以下に、本発明にかかる実施の形態であるカプセル型医療装置用誘導システムについて、被検体内に経口にて導入され、被検体の胃や小腸や大腸などに蓄えた液体に浮かぶカプセル型内視鏡を被検体内導入装置として用いるカプセル医療装置システムを例に説明する。ただし、これに限定されず、例えば被検体の食道から肛門にかけて管腔内を移動する途中で撮像動作を実行することで被検体内部の体内画像を取得する単眼または複眼のカプセル型内視鏡など、種々の被検体内導入装置を用いることが可能である。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。図1は、この発明の実施の形態1にかかるカプセル型医療装置用誘導システムの全体構成を示す模式図である。図1に示すように、この実施の形態1におけるカプセル型医療装置用誘導システム1は、被検体の口から飲み込まれることによって被検体内の体腔内に導入され外部装置と通信するカプセル型医療装置であるカプセル型内視鏡10と、被検体周囲に設けられ3次元の磁界を発生できる磁界発生部2と、カプセル型内視鏡10との間で無線通信を行ないカプセル型内視鏡10が撮像した画像を含む無線信号を受信するとともにカプセル型内視鏡10に対する操作信号を送信する送受信部3と、カプセル型医療装置用誘導システム1の各構成部位を制御する体外制御部4と、カプセル型内視鏡10が撮像した画像を表示出力する表示部5と、カプセル型内視鏡10を磁気で誘導するための操作情報などカプセル型医療装置用誘導システム1における各種操作を指示する指示情報を体外制御部4に入力する入力部6と、カプセル型内視鏡10が撮像した画像情報などを記憶する記憶部7と、磁界発生部2に関与する磁界を制御する磁界制御部8と、磁界制御部8の制御にしたがった電力を磁界発生部2に供給する電力供給部9とを備える。
なお、送受信部3は、カプセル型内視鏡10が送信した信号の受信電界強度をもとに、カプセル型内視鏡10の被検体内の位置および姿勢を検出するようにしてもよい。もちろん、別途、カプセル型内視鏡10の位置および姿勢を検出する位置検出装置を備えるようにしてもよい。たとえば、カプセル型内視鏡10に磁界発生部あるいは磁界反射部を設け、磁界発生部2と同様にカプセル型内視鏡10の周囲を覆うよう複数の磁界センサを設け、この磁界センサの検出結果をもとにカプセル型内視鏡10の位置および姿勢を検出すればよい。
カプセル型内視鏡10は、被検体の体内画像を取得するカプセル型の医療装置であり、撮像機能および無線通信機能を内蔵する。カプセル型内視鏡10は、経口摂取等によって被検体の臓器内部に導入される。その後、被検体内部のカプセル型内視鏡10は、消化管内部を移動して、最終的に、被検体の外部に排出される。かかるカプセル型内視鏡10は、被検体の内部に導入されてから外部に排出されるまでの期間、被検体の体内画像を順次撮像し、得られた体内画像を外部の送受信部3に順次無線送信する。また、カプセル型内視鏡10は、永久磁石等の磁性体を内蔵する。かかるカプセル型内視鏡10は、被検体の臓器内部(例えば胃内部)に導入された液体に浮揚し、外部の磁界発生部2によって磁気誘導される。
磁界発生部2は、被検体内部のカプセル型医療装置を磁気誘導するためのものである。磁界発生部2は、たとえば複数のコイル等を用いて実現され、電力供給部9によって供給された電力を用いて誘導用磁界を発生する。磁界発生部2は、この発生した誘導用磁界をカプセル型内視鏡10内部の磁性体に印加し、この誘導用磁界の作用によってカプセル型内視鏡10を磁気的に捕捉する。磁界発生部2は、かかる被検体内部のカプセル型内視鏡10に作用する誘導用磁界の磁界方向を変更することによって、被検体内部におけるカプセル型内視鏡10の3次元的な姿勢を制御する。
送受信部3は、複数のアンテナを備え、これら複数のアンテナを介してカプセル型内視鏡10から被検体の体内画像を受信する。送受信部3は、これら複数のアンテナを介してカプセル型内視鏡10からの無線信号を順次受信する。送受信部3は、これら複数のアンテナの中から最も受信電界強度の高いアンテナを選択し、この選択したアンテナを介して受信したカプセル型内視鏡10からの無線信号に対して復調処理等を行う。これによって、送受信部3は、この無線信号からカプセル型内視鏡10による画像データ、すなわち被検体の体内画像データを抽出する。送受信部3は、この抽出した体内画像データを含む画像信号を体外制御部4に送信する。
体外制御部4は、磁界発生部2、表示部5、記憶部7および磁界制御部8の各動作を制御し、且つ、これら各構成部間における信号の入出力を制御する。体外制御部4は、送受信部3が順次受信した体内画像を順次取得する画像受信部41と、送受信部3が順次受信した体内画像をリアルタイムに表示部5に表示させる画像表示制御部42とを備える。また、体外制御部4は、送受信部3から取得した被検体の体内画像群を記憶するように記憶部7を制御する。また、画像表示制御部42は、体内画像の選択的な保存を指示する指示情報を入力部6が入力した場合、この指示情報が保存指示する体内画像(すなわちユーザによる選択画像)を被検体の体内画像群の中から抽出し、この体内画像の縮小画像(サムネイル画像等)を追加表示するように表示部5を制御する。
体外制御部4は、入力部6が入力した操作情報に応じてカプセル型内視鏡10を誘導するために磁界制御部8に磁界発生条件を指示する磁界制御指示部45と、磁界発生部2に発生させる磁界を切り替える磁界条件切替部46と、各磁界条件を記憶する磁界条件記憶部47とを備える。磁界制御指示部45は、入力部6がカプセル型内視鏡10の操作情報を入力した場合、この操作情報が指定する磁気誘導方向および磁気誘導位置に応じた磁界の発生を磁界制御部8に指示する。
表示部5は、液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイを用いて実現され、体外制御部4が表示指示した各種情報を表示する。具体的には、表示部5は、体外制御部4における画像表示制御部42の制御に基づいて、例えば、カプセル型内視鏡10が撮像した被検体の体内画像群を表示する。また、表示部5は、かかる体内画像群の中から入力部6の入力操作によって選択またはマーキングした体内画像の縮小画像、被検体の患者情報および検査情報等を表示する。
入力部6は、キーボードおよびマウス等の入力デバイスを有し、医師等の操作者による入力操作に応じて、体外制御部4に各種情報を入力する。入力部6が体外制御部4に入力する各種情報として、例えば、体外制御部4に対して指示する指示情報、被検体の患者情報および検査情報等がある。なお、被検体の患者情報は、被検体を特定する特定情報であり、例えば、被検体の患者名、患者ID、生年月日、性別、年齢等である。また、被検体の検査情報は、被検体の消化管内部にカプセル型内視鏡10を導入して消化管内部を観察する検査を特定する特定情報であり、例えば、検査ID、検査日等である。また、入力部6は、上述した磁界発生部2によるカプセル型内視鏡10に磁気誘導を操作するための操作情報を入力する。たとえば、入力部6は、さらに、ジョイスティックを有した操作入力部を備え、このジョイスティックを医師等が操作することによって、例えば、磁気誘導操作対象であるカプセル型内視鏡10の磁気誘導方向や磁気誘導位置等のカプセル型内視鏡10を磁気で誘導するための操作情報を体外制御部4に入力する。
記憶部7は、フラッシュメモリまたはハードディスク等の書き換え可能に情報を保存する記憶メディアを用いて実現される。記憶部7は、体外制御部4が記憶指示した各種情報を記憶し、記憶した各種情報の中から体外制御部4が読み出し指示した情報を体外制御部4に送出する。なお、かかる記憶部7が記憶する各種情報として、例えば、カプセル型内視鏡10が撮像した被検体の体内画像群の各画像データ、表示部5が表示する各体内画像の中から入力部6の入力操作によって選択された体内画像のデータ、被検体の患者情報等の入力部6による入力情報等がある。
磁界制御部8は、体外制御部4が指示した指示情報に基づいて磁界発生部2に対する電力供給部9の通電量を制御し、この電力供給部9の制御を通して、この操作情報に基づく磁気誘導方向および磁気誘導位置に応じたカプセル型内視鏡10の磁気誘導に必要な誘導用磁界を発生するように磁界発生部2を制御する。
電力供給部9は、体外制御部4および磁界制御部8の制御に基づいて、上述した誘導用磁界を発生させるために必要な電力(例えば交流電流)を磁界発生部2に供給する。この場合、電力供給部9は、磁界発生部2が含む複数のコイルの各々に対して必要な電力を適宜供給する。なお、上述した磁界発生部2による誘導用磁界の磁界方向および磁界強度は、かかる電力供給部9から磁界発生部2内の各コイルへの通電量によって制御される。
つぎに、カプセル型内視鏡10について説明する。図2は、図1に示すカプセル型内視鏡の一構成例を示す断面模式図である。図2に示すように、カプセル型内視鏡10は、被検体の臓器内部に導入し易い大きさに形成された外装であるカプセル型筐体12と、互いに異なる撮像方向の被写体の画像を撮像する撮像部11A,11Bとを備える。また、カプセル型内視鏡10は、撮像部11A,11Bが撮像した各画像を外部に無線送信する無線通信部16と、カプセル型内視鏡10の各構成部を制御する制御部17と、カプセル型内視鏡10の各構成部に電力を供給する電源部18とを備える。さらに、カプセル型内視鏡10は、上述した磁界発生部2による磁気誘導を可能にするための永久磁石19を備える。
カプセル型筐体12は、被検体の臓器内部に導入可能な大きさに形成された外装ケースであり、筒状筐体12aの両側開口端をドーム形状筐体12b,12cによって塞ぐ構成である。ドーム形状筐体12b,12cは、可視光等の所定波長帯域の光に対して透明なドーム形状の光学部材である。筒状筐体12aは、可視光に対して略不透明な有色の筐体である。かかる筒状筐体12aおよびドーム形状筐体12b,12cを有するカプセル型筐体12は、図2に示すように、撮像部11A,11B、無線通信部16、制御部17、電源部18および永久磁石19を液密に内包する。
撮像部11A,11Bは、互いに異なる撮像方向の画像を撮像する。具体的には、撮像部11Aは、LED等の照明部13Aと、集光レンズ等の光学系14Aと、CMOSイメージセンサまたはCCD等の撮像素子15Aとを有する。照明部13Aは、撮像素子15Aの撮像視野S1に白色光等の照明光を発光して、ドーム形状筐体12b越しに撮像視野S1内の被写体(例えば被検体内部における撮像視野S1側の臓器内壁)を照明する。光学系14Aは、この撮像視野S1からの反射光を撮像素子15Aの撮像面に集光して、撮像素子15Aの撮像面に撮像視野S1の被写体画像を結像する。撮像素子15Aは、この撮像視野S1からの反射光を撮像面を介して受光し、この受光した光信号を光電変換処理して、この撮像視野S1の被写体画像、すなわち被検体の体内画像を撮像する。撮像部11Bは、LED等の照明部13Bと、集光レンズ等の光学系14Bと、CMOSイメージセンサまたはCCD等の撮像素子15Bとを有する。照明部13Bは、撮像素子15Bの撮像視野S2に白色光等の照明光を発光して、ドーム形状筐体12c越しに撮像視野S2内の被写体(例えば被検体内部における撮像視野S2側の臓器内壁)を照明する。光学系14Bは、この撮像視野S2からの反射光を撮像素子15Bの撮像面に集光して、撮像素子15Bの撮像面に撮像視野S2の被写体画像を結像する。撮像素子15Bは、この撮像視野S2からの反射光を撮像面を介して受光し、この受光した光信号を光電変換処理して、この撮像視野S2の被写体画像、すなわち被検体体内画像を撮像する。
なお、カプセル型内視鏡10が図2に示すように長軸La方向の前方および後方を撮像する2眼タイプのカプセル型医療装置である場合、かかる撮像部11A,11Bの各光軸は、カプセル型筐体12の長手方向の中心軸である長軸Laと略平行あるいは略一致する。また、かかる撮像部11A,11Bの撮像視野S1,S2の各方向、すなわち撮像部11A,11Bの各撮像方向は、互いに反対方向である。
無線通信部16は、アンテナ16aを備え、上述した撮像部11A,11Bが撮像した各画像をアンテナ16aを介して外部に順次無線送信する。具体的には、無線通信部16は、撮像部11Aまたは撮像部11Bが撮像した被検体の体内画像の画像信号を制御部17から取得し、この取得した画像信号に対して変調処理等を行って、この画像信号を変調した無線信号を生成する。無線通信部16は、かかる無線信号をアンテナ16aを介して外部の送受信部3に送信する。
制御部17は、カプセル型内視鏡10の構成部である撮像部11A,11Bおよび無線通信部16の各動作を制御し、且つ、かかる各構成部間における信号の入出力を制御する。具体的には、制御部17は、照明部13Aが照明した撮像視野S1内の被写体の画像を撮像素子15Aに撮像させ、照明部13Bが照明した撮像視野S2内の被写体の画像を撮像素子15Bに撮像させる。また、制御部17は、画像信号を生成する信号処理機能を有する。制御部17は、撮像素子15Aから撮像視野S1の体内画像データを取得し、その都度、この体内画像データに対して所定の信号処理を行って、撮像視野S1の体内画像データを含む画像信号を生成する。これと同様に、制御部17は、撮像素子15Bから撮像視野S2の体内画像データを取得し、その都度、この体内画像データに対して所定の信号処理を行って、撮像視野S2の体内画像データを含む画像信号を生成する。制御部17は、かかる各画像信号を時系列に沿って外部に順次無線送信するように無線通信部16を制御する。
電源部18は、ボタン型電池等またはキャパシタ等の蓄電部であって、磁気スイッチ等のスイッチ部も有する。電源部18は、外部から印加された磁界によって電源のオンオフ状態を切り替え、オン状態の場合に蓄電部の電力をカプセル型内視鏡10の各構成部(撮像部11A,11B、無線通信部16および制御部17)に適宜供給する。また、電源部18は、オフ状態の場合、かかるカプセル型内視鏡10の各構成部への電力供給を停止する。
