図10、図11は単板式のデジタル一眼レフカメラの概略構成を示す断面図である。図10は光学ファインダーを用いて被写体像を観察するときの状態を示したものであり、図11は背面液晶モニターを用いて被写体像を観察するときの状態を示したものである。
101はカメラ本体であり、102は公知のマウント機構を介してカメラ本体101に電気的、機械的に接続された交換レンズ装置である。交換レンズ装置102の種類を取り替えることにより、異なる画角の撮影画像を得ることが可能である。交換レンズ装置102は内部の結像光学系103を光軸L1方向に沿って移動させることで、合焦状態を調節する。この結像光学系103には赤外線カットフィルターも形成されている。
106はパッケージ124に収納された増幅型固体撮像素子の1つであるCMOSプロセスコンパチブルのセンサ(以下、CMOSセンサと称する)である。CMOSセンサは任意の画素へのランダムアクセスが可能であり、後述する表示装置107での表示用画像を生成するための間引き読み出しが容易であり、高いフレームレートでの画像読み出しが行える。
156は結像光学系103から撮像素子106に至る光路中に設けられた光学ローパスフィルターであり、撮像素子106上に、被写体から必要以上に高い空間周波数成分が伝達されないように構成されている。
107はカメラ本体101の背面に設けられた液晶モニターからなる表示装置であり、撮像素子106で捉えられた被写体の画像データはこの表示装置107によって表示される。
111は結像光学系103からの光束を分割し、その一部を光学ファインダーに導くための可動型のハーフミラーである。105は被写体の予定結像面に配置されたフォーカシングスクリーンであり、112はペンタプリズムである。
109はフォーカシングスクリーン105に投影された被写体の像を観察するためのレンズである。フォーカシングスクリーン105、ペンタプリズム112、レンズ109はファインダー光学系を構成する。ハーフミラー111の背後には可動型のサブミラー122が設けられ、ハーフミラー111を透過した光束のうち光軸に近い光束を焦点検出装置121に偏向している。本実施形態の焦点検出装置121は位相差検出方式の焦点検出を行っている。
ハーフミラー111とサブミラー122から成る光路分割手段は、図10に示す第1の状態と図11に示す第2の状態の2通りのいずれかを選択的にとることができる。光路分割手段は、第1の状態では結像光学系103からの光束を分割して一方をファインダー光学系に導き、他方を焦点検出装置121に導く。また、第2の状態では結像光学系103からの光束をそのまま撮像素子106に導く。
不図示の電磁モータとギア列からなるミラー駆動機構は、ハーフミラー111とサブミラー122の位置を変化させ、これらで構成される光路分割手段の第1の状態と第2の状態とを切り替える。第1の状態は光学ファインダーを用いて被写体像を観察する場合に設定される。そして、第2の状態は表示装置107にて被写体を観察する場合、撮像素子106を用いて焦点検出動作や測光動作を行う場合、あるいは、動画を撮影する場合に設定される。
113は遮光手段としてのフォーカルプレンシャッター、119はカメラ本体の電源のオン、オフを切り替えるためのメインスイッチである。123は被写体を観察するために光学ファインダーを用いるか、表示装置107を用いるかを切り替えるためのファインダーモード切り換えスイッチである。以下、光学ファインダーを用いて被写体を観察させる設定を光学ファインダーモード、表示装置107を用いて被写体を観察させる設定を電子ファインダーモードと称することにする。180は光学ファインダーモードが設定された場合に、シャッター速度や絞り値などの撮影パラメータを表示するための光学ファインダー内情報表示装置である。
シャッター装置には機能や特性の異なる様々な種類のものが存在するが、電子ファインダー機能を備えるデジタルカメラには、光学ファインダー機能のみを備えるカメラに比較して、多くの種類のシャッター装置を適用することができる。
例えば、銀塩カメラで用いられている先幕と後幕を有するフォーカルプレーンシャッター装置を適用できる。
フォーカルプレーンシャッター装置は、シャッター基板に枢支した2組の羽根ユニットを有する。この羽根ユニットは複数に分割された遮光羽根群を2本のアームで各々回転可能に保持して平行リンクを形成している。一方の羽根ユニットは露光時にシャッター開口部を遮蔽状態から開放状態へ移行させる先羽根(先幕とも称する)として作用する。他方の羽根ユニットは露光時にシャッター開口部を開放状態から遮蔽状態へ移行させる後羽根(後幕とも称する)として作用する。先羽根と後羽根を構成する羽根ユニットは、所定方向への付勢力を与えるばね等の駆動源と制御マグネットに吸着保持されるアマーチャとを有した駆動部材に連結されている。
