JP4768405B2 - 光ファイバセンサー及び歪・温度観測システム - Google Patents
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Description
光ファイバセンサーは、その可撓性に基づいて装着対象物の外面形状に適合するので広範囲のセンサーとして使い易いものであり、例えば、光ファイバ中のブリルアン散乱光を利用して、光ファイバの長手方向に沿って生じた測定対象物の歪み分布を測定するBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry)、或いは、光ファイバ中のラマン散乱光を利用して、光ファイバの長手方向に沿って生じた測定対象物の温度分布を測定するROTDR(Raman Optical Time Domain Reflectometry)等を行うときの観測端(検出子・検出端・プローブ)として有用である。
その1の問題点は、観測データ特に歪データの正確度の問題である。たとえば、光ファイバセンサーとロードセルとの比較試験を行ったところ、光ファイバセンサーによる歪値とロードセルによる歪値との間に無視できない誤差(−10%程度)が存在し、しかも、その誤差が温度変化やセンサーの変形履歴によって変動することが判った。ついては、この誤差は定数換算補正によって消去できないのである。ここで、上記比較試験に用いた光ファイバセンサーは、光通信に常用され延いては歪分布観測にも常用されている光ファイバ素線にポリエチレン被覆を施したものである。
温度データに関しても真値との間の誤差が認められる。但し、この誤差は、概ね一貫していて定数換算補正になじむものの、好ましいものではない。
光ファイバ素線10,15は(図1(a)〜(c)参照)、BOTDRでの歪測定やROTDRでの温度計測などに適した光ファイバセンサーに用いられる一般的なもので(図1(a)参照)、例えば直径0.125mmのクラッド構造の光ファイバ用ガラス裸線11(光ファイバ裸線)に樹脂等の保護被覆を被せて直径が0.25mmないし0.4mm太くなったものである。
長尺保持体24は、例えば架橋ポリエチレン樹脂からなる断面長方形のテープ状部材であり、その典型的なサイズは、Z方向における厚さが0.5〜2.0mm程度,X方向における幅が3〜30mm程度,Y方向における長さが3m以上であるが、それ以外もありうる。
これらで得られる分布データε21,T22,ε23は何れも光ファイバセンサー20の長手方向Yにおける所定ピッチ例えば1000mm毎のサンプリングデータを連ねた一次元配列データなので、配列の各要素を参照するときには括弧付き番号を添えて示す。例えば温度分布データT22のi番目の要素はT22(i) のように示す。括弧付き番号が付いてなければ、配列全体を指す。
温度データ演算手段は、入力した温度分布データT22をそのまま最終的な温度分布データTとするものであり、歪データ修正演算手段は、歪分布データε21における温度分布起因の誤差を温度分布データT22に基づいて修正するものであり、例えば、ブリルアン散乱光の特性上のみかけの歪と温度依存性とに関する、実験的な又は公知の定数である相関係数Kを用いて、修正式[ε(i) =ε21(i)−K・T22(i) ]を演算することにより、最終的な歪分布データεを算出するようになっている。
そして、これらの式を連立させて温度分布データT28について解くと、α・T28(i) に係る項は消えて解式[T28(i) ={ε23(i)−θ・ε21(i)}/{(1−θ)・K}]が成立する。
なお、上例では、前記分率θを予め試験的に求めておくケースについて述べたが、分率θを{ε21(i),ε23(i)}データ(その場データ)から求め、この分率θを用いるようにしても良い。更には、予め求めたθでスタートし、その後、その場データによる補正を加味するようにしても良い。
すなわち(図3参照)、光コネクタ33に光ファイバセンサー20の一端が繋がれて光ファイバ素線21が光コネクタ33を介して光路スイッチ32dに接続されているものとして、光路スイッチ32dの切替にて光ファイバ素線21が送受光の対象に選択され(ステップS11)、それからブリルアン散乱光解析装置32bによる歪分布測定が行われて正規の歪分布データε21(一番手の強複合素線21に係る歪分布データ)が得られるようになっている(ステップS12)。
