以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明のアンテナ装置は板状の放射素子の他に線状の放射素子を用いることができるが、以下の説明では板状の放射素子について説明する。また、板状の放射素子としては、板状逆F型アンテナの形態に限らず種々の板状アンテナに適用することができる他、ループアンテナを平面状に形成した構成のアンテナ形態にも適用することができるが、以下では主に板状逆F型アンテナを用いて説明する。
図1は本発明のアンテナ装置の概略を説明するための図である。これは主に放射素子の構成について説明するための図であり、その他の構成については省略している。図1(a),(b)において、アンテナ装置1は、回路基板2の一方の端部に2つのアンテナエレメント4,5を備える。各アンテナエレメント4,5は、板状の放射素子4a,5aと、当該放射素子4a,5aを回路基板2と短絡させる短絡部(スタブ)4b,5bを備える。なお、短絡部(スタブ)4b,5bは、板状逆F型アンテナにおいて、インピーダンス整合をとるために給電点6,7の近くに設けられている。各放射素子4a,5aには、回路基板2上のRF回路(高周波回路)3の給電点6,7から給電が行われる。なお、図では、各放射素子4a,5a上の給電点は黒丸の印で示している。
本発明のアンテナ装置が備える放射素子4a,5aは、所定の距離Hを開けて対向して配置し、給電点6,7との接続を切り替え自在とし、一方の放射素子を給電点と接続した場合には他方の放射素子はグランドと接地し、逆に、他方の放射素子を給電点と接続した場合には一方の放射素子はグランドと接地する構成とする。この給電及び接地の切り替えは、図示しない切り替えスイッチによって行う。なお、板状逆F型アンテナでは、短絡部(スタブ)4b,5bによってアンテナとして動作する際にはグランドと接地しているため、給電の切り替えによっても放射素子4a,5aは常に接地する構成となっている。
この切り替え時における放射素子とグランドとの接地において、グランドとの間にインピーダンス素子やリアクタンス素子等の整合素子を接続する構成とすることができ、この整合素子を接続する構成では、接地の際に整合素子を選択して接続する。インピーダンス素子やリアクタンス素子等の整合素子を接続する構成とすることによって、給電側の放射素子から見た非給電側の放射素子の終端インピーダンスを変化させることが可能となり、アンテナの設計の自由度を向上させることができる。なお、接続する整合素子は、2つの放射素子に対して共通とする他に、放射素子毎に異なるインピーダンス素子やリアクタンス素子を用いて終端してもよい。
図1(c)は、給電点6と放射素子4aとを接続して放射素子4aに給電を行い、放射素子5aは回路基板2に接地してグランドとした状態を示している。この場合には、放射素子4aは、回路基板2及び放射素子5aをグランドとしてアンテナの動作を行う。
一方、図1(d)は、給電点7と放射素子5aとを接続して放射素子5aに給電を行い、放射素子4aは回路基板2に接地してグランドとした状態を示している。この場合には、放射素子5aは、回路基板2及び放射素子4aをグランドとしてアンテナの動作を行う。
図2は切り替えスイッチの一構成例を説明するための図である。なお、図2(a)、(b)は給電と接地を切り替える構成例を示し、図2(c),(d)は板状逆F型アンテナの場合の切り替えスイッチの構成例を示している。
図2(a)は、切り替えスイッチ8によって、放射素子4aをRF回路(高周波回路)3に接続し、放射素子5aをインピーダンス素子やリアクタンス素子等の整合素子9を介して接地する状態を示している。この切り替えにより、放射素子4aには給電が行われると共に、接地された放射素子5aと共にアンテナとして動作する。
一方、図2(b)は、切り替えスイッチ8によって、放射素子5aをRF回路(高周波回路)3に接続し、放射素子4aをインピーダンス素子やリアクタンス素子等の整合素子9を介して接地する状態を示している。この切り替えにより、放射素子5aには給電が行われると共に、接地された放射素子4aと共にアンテナとして動作する。
また、板状逆F型アンテナの場合には、図2(c)は、切り替えスイッチ8によって、放射素子4aの給電端子をRF回路(高周波回路)3に接続すると共に短絡端子を接地し、他方、放射素子5aの給電端子を切り離すと共に短絡端子をインピーダンス素子やリアクタンス素子等の整合素子9を介して接地する状態を示している。この切り替えにより、放射素子4aには給電が行われると共に、インピーダンス整合されて接地された放射素子5aと共にアンテナとして動作する。
