JP4763300B2 - スパイラル線付き架空電線 - Google Patents

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Description

本発明は、低風音化若しくは難着雪化が可能なスパイラル線、そのスパイラル線付き架空電線、及び該架空電線の製造方法に関するものである。
高い鉄塔間に架設される裸電線または被覆線の架空送電線は、強風を受けると特有な風音が発生することが知られており、この種の風音は人々にとって好ましく感じない音である。特に、架空送電線が近くに架設されている地域ではその騒音苦情が発生することが多い。
また、架空送電線に雪が大量に付着すると断線や鉄塔倒壊などの重大事故を引き起こすことがあるため、雪害対策が重要となる。
この架空送電線から発生する風騒音防止および雪害対策として、架空送電線の外周にスパイラル状に金属線のスパイラルロッドを巻き付けることで実用化されている。このスパイラルロッドは長さが通常1.5m又は2.5mの定尺品もので、予めスパイラル状に成形加工されたアルミニウム被覆鋼線(以下アルミ被覆鋼線という)若しくはアルミニウム合金線(以下アルミ合金線という)であり、既に鉄塔間に布設した架空送電線外周に後から巻き付けるものである。
即ち、工場で予めスパイラル状にプレフォームされた金属線を、長さが1.5m又は2.5mの短尺の風音防止スパイラルロッドに加工して数十〜数千本製作し、次にその製作された短尺の風音防止スパイラルロッドを既設または新設の架空送電線の架設位置に運搬し、少なくとも数十mの鉄塔間にある架空送電線全長の外周に複数本の風音防止スパイラルロッドを順次連結しながら、スパイラル状に巻き付けるように取り付ける(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−322368号公報
しかしながら、鉄塔などの高所に布設された架空送電線に後付けにより多数のスパイラルロッドを取り付けるのは、作業者に負担が掛かり、作業自体そのものが大変危険を伴うものである。
そこで、架空送電線の布設(延線作業)時にスパイラルロッドを地上で架空送電線に取り付けながら施工することも試みられたが、端末が多数あることから鉄塔に吊るされた金車を通過する際に、スパイラルロッドの端末が外れその都度直す必要がある等の問題があった。
また、アルミニウム素線(以下アルミ素線という)の撚線からなる架空送電線にアルミ素線と同じまたは同等の硬さ特性を有するアルミ被覆鋼線からなるスパイラル線を事前に巻き付けた状態で布設工事を行うと、施工時に金車上で撚線の外層アルミ素線が変形するニッキングが生じてしまう。これは、スパイラル線と撚線の外層アルミ素線同士が金車上を通過して接触したことにより、その交差位置で金車からの押圧も加わって外層アルミ素線に大きなニッキングが起きてしまうためである。この撚線へのニッキングは変形の度合いによっては長期間の使用で架空送電線が断線を引き起こす原因になる。
従って、本発明の目的は、上記課題を解決し、架空電線を構成する撚線へのニッキングを抑え、その架空電線が長期間使用できて低風音化または難着雪化が得られるスパイラル線及びそのスパイラル線付き架空電線ならびに該架空電線の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、スパイラルロッドによる高所での巻き付け施工作業をなくして、作業者の安全が確保され施工作業性を改善することができるスパイラル線及びそのスパイラル線付き架空電線ならびに該架空電線の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、最外層をアルミニウム素線によって構成した鋼心アルミニウム撚線系電線と、その外周にスパイラルに巻き付けられたアルミニウム被覆鋼線とからなるスパイラル線付き架空電線であって、
前記スパイラル線を構成する最終布設線径の前記アルミニウム被覆鋼線は、270℃を超え350℃以下の温度範囲の熱処理を施されることにより、
その伸び特性が、2.5%を超え6.0%以下であり
その硬さ特性が、熱処理前の80%以下であり
