JP4750256B2 - グリコリドの精製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はグリコール酸の環状二量体エステルであるグリコリドの精製方法に関する。
さらに詳しくいえば、特定のポリアルキレングリコールエーテル(解重合溶媒)中でグリコール酸オリゴマーを加熱解重合させ、生成したグリコリドを解重合溶媒と共に留出させた後、80℃以下に冷却して析出したグリコリドを解重合溶媒と固液分離して得られたろ過ケークを特定の有機溶媒にて洗浄して高純度のグリコリドを取得する経済的かつ効率的なグリコリドの精製方法に関する。
本発明により精製されるグリコリドは、生分解性ポリマーや医療用ポリマーとして有用なポリグリコール酸の出発原料やコモノマーなどとして使用することができる。
【0002】
【関連技術】
ポリグリコール酸は、グリコール酸(α−ヒドロキシ酢酸)が脱水重縮合して形成される下記式で示されるポリエステルである。
【化1】
Figure 0004750256
【0003】
ポリグリコール酸は、生体内で加水分解され、自然環境下で微生物によって水と炭酸ガスに代謝、分解される。このため、医療用材料や汎用樹脂に代替する生分解性ポリマー等として注目されている。
しかし、グリコール酸を直接出発原料として高分子量のポリグリコール酸を得ることは困難である。このため、ポリグリコール酸の製造方法としては、グリコール酸の環状二量体である下記式
【化2】
Figure 0004750256
で示されるグリコリドを合成した後、触媒(例えば、オクタン酸錫など)の存在下に開環溶融重合する方法が知られている。
【0004】
グリコリドを原料としてポリグリコール酸を工業的規模で生産するためには、高純度のグリコリドを経済的に供給することが不可決である。
グリコリドは、グリコール酸2分子から水2分子が脱離した環状エステルであるが、グリコール酸のエステル化反応では、通常オリゴマーが形成されグリコリドは得られない。
グリコリドを得る関連技術としては、従来以下の方法が知られている。
【0005】
米国特許第2,668,162号には、グリコール酸オリゴマーを粉末状に砕き、ごく少量ずつ反応器に供給しながら(約20g/時)、超真空下(12〜15torr(1.6〜2.0kPa))、270〜285℃に加熱して解重合させ、生成したグリコリドを含む環状エステル類の蒸気をトラップ内で捕集する方法が開示されている。この方法は小スケールで実施することは可能であるがスケールアップが困難で量産化には不向である。しかも、この方法では加熱解重合時にオリゴマーが重質物化して多量の残渣として反応容器内に残り、収率が悪く、残渣のクリーニング操作が煩雑である。また、グリコリド(融点:82〜83℃)及び副生物が回収ラインの管内に析出し、その閉塞等を引き起こしやすい。
【0006】
米国特許第4,727,163号には、熱安定性に優れたポリエーテルを基体(substrate)とし、それにグリコール酸をブロック共重合させたブロック共重合体を加熱、解重合してグリコリドを得る方法が開示されている。しかし、このブロック共重合プロセスは、操作が煩雑で生産コストが高い。また、この方法も80℃以上の融点を有するグリコリド及び副生物が回収ラインの管内に析出し、その閉塞等を引き起こしやすい。
【0007】
米国特許第4,835,293号及び5,023,349号では、加熱・解重合で生成した環状エステルを不活性ガス(窒素など)に同伴させ、イソプロピルアルコールのような低沸点溶媒中でストリッピングし、回収する方法が開示されている。この方法は大量の不活性ガスを吹き込むために予備加熱を要するなど生産コストが高くなる傾向にある。
【0008】
フランス特許2692263-A1には、触媒を添加した溶媒にα−ヒドロキシカルボキシル酸(そのエステルまたは塩でもよい)のオリゴマーを加えて加熱下に撹拌し接触分解する方法が開示されている。この方法は環状二量体エステルを気相状態で連行するのに適した溶媒を用いて常圧または加圧下にて行われ、気相を凝縮してエステルと溶媒とを回収しているが、具体例としては、原料として乳酸オリゴマー、溶媒としてドデカン(沸点:約214℃)を用いた例が示されているのみである。しかし本発明者らがグリコール酸オリゴマーとドデカンを用いて、この特許の実施例と同様の条件にて追試したところ、解重合反応開始と同時に重質物化が進行し、極めてわずかのグリコリドが生成した時点でグリコリドの生成が停止し、しかも反応残渣は粘調でクリーニングに多大な労力を要した。
【0009】
また、これら従来のグリコリド製造方法では、得られたグリコリドをポリグリコール酸の重合原料として用いる場合、グリコール酸などの不純物を取り除くために有機溶媒による再結晶精製が必要であった。
【0010】
本出願人は、これらの従来技術に鑑み、高沸点の極性有機溶媒(芳香族エステル系化合物)とα−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを加熱して実質的に均一な溶液相を形成し、その状態で加熱を継続することにより環状エステルと極性有機溶媒を共に留出させ、留出物中から環状二量体エステルを回収する製造方法及び精製方法を提案している(特開平9-328481号)。この方法をグリコール酸オリゴマーからのグリコリドの生成工程に用いることにより解重合反応中のオリゴマーの重質物化を防ぐことができ、グリコリドを高収率で得ることが可能となり、反応終了後の反応容器のクリーニングも容易に行なえ、グリコリドの大量生産が可能となった。しかし、この溶液解重合プロセスにおいて得られるグリコリドは、極性有機溶媒の熱分解物などの不純物を含んでおりポリグリコール酸の重合原料として用いる場合には有機溶媒により再結晶して精製することが必要である。