一方、図2(d)は、切り替えスイッチ8によって、放射素子5aの給電端子をRF回路(高周波回路)3に接続すると共に短絡端子を接地し、他方、放射素子4aの給電端子を切り離すと共に短絡端子をインピーダンス素子やリアクタンス素子等の整合素子9を介して接地する状態を示している。この切り替えにより、放射素子5aには給電が行われると共に、インピーダンス整合されて接地された放射素子4aと共にアンテナとして動作する。
非給電側の放射素子は回路基板のグランドに接地することになるため、あたかも回路基板が延長されたと同等の動作となり、回路基板と対向した放射素子を配置する通常のアンテナ構成に近い放射特性を持つことができる。
すなわち、切り替えスイッチを用いて非給電側の放射素子を短絡することにより、回路基板を挟んで2つの放射素子を設置した構成と同等の効果を、放射素子と回路基板との距離を拡げることなく得ることができる。
これによって、アンテナの放射特性を犠牲とすることなく、2つの放射素子を設置する構成を小型化及び薄型化することができる。
切り替えスイッチ8は、放射素子4a,5aとRF回路3及び接地との間の接続状態を外部信号に基づいて切り替える。この外部信号は、無線装置の使用形態に関する情報を備えている。例えば、無線装置の利用者による保持状態を検出する保持状態検出信号、無線装置が実行する通信モードを識別する通信モード状態信号、無線装置を構成する筐体部材の形態状態を検出する形態状態検出信号とすることができる。
保持状態検出信号は、無線装置の筐体面に備える光度センサ、熱センサ、赤外線センサ、接触センサの検出信号を用いることができ、各センサは利用者が無線装置を保持する保持位置を検出する。例えば、利用者が無線装置を保持する際に通常手が接触する位置にセンサを配置し、このセンサが検出することで、手の位置等の利用者が無線装置を保持する保持位置を検知する。
切り替えスイッチ8はセンサの検出信号の有無によって、利用者が無線装置を保持する位置と反対側の放射素子を選択する。この選択によって、利用者の手によってアンテナ特性に影響がより大きくなる放射素子を避け、影響がより小さくなる放射素子を用いる。
通信モード状態信号は、音声を送受信する通話モード、又は画像を送受信する画像モードを識別する識別信号である。この通話モード状態信号は、例えば、無線装置の各機能を選択するメニュー画面等において通話あるいは電子メール、ウエブ等を選択した際も選択信号に基づいて形成することができ、通話を選択した場合には通話モードを表する識別情報を備え、電子メールやウエブを選択した場合には文字を含む画像情報の送受信を行う画像モードを表す識別情報を備える。
切り替えスイッチ8は、通話モードのときはマイクが設置された側と反対側の放射素子を選択し、画像モードのときは操作ボタンが設置された側の放射素子を選択する。この選択によって、通話時には、利用者の人体頭部によってアンテナ特性に影響がより大きくなる放射素子を避けて影響がより小さくなる放射素子を用い、また、画像送受信時には、利用者の手によってアンテナ特性に影響がより大きくなる放射素子を避けて影響がより小さくなる放射素子を用いる。
形態状態検出信号は、無線装置を構成する筐体部材間の開閉状態を検出するセンサの検出信号である。無線装置を構成する筐体部材は、折りたたみ式に開閉自在とする構成、ディスプレイ面を表にしたままで回転させて開閉自在とする構成、2軸で回転させてディスプレイ面を表にしたままで開閉させる構成、ディスプレイ面を表にしたまま一方を他方上にスライドさせて開閉自在とする構成等があり、センサはこの開閉状態を検出する。
切り替えスイッチ8は、センサの検出信号が開状態であるときは通信モード状態信号に基づいた選択を行い、また、センサの検出信号が閉状態であるときは保持状態検出信号に基づいて放射素子を選択する他、予め設定された放射素子を選択する。これによって、開閉状態や通信モード状態、保持状態等の無線装置の使用形態に応じて放射素子を選択する。
図3は、本発明の無線装置のシステム構成を説明するためのブロック図であり、主に本発明の放射素子の切り替え機能を説明する部分のみ示し、その他の無線装置の構成については省略している。
図3において、各部103〜110の制御は制御及びデータのライン102を介してCPU(中央処理装置)等の制御部101により制御される。制御部101はROM103に記録されるプログラムや操作部105から入力された指令に従って所定の制御を行う。操作部105は、無線装置が備える各操作について入力を行う部分であり数字キー等により構成することができる。表示部106は、無線装置が備えるディスプレイ部分であり、例えば、液晶表示装置で構成することができる。また、データを一時記憶する素子としてRAM104を備える。
