ところが、特許文献1の放電装置で行われるコロナ放電は、その放電電圧が比較的低く、充分な活性種を生成することができなかった。このため、空気中で生成した活性種が被処理液中に充分吸収されず、その結果、被処理液の浄化効率の低下を招くことがあった。
また、コロナ放電に伴い生成した活性種を液中に吸収させた後、この液と被処理空気とを接触させることで被処理空気中の臭気成分や有害成分を除去することも考えられる。しかしながら、この場合にも、コロナ放電では充分な活性種を生成できないため、液中の活性種の濃度が低くなり、被処理空気の浄化効率の低下を招いてしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液中に多量の活性種を吸収させることができる放電装置を提案するとともに、この放電装置を空気浄化装置や液処理装置に適用することである。
第1の発明の放電装置は、液を連続して連なった状態で噴出させる噴出器(32)と、該噴出器(32)で噴出させた液に向かってストリーマ放電を生起させる放電電極(31)と、上記噴出器(32)で噴出させた液と、上記放電電極(31)との間に電位差を与える電源(33)とを備えていることを特徴とするものである。
第1の発明では、噴出器(32)が液を連続して連なった状態で噴出させる。この状態で、電源(33)は、噴出する状態の液と放電電極(31)との間に電位差を与える。その結果、噴出する液に向かって放電電極(31)からストリーマ放電が生起する。
このストリーマ放電は、従来のコロナ放電と比較して、その放電電圧が高く、放電電極(31)と噴出する液との間で高電界密度の放電場が形成される。このため、空気中では、ストリーマ放電に伴い、高速電子、イオン、オゾン、ラジカル、その他励起分子(励起酸素分子、励起窒素分子、励起水分子)等の活性種が多量に発生する。従って、噴出する液と活性種とが気液接触することで、噴出する液中には多量の活性種が吸収されることになる。
また、本発明では、噴出器(32)が液を噴出させた状態としている。このため、例えば静止状態の液に向かってストリーマ放電を行う場合と比較して、液に対する活性種の吸収効率が高まる。
更に、ストリーマ放電が生起すると、この放電方向に向かって強力なイオン風が生じる。このため、このイオン風によって噴出する液と活性種とが掻き乱され、液と活性種との気液接触効率も更に向上する。その結果、液に対する活性種の吸収効率が更に向上する。
第2の発明は、第1の発明において、上記噴出器(32)は、液を膜状に噴出させるように構成されていることを特徴とするものである。
第2の発明では、噴出器(32)からは液が膜状となった状態で噴出される。放電電極(31)からは噴出器(32)から噴出された液(液膜)に向かってストリーマ放電が生起する。このように、液を薄い膜状とすると、活性種に対する液の接触面積を稼ぐことができる。その結果、液に対して活性種を効率的に吸収させることができる。
第3の発明は、第2の発明において、上記噴出器(32)が放電電極(31)側に向かって液を噴出するように構成され、上記放電電極(31)の先端が上記噴出器(32)側を向いていることを特徴とするものである。
第3の発明では、噴出器(32)の噴出方向と、放電電極(31)のストリーマ放電の放電方向とが互いに対向する。その結果、液に対する活性種の吸収効率が向上する。
第4の発明は、第3の発明において、上記噴出器(32)が、液を中空円錐状の液膜(32a)として噴出させるように構成され、上記放電電極(31)の先端が、中空円錐状の液膜(32a)の内側に配置されていることを特徴とするものである。
第4の発明では、噴出器(32)から中空円錐状に液膜(32a)が噴出される。放電電極(31)からは、中空円錐状の液膜(32a)に対してストリーマ放電が生起する。このように、液膜(32a)を中空円錐状に噴出させると、活性種を含む空間に対して液膜(32a)が3次元的に広範囲に広がることになる。その結果、液膜(32a)と活性種との接触効率が高まり、液膜(32a)に対する活性種の吸収効率も向上する。
一方、本発明の放電電極(31)の先端は、この中空円錐状の液膜(32a)の内側に位置している。このように放電電極(31)を配置すると、放電電極(31)の先端から中空円錐状の液膜(32a)に対してフレア状にストリーマ放電が進展する。このため、ストリーマ放電に伴い活性種が広範囲に亘って生成することとなり、液膜(32a)に対する活性種の吸収効率が更に向上する。