【0011】
その後の検討の結果、高沸点の芳香族エステル系溶媒は解重合反応中に熱劣化を起こしやすく、溶媒を再利用するための精製工程が必要であり、さらに劣化した溶媒に相当する量を新たに加える必要があり、グリコリド製造プロセス全体としての高コスト要因となることが判明した。
さらに検討した結果、特定のポリアルキレングリコールエーテルを解重合溶媒として用いると解重合反応中に熱劣化が起きにくく、解重合溶媒を再利用することが可能であり、グリコリド製造プロセスを工業的に実施し得ることを確認した(特願2000-244449号)。
【0012】
また、グリコリド等の環状エステルの精製方法として、本出願人は上昇原料結晶と精製結晶成分の降下融解液と向流接触による方法を提案している(特願2000-96713号)。この方法は、縦方向に伸びる筒型の精製塔の下部から高沸点有機溶媒が付着している環状エステルの原料結晶を投入し上昇させながら撹拌し、精製塔内での精製結晶成分の降下融解液と上昇原料結晶との向流接触により、結晶の表面に付着している母液および不純物を洗い流すと共に結晶内部に取り込まれている母液および不純物を発汗作用により精製するものであり、洗浄液や再結晶溶媒を用いないなどの利点を有し、連続生産に適した方法であるが、結晶の融点以上の温度まで加熱するため、不純物成分によってはグリコリドと反応し結晶が変質してしまう恐れがある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、本出願人による特願2000-244449号に記載の方法における解重合反応により生成したグリコリドを従来技術の再結晶法よりも工程数を減らし、また、連続的な大量生産だけではなく、非連続的な少量生産にも適したプロセスにより、経済的かつ効率的にグリコリドを精製する方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、グリコール酸オリゴマーと特定の解重合溶媒との混合物を加熱してオリゴマーを解重合させ、生成したグリコリドを解重合溶媒とともに留出させたのち、留出液を80℃以下に冷却させる方法(特願2000-244449号)により得られる析出グリコリドは高純度であり、解重合溶媒とグリコリドを固液分離した後、ろ過ケーク状のグリコリドから解重合溶媒を取り除くことで容易に高純度グリコリドを単離できることを見出した。そこで解重合溶媒をグリコリドから取り除く方法を検討した結果、解重合溶媒は常圧における沸点が230〜450℃の高沸点極性溶媒であるため、200℃以下の沸点を有し、解重合溶媒と相溶性の有機溶媒でろ過ケークを洗浄することでろ過ケーク中の解重合溶媒を洗浄有機溶媒に置換した後、乾燥して洗浄有機溶媒を除去する方法がもっとも効率的な方法であることを見出した。
【0015】
つまり、解重合溶媒として特定のポリアルキレングリコールエーテルを用い、オリゴマー融液と解重合溶媒と所望により可溶化剤とからなる液相が実質的に均一な相を形成した溶液の状態で加熱して解重合反応を進行させれば、溶媒の熱劣化が起きず、かつ留出液は実質グリコリドと解重合溶媒の二種類の物質が大半を占めるため、グリコリドの融点(82〜83℃)以下である80℃以下に留出液を冷却することにより高純度のグリコリドが結晶化物として得られることを確認した。前記従来法などの方法で得られる粗グリコリドはグリコール酸などの不純物が多すぎ、冷却により得られる結晶化物中に不純物が多量に取り込まれやすく、再結晶が必要であったが、熱安定性に優れた特定のポリアルキレングリコールエーテルを解重合溶媒として用いることで留出したグリコリドは冷却による結晶化とその後の解重合溶媒の除去により高純度に精製され、グリコリドの工業的な大量生産が可能となることを確認して本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は特定の解重合溶媒を用いて、または所望により可溶化剤を併用してグリコール酸オリゴマーを解重合して得られる、以下のグリコリドの精製方法を提供するものである。
1.グリコール酸オリゴマー融液と、沸点が230〜450℃、分子量が150〜450で、少なくとも一方の末端のエーテル基が炭素数2〜20のアルキル基またはアリール基を含む少なくとも一種のポリアルキレングリコールエーテル溶媒(解重合溶媒)とが実質的に均一な相を形成した状態で200〜320℃の温度にて加熱してグリコール酸オリゴマーを解重合反応に付し、生成したグリコリドを解重合溶媒と共に留出させ、留出液を80℃以下に冷却し、析出したグリコリドを解重合溶媒と固液分離して得られるグリコリドのろ過ケークを、沸点200℃以下で、ポリアルキレングリコールエーテル溶媒と相溶性の有機溶媒にて洗浄することを特徴とするグリコリドの精製方法。
2.前記解重合溶媒よりも親グリコール酸オリゴマー性が高く、かつ解重合反応時に実質的にグリコリドと共に留出しない沸点を有する可溶化剤を併用して解重合反応を行い、生成したグリコリドを解重合溶媒と共に留出させ、留出液を冷却し、析出したグリコリドを解重合溶媒と固液分離して得られるグリコリドのろ過ケークを前記有機溶媒にて洗浄する前記1に記載のグリコリドの精製方法。
3.沸点200℃以下、25℃におけるグリコリドの溶解度が20%以下でポリアルキレングリコールエーテル溶媒と相溶性の有機溶媒にて洗浄する前記1または2に記載のグリコリドの精製方法。
4.有機溶媒が、炭素数1〜4のアルコールである前記3に記載のグリコリドの精製方法。
