以下、本発明に係る空気圧−液圧変換式ブレーキ装置を適用した車両の一実施形態を図面を参照して説明する。図1はその車両の構成を示す概要図であり、図2は空気圧−液圧変換式ブレーキ装置の制動力制御装置の構成を示す概要図である。この車両Mは、車体後部に搭載した駆動源であるエンジン11の駆動力が後輪に伝達される形式のものである。
車両Mは、エンジン11、変速機12、ディファレンシャル13および左右駆動軸14a,14bを備えており、エンジン11の駆動力は、変速機12で変速されディファレンシャル13および左右駆動軸14a,14bを経て駆動輪である左右後輪Wrl,Wrrにそれぞれ伝達される。エンジン11は、エンジン11の燃焼室内に空気を流入する吸気管11aを備えており、吸気管11a内には、吸気管11aの開閉量を調整して同吸気管11aを通過する空気量を調整するスロットルバルブ15aが設けられている。
スロットルバルブ15aは、エンジン制御ECU17からの指令によるモータ15bの駆動によって開閉される。スロットルバルブ15aの開閉量はスロットル開度センサ15cによって検出されその検出信号がエンジン制御ECU17に送信されており、エンジン制御ECU17からの指令値となるようにフィードバック制御されている。エンジン制御ECU17は、基本的にはアクセル開度センサ16aが検出するアクセルペダル16の踏込み量を受信してその踏込み量に応じたスロットルバルブ15aの開閉量に相当する指令値をモータ15bに送信する。
また、エンジン11は、その回転数を検出するエンジン回転数検出手段であるエンジン回転数センサ11bを備えている。このエンジン回転数センサ11bは例えばエンジン11を構成するクランクのクランク角を検出するクランク角センサで構成されている。エンジン回転数センサ11bの検出信号はエンジン制御ECU17に送信されている。
変速機12は、エンジン11の駆動力を変速して駆動輪に出力する自動変速機であり、複数段(例えば4速)の前進段と後進一段の変速段を有するものである。変速機12は、いずれも図示しない自動変速機制御ECUと内蔵の油圧制御装置とによる制御で、運転者により選択されたレンジに応じた変速段の範囲で車両負荷と車速に基づき、変速を行うようになっている。
車両Mは、空気圧−液圧変換式ブレーキ装置を備えている。この空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、図1に示すように、圧縮空気供給源21から供給された圧縮空気を貯蔵するエアタンク22と、エアタンク22からの圧縮空気が供給されてその圧力(空気圧)に応じた液圧のブレーキ液を左右前輪Wfl,WfrのホイールシリンダWCfl,WCfrおよび左右後輪Wrl,WrrのホイールシリンダWCrl,WCrrにそれぞれ供給するエアマスタシリンダ23a,23bと、エアタンク22とエアマスタシリンダ23a,23bとの間にそれぞれ設けられてエアタンク22から供給される圧縮空気をブレーキペダル24の操作量に応じた圧力にて出力するブレーキバルブ25a,25bと、エアマスタシリンダ23a,23bとホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrとの間に設けられてホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに供給される液圧(すなわち車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの制動力)を制御する制動力制御装置26と、を備えている。
これにより、空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、ブレーキペダル24が踏込操作されてブレーキバルブ25a,25bが作動されると、操作量に応じた圧力(空気圧)の圧縮空気がエアタンク22からエアマスタシリンダ23a,23bに供給され、空気圧に応じた液圧がエアマスタシリンダ23a,23bから各車輪Wfl,Wfr,Wrl,WrrのホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに供給されて各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに制動力(ブレーキ力)を付与する。
圧縮空気供給源(例えばエアコンプレッサ)21は、エンジン11の駆動によって駆動されるものであり、取り込んだ空気を圧縮してエア管La1を介してエアタンク22の各圧力室22a,22bに圧送している。なお、空気圧が所定圧(所定圧幅)となるように圧縮空気供給源21の駆動が制御されている。エア管La1には、エアタンク22内の圧力であるエアタンク圧を検出するエアタンク圧検出手段Sptが設けられている。エアタンク圧検出手段Sptがエアタンク22内の圧力として検出した検出信号はECU50に送信されている。エアタンク圧検出手段Sptは圧力センサまたは圧力スイッチで構成されている。
エアタンクの各圧力室22a,22bは、エア管La2,La3を介してエアマスタシリンダ23a,23bの空気圧室23a1,23b1にそれぞれ接続されている。エアマスタシリンダ23a,23bは、図2に示すように、空気で満たされる空気圧室23a1,23b1、ブレーキ液で満たされる液圧室23a2,23b2、エアマスタシリンダ23a,23b内を空気圧室23a1,23b1と液圧室23a2,23b2とに液密に区画し、かつ摺動するピストン部23a3,23b3、およびピストン部23a3,23b3を空気圧室23a1,23b1方向に付勢するスプリング23a4,23b4を備えている。本実施形態の空気圧−液圧変換式ブレーキ装置のブレーキ配管系は前後輪配管方式にて構成されており、エアマスタシリンダ23a,23bの各液圧室23a2,23b2は、前輪および後輪ブレーキ配管系Lf,Lrにそれぞれ接続されている。前輪ブレーキ配管系Lfは、液圧室23a2と左右前輪Wfl,WfrのホイールシリンダWCfl,WCfrとをそれぞれ連通するものであり、後輪ブレーキ配管系Lrは、液圧室23b2と左右後輪Wrl,WrrのホイールシリンダWrl,Wrrとをそれぞれ連通するものである。
エア管La2,La3には、図1に示すように、ブレーキバルブ25a,25bがそれぞれ設けられている。ブレーキバルブ25a,25bは、ブレーキペダル24の操作量に応じて内蔵の開閉弁が開閉し、エアタンク22a,22bからの圧縮空気をブレーキペダル24の操作量に応じた圧力にて供給している。ブレーキバルブ25a,25bの出力ポートに接続されたエア管La2,La3には、ブレーキバルブ25a,25bの出力ポートへの圧縮空気の流入を規制する逆止弁La2a,La3aが設けられている。