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、上記噴出器(32)は、水を含む液を噴出するように構成されていることを特徴とするものである。
第5の発明では、噴出器(32)から噴出される液中に水(H2O)が含まれる。ここで、ストリーマ放電に伴うラジカルの生成に関しては、水の存在下において、特に強い酸化力を持つOHラジカルが発生することが知られている。このため、本発明では、液に含まれる水に向かってストリーマ放電を生起させることで、OHラジカルの発生量が増し、このOHラジカルが液に多量に吸収される。
第6の発明は、被処理空気を浄化する空気浄化装置を前提としている。そして、この空気浄化装置は、第1乃至第5のいずれか1つの発明の放電装置(30)を備え、上記放電装置(30)の噴出器(32)で噴出させた液と被処理空気とを接触させて、該被処理空気を浄化することを特徴とするものである。
第6の発明では、第1乃至第5のいずれか1の発明の放電装置(30)が空気浄化装置に搭載される。放電装置(30)では、上述のようにして噴出器(32)で噴出させた液と放電電極(31)との間でストリーマ放電が行われる。その結果、液中には多量の活性種が吸収される。一方、有害成分や臭気成分等を含む被処理空気は、活性種を含んだ液と接触する。その結果、被処理空気中の臭気成分等は、液中に含まれる活性種によって酸化分解され、被処理空気が浄化される。
第7の発明は、被処理液を浄化する液処理装置を前提としている。そして、この液処理装置は、第1乃至第5のいずれか1つの発明の放電装置(30)を備え、上記放電装置(30)の噴出器(32)は、被処理液を噴出させるように構成され、上記放電装置(30)の放電電極(31)は、上記噴出器(32)で噴出させた被処理液に向かってストリーマ放電を生起させ、被処理液を浄化することを特徴とするものである。
第7の発明では、噴出器(32)が被処理液を噴出させる。放電電極(31)からは、噴出した状態の被処理液に向かってストリーマ放電が行われる。ストリーマ放電に伴い生成した活性種は、被処理液中に吸収される。その結果、被処理液中では、殺菌処理や汚染物質の酸化処理がなされ、被処理液が浄化される。
上記第1の発明では、噴出器(32)によって噴出させた液に向かって放電電極(31)からストリーマ放電を生起させるようにしている。このため、本発明によれば、従来のコロナ放電やグロー放電などと比較して、空気中に多量の活性種を生成することができ、更にストリーマ放電に伴い生成するイオン風を利用して、液に対する活性種の吸収効率を高めることができる。その結果、本発明によれば、液に吸収される活性種の量も多くなり、活性種を多量に含む液を得ることができる。従って、例えばこの液に臭気成分を含む被処理空気を接触させることで、臭気成分を効果的に除去することができる。また、例えば汚染物質を含む被処理液に向かってストリーマ放電を生起させることで、被処理液中に含まれる汚染物質を効果的に除去することができる。
また、本発明では、噴出させた状態の液に向かってストリーマ放電を行うようにしている。このため、本発明によれば、例えば静止状態の液に向かってストリーマ放電を行う場合と比較して、液に対する活性種の吸収効率を向上させることができる。
上記第2の発明では、噴出器(32)から膜状の液を噴出させるようにしている。このため、本発明によれば、液に対する活性種の気液接触効率を向上させることができる。
上記第3の発明では、放電電極(31)と噴出器(32)とが互いに向かい合うように配置されている。このため、本発明によれば、液と活性種との気液接触効率を更に向上させることができる。
また、第3の発明では、噴出器(32)から噴出された液が放電電極(31)に向かって飛散する。このため、この液によって放電電極(31)の表面に付着した塵埃や汚れを取り除くことができる。従って、本発明によれば、放電電極(31)の清掃や交換の頻度を少なくできる。
また、上述のようにして放電電極(31)の周囲に付着した液は、放電電極(31)から噴出器(32)側へ向かうイオン風に載って放電電極(31)の先端に集まり易くなる。その結果、放電電極(31)の先端には、液体膜が形成されることになる。このため、放電電極(31)の先端部では、放電が生じてもその温度が上昇しにくくなり、放電電極(31)の先端部の溶融・酸化を防ぐことができる。従って、本発明によれば、放電電極(31)の先端部の劣化・損耗を防ぐことができ、放電電極(31)の交換頻度を低減できる。
