次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明は、排気通路に消音器を具備するエンジンの排気管構造に係るものであり、特に、船舶に用いられる発電用舶用補機としてのエンジンに用いて好適なものである。そのため、以下においてはエンジンを発電用舶用補機としてのエンジンとして説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、舶用主機をはじめその他の産業用機械に搭載されるエンジンに適用することができる。
まず、図1を用いて本発明に係る排気音低減装置の概略構成について説明する。エンジン1aに固設した過給器2の排気出口2aには、エンジン1aからの排気を外部に排出するための排気管3が連通接続している。排気管3の下流側端部は、消音器4の排気入口側に連通接続されている。また、排気管5の上流側端部は、消音器4の排気出口側に連通接続されている。つまり、排気通路は排気管3と消音器4と排気管5等を備え、排気管3は、消音器4の入口側排気通路であり、排気管5は、消音器4の出口側排気通路である。
エンジン1aから過給器2及び排気管3を通り排出する排気を、消音器4を介して排気管5によって外部に排出する。消音器4によって排気音を吸音して排気騒音を低減させている。消音器4は、その内部に形成される膨張室にて排気を一旦膨張させた後に外部に排出するという膨張比による消音が行われる、膨張型消音器である。また、消音器4内部に備わる吸音材による消音なども行われる。
そして、本発明に係る排気音低減装置の特徴として、消音器4に連通接続される排気管3及び排気管5に、それぞれ排気通路面積変更手段となる弁機構10aと弁機構10bを具備している。弁機構10a及び10bは、排気管3及び排気管5の排気通路面積を変化させる。本実施例において弁機構10a及び10bを、消音器4の上流側と下流側にそれぞれ設けているが、本発明はこれに限るものではなく、消音器4の上流側か下流側のどちらか一側のみに設けてもよい。しかし、前記弁機構を消音器4の両側にそれぞれ設けることでより大きな消音効果が期待されるため、その構成とすることが望ましい。
弁機構10a及び10bは、アクチュエータとしてのエアシリンダ110a及びエアシリンダ110bによって作動し、排気管3及び排気管5の排気通路面積を可変としている。これについては、後に詳細に説明する。エアシリンダ110a及び110bは、制御手段としてのコントローラ100に接続されている。実際は、エアシリンダに送るエアの流量を制御する電磁弁のソレノイドをコントローラ100と接続している。コントローラ100からエアシリンダ110a及び110bへ制御信号を送る。つまり、コントローラ100は、制御信号に基づき、エアシリンダ110a及び110bを介して弁機構10a及び10bを制御している。
エンジン1aはコントローラ100と接続されている。オペレータが始動キーの操作などによりコントローラ100にエンジン1aの起動指令Faを入力すると、コントローラ100はエンジン1aへ起動信号Gaを送信する。この起動信号Gaにより、エンジン1aが起動する。
また、排気管5の下部(消音器4の出口側)に配置した弁機構10bの下流側には、音圧センサ101を設けている。音圧センサ101は、排気管5内の排気音圧を検出するための音圧検出手段である。音圧センサ101は、排気音予測手段102を介しコントローラ100に接続されている。排気音予測手段102は、排気管5の出口における排気音を予測する予測手段である。音圧センサ101は、排気管5内の音圧を検出し、この検出信号を排気音予測手段102に送信する。排気音予測手段102は、受信した検出信号から排気管5の出口における排気音を予測する。排気音は、予め行われた実験やシミュレーション等に基づいて予測される。排気音予測手段102は、予測結果を信号としてコントローラ100に送信する。音圧センサ101と排気音予測手段102を合わせて排気音検出手段とする。
