JP4766782B2 - 有機発光素子、並びにそれを用いた発光装置、電気器具、及び照明機器 - Google Patents

有機発光素子、並びにそれを用いた発光装置、電気器具、及び照明機器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、タングステンキレート錯体を含む有機発光素子および発光装置に関する。特に、前記タングステンキレート錯体を発光体とする有機発光素子および発光装置に関する。なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源を指す。また、有機発光素子にコネクター、例えば異方導電性フィルム(FPC:Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または有機発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0002】
【従来の技術】
有機化合物は無機化合物に比べて、材料系が多様であり、適した分子設計により様々な機能を有する材料を合成できる可能性がある。また、膜等の形成物が柔軟性に富み、さらには高分子化することにより加工性にも優れるという特長もある。これらの利点から、近年、機能性有機材料を用いたエレクトロニクスやフォトニクスに注目が集まっている。
【0003】
有機材料の電気物性に関して言えば、絶縁性から半導性、さらには導電性高分子に代表されるような導電性まで多岐に渡るため、電気絶縁膜から半導体、さらには電極に至るまで、全て有機材料で形成することも可能である。例として、トップゲート型のTFTを全て有機材料(ポリマー)で形成した報告もある(文献1:Takeo Kawase, Henning Sirringhaus, Richard H. Friend, Tatsuya Shimoda, "All-Polymer Thin Film Transistors Fabricated by High-Resolution Ink-jet Printing", Society for Information Display 2001 International Symposium Digest of Technical Papers, Volume XXXII, pp.40-43)。
【0004】
また、有機材料の光物性も現在の工業技術に重要な役割を果たしている。例えば、フォトレジストなどの感光材料は、半導体の微細加工に用いられるフォトリソグラフィ技術にとって欠かせない材料である。加えて、有機化合物自体、光の吸収およびそれに伴う発光(蛍光や燐光)という性質を有しているため、レーザー色素等の発光材料としての用途も大きい。
【0005】
さらに、これら機能性有機材料の応用例の中でも、有機材料の電気物性・光物性の両方を活かしたデバイスとして、電圧を印加することにより発光を呈する有機発光素子(有機エレクトロルミネッセント素子)が近年めざましい発展を見せている。
【0006】
有機発光素子は、電極間に有機化合物層を挟んで電圧を印加することにより、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔が有機化合物層中で再結合して励起状態の分子(以下、「分子励起子」と記す)を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光すると言われている。
【0007】
有機発光素子における有機化合物層は、通常、サブミクロン程度の薄膜で形成される。また、有機発光素子は、有機化合物層そのものが光を放出する自発光型の素子であるため、従来の液晶ディスプレイに用いられているようなバックライトも必要ない。したがって、有機発光素子は極めて薄型軽量に作製できることが大きな利点である。
【0008】
また、例えば100〜200nm程度の有機化合物層において、キャリアを注入してから再結合に至るまでの時間は、有機化合物層のキャリア移動度を考えると数十ナノ秒程度であり、キャリアの再結合から発光までの過程を含めてもマイクロ秒のオーダー以下で発光に至る。したがって、非常に応答速度が速いことも特長の一つである。
【0009】
さらに、有機発光素子はキャリア注入型の発光素子であるため、直流電圧での駆動が可能であり、ノイズが生じにくい。駆動電圧に関しては、まず有機化合物層の厚みを100nm程度の均一な超薄膜とし、また、有機化合物層に対するキャリア注入障壁を小さくするような電極材料を選択し、さらにはヘテロ構造(二層構造)を導入することによって、5.5Vで100cd/m2の十分な輝度が達成された(文献2:C. W. Tang and S. A. VanSlyke, "Organic electroluminescent diodes", Applied Physics Letters, vol. 51, No.12, 913-915 (1987))。