かつ、その引張り強さが熱処理前の95%以上の特性を備えたスパイラル線とすることにより、
前記スパイラル線は、前記伸び特性が前記最外層のアルミニウム素線よりも大きく、前記硬さ特性が前記最外層のアルミニウム素線よりも小さく構成されその最外層のアルミニウム素線の外周にスパイラルに巻き付けられることを特徴とするスパイラル線付き架空電線を提供する。
アルミニウム材料としては、アルミニウム単体またはアルミニウム合金から成るものを用いることができる。また、架空電線としては、一般的に用いられている鋼心アルミニウム撚線(ACSR)、鋼心耐熱アルミニウム合金撚線(TACSR)やインバ心超耐熱アルミニウム合金撚線(ZTACIR)などの鋼心アルミニウム撚線系電線を用いることができる。
本発明によれば、スパイラル線の断線を防止できると共に、施工時の架空電線のニッキングを抑えることができる。また、架空電線にスパイラルロッドを巻き付け布設した時の頻繁なスパイラルロッド端末外れという問題も起きず、高所作業を伴わず作業者の安全が確保され施工作業性を改善できる。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
(全体構成)
図1及び図2に、それぞれ本発明の第1の実施形態に係る架空送電線の斜視図、側面図を示す。
このスパイラル線付き架空送電線10は、鋼心の外周に複数本のアルミ素線を撚り合わせた撚線からなる鋼心アルミ撚線(ACSR)1(最外層には硬アルミ素線2が設けられている)の外周に、スパイラル線3としてのアルミ被覆鋼線を鋼心アルミ撚線1の撚り方向とは反対方向であり、しかも鋼心アルミ撚線1の最外層の硬アルミ素線2の撚りピッチよりも短い撚りピッチ条件で、1本により撚り合わせをして取り付けたものである。
スパイラル線3としてアルミ被覆鋼線を用いたのは、比較的細いサイズを採用した場合でも充分な強度・剛性を確保できるからである。
また、スパイラル線3の撚り方向を鋼心アルミ撚線1の撚り方向とは反対方向としたのは、鉄塔間への施工作業時に、鋼心アルミ撚線1のアルミ素線間への食い込み(落ち込み)を防止する目的と、降雪時に撚りに添って雪が成長して着雪するのを防止するためである。
更に、スパイラル線3のアルミ被覆鋼線を最外層撚線の硬アルミ素線2の撚りピッチよりも短い撚りピッチ条件により撚り合わせたのは、着雪防止作用を確実に発揮させるために、硬アルミ素線2の各素線がどの方向から見た場合でもその周面の一面内で必ずスパイラル線3と交差し接触するようにしたためである。
そして、1本または2本のスパイラル線3を、鋼心アルミ撚線1に撚り合わせる構造としたのは、最終形態を酷似とすることでスパラルロッドと同等またはそれ以上の低風音化及び難着雪化が実現できるからである。
(スパイラル線の伸び特性)
アルミ被覆鋼線は、スパイラルロッド、ACSRの鋼線、架空地線の素線などに用いられるが、素線レベルでは伸び特性規格値が1.5%以上のものである。一方、鋼心アルミ撚線を構成する硬アルミ線もしくはアルミ合金線の伸び特性規格値はアルミ線のサイズを考慮しても素線レベルで1.5〜2.0%以上となっており、硬アルミ線もしくはアルミ合金線の伸び特性がアルミ被覆鋼線より大きい。従って、材料の基本特性が反映される素線レベルにおいて比較すると、伸び特性の小さい通常に使用されるアルミ被覆鋼線では、何らかの異常荷重が鋼心アルミ撚線に加わった場合、鋼心アルミ撚線のアルミ素線破断前にアルミ被覆鋼線のみが破断する場合がある。そこで、このアルミ被覆鋼線をスパイラル線として採用する時には、鋼心アルミ撚線が元々撚線としての基本特性が確保できているアルミ素線が破断に至るまで破断しないような伸び特性が必要である。
(スパイラル線の硬度)
