JP4768909B2 - トポイソメラーゼ阻害剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヌクレオチドアルキル誘導体の新しい用途に関する。さらに詳しく言えば、ヌクレオチドアルキル誘導体を含むトポイソメラーゼ阻害剤、および、制癌剤として使用するための該阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
トポイソメラーゼは、DNA鎖の切断と再結合に関与する酵素であり、超螺旋(スーパーコイル)型DNAを弛緩型DNAに変換し、DNAの複製、転写、組換え等の過程で生じる高次構造の歪みを解消し、DNA代謝を円滑に進行させる機能を有している。
このトポイソメラーゼには、その作用メカニズムの違いによってトポイソメラーゼI型(トポI)およびトポイソメラーゼII型(トポII)が存在することが知られている。トポIは、二本鎖DNAの片方のみを切断し、もう片方のDNA鎖を通過させた後、切断面を閉じる反応を触媒する酵素であり、トポIIは、二本鎖DNAを同時に切断し、その間を別のDNA鎖が通過した後、切断箇所を再結合する反応機構を有する酵素である。
【0003】
1984年、米国のLiu, L.F.博士らは、当時主要な制癌剤であったアムサクリン(m−AMSA:4'-(9-acridinylamino)methanesulfon-m-anisidide)が細胞内のDNAトポイソメラーゼを標的とし、この酵素活性を阻害することにより、制癌効果を発揮することを明らかにした(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 第81巻, 1361頁, 1984年)。続いて、エピポドフィロキシン誘導体(エトポシド:VP−16、テニポシド:VM−26)、アドリアマイシンをはじめ、多くの制癌剤のトポイソメラーゼ阻害活性が報告された(Liu, L.F., Ann. Rev. Biochem., 第58巻, 351頁, 1989年、Drlica, K. et al., Biochem., 第27巻, 2253頁, 1988年)。
トポイソメラーゼ阻害剤の多くは、一時的に切断されたDNA鎖とトポイソメラーゼとの反応中間体(クリーバブル複合体)に結合し、クリーバブル複合体の状態でトポイソメラーゼの機能を停止させる効果を有する。そのため、DNA鎖が切断されたままの状態となり、細胞増殖が妨げられたり、アポトーシスが誘導されたりするので、制癌剤として利用できるものが多い。また、癌細胞のような増殖の激しい細胞には、正常細胞に比べてこのトポイソメラーゼが多く存在することが知られている(Spitzner, Nucleic. Acid. Res., 第16巻, 5533頁, 1988年)。したがって、トポイソメラーゼ阻害活性を有する化合物の探索によって得られた物質は、制癌剤として有用である。
【0004】
癌は、我が国では死亡率第1位の疾患である。近年、手術療法や放射線療法といった局所療法の進歩が癌患者の生存率の向上に寄与しつつあるものの、癌は転移により全身に広がった時点で発見されることも多く、癌治療方法の確立には、かかる全身性疾患となった癌への対応が急務である。この点で、制癌剤を中心とする化学療法の開発に寄せられる期待は、ますます高まっている。
また、癌細胞に関する分子生物学的アプローチの進展は、従来明らかにされていなかった制癌剤の作用機構の解明に重要な指針を与えてきている。
【0005】
これらのことを契機として、トポイソメラーゼ阻害活性を有する制癌剤のスクリーニングが行われ、その結果、植物成分由来のゲニステイン(Okura, A., Biochem. Biophys. Res. Commun., 第157巻, 183頁, 1988年)、イリノテカン(Kunimoto, T., Cancer Res., 第47巻, 5944頁, 1987年)、微生物由来成分であるテルペンテシン(Kawada, S-Z., Cancer Res., 第51巻, 2922頁, 1991年)、クレロシジン(Kawada, S-Z., J. Antibiot., 第45巻, 1182頁, 1992年)、セイントピン(Yamashita, Y., Biochem., 第30巻, 5838頁, 1991年)およびその誘導体であるUCE6(Fujii, N., J. Antibiot., 第46巻, 1173頁, 1993年)、ブルガレイン(Fujii, N., J. Biol. Chem., 第268巻, 13160頁, 1993年)等の有望な医薬品候補物質が見出されるに至った。
【0006】