5.炭素数1〜4のアルコールが、イソプロピルアルコールである前記4記載のグリコリドの精製方法。
6.前記1または2で洗浄によって生成した洗浄回収液から解重合溶媒及び/または有機溶媒を分離回収して、解重合溶媒及び/または有機溶媒として再利用する前記1または2に記載のグリコリドの精製方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のグリコリドの精製方法は、解重合溶媒が、沸点が230〜450℃かつ、分子量150〜450で、少なくとも一方の末端のエーテル基が炭素数2〜20のアルキル基またはアリール基を含む少なくとも一種のポリアルキレングリコールエーテルであり、かつグリコール酸オリゴマー融液と解重合溶媒と所望により可溶化剤からなる液相が実質的に均一な相を形成した状態で200〜320℃の温度にて加熱する解重合反応により生成したグリコリドを、解重合溶媒と共に留出させ、留出液を80℃以下に冷却し析出したグリコリドを解重合溶媒と固液分離後、そのろ過ケークを沸点が200℃以下であり、25℃におけるグリコリドの溶解度が20%以下で、かつポリアルキレングリコールエーテル(解重合溶媒)と相溶性の有機溶媒にて洗浄することを特徴とする。
【0018】
以下、本発明のグリコリドの精製方法について詳述する。
本発明のグリコリドの精製法は、特定のグリコリドの製造方法で得られたグリコリドを精製する場合において効果を発揮する。したがって、特定のグリコリドの製造方法についてまずは説明する。
【0019】
(a)グリコール酸オリゴマー
本発明のグリコリドの精製方法の原料として用いるグリコリドはグリコール酸オリゴマーを解重合することによって得られる。グリコール酸オリゴマーは、常法により容易に合成することができる。本発明においては、グリコール酸オリゴマーは、反応前に反応槽に一括して添加してもよいし、反応中に連続添加、分割添加のいずれかまたはその組み合わせで添加してもよい。ただし、後述するように、解重合反応中、反応槽内のオリゴマーが溶媒との均一な融解相(溶液相)を形成していることが必要である。また、オリゴマーと溶媒の溶液相がより均一になるように、別途予備反応槽を設け、そこで均一層を形成後、解重合の反応槽に導入してもよい。
【0020】
(b)ポリアルキレングリコールエーテル
本発明で解重合反応の溶媒として用いられ、また生成したグリコリドを反応系から取り出すために用いられるポリアルキレングリコールエーテルは沸点が230〜450℃の範囲内、かつ分子量が150〜450の範囲内であり、下記の構造式
【化3】
Figure 0004750256
(式中、Xは炭化水素基、Yは炭素数2〜20のアルキル基またはアリール基であり、p及びqは1以上の整数である。)を有する化合物である。すなわち、少なくとも一方の末端のエーテル基が炭素数2以上のアルキル基またはアリール基を有するポリアルキレングリコールエーテルである。
【0021】
これらのポリアルキレングリコールエーテルは慣用の合成法により製造することができる。例えば、最も一般的には、アルキレンオキサイドをアルコールで重付加させてポリアルキレングリコールモノエーテルを得たのち、末端ヒドロキシ基をエーテル化する。エーテル化の方法はいくつか知られており、特に制限されないが、一般的にはポリアルキレングリコールモノエーテルと、金属ナトリウムや水素化ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの存在下にハロゲン化アルキルを反応させる方法、その際にヨウ化ナトリウムを共存させる方法や、ハロゲン化アルキルの代わりにエーテル基に相当するアルコールを塩化スルホニル化した後に用いる方法などがよく知られている。
【0022】
(c)解重合反応
本発明の精製法に供するグリコリドの製造方法は、グリコール酸オリゴマーの解重合を溶液相の状態で行う点に最大の特徴を有する。解重合が起こる200℃以上の温度でオリゴマーの大半が溶媒に溶解しないで融液相を形成する場合には、グリコリドが留出しにくく、融液相が重質化しやすい。オリゴマーの大半を溶液相の状態で加熱することにより、グリコリドの発生及び揮発速度が飛躍的に大きくなる。
【0023】
具体的には、グリコール酸オリゴマーを、必要であれば適当な粒度に粉砕してから反応容器に装入し、上記のポリアルキレングリコールエーテルと混合する。グリコール酸オリゴマーとポリアルキレングリコールエーテルとを含む混合物は、200℃以上の温度に加熱することにより、オリゴマーの全部もしくは大半が溶媒に溶けて溶液相を形成する。オリゴマーの融解及び溶解の操作は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0024】
グリコール酸オリゴマーは、ポリアルキレングリコールエーテルとの均一な液相とすることが好ましいが、オリゴマー融液相の残存率において0.5以下であればオリゴマー融液相が共存してもよい。ここで、「融液相の残存率」とは、流動パラフィンのようにグリコール酸オリゴマーに対して実質的に溶解力のない溶媒中にオリゴマーA(g)を加えて加熱した際に形成されるオリゴマー融液相の容積がa(ml)、実際に使用する溶媒中でオリゴマーA(g)を加熱して形成されるオリゴマー融液相の容積がb(ml)である場合に、b/aの比率を表す。
【0025】
この状態で加熱を継続してオリゴマーを解重合させ、生成したグリコリドと溶媒とを共留出する。解重合は基本的には以下の反応式で示される反応である。
【化4】
Figure 0004750256