先羽根を構成する羽根ユニットは、撮影前に不図示のチャージレバーによって、アマーチャが制御マグネットのヨーク吸着面に接触する撮影準備位置まで移動され、シャッター開口部を遮蔽した状態で保持される。後羽根を構成する羽根ユニットは、撮影前にやはり不図示のチャージレバーによってアマーチャが制御マグネットのヨーク吸着面に接触する撮影準備位置まで移動され、シャッター開口部を開放した状態で保持される。
不図示のシャッタースイッチが操作されることにより、チャージレバーは羽根ユニットをヨーク吸着面に保持する位置から退避する。それぞれの羽根ユニットは専用のコイルに通電された制御マグネットの磁力により、アマーチャが制御マグネットのヨーク吸着面に吸着した状態で保持される。そして、先に先羽根を構成する羽根ユニットに対応した制御マグネットの通電が断たれて先羽根がシャッター開口部を開放する。シャッター速度を基に設定された所定秒時後、後羽根を構成する羽根ユニットに対応した制御マグネットの通電が断たれて後羽根がシャッター開口部を遮蔽する。こうして撮像面が露光される。これら後羽根ユニットの走行が完了した後、再び不図示のチャージレバーにより、それぞれの羽根ユニットは撮影準備位置へ移動し、次の撮影まで待機する。
図12に、このカメラにおける撮像素子の蓄積動作と、シャッター装置の先羽根、後羽根の走行タイミングを示す。横軸が時間であり、縦軸が撮像素子の撮像領域の上下方向での位置、つまり、羽根の走行方向における位置を示している。M101は露光開始位置として機能する先羽根の最後部のスリット形成端の位置を示し、M201は遮光開始位置として機能する後羽根の最前部のスリット形成端の位置を示す。E101は撮像素子の蓄積を開始するためのリセット動作のタイミングを示し、E201は撮像素子に蓄積された電荷に相当する信号を得るための読み出し動作のタイミングを示す。撮像素子はシャッター装置の先羽根が走行を開始する前に蓄積動作を開始しており、先羽根、後羽根の両方が走行を完了した後に撮像素子の読み出し動作を行っている。つまり、撮像素子が蓄積動作を行っている期間には、先羽根、後羽根の両方が走行する期間が包含されていることになる。
このような構成のカメラにて電子ファインダーモードを実施しようとすると、表示装置107にて被写体を観察する期間は、撮像素子で被写体像を捕らえるために先羽根がシャッター開口部から退避している必要がある。
先羽根をシャッター開口部から退避させるには、チャージレバーを羽根ユニットがヨーク吸着面に保持される位置から退避させ、先羽根の制御マグネット用のコイルへの通電を解除し、先羽根を走行させる。このとき後羽根の制御マグネット用のコイルへの通電は継続し、後羽根をシャッター開口部から退避した位置に保持したままとする。
電子ファインダーモードの間、先羽根用の制御マグネットのヨーク吸着面は剥き出しの状態となり、撮影が終了して再び羽根ユニットが撮影準備位置へ移動されるまでこの剥き出しの状態は続く。撮影者が構図を決めるまでに時間を要すれば、それだけ制御マグネットのヨーク吸着面が剥き出しになる時間が長くなる。そのため、制御マグネットのヨークの吸着面へゴミが侵入する可能性が高くなり、このゴミに起因した先羽根の吸着不良によってシャッター秒時精度が悪化したり、吸着不良によってアマーチャ自体を保持できなくなるといった不都合が生じる可能性がある。
そこで、このような課題を生じない構成として、特開平11−41523号公報に開示されたシャッター装置を備えることが考えられる。
このシャッター装置は後羽根としての羽根ユニットのみを備え、XYアドレス型の撮像素子の電荷蓄積開始を後羽根の走行特性に一致させることで撮像素子の露光時間を制御している。
図13に、このカメラにおける撮像素子の蓄積動作と、シャッター装置の後羽根の走行タイミングおよび走行特性を示す。M202は遮光開始位置として機能する後羽根の最前部のスリット形成端の位置を示す。E102は撮像素子の蓄積を開始するためのリセット動作のタイミングを示し、E202は撮像素子に蓄積された電荷に相当する信号を得るための読み出し動作のタイミングを示す。撮像素子は、設定されたシャッター速度に応じて、シャッター装置の後羽根が走行を開始するよりも所定秒時前に蓄積動作を開始する。この蓄積動作の開始のタイミングは、加速しながら走行する後羽根の走行特性にあわせて、すべての領域において露光量が均等になるように、撮像素子のライン毎に制御されている。撮像素子は後羽根としての羽根ユニットの走行が完了してから、蓄積された電荷の読み出しを行う。