永久磁石19は、上述した磁界発生部2によるカプセル型内視鏡10の磁気誘導を可能にするためのものである。永久磁石19は、上述した撮像部11A,11Bに対して相対的に固定された状態でカプセル型筐体12の内部に固定配置する。この場合、永久磁石19は、撮像素子15A,15Bの各撮像面の上下方向に対して相対的に固定された既知の方向に磁化する。
ここで、カプセル型内視鏡10を被検体内に導入した液体Wに浮遊させる場合の様子を、図3を用いて説明する。図3は、カプセル型内視鏡10を被検体内に導入した液体Wに浮遊させた場合の様子を説明するための概念図である。ただし、図3に示す例では、カプセル型内視鏡10の姿勢(長軸La方向の向き)を制御するための磁界が永久磁石19に作用していない場合を例示している。
本実施の形態1において例示するカプセル型内視鏡10は、液体Wに対する比重が1より小さい。このため図3に示すように、カプセル型内視鏡10は、液体Wに対して浮遊する。この際、カプセル型内視鏡10の重心Gをカプセル型内視鏡10の幾何学的中心Cからカプセル型内視鏡10の長軸La(図2参照)に沿ってずらしておく。具体的には、カプセル型内視鏡10の重心Gは、電源部18および永久磁石19等のカプセル型内視鏡10の各構成部の配置を調整することによって、長軸La上の位置であってカプセル型筐体12の幾何学的中心Cから撮像部11B側に外れた位置に設定される。これにより、液体Wに浮遊するカプセル型内視鏡10の長軸Laが、鉛直方向(すなわち重力方向Dg)と平行になる。言い換えれば、カプセル型内視鏡10を直立した状態で液体Wに浮遊させることができる。なお、ここでいう直立姿勢は、カプセル型筐体12の長軸La(幾何学的中心Cと重心Gとを結ぶ直線)と鉛直方向とが略平行な状態となる姿勢である。カプセル型内視鏡10は、かかる直立姿勢において、鉛直上方に撮像部11Aの撮像視野S1を向けるとともに鉛直下方に撮像部11Bの撮像視野S2を向ける。また、カプセル型内視鏡10の長軸Laとは、カプセル型内視鏡10の長手方向の中心軸である。また、液体Wは、水または生理食塩水等の人体に無害な液体である。また、カプセル型内視鏡10は、必ずしも液体に浮揚させる必要はなく、液体内に沈下するように液体Wに対するカプセル型内視鏡10の比重を設定してもよい。
図4に示すように、永久磁石19は、その磁化方向Ymがカプセル型内視鏡10の長軸Laに対して傾き(例えば垂直)を持つように、筐体12内部に固定される。具体的には、磁化方向Ymが長軸Laに垂直となるように永久磁石19を筐体12内に固定する。この構成により、液体Wに浮遊した状態では、カプセル型内視鏡10内の永久磁石19の磁化方向Ymが水平方向となる。そして、永久磁石19の磁化方向Ymとカプセル型筐体12の幾何学的中心Cに対するカプセル型内視鏡10の重心Gの外れた方向(偏位方向)とを含む平面は、鉛直平面となる。このため、磁界印加時には、磁界に対する鉛直平面が磁化方向Ymを含むようにカプセル型内視鏡10の姿勢が変化する。永久磁石19は、外部から印加された磁界に追従して動作し、この結果、磁界発生部2によるカプセル型内視鏡10の磁気誘導が実現する。この場合、カプセル型内視鏡10は、かかる永久磁石19の作用によって、被検体内部における位置、姿勢および方向の少なくとも一つを変更する動作を行う。たとえば、鉛直軸上の一点を中心として回転する回転磁界を永久磁石19に印加することによって、カプセル型内視鏡10先端を首振り動作させることが可能である。また、鉛直軸中心に回転する磁界を永久磁石19に印加することによって、カプセル型内視鏡10を鉛直軸周りに回転させることが可能である。あるいは、カプセル型内視鏡10は、かかる永久磁石19の作用によって、被検体内部における所望の位置に停止した状態を維持する。
つぎに、カプセル型内視鏡10が内蔵する撮像素子15A,15Bと永久磁石19との相対関係について説明する。図2および図4に示すように、2つの撮像部11Aおよび11Bは、例えばそれぞれの撮像素子15A,15Bの光学的中心軸が長軸Laと重なり且つそれぞれの撮像方向が互いに反対側を向くように配置する。すなわち、撮像素子15A,15Bの撮像面が長軸Laに対して垂直となるように撮像部11A,11Bを実装する。そして、永久磁石19は、撮像素子15A,15Bに対して相対的に固定された状態でカプセル型筐体12内部に配置する。この場合、永久磁石19の磁化方向Ymが図4のように撮像素子15A,15Bの各撮像面の上下方向Yuに対して平行となるように永久磁石19はカプセル型内視鏡10内に配置する。重心Gを長軸La上に位置させると共に撮像素子15A,15Bの撮像面が長軸Laに対して垂直となるように撮像部11A,11Bを実装することで、撮像素子15A,15Bの撮像面を、永久磁石19の磁化方向と重心Gの幾何学的中心Cに対する偏位方向とを含む平面に対して直交させることが可能となる。
また、重力方向Dgに対するカプセル型内視鏡10の長軸Laの傾きは、カプセル型内視鏡10の永久磁石19に外部から磁界を作用させることで制御することができる。図5に示すように、磁力線の方向が水平面に対して角度を有する磁界を永久磁石19に作用させることで、永久磁石19の磁化方向Ymがこの磁力線と略平行となるようにカプセル型内視鏡10を重力方向Dgに対して傾かせることが可能である。このため、カプセル型内視鏡10を傾かせた状態で鉛直軸を中心として回転する回転磁界を印加してカプセル型内視鏡10を鉛直軸周りに回転させるだけで、カプセル型内視鏡10周囲の体内画像を容易に取得することが可能となる。
また、表示部5は、カプセル型内視鏡10の磁気誘導に伴う体内画像内の被写体の上下方向と表示画面の上下方向とを一致させた表示態様でカプセル型内視鏡10による被検体の体内画像を表示する。たとえば図6に例示するように、表示部5は、表示画面に、カプセル型内視鏡10の撮像素子15Aの上部領域Puの素子が撮像した液面(液体と外部との上部境界面、以下同様)Wsが画像Mの上部になるように表示する。そして、永久磁石19の磁化方向Ymが撮像素子15A,15Bの各撮像面の上下方向Yuに対して平行であるため、永久磁石19の磁化方向Ymと平行な方向が表示部5の表示画面の上下方向と一致することとなる。
次に、磁界発生部2が発生する磁界の種類について説明する。磁界発生部2は、いわゆる均一磁界のほか、ピーク磁界と均一勾配磁界とを発生することが可能である。ピーク磁界は、図7のピーク磁界Mpに示すように、水平面に対して鉛直な方向に磁界強度のピークを持つ磁界である。ピーク磁界は、この磁界強度のピーク位置に永久磁石19を引き付けてカプセル型内視鏡10を拘束することが可能である。すなわち、ピーク磁界は、水平方向の任意の位置にカプセル型内視鏡10の永久磁石19を引き付けてカプセル型内視鏡10を拘束する拘束磁界である。磁界発生部2は、たとえば、ピーク磁界Mpのピーク位置を、矢印Y1のように位置P1から位置P2に移動させることによって、カプセル型内視鏡10を矢印Y2のように位置P1から位置P2に移動させることができる。
そして、均一勾配磁界は、図8の均一勾配磁界Msに示すように、略均一な磁気勾配を有する。この均一勾配磁界は、磁界強度の分布が疎から密に傾く方向へ永久磁石19を付勢する。磁界発生部2は、たとえば、左斜め上方向から右斜め下方向に向かって磁界強度の分布が疎から密に傾く均一勾配磁界Msを発生することによって、永久磁石19を矢印Y3に示す方向へ付勢することによって、カプセル型内視鏡10を矢印Y3に示す方向へ移動させる。
ここで、本実施の形態1では、カプセル型内視鏡10を液体の液面、液中または液底(液体と外部との下部境界面、以下同様)のいずれに誘導するかによって、磁界発生部2に発生させる磁界を切り替えている。まず、図9を参照して、胃内部にカプセル型内視鏡10が浮揚する場合を例に、カプセル型内視鏡10を誘導する誘導領域について説明する。図9に示すように、誘導領域として、液面近傍のカプセル型内視鏡10aが位置する液面領域Sws、液中を漂っているカプセル型内視鏡10cが位置する液中領域Swb、および、胃壁面St下面に接しているカプセル型内視鏡10dが位置する液底領域Suwが設定されている。なお、液面領域Swsは、カプセル型内視鏡10bのように胃壁面St上面に接している場合も含む。これらの液面領域Sws、液中領域Swbおよび液底領域Suw誘導領域ごとに発生させる磁界がそれぞれ設定されており、各誘導領域にそれぞれ対応する磁界条件は、磁界条件記憶部47において記憶されている。
これらのいずれかの液面領域Sws、液中領域Swbおよび液底領域Suwの中から一つを選択する選択情報を入力部6が入力した場合、磁界条件切替部46は、この選択情報をもとに、磁界発生部2に発生させる磁界を磁界条件記憶部47が記憶する磁界条件の中から選択された誘導領域に対応する磁界に切り替える。磁界条件切替部46は、入力部6による選択条件で選択された誘導領域に応じて、磁界発生部2に発生させる磁界によるカプセル型内視鏡10の誘導方向、磁界発生部2に発生させる磁界の種類、または、磁界発生部2に発生させる磁界の磁界鉛直方向に発生する磁気勾配の大きさと向きのいずれかを少なくとも切り替える。磁界条件切替部46は、入力部6による選択条件で選択された誘導領域に応じて、磁界発生部2に発生させる磁界の種類を、ピーク磁界と均一勾配磁界とのいずれかに切り替える。そして、磁界制御指示部45は、入力部6からカプセル型内視鏡10を磁気で誘導するための操作情報に応じた磁界を磁界発生部2に発生させるよう磁界制御部8に指示する。
次に、各誘導領域に対応する磁界の種類について説明する。図10は、各誘導領域に対応する磁界の種類を表した表T1を示す図である。図10の表T1に示すように、誘導領域のうち、液面領域(カプセル型内視鏡10が胃壁上面に接している場合も含む。)に対応する磁界の種類は、ピーク磁界と、鉛直方向に勾配を有する鉛直方向勾配磁界である。液面領域では、液面に沿ってカプセル型内視鏡10を移動させる必要がある。ピーク磁界は、水平方向の位置を拘束できるため、水面では安定した誘導を実現することができるため、液面領域において水平方向にカプセル型内視鏡10を誘導する場合に適している。ここで、均一勾配磁界は、大きな力を発生できる一方、厳密には磁界の歪みが存在するため、液面などの摩擦のない環境では、均一勾配磁界によるカプセル型内視鏡10の動きが不安定になり、カプセル型内視鏡10を操作指示された位置に保持することができない。このため、液面領域では、均一勾配磁界を印加しない設定にしている。
液中領域に対応する磁界の種類は、均一勾配磁界と均一磁界である。ピーク磁界は、カプセル型内視鏡10に対し、水平方向の位置を拘束できるものの液中における鉛直方向の位置を保持することができない。また、水平方向と鉛直方向の誘導原理は異なるため、後述する液中での移動方向のように各制御軸の動きを正確に合成したピーク磁界を液中にて発生させることは難しい。このため、液中では、ピーク磁界ではなく、均一勾配磁界、均一磁界を印加してカプセル型内視鏡10を誘導する。
液底領域に対応する磁界の種類は、液中領域と同様に均一勾配磁界と均一磁界である。液底では、胃壁面との摩擦や胃壁面の形状の影響によって、胃壁面に沿って水平方向にカプセル型内視鏡10の位置を移動させることは難しい。このため、液底領域では水平方向にカプセル型内視鏡10を誘導しないものと設定し、これにともない、液底領域に対応する磁界の種類からピーク磁界を除外している。
このように、実施の形態1では、各誘導領域ごとに永久磁石19に加わる磁界の種類が自動的に切り替わり、各誘導領域に適したカプセル型内視鏡10の誘導を実現することができる。また、実施の形態1では、操作者は、各誘導領域に合わせて多数ある条件の中から適した種類の磁界を設定せずとも、所望の誘導領域を選択するだけでよいため、簡易な操作でカプセル型内視鏡10を正しく誘導することができる。
そして、入力部6が誘導領域を選択した場合、各選択された誘導領域に対応して以下に説明する磁界が磁界発生部2より自動的に発生する。図11は、カプセル型内視鏡10を誘導する誘導領域が選択された場合であって操作入力部に磁気誘導のための操作情報がない場合に各誘導領域に発生する磁界を表す表T2を示す図である。
誘導領域として液面領域が選択された場合には、磁界発生部2は、磁界制御指示部45および磁界制御部8の制御のもと、ピーク磁界が発生する領域に、鉛直方向に勾配を有する鉛直方向勾配磁界を発生し、図11の表T2に示すように、鉛直軸に対して上向き磁気勾配を、浮力、カプセル型内視鏡10の重力および磁気勾配により発生する磁気引力の合力方向が鉛直軸に対して上向きとなる強度で発生する。すなわち、磁界発生部2は、カプセル型内視鏡10を液面Wsまたは胃壁面上面に拘束する(押し付ける)磁界を発生する。この結果、カプセル型内視鏡10は、液面Wsまたは胃壁面上面に位置することとなる。
また、誘導領域として液中領域が選択された場合には、磁界発生部2は、磁界制御指示部45および磁界制御部8の制御のもと、鉛直方向の均一勾配磁界を発生し、図11の表T2に示すように、カプセル型内視鏡10の重力と、浮力と、鉛直方向の磁気引力がほぼ釣り合うように、鉛直軸に対して上向きの磁気勾配を発生する。すなわち、磁界発生部2は、カプセル型内視鏡10を液中に漂わせるための磁力をカプセル型内視鏡10に発生させる。この結果、カプセル型内視鏡10は、液中に位置することとなる。
誘導領域として液底領域が選択された場合には、磁界発生部2は、磁界制御指示部45および磁界制御部8の制御のもと、鉛直方向の均一勾配磁界を発生し、図11の表T2に示すように、鉛直軸に対して下向きの磁気勾配を、浮力、カプセル型内視鏡10の重力および磁気引力の合力方向が鉛直軸に対して下向きとなる強度で発生する。すなわち、磁界発生部2は、カプセル型内視鏡10を液底の胃壁面表面に拘束する(押し付ける)磁界を発生する。この結果、カプセル型内視鏡10は、液底に位置することとなる。