通信は、通信部107を介してアンテナ装置によって行う。アンテナ装置は、第1のアンテナエレメント4と第2のアンテナエレメント5を備え、切り替え部108によって選択され切り替えられ、いずれか一方のアンテナエレメントがアンテナとして用いられ、他方のアンテナエレメントはグランドとして用いられる。
本発明のアンテナ装置は、2つのアンテナエレメント4,5を切替部108で切り替え、通信部107を介して送受信を行う。切替部108は、無線装置の利用者による保持状態を検出する保持状態検出信号、無線装置が実行する通信モードを識別する通信モード状態信号、無線装置を構成する筐体部材の形態状態を検出する形態状態検出信号等の外部信号を受けて、第1のアンテナエレメント4の放射素子4aあるいは第2のアンテナエレメント5の放射素子5aの何れに給電や接地を行うかを制御する。
これらの外部信号は、状態検出部109やセンサ110からの検出信号を用いることができる。
状態検出部109は、通信モード状態信号及び形態状態検出信号を出力する。通信モード状態信号は無線装置が実行する通信モードを識別する識別信号であり、例えば、音声を送受信する通話モード、画像を送受信する画像モードを識別する。
この識別信号は、例えば、操作部105で選択したメニュー内容に基づいて形成することができ、メニュー画面や操作キーにおいて通話を選択した場合には通話モードと判断し、メニュー画面や操作キー等において電子メール、ウエブ等を選択した場合には画像モードと判断する。
また、センサ110は光度センサ、熱センサ、赤外線センサ、接触センサ等を用いることができ、無線装置の筐体面に設けて、利用者が無線装置を保持する保持位置を検出する。センサが検出することで、手の位置等の利用者が無線装置を保持する保持位置を検知する。切替部108は、このセンサの検出信号に基づいて給電及び接地する放射素子4a,5aを選択する。
また、切替部108は、状態検出部109からの通信モード状態信号や形態状態検出信号と、センサ110からの保持状態検出信号について、それぞれ単独の識別信号に基づいて給電及び接地する放射素子4a,5aを選択する他に、これらを組み合わせた論理に基づいて行うこともできる。
前記した図1の構成では、2つの放射素子はそれぞれ電気的に独立して構成し、切り替えスイッチによって給電及び接地を排他的に選択しているが、2つの放射素子はこれらの間を電気的に接続した構成としてもよい。図4,5は2つの放射素子を接続した構成を説明するための図である。
図4は本発明のアンテナ装置の別の概略構成を説明するための図であり、図5は2つの放射素子の構成を説明するための図である。
図4に示す構成は、放射素子の構成の点を除いては、前記図1で示したアンテナの構成とほぼ同様である。以下、前記した構成と相違する部分のみについて説明する。
図4(a),(b)において、放射素子4a,5aは短絡部10によって電気的に接続される。
図4(c)では、給電点6と放射素子4aとを接続して放射素子4aに給電を行い、放射素子5aは回路基板2に接地してグランド状態としている。また、図4(d)は、給電点7と放射素子5aとを接続して放射素子5aに給電を行い、放射素子4aは短絡部10により放射素子5aに接続し、放射素子5aを介して回路基板2に接地してグランド状態としている。
この構成によれば、放射素子4aと放射素子5aとが電気的に接続されているため、いずれか一方において回路基板側と短絡しておくことで両放射素子のインピーダンス整合を行うことができ、短絡点の共通化を図ることができる。
また、2つの放射素子4a,5aは、短絡部10と共にコの字状の板金で構成することができる。図5は2つの放射素子と短絡部との構成を説明するための図である。図5(a)は平面図を示し、図5(b)は放射素子を折り曲げて互いに対向させた状態を示している。コの字状とした板金は、矩形状の2つの放射素子4a,5aの間を短絡部10で繋いで構成される。この2つの放射素子4a,5aを短絡部10を挟んで折り曲げ、互いの対向させることで構成することができる。
この構成によれば、2つの放射素子を短絡部と共に1つの板金からなる部材で形成することができるため、各部材を接続するための接続工程を省いて製造工程を簡略化することができる。
2つの放射素子と回路基板との高さ方向(厚さ方向)の位置は任意とすることができる。前記した図1、4では、回路基板を挟んで上下の2つの放射素子を配置した構成としているが、一方の放射素子を回路基板の同じ高さレベルに配置する構成としてもよい。この放射素子の配置位置を、図6は本発明のアンテナ装置の別の概略構成を説明するための図を用いて説明する。