この構成によれば、先羽根としての羽根ユニットが不要となり、スミアが発生しない動画撮影を行うことができ、さらに、十分な精度のシャッター動作で静止画撮影も行うことができることになる。さらに先羽根の吸着不良によってシャッター秒時精度が悪化したり、吸着不良によってアマーチャ自体を保持できなくなるといった不都合が生じることもない。
しかしながら、羽根ユニットはカメラ本体の姿勢や使用環境温度の変化などによって、その走行特性が変化するものであり、これらの影響を無視すれば、特に高速のシャッター速度が設定されたときに露光時間のムラによる影響が大きくなる。先羽根と後羽根の両方を機械的な羽根ユニットで構成した場合は、両方の羽根ユニットに対して均等な影響が及ぶことが多く、羽根ユニット間の走行特性の差異は気にせずとも、さほど問題は生じない。しかしながら、撮像素子によるリセット動作によって露光を開始するタイミングを制御する場合は、リセット動作と後羽根動作とで使用環境温度等による影響の有無に相違がある。
一方、特開2005−159418号公報には先羽根の羽根ユニットの走行特性を検知して、この検知結果を用いてリセット動作によって露光を開始するタイミングを制御することが開示されている。この構成は、撮影直前にこれから走行させる後羽根としての走行ユニットの走行特性を推定できるため、画面全体の露光時間のばらつきを低減できる可能性が高い。
特開平11−41523号公報
特開2005−159418号公報
特開2006−101492号公報
以下に図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明を行う。以下ではデジタル一眼レフカメラを例にあげて説明を行うが、これに限られるものではない。電気信号としての画像データを出力する撮像素子を備え、遮光部材としての羽根ユニットを用いて撮像素子の露光時間を制御する構成を備えた撮像装置であれば、他の構成を有する撮像装置についても本発明を適用することは可能である。
本実施形態にかかるデジタル一眼レフカメラの概略構成は、従来の技術として説明した図10、図11に示すものと同じである。つまり、ハーフミラー111とサブミラー122から成る光路分割手段を備え、図10に示す第1の状態と図11に示す第2の状態の2通りのいずれかを選択的にとることができる構成を有している。また、光学ファインダーを用いて被写体を観察させる設定である光学ファインダーモードと、表示装置107を用いて被写体を観察させる設定である電子ファインダーモードを切り替える構成も有している。
図1に本実施形態にかかるデジタル一眼レフカメラ200の回路のブロック図を示す。
201は結像光学系103を含むレンズ部であり、202はレンズ駆動装置である。レンズ駆動装置202がレンズ部201に含まれる不図示のズーム光学系、結像光学系103を移動させることによって、ズーム制御やフォーカス制御などが行われる。203は遮光手段としてのシャッター装置で、本実施形態では、一眼レフカメラに使用される所謂フォーカルプレーン型のシャッター装置の後羽根に相当する羽根ユニットを供えている。204はシャッター装置203を駆動するためのシャッター駆動装置であり、上述したチャージレバーや制御マグネットにて構成されている。
図2にシャッター装置203の概略構成を示す。301はシャッター地板、301aは被写体にて反射された光束を通過させるためにシャッター地板301に形成されたシャッター開口部である。302は第1アーム、303は第2アームであり、それぞれシャッター地板301に設けられた軸の周りに回転自在に取り付けられている。311乃至314は後羽根であり、第1のアーム302に設けられたダボと第2のアーム303に設けられたダボによって、これらアームに対して回転自在に支持されている。第1のアーム302、第2のアーム303、および、遮光羽根としての後羽根311乃至314によって平行リンクを形成した羽根ユニットを構成する。
チャージレバーによって撮影準備位置へ移動された図2に示す状態から、シャッター駆動装置204の制御マグネット用のコイルの通電を切る。すると後羽根311、後羽根312、後羽根313、後羽根314の順にシャッター開口部301aを覆い始める。311aは後羽根311の進行方向先端のスリット形成端であり、後述の撮像素子205にて電荷蓄積が開始され、このスリット形成端311aにて遮光されるまでの時間が、撮像素子の、その領域における露光時間となる。