また、エア管La2,La3には、図1に示すように、ブレーキバルブ25a,25bをバイパスするエア管La4,La5が配設されている。エア管La4,La5には、ブレーキバルブ25a,25bにそれぞれ並設されてブレーキペダル24の操作と関係なくエアタンク22の圧力室22a,22bとエアマスタシリンダ23a,23bとの連通/遮断を切り換えるエアバルブ27a,27bがそれぞれ設けられている。エアバルブ27a,27bは、2位置弁の電磁開閉弁であり、ソレノイド27a1,27b1への通電・非通電に応じて開状態位置・閉状態位置(図示位置)が切り替えられるものである。エアバルブ27aは、通常時(非通電時)には閉状態位置にあり、エア管La4経由の圧力室22aとエアマスタシリンダ23aとの連通を遮断する。エアバルブ27aは、通電時には開状態位置にあり、エア管La4経由の圧力室22aとエアマスタシリンダ23aとを連通する。エアバルブ27bは、通常時(非通電時)には閉状態位置にあり、エア管La5経由の圧力室22bとエアマスタシリンダ23bとの連通を遮断する。エアバルブ27bは、通電時には開状態位置にあり、エア管La5経由の圧力室22bとエアマスタシリンダ23bとを連通する。
なお、エアバルブ27a,27bは、開状態から閉状態に戻ったとき、エアマスタシリンダ23bとの間のエア管La4,La5に残存する圧力が逃げるための排気機構(図示省略)を備えている。また、エアバルブ27a,27bの出力ポートに接続されたエア管La4,La5には、エアバルブ27a,27bの出力ポート側への圧縮空気の流入を規制する逆止弁La4a,La5aが設けられている。
エアバルブ27a,27bは、ブレーキトラクション制御を行うときに、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに制動力を付与するためのものである。ブレーキトラクション制御とは、車両Mの発進時に駆動輪のスリップを検出すると、その駆動輪に制動力を付与してスリップしないようにする制御である。すなわち、車両Mの発進時に駆動輪のスリップが検出されると、エアバルブ27a,27bが開状態とされる。これにより、エアタンク22の圧力室22a,22bの圧縮空気がエア管La4,La5を通ってエアマスタシリンダ23a,23bの空気圧室23a1,23b1にそれぞれ流入する。空気圧室23a1,23b1の空気圧によってピストン部23a3,23b3がそれぞれ図示左側に押圧されると、これにより液圧室23a2,23b2のブレーキ液が流入した圧縮空気に応じた液圧がホイールシリンダWCrl,WCrrにそれぞれ供給される。したがって、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに制動力が付与される。その後、車速センサ33などによって車両Mの発進を検出すると、エアバルブ27a,27bが閉状態とされる。
ソレノイド27a1,27b1の一方は電流検出素子28a,28bを介して直流電源Vにそれぞれ接続されており、他方はスイッチング素子29a,29bを介してそれぞれ接地されている。電流検出素子28a,28bは、例えばシャント抵抗にて構成されている。シャント抵抗には電流検出回路31が接続されており、電流検出回路31はシャント抵抗の電圧値を検出してソレノイド27a1,27b1に通電される電流値を検出しその検出結果をECU50に送信するようになっている。スイッチング素子29a,29bは、例えばMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)にて構成されている。スイッチング素子29a,29bの各ドレインは、ソレノイド27a1,27b1および電流検出素子28a,28bを介して直流電源Vにそれぞれ接続され、各ゲートは駆動回路32にそれぞれ接続され、各ソースは接地されている。駆動回路32は、ECU50からの開閉指令に応じた開閉信号をスイッチング素子29a,29bに送信してその開閉を制御する。すなわち、開信号によりソレノイド27a1,27b1への通電を実施し閉信号によりソレノイド27a1,27b1への非通電を実施する。
さらに、エア管La4,La5には、逆止弁La4a,La5aとエアバルブ27a,27bとの各間にエアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbがそれぞれ設けられている。エアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbは、エアバルブ27a,27bの出力側のエア管La4,La5内の圧力すなわちエアバルブ27a,27bの出力圧力をそれぞれ検出するものである。エアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbがそれぞれ出力圧力として検出した検出信号はECU50に送信されている。エアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbは圧力センサまたは圧力スイッチで構成されている。
制動力制御装置26は、図2に示すように、エアマスタシリンダ23a,23bとホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrとの間に設けられてホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに供給される液圧を制御する。各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrは、各キャリパCLfl,CLfr,CLrl,CLrrに設けられており、液密に摺動するピストン(図示省略)を収容している。各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧が供給されると、各ピストンが一対のブレーキパッドを押圧して各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体回転するディスクロータDRfl,DRfr,DRrl,DRrrを両側から挟んでその回転を停止するようになっている。なお、本実施形態においては、ディスク式ブレーキを採用するようにしたが、ドラム式ブレーキを採用するようにしてもよい。この場合、各ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧が供給されると、各ピストンが一対のブレーキシューを押圧して各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrと一体回転するブレーキドラムの内周面に当接してその回転を停止するようになっている。
制動力制御装置26は、上述した前輪および後輪ブレーキ配管系Lf,Lrを備えている。前輪ブレーキ配管系Lfは、第1〜第6油路Lf1〜Lf6から構成されている。第1油路Lf1は一端がエアマスタシリンダ23aに接続されている。第1油路Lf1上には、坂道発進補助弁41が配設されている。第2油路Lf2は、一端が第1油路Lf1に接続され他端がホイールシリンダWCflに接続されている。第2油路Lf2上には、保持弁42が配設されている。第3油路Lf3は、一端が第1油路Lf1に接続され他端がホイールシリンダWCfrに接続されている。第3油路Lf3上には、保持弁43が配設されている。第4油路Lf4は、一端が第1油路Lf1に接続され他端が内蔵リザーバタンク45に接続されている。第4油路Lf4上には、ポンプ44が配設されている。第2および第4油路Lf2,Lf4の間には、両油路Lf2,Lf4を接続する第5油路Lf5が設けられている。第5油路Lf5上には、減圧弁46が配設されている。第3および第4油路Lf3,Lf4の間には、両油路Lf3,Lf4を接続する第6油路Lf6が設けられている。第6油路Lf6には、減圧弁47が配設されている。