なお、図6に示す構成は、放射素子の配置位置の点を除いては、前記図1で示したアンテナの構成とほぼ同様である。以下、前記した構成と相違する部分のみについて説明する。
図6に示す構成では、図6(a),(b)に示すように放射素子5aを回路基板2と空間的に同レベルに配置する例を示している。
図6(c)において、放射素子5aを回路基板2と同じ高さレベルに配置し、放射素子4aを放射素子5aに上方位置に距離Hを開けて配置し、給電点6と放射素子4aとを接続して放射素子4aに給電を行い、放射素子5aは回路基板2に接地してグランド状態としている。この状態によれば、放射素子4aから見たとき、放射素子5aは回路基板2が延長したと等価となる。また、図6(d)は、給電点7と放射素子5aとを接続して放射素子5aに給電を行い、放射素子4aは回路基板2に接地してグランド状態としている。
また、各放射素子において、RF回路3側の給電点と接続する放射素子側の給電点の位置は種々の形態とすることができる。2つの放射素子において給電点の位置は任意とすることができるが、両給電点の位置によって一方の放射素子から他方の放射素子を見たときの電磁結合量に影響が生じる。したがって、両給電点の位置を調整することによって、両放射素子間の電磁結合量を調整することができる。
図7,8は放射素子の給電点の位置を説明するための図である。なお、図8に示す放射素子4aと放射素子5aは図面上では上下の位置で示しているが、アンテナ装置の構成上では対向した位置に配置している。
図7(a)及び図8(a)は、両給電点を接近させて配置した構成例である。放射素子4a側の給電点6aと放射素子5a側の給電点7aとは近接して配置される。
図7(b)及び図8(b)は、矩形状の放射素子の短辺の両端側に両給電点を配置する構成例である。放射素子4a側の給電点6aと放射素子5a側の給電点7aとは、各放射素子の対向する短辺の両端側に配置される。
図7(c)及び図8(c)は、矩形状の放射素子の長辺の両端側に両給電点を配置する構成例である。放射素子4a側の給電点6aと放射素子5a側の給電点7aとは、各放射素子の対向する長辺の両端側に配置される。
図7(d)及び図8(d)は、矩形状の放射素子の対角線上の端部に両給電点を配置する構成例である。放射素子4a側の給電点6aと放射素子5a側の給電点7aとは、各放射素子の対角線上の各端部に配置される。
なお、図7では、給電を行う配線の他に、配線の近くに短絡部(スタブ)4b,5bを設けた構成を示している。
次に、放射素子を切り替える態様について図9〜図17を用いて説明する。放射素子の切り替え態様は、利用者がアンテナ装置を備えた無線装置を利用する際の利用形態に応じて種々に設定することができる。
利用者の利用形態としては、例えば、利用者が無線装置をどの位置で保持するかの保持状態、利用者が無線装置によって通話を行うか、電子メールやウエブ等の文字を含む画像データの送受信を行うか等の通信モードの各状態、無線装置を構成する複数の筐体部材に位置関係が変化する構成である場合に、当該筐体部材間の位置関係による形態状態等の各形態がある。2つの放射素子の何れを選択するかは、これらの各形態について単独あるいは組み合わせのそれぞれにおいて、放射特性を阻害する環境状態との関係を考慮して設定することができる。なお、放射特性を阻害する環境としては、例えば、利用者の手や人体頭部等や無線装置の構成要素等、電界に影響を及ぼしてアンテナの放射特性を劣化させる要素である。
以下、図9〜図17を用いて、アンテナ装置を設ける無線装置として携帯電話機の例を用いて、各利用形態における放射素子の選択について設定する。
なお、携帯電話機の形態として、一つの筐体からなるストレートな形状の形態の他、2つの筐体をそれぞれ回転動作やスライド動作によって相互の位置関係が変化する形態がある。
2つの筐体からなる形態では、操作部を備える筐体とディスプレイ面を備える筐体が対向する辺を軸として開閉する形態(以下、折りたたみ型と呼ぶ)、操作部を備える筐体とディスプレイ面を備える筐体が面と垂直な軸の回りで回転する形態(以下、回転スライド型と呼ぶ)、操作部を備える筐体とディスプレイ面を備える筐体が2軸で回転する形態(以下、2軸回転型と呼ぶ)、また、操作部を備える筐体に対してディスプレイ面を直線状にスライド移動させる形態(以下、直線スライド型と呼ぶ)等のものが知られている。
なお、上記各形態において、筐体の位置関係が変化した場合に、折りたたみ型の形態ではディスプレイ面が外側を内側とで異なる状態をとるが、回転スライド型の形態、2軸回転型の形態、及び直線スライド型の形態では、ディスプレイ面は常に外側を向く状態となる。
