しかしながら、上記のソーラーシステムハウスでは、複数のセンサの検知に基づいて複数のダンパーの開閉を制御しているため、設備が複雑で大がかりなものとなり、高コストとなるという問題があった。また、屋根板直下で加熱された空気によって棟ダクトの周辺が高温となるため、ファンやダンパー、及びこれらの動作を制御する電気系統に不具合を生じることがあったが、ファンやダンパーはハンドリングボックス内に収容されているため、不具合が生じても居住者にとって気付き難いものであった。そのため、例えば、ファンが回っていないことに気付かず放置し、屋根裏付近が異常な高温となって建物や設備に大きなダメージを与える恐れがあった。
また、従来のソーラーシステムハウスでは、床下の蓄熱土間コンクリートに蓄熱させる方式であり、熱容量の大きいコンクリートはいったん暖まれば冷えにくいが、暖めるには長時間を要するものであった。一方、居住者の生活スタイルによっては、冷えにくいが暖まりにくい床暖房よりも、短時間で床を暖めたいという要望もあった。
更に、従来のソーラーシステムハウスでは、加熱された空気が導入されるのが床下であることから、床下の空間を外気と通じない密閉構造にする必要があり、暖かな床下の空間が白あり等の害虫が発生し易い環境となるという問題があった。加えて、害虫防除のために薬剤を床下に散布すれば、床下の空気流通空間から温風を室内に吹き出させるための吹出口から薬剤が居住空間に流入してしまうため、かかる害虫防除処理が行えないという問題もあった。また、床と基礎コンクリートの間の空間に空気が導入されるため、基礎を処々で切らざるを得ず、建物の強度が低下する恐れがあった。
加えて、従来のソーラーシステムハウスでは、床暖房に使用される熱源は、屋根板によって加熱された外気であり、床下から室内へ吹き込まれた後の暖かい空気や、他の暖房設備によって暖められた室内空気は熱源として再利用されることなく、無駄となっていた。
ここで、従来のソーラーシステムハウスとして、天井等に室内に開口する循環用ダクトを設け、この循環用ダクトを介して室内の空気をハンドリングボックス内に導入するシステムも提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、この循環用ダクトは、上記の逆流防止ダンパーによる切換えによって棟ダクト側が閉塞されている状態のとき、すなわち、屋根板により加熱された空気を室内に取り込まないときにのみ、ハンドリングボックスと連通する構成とされている。そのため、屋根板からの集熱に適した日中には、窓等からの太陽光の射し込みによって暖められるはずの室内の空気を、床暖房のために利用できるものではなかった。
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、太陽光により加熱された空気と、既に暖められている室内の空気とを、同時に利用して床暖房を行うことができると共に、簡易な構成で経費を抑えて床暖房を行うことができ、床下の害虫防除にも支障がない床暖房システムの提供を課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明にかかる床暖房システムは、「建物の床を暖房する床暖房システムであって、屋根面に沿って形成された空気を流通可能な屋根通気空間と、該屋根通気空間と連通し、該屋根通気空間を流通した空気が流入するチャンバーと、該チャンバー内の空気を室内空間に放出する第一送風機と、互いに離隔する上床部と下床部によって構成された二重構造床の内部に形成された床内部空間と、上端の開口部が室内空間の上方に位置し、下端の開口部が前記床内部空間と接続されたダクトと、該ダクト内を上端から下端に向かって空気を圧送する第二送風機と、前記床内部空間を室内空間と連通させる連通部と、前記二重構造床の下側に設けられた断熱部とを」具備している。
「屋根通気空間」は、例えば、屋根面を二重構造とすることにより、その間隙の空間として形成することができる。あるいは、屋根の裏面または表面に複数配設されたパイプの内部空間として、形成することができる。なお、「屋根通気空間」を形成する屋根あるいはパイプは、熱伝導率の高い金属によって構成させれば、屋根通気空間内を流通する空気を効率良く加熱することができ、好適である。また、従来のソーラーハウスでは、太陽光で加熱された屋根の冷却を防止し、空気の加熱効率を高めるために、屋根にガラス板を載置することも提案、実施されている。しかしながら、ガラス板は台風などの強風によって割れ、屋根から落下する恐れがあるため、本発明ではかかるガラス板は使用しないことが望ましい。