過給器2の排気出口2aの近傍には、圧力センサ104を設けている。圧力センサ104は、過給器2を通り排出される排気の圧力、即ち排気背圧(バックプレッシャー)を検出するための背圧検出手段である。圧力センサ104をコントローラ100に接続されている。圧力センサ104は、前記排気背圧を検出し、検出信号をコントローラ100に送信する。
過給器2の排気出口2aの近傍には、温度センサ103を設けている。温度センサ103は、過給器2を通り排出される排気温度を検出するための排気温度検出手段である。温度センサ103はコントローラ100と接続されている。温度センサ103は、前記排気温度を検出し、検出信号をコントローラ100に送信する。なお、本発明において、排気温度検出手段を設ける位置はこれに限るものではなく、排気通路に設けられれば良く、例えば、弁機構10bより下流側である排気管5の排気出口付近に設けてもよい。
エンジン1aには、負荷センサ105を設けている。負荷センサ105は、エンジン1aにかかる負荷を検出するための負荷検出手段である。負荷センサ105はコントローラ100と接続されている。負荷センサ105は、前記負荷を検出し、検出信号をコントローラ100に送信する。該負荷は燃料噴射量等で求めることができ、負荷を検出する方法は限定するものではない。
このような構成において、弁機構10a及び10bへの制御信号は、コントローラ100に接続されている排気音予測手段102、圧力センサ104、温度センサ103、負荷センサ105からの信号や、コントローラ100に予め記憶されているプログラム等に基づき、コントローラ100にて生成される。
次に、本発明に係る排気音低減装置における弁機構10a及び10bの第1実施例について図2を用いて説明する。本実施例において、消音器4は、その排気入口側及び排気出口側にそれぞれフランジ部4a及びフランジ部4bを有する。フランジ部4a及び4bをそれぞれ排気管3及び5に接続することで、消音器4を排気管3及び5に連通接続する。
排気管3の中途部には弁機構10aを具備している。排気管5の中途部には弁機構10bを具備している。弁機構10a及び10bは、制御弁20を具備している。
制御弁20は、回動軸21と弁体15とを有する、いわゆるバタフライバルブを構成している。回動軸21は、排気管3及び5を排気方向に対して直交方向に貫通する。回動軸21が貫通する排気管3及び5位置に軸受部22及び23を設ける。軸受部22及び23は、回動軸21を回動可能に支持している。回動軸21には排気管3及び5の内径に略合わせた略円盤状の弁体15を固設する。回動軸21の回動に伴い、弁体15は回動する。弁体15の回動によって排気管3及び5内の排気通路を開閉する。つまり、弁体15の回動角度により、排気管3及び5内の排気通路面積が変化する。
図3に弁機構の第1実施例を示す。図3に示すように、弁体15には略円形の通気孔24・24を穿設する。通気孔24・24は、回動軸21を対称軸として線対称な位置に設ける。制御弁20において、弁体15が排気の流れる方向に対して平行となっている状態を「開状態」とする。また、弁体15が排気の流れる方向に対して垂直となっている状態を「閉状態」とする。閉状態では、排気は通気孔24・24を流通することになる。即ち、排気管3及び5内の排気通路面積は通気孔24・24の合計面積となる。
ここで、通気孔24・24の合計面積について説明する。通気孔24・24の合計面積は、必要最小限の面積となるようにする。通常、エンジンにおいて許容される背圧は定められている。このことから、制御弁20が閉状態(通気孔24・24のみが排気通路である状態)で無負荷時における背圧が、制御弁20が開状態で定格時において許容される背圧になるように通気孔24・24の合計面積を決定する。この面積が、通気孔24・24の必要最小限の面積となる。通気孔24・24の合計面積を必要最小限にすることにより、通気孔24・24の消音器4に対する膨張比を最大限にまで確保することが可能となり、優れた排気音の減衰効果を得ることができる。つまり、小型の消音器を最大限に有効利用することができる。