坂道発進補助弁41は、エアマスタシリンダ23aとホイールシリンダWCfl,WCfrとを連通・遮断するノーマルオープン型の電磁開閉弁である。坂道発進補助弁41は、ECU50の指令に応じて非通電されると連通状態(図示状態)にまた通電されると遮断状態に制御できる2位置弁として構成されている。坂道発進補助弁41は、車両Mが坂道発進補助制御を実施する際に通電されてエアマスタシリンダ23aとホイールシリンダWCfl,WCfrとを遮断する。坂道発進補助弁41には、エアマスタシリンダ23aからホイールシリンダWCfl,WCfrへの流れを許容する逆止弁41aが並列に設けられている。
保持弁42は、エアマスタシリンダ23aとホイールシリンダWCflを連通・遮断するノーマルオープン型の電磁開閉弁である。保持弁43は、エアマスタシリンダ23aとホイールシリンダWCfrを連通・遮断するノーマルオープン型の電磁開閉弁である。保持弁42,43は、ECU50の指令に応じて非通電されると連通状態(図示状態)にまた通電されると遮断状態に制御できる2位置弁として構成されている。保持弁42,43にはホイールシリンダWCfl,WCfrからエアマスタシリンダ23aへの流れを許容する逆止弁42a,43aがそれぞれ並列に設けられている。
ポンプ44は、吸い込み口がブレーキ液を貯蔵する内蔵リザーバタンク45に連通し、吐出口が逆止弁48を介してエアマスタシリンダ23aおよびホイールシリンダWCfl,WCfrに連通するものである。ポンプ44は、ECU50の指令に応じた電動モータ44aの作動によって駆動されている。ポンプ44は、ABS制御の減圧モード時においては、ホイールシリンダWCfl,WCfr内のブレーキ液または内蔵リザーバタンク45内に貯められているブレーキ液を吸い込んでエアマスタシリンダ23aに戻している。なお、ポンプ44が吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために、第4油路Lf4のポンプ44の上流側にはダンパ49が配設されている。
減圧弁46は、ホイールシリンダWCflと内蔵リザーバタンク45を連通・遮断するノーマルクローズ型の電磁開閉弁である。減圧弁47は、ホイールシリンダWCfrと内蔵リザーバタンク45を連通・遮断するノーマルクローズ型の電磁開閉弁である。減圧弁46,47は、ECU50の指令に応じて非通電されると遮断状態(図示状態)にまた通電されると連通状態に制御できる2位置弁として構成されている。
また、前輪ブレーキ配管系Lfの第1油路Lf1には、エアマスタシリンダ23aの液圧室23a2内の液圧を検出する圧力検出手段(圧力センサ)Spmが設けられており、この検出信号はECU50に送信されるようになっている。この液圧はブレーキペダル24の踏込操作状態を示すものである。なお、圧力センサSpmは後輪ブレーキ配管系Lrの第1油路Lr1に設けるようにしてもよい。
さらに、後輪ブレーキ配管系Lrは前述した前輪ブレーキ配管系Lfと同様な構成であり、第1〜第6油路Lr1〜Lr6を備えている。第1油路Lr1は一端がエアマスタシリンダ23bに接続されている。第1油路Lr1上には、坂道発進補助弁41と同様な坂道発進補助弁51が配設されている。第2油路Lr2は、一端が第1油路Lr1に接続され他端がホイールシリンダWCrlに接続されている。第2油路Lr2上には、保持弁42および逆止弁42aと同様な保持弁52および逆止弁52aが配設されている。第3油路Lr3は、一端が第1油路Lr1に接続され他端がホイールシリンダWCrrに接続されている。第3油路Lr3上には、保持弁43および逆止弁43aと同様な保持弁53および逆止弁53aが配設されている。第4油路Lr4は、一端が第1油路Lr1に接続され他端が内蔵リザーバタンク55に接続されている。第4油路Lr4上には、ダンパ49、逆止弁48およびポンプ44と同様なダンパ59、逆止弁58およびポンプ54が配設されている。第2および第4油路Lr2,Lr4を接続する第5油路Lr5には、減圧弁46と同様な減圧弁56が配設されている。第3および第4油路Lr3,Lr4を接続する第6油路Lr6には、減圧弁47と同様な減圧弁57が配設されている。
また、制動力制御装置26は、液圧調整手段(液圧調整ユニット)Bを有している。液圧調整手段Bは、車両Mの制動時に車輪速検出手段Sfl,Sfr,Srl,Srrで検出された車輪速に基づいて各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrのホイールシリンダ圧の減圧、保持および増圧を繰り返し実行するいわゆるABS制御を実行するものであり、保持弁42,43,52,53、減圧弁46,47,56,57、内蔵リザーバタンク45,55、ポンプ44,54、および電動モータ44aから構成されている。
また、空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、ブレーキペダル24に設けられて、ブレーキペダル24が踏まれるとオンされ、踏み込みが解除されるとオフされるストップスイッチ24aを備えている。このストップスイッチ24aのオン・オフ信号はECU50に送信されるようになっている。さらに、空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの付近に設けられて、それらの車輪速度をそれぞれ検出する車輪速検出手段である車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrを備えている。それらの車輪速度を示す検出信号はECU50に送信されるようになっている。
さらに、空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、車体に設けられて、車両Mの速度を検出する車速検出手段(車速センサ)33を備えている。車速を示す検出信号はECU50に送信されるようになっている。さらに、空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、図示しないブレーキ機構に接続されたパーキングブレーキ34を備えるとともに、このパーキングブレーキ34が作動されるとオンされ、作動が解除されるとオフされるパーキングブレーキ状態検出手段(パーキングブレーキスイッチ)34aを備えている。このパーキングブレーキスイッチ34aのオン・オフ信号はECU50に送信されるようになっている。さらに、空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、イグニッションスイッチ35を備えている。イグニッションスイッチ35のオン・オフ信号はECU50に送信されるようになっている。