「チャンバー」は、函状や筒状に形成することができ、屋根通気空間と直接連結されていても、連結管等の適宜の部材を介して間接的に連結されていても良い。また、チャンバーを設ける場所は屋根裏等の屋内であっても屋根上であって良いが、例えば、棟部に近い高い位置に設ければ、屋根通気空間内を上昇した暖かい空気がチャンバー内に流入し易く、好適である。
「二重構造床」は、上床部及び下床部を上下に離隔させた状態で、両床部の間に適宜の支持部材やスペーサーを配することによって構成することができ、両床部の間に中空の「床内部空間」が形成される。ここで、床内部空間の高さ(上床部及び下床部の離間距離)が小さい場合は、空気が流通する際の抵抗が大となる。一方、床内部空間の高さが大きい場合は、空気が流通する際に対流が生じ易くなる。そのため、床内部空間に空気を良好に流通させるためには、床内部空間の高さは20〜70mmが好ましく、35〜45mmであれば更に好ましい。
「ダクト」は、管状体であればその構成は特に限定されず、例えば、中空の円柱状や四角柱状に形成することができる。また、暖かい空気は、自然と室内空間の上方に集まるため、これをダクト内に取り入れるために、ダクトの上端の開口部は室内空間の上方に位置させる。ここで、「室内空間」の語は、屋根裏や天井裏の空間をも含める意味で用いている。また、ダクトの上端の開口部が位置する室内空間の「上方」とは、暖かい空気が上昇して集まり易い室内空間の最上層を指し、建物の構造によっても異なるが、例えば、切妻屋根等の山型の屋根を有する建物の場合は、棟部に近い屋根裏空間とし、片流れ屋根を有する建物の場合は、屋根の高い側の屋根裏空間とすることができる。
更に、ダクト内を移動させられた空気を床内部空間に導入するため、ダクトの下端の開口部は間接的または直接的に床内部空間に接続される。ここで、ダクトの下端の開口部を床内部空間に間接的に接続させる構成としては、ピットや湾曲させたパイプを介して接続する構成を例示することができ、接続用のパイプは分岐させることもできる。なお、ダクトの上端から下端まで抵抗を減じて効率良く空気を移動させるためには、ダクトは略鉛直に設けられることが望ましく、その場合は、壁や柱に沿って設けることも、室内空間の内方に立設させることもできる。
「第一送風機」及び「第二送風機」は、羽根車やロータの回転によって空気を圧送するファンやブロワで構成することができ、例えば、シロッコファン、プロペラファン、斜流ファンを使用することができる。また、「第一送風機」は、停止した際に送風口を閉じる蓋を備えたタイプが望ましい。更に、「第二送風機」は、ダクト内で空気の移送ができればダクトに対する設置位置は特に限定されず、例えば、ダクトの上端、下端、及び中間の少なくとも何れか一箇所に設けることができ、複数箇所に設けても良い。
「連通部」の構成は特に限定されず、例えば、上床部と壁との間に間隙を形成することにより、壁に沿って細長く開口する連通部を形成することができる。この際、細長く開口する連通部に、スリット状などの適宜の形状の孔部が穿設された蓋をすることもできる。或いは、上床部の適宜の箇所に孔部を直接穿設することによって連通部を形成することもできる。更に、壁を二重構造としてその内部空間を床内部空間と連通させ、壁に沿って広がると共に、室内空間に向かって開口する孔部やスリット等を有する連通部とすることができる。
「断熱部」の構成は特に限定されず、例えば、下床部の下面または上面にボード状、シート状、マット状等の公知の断熱材を取り付けることができる。或いは、下床部を更に二重構造とし、その内部の空間に断熱材を充填することにより構成することができる。
上記の構成により、本発明によれば、屋根通気空間で太陽光によって加熱された空気は、チャンバーに取り入れられた後、第一送風機によって室内空間に放出される。そして、上端の開口部が室内空間の上方に位置するダクト内に第二送風機の作用によって吸引され、ダクト内を圧送された後に、ダクトの下端が接続された床内部空間へ導入される。これにより、床内部空間を流通する加熱された空気によって二重構造床が暖められると共に、加熱された空気が連通部から室内空間に噴出し、室内空間が暖められる。