このようにして放電電極(31)の先端部が損耗(後退)しなくなると、放電電極(31)と噴出器(32)の距離(設計距離)を一定に保つことができる。つまり、本発明では、放電電極(31)の後退に伴い設計距離が広がってしまうことがないため、長期に亘って所期のストリーマ放電を維持させることができる。
第4の発明では、噴出器(32)から中空円錐状の液膜(32a)を噴出させる一方、放電電極(31)から液に向かってフレア状のストリーマ放電を生起させるようにしている。このため、本発明によれば、液膜(32a)及びストリーマ放電が共に広範囲に広がることとなり、液膜(32a)と活性種とを効率良く接触させることができる。
また、本発明では、噴出器(32)から噴出された液膜(32a)が、放電電極(31)の先端に直接かかってしまうことがないため、ストリーマ放電を安定させることができる。
第5の発明では、噴出器(32)から噴出される液中に水(H2O)を含ませるようにしている。このため、第5の発明によれば、ストリーマ放電に伴って、ヒドロキシルラジカル(OHラジカル)、ヘドロペルオキシド(HO2)、過酸化水素(H2O2)等の殺菌力・酸化力の高い活性種を生成することができ、これらの活性種を液中に吸収させることができる。
第6の発明では、第1乃至第5の発明の放電装置(30)を被処理空気の浄化に利用している。即ち、本発明では、活性種を多量に含んだ噴出液と被処理空気とを接触させ、被処理空気中の臭気成分や有害成分を活性種によって酸化分解するようにしている。従って、本発明によれば、空気浄化装置による被処理空気の浄化能力の向上を図ることができる。
第7の発明では、第1乃至第5の発明の放電装置(30)を被処理液の浄化に利用している。即ち、本発明では、噴出器(32)で噴出させた被処理液に向かってストリーマ放電を行い、ストリーマ放電に伴い多量に生成された活性種を被処理液中に吸収させるようにしている。このため、本発明によれば、液処理装置による被処理液の浄化能力の向上を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1は、本発明に係る放電装置(30)を空気浄化装置(10)に適用した例である。この空気浄化装置(10)は、飲食店等の厨房内から空気(厨房排気)を排出する厨房排気システム(1)に組み込まれている。つまり、空気浄化装置(10)は、厨房空間からの厨房排気を被処理空気とし、この被処理空気を浄化する。
図1に示すように、厨房排気システム(1)は、排気フード(3)と排気ダクト(4)と排気ファン(5)とを備えている。排気フード(3)は、厨房空間内に設置された調理機器(2)の上方に配置されており、調理機器(2)の使用に伴い発生する厨房排気を捕集する。また、排気フード(3)の内部には、厨房排気中のオイルミストやダストを捕捉するためのグリスフィルタ(6)が設けられている。
排気ダクト(4)は、一端が上記排気フード(3)と接続し、他端が室外空間に開口している。排気ダクト(4)の他端側には、厨房空間から被処理空気を吸引し、この被処理空気を室外へ排出するための上記排気ファン(5)が設けられている。また、排気ダクト(4)の途中には、被処理空気中のオイルミスト、ダスト(塵埃)、臭気成分等を除去するための空気浄化装置(10)が設けられている。
この空気浄化装置(10)は、被処理空気の上流側から下流側に向かって順に、イオン化部(20)、ストリーマ放電部(30)、デミスタ(25)が設けられている。
図2に示す上記イオン化部(20)は、被処理空気中のダストやオイルミストを帯電させるものである。イオン化部(20)は、複数のイオン化線(21)と、対向電極(22)とを備えている。複数のイオン化線(21)は、上下方向に延びる線状ないし棒状に形成され、各々が互いに平行となるように等間隔に配列されている。対向電極(22)には、前面側のプレート状の部位に複数の開口(22a)が形成されている。また、対向電極(22)は、各イオン化線(21)と隣り合わせに配置される複数の電極板(22b)を備えている。また、イオン化部(20)は、イオン化部用電源(23)を備え、このイオン化部用電源(23)のプラス側が各イオン化線(21)と、マイナス側が対向電極(22)とそれぞれ接続されている。
上記デミスタ(25)は、イオン化部(20)で帯電されたダストやオイルミストを電気的に誘引して捕集するものである。また、デミスタ(25)は、被処理空気中に含まれる水分も捕捉する。デミスタ(25)で捕捉された水分は、デミスタ(25)の下側に設けられる回収槽(26)内に回収される。
