JP4752048B2 - 層状ルテニウム酸化合物膜 - Google Patents
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Description
酸化ルテニウムとアルカリ金属化合物とを焼成または溶融する工程、
それを酸、アルキルアミン、テトラアルキルアミンの各溶液中で順次撹拌して、ルテニウム酸化合物の層状微粒子を形成する工程、
該微粒子を、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよびニトロメタンから選ばれる少なくとも一種類の非プロトン性溶媒に分散し、層剥離させたコロイド状ルテニウム酸化合物を形成する工程、
および該コロイド状ルテニウム酸化合物を電気泳動により層状に堆積させて膜を形成する工程
を有していることを特徴とする。
前記の非プロトン性溶媒は、アセトニトリル(AN)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよびニトロメタンから選ばれる少なくとも一種類の非プロトン性高誘電率溶媒である。
(第1工程)酸化ルテニウム(和光純薬工業(株)製;ルテニウム含有量74.4〜77.5%)と炭酸カリウムとを、アセトンで湿潤させつつ1時間混合し、圧搾してペレット化した。それをArガス気流下、850℃で12時間加熱し焼成した。得られた焼成物を水で洗浄し、層間カリウムイオン介在層状ルテニウム酸化合物を得た。それの層間距離は、理学電機(株)製の商品名RINT2550H/PCにより測定したところ、0.73nmであった。
実施例1の第5工程中、分散溶媒としてアセトニトリルの代わりにN,N−ジメチルホルムアミドを用いたことと、第6工程中、泳動時間を2、5、10、20および30分間とする5種類のものを作製したこと以外は、実施例1と同様にして、別な層状ルテニウム酸化合物膜を作製した。
実施例1および2で得たコロイド状ルテニウム酸化合物の分散性を評価した。また各実施例の層状ルテニウム酸化合物膜について、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察、X線回折分析(XRD)、および電気化学測定を行なった。
実施例1および2の第5工程で得たコロイド状ルテニウム酸化合物の分散性について目視で観察した。その結果、コロイド状ルテニウム酸化合物は、分散溶媒がアセトニトリル、ジメチルホルムアミドの何れであっても、良好な分散性を示した。
Au基板と、その上に10分間電気泳動を施して作製された実施例1および2の層状ルテニウム酸化合物膜とを、夫々走査型電子顕微鏡により観察した。それの撮影写真を、夫々図1の(a)〜(c)に示す。なお走査型電子顕微鏡の観察条件は、入射加速電圧が10kVという条件である。
10分間電気泳動を施して作製された実施例1および2の層状ルテニウム酸化合物膜のX線回折パターンを、各々図2に示す。
(A)同一の電気泳動時間で作製した層状ルテニウム酸化合物膜の電気化学測定
10分間電気泳動を施して作製された実施例1および2の層状ルテニウム酸化合物膜について、サイクリックボルタンメトリーによる電気化学測定を行なった。それのサイクリックボルタモグラムを図3の(c)と(f)に、その時の電位走査速度と比静電容量の関係を図4の(c)と(f)に示す。
そこで、実施例2で2、5、10、20および30分間電気泳動を施して作製した層状ルテニウム酸化合物膜について、前記と同様にして電気化学測定を行なった。夫々の層状ルテニウム酸化合物膜のサイクリックボルタモグラムを図3の(a)〜(e)に示す。またそれらの電位走査速度と比静電容量の関係を、図4の(a)〜(e)に示す。図3および4から次のことが明らかとなった。泳動時間に比例して比静電容量は増大した。したがって泳動時間を調整することにより比静電容量の制御が可能であることがわかった。
実施例1の第5工程中、分散溶媒としてメタノールを用いたこと、および第6工程中、電気泳動時間を30分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、別な層状ルテニウム酸化合物膜を作製した。
比較例1で得たコロイド状ルテニウム酸化合物の分散性を評価した。また比較例1の層状ルテニウム酸化合物膜について、X線回折分析、および電気化学測定を行なった。
比較例1の第5工程で得たコロイド状ルテニウム酸化合物の分散性について目視で観察した。その結果、分散溶媒がメタノールであっても、実施例1でのアセトニトリルや実施例2でのジメチルホルムアミドを分散溶媒とする場合と同様に分散性が良好であった。