また、床内部空間から室内空間に噴出した暖かい空気は、自ずと室内空間の上方に上昇する。加えて、窓から射し込んだ太陽光によって暖められた空気、他の暖房器具や照明器具で発生した熱によって暖められた空気、台所での火の使用や浴室での給湯など、居住者の生活に伴って発生する熱によって暖められた空気も、自ずと室内空間の上方に上昇する。このようにして室内空間の上方に集まる暖かい空気は、チャンバーから室内空間に放出された屋根からの空気と共に、上端が室内空間の上方で開口しているダクトによって、床内部空間へ移送される。これにより、屋根通気空間で加熱された空気のみで床暖房をするのではなく、他の要因により室内で発生した暖かい空気をも、総合的に無駄なく利用して、床暖房をすることができる。
加えて、従来のソーラーシステムのように、複数のダンパーを開閉するための複雑な制御や、ハンドリングボックスのような大がかりな構成を必要とせず、極めて簡易な構成であるため、コストを抑えて床暖房システムを構築することができる。また、第一送風機及び第二送風機は、単体でオープンな状態で設置することができるため、仮に不具合が生じたとしても居住者が気付き易く、早期に対応して被害を抑えることができる。
更に、本発明は床を二重構造床とし、その内部に形成される床内部空間に加熱された空気を流通させるシステムであり、大きな容積を有する床下の空間や基礎のコンクリートは暖めないため、太陽光のエネルギーを効率良く利用し、時間を要さずに応答良く床を暖めることができる。特に、冷えにくいが暖まりにくい床暖房よりも、短時間で床を暖めたいと考える需要者の要望に応えることができる。また、従来のソーラーシステムのように床と基礎コンクリートの間に空気を導入するわけではないため、基礎を処々で切る必要がなく、建物の強度を確保することができる。
加えて、本発明は加熱された空気を床内部空間に流通させるシステムであるため、例えば、一階部分の床下の空間は屋外と通気可能な構成とすることができる。これにより、床下の空間が害虫の発生しやすい環境となることを防止することができる。特に本発明では、二重構造床の下側に断熱部が設けられているため、床下の空間への伝熱が抑制され、熱が効率良く床暖房のために使われると共に、床下の空間が暖まりにくく、より害虫の発生しにくい環境となる。加えて、床下の空間は室内空間と連通しない構成とすることができるため、その場合は床下の空間に薬剤を散布しても室内空間に薬剤が流入することがなく、支障なく害虫防除処理を行うことができる。
また、本発明の床暖房システムは、上記構成に加え、「前記チャンバー内の温度の検知に基づいて前記第一送風機の運転及び停止を切替える第一切替手段、室内空間の上方の温度の検知に基づいて前記第二送風機の運転及び停止を切替える第二切替手段の少なくとも何れか一方を」具備するものとすることができる。
「第一切替手段」及び「第二切替手段」は、それぞれ温度センサと、温度センサの検知に基づいて、送風機を駆動するモータへの電力の供給のオン・オフを切り換えるスイッチ装置で構成させることができる。また、温度センサとスイッチ装置とは、別体であっても、温度センサがスイッチ装置に内蔵されているものであっても構わない。例えば、バイメタル式の温度スイッチを使用することができる。
上記の構成により、本発明によれば、第一切替手段を備えることにより、チャンバー内の温度が予め定めた温度以上となってから、その空気を第一送風機によって室内空間に導入することができる。これにより、例えば、屋根通気空間が太陽光によって充分には暖められない早朝や夜間、曇天や雨天の日などに、冷たい空気が室内空間に導入されることを防止することができる。
また、第二切替手段を備えることにより、室内空間の上方の温度が予め定めた温度以上となれば、その空気を第二送風機によって床内部空間に移送することができる。これにより、屋根で加熱された空気がチャンバーから室内空間に放出されるか否かに関わらず、室内空間の上方に暖かい空気が集まれば、これを使用して床暖房を行うことができる。例えば、太陽光を利用できない雨天の日や夜間に、他の暖房器具を使用した場合、これによって暖められた空気を循環させて、床暖房に有効に利用することができる。
更に、本発明の床暖房システムは、上記構成に加え、「前記チャンバー内の空間と室内空間とを連通させるチャンバー開口部と、室内空間を屋外と連通させる排出用開口部と、前記チャンバー開口部及び前記排出用開口部を着脱自在に連結する排出用ダクトと、該排出用ダクトの非連結時に、前記チャンバー開口部及び前記排出用開口部を、それぞれ着脱自在に閉塞する蓋体とを」具備するものとすることができる。
