JP4753370B2 - 塩ビ鋼板屋根の塗り替え工法 - Google Patents
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Description
すなわち、従来技術でも指摘されているように、塩化ビニル樹脂被膜に何らかの形で傷が生じると、この傷が原因となってチョーキングが発生する。チョーキングをそのままの状態にしておいて、この上から塗り替えの塗料を塗装したとしても、チョーキングの部分から直ぐに剥離してしまうため、塗り替え時にはチョーキングしている塗膜部分を完全に剥離させてから、塗り替え塗料を塗装する必要があった。また、チョーキング発生の原因となる塩ビ樹脂被膜上の傷も、放置しておけばいずれチョーキングが発生してしまうため、従来技術においてはバリヤコート塗布前に、傷口にアスファルト系テープ、又はアルミテープを貼付することにより、傷口を補修する工程が必要であると書かれている。
チョーキング部分の塗膜の完全剥離、かつ、塩化ビニル樹脂被膜のテープ補修は、非常な手間と時間がかかることであり、なおかつチョーキング部分を目視的に完全に剥離したと判断しても、微細なチョーキングが残留している場合があり、更に傷の補修を実施せずにチョーキングの剥離のみで処理を完了させた場合には、いずれ新たなチョーキングの発生により、塗り替え塗膜が剥離する可能性が高いため、従来方法においては、作業工数と時間がかかる割には信頼性に劣るという問題が残っていた。
本発明が解決しようとする課題は、背景技術で述べた問題点を解決することにある。
すなわち、(1)湿気硬化型ウレタン樹脂10〜55質量%、ケトン系溶剤あるいはエステル系溶剤から選ばれる1種類以上の溶剤35〜50質量%、芳香族系溶剤10〜20質量%を配合してなる下塗塗料をローラー塗装により少なくとも2回以上下地である塩ビ樹脂被膜にこすりつけるように塗装し、
(2)乾燥した下塗塗料塗膜に、弱溶剤系のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂から選ばれる樹脂による上塗塗料を塗装してなることを特徴とする、塩ビ鋼板屋根の塗り替え工法。
以下に詳細に説明する。
ウレタン樹脂塗料は、その硬化方式により、一液型と二液型に分けることができ、それぞれに長所、短所があるため用途に応じて使い分けられている。本発明においては、取扱や作業性が容易であり、かつ塗膜性能が優れている一液型の湿気硬化型ウレタン樹脂を使用する。
旧塗膜である塩ビ樹脂塗膜に含まれる可塑剤が移行することを防止するためには、上記の湿気硬化型ウレタン樹脂は10〜55質量%含有することが必要である。10質量%未満であると必要な塗膜性能を得ることができず、55質量%を超えた場合、配合量に比例した可塑剤移行防止効果は得られず、コスト的にはむしろ不利となるので、好ましくない。
下塗塗料は、ローラー塗装により、少なくとも2回以上下地である塩ビ樹脂被膜にこすりつけるように塗装することが必要である。塩ビ鋼板表面の塩ビ樹脂被膜がチョーキングしている場合には、ローラー塗装を特に強い圧力で塗装し、チョーキングしている塩ビ樹脂被膜と、その下層の塩ビ樹脂被膜とを、下塗塗料に含有した溶剤により一旦溶解させ、下塗塗料との親和性を向上させて、下塗塗料を強力に密着させる必要がある。
すなわち、従来はチョーキングが発生した塩ビ鋼板の被膜は、チョーキングを完全に除去した上でないと塗り替えを行なうことが出来なかったが、本発明による工法であれば、チョーキングした被膜を完全に除去する必要はなく、従来に比較すると工数、時間が大幅に短縮された塩ビ鋼板の塗り替えを実現したものである。
塩ビ鋼板の表面にはチョーキングがほぼ全面に発生し、各所にゴミ、土埃が付着、堆積していた。高圧水洗により、屋根材表面を洗浄し、ゴミ、土埃は完全に除去したが、チョーキングはほとんど残留していた。
下塗塗料塗膜1が乾燥した後、上塗塗料として、NAD系ウレタン樹脂塗料をエアレススプレー塗装機により塗装し、上塗塗料塗膜1を形成した。
下塗塗料塗膜2が乾燥した後、上塗塗料として、NAD系アクリル樹脂塗料をエアレススプレー塗装機により塗装し、上塗塗料塗膜2を形成した。
二液型エポキシプライマーを下塗塗料として上記のチョーキング残留塩ビ鋼板に、ローラーを使用して強く2回こすりつけるように塗装し、クリアの下塗塗料塗膜3を形成した。
下塗塗料塗膜3が乾燥した後、上塗塗料として、溶剤型ウレタン樹脂塗料をエアレススプレー塗装機により塗装し、上塗塗料塗膜3を形成した。
上記の実施例1において使用した下塗塗料1を、上記のチョーキング残留塩ビ鋼板に、エアスプレー塗装機を使用して塗装し、クリアの下塗塗料塗膜4を形成した。下塗塗料塗膜4が乾燥した後、上塗塗料として、NAD系シリコン樹脂塗料をエアレススプレー塗装機により塗装し、上塗塗料塗膜4を形成した。
実施例1〜比較例2の塗り替えを実施した塩ビ鋼板屋根材を2年間屋外暴露し、上塗塗料の塗膜表面を観察した。
実施例1、および実施例2は、塗膜表面に剥がれ、膨れ、傷などの異常は認められなかった。
比較例1は、チョーキングしていた層からエポキシプライマーによる下塗塗膜が剥離し、数箇所で剥がれていた。
比較例2は下塗塗料の密着不良が数箇所で発生し、膨れおよび剥がれが見られた。
Claims (1)
- (1)湿気硬化型ウレタン樹脂10〜55質量%、ケトン系溶剤あるいはエステル系溶剤から選ばれる1種類以上の溶剤35〜50質量%、芳香族系溶剤10〜20質量%を配合してなる下塗塗料をローラー塗装により少なくとも2回以上下地である塩ビ樹脂被膜にこすりつけるように塗装し、
(2)乾燥した下塗塗料塗膜に、弱溶剤系のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂から選ばれる樹脂による上塗塗料を塗装してなることを特徴とする、塩ビ鋼板屋根の塗り替え工法。
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