また、空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、坂道発進補助機能を有している。空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、この機能を有効とするか否かを選択的に設定する坂道発進補助スイッチ36を備えている。坂道発進補助スイッチ36がオンのときは坂道発進補助機能が有効状態となり、所定の条件例えば車両Mが停止した場合に車輪への制動力を維持して坂道発進補助機能が作動する。坂道発進補助スイッチ36がオフのときは車輪への制動力を解除して坂道発進補助機能が無効状態となる。坂道発進補助スイッチ36のオン・オフ状態はECU50に送信されるようになっている。
また、空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、警報装置37を備えている。警報装置37は、電球、LEDなどを点灯したり、液晶パネル、CRTなどの表示画面に警報メッセージを表示したりすることにより、運転者への警報を行うものである。また、警報装置37は、ブザーを鳴動したり、スピーカから警報アナウンスを知らせたりして、警報を行うもので構成するようにしてもよい。この警報装置37は、ECU50からの指令を受けて警報を行うものである。
さらに、空気圧−液圧変換式ブレーキ装置は、上述した各圧力検出手段Spt,Spva,Spvb,Spm、ストップスイッチ24a、電流検出回路31、駆動回路32、車速検出手段33、パーキングブレーキスイッチ34a、イグニッションスイッチ35、坂道発進補助スイッチ36、警報装置37、電動モータ44a、各電磁弁42,43,46,47,52,53,56,57、および車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrに接続されたECU(電子制御ユニット)50を備えている。
ECU50は、マイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、液圧調整手段Bを作動させて車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrをロックさせないで安定したブレーキを実施するABS制御を実施する。また、ブレーキペダル24の踏込操作によらないでエアバルブ27a,27bを開状態としてホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧を供給することにより車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに制動力を付与して坂道発進する際の車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの後転を抑制する坂道発進補助制御を実施する。さらに図3のフローチャートに対応したプログラムを実行して、車両Mが停止状態である場合に、エアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbによって検出されたエアバルブ27a,27bの出力圧力に基づいてエアバルブ27a,27bが正常に作動するか否かを診断する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
また、ECU50は、エンジン制御ECU17と相互に通信可能に接続されている。ECU50は、ECU50が実施する制御に必要なパラメータ(例えばエンジン回転数)をエンジン制御ECU17から受信している。また、逆にエンジン制御ECU17が実施する制御に必要なパラメータをエンジン制御ECU17に送信している。
このように構成された空気圧−液圧変換式ブレーキ装置の基本動作について説明する。まず通常のブレーキ時について説明する。通常のブレーキ時には、エアバルブ27a,27bは閉状態であるので、ブレーキペダル24が踏み込まれると、ブレーキバルブ25a,25bがブレーキペダル24の踏込操作量に応じて開かれて、エアタンク22の圧力室22a,22bの圧縮空気がエア管La2,La3を通ってエアマスタシリンダ23a,23bの空気圧室23a1,23b1にそれぞれ流入する。このとき、流入する圧縮空気の圧力(空気圧)は、ブレーキペダル24の操作量に応じた圧力となっている。空気圧室23a1,23b1の空気圧によってピストン部23a3,23b3がそれぞれ図示左側に押圧されると、これにより液圧室23a2,23b2のブレーキ液が流入した圧縮空気に応じた液圧がホイールシリンダWCfl,WCfrおよびホイールシリンダWCrl,WCrrにそれぞれ供給される。これにより、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrにブレーキペダル24の踏込操作量に応じた制動力が付与される。
また、ブレーキペダル24の踏込が解除されると、ブレーキバルブ25a,25bが閉じられて、圧力室22a,22bと空気圧室23a1,23b1が遮断される。空気圧室23a1,23b1は図示しない機構によって大気と連通し空気圧室23a1,23b1内の空気が大気圧となる。これにより、ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに供給されていた液圧が液圧室23a2,23b2に戻る。これにスプリング23a4,23b4の付勢力も加わって、ピストン部23a3,23b3がそれぞれ図示右側に押圧され、制動する前の位置に戻る。
このような制動中において、ECU50は、車体速度および各車輪速度に基づいて車輪のロック状態を監視しており、ロック状態にあればABS制御を実行し、ロック状態になければABS制御を実行しない。ロック状態とは、車輪がロックした状態だけでなく、車輪のスリップ量が所定値より大きい状態を含むものとする。ABS制御とは、車両Mの制動時に車輪速検出手段Sfl,Sfr,Srl,Srrで検出された車輪速に基づいて各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrのホイールシリンダ圧の減圧、保持および増圧を繰り返し実行してホイールシリンダ圧を自動的にコントロールすることにより、車輪と路面間の摩擦力を確保するものである。
また、車両Mが坂道などで一旦停止してその後発進する際、坂道発進補助機能が有効になっている場合には、ECU50は、坂道発進補助制御を実施する。すなわち、例えば走行している車両Mが停止したことを検出すると、坂道発進補助弁41,51を閉状態とする。これにより、各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrへの停止した時の制動力の付与が維持される。その後、坂道発進補助スイッチ36をオフにすると、坂道発進補助弁41,51を開状態とする。