アルミ素線の撚線からなる架空送電線にアルミ素線と同じまたは同等の硬さ特性を有するアルミ被覆鋼線のスパイラル線を事前に鋼心アルミ撚線に巻き付けた状態で布設工事を行うと、施工時に金車上で鋼心アルミ撚線の最外層のアルミ素線(硬アルミ線)が変形するニッキングを生じる。鋼心アルミ撚線へのニッキングは変形の度合いによっては長期間の使用で断線を引き起こす場合があるので、スパイラル線として採用されるアルミ被覆鋼線の表面アルミの硬度を小さく(=柔らかく)することにより、硬アルミ線へのニッキング量を抑えて少なくすることができた。具体的にはスパイラル線として用いるアルミ被覆鋼線のアルミの軟化の範囲を80%以下とした。アルミ被覆鋼線の熱処理温度条件としては、260℃を超え350℃以下の範囲が好ましい。かかる範囲としたのは、後述する実施例からも明らかな通り、260℃以下では硬さ特性と伸び特性が改善せず、他方350℃を超えると硬さ特性と伸び特性が改善したが、架空電線用材料として要求される引張強さが低下するからである。
(製造方法)
図1及び図2に示すスパイラル付き架空送電線10は以下のようにして製造することができる。
まず、最終使用線径のスパイラル線3のアルミ被覆鋼線に260℃を超え350℃以下の温度範囲で熱処理を施すことにより、アルミの硬さ特性を当初の80%以下とする。
この熱処理工程により、伸び特性が1.5%以上となり、熱処理前と熱処理後の特性を比較した場合に、アルミの硬さが80%以下、線材のアルミ被覆鋼線の引張り強さが95%以上からなるスパイラル線3が製造できる。
次に、上記スパイラル線3の中から共に布設される鋼心アルミ撚線1の最外層に用いる硬アルミ素線2との組み合わせ構成において、伸び特性と硬さ特性の関係を満足するものを選択する。そして、選択したスパイラル線3を布設前の鋼心アルミ撚線1の外形寸法に合うようスパイラル状にプレフォーム成形加工し、プレフォームのスパイラル線3を作製する。更に、1本のプレフォームのスパイラル線3を布設前で上述した共に布設される鋼心アルミ撚線1全長の外周に撚り合わせながら取り付ける。この取り付けは、架空電線全長若しくは所定径間に亘って行うことができる。例えば1径間分の長尺に亘っての取り付けは、プレフォームのスパイラル線を鋼心アルミ撚線1の撚り方向とは反対方向にしながら、最外層撚線の硬アルミ素線2の撚りピッチよりも短いピッチにて撚り合わせることにより形成する。アルミ被覆鋼線のスパイラル線3は剛性があるので、単に鋼心アルミ撚線1と撚り合わせるのでなく、プレフォーム処理により成形加工するのが好ましい。
(効果)
本実施形態のスパイラル付き架空送電線10によれば、以下の優れた効果を奏する。
(1)アルミ被覆鋼線からなるスパイラル線3は、その伸び特性を鋼心アルミ撚線1を構成するアルミ素線より大きなものにしているので、何らかの異常荷重が鋼心アルミ撚線1に加わった場合でも、鋼心アルミ撚線1の破断前に破断することがない。
(2)アルミ被覆鋼線からなるスパイラル線3は、そのアルミの硬さ特性において軟化の範囲を熱処理前の80%以下として表面アルミの硬度を小さく(=柔らかく)しているので、硬アルミ素線2へのニッキング量を抑えて少なくすることができた。
(3)熱処理を施したスパイラル線3は、布設前で共に布設する鋼心アルミ撚線1を伸び特性及び硬さ特性を考慮しながら選択したものを採用することから、巻き付けた状態で布設工事を行なっても、施工時に金車上で鋼心アルミ撚線1の最外層の硬アルミ素線2にニッキングが生じにくい。
(4)スパイラル線付き架空送電線10は、高所の架設位置に布設する前に、事前に工場などで鋼心アルミ撚線1にスパイラル線3を撚り合わせて取り付け形成できるので、危険を伴う高所での巻き付け施工作業がなくなる。
[第2の実施の形態]
図3に、本発明の第2の実施の形態に係るスパイラル線付き架空送電線20の斜視図を示す。
このスパイラル線付き架空送電線20は、2本のスパイラル線5,6を密着させて鋼心アルミ撚線1に撚り合わせて形成したものである。
[第3の実施の形態]
図4に、本発明の第3の実施の形態に係るスパイラル線付き架空送電線30の斜視図を示す。
このスパイラル線付き架空送電線30は、2本のスパイラル線7,8を対角位置にて鋼心アルミ撚線1に撚り合わせて形成したものである。
第2及び第3の実施形態のスパイラル線付き架空送電線において、2本のアルミ被覆鋼線のスパイラル線を用いても、スパラルロッドと同等またはそれ以上の風音低減効果及び難着雪化が認められるのみならず、第1の実施形態のスパイラル線付き架空送電線と同様の効果を奏することができる。