【0010】
こういった薄型軽量・高速応答性・直流低電圧駆動などの特性から、有機発光素子は次世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、自発光型であり視野角が広いことから、視認性も比較的良好であり、携帯機器の表示画面に用いる素子として有効と考えられている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
発光性(蛍光性あるいは燐光性)を有する有機材料(以下、「発光性有機化合物」と記す)は、すでに上述したように、色素レーザーや有機発光素子などの発光装置・発光素子に広く用いることができるため、数多くの研究が進められている。
【0012】
これら発光性有機化合物の発光波長は、ほぼ可視光領域に位置するものが多い。特に有機発光素子においては、そのほとんどが可視光である。ただし、いくつかの報告例として、フタロシアニンの赤外発光EL素子(文献3:Akihiko Fujii, Yutaka Ohmori, and Katsumi Yoshino, "An Organic Infrared Electroluminescent Diode Utilizing a Phthalocyanine Film", IEEE Trans. Electron Devices, Vol.44, No.8, 1204-1207(1997))や、ポリ(メチルフェニルシラン)の紫外発光EL素子(文献4:Akihiko FUJII, Kenji YOSHIMOTO, Masayoshi YOSHIDA, Yutaka OHMORI and Katsumi YOSHINO, "Ultraviolet Electroluminescent Diode Utilizing Poly(methylphenylsilane)", Jpn. J. Appl. Phys., Vol.34, L1365-L1367(1995))がある。
【0013】
励起エネルギーが大きく紫外発光を呈する有機材料は、紫外発光デバイスとしての利用ももちろん有効であるが、それに加えて、適当な分子設計により紫外光領域から可視光領域まで発光領域を変化させられるという可能性がある。すなわち、長波長シフトさせるような分子設計により、幅広い発光波長領域をカバーできるため、そのメリットは大きい。
【0014】
しかしながら、上述の文献4にて報告されたポリ(メチルフェニルシラン)に代表されるポリシラン系材料は、σ共役系に起因する紫外発光であるため、分子設計により波長を変化させることが困難である。一方で、多くの発光性有機化合物に用いられるπ共役系であれば、π共役系を大きくするなどの手法により長波長シフトも可能である。
【0015】
そして、このように幅広い発光波長領域をカバーできる有機化合物を用いることによって、様々な色のバリエーションを有する有機発光素子や発光装置を容易に作製することができる。
【0016】
そこで本発明では、励起エネルギーが大きく、紫外発光を呈するπ共役系の有機化合物を作製することを目的とする。また、そのπ共役系に工夫を加えることで、紫外光領域から可視光領域に波長を変化させることを目的とする。
【0017】
さらにこれらの材料を用いた有機発光素子および発光装置(画像表示デバイス、発光デバイス、光源など)を提供することを課題とする。また、その有機発光素子や発光装置を用いて電気器具を作製することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、π共役系配位子を有するタングステンキレート錯体において、近紫外発光する現象を見いだした。キレート錯体の構造としては、タングステン原子を中心金属とし、かつ、前記タングステン原子と窒素原子と炭素原子と16族原子(酸素原子または硫黄原子)とからなる4員環のキレート環を有するものと考えられる。
【0019】
上述したような4員環のタングステンキレート錯体に関しては、報告例は少ないが、例えば下記文献5のような報告がある(文献5:F. Albert Cotton and William H. Ilsley, "Dodecahedral, Eight-Coordinate Chelate Complex, Tetrakis(2-mercaptopyrimidinato)tungsten(IV)", Inorg. Chem., vol. 20, 614-616 (1981))。文献5で示された錯体は、タングステンに2−メルカプトピリミジンが4つ配位したものである。
【0020】
しかしながら、文献5においては発光特性について言及していない。その上、文献5における配位子である2−メルカプトピリミジンは、それ自体発光を呈する配位子ではないため、文献5の錯体は発光しない可能性が高い。