一方、分子内にフッ素を有するフルオロウラシル化合物が制癌活性を有することは、これまでによく知られている。また、ウリジン5’−アルキルホスフェート類が酵母菌のαおよびαハプロイド(1倍体)細胞間の有性凝集を細胞の成長に影響を与えることなく阻害したり(FEMS Microbiol. Lett., 第147巻, 17頁, 1997年)、抗真菌活性を有する(特開平10−218778号公報)ことが報告されている。さらに、本発明者らは、ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート類がカルシウム拮抗作用を有し、血小板凝集抑制剤として有用であることを見出している(特開2000−247891号公報)。しかしながら、フッ素を含まないヌクレオシド5’−アルキルホスフェート誘導体についてのトポイソメラーゼ阻害活性は報告されておらず、該誘導体が制癌剤として有用であるとの報告もない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、制癌剤として有用な新規なトポイソメラーゼ阻害剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、種々のヌクレオシド誘導体について鋭意研究を重ねた結果、ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート誘導体、とりわけ、ウリジン5’−アルキルホスフェート誘導体(UMPC)およびアデノシン5’−アルキルホスフェート誘導体(AMPC)が顕著なトポイソメラーゼ阻害活性を有する事実を見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(1)式(I):
【化2】
(式中、R1は直鎖または分岐鎖状アルキル基、R2はプリン塩基またはピリミジン塩基を示す。)で表されるヌクレオチドアルキル誘導体を含むトポイソメラーゼ阻害剤、(2)R1が炭素数30を超えないアルキル基である、上記(1)記載のトポイソメラーゼ阻害剤、(3)R1が炭素数4〜24のアルキル基である、上記(2)記載のトポイソメラーゼ阻害剤、(4)R1が炭素数16のアルキル基である、上記(3)記載のトポイソメラーゼ阻害剤、(5)R1が炭素数20のアルキル基である、上記(3)記載のトポイソメラーゼ阻害剤、(6)R2がウラシルである、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のトポイソメラーゼ阻害剤、(7)R2がアデニンである、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のトポイソメラーゼ阻害剤、(8)ヌクレオチドアルキル誘導体が遊離形または生体内で遊離形を与え得る医薬的に許容される任意形で使用される、上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載のトポイソメラーゼ阻害剤、(9)制癌剤として使用するための、上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載のトポイソメラーゼ阻害剤を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記式(I)において、R1で示されるアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよい。その炭素数は、通常30を超えることはなく、好ましくは4〜24、更に好ましくは16〜20である。このようなアルキル基の具体例としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、エイコシルなどの直鎖状アルキル、または、ゲラニル、ファルネシルなどの分岐鎖状アルキルを挙げることができる。
R2で示されるプリン塩基、ピリミジン塩基は、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、チミンなどの通常の塩基のほか、これらのメチル化体などの修飾塩基であってもよい。(必要なければ削除してください。)
現時点で好ましいと考えられるものは、R1が炭素数16のn−ヘキサデシル基または炭素数20のn−エイコシル基を表し、R2がウラシルを表す場合、すなわちウリジン5’−ヘキサデシルホスフェート(UMPC16)、ウリジン5’−エイコシルホスフェート(UMPC20)、あるいは、R1が炭素数16のn−ヘキサデシル基を表し、R2がアデニンを表す場合、すなわちアデニン5’−ヘキサデシルホスフェート(AMPC16)である。
【0010】
有効成分としてのヌクレオチドアルキル誘導体は、遊離形のみならず、医薬的に許容される限り、水和物、塩、エステルなど、生体内で遊離形を与えることのできる任意の形で使用されてよい。したがって、以下の記載において、式(I)の化合物は、遊離形のみならず、そのような医薬的に許容される任意形をも包括して意味するものとする。
【0011】
上記式(I)の化合物であるヌクレオチド5’−アルキル誘導体は、一般に対応するヌクレオチド5’−モノホスフェート(式(I)において、R1=Hに相当する化合物)から自体常套の方法(FEBS Lett., 第94巻, 339-341頁, 1978年、Life Sci., 第43巻, 437-444頁, 1988年、FEBS Lett., 第352巻, 353-355頁, 1994年)により合成することができる。例えば、ウリジン5’−アルキル誘導体の場合、ウリジン5’−モノホスフェートおよび種々の直鎖状または分岐鎖状アルキルアルコールをt−ブチルアルコールに溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で反応させることにより、製造することができる。反応温度は、溶媒の種類により異なるが、通常60〜100℃、好ましくは70〜90℃であり、反応時間は、反応温度により異なるが、通常2〜20時間、好ましくは6〜8時間である。