解重合のための加熱温度は、オリゴマーの解重合が起こる200℃以上とする。通常は210〜320℃、好ましくは215〜300℃、より好ましくは220〜290℃の範囲である。加熱により、オリゴマーの解重合が起こり、グリコリド(大気圧下での沸点:240〜241℃)が溶媒と共に留出する。
【0026】
オリゴマーとポリアルキレングリコールエーテル及び必要に応じて後述する可溶化剤を含む混合液を加熱して溶液相を形成させる温度と、解重合反応によりグリコリドとポリアルキレングリコールエーテルを共留出させる温度は必ずしも同じである必要はない。いずれの工程の加熱も、常圧下または減圧下に行うことができる。好ましくは、オリゴマーとポリアルキレングリコールエーテル及び必要に応じて添加される可溶化剤を含む混合液を加熱して溶液相を形成させる工程を常圧で行い、次いで減圧下で加熱してグリコリドとポリアルキレングリコールエーテルを留出させる。解重合反応は可逆反応であるためグリコリドを溶液相から留去することにより、オリゴマーの解重合反応が効率的に進行する。
圧力は、オリゴマーの解重合反応が進む温度に系内が保たれる範囲内であり、0.1〜90.0kPaが好ましい。圧力が低い程、解重合反応温度が下がり溶媒の残存率は高くなる。
【0027】
ポリアルキレングリコールエーテルは、グリコール酸オリゴマーに対して、通常0.3〜50倍量(質量比)、好ましくは0.5〜20倍量(質量比)の割合で使用する。ポリアルキレングリコールエーテルは均一溶液相を形成する範囲内で解重合反応途中に連続的または分割的に追加してもよい。
【0028】
(d)可溶化剤
本発明においては、ポリアルキレングリコールエーテルに対するグリコール酸オリゴマーの溶解性(溶解度及び/または溶解速度)を高め、より均一な溶液相を形成するために可溶化剤を併用してもよい。可溶化剤は、解重合反応途中に連続的もしくは分割的に追加してもよい。
本発明で用いる可溶化剤は、次のような要件を満たすものが好ましい。
【0029】
(i)グリコールを共留出させる溶媒として使用するポリアルキレングリコールエーテルよりも高沸点、すなわち沸点が450℃以上で、グリコリドの製造時に留出しないか留出量が無視できる程度に少ないものであること。沸点が450℃より低いと共に留出してしまい、グリコール酸オリゴマーの溶解性が低下するので好ましくない。
(ii)非塩基性化合物であること。アミン系、ピリジン系、キノリン系などの塩基性化合物はオリゴマーや生成するグリコリドと反応するおそれが有り、好ましくない。
【0030】
(iii)ポリアルキレングリコールエーテルよりもオリゴマーとの親和性が高いこと。オリゴマーとの親和性は、オリゴマーとポリアルキレングリコールの混合物を230℃に加熱し、オリゴマー濃度を混合物が均一溶液相を形成しなくなるまで高め、可溶化剤を加え、再び均一溶液相を形成するかを目視により観察することにより確認できる。
(iv)可溶化剤としてのポリアルキレングリコールエーテルは分子量が450を超えるものであること。分子量が低いと解重合反応時にグリコリドと共留出し、解重合反応系でのグリコール酸オリゴマーの溶解性を維持する可溶化剤としての機能が果たせなくなる。
【0031】
本発明で利用できる可溶化剤の例としては、一価または二価以上の多価アルコール類(部分エステル化物、部分エーテル化物を含む)、フェノール類、一価または二価以上の多価脂肪族カルボン酸類、脂肪族カルボン酸とアミンとの脂肪族アミド類、および脂肪族イミド類、またはポリアルキレングリコール類などが挙げられる。特に、アルコール類は可溶化剤として有効である。
【0032】
アルコール類の中でも、式(2)
【化5】
Figure 0004750256
(式中、R2はメチレン基または炭素数2〜8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を表わし、qは1以上の整数である。qが2以上の場合複数のR1はそれぞれ同一でも異なってもよい。)で示されるポリアルキレングリコール、式(3)
【化6】
Figure 0004750256
(式中、R3はメチレン基または炭素数2〜8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を表わし、X2は炭化水素基を表わし、rは1以上の整数である。rが2以上の場合複数のR1はそれぞれ同一でも異なってもよい。)で示されるポリアルキレングリコールモノエーテル、及びグリセリン、トリデカノール、デカンジオール、分子量が450を超えるポリアルキレングリコールエーテル類を用いることができる。
【0033】
ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリアルキレングリコールが挙げられる。
ポリアルキレングリコールモノエーテルの具体例としては、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールモノオクチルエーテル、ポリエチレングリコールモノデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテルなどのポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、または前記の化合物においてエチレンオキシ基をプロピレンオキシ基またはブチレンオキシ基に代えたポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルまたはポリブチレングリコールモノアルキルエーテルを含むポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