このように、各誘導領域に対応させた強度および方向の磁界を永久磁石19に印加することによって、入力部6から磁気で誘導するための操作情報の入力がない状態でも、自動的に、選択された誘導領域内にカプセル型内視鏡10が正しく位置できる。このため、操作者による各誘導領域に維持するための操作入力処理が不要になり、操作性が向上する。
次に、操作入力部による操作によって、永久磁石19にどのような磁界が印加され、カプセル型内視鏡10がどのように移動するのかを説明する。まず、カプセル型内視鏡10の磁気誘導を操作するための操作入力部について説明する。図12は、図1に示す入力部6を構成する操作入力部の一例を示す模式図である。図12(1)は、操作入力部の正面図であり、図12(2)は、操作入力部の右側面図である。
図12(1)に示すように、操作入力部60は、磁界発生部2によるカプセル型内視鏡10の磁気誘導を3次元的に操作するための2つのジョイスティック61,62を備える。ジョイスティック61,62は、上下方向および左右方向に傾動操作可能である。
また、操作入力部60は、液面スイッチ63A、液中スイッチ63B、液底スイッチ63Cを有する誘導領域切替部63を備える。液面スイッチ63Aを押圧すると、液面スイッチ63Aは、誘導領域として液面領域を選択する選択情報を体外制御部4に入力する。液中スイッチ63Bを押圧すると、液中スイッチ63Bは、誘導領域として液中領域を選択する選択情報を体外制御部4に入力する。液底スイッチ63Cを押圧すると、液底スイッチ63Cは、誘導領域として液底領域を選択する選択情報を体外制御部4に入力する。
図12(2)に示すように、ジョイスティック61は、背面に、アップボタン64U、ダウンボタン64Bを有する。アップボタン64Uを押圧すると、アップボタン64Uは、カプセル型内視鏡10の上方誘導を指示する操作情報を体外制御部4に入力する。ダウンボタン64Bを押圧すると、ダウンボタン64Bは、カプセル型内視鏡10の下方誘導を指示する操作情報を体外制御部4に入力する。また、ジョイスティック62は、上部に、アプローチボタン64を有する。アプローチボタン64を押圧すると、アプローチボタン64は、撮像部11Aの撮像対象に対してカプセル型内視鏡10の撮像部11A側を近接させるようにカプセル型内視鏡10を誘導させる操作情報を体外制御部4に入力する。また、ジョイスティック61は、上部に、キャプチャボタン65を有する。キャプチャボタン65を押圧すると、キャプチャボタン65は、表示部5に表示されている体内画像をキャプチャする。
次に、操作入力部60の操作者による各構成部位の各操作と、各操作に対応して磁界発生部2が発生する磁界について説明する。まず、液面領域が選択されている場合について説明する。図13は、操作入力部60によって操作可能なカプセル型医療装置の液面領域における磁気誘導を説明するための図であり、図13(1)は、操作入力部60の正面図であり、図13(2)は、操作入力部60の右側面図であり、図13(3)は、操作入力部60の各構成部位の操作によって指示されるカプセル型内視鏡10の動作内容を示す図である。
まず、図13(1)に示すように、ジョイスティック61の矢印Y11jに示す上下方向の傾動方向は、図13(3)の矢印Y11のようにカプセル型内視鏡10の先端が鉛直軸Azを通るように首を振るティルティング動作方向に対応する。操作入力部60が、ジョイスティック61の矢印Y11jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック61の傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向を演算し、ジョイスティック61の傾動操作に対応させて誘導速度を演算する。そして、磁界制御指示部45は、磁界条件切替部46が切り替えらたピーク磁界を印加磁界として選択し、演算した誘導方向に対応する向きのピーク磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこのピーク磁界の向きと鉛直軸Azとの成す角を鉛直軸Azとカプセル型内視鏡10の長軸Laとを含む鉛直面内で変化させている。
図13(1)に示すように、ジョイスティック61の矢印Y12jに示す左右方向の傾動方向は、図13(3)の矢印Y12のようにカプセル型内視鏡10が鉛直軸Azを中心として回転するローテーション動作方向に対応する。操作入力部60が、ジョイスティック61の矢印Y12jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック61の傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向を演算し、ジョイスティック61の傾動操作に対応させて誘導速度を演算し、演算した誘導方向に対応する向きのピーク磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこのピーク磁界の向きを鉛直軸Azを中心に回転移動させている。
図13(1)に示すように、ジョイスティック62の矢印Y13jに示す上下方向の傾動方向は、図13(3)の矢印Y13のようにカプセル型内視鏡10の長軸Laを水平面Hpに投影した方向に進むホリゾンタルバックワード動作方向あるいはホリゾンタルフォワード動作方向に対応する。操作入力部60が、ジョイスティック62の矢印Y13jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック62の傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向および誘導位置を演算し、ジョイスティック62の傾動操作に対応させて誘導速度を演算し、演算した誘導方向に対応する向きのピーク磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこのピーク磁界のピークを誘導位置に移動させている。
図13(1)に示すように、ジョイスティック62の矢印Y14jに示す左右方向の傾動方向は、図13(3)の矢印Y14のようにカプセル型内視鏡10が水平面Hpを、長軸Laを水平面Hpに投影した方向と垂直に進むホリゾンタルライト動作方向あるいはホリゾンタルレフト動作方向に対応する。操作入力部60が、ジョイスティック62の矢印Y14jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック62の傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向および誘導位置を演算し、ジョイスティック62の傾動操作に対応させて誘導速度を演算し、演算した誘導方向に対応する向きのピーク磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこのピーク磁界のピークを誘導位置に移動させている。
このように、誘導領域として液面領域を選択した場合には、液面に沿ってカプセル型内視鏡10を誘導できるように、操作入力部60の各操作に応じて、カプセル型内視鏡10を誘導する誘導動作が設定されている。なお、液面領域では、これ以上カプセル型内視鏡10を上方に誘導することができないため、アップボタン64Uは使用しないものと設定される。
次に、液中領域を選択した場合について説明する。図14は、操作入力部60によって操作可能なカプセル型医療装置の液中領域における磁気誘導を説明するための図であり、図14(1)は、操作入力部60の正面図であり、図14(2)は、操作入力部60の右側面図であり、図14(3)は、操作入力部60の各構成部位の操作によって指示されるカプセル型内視鏡10の動作内容を示す図である。
まず、図14(1)に示すように、ジョイスティック61の矢印Y21jに示す上下方向の傾動方向は、図14(3)の矢印Y21に示すカプセル型内視鏡10のティルティング動作方向に対応する。操作入力部60が、ジョイスティック61の矢印Y21jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック61の傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向を演算し、ジョイスティック61の傾動操作に対応させて誘導速度を演算する。そして、磁界制御指示部45は、磁界条件切替部46が切り替えた均一勾配磁界および均一磁界を印加磁界として選択し、演算した誘導方向に対応する向きの均一磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこの均一磁界の向きと鉛直軸Azとカプセル型内視鏡10の長軸Laとの成す角を鉛直軸Azを含む鉛直面内で変化させている。
図14(1)に示すように、ジョイスティック61の矢印Y22jに示す左右方向の傾動方向は、図14(3)の矢印Y22に示すカプセル型内視鏡10のローテーション誘導方向に対応する。操作入力部60が、ジョイスティック61の矢印Y22jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック61の傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向を演算し、ジョイスティック61の傾動操作に対応させて誘導速度を演算し、演算した誘導方向に対応する向きの均一磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこの均一磁界の向きを鉛直軸Azを中心に回転移動させている。
図14(1)に示すように、ジョイスティック62の矢印Y23jに示す上下方向の傾動方向は、図14(3)に示すカプセル型内視鏡10の長軸Laとの鉛直面を矢印Y23のように進むダウン動作方向あるいはアップ動作方向に対応する。操作入力部60が、ジョイスティック62の矢印Y23jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック62の傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における動作方向を演算し、ジョイスティック62の傾動操作に対応させて動作速度を演算し、演算した動作方向に対応する向きの勾配であって、演算した動作速度に対応する勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。
図14(1)に示すように、ジョイスティック62の矢印Y24jに示す左右方向の傾動方向は、図14(3)に示すカプセル型内視鏡10の長軸Laとの鉛直面を矢印Y24のように進むライト動作方向あるいはレフト動作方向に対応する。操作入力部60が、ジョイスティック62の矢印Y24jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック62の傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における動作方向を演算し、ジョイスティック61の傾動操作に対応させて動作速度を演算し、演算した動作方向に対応する向きの勾配であって、演算した動作速度に対応する勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。
さらに、図14(2)に示すように、アップボタン64Uまたはダウンボタン64Bを矢印Y25jのように押圧すると、アップボタン64Uまたはダウンボタン64Bは、図14(3)に示すカプセル型内視鏡10の長軸Laに沿って矢印Y25のように撮像素子15A,15Bに対して前後に進むフォワード動作方向あるいはバックワード動作方向を指示する。操作入力部60が、アップボタン64Uまたはダウンボタン64Bの矢印Y25jの押圧操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、いずれのボタンが押圧されたかに対応させて、カプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における動作方向を演算し、演算した動作方向に対応して長軸Laに沿って勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させる。
具体的には、ダウンボタン64Bが押圧された場合、磁界発生部2は、図15に示すように、カプセル型内視鏡10の長軸La方向の下方向に向かって密となる勾配の均一勾配磁界Ms5を発生することによって、カプセル型内視鏡10を矢印Y25bのようにカプセル型内視鏡10の長軸Laの下方向に移動させる。また、ジョイスティック62がライト動作を操作入力した場合には、図16に示すように、カプセル型内視鏡10の長軸Laとの直交面を下から見た場合、磁界発生部2は、永久磁石19の磁化方向と並行な磁界を右方向に密となる均一勾配磁界Ms4を発生することによって、矢印Y24bに示すように、カプセル型内視鏡10の長軸Laとの直交面の右方向にカプセル型内視鏡10を移動させる。また、ジョイスティック62がアップ動作を操作入力した場合には、図17に示すように、カプセル型内視鏡10の長軸Laとの直交面を下から見た場合、磁界発生部2は、永久磁石19の磁化方向と並行な磁界を上方向に密となる均一勾配磁界Ms3を発生させることによって、矢印Y23uに示すように、カプセル型内視鏡10の長軸Laとの直交面の上方向にカプセル型内視鏡10を移動させる。
このように、誘導領域として液中領域が選択されている場合には、水平面ではなくカプセル型内視鏡10の長軸との直交面に沿ってカプセル型内視鏡10を誘導できるように、操作入力部60の各操作とカプセル型内視鏡10の誘導動作とが対応付けて設定されている。すなわち、撮像部11A,11Bの撮像面に沿ってカプセル型内視鏡10を誘導できるように設定されている。言い換えると、カプセル型内視鏡10は画像に対して上下左右に動くように誘導される。このため、操作者が実際に操作者自身の目で胃内部を観察しているようにカプセル型内視鏡10を誘導することができるため、より直感的な誘導を可能にする。また、誘導領域として液中領域が選択されている場合には、液中内をカプセル型内視鏡10の長軸Laに沿って上下に誘導できるようにしているため、観察対象に近接または離間しながら観察が可能となる。