【0012】
本明細書において「癌」とは、その最も広い意味で使用するものであり、腫瘍、新生組織形成、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫などを包含する。また、本明細書において「制癌」とは、癌性病変の予防、癌性病変の進行の遅延、癌性病変の生成の抑制、癌性病変の減少、または癌性病変の除去を意味する。
【0013】
癌細胞は、正常細胞に比べ急速な増殖をするのが特徴と考えられている。制癌剤は、この特徴を利用して増殖性の細胞に対し毒性を持つ薬剤を用いる化学療法である。本発明のトポイソメラーゼ阻害剤は、癌細胞の増殖を抑制したり、アポトーシスを誘導する制癌剤として用いることができ、良性腫瘍並びに肉腫、白血病、リンパ腫およびがん腫などの悪性腫瘍(癌)等の治療のため、通常全身的または局所的に、一般的には経口または非経口の形で投与される。
本発明の式(I)の化合物を投与する際には、経口投与のための固体組成物、液体組成物およびその他の組成物、非経口投与のための注射剤、点滴剤、口腔剤、経直腸剤、あるいは経皮投与により、すなわち薬剤を適用するのに都合のよい一般的な方法で投与することができる。
【0014】
経口投与のための固体組成物には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれ、カプセル剤には、軟カプセル剤および硬カプセル剤が含まれる。液体組成物には、例えば、シロップ、懸濁液、エマルジョンが含まれる。
固体組成物は、一つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤と混合される。組成物は、常法にしたがって、不活性な希釈剤以外の一般的な添加物、例えば、潤滑剤、崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。
【0015】
錠剤は、化合物をそのまま、または賦形剤、結合剤、崩壊剤若しくはその他の適当な担体を加えて均等に混和し、慣用的な固体処方の製造方法により製造することができる。このような担体の例は、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、シュークロースおよびセルロースを包含する。また、必要に応じて着色剤、矯味剤などを加えることができ、さらに、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の胃溶性あるいは腸溶性のフィルムで剤皮を施してもよいし、また2以上の層で皮膜してもよい。
【0016】
カプセル形である組成物は、慣用的なカプセル化操作を用いて製造できる。例えば、活性成分含有のペレットを標準担体の使用により調製し、次いで硬ゼラチンカプセルに充填することができる。別法として、いずれか適当な医薬担体、例えば、水性ガム、セルロース、シリケートまたは油を用いて分散液または懸濁液を調製し、ついで該分散液または懸濁液を軟ゼラチンカプセルに充填することができる。
【0017】
経口投与のための液体組成物は、薬学的に許容される懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般に用いられる不活性な希釈剤を含んでいてもよい。このような組成物は、不活性な希釈剤以外に必要に応じて安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、分散安定剤またはその他の適当な添加剤を加えることができる。
【0018】
本発明による非経口投与のための注射剤は、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤・乳剤を包含する。水性または非水性の溶液剤、懸濁剤は、一つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤と混合される。水性の希釈剤としては、例えば、注射用水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、または生理食塩水とブドウ糖溶液の混合液が挙げられる。非水性の希釈剤としては、例えば、オリブ油、ゴマ油、ダイズ油、ツバキ油、ナタネ油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油のような植物油、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール類のような有機溶媒が挙げられる。このような組成物は、さらに抗酸化剤、キレート剤、緩衝剤、水溶性有機溶剤などの安定化剤、無痛化剤、保存剤、等張化剤、乳化剤、溶解補助剤のような添加剤を含んでいてもよい。
【0019】