本発明においては、可溶化剤としてポリアルキレングリコールモノエーテルを用いた場合、缶壁のクリーニング効果に特に優れることが確認されている。
【0034】
本発明においては、解重合の共留出溶媒として用いるポリアルキレングリコールエーテルよりもオリゴマーとの親和性が高く、高沸点のポリアルキレングリコールエーテルが可溶化剤として好んで使用される。具体的には、ポリエチレングリコールジメチルエーテル#500(平均分子量500)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル#2000(平均分子量2000)などが挙げられる。
【0035】
可溶化剤は、オリゴマー100質量部に対して、通常0.1〜500質量部、好ましくは1〜300質量部の割合で使用される。可溶化剤の割合が少なすぎると、可溶化効果が不十分となる。可溶化剤の割合が多すぎると、可溶化剤の回収にコストがかかり、経済性の見地から不利となる。
【0036】
(e)触媒
本発明のグリコリドの精製方法に供するグリコール酸オリゴマーの解重合法では、グリコール酸オリゴマーがポリアルキレングリコールに溶解して、その表面積が極度に広がるために、解重合によるグリコリドの発生速度または揮発速度が大きい。従って通常、解重合のための触媒(錫化合物、アンチモン化合物等)を用いる必要のないことが大きな特徴の一つである。熱安定性に優れた溶媒を用いている本発明においては、むしろ触媒は有害になるおそれもある。しかし、この「溶液相解重合法」を本質的に害しない範囲において、触媒を使用することもできる。
【0037】
留出液は80℃以下に冷却することによりグリコリドが析出してくる。本発明の解重合反応による留出液はグリコリドと解重合溶媒を高濃度に含み、他の不純物がほとんど混在しないことが大きな特徴である。そのため、純粋なグリコリドの融点である82〜83℃以下に冷却することで容易にグリコリドを結晶析出させることができる。
【0038】
(f)洗浄
析出したグリコリドは結晶体であり、遠心分離、自然ろ過、減圧ろ過、遠心ろ過、沈降分離など公知の方法を用いて固液分離される。分離後も留出液が結晶体に付着しており、ろ過ケーク状態である。なお、本明細書においては「ろ過ケーク」は、遠心分離等ろ過法以外の方法で分離されたウエット状態のケークをも含む。
留出液は解重合溶媒が主成分であり、解重合溶媒は沸点が230〜450℃と高沸点の溶媒であり、乾燥による除去は困難である。解重合溶媒の除去として有機溶媒にて洗浄、置換する方法が好ましい。その有機溶媒は解重合溶媒よりも低沸点であることが求められ、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下、もっとも好ましくは100℃以下の有機溶媒が好ましい。
【0039】
また、洗浄に供する有機溶媒は、25℃におけるグリコリドの溶解度が20%以下のものが好ましく、10%以下のものがより好ましく、更に5%以下のものが特に好ましい。溶解度が高いと洗浄液中にグリコリドが多く溶解し、グリコリドの回収率が低下する。
また、洗浄に供する有機溶媒は本発明の解重合反応に用いるポリアルキレングリコールエーテルと相溶性であることが好ましい。相溶性で無い場合、有機溶媒による洗浄が不十分となりグリコリドにポリアルキレングリコールエーテルが付着したままになりやすい。相溶性は有機溶媒とポリアルキレングリコールエーテルを室温にて混合し、相分離していないか目視で観察することにより確認できる。
【0040】
好ましい有機溶媒としては、エステル系、ケトン系、アルコール系などの極性溶媒が挙げられる。これらの中でも、本発明のグリコリドの精製方法に供するグリコール酸オリゴマーの解重合法による不純物は僅かではあるが有機酸であることが多いため、有機酸との親和性が高いアルコール類が好ましく、炭素数1〜4のアルコールは炭素数がそれより多いアルコールに比べて極性が大きく洗浄効果に優れているためより好ましい。特に、イソプロピルアルコールはグリコリドとの反応性が低く副生物ができにくいため最も好ましい。
【0041】
有機溶媒は解重合溶媒が付着したグリコリドに対して、0.5から10倍量程度が好んで使用される。使用量が少ないと洗浄効果が乏しく、多すぎても効果は大幅には増加しないため、経済性の観点から適量が使用される。洗浄回数も1から10回程度のバッチ操作で行うこともできるし、連続的な洗浄方法も採用される。
【0042】
有機溶媒に置換されたグリコリドはろ過等の通常の分離方法で有機溶媒を除き、付着している有機溶媒は乾燥によって除去されるのが一般的である。除去された有機溶媒は回収することによって再利用することも可能である。
【0043】
また、解重合溶媒との置換用有機溶媒をさらに別の有機溶媒で置換する方法を採用してもよい。例えば、イソプロピルアルコールで置換されたグリコリドをさらにヘキサンで置換すると乾燥が容易になる。
【0044】
洗浄時、温度は特に限定されないがグリコリドの融点(82〜83℃)以下であることが求められる。さらに、洗浄溶媒が温度の上昇とともにグリコリドの溶解性が増す場合、温度は低めに制御されなければならない。
【0045】
グリコリドを分離した母液に、一種類以上の溶媒のほかに他の種類の溶媒や可溶化剤が含まれている場合は、この分離した母液を精製せずにそのままリサイクルして使用したり、活性炭等で吸着精製してリサイクル使用したり、あるいは単蒸留もしくは分留して、再び溶媒及び/または可溶化剤としてリサイクル使用することができる。可溶化剤は、重質化物の溶解に効果があるので、可溶化剤を用いた解重合の場合は、反応缶内のクリーニングを省略もしくは低減できる。