上記ストリーマ放電部(30)は、本発明に係る放電装置を構成している。ストリーマ放電部(30)は、複数の放電電極(31)と複数の噴出器(32)と電源(33)とを備えている。また、ストリーマ放電部(30)は、噴出器(32)へ供給する液(水)を貯留する水タンク(34)と、該水タンク(34)から噴出器(32)へ水を送るための水供給管(35)とを備えている。
上記各放電電極(31)は、針状ないし棒状に形成されており、水平方向に延びる姿勢で支持されている。各放電電極(31)は、耐水性に優れたステンレス材料で構成されている。また、各放電電極(31)は、上記電源(33)のプラス側と電気的に接続している。
各噴出器(32)は、上記水タンク(34)から水供給管(35)を介して供給される水を噴出するものである。各噴出器(32)は、水を連続して連なった状態の液膜(32a)としながら噴出させる液噴出手段を構成している。また、各噴出器(32)は、その噴出口が、対応する放電電極(31)の先端側をむいている。つまり、各噴出器(32)と各放電電極(31)とは、それぞれ互いに対向するように配置されている。また、噴出器(32)は、その液膜(32a)の噴出形状が、放電電極(31)の軸線を中心とする中空円錐状となるように構成されている。そして、放電電極(31)の先端は、中空円錐状に広がる液膜(32a)の内側に位置している。また、各噴出器(32)は、電源(33)のマイナス側と電気的に接続している。つまり、噴出器(32)から噴出される噴出水は、マイナスの電荷を帯びている。
電源(33)は、直流式の高圧電源で構成されている。電源(33)は、各放電電極(31)と、各噴出器(32)から噴出される液膜(32a)との間にそれぞれ電位差を与える。その結果、ストリーマ放電部(30)では、放電電極(31)の先端から液膜(32a)に向かってストリーマ放電が生起する。つまり、ストリーマ放電部(30)では、噴出器(32)から噴出される液膜(32a)が、放電電極(31)と対をなす対向電極として機能している。なお、上記放電電極(31)と噴出器(32)とは、電源(33)の電位差に応じて、放電電極(31)と液膜(32a)との間で所期のストリーマ放電が生じるように、相互の位置関係が定められている。
−運転動作−
次に、厨房排気システム(1)の運転動作について説明する。
図1に示すように、排気ファン(5)が運転状態となると、厨房空間から排出される厨房排気が排気フード(3)に捕集され、排気ダクト(4)内に吸引される。排気フード(3)のグリスフィルタ(6)では、厨房排気中に含まれる比較的大粒径(10ミクロン以上の粒径)のオイルミストやダストが捕捉される。グリスフィルタ(6)を通過した厨房排気は、被処理空気として空気浄化装置(10)内に吸引される。
空気浄化装置(10)では、まず、被処理空気がイオン化部(20)を流れる。イオン化部(20)では、イオン化線(21)から対向電極(22)へ向かってコロナ放電が生起している。このため、被処理空気がイオン化部(20)を通過すると、被処理空気中に含まれるオイルミストやダストが帯電する。
図3に示すように、ストリーマ放電部(30)では、各噴出器(32)から中空円錐状の液膜(32a)が噴出されている。一方、各放電電極(31)と各噴出器(32)との間に電源(33)から電位差が与えられると、各放電電極(31)から中空円錐状の液膜(32a)に向かってフレア状にストリーマ放電が生起する。即ち、各放電電極(31)の先端部からは、フレア状の微小アークが連続して進展し、発光を伴ったプラズマ柱が形成される。このようなストリーマ放電により、空気中の放電場では活性種が生成する。なお、この活性種としては、高速電子、イオン、オゾン、ヒドロキシラジカルなどのラジカルや、その他励起分子(励起酸素分子、励起窒素分子、励起水分子など)が挙げられる。これらの活性種は、噴出器(32)から噴出される液膜(32a)と気液接触し、この液膜(32a)中に吸収される。
また、このように放電電極(31)の先端部から液膜(32a)にストリーマ放電が生じると、その放電方向(図3の矢印の方向)へイオン風が生起する。このイオン風の生成に伴い液膜(32a)と活性種との気液接触効率が増し、活性種が液膜(32a)中へ効率良く吸収される。
一方、ストリーマ放電部(30)を流れる被処理空気中には、疎水性や親水性の臭気成分が含まれている。まず、疎水性の臭気成分は、空気中に生成した活性種によって酸化分解され、親水性の状態に変化する。その後、被処理空気中の親水性の臭気成分は、噴出器(32)から噴出された液膜(32a)中に吸収される。ここで、この液膜(32a)には多量の活性種が吸収されているため、液膜(32a)中では、水溶した臭気成分と活性種とが反応し、臭気成分が更に酸化分解される。