抗酸化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸など、キレート剤としては、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸など、緩衝剤としては、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩などを挙げることができる。
懸濁剤、乳剤の調製においてはアラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ポリソルベート80(登録商標)を初めとする多くの乳化剤が用いられる。
これらの非経口投与のための注射剤は、加熱法(乾熱法、高圧蒸気法、流通蒸気法、煮沸法、間けつ法)、ろ過法、照射法(放射線法、紫外線法、高周波法)などの公知の滅菌手段によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し(例えば、凍結乾燥法等により)、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用するような、用時溶解型の製剤とすることもできる。
【0020】
本発明の式(I)の化合物の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人患者一人あたり、一回につき、100μgから400mgの範囲で、一日一回から数回経口投与されるか、または、成人患者一人あたり、一回につき、10μgから100mgの範囲で、一日一回から数回非経口投与される。また、一日あたり400mgまでの用量で、連続的静脈内注入により投与してもよい。かくして、経口投与による一日の全用量は、100μgから2000mgの範囲にあり、非経口投与による一日の全用量は10μg〜400mgの範囲にある。適当には、該化合物を連続的治療の期間中、例えば、一週間またはそれ以上の期間投与する。もちろん、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を超えて必要な場合もある。なお、本発明において、式(I)の化合物をトポイソメラーゼの阻害を目的として投与する場合、明らかな毒性は認められない。
以下に実施例において、製造例、製剤例および試験例をあげて本発明を詳しく説明するが、これらは単なる例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
【実施例】
製造例1:ウリジン5’−ヘキサデシルホスフェート(R1=C16H33、R2=ウラシル:UMPC16)の調製
ウリジン5’−モノホスフェート(600μmol)およびヘキサデシルアルコール(6mmol)を20mLのt−ブチルアルコールに溶解した後、3mmolのジシクロヘキシルカルボジイミドを加え、80℃で20時間加熱した。反応終了後、生成した沈殿を濾別し、t−ブチルアルコールを減圧下に除去した。残渣をヘキサンおよびアセトンの混液(1:1)で数回洗浄し、乾燥した後、クロロホルムおよびメタノールの混液(95:5)に溶解した。これを同溶液にて作成したシリカゲルカラムに負荷し、カラムを同液で充分洗浄してジシクロカルボジイミドを流出させた。以後、メタノールの濃度を順次、上昇させることによって、ウリジン5’−ヘキサデシルホスフェートを溶出した。溶出液から溶媒を減圧下に除去することにより、白色の沈殿を得た。対ウリジン5’−モノホスフェートあたりの収率は、32.4%であった。
【0022】
製造例2:ウリジン5’−エイコシルホスフェート(R1=C20H41、R2=ウラシル:UMPC20)の調製
ウリジン5’−モノホスフェート(600μmol)およびエイコシルアルコール(6mmol)を原料とし、製造例1の製法例に準じて操作して、ウリジン5’−エイコシルホスフェート(UMPC20)を得た。
【0023】
製造例3:アデノシン5’−ヘキサデシルホスフェート(R1=C16H33、R2=アデニン:AMPC16)の調製
アデノシン5’−モノホスフェート(600μmol)およびヘキサデシルアルコール(6mmol)を原料とし、製造例1の製法例に準じて操作して、アデノシン5’−ヘキサデシルホスフェート(AMPC16)を得た。
【0024】
製剤例1:静脈注射剤
式(I)の化合物 1〜40mg
緩衝剤 pH約7まで
溶媒 100mLまで
上記の製剤例1において、緩衝剤の具体例としてはクエン酸塩、リン酸塩および水酸化ナトリウム/塩酸を、溶媒の具体例としては水を挙げることができる。
【0025】
製剤例2:錠剤
式(I)の化合物 1〜40mg
希釈剤/充填剤 50〜250mg
結合剤 5〜25mg
崩壊剤 5〜50mg
滑沢剤 1〜5mg
上記製剤例2において、希釈剤/充填剤の具体例としては微結晶セルロース、ラクトースおよび澱粉を、結合剤の具体例としてはポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを、崩壊剤の具体例としてはナトリウム澱粉グリコレートおよびクロスポビドンを、滑沢剤の具体例としてはステアリン酸マグネシウムおよびステアリルフマル酸ナトリウムを挙げることができる。
【0026】