【0046】
本発明のグリコリドの精製方法に供するグリコール酸オリゴマーの解重合法は、いわば「溶液相解重合法」とも言うべき方法である。この製造方法によれば、以下のような理由により、効率よくグリコリドを製造することができる。
1.グリコリドを溶液相、好ましくは均一溶液相で解重合を起こさせることによって、共存オリゴマーの表面積が飛躍的に拡大され、オリゴマー表面から発生、揮発するグリコリドの生成速度が飛躍的に大きくなる。
2.オリゴマー同士の接触が溶媒の希釈効果によって抑制されるために、加熱時におけるオリゴマーの重縮合反応の進行が抑制され、重質化物の生成量が極度に低減する。従って、グリコリドの収率が向上し、缶内のクリーニングの手間も殆ど省くことができる。
【0047】
3.グリコリドは、ポリアルキレングリコールエーテルの留出温度で生成し、溶媒と共に留出するため、回収ラインには殆ど蓄積せず、従って、ラインの閉塞が防止され、また、ライン内の蓄積物の回収という手間も殆ど省くことができる。
4.通常の蒸留システムと類似のシステムを用いることでができるため、スケールアップが容易であり、工業的スケールでの量産化も容易である。
5.さらに、ポリアルキレングリコールエーテルは解重合反応によって熱劣化を殆ど起こさず、したがって、解重合反応に使用した該溶媒を再び解重合反応に用いることで新たに持ち込む溶媒量を極わずかにすることができ、グリコリドの大量生産を行う場合、溶媒コストを大幅に低減でき、結果的にグリコリドを低コストで大量に生産できる。
【0048】
本発明の完成に至った要因は、解重合反応において使用した解重合溶媒が熱的に化学的に極めて安定なためその留出液も目的物質であるグリコリドと解重合溶媒がその組成のほとんどを占めていることにある。これにより、析出させたグリコリドを固液分離後、グリコリド固体に付着している解重合溶媒を有機溶媒で洗浄置換し、さらにその有機溶媒を除去することで容易に高純度のグリコリドを精製、単離することができる。
従来の溶液解重合法における解重合溶媒では溶媒の熱分解物も留出液中に含まれ、これらがグリコリド結晶中に取り込まれやすいため、洗浄、置換による本発明の精製方法では高純度グリコリドは得られにくい。
【0049】
【実施例】
以下に、参考例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下の例において、溶媒に対するグリコリドの溶解度は、下記の方法により測定した。
溶媒10mlを25ml共栓付き試験管に入れ、それに飽和状態よりわずかに過剰になるようにグリコリドを加えて超音波を30分照射した。照射後、25℃にて一晩放置し、上清中のグリコリド含量をガスクロマトグラフィーで定量し、溶解量B(g)を求め、以下の式により溶解度を算出した。
【数1】
溶解度(%)=(B/10)×100
【0050】
参考例1:グリコール酸オリゴマーの合成
5リットルのオートクレーブに、グリコール酸(和光純薬(株)製)2500gを仕込み、常圧で撹拌しながら170℃から200℃まで2時間かけて昇温加熱し、生成水を留出させながら縮合反応させた。ついで、缶内圧力を5.0kPaに減圧し、200℃で2時間加熱して、未反応原料等の低沸分を留去し、グリコール酸オリゴマーを調製した。得られたオリゴマーの融点(Tm)は206℃で、ΔHmcは105J/gであった。TmはDSC(示差走査熱量計)を用い、不活性ガス雰囲気下、10℃毎分の速さで昇温加熱したときの値であり、ΔHmcはその際検出される融解エンタルピーである。
【0051】
参考例2:テトラエチレングリコールジブチルエーテル(TEG−DB)の合成
フラスコに、トルエン500ml、ブトキシエタノール118.2g、トリエチルアミン101.2gを加え、氷冷下、塩化メタンスルホニル115gを滴下した。析出したトリエチルアミン塩酸塩を除去した後、トリエチレングリコールブチルエーテル206.3gを加えた。この混合物を滴下ロートに仕込み、60%NaH40gとトルエン200mlの60〜70℃の混合液中に滴下した。反応液からテトラエチレングリコールジブチルエーテルを蒸留(沸点140〜143℃,80Pa)により得た。この物質(TEG−DBと略す。)の沸点を常圧に換算すると、おおよそ340℃である。また、この物質の25℃におけるグリコリドの溶解度は4.6%であった。
【0052】
参考例3:ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEG−DB)の合成
60%NaH120g、500mlトルエン中に、ブロモブタン329gと、ジエチレングリコールブチルエーテル486gを50℃で滴下した。反応物からジエチレングリコールジブチルエーテル(DEG−DBと略す。)を蒸留(沸点256℃、常圧)にて得た。また、この物質の25℃におけるグリコリドの溶解度は1.8%であった。
これらの結果を表1にまとめて示す。
【0053】
【表1】
Figure 0004750256
【0054】
実施例1:
参考例1で調製したグリコール酸オリゴマー40gを、冷水で冷却した受器を連結した300mlフラスコに仕込み、ポリアルキレングリコールエーテルとして、参考例2で調製したテトラエチレングリコールジブチルエーテル(TEG−DB)を200g加えた。窒素ガス雰囲気でオリゴマーと溶媒の混合物を280℃に加熱した。オリゴマーは溶媒に均一に溶解し、相分離していないことが目視により確認された。加熱を続けながらフラスコ内を10kPaに減圧すると、解重合反応によりグリコリドと溶媒の共留出が始まった。解重合反応はおよそ4時間で終了した。