次に、上述したエアバルブ27a,27bの診断について図3および図4のフローチャートに沿って説明する。ECU50は、ステップ102にてイグニッションスイッチ35がオンされたか否かを判定し、イグニッションスイッチ35がオンされると、ステップ102にて「YES」と判定してプログラムをステップ104以降に進める。イグニッションスイッチ35がオフのままであると、ステップ102の処理を繰り返し実行する。
ECU50は、ステップ104において、車両Mが停止状態であるか否かを判定する(停車状態判定手段)。具体的には、パーキングブレーキ状態検出手段であるパーキングブレーキスイッチ34aがパーキングブレーキ34のオン状態を停車判定時間(例えば1秒)以上検出し続けた場合、車両Mが停止状態であると判定する。また、車速検出手段である車速センサ33が速度零を停車判定時間以上検出し続けた場合、車両Mが停止状態であると判定するようにしてもよい。いずれの場合も、イグニッションスイッチ35がオンされてから時間が計測される。これにより、車両Mの停止状態を確実に判定することができる。
車両Mが停止状態でない場合には、ECU50は、ステップ104において「NO」と判定し本フローチャートを終了する。車両Mが停止状態である場合には、ステップ104において「YES」と判定しエアバルブ診断前の事前チェックを実施する。すなわち、エアタンク22のエアタンク圧確認と圧縮空気供給源確認を実施する。まず、ECU50は、ステップ106において、エアタンク圧検出手段Sptによってエアタンク圧を検出し、この検出されたエアタンク圧がエアタンク圧判定値KP1以上であるか否かを確認する(エアタンク圧確認手段)。エアタンク圧判定値KP1は、エアバルブ27a,27bの診断に必要な圧縮空気の量に設定されている。これにより、エアタンク圧がエアタンク圧判定値KP1未満であれば、エアバルブ27a,27bの診断が確実に実施できないので、ステップ106において「NO」と判定し本フローチャートを終了する。一方、エアタンク圧がエアタンク圧判定値KP1以上であれば、エアバルブ27a,27bの診断が確実に実施できるので、ステップ106において「YES」と判定しプログラムをステップ108に進める。
ECU50は、ステップ108において、圧縮空気供給源21が正常に駆動しているか否かを確認する(圧縮空気供給源確認手段)。すなわち、圧縮空気供給源21を駆動するエンジン11の回転数をエンジン制御ECU17から入力し、エンジン11の回転数が所定回転数R1以上であるか否かを判定する。エンジン11の回転数はエンジン回転数センサ11bによって検出されている。これにより、エンジン11の回転数が所定回転数R1未満であれば、圧縮空気供給源21が正常に駆動していないため、エアバルブ27a,27bの診断が確実に実施できないおそれがあるので、ステップ108において「NO」と判定し本フローチャートを終了する。一方、エンジン11の回転数が所定回転数R1以上であれば、圧縮空気供給源21が正常に駆動しているため、エアバルブ27a,27bの診断が確実に実施できるので、ステップ108において「YES」と判定しプログラムをステップ112に進める。
すなわち、ECU50は、車両Mが停止状態であると判定し(ステップ104)、エアタンク圧がエアタンク圧判定値KP1以上であると確認し(ステップ106)、かつ、圧縮空気供給源21が正常に駆動していると確認した(ステップ108)場合に、ステップ112以降の処理によるエアバルブの診断を開始する。まず、ECU50は、ステップ112において、エアバルブ27a,27bのソレノイド27a1,27b1へ通電し(励磁電圧をオンし)、エアバルブ27a,27bを開状態とする。
そして、ブレーキペダル24が踏み込まれておらず(ブレーキオフ状態)、かつ、上述したブレーキトラクション制御が実施されていない場合には、ECU50は、ステップ150,152で「YES」、「NO」と判定し、ステップ114で液圧制御手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧を付与しないようにする。その後、プログラムをステップ116以降に進めてエアバルブの実質的な診断を開始する。ステップ150では、ストップスイッチ24aの検出信号からブレーキペダル24がオフであるか否かを判定する。ステップ152では、ブレーキトラクション制御が実施されているか否かを判定する。
また、ブレーキペダル24が踏み込まれておらず(ブレーキオフ状態)、かつ、ブレーキトラクション制御が実施されている場合には、ECU50は、ステップ150,152でそれぞれ「YES」と判定し、ステップ154で液圧制御手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧を直接付与するようにする。その後、エアバルブの実質的な診断を開始する。
また、ブレーキペダル24が踏み込まれている(ブレーキオン状態)場合には、ECU50は、ステップ150で「NO」と判定し、ステップ154で液圧制御手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧を直接付与するようにする。その後、エアバルブの実質的な診断を開始する。
ECU50は、上述したステップ114において、具体的には、保持弁42,43,52,53を通電し閉状態にし、減圧弁46,47,56,57を非通電し閉状態とする。これにより、エアバルブの診断中においてエアバルブ27a,27bが開状態である場合、車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに不要なブレーキ力が付与されるのを確実に防止することができる。
また、ECU50は、上述したステップ154において、具体的には、保持弁42,43,52,53を通電を止めて開状態にし、減圧弁46,47,56,57を非通電し閉状態とする。これにより、エアバルブの診断中においてエアバルブ27a,27bが開状態である場合、車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに必要なブレーキ力が付与される。
ECU50は、ステップ116以降において、エアバルブ27a,27bの実質的な診断である電気的チェックとメカ的チェックを実施する。まず電気的チェックについて説明する。ECU50は、電流検出素子28aと電流検出回路31によってエアバルブ27a,27bのソレノイド27a1,27b1に流れる電流を検出している(ステップ116)。エアバルブ27a,27bへの通電を開始した時点から微小時間経過するまでに電流を検出する場合には、エアバルブ27a,27bは電気的に正常であると判定(診断)する。一方、エアバルブ27a,27bへの通電を開始した時点から微小時間経過するまでに電流を検出しない場合には、エアバルブ27a,27bはソレノイド27a1,27b1の断線など電気的に正常でない(異常である)と判定(診断)する。微小時間は、エアタンク22からエアマスタシリンダ23a,23bに圧縮空気が実質的に移動しない時間に設定されており、例えば0.002秒程度である。