【0021】
本発明者は、文献5で示されたような4員環のキレート環を適用しつつ、なおかつ発光性のπ共役系配位子を導入することによって、本発明の発光性有機化合物(タングステンキレート錯体)を開発した。この系統のタングステンキレート錯体を用いた有機発光素子は、紫外光領域から可視光領域まで、幅広い発光領域をカバーできる可能性がある。
【0022】
したがって本発明では、陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に設けられた有機化合物層と、からなる有機発光素子において、前記有機化合物層が、タングステン原子を中心金属とし、かつ、4員環を形成するπ共役系のキレート配位子を有する、タングステンキレート錯体を含むことを特徴とする(請求項1)。
【0023】
また、本発明のタングステンキレート錯体は、有機発光素子における発光体として用いてもよい(請求項2)が、他の発光体(ゲスト材料)に対するホスト材料として用いてもよい(請求項3)。なぜならば、本発明のタングステンキレート錯体は励起エネルギーが高いため、他の発光体(ゲスト材料)を十分に励起することができるからである。
【0024】
さらに、上述の有機発光素子を用いて発光装置を作製することが可能である(請求項4)。また、有機発光素子としての利用だけでなく、紫外発光材料として他の発光装置への応用(色素レーザー等)も可能であると考えられる(請求項5)。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明者は、本発明のタングステン錯体の中でも、合成の容易さ、収率、発光特性などの観点から、特に下記一般式(1)で示すものが好ましいと考えている。すなわち、オキサゾール環ないしはチアゾール環の2位にヒドロキシル基ないしはメルカプト基を置換し、さらに前記オキサゾール環や前記チアゾール環に多環縮合環を付与したたものを配位子とする錯体である(請求項6)。
【0026】
【化4】
Figure 0004766782
【0027】
ただし、XおよびYは、酸素原子または硫黄原子を表す。また、Zは多環縮合環を表し、置換基を有していてもよい。
【0028】
また、一般式(1)で表したタングステン錯体の中でも特に、下記一般式(2)で示す化合物(2−メルカプト−ベンゾオキサゾール骨格を配位子としたもの)や、下記一般式(3)で示す化合物(2−メルカプト−ベンゾチアゾール骨格を配位子としたもの)が好ましい(請求項7および請求項8)。これらの配位子は、市販で安価に入手できるため、生産性に優れるからである。
【0029】
【化5】
Figure 0004766782
【0030】
【化6】
Figure 0004766782
【0031】
ただし、Rは水素原子、またはアルキル基、またはアルコキシル基、またはアリール基、または置換基を有するアリール基を表す。アルキル基やアルコキシル基の置換は有機溶媒への溶解性を向上させることができ、また、アリール基の置換は発光色を長波長化させることができる。
【0032】
なお、Rを同じ置換基とした場合、一般式(2)と一般式(3)の発光波長を比較すると、一般式(3)の方が長波長側にシフトすることが予想される。これは、複素共役環内の酸素原子を硫黄原子に換えた場合に、一般に見られる現象である。このように、π共役系を工夫することで、容易に紫外光領域から可視光領域へと長波長シフトさせることができると考えられる。
【0033】
【実施例】
[実施例1]
本実施例では、近紫外領域にて発光するタングステン錯体を、具体的に例示する。ここでは、下記一般式(4)で表される構造を含有すると考えられるタングステン錯体を合成し、その発光スペクトル(フォトルミネッセンス)を調べた。
【化7】
Figure 0004766782
【0034】
まず、タングステンヘキサカルボニル1.0g(2.8mmol)および2−メルカプト−ベンゾオキサゾール1.7g(11.3mmol)を、ジグリム50mlに溶解した。次に、80℃に加熱することにより均一な溶液とした後、反応温度を100℃に上げて24時間撹拌した。反応終了後、不溶成分をろ過してから溶媒を減圧留去し、灰色の固体1.7gを得た。なお、上記の反応経路は全て窒素気流化にて行った。また、ジグリムはナトリウム/ベンゾフェノンを用いて乾燥した。
【0035】
次に、上記反応にて得られた生成物10mg程度を100ml程度のアセトニトリル溶液に溶解し、さらに10倍希釈した溶液を用意した。この溶液を窒素ガスで15分ほどバブリングした後、励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定した。その結果を図1に示す。なお、発光スペクトルの励起波長は325nm(キセノンランプ)であり、励起スペクトルの測定は370nmにて行った。