「排出用ダクト」は、伸縮自在かつ湾曲自在な蛇腹管で構成させれば、チャンバー開口部及び排出用開口部がそれぞれ開口する方向が異なっていても、両者を容易に連結することができ、好適である。また、「蓋体」の構成は特に限定されず、開口部に内嵌するものであっても、開口部の縁を突設させておき、これに外嵌するものであっても良い。
夏季など、太陽光によって屋根通気空間で加熱された空気を床暖房に使用しない時期は、例えば、天窓等を開放しておくことによって、チャンバーから室内空間に放出された加熱空気を、屋外に排出することも可能である。これに対し、本発明では、チャンバー開口部と排出用開口部とが排出用ダクトによって連結されている状態にしておくことができ、屋根で加熱された空気を室内空間に取り込むことなく、チャンバーから直接的に屋外に排出することができる。そのため、不要なエネルギーを捨てるために、電気エネルギーを消費して送風機を作動させるという無駄がなく、簡易な構成によって効率良く、空気を屋外に排出することができる。
また、従来のソーラーシステムハウスでは、夏季に屋根で加熱された空気によって、極めて高い温度下に置かれることを考慮して、ファンを特殊な設計とする必要があった。これに対し、本発明では、加熱された空気がチャンバーから直接屋外に排出されるため、第一送風機にはさほどの耐熱性が必要とされない。これにより、入手が容易で低廉な、汎用の送風機で第一送風機を構成させることができる。
更に、チャンバー開口部は室内に向かって開口する構成であるため、排出用ダクトによって排出用開口部と連結する作業を、室内で容易に行うことができる。また、冬季など、太陽光によって屋根で加熱された空気を床暖房に使用する時期は、排出用ダクトを取り外し、チャンバー開口部及び排出用開口部をそれぞれ蓋体によって閉塞させておくことにより、上記の太陽光を利用した床暖房を、支障なく行うことができる。
以上のように、本発明の効果として、太陽光により加熱された空気と、既に暖められている室内の空気とを、同時に利用して床暖房を行うことができると共に、簡易な構成で経費を抑えて床暖房を行うことができ、床下の害虫防除にも支障がない床暖房システムを提供することができる。
以下、本発明の最良の一実施形態である床暖房システムについて、図1乃至図4に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の床暖房システムを適用した建物の模式図であり、図2は夏季における図1の建物を説明する模式図であり、図3は図1の建物の要部の拡大断面図であり、図4は本実施形態の床暖房システムの適用時における温度変化を示すグラフである。
まず、本実施形態の床暖房システム及び本システムを適用した建物1の構成について説明する。建物1は、図1乃至図3に示すように、屋根面に沿って形成された空気を流通可能な屋根通気空間10と、屋根通気空間10と連通したチャンバー20と、チャンバー20内の空気を室内空間5に放出する第一送風機51と、互いに離隔する上床部31と下床部32によって構成された二重構造床30の内部に形成された床内部空間33と、上端の開口部41が室内空間5の上方に位置し、下端の開口部42がピット35を介して床内部空間33と接続されたダクト40と、ダクト40内を上端から下端に向かって空気を圧送する第二送風機52と、床内部空間33を室内空間5と連通させる連通部36と、二重構造床30の下側に設けられた断熱部61とを主に具備している。
更に詳細に説明すると、本実施形態の建物1は二階建て建築であり、屋根には、少なくとも太陽光が当たる側(北半球では南側)の屋根面において、互いに離隔する上屋根11と下屋根12によって二重構造屋根13が形成されており、その内部の空間によって屋根通気空間10が構成されている。なお、本実施形態では、熱伝導率が高く、かつ太陽光を反射しにくい黒色系の金属で、上屋根11を構成している。また、下屋根12の裏面側には、断熱材層(図示しない)が設けられている。なお、従来のソーラーシステムハウスでは、屋根による加熱効率を高めるために、屋根面を覆うようにガラス板が設けられることが多いが、本実施形態ではかかるガラス板は屋根面の上に設置しない。