ECU50は、ステップ116,126にて「NO」、「YES」と判定して電気的に正常でないと判定すると、エアバルブ27a,27bのソレノイド27a1,27b1へ通電を止めて(励磁電圧をオフし)、エアバルブ27a,27bを閉状態とする(ステップ128)。そして、エアバルブ27a,27bが正常に閉状態となったか否かを確認する(ステップ129)。
ECU50は、ステップ129において、図4に示すフローチャートに沿ってエアバルブ閉状態確認ルーチン(エアバルブ閉状態確認手段)を実施する。エアバルブ27a,27bが励磁電圧オフによって正常に閉状態となれば、エア管La4,La5のエアバルブ27a,27bと逆止弁La4a,La5aとの間の圧力が図示しない排気機構を通って抜ける。一方閉状態とならないで開状態のままであれば、エア管La4,La5のエアバルブ27a,27bと逆止弁La4a,La5aとの間の圧力は残存する。
そこで、ECU50は、ステップ202において、エアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbによって検出されたエアバルブの出力圧力が第2所定時間以上継続してエアバルブ閉異常判定値(判定圧)以上となるか否かを判定する。すなわち、ECU50は、励磁電圧がオフであるにも拘わらず、エアバルブの出力圧力が第2所定時間以上継続してエアバルブ閉異常判定値以上である場合(エアバルブが閉じない場合)には、「YES」と判定してプログラムをステップ208以降に進める。そして、ECU50は、液圧制御手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧が直接付与されるようにする。具体的には、保持弁42,43,52,53への通電を止めて保持弁42,43,52,53を開状態にし、減圧弁46,47,56,57を非通電し閉状態とする(ステップ208)。そして、ECU50は、エアバルブ27a,27bが正常に閉じられない旨を警報装置37によって警告する(ステップ210)。その後、プログラムをステップ212に進めて本フローチャートを終了する。
また、ECU50は、励磁電圧がオフであるにも拘わらず、エアバルブの出力圧力が第2所定時間以上継続してエアバルブ閉異常判定値以上でない場合(例えば、エアバルブの出力圧力が第2所定時間以内にエアバルブ閉異常判定値未満となって第3所定時間に渡って脈動するような場合)には、ステップ202で「NO」と判定してプログラムをステップ204に進める。ステップ204においては、ECU50は、エアバルブの出力圧力が第2所定時間より長い第3所定時間以上断続してエアバルブ閉異常判定値以上となる場合には、「YES」(エアバルブは正常に閉じられない)と判定してプログラムをステップ208以降に進める。
また、ECU50は、エアバルブの出力圧力が第2所定時間より長い第3所定時間以上断続してエアバルブ閉異常判定値以上とならない場合、すなわち、第2所定時間経過まではエアバルブの出力圧力がエアバルブ閉異常判定値未満であり、かつ第3所定時間を経過してもエアバルブの出力圧力がエアバルブ閉異常判定値未満である場合には、「NO」(エアバルブは正常に閉じられている)と判定してプログラムをステップ206に進めて本ルーチンを一旦終了する。
そして、ECU50は、プログラムを図3のステップ130以降に進めて、液圧制御手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧が直接付与されるようにする。具体的には、保持弁42,43,52,53への通電を止めて保持弁42,43,52,53を開状態にし、減圧弁46,47,56,57を非通電し閉状態とする(ステップ130)。そして、ECU50は、エアバルブ27a,27bが電気的に正常でない旨を警報装置37によって警告する(ステップ132)。その後、プログラムをステップ134に進めて本フローチャートを終了する。
ECU50は、ステップ116にて「YES」と判定して電気的に正常であると判定すると、エアバルブ27a,27bのメカ的チェックを実施する。すなわち実際にエアバルブ27a,27bが開くか否かをチェックする。ECU50は、エアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbによってエアバルブ27a,27bの出力圧力を検出し、この検出されたエアバルブ27a,27bの出力圧力に基づいてエアバルブ27a,27bが正常に作動するか否かを診断する(ステップ118)。具体的には、エアバルブ27a,27bを開状態とした時点から第1所定時間以内に、エアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbによって検出されたエアバルブ27a,27bの出力圧力がエアバルブ出力圧判定値KP2以上となるか否かを判定することにより、エアバルブ27a,27bが正常に作動するか否かを診断する。すなわち、エアバルブ27a,27bへの通電を開始した時点から第1所定時間が経過するまでにエアバルブ出力圧判定値KP2以上の出力圧力を検出する場合には、エアバルブ27a,27bは、支障なく開けることができるのでメカ的に正常であると判定(診断)する。第1所定時間は、微小時間より十分長い値に設定されており、エアタンク22からの圧縮空気の圧力をエアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbで検出するのに必要な時間に設定されている。
一方、エアバルブ27a,27bへの通電を開始した時点から第1所定時間経過するまでにエアバルブ出力圧判定値KP以上の出力圧力を検出しない場合には、エアバルブ27a,27bは駆動部分にゴミなどの異物が挟まる、駆動部分が接着するなどメカ的に正常でない(異常である)と判定(診断)する。
ECU50は、ステップ118,136にて「NO」、「YES」と判定してメカ的に正常でないと判定すると、エアバルブ27a,27bのソレノイド27a1,27b1へ通電を止めて(励磁電圧をオフし)、エアバルブ27a,27bを閉状態とする(ステップ140)。そして、液圧制御手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧が直接付与されるようにする。具体的には、保持弁42,43,52,53への通電を止めて保持弁42,43,52,53を開状態にし、減圧弁46,47,56,57を非通電し閉状態とする(ステップ140)。そして、ECU50は、エアバルブ27a,27bが正常でない旨を警報装置37によって警告する(ステップ144)。その後、プログラムをステップ134に進めて本フローチャートを終了する。