そして、前述したような本発明のスパイラル線及びスパイラル線付き架空電線は、ACSR系電線からなる架空送電線用電力線のみならず、架空地線や光ファイバ複合架空地線(OPGW)または裸電線の架空電線にも適用できる。
アルミ被覆率が30%で外径2.3mmのスパイラル線3として用いるアルミ被覆鋼線について、種々の条件で熱処理を施し、伸び特性、硬さ比、引張り強さ比を測定した。結果を図5及び表1に示す。図5に示した○印は硬さ特性、△印は伸び特性である。
Figure 0004763300
図5及び表1の結果より、熱処理前の伸び値は2.0〜2.2%であって、伸び特性は、熱処理温度が270℃以上で初期値よりも大きくなり、硬さ比も270℃以上でアルミの軟化範囲が80%以下となることが分かった。なお、熱処理温度が350℃を超えると、引張り強さ比が明らかに低下することが分かった。
以上のことより、熱処理温度は270℃以上で350℃以下とすることが好ましいことが判明した。
なお、引張り強さは、導体に明らかな軟化のないことが架空電線用材料に要求される条件である。
スパイラル線3として用いられるアルミ被覆率が30%で外径2.3mmのアルミ被覆鋼線に軟化処理を施したもの、比較用の軟化処理前のものについて、鋼心アルミ撚線1の最外層の撚線に用いられる外径4.2mmの硬アルミ素線2と直交させて、交差部に荷重を加え、硬アルミ素線2へのニッキング深さを測定した。なお、試験に用いたアルミ被覆鋼線の軟化条件は300℃×1時間である。結果を表2に示す。
Figure 0004763300
表2のニッキング深さ測定結果より、アルミ被覆鋼線に軟化処理を施して柔らかくすることで10〜43%のニッキング深さ低減効果が確認できた。表1にも示したように、300℃の熱処理条件でのアルミ被覆鋼線の硬さの比(熱処理後/熱処理前)は74%であったので、裕度も見込んでアルミの軟化の範囲が80%以下とするのが好ましい。
撚線外径28.5mm、外層撚りピッチ290mmの撚線に、外径2.3mmのアルミ被覆鋼線で作成したプレフォーム処理のスパイラル線を撚線最外層と反対方向に250mmピッチで撚り合わせて取り付けた時の風音低減効果を調べた。なお、比較例として、同一の条件で製造した撚線(スパイラル線を設けないもの)についても調べた。
図6に、風速を10、15、20m/sとした場合の周波数と騒音レベルとの関係を示す。
図6の結果より、風速10、15、20m/sのいずれの条件においても、スパイラル線を設けることにより、周波数が250Hz以下では騒音レベルが著しく低減されることが分かった。
第1の実施形態に係る架空送電線の斜視図である。 第1の実施形態に係る架空送電線の側面図である。 第2の実施形態に係る架空送電線の斜視図である。 第3の実施形態に係る架空送電線の斜視図である。 熱処理温度と硬さ比、伸びとの関係を示すグラフである。 周波数と騒音レベルとの関係を示すグラフである。
符号の説明
1 鋼心アルミ撚線
2 硬アルミ素線
3,5,6,7 スパイラル線
10,20,30 スパイラル線付き架空送電線

Claims (1)

  1. 最外層をアルミニウム素線によって構成した鋼心アルミニウム撚線系電線と、その外周にスパイラルに巻き付けられたアルミニウム被覆鋼線とからなるスパイラル線付き架空電線であって、
    前記スパイラル線を構成する最終布設線径の前記アルミニウム被覆鋼線は、270℃を超え350℃以下の温度範囲の熱処理を施されることにより、
    その伸び特性が、2.5%を超え6.0%以下であり、
    その硬さ特性が、熱処理前の80%以下であり、
    かつ、その引張り強さが熱処理前の95%以上の特性を備えたスパイラル線とすることにより、
    前記スパイラル線は、前記伸び特性が前記最外層のアルミニウム素線よりも大きく、前記硬さ特性が前記最外層のアルミニウム素線よりも小さく構成されてその最外層のアルミニウム素線の外周にスパイラルに巻き付けられることを特徴とするスパイラル線付き架空電線。
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