以上のように、ストリーマ放電部(30)では、空気中での活性種による臭気成分の酸化処理と、液膜(32a)への臭気成分の吸収処理と、噴出水中での活性種による臭気成分の酸化処理とが並行して行われる。また、ストリーマ放電部(30)では、被処理空気中に残存するダストも物理的、あるいは電気的に捕捉される。
以上のようにして処理された被処理空気は、デミスタ(25)を通過する。デミスタ(25)では、被処理空気中で帯電した状態のダストや、被処理空気中の水分が捕捉される。また、デミスタ(25)では、被処理空気中に残存する臭気成分と、未反応の活性種との接触が促され、低濃度の臭気成分が更に分解される。デミスタ(25)で捕捉された水分は、回収槽(26)内に回収される。一方、デミスタ(25)を通過した被処理空気は、排気ダクト(4)を介して室外へ放出される。
−実施形態1の効果−
上記実施形態1では、噴出器(32)から噴出した液膜(32a)に向かってストリーマ放電を生起させるようにしている。このため、上記実施形態1によれば、従来のコロナ放電やグロー放電などと比較して、空気中に多量の活性種を生成することができ、更にストリーマ放電に伴い生成するイオン風を利用して、液膜(32a)に対する活性種の吸収効率を高めることができる。その結果、この液膜(32a)に活性種を多量に吸収させることができ、この液と被処理空気とを気液接触させることで、被処理空気中の臭気成分を効果的に除去することができる。
また、上記実施形態1では、噴出させた状態の液膜(32a)に向かってストリーマ放電を生起させるようにしている。このため、例えば静止状態の液に向かってストリーマ放電を行う場合と比較して、液膜(32a)に対する活性種の吸収効率を向上させることができる。
上記実施形態1では、放電電極(31)と噴出器(32)とが互いに向かい合うように配置されている。このため、上記実施形態1によれば、液膜(32a)と活性種との気液接触効率を更に向上させることができる。また、上記実施形態1では、噴出器(32)から噴出された液膜(32a)が放電電極(31)側に向かって飛散する。このため、飛散した液によって放電電極(31)の表面に付着したダストやオイルミスト等を取り除くことができる。従って、上記実施形態1によれば、放電電極(31)の清掃や交換の頻度を減らすことができる。
更に、放電電極(31)の周囲に付着した液は、放電電極(31)から噴出器(32)側へ向かうイオン風に載って放電電極(31)の先端に集まり易くなる。その結果、放電電極(31)の先端には、水膜が形成されることになる。このため、放電電極(31)の先端部では、放電が生じてもその温度が上昇しにくくなり、放電電極(31)の先端部の溶融・酸化を防ぐことができる。従って、上記実施形態1によれば、放電電極(31)の先端部の劣化・損耗を防ぐことができ、放電電極(31)の交換頻度を低減できる。
このようにして放電電極(31)の先端部が損耗(後退)しなくなると、放電電極(31)と噴出器(32)の距離(設計距離)を一定に保つことができる。その結果、放電電極(31)の後退に伴い設計距離が広がってしまうことがないため、長期に亘って所期のストリーマ放電を維持させることができる。
上記実施形態1では、噴出器(32)から中空円錐状の液膜(32a)を噴出させるようにする一方、放電電極(31)から液膜(32a)に向かってフレア状のストリーマ放電を生起させるようにしている。このため、上記実施形態1によれば、液膜(32a)及びストリーマ放電が共に広範囲に広がることとなり、液膜(32a)と活性種とを効率良く接触させることができる。また、このようにすると、噴出器(32)から噴出された液膜(32a)が、放電電極(31)の先端に直接かかってしまうことがないため、ストリーマ放電を安定させることができる。
<実施形態1の変形例>
上記実施形態1の放電装置(30)は、厨房排気を被処理空気とする空気浄化装置(10)に適用されている。しかしながら、この放電装置(30)を一般家庭向けの小型の空気浄化装置に適用しても良い。また、この放電装置(30)を室内の空調を行う空気調和装置に適用し、室内の空調と浄化を同時に行うようにしても良い。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2は、本発明に係る放電装置(30)を液処理装置(40)に適用した例である。この液処理装置は、工業廃水や下水等の水を含む被処理液を対象とする排水処理システム(40)を構成している。