観測対象物50は、例えば橋梁などの長い構造物であり、その長手方向に光ファイバセンサー20が貼付され、それに沿ってY方向に分布する歪と温度の測定が行われる。
図5,図6は、何れも、(a)が観測対象物50に光ファイバセンサー20を貼り付けたところの側面図、(b)が生の歪分布データε21と歪分布データε23と温度分布データT22とのグラフ表示、(c)が二次演算を施した歪分布データεと温度分布データT,T28と温度データ確認結果Aのグラフ表示であり、図5は歪や局所昇温の無いときの測定状況を示し、図6は歪や局所昇温の有るときの測定状況を示している。なお、各グラフは重ならないよう上下方向へ適度にずらして表示している。
また、大歪51に起因する光ファイバ素線群21〜23の破断は光ファイバ素線21に発生しやすいが、破断すれば勿論のこと、破断に至る前であっても分率θに係る関係式[ε10=θ・ε15]の適用限界を超えるほど損傷がひどければ、温度データ確認結果Aにおける該当箇所に大きな変動が発現するので(図6(c)Y1の細い波線を参照)、それを操作表示部31に警報色で表示したり、図示しないブザー等で警報音を出す等のことにより、注意を促すことができる。
また、二次演算手段32cは、後の演算手順の説明でも述べるように、エラーフラグEの状態に応じて歪分布データεの算出手法を切り替える。具体的には、エラーフラグEがオフのときには歪分布データε26を歪分布データεに採用するとともに2データ間関係式演算手段にて係数β,γを算出しておき、エラーフラグEがオフのときには、バックアップ演算手段にて歪分布データε28を算出し、これε28を歪分布データεに採用するようになっている。
バックアップ演算手段は、この係数β,γを用いて関係式[ε28(i) = β(i) ×ε23(i) +γ(i) ]を演算することで歪分布データε28を算出するようになっている。
すなわち(図8参照)、先ず、第1形態の説明で上述したのと同様にして、温度分布データT22や歪分布データε21,ε23が観測されるとともに(ステップS11〜S15)、最終的な温度分布データTや温度データ確認結果Aが算出される(ステップS17〜S18)。なお、歪分布データについては少しだけ異なり、最終的な歪分布データεではなく、中間の歪分布データε26,ε27が算出されるようになっている(ステップS16)。
すなわち、不具合検知手段によって一番手の光ファイバ素線21に不具合が無いと判定されたときには(ステップS20のNo側)、エラーフラグEが下げられ、2データ間関係式演算手段によって係数β,γが算出され(ステップS21)、この歪分布データε26が歪分布データεに採用されるようになっている。一方、一番手の光ファイバ素線21に不具合が有ると判定されたときには(ステップS20のYes側)、アラーム出力等のためエラーフラグEが上げられ(ステップS23)、バックアップ演算手段によって歪分布データε28が算出され(ステップS24)、この歪分布データε28が歪分布データεに採用されるようになっている。
図9,図10は、何れも、(a)が観測対象物50に光ファイバセンサー20を貼り付けたところの側面図、(b)が生の温度分布データT22と歪分布データε21と歪分布データε23のグラフ表示、(c)が二次演算を施した温度分布データTと歪分布データεのグラフ表示であり、図9は歪の有るときの測定状況を示し、図10は光ファイバ素線21破断時の測定状況を示している。各グラフは重ならないよう一定量だけ上下方向にずらして表示している。
また、エラーフラグEが上がったのに応じて例えば操作表示部31にアラーム表示を行ったり図示しないブザーを鳴動させる等のことにより、観測不能に至る前に余裕を持って光ファイバセンサーの修理・交換等を促すことができる。
歪データ修正演算手段は、歪分布データε27と温度分布データT22から、上述したのと同様の演算を行って、温度分布起因の誤差を取り除いた一次元配列の歪分布データε28を中間算出するようになっている。
異状感知手段は、差信号データΔにおける最大値やその正負を調べて、光ファイバ素線21も光ファイバ素線23も正常か、光ファイバ素線21に異状が見られるか、光ファイバ素線23に異状が見られるか、といった判定を行い、それに応じた異状判別結果Bを出すようになっている。
