貼り付いた湿紙Sは、前方から引っ張られるとともに、ドクターブレードD1により、センターロールR2から剥がされるのである。
【0013】
また、運転中に紙切れ等の事故が生じ、センターロールR2のところで、通紙をし直さなければならない場合も同様に、その準備が整うまでの間、第1,第2フェルトから繰り出される湿紙Sは、第1ドクターブレードD1により、センターロールR2から剥がされ、直下の湿紙回収装置に落とし込まれる。第1ドクターブレードD1により剥ぎ取れなかった湿紙Sの粕は、更に第2ドクターブレードD2により除去される。このように、上記2本のドクターブレードは常時センターロールR2に当接されている。ドクターブレードは1本が単独で用いられる場合もあるが、上記ようにダブルで用いる場合が多い。
【0014】
第1ドクターブレードD1及び第2ドクターブレードD2の線圧は、高ければ高いほど、その剥ぎ取り効果は大きいが、あまり高い線圧をかけるとドクターブレードやセンターロールR2の摩耗が激しいので、通常は、それぞれ、200〜600g/cm程度である。それでも、ドクターブレードを常時センターロールR2に当接させておくため、ドクターブレードの摩耗が激しく、頻繁に交換しなければならない。ドクターブレードの摩耗を軽減するために、摩耗量の少ない硬質金属のドクターブレードを用いると、今度はセンターロールR2が摩耗し、その寿命を短くするという障害が発生するので、余り硬質のものを用いることができない。
本発明では、第1ドクターブレードD1に従来の金属製ドクターブレードを用い、第2ドクターブレードD2にカーボン板とガラス繊維板を交互に積層、接着した板からなるドクターブレードを用いたところ、第1ドクターブレードD1の摩耗が殆ど見られなくなり、寿命が大幅に延びた。
【0015】
ドクターブレードの寿命が延びた理由は、以下の理由によるものと思料される。その理由を、図1の部分拡大図である図3の模式図によって説明する。抄紙機運転中、第1ドクターブレードD1は、湿紙SをセンターロールR2から剥ぎ取る役割を担っているので、第2ドクターブレードD2よりも大きな線圧でセンターロールR2に当接されている。
一方、第2ドクターブレードD2は第1ドクターブレードD1で剥ぎ取れなかった湿紙Sの粕を除去する役割なので、通常は第1ドクターブレードD1ほど大きな線圧で当接されていない。センターロールR2は、硬い金属製の第1ドクターブレードD1が大きな線圧で当接した状態で高速回転しているから、ドクターブレードとの摩擦や、パルプに添加された顔料の粒子等との摩擦により徐々に摩耗する。センターロールR2のロール面は、一見したところ鏡面のごとく見えるが、詳細に観察すれば、図3の模式図のように、微細なクレーター状の凹部が無数に存在する。従って、ドクターブレードは、いわば細かい目の回転砥石で研磨されているような状態である。
【0016】
カーボン又はカーボンを含む材質からなる第2ドクターブレードD2は、微細なクレーター状の凹部が無数に存在するセンターロールR2に当接され、しかもセンターロールR2は高速で回転しているから、第2ドクターブレードD2も当然摩耗していく。ところが、ブレードの先端がセンターロールR2との摩擦により摩耗する過程で、ブレード先端からカーボンの微細な粒子が分離し、センターロールR2表面の凹部を埋めるため、粗いロール表面を滑らかにし、これが潤滑油のような役割を果たし、ドクターブレードの摩耗を防止するものと思料される。
【0017】
従って、本発明で用いるカーボン又はカーボンを含む材質からなるドクターブレードは、純粋のカーボンのみからなるものに限らず、合成樹脂にカーボン粒を添加させて成形したものや、カーボン繊維で補強した合成樹脂板からなるのもの、合成樹脂の繊維からなる繊維板とカーボン板とを交互に積層して貼りあわせたもの、ガラス繊維等の鉱物質繊維の板とカーボン板とを交互に積層して貼りあわせたものなど、カーボン又はカーボンを含む材質からなるものであれば、いずれも同様の効果を奏する。また、第2ドクターブレードD2は、第1ドクターブレードD1により剥ぎ取れなかった湿紙Sの粕を除去するためのものであり、ロールに当接する圧力も第1ドクターブレードD1よりも小さくてもよいから、その形状は、必ずしもブレードの形状である必要はなく、例えば、開き角度の大きい楔型等の他の形状で第1ドクターブレードD1により剥ぎ取れなかった湿紙Sの粕を除去できるような形状であればよい。