【0036】
図1から、本発明で開示した発光性有機化合物は、361nmにピークを示す紫外発光を呈していることがわかった。
【0037】
[実施例2]
本実施例では、実施例1にて開示した発光性有機化合物を用い、有機発光素子を作製する手順を具体的に例示する。その素子構造を図2に示す。
【0038】
まず、素子作製ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極202を形成したガラス基板201を用意する。
【0039】
次に、この陽極202を有するガラス基板201に対し、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(以下、「PEDOT/PSS」と記す)をスピンコーティングにより成膜する。このPEDOT/PSSは、正孔注入層203として作用する。
【0040】
さらに、加熱処理により水分を蒸発させた後、実施例1にて示した発光性有機化合物のDMSO溶液をスピンコーティングにより成膜し、発光層204を形成する。最後に、陰極205としてAl:Li合金を真空蒸着法にて成膜し、有機発光素子とする。
【0041】
[実施例3]
実施例2にて示したような近紫外発光の有機発光素子を用いてフルカラーの発光装置を作製する場合の、装置構成の概略を図3に示す。図3は近紫外有機発光素子に色変換層を組み合わせた色変換(CCM)方式である。CCM方式に関しては、特開平3−152897等に記載されているが、それらは全て青色の有機発光素子を用いており、本発明で開示する紫外発光有機発光素子とは異なる。
【0042】
色変換層305は、公知の技術であるフォトリソグラフィ技術を用いて、基板上に容易にパターニングすることが可能である。したがって、これを用いてフルカラー発光装置を作製すればよい。
【0043】
[実施例4]
本実施例では、実施例2で示したような近紫外発光有機発光素子を用いて、白色光源を作製する方法を例示する。
【0044】
一般に照明として用いられている白色蛍光灯は、水銀蒸気が励起状態から紫外線を発生し、この紫外線が照明内壁に塗ってある蛍光塗料(ハロリン酸カルシウムにアンチモンおよびマンガンを微量ドープしたもの)を励起し、白色光を発生させる原理である。
【0045】
本発明で開示した近紫外有機発光素子を水銀蒸気の代替として用いることで、同様の白色光を得ることが可能になる。すなわち、例えば図4に示すように、あらかじめ前記有機発光素子を設けた第二の基板411と、白色蛍光塗料を塗ってある第一の基板401とを、シール剤403により貼り合わせることで、容易に面状発光の白色光が得られる。
【0046】
このようにして作製された白色光源は、従来のように水銀を用いてはいないため、環境への影響を考えると有益であると言える。
【0047】
[実施例5]
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置について説明する。図5は、本発明の有機発光素子を用いたアクティブマトリクス型フルカラー発光装置の断面図である。
【0048】
なお、能動素子としてここでは薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)を用いているが、MOSトランジスタを用いてもよい。また、TFTとしてトップゲート型TFT(具体的にはプレーナ型TFT)を例示するが、ボトムゲート型TFT(典型的には逆スタガ型TFT)を用いることもできる。
【0049】
図5(a)において、501は基板であり、ここでは基板側から光を取り出すため、可視光を透過する基板を用いる。具体的には、ガラス基板、石英基板、結晶化ガラス基板もしくはプラスチック基板(プラスチックフィルムを含む)を用いればよい。なお、基板501とは、表面に設けた絶縁膜も含めるものとする。
【0050】
基板501の上には画素部511および駆動回路512が設けられている。まず、画素部511について説明する。
【0051】
画素部511は画像表示を行う領域である。基板上には複数の画素が存在し、各画素には有機発光素子に流れる電流を制御するためのTFT(以下、「電流制御TFT」と記す)502、画素電極(陽極)503、本発明で開示した有機化合物層504および陰極505が設けられている。なお、図5(a)では電流制御TFTしか図示していないが、電流制御TFTのゲートに加わる電圧を制御するためのTFT(以下、「スイッチングTFT」と記す)を設けている。
【0052】
電流制御TFT502は、ここではpチャネル型TFTを用いることが好ましい。nチャネル型TFTとすることも可能であるが、図5のように有機発光素子の陽極に電流制御TFTを接続する場合は、pチャネル型TFTの方が消費電力を押さえることができる。ただし、スイッチングTFTはnチャネル型TFTでもpチャネル型TFTでもよい。