図1に示すように、排水処理システム(40)は、中空状で縦長の液処理塔(41)を備えている。液処理塔(41)は、円筒状の胴部(41a)と、該胴部(41a)の上端に形成される天板部(41b)と、該胴部(41a)から下方に向かって突出する円錐状の底板部(41c)とで構成されている。また、液処理塔(41)内の底部には、被処理液が一時的に貯留される反応槽(45)が形成されている。
液処理塔(41)には、その胴部(41a)の側面に給気口(42)と排気口(43)とが形成されている。給気口(42)は、液処理塔(41)の内部に新鮮空気を導入するものである。排気口(43)は、液処理塔(41)の内部の空気を室外に排出するものである。排気口(43)には、空気を排出するための排気ファン(43a)が設けられている。
液処理塔(41)には、その天板部(41b)の頂部を処理水供給管(51)が貫通している。処理水供給管(51)は、工場等から排出された汚水等の被処理液を液処理塔(41)内に導入するものである。処理水供給管(51)には、被処理液を搬送する液供給ポンプ(51a)が設けられている。また、液供給ポンプ(51a)の流出端部には、詳細は後述する噴出器(32)が設けられている。
液処理塔(41)には、その底板部(41c)の下端部に汚泥排出管(52)が接続されている。汚泥排出管(52)は、反応槽(45)の底に沈殿する汚泥を液処理塔(41)の外部へ排出するものである。汚泥排出管(52)には、第1開閉弁(52a)が設けられている。また、液処理塔(41)には、その胴部(41a)の下側寄りの側面に処理水排出管(53)が接続されている。処理水排出管(53)は、液処理塔(41)内で浄化した処理済液を液処理塔(41)の外部へ排水するものである。処理水排出管(53)には、第2開閉弁(53a)が設けられている。
排水処理システム(40)には、上記液処理部(30)とデミスタ(35)とが設けられている。
液処理部(30)は、本発明に係る放電装置を構成している。この液処理部(30)は、上記実施形態1と同様にして、放電電極(31)と噴出器(32)と電源(33)とを備えている。放電電極(31)及び噴出器(32)は、液処理塔(41)内の上部側寄りの空間に配置されている。
放電電極(31)は、棒状ないし針状に形成されており、鉛直方向に延びる姿勢で液処理塔(41)内に保持されている。そして、放電電極(31)の先端(上端)が、噴出器(32)側を向いている。
噴出器(32)は、上記処理水供給管(51)から供給される被処理液を噴出するものである。噴出器(32)は、連続して連なった状態の液膜(32a)を噴出する液噴出手段を構成している。噴出器(32)は、その噴出口が下側を向いており、放電電極(31)側に向かって被処理液を液膜(32a)として噴出するように構成されている。
電源(33)は、直流式の高圧電源で構成されている。電源(33)は、上記放電電極(31)と、噴出器(32)から噴出される液膜(32a)との間に電位差を与える。その結果、液処理部(30)では、上記実施形態1と同様、噴出器(32)から噴出される液膜(32a)に向かって、放電電極(31)からストリーマ放電が生起する。上記実施形態2の液処理部(30)のそれ以外の詳細構造については、上記実施形態1の放電装置と同様である。
上記デミスタ(46)は、被処理液が流通可能な複数の開口を有する衝突板によって構成されている。このデミスタ(46)は、上記給気口(42)から吸引されて排気口(43)より排出される空気中の水分を捕捉し、捕捉した水分を液処理塔(41)内の反応槽(45)に滴下させる。
−運転動作−
次に、この排水処理システム(40)の運転動作について説明する。排水処理システム(40)の運転時には、排気ファン(43a)及び液供給ポンプ(51a)が運転状態となり、第2開閉弁(53a)が開放される。また、電源(33)がオン状態となり、放電電極(31)と噴出器(32)との間に電位差が付与される。工場等から排出された被処理液は、処理水供給管(51)を流れ、噴出器(32)から噴出される。また、給気口(42)から取り込まれた新鮮空気は、液処理塔(41)内を通過して排気口(43)から排出される。
液処理部(30)では、噴出器(32)から噴出される液膜(32a)と、放電電極(31)の間でストリーマ放電が行われる。このストリーマ放電に伴い空気中に生成した活性種は、噴出器(32)から噴出される液膜(32a)中に吸収される。