次に、液底領域が選択されている場合について説明する。図18は、操作入力部60によって操作可能なカプセル型医療装置の液底領域における磁気誘導を説明するための図であり、図18(1)は、操作入力部60の正面図であり、図18(2)は、操作入力部60の右側面図であり、図18(3)は、操作入力部60の各構成部位の操作によって指示されるカプセル型内視鏡10の動作内容を示す図である。
まず、図18(1)に示すように、ジョイスティック61の矢印Y31jに示す上下方向の傾動方向は、図18(3)の矢印Y31に示すカプセル型内視鏡10のティルティング動作方向に対応する。操作入力部60が、ジョイスティック61の矢印Y31jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック61の傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向を演算し、ジョイスティック61の傾動操作に対応させて誘導速度を演算する。そして、磁界制御指示部45は、磁界条件切替部46によって切り替えられた均一勾配磁界および均一磁界を印加磁界として選択し、演算した誘導方向に対応する向きの均一磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこの均一磁界の向きと鉛直軸Azとカプセル型内視鏡10の長軸Laとの成す角を鉛直軸Azを含む鉛直面内で変化させている。
図18(1)に示すように、ジョイスティック61の矢印Y32jに示す左右方向の傾動方向は、図18(3)の矢印Y32に示すカプセル型内視鏡10のローテーション誘導方向に対応する。操作入力部60が、ジョイスティック61の矢印Y32jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、ジョイスティック61の傾動方向に対応させてカプセル型内視鏡10先端の絶対座標系上における誘導方向を演算し、ジョイスティック61の傾動操作に対応させて誘導速度を演算し、演算した誘導方向に対応する向きの均一磁界を磁界発生部2に発生させるとともに、演算した誘導速度でこの均一磁界の向きを鉛直軸Azを中心に回転移動させている。
このように、誘導領域として液底領域が選択されている場合には、液底、すなわち、胃壁Stを詳細に観察できるように、ティルティング動作とローテーション動作が設定されている。なお、液面領域では、胃壁面を詳細に観察できるように、胃壁面からカプセル型内視鏡10が離間するアップ動作およびバックワード動作は設定されていない。また、胃壁面との摩擦や胃壁面の形状によってカプセル型内視鏡10を胃壁面に沿って移動させることは難しい場合が多いため、フォワード動作、ライト動作およびレフト動作も設定されていない。また、カプセル型内視鏡10をこれ以上下方に誘導することができないため、ダウン動作も設定されていない、このため、ジョイスティック62、アップボタン64Uおよびダウンボタン64Bは使用されないものと設定されている。
上記したように、実施の形態1では、各誘導領域に対応させて、操作入力部60とカプセル型内視鏡10の移動方向との関係を変化させることによって、各誘導領域に適したカプセル型内視鏡10の誘導を行うことができる。すなわち、実施の形態1では、各誘導領域に対応させて、磁界の種類、カプセル型内視鏡10の誘導方向および鉛直方向に発生する磁気勾配の大きさと向きを切り替えることによって、各誘導領域に適したカプセル型内視鏡10の誘導を行うことができる。
次に、カプセル型医療装置用誘導システム1のカプセル型内視鏡10の誘導処理について説明する。図19は、図1に示すカプセル型医療装置用誘導システム1のカプセル型内視鏡10の誘導処理の処理手順を示すフローチャートである。
図19に示すように、体内観察の開始を指示する指示情報を入力部6が入力した場合、磁界制御指示部45は、初期条件で磁界を発生させるように磁界制御部8に指示情報を送信する(ステップS2)。たとえば、磁界制御指示部45は、磁界発生部2に、初期条件として、磁界発生領域の中心にピークを有するピーク磁界を発生させる。この場合には、カプセル型内視鏡10の誘導処理の開始位置が分かりやすいため、誘導操作開始時の操作性が向上する。なお、磁界制御指示部45は、入力部6の所定のボタンが押圧された場合には、この初期条件で磁界発生領域の中心にピークを有するピーク磁界を磁界発生部2に発生させてもよい。カプセル型内視鏡10がピーク磁界の拘束から外れてしまい誘導がうまくできなかった場合であっても、容易に初期状態にカプセル型内視鏡10の位置を戻すことができるので、操作性が向上する。
そして、画像受信部41は、送受信部3が順次受信した体内画像を順次取得する画像受信処理を行い(ステップS4)、画像表示制御部42は、送受信部3が順次受信した体内画像を表示部5に表示させる画像表示処理を行う(ステップS6)。
体外制御部4においては、磁界条件切替部46が、操作入力部60からの選択情報の入力の有無をもとに、誘導領域の設定指示があるか否かを判断する(ステップS8)。磁界条件切替部46は、誘導領域の設定指示があると判断した場合には(ステップS8:Yes)、入力された選択情報から操作入力部60が選択した誘導領域に応じて、磁界発生部2による磁界発生条件を切り替える(ステップS10)。上述したように、各誘導領域ごとに、磁界の種類、カプセル型内視鏡10の誘導方向および鉛直方向に発生する磁気勾配の大きさと向きがそれぞれ設定された磁界発生条件が磁界条件記憶部47に記憶されており、磁界条件切替部46は、磁界条件記憶部47が記憶する磁界発生条件のうち、設定された誘導領域に対応する磁界発生条件を参照し、参照した磁界発生条件に切り替える。なお、この場合には、操作入力部60から操作情報が入力されていない場合に相当するため、磁界制御指示部45は、図11の表T2に示す磁力を有する磁界を磁界発生部2に発生させる。このため、カプセル型内視鏡2は、設定された誘導領域内において安定に位置する。また、誘導領域が別の誘導領域に切り替わった場合には、カプセル型内視鏡10は、切り替わった新たな誘導領域内に誘導され、この誘導領域内において安定に位置する。
一方、磁界条件切替部46が誘導領域の設定指示がないと判断した場合(ステップS8:No)、または、磁界条件切替部46が磁界発生条件を切替えた場合(ステップS10)、磁界制御指示部45は、操作入力部60からの操作情報の入力の有無をもとにカプセル型内視鏡10の移動指示があるか否かを判断する(ステップS12)。磁界制御指示部45は、カプセル型内視鏡10の移動指示があると判断した場合(ステップS12:Yes)、操作入力部60からの操作情報で指示された移動位置を演算し(ステップS14)、誘導領域に対応する磁界発生条件をもとにカプセル型内視鏡10の永久磁石19に印加する磁界条件を取得する(ステップS16)。そして、磁界制御指示部45は、取得した磁界条件での磁界の発生を磁界制御部8に指示し、磁界発生部2は、指示された条件で磁界を発生する磁界発生処理を行う(ステップS18)。この結果、カプセル型内視鏡10は、操作入力部60による操作処理にしたがった方向および位置に移動する。
そして、磁界制御指示部45がカプセル型内視鏡10の移動指示がないと判断した場合(ステップS12:No)、または、磁界発生処理(ステップS18)が終了した場合、画像受信部41は、画像受信処理(ステップS20)を行い、画像表示制御部42は、画像表示処理(ステップS22)を行う。この結果、表示部5は、カプセル型内視鏡10が撮像した体内画像を順次表示する。なお、送受信部3がカプセル型内視鏡10の画像を取得してから表示部5が該画像を表示するまでに、数100msecの遅延時間を有する場合がある。この場合、カプセル型内視鏡10の誘導速度が速すぎるとカプセル型内視鏡10の位置操作が目標位置に対して発散してしまい操作性が低下してしまう。このため、カプセル型内視鏡10を遅延時間に対応させた誘導速度で誘導することが望ましい。たとえば、カプセル型内視鏡10を10mm/sec以下の速度で誘導することが望ましい。
続いて、体外制御部4は、入力部6が入力した指示情報をもとに、体内観察が終了したか否かを判断する(ステップS24)。体外制御部4は、体内観察が終了していないと判断した場合には(ステップS24:No)、体内観察を継続するため、ステップS8に戻り、誘導領域の設定指示があるか否かを判断する。また、体外制御部4は、体内観察が終了したと判断した場合には(ステップS24:Yes)、カプセル型内視鏡10が撮像した体内画像群を一つのフォルダにまとめて記憶部7内に保存し、体内観察を終了する。
このように、実施の形態1では、各誘導領域ごとに発生磁界条件が自動的に切り替わり、各誘導領域に適した条件で磁界を発生させるため、簡易な操作でカプセル型内視鏡10を正しく誘導することができる。
なお、本実施の形態1では、誘導領域として液面領域、液中領域および液底領域を設定した場合を例に説明したが、もちろんこれに限らず、誘導領域は、少なくとも液面領域、液中領域および液底領域のうちの2以上を組み合わせた組み合わせものであればよい。たとえば、誘導領域として、液面領域および液底領域に限定してもよい。液中では、均一磁界の歪みの影響によって、カプセル型内視鏡10の位置を所望の位置に正確に保持することができず、均一勾配磁界の歪みが大きい場合には磁界発生部によっては制御性が低下する場合がある。この場合には、誘導領域を液面領域および液底領域に限定することで、安定した領域のみでカプセル型内視鏡10を誘導できるため、操作性が向上する。
また、液中領域では、バックワード動作、フォワード動作、ライト動作あるいはレフト動作を、図14(3)に示すカプセル型内視鏡10の長軸Laとの鉛直面における動作として説明したが、もちろんこれに限らない。液中領域におけるバックワード動作、フォワード動作、ライト動作あるいはレフト動作を、液面領域のホリゾンタルバックワード動作、ホリゾンタルフォワード動作、ホリゾンタルライト動作あるいはホリゾンタルレフト動作と同様に、水平面Hpにおける移動動作として設定してもよい。
具体的には、図20(1)に示すように、操作入力部60が、ジョイスティック62の矢印Y123jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、水平面Hpの矢印Y123のようにカプセル型内視鏡10が移動するように磁界発生部2に均一磁界または均一勾配磁界を発生させる。また、図20(1)に示すように、操作入力部60が、ジョイスティック62の矢印Y124jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、水平面Hpの矢印Y124のようにカプセル型内視鏡10が移動するように磁界発生部2に均一磁界または均一勾配磁界を発生させる。
また、液中領域では、アップ動作あるいはダウン動作を、鉛直軸Azに沿って上下に進む移動動作として設定してもよい。この場合、図20(2)に示すように、操作入力部60が、アップボタン64Uまたはダウンボタン64Bの矢印Y125jの押圧操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、鉛直軸Az上の矢印Y125のようにカプセル型内視鏡10が移動するように磁界発生部2に均一勾配磁界を発生させる。なお、図20(3)の矢印Y121,Y122に示すように、操作入力部60が、ジョイスティック61の矢印Y121jの傾動操作に対応する操作情報あるいは矢印Y122jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合には、図14(3)の矢印Y121,Y122に示す動作と同様のティルティング動作あるいはローテーション動作をカプセル型内視鏡10が行うように方向を変えた均一磁界を磁界発生部2に発生させる。
このように、液中領域と液面領域とでカプセル型内視鏡10の移動方向の違いが少ないように、カプセル型内視鏡10の誘導動作を設定した場合、誘導領域を切り替えた場合であっても混乱なくカプセル型内視鏡10の誘導を継続させることができる。また、この場合には、誘導領域に液中が設定されていないため、液中でのカプセル型内視鏡10の誘導が行われないとしてピーク磁界のみを用いてカプセル型内視鏡10を誘導することも可能である。
また、液底領域では、水平面に対してカプセル型内視鏡10を移動させるライト動作およびレフト動作も設定していない場合を例に説明したが、もちろんこれに限らず、条件によっては、水平面上でカプセル型内視鏡10の位置を変更させることも可能である。このため、液底領域では、水平面上でカプセル型内視鏡10を変化させるフォワード動作、バックワード動作、ライト動作およびレフト動作ができるように設定してもよい。
具体的には、図21(1)に示すように、操作入力部60が、ジョイスティック62の矢印Y133jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合には、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、水平面Hpの矢印Y133のようにカプセル型内視鏡10が移動するように磁界発生部2に均一磁界または均一勾配磁界を発生させる。また、図21(1)に示すように、操作入力部60が、ジョイスティック62の矢印Y134jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合、磁界制御指示部45は、この操作情報をもとに、水平面Hpの矢印Y134のようにカプセル型内視鏡10が移動するように磁界発生部2に均一磁界または均一勾配磁界を発生させる。なお、図21(2)に、操作入力部の右側面図も示す。