なお、図2に記載のシャッター装置203は、撮影準備位置では図の下方に後羽根が位置し、撮影時にこの羽根ユニットが図の上方に向かって移動する向きに記載されている。説明の便宜上の都合により、上述した図12と図13、後述する図6、図8および図9では、撮影時に後羽根が図の上方から下方に向かって移動するものとして記載する。
図1に戻り、205は被写体からの光束を受光することにより、その光量に応じて電荷を蓄積し、これを基に被写体の画像データを生成する撮像素子であり、図10、図11における撮像素子106に該当する。206は画像信号処理回路であり、撮像素子205より出力される画像データのアナログ信号を増幅する。また、画像信号処理回路206は画像データをアナログ信号からディジタル信号に変換をするA/D変換処理や、A/D変換後の画像データに各種の補正処理を施したり、画像データに圧縮処理を施したりする。
207は固体撮像素子205、撮像信号処理回路206に、タイミング信号を出力するタイミング発生部であり、208は画像データを一時的に記憶する為のメモリ部である。209は撮像装置全体の動作を統括して制御し、また、撮影パラメータや画像データの補正処理の係数を演算するための制御回路である。210は記録媒体211への画像データの記録、あるいは、記録媒体211から画像データの読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部である。211は画像データの記録または読み出しを行う為の半導体メモリ等の着脱可能な記録媒体、212は外部コンピュータ等と通信する為の外部インターフェース部である。
213はペンタプリズム112の近傍に配置され、光学ファインダーモードのときに光学ファインダーに進入してきた光束を用いて被写体の輝度を測定する測光装置である。214は光学ファインダーモードのときにハーフミラー111およびサブミラー122にて反射された光束を用いて被写体の焦点状態を検出する焦点検出装置であり、図10、図11の焦点検出装置121に該当する。215は重力センサーを用いてカメラ本体の向きを検知する姿勢検知装置である。216は電子ファインダーモードのときに被写体を動画として表示したり、撮影した画像を表示するための表示装置であり、図10、図11の表示装置107に該当する。
次にXYアドレス型の撮像素子の走査方法について説明する。撮像素子の画素毎、または、ライン毎に蓄積された不要電荷を除去する走査(以下、リセット動作と称する)を実行する。そして、画素毎、または、ライン毎に信号電荷を読み出す走査を行うことで蓄積動作を終了する。このようにリセット走査と読み出し走査を撮像素子の領域別に時間差で行う構成を、以下、ローリング電子シャッターと称する。
続いて、図3、図4を用いてXYアドレス型の撮像素子の構造と駆動方法について述べ、ローリング電子シャッター動作を説明する。
図3はXYアドレス型の走査方法を採る撮像素子の構成を表したものである。401は単位画素である。402は光を電荷に変換するフォトダイオード(以下、PDと称する)である。403は転送パルスφTXによってPDで発生した電荷を後述するFDに転送する転送スイッチである。404は電荷を一時的に蓄積しておく電荷検出部(以下、FDと称する)であり、405はソースフォロアとして機能する増幅MOSアンプである。406は選択パルスφSELVによって画素を選択する選択スイッチであり、407はリセットパルスφRESによってFDに蓄積された電荷を除去するリセットスイッチである。FD404、増幅MOSアンプ405、及び後述する定電流源409でフローティングディフュージョンアンプが構成される。そして、選択スイッチ406で選択された画素の電荷が電圧に変換され信号出力線408を経て読み出し回路413に出力される。409は増幅MOSアンプ405の負荷となる定電流源である。
410は読み出し回路413から出力信号を選択する選択スイッチであり、水平走査回路414によって駆動される。また、412はスイッチ403、406、407を選択するための垂直走査回路である。
φTX、φRES、φSELVそれぞれにおいて垂直走査回路412によって走査選択されたn番目の走査ラインをφTXn、φRESn、φSELVnとする。