共留出終了後、留出液から析出しているグリコリドを全量グラスフィルターによりろ別し、ろ過ケーク30gを得た(GC分析によると、グリコリド27g、TEG−DB3gであった)。ろ過ケーク30gを130gのシクロヘキサノン(グリコリド(GL)の溶解度(25℃):14.7%)と混合し、20分撹拌して洗浄、置換した。洗浄後、グラスフィルターでろ過し、30℃で真空乾燥した。乾燥後、得られた精製グリコリドは26gであり(収率:65%)、ガスクロマトグラフィー(GC)による純度(面積法)は99.98%と高純度であった。母液中および反応液中のTEG−DBをGCで定量すると198g(残存率:99%)であり、溶媒の損失が殆どないことが確認された。
【0055】
実施例2:
参考例1で調製したグリコール酸オリゴマー40gを、冷水で冷却した受器を連結した300mlフラスコに仕込み、ポリアルキレングリコールエーテルとして参考例4で調製したジエチレングリコールジブチルエーテル(DEG−DB)を200g加え、さらに可溶化剤としてポリエチレングリコールジメチルエーテル#2000(平均分子量2000,メルク製,沸点:280℃/10mmHg超過)50gを加えた。窒素ガス雰囲気でオリゴマーと溶媒の混合物を260℃に加熱した。オリゴマーは溶媒に均一に溶解し、相分離していないことが目視により確認された。この混合物を加熱を続けながら10kPaの減圧下にすると、解重合反応によりグリコリドと溶媒の共留出が始まった。解重合反応はおよそ5時間で終了した。
共留出終了後、留出液から析出しているグリコリドを全量グラスフィルターによりろ別し、ろ過ケーク40gを得た(GC分析によると、グリコリド33g、DEG−DB7gであった)。ろ過ケーク40gを200gの酢酸エチル(GL溶解度(25℃):12.0%)と混合し、20分撹拌して洗浄、置換した。洗浄後、グラスフィルターでろ過し、30℃で真空乾燥した。乾燥後得られた精製グリコリドは32gであり(収率:80%)、GCによる純度(面積法)は99.98%と高純度であった。母液中および反応液中のDEG−DBをGCで定量すると199g(残存率:99.5%)であり、溶媒の分解は少なかったことが確認された。
【0056】
実施例3:
可溶化剤をポリエチレングリコール#600(平均分子量600)60gに換えたほかは実施例2と同様に解重合反応を行った。共留出終了後、留出液から析出しているグリコリドを全量グラスフィルターによりろ別し、ろ過ケーク37gを得た(GC分析によると、グリコリド33g、DEG−DB4gであった)ろ過ケーク37gを180gのシクロヘキサノンと混合し、20分撹拌して洗浄、置換した。洗浄後、グラスフィルターでろ過し、30℃で真空乾燥した。乾燥後、得られた精製グリコリドは32gであり(収率:80%)、GCによる純度(面積法)は99.98%と高純度であった。母液中および反応液中のDEG−DBをGCで定量すると199g(残存率:99.5%)であり、溶媒の損失が殆どないことが確認された。
【0057】
実施例4:
可溶化剤をポリプロピレングリコール#400(平均分子量400,沸点:280℃/10mmHg超過)40gに換えたほかは実施例2と同様に解重合反応を行った。共留出終了後、留出液から析出しているグリコリドを全量グラスフィルターによりろ別し、ろ過ケーク40gを得た(GC分析によると、グリコリド34g、DEG−DB6gであった)ろ過ケーク40gを300gのジオキサン(GL溶解度(25℃):27.3%)と混合し、20分撹拌して洗浄、置換した。洗浄後、グラスフィルターでろ過し、30℃で真空乾燥した。乾燥後、得られた精製グリコリドは33gであり(収率:82.5%)、GCによる純度(面積法)は99.97%と高純度であった。母液中および反応液中のDEG−DBをGCで定量すると199g(残存率:99.5%)であり、溶媒の損失が殆どないことが確認された。
【0058】
実施例5:
可溶化剤をポリエチレングリコールモノメチルエーテル#350(平均分子量350,アルドリッチ製)50gに換えたほかは実施例2と同様に解重合反応を行った。共留出終了後、留出液から析出しているグリコリドを全量グラスフィルターによりろ別し、ろ過ケーク36gを得た(GC分析によると、グリコリド33g、DEG−DB3gであった)、ろ過ケーク36gを230gのイソプロピルアルコール(GL溶解度(25℃):0.9%)と混合し、20分撹拌して洗浄、置換した。洗浄後、グラスフィルターでろ過し、30℃で真空乾燥した。乾燥後、得られた精製グリコリドは32gであり(収率:80%)、GCによる純度(面積法)は99.99%と高純度であった。母液中および反応液中のDEG−DBをGCで定量すると198g(残存率:99%)であり、溶媒の損失が殆どないことが確認された。
【0059】
実施例6:
可溶化剤をポリオキシエチレンモノラウリルエーテル(商品名ニューコール1105,日本乳化剤株式会社製,沸点:280℃/10mmHg超過)50gに換えたほかは実施例2と同様に解重合反応を行った。共留出終了後、留出液から析出しているグリコリドを全量グラスフィルターによりろ別し、ろ過ケーク38gを得た(GC分析によると、グリコリド34g、DEG−DB4gであった)ろ過ケーク38gを190gの冷エタノール(エタノール(25℃)中のGL溶解度:2.9%)と混合し、氷冷バスで冷却しながら20分撹拌して洗浄、置換した。さらに、冷エタノール付着のろ過ケークを100gのヘキサンで洗浄後、グラスフィルターでろ過し、30℃で真空乾燥した。乾燥後、得られた精製グリコリドは33gであり(収率:82.5%)、GCによる純度(面積法)は99.99%と高純度であった。母液中および反応液中のDEG−DBをGCで定量すると198g(残存率:99%)であり、溶媒の損失が殆どないことが確認された。
