JP4766742B2 - 炭素系発熱体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱体として必要な任意の固有抵抗値、形状及び温度係数を有する炭素系発熱体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、抵抗用発熱体としては主としてタングステン線やニクロム線などの金属線加工品と等方性炭素材料やガラス状炭素などの炭素の切削加工品、炭化珪素などの金属化合物が使用されてきた。その中でも金属線の加工品は主として小型の民生機器のヒーター用発熱体として、炭素や金属化合物は産業用炉などに使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の発熱体用素材の中でも炭素は、金属線などと異なり、発熱速度、発熱効率、遠赤外線の発生効率が良いなど優れた特徴を有している。しかし従来の炭素発熱体は、大きな板形状体やブロック形状体より切削加工により作製するため製造工程が煩雑で高価なうえ細い物や薄い物など作製することが困難である。また、ある規格範囲の固有抵抗値を有するブロック体などから切削するため発熱量の制御は形状を変えるしか方策がないなどの問題点を有している。
【0004】
また、一般の炭素発熱体は負の温度係数を持ち、高温になると常温での抵抗より抵抗値が下がる。炭素発熱体は通電時に瞬時に目的の温度まで上昇するとはいえ、この抵抗値の変化率によっては、温度の自動制御等がやりにくくなる可能性がある。
したがって本発明の目的は、任意の形状、固有抵抗値及び温度係数、特に、実質的に零に近い温度係数を有する炭素系発熱体の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、賦形性を有し焼成後実質的に零でない炭素残査収率を示す組成物に、金属或いは半金属化合物の一種または二種以上を、所望の固有抵抗(比抵抗あるいは電気比抵抗)値に応じた割合で混合し、室温での抵抗値に対する使用温度での抵抗値の変化率を抵抗変化率とするとき、抵抗変化率が−20%以上+20%以下、望ましくは−10%以上+10%以下となる温度で処理するステップを具備する炭素系発熱体の製造方法が提供される。
【0006】
常温に対する使用時の固有抵抗が−20%以下になると、発熱体の温度制御が難しくなり最悪の場合には、異常温度上昇につながり発熱体が断線に至る。また、反対に+20%を越えると使用時にラッシュ電流が生じ、周辺機器に防害を与える。
前記発熱体の断面形状がほぼ円であるとき、1700℃以上1900℃以下の温度で処理すれば、望ましい抵抗変化率を有する発熱体を得ることができる。
【0007】
また、前記発熱体の断面形状がほぼ矩形であるとき、1500℃以上1800℃以下の温度で処理すれば、望ましい抵抗変化率を有する発熱体を得ることができる。
前述の金属或いは半金属化合物とは一般に入手可能な金属炭化物、金属硼化物、金属珪化物、金属窒化物、金属酸化物、半金属窒化物、半金属酸化物、半金属炭化物等が挙げられる。使用する金属或いは半金属化合物種と量は、目的とする発熱体の抵抗値・形状により適宜選択され、単独でも二種以上の混合体でも使用することができるが、抵抗値制御の簡易さから、特に炭化硼素、炭化珪素、窒化硼素、酸化アルミを使用することが好ましく、炭素の持つ優れた特性を堅持するためにもその使用量は70重量部以下が好ましい。
【0008】
前述の組成物としては、不活性ガス雰囲気中での焼成により5%以上の炭化収率を示す有機物質を使用するものである。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル−ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリアミド等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、リグニン、セルロース、トラガントガム、アラビアガム、糖類等の縮合多環芳香族を分子の基本構造内に持つ天然高分子物質、及び前記には含有されない、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、コプナ樹脂等の縮合多環芳香族を分子の基本構造内に持つ合成高分子物質が挙げられる。使用する組成物種と量は、目的とする発熱体の形状により適宜選択され、単独でも二種以上の混合体でも使用することができるが、特にポリ塩化ビニル樹脂、フラン樹脂を使用することが好ましく、炭素の持つ優れた特性を堅持するためにもその使用量は30重量部以上が好ましい。
【0009】
前述の組成物中には炭素粉末が含有されていることが好ましい。炭素粉末としては、カーボンブラック、黒鉛、コークス粉等が挙げられるが、使用する炭素粉末種と量は、目的とする発熱体の抵抗値・形状により適宜選択され、単独でも二種以上の混合体でも使用することができるが、特に形状制御の簡易さから黒鉛を使用することが好ましい。
【0010】
本発明では、前述の有機物質の焼成により生じる炭素材料及び炭素粉は電気良導体として、そして金属或いは半金属化合物は導電阻害物質として作用しており、電流は導電阻害物質である金属或いは半金属化合物を飛び越え、いわゆるホッピングしながら炭素材料またはそれと炭素粉末を媒体として流れる。このためこれら2つないし3つの成分の種類やその比率等を変え、それらを均一に混合、分散させ焼成することにより、所望の固有抵抗値を有する本発明の炭素系発熱体を得ることができる。
【0011】
また本発明の炭素系発熱体は、発熱速度、発熱効率、遠赤外線の発生効率など発熱体としての優れた特徴を具備し、設計どおりの抵抗値と形状を有するため、設定電流・電位の印加により発熱量を容易に制御することが可能である。