なお、図21(3)の矢印Y131,Y132に示すように、操作入力部60が、ジョイスティック61の矢印Y131jの傾動操作に対応する操作情報あるいは矢印Y132jの傾動操作に対応する操作情報を体外制御部4に入力した場合には、図14(3)の矢印Y131,Y132に示す動作と同様のティルティング動作あるいはローテーション動作をカプセル型内視鏡10が行うように方向を変えた均一磁界を磁界発生部2に発生させる。また、水平面上でカプセル型内視鏡10を変化させるフォワード動作、バックワード動作、ライト動作およびレフト動作に対しては、胃壁面との摩擦に逆らってカプセル型内視鏡10を移動させる必要があるため、大きな強度で発生可能である均一勾配磁界を発生させることが望ましい。
また、実施の形態1においては、液面から液中あるいは液底にカプセル型内視鏡10を移動させる場合には、液面の表面張力に対抗可能である強度の高い磁界を発生させて、カプセル型内視鏡10を液面から液中あるいは液底に円滑に移動させている。この液面の表面張力に対抗可能である強度の高い磁界を発生させるモードをダイビングモードとして説明する。
このダイビングモードにおいては、体外制御部4による磁界発生部2の制御によって、鉛直方向のうち下向きに一時的に強い磁界を発生させて図22の矢印M1のようにカプセル型内視鏡10を液面から液中あるいは液底にカプセル型内視鏡10を移動させる。また、体外制御部4による磁界発生部2の制御によって、図23に示すようにカプセル型内視鏡10を高速でティルティング動作させる磁界M2を発生させて、カプセル型内視鏡10の姿勢を高速で変化させてもよい。この場合、このティルティング動作によって、液面から露出するカプセル型内視鏡10の側壁に液体がかけられ、表面張力の影響がなくなる。その後、体外制御部4による磁界発生部2の制御によって、矢印Y41のように下方向にカプセル型内視鏡10を移動させる磁界を発生させることによって、カプセル型内視鏡10を液面から液中あるいは液底にカプセル型内視鏡10を移動させる。この方法の場合には、強度の低い磁界でも液面から液中あるいは液底へのカプセル型内視鏡10の誘導が可能になる。
このダイビングモードは、誘導領域が液面領域から液中領域あるいは液底領域に切り替わったときに自動的に発生する。また、ダイビングモードのオン状態あるいはオフ状態を選択できる選択ボタンを設け、操作者による選択ボタンの操作によって、ダイビングモードのオン状態を制御してもよい。ダイビングモードがオン状態の場合には、最初に鉛直下方向への操作指示が行われた場合に、体外制御部4の制御のもと、磁界発生部2が一度だけ表面張力に対抗する磁界を発生し、その後、自動でダイビングモードがオフ状態となる。このため、ダイビングモードがオン状態の場合には、液中でのカプセル型内視鏡10の誘導中にカプセル型内視鏡10が液面に移動してしまった場合であっても、液中での誘導に容易に復帰できる。
また、実施の形態1においては、撮像対象にカプセル型内視鏡10の撮像部11Aを近接させるアプローチモードも設定されている。このアプローチモードは、カプセル型内視鏡10をカプセル型内視鏡10の長軸La方向、すなわち、画像の撮像方向に均一勾配磁界を用いてカプセル型内視鏡10の撮像部11Aを誘導する機能である。
アプローチモードは、図12で例示した操作入力部60のアプローチボタン64が押圧される間はオン状態となり、このアプローチボタン64の押圧が解除された場合はオフ状態となる。たとえば、図24に示すように、カプセル型内視鏡10が下向きになって液底にある撮像対象部Spを撮像している場合にアプローチモードがオン状態となった場合について説明する。
磁界制御指示部45は、アプローチモードがオン状態となっている間、カプセル型内視鏡10の長軸Laに沿って下向きに勾配を有する均一勾配磁界Msを磁界発生部2に発生させる。この結果、矢印Y42に示すように、現に撮像部11Aによって撮像されている胃壁Stの撮像対象部Spにカプセル型内視鏡10を近接させることが可能になる。もちろん、上向きになって上方の胃壁Stを撮像しているカプセル型内視鏡10をこの胃壁Stに近接させたい場合には、カプセル型内視鏡10の長軸Laに沿って上向きに勾配を有する均一勾配磁界Msを磁界発生部2に発生させればよい。なお、カプセル型内視鏡10の撮像方向は、撮像部11A,11Bのうち基準となる撮像部の撮像方向をもとに設定すればよい。
ここで、操作者が実施に行なう操作ステップについて説明する。操作者は、表示部5が表示するカプセル型内視鏡10で取得した画像をもとに、カプセル型内視鏡10が存在する領域が液面、液中、液底のいずれかであるかを把握する。次に、操作者は現在設定されている誘導領域とカプセル型内視鏡10が存在する領域が一致しているかを確認する。一致していない場合には、入力部6を操作し、誘導領域をカプセル型内視鏡10が存在する領域に一致させてから誘導操作を行う。なお、現設定の誘導領域とカプセル型内視鏡10が存在する領域が一致している場合は、そのまま誘導操作を行うことができる。
また、カプセル型内視鏡10を誘導する領域を変更する場合は、操作者は入力部6を操作して、誘導領域をカプセル型内視鏡10を誘導したい領域に変更することで、カプセル型内視鏡10は次の誘導領域に移動する。ただし、誘導領域を液面から液中に変更する場合は、入力部6のジョイスティックを操作してカプセル型内視鏡10を液面から液中に誘導するための操作が必要となる。
以上の操作ステップにより、誘導領域の設定を変更しながら、カプセル型内視鏡10をより安定した条件で誘導することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、カプセル型内視鏡の画像からカプセル型内視鏡が存在する領域を自動的に検出して、設定された誘導領域内に自動的にカプセル型内視鏡10を誘導させる場合について説明する。
図25は、本実施の形態2にかかるカプセル型医療装置用誘導システムの全体構成を示す模式図である。図25に示すように、この実施の形態2におけるカプセル型医療装置用誘導システム201は、図1に示す体外制御部4に代えて、体外制御部204を備えた構成を有する。体外制御部204は、体外制御部4と比して、位置検出部243をさらに備えるとともに、磁界制御指示部45に代えて磁界制御指示部245を備える。
位置検出部243は、カプセル型内視鏡10が撮像した画像からカプセル型内視鏡10が存在する液面領域、液中領域または液底領域のいずれの領域に存在するかを検出する。磁界制御指示部245は、位置検出部243が検出したカプセル型内視鏡10の存在領域と、入力部6の操作入力部60が選択した誘導領域とが一致していない場合には、磁界発生部2に操作入力部60が選択した誘導領域にカプセル型内視鏡10を誘導する磁界を発生させる。
次に、図26を参照して、図25に示すカプセル型医療装置用誘導システム201のカプセル型内視鏡10の誘導処理について説明する。図26は、図25に示すカプセル型医療装置用誘導システム201のカプセル型内視鏡10の誘導処理の処理手順を示すフローチャートである。
図26に示すように、まず、図19のステップS2と同様に、体内観察の開始を指示する指示情報を入力部6が入力した場合、磁界制御指示部245は、初期条件で磁界を発生させるように磁界制御部8に指示情報を送信する(ステップS202)。次いで、図19のステップS4およびステップS6と同様に、画像受信部41は、画像受信処理を行い(ステップS204)、画像表示制御部42は、画像表示処理を行う(ステップS206)。
体外制御部204においては、磁界条件切替部46は、図19のステップS8と同様に、誘導領域の設定指示があるか否かを判断する(ステップS208)。磁界条件切替部46は、誘導領域の設定指示があると判断した場合には(ステップS208:Yes)、入力された選択情報をもとに操作入力部60が選択した誘導領域に応じて、磁界発生部2による磁界発生条件を切り替える(ステップS210)。
次いで、磁界条件切替部46が誘導領域の設定指示がないと判断した場合(ステップS208:No)、または、ステップS210における磁界発生条件切替処理終了後、体外制御部204は、カプセル型内視鏡10の存在領域を自動で検出する自動検出モードが設定されているか否かを判断する(ステップS212)。体外制御部204は、体外制御部204は、カプセル型内視鏡10の存在領域を自動で検出する自動検出モードが設定されていると判断した場合(ステップS212:Yes)、位置検出部243は、カプセル型内視鏡10の存在領域を検出する存在領域検出処理を行なう(ステップS214)。
位置検出部243は、画像受信部41が受信したカプセル型内視鏡10による撮像画像から、液面あるいは液底に特有の画像パターンがあるか否かをもとに、カプセル型内視鏡10の存在領域を検出する。
まず、図27を参照して、カプセル型内視鏡10が液面に位置する場合について説明する。図27(1)に示すように、カプセル型内視鏡10が液面領域に存在する場合には、液面Ws上からカプセル型内視鏡10の先端が露出する。撮像部11A,11Bの撮像視野は、このカプセル型内視鏡10先端から広がる。このため、図27(1)のようにカプセル型内視鏡10先端が液面Wsから露出している場合には、図27(2)の画像G2のように、表面張力による液体のカプセル型内視鏡10側面への這い登りと照明部13A,13Bからの照射光の反射によって、液面Wsとの境界Prがリング状に表示される。このため、位置検出部243は、カプセル型内視鏡10が撮像した画像の中に、リング状の画像パターンがあるか否かを判断し、リング状の画像パターンがある場合には、このカプセル型内視鏡10は液面領域に存在すると判断する。
次に、図28を参照して、カプセル型内視鏡10が液底に位置する場合について説明する。図28(1)に示すように、カプセル型内視鏡10が液底領域に存在する場合には、胃壁Stにカプセル型内視鏡10先端が押し付けられている。このため、図28(1)の場合には、図28(2)の画像G1のように、胃壁Stとカプセル型内視鏡10先端部との接触部Ptが円状に表示される。このため、位置検出部243は、カプセル型内視鏡10が撮像した画像の中に、円状の画像パターンがあるか否かを判断し、円状の画像パターンがある場合には、このカプセル型内視鏡10は液底領域に存在すると判断する。
また、位置検出部243は、カプセル型内視鏡10が撮像した画像の中にリング状の画像パターンおよび円状の画像パターンのいずれもないと判断した場合には、このカプセル型内視鏡10は液中領域に存在すると判断する。
そして、磁界制御指示部245は、位置検出部243による検出結果をもとに、カプセル型内視鏡10の存在領域と操作入力部60が選択した誘導領域とが一致しているか否かを判断する(ステップS216)。
磁界制御指示部245は、カプセル型内視鏡10の存在領域と操作入力部60が選択した誘導領域とが一致していないと判断した場合(ステップS216:No)、設定を指示された誘導領域がいずれの領域であるかを判断する(ステップS217)。磁界制御指示部245は、設定を指示された誘導領域が液中または液底の領域であると判断した場合(ステップS217:液中または液底)、ステップS214の検出結果をもとに、カプセル型内視鏡10が現に液面に存在しているか否かを判断する(ステップS218)。磁界制御指示部245は、カプセル型内視鏡10が現に液面に存在していると判断した場合(ステップS218:Yes)、ダイビングモードをオン状態とする(ステップS219)。
次いで、磁界制御指示部245は、設定を指示された誘導領域が液面の領域であると判断した場合(ステップS217:液面)、または、カプセル型内視鏡10が現に液面に存在していないと判断した場合(ステップS218:No)、または、ステップS218のダイビングモードオン設定が終了した場合、選択された誘導領域にカプセル型内視鏡10を誘導するための磁界を発生させるよう磁界制御部8に指示する。この結果、磁界発生部2は、選択された誘導領域にカプセル型内視鏡10を移動させるための磁界を発生する(ステップS220)。ここで、発生させる磁界として、磁界制御指示部245は、図11の表T2に示す磁力を有する磁界を磁界発生部2に発生させる。さらに、磁界制御指示部245は、カプセル型内視鏡10の存在領域が液面領域であって誘導領域が液中領域あるいは液底領域のいずれかに設定されている場合には、上述したようにダイビングモードがオン状態となるため、液面に対して鉛直下方向への移動のために、磁界発生部2に、液面の表面張力に対抗可能である強度の高い磁界を一度発生させてから、表T1の条件にしたがって表T2に示す磁力を有する磁界を発生させる。この場合、操作者がダイビングモードをオン状態とする操作を行わなくても自動的にダイビングモードがオン状態となるため、さらに操作性が向上する。この結果、カプセル型内視鏡10は、設定された誘導領域内に移動し、この誘導領域内において安定に位置する。
体外制御部204は、カプセル型内視鏡10の存在領域を自動で検出する自動検出モードが設定されていないと判断した場合(ステップS212:No)、磁界制御指示部245がカプセル型内視鏡10の存在領域と操作入力部60が選択した誘導領域とが一致していると判断した場合(ステップS216:Yes)、または、ステップS220の磁界発生処理が終了した場合、図19のステップS12と同様に、磁界制御指示部245は、カプセル型内視鏡10の移動指示があるか否かを判断する(ステップS222)。