製剤例3:経口用懸濁液
式(I)の化合物 1〜40mg
沈殿防止剤 0.1〜10mg
希釈剤 20〜60mg
保存剤 0.01〜1.0mg
緩衝剤 pH約5〜8まで
共溶媒 0〜40mg
香料 0.01〜1.0mg
着色剤 0.001〜0.1mg
上記製剤例3において、沈殿防止剤の具体例としてはキサンチンガムおよび微結晶セルロースを、希釈剤の具体例としてはソルビトール溶液、典型的には水を、保存剤の具体例としては安息香酸ナトリウムを、緩衝剤の具体例としてはクエン酸塩を、共溶媒の具体例としてはアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびシクロデキストリンを挙げることができる。
【0027】
試験例 トポイソメラーゼ阻害活性の測定
本発明のヌクレオチドアルキル誘導体のトポイソメラーゼ阻害活性は、文部省がん特定 総合がん・制がん剤スクリーニング委員会が策定した平成11年度版「制がん剤の分子標的スクリーニング−その概要と利用法−」中の「ヒトDNAトポイソメラーゼ阻害活性の検定」に記載の方法に基づいて、組換えヒト・トポIおよびトポIIを用い、検定した。
トポI阻害活性は、カンプトテシン(CPT)を陽性対照として、超螺旋(スーパーコイル)を持った環状プラスミドDNAの弛緩反応により、以下のようにして測定した。
300、250、200、150、100、50μMの濃度で式(I)の化合物を反応液に加える。反応後、反応液を平板アガロースゲルを用いた電気泳動に供し、ゲルを臭化エチジウムで染色した後、弛緩した環状プラスミドDNAの量(反応生成物)の変化から、50%阻害濃度(IC50)値を求める。化合物の酵素阻害活性の強度は、以下のように表現する。
2+:IC50≦30μM、
1+:30<IC50≦100μM、
±:100<IC50<300μM、
−:IC50≧300μM
トポII阻害活性は、エトポシド(VP−16)を陽性対照として、連環状DNAである原生動物トリパノゾーマのキネトプラストDNA(KDNA)の脱連環反応により、以下のようにして測定した。
300、250、200、150、100、50μMの濃度で式(I)の化合物を反応液に加える(阻害活性が強い場合は、45、30、20、15、10、5、2.5μMまたは8、4、2、1、0.5、0.25μM)。反応後、反応液を平板アガロースゲルを用いた電気泳動に供し、ゲルを臭化エチジウムで染色した後、脱連環したキネトプラストDNAの量(反応生成物)の変化から、50%阻害濃度(IC50)値を求める。化合物の酵素阻害活性の強度は、以下のように表現する。
2+:IC50≦30μM、
1+:30<IC50≦100μM、
±:100<IC50<300μM、
−:IC50≧300μM
【0028】
試験例1:UMPC16およびUMPC20のトポイソメラーゼI(トポI)阻害活性の測定
トポI阻害活性は、市販のトポイソメラーゼIアッセイキット(TopoGEN製)を用い、添付の使用説明書にしたがって操作し、測定した。
UMPC16およびUMPC20をそれぞれメタノールに所定の濃度に溶解し、試料溶液とした。エッペンドルフチューブに水13.5μL、10倍量の反応緩衝液(100mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.9)、10mMのEDTA、1.5Mの塩化ナトリウム、1%ウシ血清アルブミン、1mMのスペルミジン、50%グリセロール)2μL、スーパーコイルDNA 1μL(0.25μg/μL)、ヒト・トポイソメラーゼI(TopoGEN製)1.5μL(2units/μL)、試料溶液2μLを添加し、混合した。試料溶液の代わりにカンプトテシン(CPT:TopoGEN製)を添加したものを陽性対照、メタノールのみを添加したものを陰性対照とした。
37℃で30分間反応させた後、5倍量の反応停止液(5%Sarkosyl、0.125%ブロモフェノールブルー、25%グリセロール)を5μL添加し、混合した。1%アガロースゲルに反応液を負荷し、100Vで約30分間電気泳動した。マーカーとして、予めトポイソメラーゼIで処理して弛緩したプラスミドDNAを同時に泳動した。
臭化エチジウム(ギブコ製)溶液(1μg/mL)中でゲルを振盪し、DNAを染色した後、UVトランスイルミネーターで観察して、ポラロイド撮影し、DNA量の変化から50%阻害濃度(IC50)を求めた。
結果を図1、図2および表1に示した。UMPC16のトポI阻害活性は、UMPC16の濃度が150μMを越える範囲で認められた。250μM以上の濃度では酵素活性は100%阻害され、また、200μMの濃度では未反応のDNAバンドと弛緩したDNAバンドがほぼ等量検出されたことから、UMPC16のトポIに対するIC50はおよそ200μMと推定された。
また、UMPC20のトポI阻害活性は、UMPC20の濃度が100μMを越える範囲で認められ、150μM以上の濃度では酵素活性は100%阻害された。また、100μMの濃度では未反応のDNAバンドと弛緩したDNAバンドがほぼ等量検出されたことから、UMPC20のトポIに対するIC50はおよそ100μMと推定された。
【0029】
【表1】