ECU50は、ステップ118にて「YES」と判定してメカ的にも正常であると判定すると、エアバルブ27a,27bは正常であると判定(診断)する。そして、エアバルブ27a,27bのソレノイド27a1,27b1へ通電を止めて(励磁電圧をオフし)、エアバルブ27a,27bを閉状態とする(ステップ120)。そして、上述したステップ129と同様に、エアバルブ27a,27bが正常に閉状態となったか否かを確認する(ステップ121)。
ECU50は、ステップ121において、図4に示すフローチャートに沿ってエアバルブ閉状態確認ルーチン(エアバルブ閉状態確認手段)を実施する。ECU50は、上述したステップ202,204の各判定を実施して、エアバルブ27a,27bが正常に閉じられていれば、プログラムをステップ206に進めて本ルーチンを終了しステップ122に進める。そして、液圧制御手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧が直接付与されるようにする。具体的には、保持弁42,43,52,53への通電を止めて保持弁42,43,52,53を開状態にし、減圧弁46,47,56,57を非通電し閉状態とする(ステップ122)。そして、ECU50は、プログラムをステップ124に進めて本フローチャートを終了する。
エアバルブ27a,27bが正常に閉じられていなければ、プログラムをステップ208以降に進める。そして、ECU50は、液圧制御手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧が直接付与されるようにする。具体的には、保持弁42,43,52,53への通電を止めて保持弁42,43,52,53を開状態にし、減圧弁46,47,56,57を非通電し閉状態とする(ステップ208)。そして、ECU50は、エアバルブ27a,27bが正常に閉じられない旨を警報装置37によって警告する(ステップ210)。その後、プログラムをステップ212に進めて本フローチャートを終了する。
上述した説明から明らかなように、本実施形態によれば、エアバルブ27a,27bの出力圧力に基づいてエアバルブ27a,27bが正常に作動するか否かを診断する(ステップ118)ので、実際に検出したエアバルブ27a,27bの出力圧力に基づいて確実にエアバルブ27a,27bを診断することができる。また、車両Mが停止状態である場合に、エアバルブ27a,27bの出力圧力に基づいてエアバルブ27a,27bが正常に作動するか否かを診断するので、すなわち車両Mの停止中にエアバルブ27a,27bを診断するので、ホイールシリンダ圧が発生しても操作者に違和感を生じさせないし、またホイールシリンダ圧の発生によって車輪に制動力を付与しても車両の走行・停止に支障を来たすことなくエアバルブ27a,27bを診断することができる。
また、エアバルブ27a,27bを開状態としてその開状態とした時点からエアタンク22からの圧縮空気の圧力をエアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbで検出するのに必要な時間に設定された第1所定時間以内に、エアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbによって検出されたエアバルブ27a,27bの出力圧力がエアバルブ出力圧判定値KP2以上となるか否かを判定することにより、エアバルブ診断手段(ステップ118,136)はエアバルブ27a,27bが正常に作動するか否かを診断するので、不要なブレーキ力の発生をできるだけ抑制することができる。
また、停車状態判定手段(ステップ104)が車両Mが停止状態であると判定し、かつ、エアタンク圧確認手段(ステップ106)がエアタンク圧がエアバルブの診断に必要な圧縮空気の量に設定されているエアタンク圧判定値KP1以上であると確認した場合に、エアバルブ診断手段(ステップ118,136)はエアバルブ27a,27bが正常状態であるか否かを診断するので、診断の途中で圧縮空気が不足することなく確実に診断を実施することができる。
また、停車状態判定手段(ステップ104)が車両Mが停止状態であると判定し、エアタンク圧確認手段(ステップ106)がエアタンク圧がエアタンク圧判定値KP1以上であると確認し、かつ、圧縮空気供給源確認手段(ステップ108)が圧縮空気供給源21が正常に駆動していると確認した場合に、エアバルブ診断手段(ステップ118,136)はエアバルブ27a,27bが正常状態であるか否かを診断する。これにより、エアタンクの残存量がぎりぎりの場合に診断時間が長くなって残存量が減少した場合でも、圧縮空気供給源21が圧縮空気を補給するので、診断の途中で圧縮空気が不足することなく確実に診断を実施することができる。
また、エアバルブ27a,27bを開状態としてその開状態とした時点から第1所定時間より長い第2所定時間を経過してもエアバルブ診断手段(ステップ118,136,138)による診断がなされない場合には、エアバルブ診断手段はエアバルブ27a,27bが異常であると診断し、エアバルブ27a,27bを閉状態としてエアバルブ診断手段による診断を終了するので、確実に診断を完了することができ、また不要なブレーキ力の発生をできるだけ抑制することができる。
また、パーキングブレーキ状態検出手段34aがパーキングブレーキ34のオンを停車判定時間以上検出し続けた場合、停車状態判定手段(ステップ104)は車両Mが停止状態であると判定するので、既存の構成を利用して確実に停車状態を判定することができる。
また、車速検出手段33が速度零を停車判定時間以上検出し続けた場合、停車状態判定手段(ステップ104)は車両Mが停止状態であると判定するので、既存の構成を利用して確実に停車状態を判定することができる。
また、エアバルブ診断手段(ステップ118,136,138)による診断中においてブレーキペダル24が踏込操作されていない場合(ステップ110にてNOと判定し)、液圧調整手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧が付与されないようにする(ステップ114)ので、車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに不要なブレーキ力が付与されるのを確実に防止することができる。
また、エアバルブ診断手段(ステップ118,136,138)による診断中においてエアバルブ27a,27bが開状態である場合、液圧調整手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧が付与されないようにするので、車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに不要なブレーキ力が付与されるのを確実に防止することができる。