チャンバー20は、棟部に近い室内空間5において、棟部に沿った細長い函状に形成され、周囲は断熱材によって被覆されている。そして、屋根通気空間10は、軒側の軒側開口部17で屋外と連通すると共に、棟側の棟側開口部18でチャンバー20と連通している。
チャンバー20の一部はダクト状に延出され、その端部に、チャンバー20内の空気を室内空間5に向かって放出可能に、第一送風機51がやや下向きに取り付けられている。本実施形態では第一送風機51として、停止した際に送風口の蓋が閉じるタイプを使用している。また、チャンバー20の内壁には、チャンバー20内の温度を検知して第一送風機51の運転及び停止を切替える第一温度スイッチ51が取付けられている。なお、第一温度スイッチ51が本発明の第一切替手段に相当する。
室内空間5は、一階空間6、二階空間7、及び屋根裏空間8により一部が三層となると共に、一部は一階から屋根裏まで吹き抜けた吹き抜け空間9となっている。また、二重構造床30は、下床部32と化粧仕上げされた上床部31とを約40mm離隔させて構成されている。更に、下床部32に連続した断面コ字形の細長い函状のピット35が、二重構造床30の一辺に略平行に形成されている。また、一辺の壁86と二重構造床30の上床部31との間に間隙が形成され、これにより、壁86と上床部31との間に細長く開口した連通部36が構成されている。
なお、本実施形態では、図3(a)において円範囲の拡大断面図に示したように、連通部36は断面略逆L字形の連通部カバー38で覆われ、連通部カバー38の室内側の側面に噴出口39が設けられている。このような構成にすることにより、噴出口39が見えにくく外観のよいものとなる。また、噴出口39が、上床部32の上面よりも高い位置となるため、ゴミ等が噴出口39を介して床内部空間33に落下しにくいものとなっている。
また、図3(b)に例示したように、壁87を二重構造として、その内部の空間を床内部空間33と連通させることにより、壁面に沿って広がると共に室内空間5と連通する連通部37を形成し、二重構造床30から離れた高い位置に噴出口39を設けることもできる。
ダクト40は、下端の開口部42がピット35内の上方に位置するように、吹き抜け空間9において立設されている(図1参照)。また、ダクト40は、上端の開口部41が、屋根裏空間8で第一送風機51の近傍に位置するように設けられている。なお、ピット35の上方の開口部のうち、ダクト40の下端が挿入されている部分以外の残余部分は、ピット蓋部35bによって覆われて上床部32の上面と同じ高さに形成されている(図3(a)参照)。このピット蓋部35bは、ピット35の内部の点検などを行うために取り外し可能となっている。
更に、ダクト40の上端の開口部41には第二送風機52が設置されている(図1参照)。本実施形態では、第二送風機52としてシロッコファンを用いている。また、第二送風機52の近傍の壁には、室内空間5の上方の温度を検知して第二送風機52の運転及び停止を切替える第二温度スイッチ56が取付けられている。なお、第二温度スイッチ56が本発明の第二切替手段に相当する。
断熱部61は、下床部32の下面に貼着された断熱ボードによって構成され、ピット35の底面及び側面にも同様にピット断熱部62が設けられている。また、二重構造床30と建物の基礎部89との間には床下空間65が形成され、この床下空間65は通気口66を介して屋外と通気している(図3(a)参照)。なお、通気口66は基礎パッキン方式によって形成されるものであっても、基礎部89に設けられた換気口により構成されるものであっても良い。
加えて、本実施形態では、チャンバー20の側面に、室内空間5に向かって開口するチャンバー開口部25が形成されている(図1参照)。また、屋根裏空間8において、屋内外を隔てる壁には、貫通する排出用開口部75が設けられている。なお、チャンバー開口部25及び排出用開口部75は、周縁に沿って突出するように形成されている。そして、本実施形態では、チャンバー開口部25及び排出用開口部75を、それぞれ着脱自在に閉塞する蓋体25b、75bを備えている。これらの蓋体25b、75bは、共に有底筒状であり、それぞれチャンバー開口部25及び排出用開口部75の周縁の突出部分を内嵌可能に形成されている。また、本実施形態では、蛇腹管で構成された排出用ダクト78を備えており、この排出用ダクト78の両端は、それぞれチャンバー開口部25及び排出用開口部75の周縁の突出部分を内嵌可能な径に設定されている。