【0060】
比較例1:
参考例1で調製したグリコール酸オリゴマー40gを、冷水で冷却した受器を連結した300mlフラスコに仕込み、ジ(2−メトキシエチル)フタレート(DMEP)170gを加えた。窒素ガス雰囲気でオリゴマーと溶媒の混合物を280℃に加熱した。オリゴマーは、溶媒に均一に溶解し、相分離していないことが目視により確認された。この混合物を加熱を続けながら13kPaの減圧下にすると、解重合反応によりグリコリドと溶媒の共留出が始まった。解重合反応はおよそ4時間で終了した。
共留出終了後、留出液から析出しているグリコリドを全量グラスフィルターによりろ別し、ろ過ケーク30gを得た(GC分析によると、グリコリド26g、DMEP3gであった)、ろ過ケーク30gを130gのシクロヘキサノンと混合し、20分撹拌して洗浄、置換した。洗浄後、グラスフィルターでろ過し、30℃で真空乾燥した。乾燥後、得られた精製グリコリドは25gであり(収率:62.5%)、GCによる純度(面積法)は96.85%であった。母液中および反応液中のDMEPをGCで定量すると、125g(残存率:73%)の存在が確認された。また、母液および洗浄グリコリド中に無水フタル酸、2−メトキシエタノールの存在が確認された。
【0061】
比較例2:
比較例1と同様にして解重合反応を行い、共留出終了後、留出液から析出しているグリコリドを全量グラスフィルターによりろ別し、ろ過ケーク35gを得た(GC分析によると、グリコリド24g、DMEP9gであった)ろ過ケーク35gを200gのイソプロピルアルコールと混合し、20分撹拌して洗浄、置換した。洗浄後、グラスフィルターでろ過し、30℃で真空乾燥した。乾燥後、得られた精製グリコリドは23gであり(収率:57.5%)、GCによる純度(面積法)は97.8%であった。母液中および反応液中のDMEPをGCで定量すると、124g(残存率:73%)の存在が確認された。また、母液および洗浄グリコリド中に無水フタル酸、2−メトキシエタノールの存在が確認された。
【0062】
比較例3:
米国特許2,668,162号の実施例A(Example A)に記載の方法に準じて、グリコール酸を縮合して得られたグリコール酸オリゴマー100gを粉末に粉砕し、1gの三酸化アンチモンと混合した後、270〜280℃に加熱し、さらに10〜15mmHgの減圧下の容器に1時間に20gずつ5回に分けて混合物を投じた。黄色の留出物を冷却して87gの粗グリコリドを得た(収率87%)。この粗グリコリド(GC(面積法)による純度97%)40gを、イソプロピルアルコール200gと混合し、20分撹拌して洗浄、置換した。洗浄後、グラスフィルターでろ過し、30℃で真空乾燥した。乾燥後、得られたグリコリドは35gであり(全収率:76%)、GCによる純度(面積法)は97.5%であった。
【0063】
【発明の効果】
本発明のグルコリド精製方法によれば、特定のポリアルキレングリコールエーテル(解重合溶媒)および所望により可溶化剤を用いてグリコ−ル酸オリゴマーを溶液相で解重合することにより生成したグリコリドを、溶媒と共に留出させ、留出液を80℃以下に冷却し析出したグリコリドを解重合溶媒と固液分離後、そのろ過ケークを沸点が200℃以下であり、かつ、解重合溶媒と相溶性の有機溶媒にて洗浄することにより、容易に経済的に高純度のグリコリドを得ることができる。

Claims (6)

  1. グリコール酸オリゴマー融液と、式(1-1)
    Figure 0004750256
    (式中、X及びYは炭素数2〜20のアルキル基であり、p及びqは1以上の整数である。)で示される分子量が150〜450で、沸点が230〜450℃である少なくとも一種のポリアルキレングリコールエーテル溶媒(解重合溶媒)とを実質的に均一な相を形成した状態で200〜320℃の温度にて加熱してグリコール酸オリゴマーを解重合反応に付し、生成したグリコリドを解重合溶媒と共に留出させ、留出液を80℃以下に冷却し、析出したグリコリドを解重合溶媒と固液分離して得られるグリコリドのろ過ケークを、解重合溶媒と相溶性の沸点200℃以下の有機溶媒にて洗浄することを特徴とするグリコリドの精製方法。
  2. 前記解重合溶媒よりも親グリコール酸オリゴマー性が高く、かつ解重合反応時に実質的にグリコリドと共に留出しない沸点を有する可溶化剤を併用して解重合反応を行い、生成したグリコリドを解重合溶媒と共に留出させ、留出液を冷却し、析出したグリコリドを解重合溶媒と固液分離して得られるグリコリドのろ過ケークを前記有機溶媒にて洗浄する請求項1に記載のグリコリドの精製方法。
  3. 沸点200℃以下、25℃におけるグリコリドの溶解度が20%以下でポリアルキレングリコールエーテル溶媒と相溶性の有機溶媒にて洗浄する請求項1または2に記載のグリコリドの精製方法。
  4. 有機溶媒が、炭素数1〜4のアルコールである請求項3に記載のグリコリドの精製方法。
  5. 炭素数1〜4のアルコールが、イソプロピルアルコールである請求項4記載のグリコリドの精製方法。
  6. 請求項1または2で洗浄によって生成した洗浄回収液から解重合溶媒及び/または有機溶媒を分離回収して、解重合溶媒及び/または有機溶媒として再利用する請求項1または2に記載のグリコリドの精製方法。
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