磁界制御指示部245は、実施の形態1と同様に、カプセル型内視鏡10の移動指示があると判断した場合(ステップS222:Yes)、操作入力部60からの操作情報で指示された移動位置を演算し(ステップS224)、誘導領域に対応する磁界発生条件をもとにカプセル型内視鏡10の永久磁石19に印加する磁界条件を取得する(ステップS226)。そして、磁界制御指示部245は、取得した磁界条件での磁界の発生を磁界制御部8に指示し、磁界発生部2は、指示された条件で磁界を発生する磁界発生処理を行う(ステップS228)。この結果、カプセル型内視鏡10は、操作入力部60による操作処理にしたがった方向および位置に移動する。なお、磁界制御指示部245は、鉛直下方向の移動成分があり、ダイビングモードがオン状態である場合には、表面張力に対抗する磁界を磁界発生部2に発生させるように磁界制御部8に指示する。
そして、磁界制御指示部245がカプセル型内視鏡10の移動指示がないと判断した場合(ステップS222:No)、または、磁界発生処理(ステップS228)が終了した場合、画像受信部41は、画像受信処理(ステップS230)を行い、画像表示制御部42は、画像表示処理(ステップS232)を行う。この結果、表示部5は、カプセル型内視鏡10が撮像した体内画像を順次表示する。続いて、体外制御部204は、入力部6が入力した指示情報をもとに、体内観察が終了したか否かを判断する(ステップS234)。体外制御部204は、体内観察が終了していないと判断した場合には(ステップS234:No)、体内観察を継続するため、ステップS208に戻り、誘導領域の設定指示があるか否かを判断する。また、体外制御部204は、体内観察が終了したと判断した場合には(ステップS234:Yes)、体内観察を終了する。
このように、実施の形態2においては、カプセル型内視鏡10の画像からカプセル型内視鏡10が存在する領域を自動的に検出して、検出されたカプセル型内視鏡10の存在領域が設定された誘導領域と一致しない場合には、設定された誘導領域内にカプセル型内視鏡10を移動させるための磁界を自動的に発生する。このため、実施の形態によれば、操作者自身が表示部5に表示された画像をもとに所望の誘導領域にカプセル型内視鏡10を誘導させるための操作を行わなくともよいため、実施の形態1と比較して、さらに簡易な操作でカプセル型内視鏡10を正しく誘導することが可能になる。
なお、誘導領域の組み合わせが液面領域および液底領域のみの場合には、位置検出部243は、カプセル型内視鏡10が撮像した画像の中に、円状の画像パターンの有無は判断せずにリング状の画像パターンの有無のみを判断してもよい。この場合、位置検出部243は、カプセル型内視鏡10が撮像した画像の中に、リング状の画像パターンがあると判断した場合には、カプセル型内視鏡10の存在領域は液面領域であると判断し、リング状の画像パターンがないと判断した場合には、カプセル型内視鏡10の存在領域は液底領域であると判断する。この場合には、カプセル型内視鏡10の存在領域の検出処理をさらに簡易化できる。
また、実施の形態2では、図29に示す各処理手順を行なうことによって、磁界発生条件を、カプセル型内視鏡10が実際に存在する領域に対応するように設定する領域自動調整モードを設定して、カプセル型内視鏡10を円滑に磁気誘導できるようにしてもよい。
図29に示すように、まず、図19のステップS2と同様に、体内観察の開始を指示する指示情報を入力部6が入力した場合、磁界制御指示部245は、初期条件で磁界を発生させるように磁界制御部8に指示情報を送信する(ステップS202a)。次いで、図19のステップS4およびステップS6と同様に、画像受信部41は、画像受信処理を行い(ステップS204a)、画像表示制御部42は、画像表示処理を行う(ステップS206a)。
その後、位置検出部243は、カプセル型内視鏡10の存在領域を検出する存在領域検出処理を行なう(ステップS208a)。そして、磁界制御指示部245は、位置検出部243による検出結果をもとに、カプセル型内視鏡10の存在領域と操作入力部60が選択した誘導領域とが一致しているか否かを判断する(ステップS209a)。磁界制御指示部245は、カプセル型内視鏡10の存在領域と操作入力部60が選択した誘導領域とが一致と判断した場合には(ステップS209a:Yes)、領域自動調整モードをオン状態とする(ステップS210a)。
磁界制御指示部245は、カプセル型内視鏡10の存在領域と操作入力部60が選択した誘導領域とが一致していないと判断した場合(ステップS209a:No)、または、ステップS210aの処理終了後、磁界条件切替部46は、図19のステップS8と同様に、誘導領域の設定指示があるか否かを判断する(ステップS213a)。
磁界条件切替部46は、誘導領域の設定指示があると判断した場合には(ステップS213a:Yes)、入力された選択情報をもとに操作入力部60が選択した誘導領域に応じて、磁界発生部2による磁界発生条件を切り替える(ステップS214a)。そして、磁界制御指示部245は、選択された誘導領域にカプセル型内視鏡10を誘導するための磁界を発生させるよう磁界発生部2に指示し、実際にカプセル型内視鏡10が存在する領域が、操作入力部60が選択した誘導領域まで移動し、存在領域と誘導領域が一致した後に、領域自動調整モードをオフ状態とする(ステップS215a)。
これに対し、磁界条件切替部46が誘導領域の設定指示がないと判断した場合には(ステップS213a:No)、磁界制御指示部245は、領域自動調整モードがオン状態であるか否かを判断する(ステップS216a)。磁界制御指示部245は、領域自動調整モードがオン状態であると判断した場合(ステップS216a:Yes)、誘導領域を、実際にカプセル型内視鏡10が存在する領域に設定する(ステップS217a)。磁界条件切替部46は、磁界制御指示部245がステップS217aの設定処理において設定した誘導領域に対応するように、磁界発生部2による磁界発生条件を切り替える。
体外制御部204は、ステップS215a、磁界制御指示部245が領域自動調整モードがオン状態でないと判断した場合(ステップS216a:No)、またはステップS217aの処理が終了した場合、図19のステップS12と同様に、磁界制御指示部245は、カプセル型内視鏡10の移動指示があるか否かを判断する(ステップS222a)。磁界制御指示部245は、実施の形態1と同様に、カプセル型内視鏡10の移動指示があると判断した場合(ステップS222a:Yes)、操作入力部60からの操作情報で指示された移動位置を演算し(ステップS224a)、誘導領域に対応する磁界発生条件をもとにカプセル型内視鏡10の永久磁石19に印加する磁界条件を取得する(ステップS226a)。そして、磁界制御指示部245は、取得した磁界条件での磁界の発生を磁界制御部8に指示し、磁界発生部2は、指示された条件で磁界を発生する磁界発生処理を行う(ステップS228a)。そして、磁界制御指示部245がカプセル型内視鏡10の移動指示がないと判断した場合(ステップS222a:No)、または、磁界発生処理(ステップS228a)が終了した場合、画像受信部41は画像受信処理(ステップS230a)を行い、画像表示制御部42は、画像表示処理(ステップS232a)を行う。この結果、表示部5は、カプセル型内視鏡10が撮像した体内画像を順次表示する。続いて、体外制御部204は、入力部6が入力した指示情報をもとに、体内観察が終了したか否かを判断する(ステップS234a)。体外制御部204は、体内観察が終了していないと判断した場合には(ステップS234a:No)、体内観察を継続するため、ステップS208aに戻り、存在領域確認処理を行う。また、体外制御部204は、体内観察が終了したと判断した場合には(ステップS234a:Yes)、体内観察を終了する。
図29に示す各処理手順を行なうことによって、領域自動調整モードを設定した場合には、磁界発生条件を、カプセル型内視鏡10が実際に存在する領域に対応するように自動的に切り替えることが可能になる。この結果、たとえば誘導領域を液中領域と設定してカプセル型内視鏡10を誘導している場合にカプセル型内視鏡10が液面に移動してしまった場合など、カプセル型内視鏡10が実際に存在する存在領域が、操作入力部60が設定した誘導領域から外れてしまった場合であっても、自動的に誘導領域が存在領域に切り替わる。そして、誘導領域が存在領域に切り替わることにともない、磁界発生条件も実際にカプセル型内視鏡10が存在する領域に対応するものに切り替わる。このため、図29に示す各処理手順を行なうことによって、常に、カプセル型内視鏡10が存在する領域において安定した誘導を実現することができる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。均一勾配磁界を発生させてカプセル型内視鏡を移動させた場合にはカプセル型内視鏡10の位置が定まらない場合が多いため、実施の形態3では、直前に発生させたピーク磁界の水平面におけるピーク位置を記憶させて、均一勾配磁界からピーク磁界に磁界が切り替わった場合には、記憶させておいた位置にピークを有するピーク磁界を発生させて、カプセル型内視鏡の位置を確定している。
図30は、この発明の実施の形態3にかかるカプセル型医療装置用誘導システムの全体構成を示す模式図である。図30に示すように、この実施の形態3におけるカプセル型医療装置用誘導システム301は、図1に示す体外制御部4に代えて、体外制御部304を備えた構成を有する。体外制御部304は、体外制御部4と比して、磁界制御指示部45に代えて磁界制御指示部345と、磁界条件記憶部47に代えて磁界条件記憶部347とを備える。
磁界制御指示部345は、磁界条件記憶部347に、各誘導領域に対応する各磁界条件を記憶するとともに、直前に発生したピーク磁界の水平面における発生位置、すなわち、ピーク磁界のピークの水平面における位置を記憶させる。磁界制御指示部345は、磁界発生部2に発生させる磁界をピーク磁界から均一勾配磁界に切り替えるときに磁界条件記憶部347にこのピーク磁界の水平面における発生位置、すなわち、ピーク磁界のピークの水平面における位置を記憶させる。具体的には、磁界制御指示部345は、磁界発生部2に発生させる磁界をピーク磁界から均一勾配磁界に切り替えるときに、磁界条件記憶部347にこのピーク磁界の鉛直方向の磁気勾配を記憶させる。磁界制御指示部345は、磁界発生部2に発生させる磁界をピーク磁界から均一勾配磁界に切り替えるときに磁界条件記憶部347にこのピーク磁界の方向を記憶させる。
そして、磁界制御指示部345は、磁界発生部2に発生させる磁界を均一勾配磁界からピーク磁界に切り替えるときに磁界条件記憶部347が記憶する位置にピーク磁界を発生させる。具体的には、磁界制御指示部345は、磁界発生部2に発生させる磁界を均一勾配磁界からピーク磁界に切り替えるときに磁界条件記憶部347が記憶する鉛直方向の磁気勾配でピーク磁界を発生させる。磁界制御指示部345は、磁界発生部2に発生させる磁界を均一勾配磁界からピーク磁界に切り替えるときに磁界条件記憶部347が記憶する方向のピーク磁界を発生させる。磁界制御指示部345は、誘導領域の切り替えによって、磁界の種類を変更する場合に、ピーク磁界の発生位置に関する磁界条件の記憶処理および読出処理を行なう。
各誘導領域の切り替えごとに具体的に説明する。まず、操作入力部60による選択情報によって、誘導領域が液面領域から液中領域あるいは液底領域に切り替わった場合について説明する。この場合は、発生させる磁界がピーク磁界から均一勾配磁界に切り替えられる場合に対応する。
まず、カプセル型内視鏡10の誘導領域は切り替え前には液面領域に設定されているため、磁界発生部2はピーク磁界を発生させて、たとえば図31の矢印Y51のようにカプセル型内視鏡10を位置P10に移動させている。このタイミングで誘導領域が液面領域から液中領域あるいは液底領域に切替指示があった場合には、磁界制御指示部345は、この位置P10にカプセル型内視鏡10を拘束するピーク磁界の発生条件、たとえば、このピーク磁界のピークの水平面における発生位置として、ピーク磁界の鉛直方向の磁気勾配および、このピーク磁界の方向を磁界条件記憶部347に記憶させる。
その後、磁界条件切替部46は、新たに選択された誘導領域に応じて、磁界発生部2による磁界発生条件を切り替える。この誘導領域の切替によって液面に対して鉛直下方向に移動が必要である。このため、磁界制御指示部345は、鉛直下方向にカプセル型内視鏡10の移動指示があったタイミングで、磁界発生部2に、液面の表面張力に対抗可能である強度の高い磁界を一度発生させる。この場合、操作者がダイビングモードをオン状態とする操作を行わなくても自動的にダイビングモードでカプセル型内視鏡10が移動するため、操作者は表面張力の影響を考慮することなくカプセル型内視鏡10を液中あるいは液底に誘導できる。
その後、磁界制御指示部345は、図10に示す表T1の条件にしたがって、均一勾配磁界を発生させて矢印Y52のように、たとえば胃壁Stに近接する位置P11まで下方移動させる。なお、均一勾配磁界は、厳密には磁界の歪みが存在するため、液面などの摩擦のない環境ではカプセル型内視鏡10の動きが不安定になることから、磁界制御指示部345は、操作入力部60が操作情報を入力するまでは、安定した操作のためにカプセル型内視鏡10の位置が確定できるように、磁界発生部2によるピーク磁界の発生を維持しておいてもよい。この場合には、磁界制御指示部345は、操作入力部60による操作情報が入力されてから磁界発生部2に均一勾配磁界を発生させる。
次に、操作入力部60による選択情報によって、誘導領域が液中領域あるいは液底領域から液面領域に切り替わった場合について説明する。この場合は、発生させる磁界が均一勾配磁界からピーク磁界に切り替えられる場合に対応する。この場合には、磁界条件切替部46が磁界発生条件を、液中領域あるいは液底領域に対応する均一勾配磁界から、液面領域に対応するピーク磁界に切り替える。そして、磁界制御指示部345は、磁界条件記憶部347が記憶する直前のピーク磁界の発生条件を取得し、この条件でピーク磁界を磁界発生部2に発生させる。