次に、本実施形態の床暖房システムの作用について説明する。まず、冬季など太陽光を利用して床暖房を行いたいときは、チャンバー開口部25及び排出用開口部75は、それぞれ蓋体25b、75bにより閉塞しておく。この状態で、二重構造屋根13に太陽光が当たると、軒側開口部17を介して屋根通気空間10に流入した空気は太陽光によって加熱され、屋根面に沿って上昇して、棟側開口部18を介してチャンバー20内に流入する。このとき、二重構造屋根13では、熱伝導率が高く太陽光の反射率の低い黒色系の金属で上屋根11が構成されているため、太陽光によって効率良く空気が加熱される。
チャンバー20内に加熱された空気が流入することによって、チャンバー20内の温度が予め定めた温度以上になったことを第一温度スイッチ51が検知すると、第一温度スイッチ51による切替えによって第一送風機51の駆動モータへの電力供給がオンとなり、加熱された空気が第一送風機51に送られ、室内空間5に放出される。なお、夜間や早朝など、太陽光による屋根通気空間10での空気の加熱が行われないときや不充分なときは、チャンバー20内の温度が所定の温度に達しないため、第一送風機51は作動せず、チャンバー20内の空気は室内空間5には送られない。そして、本実施形態の第一送風機51は、停止時に蓋が閉まるタイプを用いているため、屋根通気空間10及びチャンバー20を介して、冷気が室内空間5へ浸入することが防止される。
第一送風機51によって加熱された空気が室内空間5に放出され、室内空間の上方の温度が予め定めた温度以上になり、これを第二温度スイッチ56が検知すると、第二温度スイッチ56による切替えによって、第二送風機52の駆動モータが回転する。これにより、室内空間5の上方の暖かい空気は、ダクト40の上端からダクト40内に吸引され、ダクト40内を圧送されて、下端の開口部42からピット35内に排出される。
ピット35内に排出された暖かい空気は、ピット35の底面や側面に衝突しながら、二重構造床30の一辺に沿って設けられた細長いピット35の内部空間に広がり、ピット35と連通した床内部空間33に流入していく。このとき、ピット35にはピット断熱部62が設けられているため、暖かい空気がピット35内で冷却されることが抑制される。そして、床内部空間33を流通する暖かい空気により、上床部31及び下床部32が加熱されるが、下床部32側には断熱部61が設けられて伝熱が抑制されているため、居住空間の床としての上床部31が主に加熱される。また、二重構造床30は熱容量が小さいため、比較的短時間で加熱される。これにより、居住者の身体に接する上床部31が短時間に暖められる。
更に、床内部空間33を流通した空気は、連通部36,37を介して噴出口39から室内に噴出する。これにより、太陽光によって加熱された空気によって、床暖房が行われると共に室内空間5も暖められる。そして、噴出口39から噴出した空気は、室内空間5の上方に上昇し、再び第二送風機52によりダクト40を介して床内部空間33に送られる。これにより、屋根通気空間10で加熱されて新たに室内空間5に放出された空気と共に、既に室内空間5に取り込まれていた空気が再利用され、床内部空間33と室内空間5とを循環する。
このとき、床内部空間33から室内空間5に噴出した暖かい空気に限らず、窓から射し込んだ太陽光によって暖められた空気、他の暖房器具や照明器具により発生した熱によって暖められた空気、台所での火の使用や浴室での給湯など、居住者の生活に伴って発生する熱によって暖められた空気も、自ずと室内空間5の上方に上昇する。このようにして室内空間5の上方に集まる暖かい空気は、チャンバー20から室内空間5に放出された空気と共に、ダクト40によって床内部空間33へ移送され、床内部空間33と室内空間5とを循環する。
更に、屋根通気空間10で空気が加熱されないとき、すなわち、第一送風機51が作動せず、チャンバー20内の空気が室内空間5に放出されないときも、例えば、他の暖房器具の使用によって室内の温度が上昇すれば、第二温度スイッチ56による温度の検知に基づいて第二送風機52が作動し、室内空間5と床内部空間55とで空気の循環が行われる。これにより、太陽光を利用可能な床暖房システムであると同時に、二重構造屋根13での太陽光による加熱の有無に関わらず、有効に作用する床暖房システムとなっている。