図4は従来のローリング電子シャッター動作における駆動パルスと動作シーケンスを表したものである。なお図4では垂直走査回路412によって走査選択されたnラインからn+3ラインに関して記述している。
ローリング電子シャッター動作では、nラインにおいて、まず時刻t41からt42の間、φRESnとφTXnにパルスを印加され転送スイッチ403及びリセットスイッチ407をオンにする。そして、nライン目のPD402とFD404に蓄積されている不用電荷を除去するリセット動作を行う。
リセット動作が行われると、時刻t42で転送スイッチ403がオフになり、PDに発生した光電荷が蓄積される蓄積動作が開始される。次に時刻t44においてφTXnにパルスを印加され転送スイッチ403をオンにし、PD402に蓄積された光電荷をFD404に転送する転送動作を行う。なお、リセットスイッチ407は、転送動作に先んじてオフする必要があり、本図では、時刻t42で転送スイッチ403と同時にオフとなる。ここで、時刻t42から時刻t44までが蓄積時間となる。
nライン目の転送動作終了後φSELVnにパルスが印加され選択スイッチ406がオンすることにより、FD404で保持した電荷が電圧に変換され、読み出し回路413に出力される。読み出し回路413で一時的に保持された信号が水平走査回路412によって時刻t46より順次出力される。時刻t44の転送開始から時刻t47の読み出し終了までをnラインでのT4readとし、時刻t41から時刻t43までの時間をn+1ラインでのT4waitとする。他のラインにおいても同様に、転送開始から読み出し終了までの時間がT4readとなり、あるラインのリセット開始から次のラインのリセット開始までの間の時間がT4waitとなる。
このようにローリング電子シャッター動作では撮像素子の上下の領域で蓄積されるタイミングは異なるが、それぞれの蓄積に要する時間は撮像素子の上下の領域で等しくすることが可能である。
ここで、本実施形態においては、リセット動作によって電荷の蓄積動作を開始してから羽根ユニットによって遮光するまでの時間を変更することによって撮像素子の露光時間を制御する構成となっている。
この構成では、撮像素子をリセットしてから羽根ユニットによって遮光されるまでが実質的な撮像素子の露光時間となるため、蓄積に要する時間を撮像素子の上下の領域で等しくする必要はない。本実施形態では、撮像素子のPDとFDのリセット動作をライン毎に等間隔で行うのではなく、このリセット動作を後羽根の走行特性に合わせる必要がある。ここで、後羽根の走行特性とは、後羽根の走行時の、時間経過に対する後羽根の走行位置を示した特性のことである。
図5は本実施形態のローリング電子シャッター動作における撮像素子の駆動パルスと動作シーケンスを表したものである。図4と同様に、図5も垂直走査回路412によって走査選択されたnラインからn+3ラインに関して記述している。
電子先幕シャッターでは、nラインにおいて、まず時刻t51からt52の間、φRESnとφTXnにパルスを印加され転送スイッチ403及びリセットスイッチ407をオンにする。これにより、nライン目のPD402とFD404に蓄積されている不用電荷を除去するリセット動作を行う。
時刻t52で転送スイッチ403がオフになり、PDに発生した光電荷が蓄積される蓄積動作が始まる。次に時刻t54においてφTXnにパルスを印加され転送スイッチ403をオンにし、PD402に蓄積された光電荷をFD404に転送する転送動作を行う。なお、リセットスイッチ407は、転送動作に先んじてオフする必要があり、本図では、時刻t52で転送スイッチ403と同時にオフとなる。ここで、時刻t52から時刻t54までがnラインの蓄積時間となる。
nライン目の転送動作終了後φSELVnにパルスが印加され選択スイッチ406がオンする事により、FD404で保持した電荷が電圧に変換され、読み出し回路413に出力される。読み出し回路413で一時的に保持された信号が水平走査回路412によって時刻t56より順次出力される。時刻t54の転送開始から時刻t57の読み出し終了までをT5readとし、時刻t51から時刻t53までの時間をT5waitとする。この時刻t53で、n+1ライン目での蓄積動作が始まる。他のラインにおいても同様に、転送開始から読み出し終了までの時間はT5readとなるが、あるラインのPDとFDのリセット開始から次のラインのPDとFDのリセット開始までの間の時間T5waitは等間隔とはならない。あるラインのPDとFDのリセット開始から次のラインのPDとFDのリセット開始までの間の時間T5waitは、後羽根の走行特性が通過するまでの時間が全てのラインでほぼ同じ間隔になるように、後羽根の走行特性に沿うようにそのタイミングを制御する。