【0053】
また、電流制御TFT502のドレインには画素電極503が電気的に接続されている。本実施例では、画素電極503の材料として仕事関数が4.5〜5.5eVの導電性材料を用いるため、画素電極503は有機発光素子の陽極として機能する。画素電極503として代表的には、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛もしくはこれらの化合物(ITOなど)のような、光透過性の材料を用いればよい。画素電極503の上には有機化合物層504が設けられている。
【0054】
さらに、有機化合物層504の上には陰極505が設けられている。陰極505の材料としては、仕事関数が2.5〜3.5eVの導電性材料を用いることが望ましい。陰極505として代表的には、アルカリ金属元素もしくはアルカリ度類金属元素を含む導電膜、アルミニウムを含む導電膜、あるいはその導電膜にアルミニウムや銀などを積層したもの、を用いればよい。
【0055】
また、画素電極503、有機化合物層504、および陰極505からなる層は、保護膜506で覆われている。保護膜506は、有機発光素子を酸素および水から保護するために設けられている。保護膜506の材料としては、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、もしくは炭素(具体的にはダイヤモンドライクカーボン)を用いる。
【0056】
520は、図3で示したような色変換層である。ここでは、基板501に加工した窪みに形成された例を示す。この場合、有機化合物層504は近紫外発光を呈するものを用いればよい。
【0057】
次に、駆動回路512について説明する。駆動回路512は画素部511に伝送される信号(ゲート信号およびデータ信号)のタイミングを制御する領域であり、シフトレジスタ、バッファ、ラッチ、アナログスイッチ(トランスファゲート)もしくはレベルシフタが設けられている。図5(a)では、これらの回路の基本単位としてnチャネル型TFT507およびpチャネル型TFT508からなるCMOS回路を示している。
【0058】
なお、シフトレジスタ、バッファ、ラッチ、アナログスイッチ(トランスファゲート)もしくはレベルシフタの回路構成は、公知のものでよい。また図5では、同一の基板上に画素部511および駆動回路512を設けているが、駆動回路512を設けずにICやLSIを電気的に接続することもできる。
【0059】
また、図5では電流制御TFT502に画素電極(陽極)503が電気的に接続されているが、陰極が電流制御TFTに接続された構造をとることもできる。その場合、画素電極を陰極505と同様の材料で形成し、陰極を画素電極(陽極)503と同様の材料で形成すればよい。その場合、電流制御TFTはnチャネル型TFTとすることが好ましい。
【0060】
ところで、図5(a)に示した発光装置は、画素電極503を形成した後に配線509を形成する工程で作製されたものを示してあるが、この場合、画素電極503が表面荒れを起こす可能性がある。有機発光素子は電流駆動型の素子であるため、画素電極503の表面荒れにより、特性が悪くなることも考えられる。
【0061】
そこで、図5(b)に示すように、配線509を形成した後に画素電極503を形成する発光装置も考えられる。この場合、図5(a)の構造に比べて、画素電極503からの電流の注入性が向上すると考えられる。
【0062】
なお、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけてもよい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むことを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物層から発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0063】
[実施例6]
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置の例として、アクティブマトリクス型発光装置を例示するが、実施例5とは異なり、能動素子が形成されている基板とは反対側から光を取り出す構造(以下、「上方出射」と記す)の発光装置を示す。図6にその断面図を示す。
【0064】
なお、能動素子としてここでは薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)を用いているが、MOSトランジスタを用いてもよい。また、TFTとしてトップゲート型TFT(具体的にはプレーナ型TFT)を例示するが、ボトムゲート型TFT(典型的には逆スタガ型TFT)を用いることもできる。