但し、発熱量を制御する際には、場合によりかなりの高温になることから、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とした容器中で使用することで、酸化を防止する必要がある。またこの時遠赤外線の発生効率の妨げとならずに高温に耐える石英等の透明を容器を用いることが望ましい。
【0012】
【実施例】
(実施例1)塩素化塩化ビニル樹脂(日本カーバイド社製 T−741)33質量%、天然黒鉛微粉末(日本黒鉛製 平均粒径5μm)1質量%、および窒化硼素(信越化学工業製 平均粒径2μm)66質量%に、可塑剤としてジアリルフタレートモノマー20質量%を添加して、ヘンシェルミキサーを用いて分散した後、表面温度を120℃に保ったミキシング用二本ロールを用いて十分に混練を繰り返して組成物を得、ペレタイザーによってペレット化し、成形用組成物を得た。このペレットをスクリュー型押出機で成形し、これを200℃に加熱されたエアオーブン中で10時間処理してプレカーサー(炭素前駆体)線材とした。次に、これを1×10-2Pa以下の真空中で1500℃で焼成し、直径1.50mmの棒状の炭素系発熱体を得た。
【0013】
得られた炭素系発熱体を、20℃及び1200℃で不活性ガス雰囲気でホイートストーンブリッジ法により固有抵抗を測定し、1200℃の固有抵抗値の20℃の固有抵抗値に対する変化率を求めた。その結果を表1に示す。
(実施例2〜5)1×10-2Pa以下の真空中での処理温度を各々1600℃、1700℃、1800℃、1900℃で焼成した以外、実施例1と同様にして直径1.50mmの棒状の炭素系発熱体を得た。
【0014】
得られた炭素系発熱体を、20℃及び1200℃で不活性ガス雰囲気でホイートストーンブリッジ法により固有抵抗を測定し、1200℃の固有抵抗値の20℃の固有抵抗値に対する変化率を求めた。その結果を表1に示す。
(実施例6)塩素化塩化ビニル樹脂(日本カーバイド社製 T−741)33質量%、天然黒鉛微粉末(日本黒鉛製 平均粒径5μm)1質量%、および窒化硼素(信越化学工業製 平均粒径2μm)66質量%に、可塑剤としてジアリルフタレートモノマー20質量%を添加して、ヘンシェルミキサーを用いて分散した後、表面温度を120℃に保ったミキシング用二本ロールを用いて十分に混練を繰り返して組成物を得、ペレタイザーによってペレット化し、成形用組成物を得た。このペレットをスクリュー型押出機で成形し、これを200℃に加熱されたエアオーブン中で10時間処理してプレカーサー(炭素前駆体)線材とした。次に、これを1×10-2Pa以下の真空中で1400℃で焼成し、板状の炭素系発熱体を得た。得られた炭素系発熱体は断面形状が矩形を呈し、短径0.5mm、長径6.5mmであった。
【0015】
得られた炭素系発熱体を、20℃及び1200℃で不活性ガス雰囲気でホイートストーンブリッジ法により固有抵抗を測定し、1200℃の固有抵抗値の20℃の固有抵抗値に対する変化率を求めた。その結果を表1に示す。
(実施例7〜10)1×10-2Pa以下の真空中での処理温度を各々1500℃、1600℃、1700℃、1800℃で焼成した以外、実施例1と同様にして、断面形状が矩形の短径0.5mm、長径6.5mmの炭素系発熱体を得た。
【0016】
得られた炭素系発熱体を、20℃及び1200℃で不活性ガス雰囲気でホイートストーンブリッジ法により固有抵抗を測定し、1200℃の固有抵抗値の20℃の固有抵抗値に対する変化率を求めた。その結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
Figure 0004766742
【0018】
表1の結果から明らかなように、処理温度と抵抗変化率の間には一定の関係があり、形状が同じであれば処理温度から抵抗変化率が予測できることがわかる。したがって、処理温度を調整することにより、所望の抵抗変化率を有する発熱体を得ることができる。例えば、実施例1〜5の形状の丸棒であれば、処理温度を1700〜1900℃の範囲とすれば抵抗変化率を±20%の範囲に収めることができ、約1800℃とすれば抵抗変化率をほぼ0とすることができる。また、実施例6〜10の矩形の断面であるときは、処理温度を1500〜1800℃の範囲とすれば抵抗変化率を±20%の範囲に収めることができ、約1600℃とすれば抵抗変化率をほぼ0とすることができる。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、任意の形状・固有抵抗値及び温度係数、特に、実質的に零に近い温度係数を有する炭素系発熱体の製造方法が提供される。

Claims (2)

  1. 賦形性を有し焼成後実質的に零でない炭素残査収率を示す組成物に、窒化硼素を、組成物および窒化硼素の合計を100重量部として0重量部を超え70重量部以下である割合で混合し、
    混合物を所望の形状に成形し、
    成形物を焼成温度に満たない温度で一定時間処理してプレカーサー線材とし、
    室温での固有抵抗値に対する1200℃での固有抵抗値の変化率を抵抗変化率とするとき、前記プレカーサー線材を真空中で1700℃以上1900℃以下の温度で焼成することにより、−20%以上+20%以下の抵抗変化率を有し断面形状がほぼ円である発熱体とすることを特徴とする炭素系発熱体の製造方法。
  2. 賦形性を有し焼成後実質的に零でない炭素残査収率を示す組成物に、窒化硼素を、組成物および窒化硼素の合計を100重量部として0重量部を超え70重量部以下である割合で混合し、
    混合物を所望の形状に成形し、
    成形物を焼成温度に満たない温度で一定時間処理してプレカーサー線材とし、
    室温での固有抵抗値に対する1200℃での固有抵抗値の変化率を抵抗変化率とするとき、前記プレカーサー線材を真空中で1500℃以上1800℃以下の温度で焼成することにより、−20%以上+20%以下の抵抗変化率を有し断面形状がほぼ矩形である発熱体とすることを特徴とする炭素系発熱体の製造方法。
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