この結果、図31の位置P11に移動したカプセル型内視鏡10は、矢印Y53に示すように、液底移動直前の位置P10に戻る。すなわち、誘導領域が他の領域から液面領域に切り替わった場合には、カプセル型内視鏡10が自動的に液中または液底移動直前の液面位置に戻る。操作者は、誘導領域を他の領域から液面領域に切り替えるだけでよく、液面にカプセル型内視鏡10を戻すための誘導操作を行なわずとも、液中または液底移動直前の液面の位置P10から、カプセル型内視鏡10による体内観察およびカプセル型内視鏡10の誘導を円滑に再開することができる。
なお、誘導領域が液中領域から液底領域に切り替わった場合、あるいは、液底領域から液中領域に切り替わった場合、磁界発生条件において磁界の種類が切り替わることはなく均一勾配磁界のままであるため、磁界制御指示部345は、ピーク磁界の発生条件に関する記憶処理を行なう必要はない。
次に、図32を参照して、図30に示すカプセル型医療装置用誘導システム301のカプセル型内視鏡10の誘導処理について説明する。図32は、図30に示すカプセル型医療装置用誘導システム301のカプセル型内視鏡10の誘導処理の処理手順を示すフローチャートである。
図32に示すように、まず、図19のステップS2と同様に、体内観察の開始を指示する指示情報を入力部6が入力した場合、磁界制御指示部345は、初期条件で磁界を発生させるように磁界制御部8に指示情報を送信する(ステップS302)。次いで、図19のステップS4およびステップS6と同様に、画像受信部41は、画像受信処理を行い(ステップS304)、画像表示制御部42は、画像表示処理を行う(ステップS306)。
体外制御部304においては、磁界条件切替部46が、図19のステップS8と同様に、誘導領域の設定指示があるか否かを判断する(ステップS308)。磁界条件切替部46は、誘導領域の設定指示があると判断した場合には(ステップS308:Yes)、入力された選択情報をもとに操作入力部60が選択した誘導領域に応じて、磁界発生部2による磁界発生条件を切り替える(ステップS310)。
次に、磁界制御指示部345は、誘導領域の設定指示によってステップS310の磁界発生条件の切替処理で、磁界発生条件の磁界の種類がピーク磁界から均一勾配磁界に切替があったか否かを判断する(ステップS312)。
磁界制御指示部345が磁界発生条件の磁界の種類がピーク磁界から均一勾配磁界に切替があったと判断した場合(ステップS312:Yes)について説明する。この場合は、液面領域から液中領域あるいは液底領域に誘導領域が切り替えられた場合である。この場合には、磁界制御指示部345は、直前に発生するピーク磁界の発生条件を磁界条件記憶部347に記憶させる(ステップS314)。そして、磁界制御指示部345は、液面から液中または液底への移動指示があったか否かを判断する(ステップS316)。すなわち、鉛直下方向へのカプセル型内視鏡10の移動指示を操作入力部60が操作情報として入力したかを判断する。
磁界制御指示部345は、液面から液中または液底への移動指示があったと判断した場合(ステップS316:Yes)、前述したダイビングモードで磁界発生部2に磁界を発生させて(ステップS318)、液面から液中あるいは液底にカプセル型内視鏡10を正しく移動させる。そして、磁界制御指示部345は、磁界条件切替部46が切り替えた磁界発生条件にしたがって均一勾配磁界を発生さえることによって、誘導領域として選択された液中領域あるいは液底領域にカプセル型内視鏡10を移動させるための磁界を磁界発生部2に発生させ(ステップS320)、選択された誘導領域内にカプセル型内視鏡10を移動させる。
これに対し、磁界制御指示部345は、誘導領域の設定指示によってステップS310の磁界発生条件の切替処理で、磁界発生条件の磁界の種類がピーク磁界から均一勾配磁界に切替がなかったと判断した場合(ステップS312:No)、さらに、磁界発生条件の磁界の種類が均一勾配磁界からピーク磁界に切替があったか否かを判断する(ステップS322)。
磁界制御指示部345は、磁界発生条件の磁界の種類が均一勾配磁界からピーク磁界に切替があったと判断した場合(ステップS322:Yes)について説明する。この場合は、液中領域あるいは液底領域から液面領域に誘導領域が切り替えられた場合である。この場合には、磁界制御指示部345は、磁界条件記憶部347が記憶する直前のピーク磁界の発生条件を取得し(ステップS324)、取得した条件でピーク磁界を磁界発生部2に発生させる(ステップS326)。この結果、液面領域のうち、直前に位置していた液面位置にカプセル型内視鏡10が戻ることとなる。
これに対し、磁界制御指示部345は、磁界発生条件の磁界の種類が均一勾配磁界からピーク磁界に切替がなかったと判断した場合(ステップS322:No)、すなわち、磁界発生条件の磁界の種類は均一勾配磁界のままであった場合には、誘導領域が液中領域から液底領域に切り替わった場合、あるいは、液底領域から液中領域に切り替わった場合に対応する。この場合には、磁界制御指示部345は、磁界条件切替部46が切り替えた磁界発生条件にしたがって均一勾配磁界を発生させることによって、誘導領域として選択された液中領域あるいは液底領域にカプセル型内視鏡10を移動させるための磁界を磁界発生部2に発生させ(ステップS320)、選択された誘導領域内にカプセル型内視鏡10を移動させる。
磁界制御指示部345は、選択された誘導領域内にカプセル型内視鏡10を移動させる磁界を発生させた後、実施の形態1と同様に、カプセル型内視鏡10の移動指示があるか否かを判断する(ステップS332)。磁界制御指示部345は、実施の形態1と同様に、カプセル型内視鏡10の移動指示があると判断した場合(ステップS332:Yes)、操作入力部60からの操作情報で指示された移動位置を演算し(ステップS334)、誘導領域に対応する磁界発生条件をもとにカプセル型内視鏡10の永久磁石19に印加する磁界条件を取得する(ステップS336)。そして、磁界制御指示部345は、取得した磁界条件での磁界の発生を磁界制御部8に指示し、磁界発生部2は、指示された条件で磁界を発生する磁界発生処理を行う(ステップS338)。この結果、カプセル型内視鏡10は、操作入力部60による操作処理にしたがった方向および位置に移動する。
そして、磁界制御指示部345がカプセル型内視鏡10の移動指示がないと判断した場合(ステップS332:No)、または、磁界発生処理(ステップS338)が終了した場合、画像受信部41は、画像受信処理(ステップS340)を行い、画像表示制御部42は、画像表示処理(ステップS342)を行う。この結果、表示部5は、カプセル型内視鏡10が撮像した体内画像を順次表示する。続いて、体外制御部304は、入力部6が入力した指示情報をもとに、体内観察が終了したか否かを判断する(ステップS344)。体外制御部304は、体内観察が終了していないと判断した場合には(ステップS344:No)、体内観察を継続するため、ステップS308に戻り、誘導領域の設定指示があるか否かを判断する。また、体外制御部304は、体内観察が終了したと判断した場合には(ステップS334:Yes)、体内観察を終了する。
このように、実施の形態3においては、均一磁界勾配からピーク磁界への切り替えがあった場合、直前に発生させたピーク磁界の水平面におけるピーク位置を記憶させて、均一勾配磁界からピーク磁界に磁界が切り替わった場合には、記憶させておいた位置にピークを有するピーク磁界を発生させて、カプセル型内視鏡10の位置を確定している。このため、実施の形態3によれば、操作者が均一勾配磁界の発生によってカプセル型内視鏡10を移動させた場合にカプセル型内視鏡10の位置が判別できなかった場合であっても、勾配磁界からピーク磁界に磁界が切り替わった場合には元の液面位置に自動的にカプセル型内視鏡10が戻るため、操作者は、液面にカプセル型内視鏡10を戻すための誘導操作を行なわずとも元の液面位置から、カプセル型内視鏡10による体内観察およびカプセル型内視鏡10の誘導を円滑に再開することができる。
また、カプセル型医療装置用誘導システム301では、誘導領域が切り替わった場合のみならず、カプセル型内視鏡10による体内観察中にアプローチモードの選択によって液面領域に位置するカプセル型内視鏡10を液中あるいは液底の撮像対象物に近接させる場合にも、同様にピーク磁界の発生条件に関する記憶処理を行う。この場合について、図33を参照して説明する。図33は、図30に示すカプセル型医療装置用誘導システム301におけるアプローチモード処理の処理手順を示すフローチャートである。
図33に示すように、体外制御部304においては、画像受信部41による画像受信処理(ステップS402)、画像表示制御部42による画像表示処理(ステップS404)が行われ、磁界制御指示部345は、操作入力部60からの操作情報をもとにアプローチモードが指示されたか否かを判断する(ステップS406)。磁界制御指示部345は、アプローチモードが指示されたと判断した場合(ステップS406:Yes)、設定されている誘導領域は液面領域であるか否かを判断する(ステップS408)。磁界制御指示部345は、設定されている誘導領域は液面領域であると判断した場合(ステップS408:Yes)、ピーク磁界によってカプセル型内視鏡10の水平面における位置が制御されていることから、このピーク磁界の水平面におけるピーク位置を含むピーク磁界発生条件を磁界条件記憶部347に記憶させる(ステップS410)。そして、磁界制御指示部345は、前述したダイビングモードで磁界発生部2に磁界を発生させる(ステップS412)。この結果、液面から液中にカプセル型内視鏡10を正しく移動させることができる。
そして、磁界制御指示部345は、ステップS412の処理後、または、設定されている誘導領域は液面領域でないと判断した場合(ステップS408:No)、カプセル型内視鏡10をカプセル型内視鏡10の長軸La方向に勾配を有する均一勾配磁界を磁界発生部2に発生させて(ステップS414)、撮像対象物にカプセル型内視鏡10を近接させる。
次いで、磁界制御指示部345は、アプローチモードの指示が解除されたか否かを判断する(ステップS416)。磁界制御指示部345は、アプローチモードの指示が解除されていないと判断した場合(ステップS416:No)、すなわち、アプローチモードが指示されたままであると判断した場合には、ステップS414に戻り、均一勾配磁界の発生を磁界発生部2に継続させる。これに対し、磁界制御指示部345は、アプローチモードの指示が解除されたと判断した場合(ステップS416:Yes)、磁界発生部2に均一勾配磁界の発生を停止させる(ステップS418)。そして、磁界条件記憶部347に記憶された直前のピーク磁界の発生条件を取得し(ステップS420)、取得した条件でピーク磁界を磁界発生部2に発生させる(ステップS422)。この結果、アプローチモード前の液面位置にカプセル型内視鏡10が戻ることとなる。
このため、操作者は、アプローチボタン64を押圧することによって、アプローチした画像を確認できる。そして、操作者がアプローチボタン64から指を離すことによって、アプローチボタン64押圧前の液面位置にカプセル型内視鏡10が自動的に戻るため、操作者は、アプローチボタン64押圧前の液面位置からカプセル型内視鏡10の誘導を再開できる。
そして、磁界制御指示部345がアプローチモードが指示されていないと判断した場合(ステップS406:No)、または、磁界発生部2によるステップS422におけるピーク磁界発生処理が終了した場合、画像受信部41は、画像受信処理(ステップS424)を行い、画像表示制御部42は、画像表示処理(ステップS426)を行う。この結果、表示部5は、カプセル型内視鏡10が撮像した体内画像を順次表示する。続いて、体外制御部304は、入力部6が入力した指示情報をもとに、体内観察が終了したか否かを判断する(ステップS428)。体外制御部304は、体内観察が終了していないと判断した場合には(ステップS428:No)、体内観察を継続するため、ステップS406に戻り、アプローチモードの指示があるか否かを判断する。また、体外制御部304は、体内観察が終了したと判断した場合には(ステップS428:Yes)、体内観察を終了する。
また、ピーク磁界を用いて液中領域でのカプセル型内視鏡10を誘導する場合にも適用できる。磁界制御指示部345は、図34に示すように、矢印Y61、Y62のように液中領域でピーク磁界を用いてカプセル型内視鏡10を誘導し、アプローチモードが指示された場合も、同様に直前のピーク磁界の発生条件を記憶してから、均一勾配磁界を発生させることによって矢印Y63のように胃壁Stの撮像対象物への近接移動を行う。そして、磁界制御指示部345は、アプローチモードの指示が解除された場合には、記憶したピーク磁界音発生条件を取得し、取得した条件で磁界発生部2にピーク磁界を発生させる。
この結果、カプセル型内視鏡10は、矢印Y64のように、アプローチモード指示前の液中領域内の位置に戻ることとなる。
また、磁界発生部2が発生する磁界の種類が、ピーク磁界から均一勾配磁界、または、均一勾配磁界からピーク磁界に、手動で切り替えられた場合にも適用可能である。この場合について、図35を参照して説明する。図35は、カプセル型内視鏡10による体内観察中に磁界の種類が手動で切り替えられた場合について示している。
図35に示すように、体外制御部304では、画像受信部41が画像受信処理(ステップS502)を行い、画像表示制御部42が画像表示処理(ステップS504)を行う。
そして、体外制御部304において、磁界制御指示部345は、入力部6からの指示情報などをもとに、発生磁界の種類の切替指示があったか否かを判断する(ステップS506)。磁界制御指示部345は、発生磁界の種類の切替指示があったと判断した場合には(ステップS506:Yes)、磁界の種類がピーク磁界から均一勾配磁界に切り替えられたのか否かを判断する(ステップS508)。
磁界制御指示部345は、磁界の種類がピーク磁界から均一勾配磁界に切り替えられたと判断した場合(ステップS508:Yes)、直前まで発生させていたピーク磁界の水平面におけるピーク位置を含むピーク磁界発生条件を磁界条件記憶部347に記憶させる(ステップS510)。