これに対し、光ファイバ素線21,23が共に正常であれば、正規の歪分布データから温度分布起因の影響を取り除いた歪分布データε28が最終的な歪分布データεに採用され、光ファイバ素線21に異状が見られたときには光ファイバ素線23に係る正規の歪分布データε23が最終的な歪分布データεに採用され、光ファイバ素線23に異状が見られたときには光ファイバ素線21に係る正規の歪分布データε21が最終的な歪分布データεに採用される。
温度データ修正演算手段は、この劣化データλに基づいて二番手の光ファイバ素線22に係る温度分布データT22における線路損失起因の誤差を修正して温度分布データTを算出するようになっている(例えば特開平7−218353号公報を参照)。
なお、温度分布データT22に代えて温度分布データTを用いるように歪データ修正演算手段を改造したり、歪分布データε21にも劣化データλによる修正演算を施してから歪データ修正演算手段に供するようにプログラムを追加インストールする等のことにより、歪分布データεについても線路損失起因の誤差が取り除かれるようにしても良い。
これに対し、図13(b)に示した態様では、光ファイバセンサー20が上述した第3形態の歪・温度観測システム60のものと同じで、光ファイバ素線群21〜23と解析装置・測定装置32b,32a,32eとの接続が上述した第4形態の歪・温度観測システム70のものと同じである。
15…光ファイバ素線(相互接着態様の強複合素線)、
20…光ファイバセンサー、21,22,23…光ファイバ素線、
24…長尺保持体、25…貼着部材、26…剥離紙、27…紙管、
30…光データ解析装置、31…操作表示部、32…制御演算部、
32a…ラマン散乱光解析装置、32b…ブリルアン散乱光解析装置、
32c…二次演算手段、32d…光路スイッチ、
32e…受信光送信光強度比測定装置、33…光コネクタ、
40…歪・温度観測システム、41…光コネクタ、
42…ファイバ引出部、43…ファイバ終端部材、
50…観測対象物、51…大歪、52…高温部、
60…歪・温度観測システム、70…歪・温度観測システム
Claims (2)
- テープ状の長尺保持体に光ファイバ素線を埋蔵した光ファイバセンサーと、前記素線を光伝播の線路とする送・受信光のデータに基づいて該センサー沿いの歪分布データならびに温度分布データを導出する光データ解析装置とを備えた歪・温度観測システムであって、
前記光ファイバセンサーにあっては、前記光ファイバ素線として該素線の構成要素である光ファイバ裸線と保護被覆とが相互接着態様で複合された強複合素線と相互非接着態様で複合された緩複合素線の2種類が用いられ、該2種類を取り混ぜた3本以上の素線群が各種類毎に前記長尺保持体の中心線に関して線対称に位置する位置取りにて相互離間平行配列されており、
該素線群のうちの1本の強複合素線を一番手の素線として起用し該素線をブリルアン散乱光解析装置に接続して歪分布観測機構が構成され、前記素線群のうちの1本の緩複合素線を二番手の素線として起用し該素線をラマン散乱光解析装置に接続して温度分布観測機構が構成されるとともに、該歪分布観測機構と温度分布観測機構の一方または双方の機能を補助ないし強化するための観測機能支援機構が、前記素線群のうちの残りの素線を用いた構成にて配備されており、
前記観測機能支援機構は、前記歪分布観測機構と温度分布観測機構の双方の機能を支援する機構であって、前記一番手起用の強複合素線を入力素線択一形式の光路スイッチを介して前記ブリルアン散乱光解析装置に接続するとともに該光路スイッチの残りの入力端子には前記残りの素線のうちの1本の緩複合素線を追加接続することで該一番手と追加接続の素線を代る代る起用する強複合・緩複合2素線仕立の歪分布観測機構が構成されており、更に、該一番手の素線に係る歪分布データにおける温度分布起因の誤差を前記二番手の素線に係る温度分布データに基づいて修正するための歪データ修正演算手段と、前記一番手と追加接続の素線に係る歪分布データに基づいて温度分布データを算出する連立演算手段と、この連立演算手段の温度分布データと前記二番手の素線に係る温度分布データとに基づいて異状の有無を確認する温度データ確認手段とが配備されている、
ことを特徴とする歪・温度観測システム。 - 更に、前記一番手の素線に不具合が生じたときに該一番手の素線に係る歪分布データを前記追加接続の素線に係る歪分布データを以てバックアップするための2データ間関係式演算手段が配備されている、ことを特徴とする請求項1記載の歪・温度観測システム。
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