放射素子の選択は、例えば、以下の点を考慮して行うことができる。
利用者による携帯電話機の利用においては、電子メールやウエブ等の操作では、主にディスプレイ面を参照しながらキー等の操作部を行うことが多いため、操作面が外側を向く状態において良好な放射効率が得られる放射素子を選択する。この場合には、利用者は、一般にディスプレイ面が観察でき、操作面が表側となるような手で筐体を保持するため、手で保持する面と反対側の放射素子を選択する。
また、通話を行う場合には、携帯電話機を人体頭部に接近させて使用するため、人体頭部による影響と手による影響の両方を受けるが、より大きな影響を及ぼす人体頭部から離れた側の放射素子を選択する。
携帯電話機がどのような利用形態であるかは、携帯電話機の筐体の位置関係や、利用者が携帯電話機の筐体のどの部分を保持しているか、利用者が携帯電話機を通話モードで使用するかあるいは画像データを送受信するデータモードで使用するかといったことから判断し、これらに基づいて放射素子を選択する。
はじめに、携帯電話機が一つの筐体からなるストレート形状の場合について、図9の概略図、及び図10,11のフローチャートを用いて説明する。
図9(a)において、携帯電話機11は筐体12上にディスプレイ面15及び操作キー20を備える。電子メールやウエブを利用する際には、通常、ディスプレイ面15を参照しながら操作キー20を操作するため、利用者は筐体12を手で保持する。この際、利用者の手は、ディスプレイ面15や操作キー20が設けられた面(ここでは表面とする)と反対側の面(ここでは裏面とする)を保持することになる。
良好な放射特性を得るには手による影響を避ける必要があり、手から離れた表面側の放射素子4aを選択する。図9(a)では、選択した放射素子4aからの放射方向を矢印で示している。
また、図9(b)に示すように、利用者が通話を行う通話状態では、人体頭部による影響を避ける必要があるため、人体頭部から離れた裏面側の放射素子5aを選択する。
上記した放射素子の選択は、携帯電話機での機能選択に基づいて行う他に、筐体に設けたセンサによっても行うことができる。
図9(c)は、筐体12に設けるセンサの一例を示している。センサ16は、筐体と外部環境との関係を検出するものであり、例えば、利用者の手によって筐体が保持されているか、筐体が人体頭部に接近しているか、表面あるいは裏面のいずれが外部を向いているか等を検出する。
センサとしては、光度センサ、熱センサ、赤外線センサ、接触センサ等の各種センサを用いることができる。
光度センサの場合には、筐体の表面や裏面、あるいは利用者が利用する際に手や人体頭部により被われる位置に設置する。光度センサは、外部に障害物がなければ検出強度が高くなり、手や人体頭部等の障害物で被われるなど近くにある場合には検出強度が低くなる。したがって、その検出強度によって表面あるいは裏面のいずれの面が外部方向を向き、いずれの面が手や人体頭部を向いているかを検出することができ、光度センサの設置位置とその検出強度によって放射素子を選択することができる。
熱センサの場合には、光度センサと同様に、筐体の表面や裏面、あるいは利用者が利用する際に手や人体頭部により被われる位置に設置する。熱センサは、手や人体頭部等の障害物の熱を検出する。したがって、熱センサの検出強度によって表面あるいは裏面のいずれの面が手や人体頭部を向いているかを検出することができ、熱センサの設置位置とその検出強度によって放射素子を選択することができる。
接触センサの場合には、熱センサと同様に、筐体の表面や裏面、あるいは利用者が利用する際に手や人体頭部により被われる位置に設置する。接触センサは、手や人体頭部等の障害物の接触を検出する。したがって、接触センサの検出強度によって表面あるいは裏面のいずれの面が手や人体頭部と接触しているかを検出することができ、接触センサの設置位置とその検出強度によって放射素子を選択することができる。
図10のフローチャートは、携帯電話機の動作モードによって放射素子を選択する場合の選択動作を示している。なお、ここでは、ディスプレイ面や操作キーが設けられた面を表面とし、反対側の面を裏面としている。
携帯電話機の電源がオンの状態において(S1)、携帯電話機が通話モードとデータモード(電子メールやウエブ等の文字を含む画像データを送受信するモード)の何れのモードであるかを判定する。このモードの判定は、例えば、携帯電話機のメニュー選択結果から求めることができる(S2)。