しかしながら、後羽根の走行特性はある程度は予測できても、カメラの姿勢、使用環境温度、湿度、電源状態、作動回数、撮影間隔等の数多くの要因によって変化するため、撮像素子のリセット動作を後羽根の走行特性に一致させることは困難である。
そこで、本実施形態では後述する方法によって、撮像素子の領域毎の露光時間のばらつきやズレを低減させる処理を行っている。
ここで、本実施形態におけるデジタル一眼レフカメラの撮影時の動作について説明する。ここでは、ファインダーモードとして光学ファインダーモードが設定されている場合を例にあげて説明する。
デジタル一眼レフカメラの電源がオンすると、画像信号処理回路206やタイミング発生部207などの撮像系回路の電源がオンされる。
図示しないレリーズボタンが一段分押され、撮影準備動作に入ることを指示されると、制御回路209は測光装置213に測光を行わせて被写体輝度を判定する。制御回路209は判定した被写体輝度に応じて、適正なシャッター速度(以下、目標露光時間と称する)と絞り値を決定する。また、制御回路209は焦点検出装置214から出力された信号をもとに、被写体の高周波成分を取り出し、被写体までの距離を演算する。
レンズ部を駆動して主たる被写体と判定された対象が合焦状態となるよう、レンズ駆動装置202にレンズ部201の位置を調節させる。主たる被写体が合焦状態になると、音や焦点検出枠を点灯させる等の方法によってその旨を使用者に知らせる。
図示しないレリーズボタンが更にもう一段分押され撮影を開始することを指示されると、制御回路209はハーフミラー111とサブミラー122から成る光路分割手段を跳ね上げて図11に示す状態とする。
撮像素子205のリセット動作を開始し、決定された目標露光時間に応じた時間が経過した後、後羽根としての羽根ユニットの走行を開始させる。なお、羽根ユニットの走行を開始するタイミングは、シャッター駆動装置204に羽根ユニットの走行を開始させるための信号を出力してから後羽根311が撮像素子205を覆うまでの時間も考慮されて決定される。
そして、羽根ユニットの走行が完了し、シャッター開口部301aが後羽根311乃至314にて完全に覆われた後で、撮像素子205は蓄積された電荷の読み出し走査をライン毎に行う。
なお、ファインダーモードとして電子ファインダーモードが設定されている場合は、レリーズボタンが一段押されるよりも前にハーフミラー111とサブミラー122から成る光路分割手段を跳ね上げて図11に示す状態とする。撮像素子205は読み出し動作を周期的に行い、表示装置216に被写体の画像を連続して表示する。そして撮像素子205から得られる画像データを基に適正なシャッター速度と絞り値を決定し、主たる被写体と判定された対象が合焦状態となるよう、レンズ駆動装置202にレンズ部201の位置を調節させる。そして、レリーズボタンが更に一段押されたタイミングにあわせて撮像素子205のリセット動作を行い、羽根ユニットを走行させる。
撮影動作が終了すると、撮像素子205から出力された画像データは画像信号処理回路206にて増幅され、さらに、A/D変換され、制御回路209によりメモリ部208に書き込まれる。
その後、メモリ部208に蓄積された画像データは、制御回路209によって後述するゲイン補正が行われ、補正された画像データは記録媒体制御インターフェース部210を介して着脱可能な記録媒体211に記録される。
次に、図6ないし図8を用いて、後羽根の走行特性の検出方法について説明する。図6は、撮像素子205およびシャッター装置203の後羽根を光軸方向の被写体側から見た図であり、撮像面を後羽根にて遮光する前の待機状態である。矢印20は、リセット動作および読み出し動作の走査方向と、後羽根の走行方向を示す。
21は撮像素子205の撮像面である。311は走行時に先頭となる後羽根である。後羽根311の先端311aは、撮像素子205に配列されているラインセンサと平行になるように形成されている。21a、21bは走行検知部であり、撮像面21の後羽根の走行方向にずれた複数の位置に設けられる。本実施形態では撮像面21のうち、後述する後羽根走行検知に使用する最上部の複数行と最下部の複数行のラインセンサをそれぞれ示している。
本実施形態では後羽根の走行特性の検出は、撮像素子の電荷リセット動作と電荷読み出し動作の間に蓄積された電荷量と、同じく撮像素子の電荷リセットとメカニカルシャッタの走行の間に蓄積された電荷量を比較することで行う。