【0065】
本実施例において、基板601、画素部に形成された電流制御TFT602、および駆動回路612に関しては、実施例5と同様の構成でよい。
【0066】
電流制御TFT602のドレインに接続されている第一電極603であるが、本実施例では陽極として用いるため、仕事関数がより大きい導電性材料を用いることが好ましい。その代表例として、ニッケル、パラジウム、タングステン、金、銀などの金属が挙げられる。本実施例では、第一電極603は光を透過しないことが好ましいが、それに加えて、光の反射性の高い材料を用いることがさらに好ましい。
【0067】
第一電極603の上には有機化合物層604が設けられている。さらに、有機化合物層604の上には第二電極605が設けられており、本実施例では陰極とする。その場合、第二電極605の材料としては、仕事関数が2.5〜3.5eVの導電性材料を用いることが望ましい。代表的には、アルカリ金属元素もしくはアルカリ度類金属元素を含む導電膜、アルミニウムを含む導電膜、あるいはその導電膜にアルミニウムや銀などを積層したもの、を用いればよい。ただし、本実施例は上方出射であるため、第二電極605が光透過性であることが大前提である。したがって、これらの金属を用いる場合は、20nm程度の超薄膜であることが好ましい。
【0068】
また、第一電極603、有機化合物層604、および第二電極605からなる層は、保護膜606で覆われている。保護膜606は、有機発光素子を酸素および水から保護するために設けられている。本実施例では、光を透過するものであればいかなるものを用いてもよい。
【0069】
なお、図6では電流制御TFT602に第一電極(陽極)603が電気的に接続されているが、陰極が電流制御TFTに接続された構造をとることもできる。その場合、第一電極を陰極の材料で形成し、第二電極を陽極の材料で形成すればよい。このとき、電流制御TFTはnチャネル型TFTとすることが好ましい。
【0070】
さらに、607はカバー材であり、樹脂からなるシール材608により接着されている。カバー材607は酸素および水を透過しない材質で、かつ、光を透過する材質であればいかなるものを用いてもよい。本実施例ではガラスを用いる。密閉空間609は不活性ガス(代表的には窒素ガスや希ガス)、樹脂または不活性液体(例えばパーフルオロアルカンに代表される液状のフッ素化炭素)を充填しておけばよい。さらに、吸湿剤や脱酸素剤を設けることも有効である。
【0071】
620は、図3で示したような色変換層である。ここでは、カバー材607に設けられた例を示す。この場合、有機化合物層604は近紫外発光を呈するものを用いる。
【0072】
また、本実施例においては、実施例5に比べて620と有機化合物層605との距離が大きいため、620を単にパターニングしただけでは光が混色してしまう恐れがある(隣の画素における発光が影響してしまう)。そこで本実施例では、ブラックマトリクス621を設置することにより、隣の画素の光による影響を小さくする手法を適用した。
【0073】
なお、ゲート信号側駆動回路およびデータ信号側駆動回路に伝送される信号は、入力配線613を介してTAB(Tape Automated Bonding)テープ614から入力される。なお、図示しないが、TABテープ614の代わりに、TABテープにIC(集積回路)を設けたTCP(Tape Carrier Package)を接続してもよい。
【0074】
また、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけてもよい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むことを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物層から発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0075】
[実施例7]
本実施例では、実施例5もしくは実施例6に示した発光装置にプリント配線板を設けてモジュール化した例を示す。
【0076】
図7(a)に示すモジュールは、基板701(ここでは、画素部702、データ信号側駆動回路703、ゲート信号側駆動回路704、配線703a、 704aを含む)にTABテープ705が取り付けられ、そのTABテープ705を介してプリント配線板706が取り付けられている。プリント配線板706の機能ブロック図を図7(b)に示す。
【0077】
図7(b)に示すように、プリント配線板706の内部には少なくともI/Oポート707、 710、コントロール部708として機能するICが設けられている。なお、ここではメモリ部709を設けてあるが、必ずしも必要ではない。またコントロール部708は、駆動回路の制御、映像データの補正などをコントロールするための機能を有した部位である。