通話モードが選択されている場合には、人体頭部による影響を避けるために、裏面側の放射素子を選択してアンテナエレメントとし、表面側の放射素子をグランドとする(S3)。一方、データモードが選択されている場合には、手による影響を避けるために、表面側の放射素子を選択してアンテナエレメントとし、裏面側の放射素子をグランドとする(S4)。上記S2〜S4を繰り替えしてモード状態の変化に応じて放射素子を選択する(S5)。
図11のフローチャートは、携帯電話機のセンサ出力によって放射素子を選択する場合の選択動作を示している。なお、ここでは、ディスプレイ面や操作キーが設けられた面を表面とし、反対側の面を裏面としている。
携帯電話機の電源がオンの状態において(S11)、携帯電話機に設けたセンサに出力を検出し、予め設定しておいたしきい値と比較する(S12)。
センサ出力としきい値との比較によって、利用者が通話モード状態にあると判定した場合には、人体頭部による影響を避けるために、裏面側の放射素子を選択してアンテナエレメントとし、表面側の放射素子をグランドとする(S13)。一方、利用者が電子メールやウエブ等を利用するデータモード状態にあると判定した場合には、手による影響を避けるために、表面側の放射素子を選択してアンテナエレメントとし、裏面側の放射素子をグランドとする(S14)。上記S12〜S14を繰り返してモード状態の変化に応じて放射素子を選択する(S15)。
次に、携帯電話機が2つの筐体からなり、折りたたみ式携帯電話機として知られる、操作部を備える筐体とディスプレイ面を備える筐体が対向する辺を軸として開閉する形態の場合について、図12の概略図、及び図13のフローチャートを用いて説明する。
図12(a)において、携帯電話機11はディスプレイ面15を備える筐体13と操作キー20を備える筐体14とを対向配置される辺を回転軸として開閉自在とする構成であり、折りたたみ式携帯電話機として知られている。
この構成では、通話及び電子メールやウエブを利用する際には、通常筐体14に対して筐体13を回転軸の回りで回転させて開いた状態とする。
図12(a)において、両筐体を開いた状態において、電子メールやウエブを利用する際には、通常、ディスプレイ面15を参照しながら操作キー20を操作するため、利用者は筐体14を手で保持する。この際、利用者の手は、ディスプレイ面15や操作キー20が設けられた面(ここでは表面とする)と反対側の面(ここでは裏面とする)を保持することになる。
良好な放射特性を得るには手による影響を避ける必要があり、手から離れた表面側の放射素子4aを選択する。図12(a)では、選択した放射素子4aからの放射方向を矢印で示している。
また、同じく筐体を開いた状態において、図12(b)に示すように利用者が通話を行う通話状態では、人体頭部により影響を避ける必要があるため、人体頭部から離れた裏面側の放射素子5aを選択する。
上記した放射素子の選択は、携帯電話機での機能選択に基づいて行う他に、筐体に設けたセンサによっても行うことができる。
図12(c)は、筐体13あるいは筐体14に設けるセンサの一例を示している。センサ16は、筐体と外部環境との関係を検出するものであり、例えば、利用者の手によって筐体が保持されているか、筐体が人体頭部に接近しているか、表面あるいは裏面のいずれが外部を向いているか等を検出する。センサとしては、前記したように、光度センサ、熱センサ、赤外線センサ、接触センサ等の各種センサを用いることができ、センサの検出強度によって表面あるいは裏面のいずれの面が手や人体頭部に被われているかあるいは接触しているかを検出することができ、センサの設置位置とその検出強度によって放射素子を選択する。
また、両筐体が開いた状態であるかあるいは閉じた状態であるかを検出するセンサを備え、筐体の開閉状態とモード状態やセンサ出力等と組み合わせて放射素子の選択を行うことができる。なお、筐体の開閉を検出するセンサは、折りたたみ式の携帯電話機が備えるセンサを兼用することができる。
図13のフローチャートは、筐体の開閉状態、モード状態、センサ出力の組み合わせによって放射素子の選択を行う一例を示している。
携帯電話機の筐体が開いている場合には(S21)、通話を行う通話モードか、電子メールやウエブ等の画像データの送受信を行うデータモードかを判定し(S22)、通話モードの場合には裏面(人体頭部と反対側)の放射素子5aを選択し(S24)、データモードの場合には表面(手と反対側)の放射素子4aを選択する(S25)。
また、携帯電話機の筐体が閉じている場合には(S21)、センサ出力を予め設定しておいたしきい値と比較する(S23)。センサ出力としきい値との比較によって、利用者が通話状態にあると判定した場合には、人体頭部による影響を避けるために、裏面側の放射素子を選択してアンテナエレメントとし、表面側の放射素子をグランドとする(S26)。一方、利用者が電子メールやウエブ等を利用する状態にあると判定した場合には、手による影響を避けるために、表面側の放射素子を選択してアンテナエレメントとし、裏面側の放射素子をグランドとする(S25)。