図6において、それぞれの走行検知部21a、21bのラインセンサに対し、電荷リセット動作が開始されてから後羽根311の先端311aによって遮光されるまでの時間が、その走行検知部におけるラインセンサの露光時間となる。
図7は後羽根の走行特性の検知および撮影を行うためのフローチャートである。図7に示すフローチャートでは、まずはそれぞれの走行検知部21a、21bにて、リセット動作を行ってから後羽根311ないし314を走行させずに読み出し動作を行うことで第1の電荷蓄積量を得る。そして、次にリセット動作を行ってから後羽根311ないし314を走行させて読み出し動作を行うことで第2の電荷蓄積量を得る。第1の電荷蓄積量を得たときのリセット動作と読み出し動作の間隔と、第2の電荷蓄積量を得たときのリセット動作と後羽根による遮光の間隔が等しければ、これらの電荷蓄積量はおおよそ等しくなるはずである。
まず不図示のレリーズボタンによって撮影が指示されると、ステップS21にて制御回路209はミラー部材を跳ね上げて光路から退避させる。
ステップS22にて制御回路209は撮像素子205の走行検知部21a,22bにリセット動作を行わせステップS23に進む。走行検知部21a、21bのリセット動作の開始のタイミングは、ライン毎に1つの走行検知部での読み出し動作に要する時間だけずらして行われる。走行検知部21aの全てのラインセンサでのリセット動作が開始されれば、間を空けずにすぐさま走行検知部21bでのリセット動作が開始される。
ステップS23にて、走行検知部21a,22bのそれぞれにて、リセット動作から所定時間経過後に読み出し動作を行い、走行検知部での第1の電荷蓄積量を得る。この読み出し動作は、撮像面の全面積よりも小さな走行検知部21a,22bに該当する領域から電荷を読み出せば済むので、短時間で読み出すことができる。
例えばアスペクト比が3:2の600万画素の撮像素子を想定した場合、ラインセンサは2000行並んでおり、全画素の電荷蓄積量を読み出すのにかかる時間は100ms〜200msである。
しかしながら、走行検知部21a,22bのそれぞれがラインセンサ5行で構成され、これらラインセンサ10行分を読み出すのであればその1/200の時間で済み、0.5ms〜1.0msで読み出すことができる。
したがって第1の電荷蓄積量を得るための動作にかかる時間は、先のリセット動作から読み出しまでの所定時間T0を例えば1/1000秒(1ms)程度に設定すれば、2ms程度という非常に短時間で完了することができる。
ステップS23の読み出し動作の完了後、ステップS24ないしステップS26において、後羽根311ないし314を用いた露光動作によって撮影を行うとともに、走行検知部21a,21bの電荷蓄積量を得る。
具体的には、ステップS24にて予め推定された後羽根311ないし314の走行特性に沿うようにタイミングをあわせて走行検知部21a、21bのリセット動作を行う。
ステップS25にて、走行検知部21aでの露光時間が所定時間T0となることを狙って後羽根311ないし314を走行させ、撮像面21の走行検知部21a、21bを遮光させる。
ステップS26にて走行検知部21a、21bを含む撮像素子205の全ての領域から電荷の読み出しを行って画像データを得るとともに、走行検知部21a、21bから読み出された電荷から第2の電化蓄積量を得る。この電荷の読み出しが完了すると、撮像動作、または、後羽根の走行検知動作に入るために後羽根311ないし314のチャージを行って走行開始位置に戻す。
図8は、後羽根の走行特性と電荷蓄積量の関係を説明するための図である。
図8において、縦軸は撮像素子104の撮像面の上下方向における位置を示し、横軸は時間を示す。図8において、71a、71bはそれぞれ走行検知部21a、21bにおけるリセット動作(ステップS22)の走査のタイミングを、72a、72bは同じ走行検知部21a、21bにおける読み出し動作(ステップS23)の走査のタイミングを示す。71aと72aの間隔と71bと72bの間隔はいずれも所定時間T0あり、走行検知部21a、21bにおける露光蓄積時間は等しくなっている。このリセット動作及び読み出し動作の走査の露光動作で得られる走行検知部21a、21bの電荷蓄積量をQa,Qbとする。走行検知部21aと21bの露光蓄積時間がともにT0で等しくとも、このときの被写体の輝度が一様でなければ、電荷蓄積量QaとQbは異なる値となる。