【0078】
このように、有機発光素子の形成された基板にコントローラーとしての機能を有するプリント配線板が取り付けられた構成のモジュールを、本明細書では特にコントローラー外付け型モジュールと呼ぶことにする。
【0079】
[実施例8]
上記実施例で述べた本発明の発光装置は、薄型軽量・高速応答性・直流低電圧駆動などの特性(有機発光素子の特長)を備えているため、様々な電気器具への応用が効果的である。以下では、その具体例を列挙する。
【0080】
図8(a)は有機発光素子を用いたディスプレイであり、筐体801a、支持台802a、表示部803aを含む。本発明の発光装置を表示部803aとして用いたディスプレイを作製することにより、薄く軽量なディスプレイを実現できる。よって、輸送が簡便になり、設置の際の省スペースが可能となる。
【0081】
図8(b)はビデオカメラであり、本体801b、表示部802b、音声入力部803b、操作スイッチ804b、バッテリー805b、受像部806bを含む。本発明の発光装置を表示部802bとして用いたビデオカメラを作製することにより、消費電力が少なく、軽量なビデオカメラを実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。
【0082】
図8(c)はデジタルカメラであり、本体801c、表示部802c、接眼部803c、操作スイッチ804cを含む。本発明の発光装置を表示部802cとして用いたデジタルカメラを作製することにより、消費電力が少なく、軽量なデジタルカメラを実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。
【0083】
図8(d)は記録媒体を備えた画像再生装置であり、本体801d、記録媒体(CD、LD、またはDVDなど)802d、操作スイッチ803d、表示部(A)804d、表示部(B)805dを含む。表示部(A)804dは主として画像情報を表示し、表示部(B)805dは主として文字情報を表示する。本発明の発光装置をこれら表示部(A)804dや表示部(B)805dとして用いた画像再生装置を作製することにより、消費電力が少なく軽量な画像再生装置を実現できる。なお、この記録媒体を備えた画像再生装置には、CD再生装置、ゲーム機器なども含む。
【0084】
図8(e)は携帯型(モバイル)コンピュータであり、本体801e、表示部802e、受像部803e、操作スイッチ804e、メモリスロット805eを含む。本発明の発光装置を表示部802eとして用いた携帯型コンピュータを作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量な携帯型コンピュータを実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。なお、この携帯型コンピュータはフラッシュメモリや不揮発性メモリを集積化した記録媒体に情報を記録したり、それを再生したりすることができる。
【0085】
図8(f)はパーソナルコンピュータであり、本体801f、筐体802f、表示部803f、キーボード804fを含む。本発明の発光装置を表示部803fとして用いたパーソナルコンピュータを作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量なパーソナルコンピュータを実現できる。特に、ノートパソコンのように持ち歩く用途が必要な場合、電池の消費量や軽さの点で大きなメリットとなる。
【0086】
なお、上記電気器具はインターネットなどの電子通信回線や電波などの無線通信を通じて配信される情報を表示することが多くなってきており、特に動画情報を表示する機会が増えている。有機発光素子の応答速度は非常に速く、そのような動画表示に好適である。
【0087】
次に、図9(a)は携帯電話であり、本体901a、音声出力部902a、音声入力部903a、表示部904a、操作スイッチ905a、アンテナ906aを含む。本発明の発光装置を表示部904aとして用いた携帯電話を作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量な携帯電話を実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも楽になる上にコンパクトな本体にできる。
【0088】
図9(b)は音響機器(具体的には車載用オーディオ)であり、本体901b、表示部902b、操作スイッチ903b、904bを含む。本発明の発光装置を表示部902bとして用いた音響機器を作製することにより、消費電力が少なく、軽量な音響機器を実現できる。また、本実施例では車載用オーディオを例として示すが、家庭用オーディオに用いても良い。