【0018】
以上、カーボン又はカーボンを含む材質からなるドクターブレードの適用例とその効果を抄紙機のプレスパートのセンターロールR2について述べたが、本発明は、抄紙機における他のプレスロールは勿論、紙等のシート、ウェブや平板のボード等に塗工を施したり、艶を付与する塗工機等他の機器や、更にまた各種ワークの搬送用ロールにも応用できる。このように、本発明は、紙等のシート類、紙以外のウェブ、ボード類など製造、加工、搬送等の広い技術分野の機器に応用できる。
また、ロールの材質については、ウェブや平板のボード等に塗工する場合は、鋼鉄にクロムメッキを施した金属ロールが多く用いられるが、塗工及び塗工以外の分野を含めて、ストーンロール、合成ストーンロール、セラミックロール等の金属ロール以外の材質からなるロールの場合にも本発明を応用できる。
【0019】
【発明の効果】
第2ドクターブレードD2にカーボン又はカーボンを含む材質のドクターブレードを用いると、ドクターブレードの先端がロールとの摩擦により摩耗する過程で、ブレード先端からカーボンの粒子が分離し、ロール表面の凹部を埋め、粗いロール表面を滑らかにするので、金属製の第1ドクターブレードD1との摩擦抵抗が小さくなり、ドクターブレードD1の摩耗を低減できるので、ドクターブレードの交換頻度を少なくし、操業率の向上を図ることができる。
【0020】
また、ドクターブレードD1とセンターロールR2との摩擦により、ドクターブレードD1ばかりでなく、センターロールR2も摩耗するが、第2ドクターブレードにカーボン又はカーボンを含む材質のドクターブレードを用いることにより、ドクターブレードD1との摩擦によるセンターロールR2の寿命低下を防止することができる。
本発明は、紙の抄紙機に限らず、各種ワークの塗工機やロールプレス機等、ダブルでドクターブレードを用いるロールに応用すれば、同様の効果を得ることができることは、実際に試験を行わなくとも容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を説明するための抄紙機のプレスパートの断面説明図
【図2】 本発明を説明するための抄紙機のプレスパートの断面説明図
【図3】 図1の部分拡大図
【符号の説明】
D1 第1ドクターブレード
D2 第2ドクターブレード
F1 第1フェルト
F2 第2フェルト
F3 第3フェルト
P1 第1プレスロール
P2 第2プレスロール
R1 ピックアップロール
R2 センターロール
R3 ペーパーロール
S 湿紙
Claims (4)
- 紙等のシート類、ウェブ、ボード類を製造する機械装置、前記製造物の塗工等の加工又は搬送する機械装置に用いられるロールの構造であって、
ロールの回転方向から見て、上流側の金属性のドクターブレードの線圧が、下流側のカーボン又はカーボンを含む材質からなるドクターブレードの線圧よりも大きく前記ロールに当接することにおいて、
前記ロールと前記下流側のカーボン又はカーボンを含む材質からなるドクターブレードとの摩擦による摩耗で、
前記下流側のカーボン又はカーボンを含む材質からなるドクターブレードから分離したカーボンの粒子が、
前記ロール表面の凹部を埋め前記ロール表面が滑らかになることで、
前記ロールと前記上流側の金属性のドクターブレードとの摩擦抵抗を小さくし、
前記上流側の金属性のドクターブレードの摩擦による摩耗を低減する作用を有することを特徴とするロール構造。 - カーボンを含む材質からなるドクターブレードが、カーボン板とガラス繊維板を交互に積層、接着した板からなることを特徴とする請求項1に記載のロール構造。
- カーボンを含む材質からなるドクターブレードが、カーボン粒を添加した合成樹脂板又はカーボン繊維で補強した合成樹脂板からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロール構造。
- ロールが抄紙機のプレスパートのセンターロール又はプレスロールであることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載のロール構造。
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