以上のようにして被処理液中に活性種が吸収されると、被処理液の殺菌が行われると共に、被処理液中の汚染物質が酸化分解される。なお、活性種としては、ヒドロキシルラジカル(OHラジカル)、ヘドロペルオキシド(HO2)、過酸化水素(H2O2)等も生成するため、被処理液中の殺菌処理効果や酸化処理効果が向上する。更に、ストリーマ放電では、放電電極(31)から液膜(32a)へ進展する放電に伴う物理的な衝撃力を利用した殺菌効果も得られる。
その後、噴出器(32)から噴出された被処理液は、デミスタ(46)を通過する。デミスタ(46)は、空気中に残存する活性種と被処理液との気液接触を更に促すため、被処理液の殺菌効果や浄化効率も向上する。また、デミスタ(46)では、空気中に含まれる水分が捕捉される。デミスタ(46)によって水分が除去された空気は、排気口(43)より排出空気として室外に排出される。一方、デミスタ(46)で捕捉された被処理液は、反応槽(45)へ滴下する。
反応槽(45)では、被処理液中に吸収された活性種により、更に殺菌処理・酸化処理が行われる。また、反応槽(45)では、比較的比重の大きな固形分が底部に沈殿し、汚泥として溜まり込む。この汚泥は、第1開閉弁(52a)を適宜開放させることで、汚泥排出管(52)を介して液処理塔(41)の系外へ排出される。一方、以上のようにして浄化された処理済水液は、処理水排出管(53)を介して液処理塔(41)の系外へ排出される。
−実施形態2の効果−
上記実施形態2では、噴出器(32)から被処理液を液膜(32a)として噴出し、この液膜(32a)に向かってストリーマ放電を生起させるようにしている。このため、上記実施形態2においても、従来のコロナ放電やグロー放電などと比較して、空気中に多量の活性種を生成することができ、更にストリーマ放電に伴い生成するイオン風を利用して、液膜(32a)に対する活性種の吸収効率を高めることができる。その結果、この液膜(32a)に活性種を多量に吸収させることができ、被処理液中の殺菌処理効果や酸化処理効果を向上させることができる。
また、上記実施形態2おいても、噴出させた状態の液膜(32a)に向かってストリーマ放電を生起させるようにしている。このため、例えば静止状態の液に向かってストリーマ放電を行う場合と比較して、液膜(32a)に対する活性種の吸収効率を向上させることができる。
<実施形態2の変形例>
上記実施形態2では、放電装置(30)を工業廃水や下水を被処理液とする液処理装置(40)に適用している。しかしながら、これ以外の被処理液を対象とする液処理装置に上記放電装置(30)を適用するようにしても良い。具体的には、例えば空気調和装置の室外機や室内機内の熱交換器等で凝縮した凝縮水(ドレン水)や、空気を加湿するための加湿水等を被処理液とし、上記放電装置(30)を用いて浄化するようにしても良い。
《その他の実施形態》
上記各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
図6に示すように、放電電極(31)の先端側を複数に分岐させ、この分岐部がストリーマ放電の基端部(31a,31a)を構成するようにしても良い。つまり、各基端部(31a)の先端からは、液膜(32a)に向かってそれぞれストリーマ放電が生起する。この例では、例えば一方の基端部(31a)にオイルミストが付着し、この基端部(31a)からのストリーマ放電が安定しない場合にも、他の基端部(31a)から継続して安定したストリーマ放電を行うことができる。従って、放電装置(30)の能力の信頼性を確保できる。
図7に示すように、噴出器(32)から噴出された中空円錐状の液膜(32a)の外側に放電電極(31)を配置することもできる。この場合には、液膜(32a)の外側に複数の放電電極(31)を設けるようにしても良い。
図8に示すように、噴出器(32)から連続して連なる液を直線状に噴出させるようにし、この液に向かってストリーマ放電を行うようにしても良い。ここで、噴出器(32)から平膜状に液を噴出させ、この液膜(32a)の膜面に向かってストリーマ放電を行うと、ストリーマ放電を広範囲に広げることができる。また、噴出器(32)からの噴出方向は、鉛直下方以外にも水平方向やそれ以外の方向であっても良い。
また、放電装置(30)の電源(33)として、交流式の高圧電源や、パルス高圧電源を用いても良い。また、電源(33)のマイナス側に放電電極(31)を接続し、電源(33)のマイナス側に噴出器(32)を接続しても良い。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。