また、停車状態判定手段(ステップ104)が車両Mが停止状態であると判定し、かつ、エアタンク圧確認手段(ステップ106)がエアタンク圧がエアタンク圧判定値KP1以上であると確認した場合に、エアバルブ診断手段(ステップ118,136)が、エアバルブ27a,27bを開状態としてその開状態とした時点から第1所定時間以内にエアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbによって検出されたエアバルブ27a,27bの出力圧力がエアバルブ出力圧判定値KP2以上となるか否かを判定することにより、エアバルブ27a,27bが正常に作動するか否かを診断する。このようなエアバルブ診断手段による診断中は、ホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧の発生を許容しない所定条件の場合(例えばブレーキペダル24がオフである場合、エアバルブ27a,27bが開状態である場合など)、液圧調整手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに液圧が付与されないようにする。これにより、車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに不要なブレーキ力が付与されるのを確実に防止した上で、車両Mの停止中にエアバルブ27a,27bを確実に診断することができる。
また、前述のような診断中に、ブレーキペダル24が踏込操作されると、液圧調整手段Bを制御してエアマスタシリンダ23a,23bからの液圧がホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに直接付与されるようにするので、診断を確実に停止して操作者によるブレーキ操作に応じた車両の停止を支障を来たすことなく確実に実施することができる。
また、ブレーキペダル24が踏み込まれている場合には、逆止弁La4a,La5aによってエア管La2,La3の圧力がエア管La4,La5に加わらないので、ブレーキバルブ25a,25b経由の空気圧をエアバルブ27a,27b経由の空気圧であると誤判定するのを確実に防止することができる。
なお、上述した実施形態においては、エアバルブの診断中にブレーキペダル24が踏込操作されると、液圧調整手段Bを制御してエアマスタシリンダ23a,23bからの液圧がホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに直接付与される。これによれば、操作者によるブレーキ操作に応じた車両の停止を支障を来たすことなく確実に実施することができる。
また、エアバルブ閉状態確認手段(ステップ121,129)が、エアバルブ診断手段(ステップ118,136またはステップ116,126)によるエアバルブ27a,27bの診断の終了後、エアバルブ27a,27bの閉作動をする際にエアバルブ27a,27bが正常に閉状態となった否かを判定するので、エアバルブ27a,27bが閉状態となっていることを確実に確認することができる。
また、エアバルブ閉状態確認手段(ステップ121,129)は、エアバルブ出力圧力検出手段(Spva,Spvb)によって検出されたエアバルブの出力圧力が第2所定時間以上継続してエアバルブ閉異常判定値以上となるか否かを判定することにより、エアバルブ27a,27bが正常に閉状態となった否かを判定する。これにより、既設の構成材を使用してエアバルブ27a,27bが閉状態となっていることを容易に確認することができる。
また、エアバルブ閉状態確認手段(ステップ121,129)は、エアバルブ出力圧力検出手段(Spva,Spvb)によって検出されたエアバルブの出力圧力が第2所定時間より長い第3所定時間以上断続してエアバルブ閉異常判定値以上となるか否かを判定することにより、エアバルブ27a,27bが正常に閉状態となった否かを判定する。これにより、エアバルブの出力圧力が第2所定時間以内にエアバルブ閉異常判定値未満となって脈動するような場合でも、それを異常として確実に検出することができる。
また、上述した実施形態においては、車両停止状態判定手段(ステップ104)において、坂道発進補助制御を実施する際に坂道発進補助弁41,51が停車判定時間以上遮断された場合、停車状態判定手段は車両Mが停止状態であると判定するようにしてもよい。これによっても、既存の構成を利用して確実に停車状態を判定することができる。
また、エアバルブの診断中においてブレーキトラクション制御を実施している場合、液圧調整手段Bを制御してホイールシリンダWCfl,WCfr,WCrl,WCrrに必要な液圧が付与されるようにするので、車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに必要なブレーキ力が付与されるのを維持しながら確実にエアバルブの診断を実施することができる。
なお、上述した実施形態においては、ECU50は、ステップ204において、エアバルブの出力圧力が第2所定時間より長い第3所定時間以上断続してエアバルブ閉異常判定値以上となるか否かを判定していたが、これに限らず、エアバルブ出力圧力検出手段Spva,Spvbによって検出されたエアバルブの出力圧力に基づいて、第2所定時間より長い第3所定時間以上、エアバルブ27a,27bの閉状態を確認できない状態が継続するか否かを判定するなどの他の方法によって判定するようにしてもよい。例えば、エアバルブ27a,27bの閉状態を確認できない状態とは、エアバルブの出力圧力が所定時間内においてエアバルブ閉異常判定値未満とならない状態、換言するとエアバルブの出力圧力がエアバルブ閉異常判定値を挟んでゆれている状態である。
なお、上述した実施形態においては、本発明をエンジン駆動の車両に適用したが、電気モータ駆動の電気自動車、燃料電池車両に適用することができる。この場合、圧縮空気供給源21をエンジンでなく電気モータなどで駆動するようにすればよい。
また、上述した実施形態においては、ブレーキ配管系は前後分割方式にて構成されているが、X配管方式にて構成されるようにしてもよい。
11…エンジン、12…変速機、13…ディファレンシャル、15a…スロットルバルブ、15b…モータ、15c…スロットル開度センサ、16…アクセルペダル、16a…アクセル開度センサ、17…エンジン制御ECU、21…圧縮空気供給源、22…エアタンク、23a,23b…エアマスタシリンダ、24…ブレーキペダル、25a,25b…ブレーキバルブ、26…制動力制御装置、27a,27b…エアバルブ、27a1,27b1…ソレノイド、28a,28b…電流検出素子、29a,29b…スイッチング素子、31…電流検出回路、32…駆動回路、33…車速センサ、34…パーキングブレーキ、34a…パーキングブレーキスイッチ、35…イグニッションスイッチ、36…坂道発進補助スイッチ、37…警報装置、41,51…坂道発進補助弁、42,43,52,53…保持弁、44,54…ポンプ、45,55…内蔵リザーバタンク、46,47,56,57…減圧弁、50…ECU、B…調圧制御手段、Wfl,Wfr,Wrl,Wrr…車輪、Lf,Lr…前輪および後輪ブレーキ配管系、Sfl,Sfr,Srl,Srr…車輪速センサ、Spt…エアタンク圧検出手段、Spva,Spvb…エアバルブ出力圧力検出手段、Spm…圧力検出手段、WCfl,WCfr,WCrl,WCrr…ホイールシリンダ。