【0030】
試験例2:UMPC16およびUMPC20のトポイソメラーゼII(トポII)阻害活性の測定
トポII阻害活性は、市販のトポイソメラーゼIIアッセイキット(TopoGEN製)を用い、添付の使用説明書にしたがって操作し、測定した。
UMPC16およびUMPC20をそれぞれメタノールに所定の濃度に溶解し、試料溶液とした。エッペンドルフチューブに、水13μL、10倍量の反応緩衝液(500mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、1.2Mの塩化カリウム、100mMの塩化マグネシウム、5mMのATP、5mMのジチオスレイトール、300μg/mLのウシ血清アルブミン)2μL、キネトプラストDNA(KDNA)1.5μL(125ng/μL)、ヒト・トポイソメラーゼIIα(TopoGEN製)1.5μL(2units/μL)、試料溶液2μLを添加し、混合した。試料溶液の代わりにエトポシド(VP16:TopoGEN製)を添加したものを陽性対照、メタノールのみを添加したものを陰性対照とした。
37℃で30分間反応させた後、5倍量の反応停止液(5%Sarkosyl、0.125%ブロモフェノールブルー、25%グリセロール)を5μL添加し、混合した。1%アガロースゲルに反応液を負荷し、100Vで約30分間電気泳動した。マーカーとして、予めトポイソメラーゼIIで処理して脱連環したKDNAおよび制限酵素(XhoI)処理したKDNAを同時に泳動した。
臭化エチジウム(ギブコ製)溶液(1μg/mL)中でゲルを振盪し、DNAを染色した後、UVトランスイルミネーターで観察して、ポラロイド撮影し、DNA量の変化から50%阻害濃度(IC50)を求めた。
結果を図3、図4および表2に示した。UMPC16のトポII阻害活性は、UMPC16の濃度が2.5μMを超える範囲で認められた。30μM以上の濃度では酵素活性は100%阻害され、また、10μMの濃度では、未反応のDNAバンドと脱連環したDNAバンドがほぼ等量検出されたことから、UMPC16のトポIIに対するIC50はおよそ10μMと推察された。
また、UMPC20のトポII阻害活性は、UMPC20の濃度が1μMを超える範囲で認められた。4μM以上の濃度では酵素活性は100%阻害され、また、2μMの濃度では、未反応のDNAバンドと脱連環したDNAバンドがほぼ等量検出されたことから、UMPC20のトポIIに対するIC50はおよそ2μMと推察された。
【0031】
【表2】
【0032】
試験例3:アデノシン5’−ヘキサデシルホスフェート(AMPC16)のトポイソメラーゼIおよびII阻害活性の測定
製造例3で得たAMPC16について、試験例1および試験例2と同様に操作し、トポIおよびトポII阻害活性を調べた。その結果、表3に示すとおり、AMPC16は、トポIおよびトポIIのいずれに対しても阻害活性を示した。
【0033】
【表3】
【0034】
以上のように、UMPC16のトポIに対する阻害活性はIC50でおよそ10μM、トポIIに対してもIC50でおよそ10μMと強い阻害活性を示した。また、UMPC20の阻害活性は、トポIに対してのIC50はおよそ100μMとやや低いものの、トポIIに対するIC50はおよそ2μMと強い阻害活性を示した。
トポIの陽性対照として用いたCPTの阻害活性はトポIに特異的であり、また、トポIIの陽性対照として用いたVP16の阻害活性はトポIIに特異的なものである。上記試験例の結果、UMPC16は、トポIおよびトポIIのいずれに対しても阻害活性を示した。
また、UMPC20の阻害活性は、VP16と同様にトポIIにより強く作用すると考えられる。その活性はVP16に比較して40倍強いものであった。
AMPC16においてもトポIおよびトポII阻害活性が認められたが、AMPCの場合は、トポI阻害活性の方がやや優れていた。
これらのことから、UMPC16、UMPC20およびAMPC16をはじめとする、ヌクレオチド5’−アルキル誘導体は、トポイソメラーゼ阻害剤として有用であり、さらに制癌剤として有用な物質であると考えられる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、式(I)で表されるヌクレオチドアルキル誘導体を有効成分として用いることにより、新規なトポイソメラーゼ阻害剤が得られ、これは、制癌剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スーパーコイルを有する環状プラスミドDNAの弛緩を指標とした、UMPC16のトポI阻害活性を示す電気泳動パターン。
【図2】 スーパーコイルを有する環状プラスミドDNAの弛緩を指標とした、UMPC20のトポI阻害活性を示す電気泳動パターン。
【図3】 連環状DNAであるキネトプラストDNAの脱連環を指標とした、UMPC16のトポII阻害活性を示す電気泳動パターン。
【図4】 連環状DNAであるキネトプラストDNAの脱連環を指標とした、UMPC20のトポII阻害活性を示す電気泳動パターン。
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