比較例1の第6工程中、室温乾燥させて得た層状ルテニウム酸化合物膜と、それをさらに120℃で24時間乾燥させて得た膜とのX線回折パターンを、各々図5に示す。室温乾燥後の膜のX線回折パターンからd=0.75nmの回折ピークが検出された。しかしこの回折ピークは、120℃で24時間乾燥した膜には認められない。このことから室温乾燥後のこの層状ルテニウム酸化合物膜には、メタノールが含まれていると考えられる。
(A)層状ルテニウム酸化合物膜の電気化学測定
30分間電気泳動を施した比較例1の層状ルテニウム酸化合物膜について、前記と同様にしてサイクリックボルタンメトリーによる電気化学測定を行なった。それのサイクリックボルタモグラムを図6に、その時の電位走査速度と比静電容量の関係を図7に示す。
比較例1で電気泳動時間を30分としたときに副生した沈殿物で、キャスト膜を作製した。それを室温で乾燥したものと、さらに120℃で24時間乾燥したものとのX線回折パターンを、図8に示す。沈殿物のキャスト膜は、室温乾燥後であっても120℃24時間乾燥後であっても、それの回折ピークの位置は変化しなかった。これは、図5で示した比較例1の層状ルテニウム酸化合物膜の場合と異なる傾向である。前記の非特許文献5に層状ペロブスカイトとアルコールの反応により層間表面でアルコキシル基が修飾されると報告されていることを考慮すると、この沈殿物は、層剥離したルテニウム酸化合物の表面にメトキシ基が修飾された化合物であると考えられる。そして、ルテニウム酸化合物が安定分散することができなくなった結果、電極に泳動されなかったと推察される。
前記非特許文献6および7に準じ、以下のようにして、本発明を適用外の層剥離していない層状ルテニウム酸化合物微粒子からルテニウム酸化合物膜を作製した。
層非剥離層状ルテニウム酸膜とAu基板とのサイクリックボルタモグラムを図9に示す。
コロイド状ルテニウム酸化合物の分散溶媒揮発によりルテニウム酸化合物を基板上で再び積層させた再積層体は、実施例2と同様に比静電容量が660F(g−RuO2)−1と大きなものであった。しかし、再積層可能な量は0.02mg/cm2程度が限界であったことから、実施例1および2のように電気泳動した層状ルテニウム酸化合物膜を用いることが有効であることが分った。
超小型直接メタノール形燃料電池(μ−DMFC)作製用のSi基板上にパターニングし、この基板を用いて、実施例2で得られたコロイド状ルテニウム酸化合物を電気泳動させ、マイクロ電気化学キャパシタを作製した。電気泳動の条件は、電気化学測定システム(北斗電工(株)製;商品名HZ−3000)を用い、泳動電圧が5V、泳動時間が10分間、電極間距離が1cm、基板が縦2.5cm×横2cmのSi基板、電気泳動した部分の見かけ表面積は(縦0.6cm×横0.05cm)×2=0.06cm2、対極がPtメッシュ(ニラコ(株)製)であるというものである。それの電気泳動前後の写真を図10に示す。電極が層状ルテニウム酸化合物膜を有していることが確認できた。
得られたマイクロ電気化学キャパシタのサイクリックボルタモグラムを図11に示す。その時の電位走査速度と比静電容量の関係を図12に示す。比静電容量は見かけ表面積(0.06cm2)あたりの値である。
Claims (5)
- アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよびニトロメタンから選ばれる少なくとも一種類の非プロトン性溶媒中でコロイド状であるルテニウム酸化合物が、電気泳動により層状に堆積して膜を形成していることを特徴とする層状ルテニウム酸化合物膜。
- 酸化ルテニウムとアルカリ金属化合物とを焼成または溶融する工程、
それを酸、アルキルアミン、テトラアルキルアミンの各溶液中で順次撹拌して、ルテニウム酸化合物の層状微粒子を形成する工程、
該微粒子を、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよびニトロメタンから選ばれる少なくとも一種類の非プロトン性溶媒に分散し、層剥離させたコロイド状ルテニウム酸化合物を形成する工程、
および該コロイド状ルテニウム酸化合物を電気泳動により層状に堆積させて、膜を形成する工程
を有していることを特徴とする層状ルテニウム酸化合物膜の製造方法。 - 前記の酸、アルキルアミン、テトラアルキルアミンの各溶液が、夫々、硫酸水溶液、アルキルアミン水溶液、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド水溶液であることを特徴とする請求項2に記載の層状ルテニウム酸化合物膜の製造方法。
- 電極が、請求項1に記載の層状ルテニウム酸化合物膜を有していることを特徴とする電気化学蓄電素子。
- 電気化学キャパシタであることを特徴とする請求項4に記載の電気化学蓄電素子。
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