81は撮像面21の全領域にかかるリセット動作の走査のタイミングを示し、82は撮像面21の全領域にかかる後羽根の走行特性を示している。81a、81bはそれぞれ走行検知部21a、21bにおけるリセット動作(ステップS24)の走査のタイミングを、82a、82bはは同じ走行検知部21a、21bにおける後羽根の先端311aの走行(ステップS25)のタイミングを示す。また、83a、83bはは同じ走行検知部21a、21bにおける電荷の読み出し動作(ステップS26)の走査のタイミングを示す。このリセット動作及び後羽根の走行による露光動作で得られる走行検知部21a、21bの電荷蓄積量をqa,qbとする。
ここで、上述したようにステップS22、ステップS23とステップS24ないしステップS26のそれぞれの走行検知部における被写体の状況変化、つまり輝度変化は、非常に短時間で行われるため無視できるものとする。すると、電荷蓄積量Qaとqa、電荷蓄積量Qbとqbの比はそれぞれの走行検知部での露光時間の比となる。
したがって、走行検知部21aにおけるステップS24ないしステップS26での実際の平均露光蓄積時間taは、電荷量Qaとqaの比となるため、以下の関係となる。
ta=T0*qa/Qa ・・・(1)
同様に、走行検知部bにおける21aにおけるステップS24ないしステップS26での実際の平均露光蓄積時間tbは、以下の関係となる。
tb=T0*qb/Qb ・・・(2)
T0に対するtaの値を、目標とする露光時間に対する実際の後羽根の走行開始タイミングのずれと考えられるため、得られた画像データ全体は露光時間が以下の式だけずれているとみなすことができる。
ta/T0 ・・・(3)
次に、後羽根の走行特性に対するリセット動作のタイミングのずれは、後羽根の走行特性を一次関数に近似することで、撮像素子205のライン毎に次式で求められる。
tb/ta×n/v0 ・・・(4)
ただし、v0は撮像素子205のラインの総数であり、nは図8の上部からのライン数を示している。
この(3)式、(4)式で表される分だけ撮像素子の各ラインにおいて実際の露光時間が目標とする露光時間からずれている。そのため、この逆数を加味した以下の式で表されるゲイン補正を各ラインに相当する画素に対して行えば、露光時間を目標値に一致させたときの画像データに相当する画像データを得ることができる。
1/(ta/T0×tb/ta×n/v0)×Y ・・・(5)
ただし、Yは画像データのゲイン補正対象となるが素の輝度信号の値を表している。
図9に、この(5)式で表されるゲイン補正の概念を示す。撮影によって得られた画像データの輝度信号に対して、羽根ユニットの走行開始タイミングのずれと、一次式で近似された目標値に対する実際の走行特性の形状のずれを考慮して、ゲイン補正による輝度補正を行っていることを示している。
なお、実際の露光時間と目標露光時間の差分を補償するための方法はこれだけに限定されるわけではない。
例えば、(4)式は一次関数として求めたが、決定されたシャッター速度を考慮して二次以上の関数として求めても構わない。また(5)式の代わりに予めゲイン補正の値を補正テーブルに記憶しておき、目標露光時間T0、ta及びtbの値の組み合わせに応じて選択的にゲイン補正の値を読み出してもよい。
さらに後羽根だけでなく、露光時間の開始タイミングを規定する先羽根もシャッター装置の羽根ユニットによって構成した場合にも本発明を適用することが可能である。後羽根としての羽根ユニットと同様に、先羽根としての羽根ユニットの通過タイミングを検知することにより、2つの羽根ユニットの走行間隔の目標値に対する差分が求められる。さらに、上述の(4)式と同様に求めることで、2つの羽根ユニットの走行特性の差分も求められる。これらの差分を考慮したゲイン補正を撮影した画像に施すことで、先羽根として撮像素子の電子シャッター機能を用いた場合と同様に、撮像素子の領域別に生じる露光時間のばらつきを適正に補償することができる。
また、(4)式を用いて次回の撮影時のリセット動作のタイミングを補正しても構わない。
なお、上述の輝度補正の処理を、撮影したカメラとは別の装置上で行っても構わない。目標露光時間T0、ta及びtbに相当する値を撮影によって得られた画像データに付随して記録媒体に保存させ、この画像データを読み出した画像処理装置にて上述のゲイン補正を行うことも可能である。つまり、画像データが得られたときの撮像素子の領域別のリセット動作のタイミングを示す情報と、羽根ユニットの走行特性を示す情報があれば、これらの差分等の比較結果から画像データを生成した撮像装置とは別の画像処理装置で輝度補正することが可能である。