次に、携帯電話機が2つの筐体からなり、操作部を備える筐体とディスプレイ面を備える筐体が面と垂直な軸の回りで回転する形態(回転スライド型)、操作部を備える筐体とディスプレイ面を備える筐体が2軸で回転する形態(2軸回転型)、及び筐体同士が互いにスライドする形態(直線スライド型)の各形態について、図14〜図16の概略図、及び図17のフローチャートを用いて説明する。
直線スライド型の形態、回転スライド型の形態、2軸回転型の形態は、ディスプレイ面は常に外側を向く状態となるため、筐体を閉じた状態においてディスプレイ面を参照する際の手等の影響を考慮する必要がある。
図14は、回転スライド型と呼ばれ、操作面やディスプレイ面と垂直な回転軸を備える携帯電話機の場合を示している。
図14(a)において、携帯電話機11はディスプレイ面15を備える筐体13と操作キー20を備える筐体14とを両面に垂直な回転軸の回りで所定角度だけ回転して開閉自在とする構成である。
この構成では、通話及び電子メールやウエブを利用する際には、通常筐体14に対して筐体13を回転軸の回りで回転させて開いた状態とする。
図14(a)において、両筐体を開いた状態において、電子メールやウエブを利用する際には、通常、ディスプレイ面15を参照しながら操作キー20を操作するため、利用者は筐体14を手で保持する。この際、利用者の手は、ディスプレイ面15や操作キー20が設けられた面(ここでは表面とする)と反対側の面(ここでは裏面とする)を保持することになる。
良好な放射特性を得るには手による影響を避ける必要があり、手から離れた表面側の放射素子4aを選択する。図14(a)では、選択した放射素子4aからの放射方向を矢印で示している。
また、同じく筐体を開いた状態において、図14(b)に示すように利用者が通話を行う通話状態では、人体頭部により影響を避ける必要があるため、人体頭部から離れた裏面側の放射素子5aを選択する。
上記した放射素子の選択は、携帯電話機での機能選択に基づいて行う他に、筐体に設けたセンサによっても行うことができる。
携帯電話機11の筐体13と筐体14は回転軸の回りで回転することによって(図14(c))は、筐体13を筐体14の上に重ねた状態とすることができる(図14(d))。筐体同士を重ねた状態において、筐体13上に設けられたディスプレイ面15は外側を向いた状態となる。これによって、ディスプレイ面15に表示された電子メールやウエブを見ることができる。
このとき、筐体を保持しながらディスプレイ面15を見ることを考慮すると、手による放射特性の劣化を少なくするために、手から離れた表面側の放射素子4aを選択してもよい。また、ディスプレイ面15に表示を行わずに単に待ち受け状態である場合には、筐体13内に設けられた回路部材による影響を低減させることを考慮して、裏面側の放射素子5aを選択してもよい。
図15は、2軸回転型と呼ばれ、操作面を備える筐体とディスプレイ面を備える筐体が2軸で回転自在とする携帯電話機の場合を示している。
図15(a)において、携帯電話機11はディスプレイ面15を備える筐体13と操作キー20を備える筐体14とを互いに直交する2つの回転軸の回りで回転して開閉自在とする構成である。
この構成では、通話及び電子メールやウエブを利用する際には、通常筐体14に対して筐体13を2つの回転軸の回りで回転させて開き、操作キー20の操作とディスプレイ面15の観察を同時に行うことができる状態とする。
図15(a)において、両筐体を開いた状態において、電子メールやウエブを利用する際には、通常、ディスプレイ面15を参照しながら操作キー20を操作するため、利用者は筐体14を手で保持する。この際、利用者の手は、ディスプレイ面15や操作キー20が設けられた面(ここでは表面とする)と反対側の面(ここでは裏面とする)を保持することになる。
良好な放射特性を得るには手による影響を避ける必要があり、手から離れた表面側の放射素子4aを選択する。図15(a)では、選択した放射素子4aからの放射方向を矢印で示している。
また、同じく筐体を開いた状態において、図15(b)に示すように利用者が通話を行う通話状態では、人体頭部により影響を避ける必要があるため、人体頭部から離れた裏面側の放射素子5aを選択する。
上記した放射素子の選択は、携帯電話機での機能選択に基づいて行う他に、筐体に設けたセンサによっても行うことができる。