夏季など、太陽光を利用した床暖房を行わない時期は、図2に示すように、チャンバー開口部25及び排出用開口部75から、それぞれ蓋体25b、75bを取り外し、両開口部25,75を排出用ダクト78で連結しておく。このとき、排出用ダクト78の両端部を、チャンバー開口部25及び排出用開口部75のそれぞれの周縁の突出部分に外嵌させることにより、容易に排出用ダクト78を取付けることができる。また、排出用ダクト78は蛇腹管で構成され、伸縮自在かつ湾曲自在であるため、チャンバー開口部25及び排出用開口部75がそれぞれ開口する方向が異なっていても、両者を容易に連結することができる。このように、排出用ダクト78を取付けることにより、屋根通気空間10で加熱された空気は、チャンバー20に流入した後、排出用ダクト78を介して、排出用開口部75から屋外に排出される。
次に、本実施形態の床暖房システムを適用した建物における温度変化を、図4にグラフ化して示す。図4は、岐阜県関市に建築された本実施形態の建物について、室内のほぼ中央の上床部の上の温度、上床部とほぼ同じ高さの地点の屋外温度を、2月の中旬から下旬にかけて連続して7日間測定した結果を、本実施形態の建物にごく近接して建築されており、暖房設備は備えていない家屋の室内の床上の温度、及び、同じくごく近接して建築された従来のソーラーシステムハウス(特許文献1参照)の室内の床上の温度と比較したものである。
なお、第一送風機はチャンバー内の温度が21℃以上となると、チャンバー内の空気を室内空間に100m3/hの微風で放出する設定とし、第二送風機は室内空間の上方の温度が21℃以上となると作動を開始する設定として測定を行った。また、本実施形態の建物と暖房設備を備えていない家屋は、共に無人であり、他の暖房設備等による影響はないが、従来のソーラーハウスは居住者があり、夜間及び早朝に補助暖房が使用されている。
グラフに示されるように、暖房設備を備えていない無人家屋では、床上の温度は屋外温度より2〜4℃高い程度で推移しており、早朝から午前中にかけては屋外温度と大差ないことも多い。これに対し、本実施形態の床暖房システムを適用した建物の床上の温度は、日中では平均で7℃程度、夜間から早朝にかけては平均で10℃以上、屋外温度より高いものであった。これにより、本実施形態の床暖房システムにより、太陽光のエネルギーを有効に利用して、床暖房を行うことができることが認められた。
また、従来のソーラーシステムハウスは、複雑な制御によって頻繁にダンパーの開閉が行われ、補助暖房も使用されていることから、一日のうちの最高温度と最低温度との差が小さく、全体的に高温度が維持されている。ただし、本実施形態では、屋外温度が最高値となるのにほぼ追随して床上温度が最高値を示すのに対し、従来のソーラーシステムハウスでは、床上温度が最高値を示す時間は、本実施形態の建物より3時間程度遅れている。
これらのことから、本実施形態の床暖房システムは、太陽光エネルギーを利用して応答良く短時間で床を暖めたいと考える需要者や、高コストをかけてまで床暖房をする必要はないが、コストを抑えてある程度の温度まで床暖房できるのであれば、床暖房システムを導入したいと考える需要者にとって、好適なシステムであると考えられた。
上記のように、本実施形態の床暖房システムによれば、屋根通気空間10で加熱された空気は、いったん室内空間5に開放され、室内空間5の上方に集まった暖かい空気と共に床内部空間33に送られることにより、太陽光によって屋根で加熱された空気のみならず、窓から室内に射し込む太陽光や、居住者の生活に伴って発生する種々の熱によって暖められた空気を、総合的に無駄なく利用して、床暖房をすることができる。特に、屋根通気空間10で効果的に空気を加熱できる日中は、窓から射し込む太陽光により室内の空気も暖められるため、これを同時に利用して床暖房を行える利点は大きいものである。
また、本実施形態では屋根面の上にガラス板は設置しないため、ガラス板を使用する場合ほど、チャンバーの周辺が高温とならない。これにより、従来のシステムに比べて送風機等に不具合が生じ難いと共に、送風機等にさほどの耐熱性が要求されない。これにより、コストを抑えて床暖房システムを構築することができる。加えて、台風などの強風によってガラス板が割れて落下することを、危惧する必要がない。
更に、極めて簡易な構成であり、第一送風機51及び第二送風機52もオープンな状態で取付けられているため、仮に不具合が生じたとしても居住者が気付き易く、修理等の対応がし易いものとなっている。