そして、磁界制御指示部345は、カプセル型内視鏡10の移動指示があるか否かを判断する(ステップS512)。磁界制御指示部345がカプセル型内視鏡10の移動指示がないと判断した場合(ステップS512:No)、画像受信部41による画像受信処理(ステップS514)、画像表示制御部42による画像表示処理(ステップS516)が行われ、カプセル型内視鏡10による体内観察が継続した後に、ステップS512に戻る。これに対し、磁界制御指示部345がカプセル型内視鏡10の移動指示があると判断した場合(ステップS512:Yes)、磁界条件切替部46は、磁界発生部2に発生させる磁界の種類をピーク磁界から均一勾配磁界に切り替える(ステップS518)。そして、磁界制御指示部345は、操作入力部60からの操作情報で指示された移動位置を演算し(ステップS526)、誘導領域に対応する磁界発生条件をもとにカプセル型内視鏡10の永久磁石19に印加する磁界条件を取得する(ステップS528)。そして、磁界制御指示部345は、取得した磁界条件での磁界の発生を磁界制御部8に指示し、磁界発生部2は、指示された条件で磁界を発生する磁界発生処理を行う(ステップS530)。すなわち、磁界制御指示部345は、操作入力部60が操作情報を入力するまでは、安定した操作のためにカプセル型内視鏡10の位置が確定できるように、磁界発生部2によるピーク磁界の発生を維持しておき、操作入力部60による操作情報が入力されてから磁界発生部2に均一勾配磁界を発生させるようにしている。
また、磁界制御指示部345は、磁界の種類がピーク磁界から均一勾配磁界に切り替えられていないと判断した場合(ステップS508:No)、すなわち、磁界の種類が均一勾配磁界からピーク磁界に切り替えられたと判断した場合、磁界条件記憶部347が記憶する直前のピーク磁界の発生条件を取得し(ステップS520)、取得した条件でピーク磁界を磁界発生部2に発生させる(ステップS522)。この結果、前回位置していた液面位置にカプセル型内視鏡10が戻ることとなる。そして、磁界制御指示部345は、カプセル型内視鏡10の移動指示があるか否かを判断する(ステップS524)。また、磁界制御指示部345が発生磁界の種類の切替指示がないと判断した場合にも(ステップS506:No)、ステップS524に進む。
磁界制御指示部345は、カプセル型内視鏡10の移動指示があると判断した場合(ステップS524:Yes)、操作入力部60からの操作情報で指示された移動位置を演算し(ステップS526)、誘導領域に対応する磁界発生条件をもとにカプセル型内視鏡10の永久磁石19に印加する磁界条件を取得する(ステップS528)。そして、磁界制御指示部345は、取得した磁界条件での磁界の発生を磁界制御部8に指示し、磁界発生部2は、指示された条件で磁界を発生する磁界発生処理を行う(ステップS530)。この結果、カプセル型内視鏡10は、操作入力部60による操作処理にしたがった方向および位置に移動する。
そして、磁界制御指示部345がカプセル型内視鏡10の移動指示がないと判断した場合(ステップS524:No)、または、磁界発生処理(ステップS530)が終了した場合、画像受信部41は、画像受信処理(ステップS532)を行い、画像表示制御部42は、画像表示処理(ステップS534)を行う。この結果、表示部5は、カプセル型内視鏡10が撮像した体内画像を順次表示する。続いて、体外制御部304は、入力部6が入力した指示情報をもとに、体内観察が終了したか否かを判断する(ステップS536)。体外制御部304は、体内観察が終了していないと判断した場合には(ステップS536:No)、体内観察を継続するため、ステップS506に戻る。また、体外制御部304は、体内観察が終了したと判断した場合には(ステップS536:Yes)、体内観察を終了する。
この場合も、均一勾配磁界の発生によってカプセル型内視鏡を移動させた場合にカプセル型内視鏡10の位置が判別できなかった場合であっても、勾配磁界からピーク磁界に磁界が切り替わった場合には元の液面位置に自動的にカプセル型内視鏡10が戻るため、操作者は、液面にカプセル型内視鏡10を戻すための誘導操作を行なわずとも元の液面位置から、カプセル型内視鏡10による体内観察およびカプセル型内視鏡10の誘導を円滑に再開することができる。
次に、表示部5が実際に表示する表示内容について説明する。図36は、表示部5が表示するメニュー画面を例示する図である。図36に示すように、表示部5は、誘導メニューM1および観察メニューM2の二つのメニュー画面を表示する。このうち、誘導メニューM1は、カプセル型内視鏡10の誘導を補助するためのメニュー画面であり、観察メニューM2は、カプセル型内視鏡10が送信した体内画像の観察を補助するためのメニュー画面である。
まず、誘導メニューM1について説明する。表示部5は、誘導メニューM1のうち、左上方の領域A11にカプセル型内視鏡10の姿勢図として鉛直面における姿勢図Gp1、水平面における姿勢図Gp2を表示する。各姿勢図Gp1,Gp2に表示したカプセル型内視鏡10の姿勢は、磁界発生部2が発生させている磁界条件から推測したものである。そして、この姿勢図Gp1,Gp2では、カプセル型内視鏡10を誘導可能である方向を矢印で示し、いずれかの誘導方向の操作入力があった場合には、入力方向に対応する矢印の表示色を変えて、操作者の操作を補助している。
前述したように、誘導領域によって、カプセル型内視鏡10を誘導できる方向が異なるため、誘導領域ごとに姿勢図Gp1,Gp2の矢印が異なる。たとえば、誘導領域として液面領域を選択した場合には、図37に例示するように、ティルティング動作に対応する矢印Y11g、ローテーション動作に対応する矢印Y12g、ホリゾンタルバックワード動作あるいはホリゾンタルフォワード動作に対応する矢印Y13g、ホリゾンタルライト動作あるいはホリゾンタルレフト動作に対応する矢印Y14gを、姿勢図Gp1,Gp2に表示する。また、誘導領域として液中領域を選択した場合には、図38に例示するように、ティルティング動作に対応する矢印Y21g、ローテーション動作に対応する矢印Y22g、バックワード動作あるいはフォワード動作に対応する矢印Y23g、ライト動作あるいはレフト動作に対応する矢印Y24g、アップ動作あるいはダウン動作に対応する矢印Y25gを、姿勢図Gp1,Gp2に表示する。また、誘導領域として液底領域を選択した場合には、図39に例示するように、ティルティング動作に対応する矢印Y31g、ローテーション動作に対応する矢印Y32gを、姿勢図Gp1,Gp2に表示する。操作者は、この姿勢図Gp1,Gp2を確認することによって、現に選択している誘導領域において操作可能な各動作を容易に把握し、選択することができる。なお、誘導領域として液面領域を選択した場合には、各姿勢図Gp1,Gp2に、図40(1)のように液面Wsを示すラインLwsを表示してもよい。また、誘導領域として液底領域を選択した場合には、各姿勢図Gp1,Gp2に、図40(3)のように下方の胃壁面を示すラインLstを表示してもよい。なお、誘導領域として液中領域を選択した場合には、図40(2)のようにラインを表示しない。このように表示することによって、操作者は、誘導領域がどの領域にあるかを容易に判断することができる。
表示部5は、図36に示す誘導メニューM1のうち、領域A11の身外方向に位置する領域A12に、現に選択されている誘導領域を記載した誘導領域欄Tnを表示する。表示部5は、この誘導領域欄Tnに、図41(1)に示すように、誘導領域として液面領域を選択した場合には液面領域を示す文言を表示し、図41(2)に示すように、誘導領域として液中領域を選択した場合には液中領域を示す文言を表示し、図41(3)に示すように、誘導領域として液底領域を選択した場合には液底領域を示す文言を表示する。操作者は、この誘導領域欄Tnを確認することによって、現に選択している誘導領域を容易に把握することができる。
また、表示部5は、図36に示す誘導メニューM1に、領域A12の下方に位置する領域A13に、後述するダイビングモードのオン状態またはオフ状態を示すダイビングモード欄Tdおよびアプローチモードのオン状態またはオフ状態を示すアプローチモード欄Taを表示する。表示部5は、ダイビングモード欄Tdを、オフ状態である場合には図42(1)のように暗く表示し、オン状態である場合には図42(2)のように明るく表示する。アプローチモード欄Taも同様である。
そして、表示部5は、領域A11の下方の領域A14に、水平面における磁界発生可能エリアを示す。表示部5は、この領域A14の磁界発生可能エリアに、点Gcに例示するように、ピーク磁界のピーク位置を示す。誘導領域として液面が選択されている場合には、ピーク磁界発生時には、ピーク位置にカプセル型内視鏡10が拘束されるため、この磁界発生可能エリアに示すピーク位置にカプセル型内視鏡10が位置しているものと考えてよい。このため、操作者は、この領域A14に示されたピーク位置を確認することによって、カプセル型内視鏡10の水平方向の位置を容易に把握することができる。
また、図43のカプセル型内視鏡像Pcに示すように、ピーク位置に、カプセル型内視鏡10を鉛直方向から見たときの画像を表示することで、操作者がカプセル型内視鏡10の位置および姿勢の双方を同時に把握できるようにしてもよい。カプセル型内視鏡10の姿勢は、磁界発生部2が発生する磁界の方向をもとに推測したものである。なお、均一勾配磁界でカプセル型内視鏡10を誘導している場合には、磁界発生可能エリアでのピーク位置は非表示となる。また、均一勾配磁界からピーク磁界に磁界が切り替られた場合には、磁界発生可能エリアに再度ピーク位置が表示される。
次に、観察メニューM2について説明する。表示部5は、観察メニューM2のうち、左上方の領域A21に被検体の患者名、患者ID、性別、年齢等の各被検体情報を表示する。そして、表示部5は、観察メニューM2の中央左側に、撮像部11Aが撮像した生体画像G1を表示し、観察メニューM2中央右側に、撮像部11Bが撮像した生体画像G2を表示する。表示部5は、これらの生体画像G1,G2の間の領域A22に、液面領域に対応するマーカーTs、液中領域に対応するマーカーTbおよび液底領域に対応するマーカーTuを表示しており、選択した誘導領域に対応するマーカーを、他の選択していない誘導領域と比較して、明るく表示する。図36の例では、液底領域に対応するマーカーTuが明るくなっている。このため、操作者は、誘導メニューM1の誘導領域欄Tnを確認しなくとも、カプセル型内視鏡10による各画像G1,G2とともに、これらの画像G1,G2に近接して表示された各マーカーTs,Tb,Tuの表示状態を確認することによって、現に選択している誘導領域を簡易に把握することができる。また、表示部5は、画像G1,G2下方の領域A23に、キャプチャボタン65の押圧操作によってキャプチャされた各画像を、キャプチャ時間とともに、縮小表示する。
また、表示部5は、観察メニューM2の領域A21下方の領域A25に、カプセル型内視鏡10の誘導操作以外の操作に関する各種ボタンを表示する。磁界発生部2による磁界発生中、すなわちカプセル型内視鏡10の誘導操作中には、誘導に関する操作のみが有効となり、それ以外の操作に関する入力は無効になる。この結果、操作者は誘導操作のみに集中できることから、安定した誘導操作環境を提供できる。画像表示制御部42は、体外制御部4から磁界発生部2において磁界が発生していることを意味する通信データを受信すると、領域A25に表示した各ボタンを操作不可、すなわち無効とする。また、画像表示制御部42は、体外制御部4から磁界発生部2において磁界が停止したことを意味する通信データを受信すると、領域A25に表示した各ボタンを操作可能、すなわち有効とする。
表示部5は、この領域A25に、たとえば、検査中にコメントを記入する機能を有するCommentボタンTp1、過去の検査データのリストを表示する機能を有するExam.ListボタンTp2、表示画像の色調や構造強調レベルを調整する機能を有するAdjustmentボタンTp3、表示画像の構造強調レベル(HIGH/LOW)ENH.HIGH/LOWボタンTp4、表示画像のサイズを大きくする機能を有するZoomInボタンTp5、表示画像のサイズを小さくする機能を有するZoomOutボタンTp6、画像周辺に表示した姿勢情報(ダイヤルゲージ)のタイプを選択する機能を有するScaleAボタンTp7、表示されている画像をキャプチャする機能を有するCaptureボタンTp8を表示する。なお、表示部5は、CaptureボタンTp8によってキャプチャされた画像を、領域A23内に縮小表示する。
表示部5は、観察メニューM2の領域A25上方に、検査を終了し検査データを保存する機能を有するExam.EndボタンTeを表示する。画像表示制御部42は、このExam.EndボタンTeを常に操作可能、すなわち有効にしている。このため、磁界発生部2による磁界発生中、すなわちカプセル型内視鏡10の誘導操作中、あるいは、それ以外の状況でも検査データの確定(保存)を可能とする。これによって、磁界制御部8からの通信に障害が発生し、即時復帰できない場合などであっても、このExam.EndボタンTe選択によって、検査データを保護することが可能になる。なお、表示部5は、Exam.EndボタンTeの左側に、患者情報を登録し検査を開始する機能を有するAddPatientボタンTadを表示する。
また、本実施の形態1〜3においては、撮像部を複数有するカプセル型内視鏡10を用いた場合を例に説明したが、もちろん、図44に示すように、単数の撮像部11Aを有するカプセル型内視鏡410であってもよい。この場合、カプセル型筐体412は、筒状筐体412aの片側の開口端をドーム形状筐体12bで塞いた構成を有する。
また、本実施の形態1〜3においては、永久磁石19を用いたカプセル型内視鏡10を例に説明したが、もちろんこれに限らず、永久磁石19に代えて電磁石を備えたカプセル型内視鏡であってもよい。