【0089】
なお、図8〜図9で示したような電気器具において、さらに光センサを内蔵させ、使用環境の明るさを検知する手段を設けることで、使用環境の明るさに応じて発光輝度を変調させるような機能を持たせることは有効である。使用者は、使用環境の明るさに比べてコントラスト比で100〜150の明るさを確保できれば、問題なく画像もしくは文字情報を認識できる。すなわち、使用環境が明るい場合は画像の輝度を上げて見やすくし、使用環境が暗い場合は画像の輝度を抑えて消費電力を抑えるといったことが可能となる。
【0090】
また、本発明の発光装置を実施例4のように光源として用いた様々な電気器具も、低消費電力での動作や薄型軽量化が可能であるため、非常に有用と言える。代表的には、液晶発光装置のバックライトもしくはフロントライトといった光源、または照明機器の光源として本発明の発光装置を含む電気器具は、低消費電力の実現や薄型軽量化が可能である。
【0091】
したがって、本実施例に示した図8〜図9の電気器具の表示部を、全て液晶ディスプレイにする場合においても、その液晶ディスプレイのバックライトもしくはフロントライトとして本発明の発光装置を用いた電気器具を作製することにより、消費電力が少なく、薄くて軽量な電気器具が達成できる。
【0092】
【発明の効果】
励起エネルギーが大きく、紫外発光を呈するπ共役系の有機材料を作製することにより、幅広い発光波長領域をカバーできるようになり、様々な色のバリエーションを有する有機発光素子や発光装置を容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発光スペクトルを表す図。
【図2】有機発光素子の構造を示す図。
【図3】発光装置の概略を示す図。
【図4】発光装置の概略を示す図。
【図5】発光装置の断面構造を示す図。
【図6】発光装置の断面構造を示す図。
【図7】発光装置の構成を示す図。
【図8】電気器具の具体例を示す図。
【図9】電気器具の具体例を示す図。

Claims (9)

  1. 陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に設けられた有機化合物層とを有し、
    前記有機化合物層は、下記一般式(1)
    Figure 0004766782
    (ただし、XおよびYは、酸素原子または硫黄原子を表す。また、Zは多環縮合環を表し、置換基を有していてもよい。)で表されるタングステンキレート錯体を含むことを特徴とする有機発光素子。
  2. 陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に設けられた有機化合物層とを有し、
    前記有機化合物層は、下記一般式(2)
    Figure 0004766782
    (ただし、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、または置換基を有するアリール基を表す。)で表されるタングステンキレート錯体を含むことを特徴とする有機発光素子。
  3. 陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に設けられた有機化合物層とを有し、
    前記有機化合物層は、下記一般式(3)
    Figure 0004766782
    (ただし、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、または置換基を有するアリール基を表す。)で表されるタングステンキレート錯体を含むことを特徴とする有機発光素子。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一において、前記タングステンキレート錯体は、近紫外発光を呈することを特徴とする有機発光素子。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一において、前記タングステンキレート錯体は、前記有機化合物層における発光体であることを特徴とする有機発光素子。
  6. 請求項1乃至4のいずれか一において、前記タングステンキレート錯体は、前記有機化合物層における発光体に対するホスト材料であることを特徴とする有機発光素子。
  7. 請求項1乃至のいずれか一に記載の有機発光素子を用いたことを特徴とする発光装置。
  8. 請求項1乃至のいずれか一に記載の有機発光素子を用いたことを特徴とする電気器具。
  9. 請求項1乃至6のいずれか一に記載の有機発光素子を用いたことを特徴とする照明機器。
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