加えて、床を二重構造床30とし、床内部空間33に加熱された空気を流通させるシステムであり、大きな容積を有する床下空間65やコンクリートの基礎部89は暖めないため、太陽光のエネルギーで応答良く短時間で床を暖めることができる。特に、二重構造床30の下側に断熱部61が設けられているため、床下空間65への伝熱が抑制され、熱が効率良く床暖房のために使われる。また、床下空間65は、通気口66を介して屋外と通気可能な構成となっているため、床下空間65が害虫の発生しやすい環境となることを防止することができる。更に、床下空間65は室内空間5と連通しない構成となっているため、床下空間65に薬剤を散布しても室内空間5に薬剤が流入することはなく、支障なく害虫防除処理を行うことができる。
なお、通気口66を開閉自在な構成とすれば、冬季などは換気を行う場合を除いて通気口66を閉じておくことにより、床内部空間33に導入された暖かい空気が冷えにくく、より効率的に床暖房をすることができる。また、従来のソーラーシステムハウスとは異なり、床下空間に空気を流通させるために基礎部を処々で切る必要がないため、建物の強度を確保することができる。
更に、第一温度スイッチ55を備えることにより、チャンバー20内の温度が所定の温度以上にならなければチャンバー20から室内空間5に空気が放出されない構成となっているため、屋根通気空間10及びチャンバー20を介して、冷気が室内空間5に浸入することを、有効に防止することができる。
また、第二温度スイッチ56を備えることにより、加熱空気のチャンバー20から放出の有無に関わらず、室内空間5の上方に暖かい空気が集まれば、これを使用して床暖房を行うことができる。加えて、第二送風機52としてシロッコファンを使用しているため、空気の逆流が少なく、ダクト40の下端に向かって効率良く空気を送ることができる。加えて、ダクト40内を送られた空気は、いったんピット35内に排出されてピット35内で拡げられるため、床内部空間33への空気の導入が円滑となると共に、ダクト40が一本であっても、平面的に広がった床内部空間33に全体的に空気を流通させることができる。
更に、チャンバー開口部25と排出用開口部75とを排出用ダクト78によって連結できる構成とされているため、夏季などには、屋根通気空間で加熱された空気を室内に取り込むことなく、チャンバーから直接的に屋外に排出することができる。また、従来のソーラーシステムハウスでは、夏季には加熱空気を排出するためにファンを稼動させておく必要があるが、居住者が不在の際などにファンが故障して屋根裏付近が非常な高温となり、家屋や設備に甚大な被害を蒙る恐れがあった。これに対し、本実施形態では、チャンバー開口部25と排出用開口部75とを排出用ダクト78を連結した状態にしておくのみで、加熱空気を屋外に排出できるため、故障の心配がなく、従来のような問題がない。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、吹き抜け空間を有し、ここにダクトが立設される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、吹き抜け空間を有しない建物とし、一階部分の天井、二階部分の床、及び二階部分の天井を貫通するように、ダクトを立設させることができる。この場合、通気孔などを適宜設けることにより、各階の空間が通気され易い構成とすれば、建物全体で生じる暖かい空気を室内空間の上方に集め、ダクトで床内部空間まで移送することができるため、好適である。
また、雨天や夜間などに補助的に床暖房を行うために、ピット内に、温水、オイル、電気ヒータ等で加熱する補助暖房装置を配置することもできる。これにより、床面の下全体にパイプや電熱線を配設するような大掛かりな工程を要さず、極めて簡易に補助暖房設備を設けることができる。加えて、補助暖房装置によって暖められた空気が、送風機の作用によって床内部空間に全体的に行き渡り、しかも、床内部空間の下側は断熱部で断熱されているため、消費エネルギーを節減して効率良く補助的な床暖房をすることができる。
更に、一階部分の床のみを二重構造床として、その床内部空間に暖かい空気を導入する場合を例示したが、これに限定されず、二階部分の床をも二重構造床とすることにより、二階の床についても床暖房を行う構成とすることもできる。この場合は、一階部分の床内部空間及び二階部分の床内部空間に、それぞれ空気を導入するためのダクト及び送風機を、別個に設けることができる。