携帯電話機11の筐体13と筐体14は2つの回転軸の回りで回転することによって(図15(c),(d))は、筐体13を筐体14の上に重ねた状態とすることができる(図15(d))。筐体同士を重ねた状態において、筐体13上に設けられたディスプレイ面15は外側を向いた状態となる。これによって、ディスプレイ面15に表示された電子メールやウエブを見ることができる。
このとき、筐体を保持しながらディスプレイ面15を見ることを考慮すると、手による放射特性の劣化を少なくするために、手から離れた表面側の放射素子4aを選択してもよい。また、ディスプレイ面15に表示を行わずに単に待ち受け状態である場合には、筐体13内に設けられた回路部材による影響を低減させることを考慮して、裏面側の放射素子5aを選択してもよい。
図16は、直線スライド型と呼ばれ、操作面を備える筐体とディスプレイ面を備える筐体が互いにスライド移動自在とする携帯電話機の場合を示している。
図16(a)において、携帯電話機11はディスプレイ面15を備える筐体13と操作キー20を備える筐体14とを互いに直線状にスライド移動させて開閉自在とする構成である。
この構成では、通話及び電子メールやウエブを利用する際には、通常筐体14に対して筐体13を直線状にスライド移動させて開き、操作キー20の操作とディスプレイ面15の観察を同時に行うことができる状態とする。
図16(a)において、両筐体を開いた状態において、電子メールやウエブを利用する際には、通常、ディスプレイ面15を参照しながら操作キー20を操作するため、利用者は筐体14を手で保持する。この際、利用者の手は、ディスプレイ面15や操作キー20が設けられた面(ここでは表面とする)と反対側の面(ここでは裏面とする)を保持することになる。
良好な放射特性を得るには手による影響を避ける必要があり、手から離れた表面側の放射素子4aを選択する。図16(a)では、選択した放射素子4aからの放射方向を矢印で示している。
また、同じく筐体を開いた状態において、図16(b)に示すように利用者が通話を行う通話状態では、人体頭部により影響を避ける必要があるため、人体頭部から離れた裏面側の放射素子5aを選択する。
上記した放射素子の選択は、携帯電話機での機能選択に基づいて行う他に、筐体に設けたセンサによっても行うことができる。
携帯電話機11の筐体13と筐体14はスライド移動させることによって(図16(c),(d))は、筐体13を筐体14の上に重ねた状態とすることができる(図16(d))。筐体同士を重ねた状態において、筐体13上に設けられたディスプレイ面15は外側を向いた状態となる。これによって、ディスプレイ面15に表示された電子メールやウエブを見ることができる。
このとき、筐体を保持しながらディスプレイ面15を見ることを考慮すると、手による放射特性の劣化を少なくするために、手から離れた表面側の放射素子4aを選択してもよい。また、ディスプレイ面15に表示を行わずに単に待ち受け状態である場合には、筐体13内に設けられた回路部材による影響を低減させることを考慮して、裏面側の放射素子5aを選択してもよい。
図17のフローチャートは、前記した直線スライド型の形態、回転スライド型の形態、2軸回転型の形態における放射素子の選択を行う一例を示している。
携帯電話機の筐体が開いている場合には(S31)、通話を行う通話モードか、電子メールやウエブ等の画像データの送受信を行うデータモードかを判定し(S32)、通話モードの場合には裏面(人体頭部と反対側)の放射素子5aを選択し(S33)、データモードの場合には表面(手と反対側)の放射素子4aを選択する(S34)。
また、携帯電話機の筐体が閉じている場合には(S31)、例えば、手による影響を避けるために、表面側の放射素子を選択してアンテナエレメントとし、裏面側の放射素子をグランドとする。なお、筐体が閉じている場合の選択は、これに限らず表面側の放射素子を選択してもよく、また、ディスプレイ面の表示を観察する状態であるか、あるいは受信の待ち受け状態かに応じて選択するようにしてもよい(S34)。
1…アンテナ装置、2…回路基板、3…RF(高周波)回路、4…第1アンテナエレメント、4a…放射素子、4b…短絡部、5…第2アンテナエレメント、5a…放射素子、5b…短絡部、6,7…給電部、8…切り替えスイッチ、9…整合素子、10…短絡部、111…無線装置、12〜14…筐体、15…ディスプレイ面、16…センサ、17,18,19…回転軸、20…操作キー、101…制御部、102…ライン、103…ROM、104…RAM、105…操作部、106…表示部、107…通信部、108…切替部、109…状態検出部、110…センサ。