本実施例において、前述の通り弁体15には図3の第1実施例のような略円形の通気孔24・24を穿設した。しかし、本発明における弁体15はこれに限るものではない。例えば、図4(a)の第2実施例に示すように、回動軸21を対称軸として弁体15の線対称な位置に切欠部30・30を設けた弁体15aや、図4(b)の第3実施例に示すように、弁体15の外径を小さくして排気管3及び5の内径との間に隙間35を設けた弁体15bなどが考えられる。これらの場合においても、切欠部30・30や隙間35の面積は、前述した必要最小限の面積とする。また、本実施例における排気通路面積変更手段はバタフライバルブの他、ゲートバルブやボールバルブなどのバルブまたはシャッター等を用いることも可能である。つまり、制御弁20は、排気管3及び5内の排気通路面積をアクチュエータにより変化させることが可能であり、排気通路面積を前述した必要最小限の面積まで縮小できる構造であればよい。
弁機構10aとエアシリンダ110aの構成について説明する。図2に示したように、弁機構10aは、エアシリンダ110aによって作動される。エアシリンダ110aは、弁体15が開く方向又は閉じる方向に選択的に圧縮空気が供給されることにより制御弁20を開閉する。つまり、図示は省略するが、エアタンク等に貯溜されている圧縮空気をエアパイプによりエアシリンダ110aに供給する。供給過程において設けられる電磁弁等により、弁体15が開く方向又は閉じる方向に選択的に圧縮空気を供給する。
このように、エアシリンダ110aに供給される圧縮空気によって回動軸21が回動されることで弁体15が回動される。また、コントローラ100によってエアシリンダ110aに供給する圧縮空気の量を調整することで、制御弁20の開度を調整して排気管3の排気通路面積を変化させることも行われる構成としている。なお、本実施例において用いるアクチュエータをエアシリンダとしているが、これに限るものではない。例えば、油圧シリンダやモータ等の各種アクチュエータによって代用することができる。
上記の構成において、弁機構10aの制御弁20によって排気管3の排気通路面積を変化させることができる。制御弁20が開状態のときは、排気管3の内径断面積そのものが排気管3としての排気通路面積となる。制御弁20が閉状態のときは、通気孔24・24の合計面積が排気管3としての排気通路面積となる。通気孔24・24の合計面積は、排気管3の内径断面積よりも小さい。つまり、弁機構10aが閉状態のとき、弁機構10aにおける排気通路面積はその上流側及び下流側の排気管3の排気通路面積に対して縮小されることとなる。
また、前述したように、制御弁20はその開度を調整することができる。つまり、弁機構10aにおいて、排気管3の排気通路面積を制御弁20が開状態での排気通路面積から閉状態での排気通路面積までの範囲で変化させることができる。弁機構10aにおける排気通路面積は、制御弁20が開状態で最大となり、閉状態で最小となる。ここで、制御弁20の開度を弁開度とし、開状態における弁開度を100%とする。即ち、弁機構10aにおける排気通路面積がそれぞれ排気管3の内径断面積そのものである場合を弁開度100%とし、排気通路面積に対応した弁開度を定義する。
弁機構10bとエアシリンダ110bにおける構成についても、上述した弁機構10aとエアシリンダ110bにおける構成と同一である。つまり、弁機構10aが弁機構10bに、エアシリンダ110aがエアシリンダ110bに、排気管3が排気管5に、それぞれ対応し、同様な構成により動作する。
弁機構10aにおいて、制御弁20を所望に閉じる方向に回動し、排気管3の排気通路面積を縮小することができる。これにより、排気管3の消音器4に対する膨張比を大きくすることができる。つまり、排気音の減衰効果を高めることができる。弁機構10bにおいても、制御弁20を所望に閉じる方向に回動し、排気管5の排気通路面積を縮小することができる。これにより、排気管5の出口における排気音を減衰することができる。
続いて、以上のような構成の排気管構造における制御態様について説明する。
まず、排気音重視・燃焼性能重視の運転状態の制御について説明する。
港湾等に停泊中の船舶が、発電するためにエンジン1aを運転する。港湾周辺に住宅やマンション等がある場合、エンジン1aの排気音が騒音となり問題になる可能性がある。弁開度を下げて、周辺住民に影響が出ないよう排気音を減少させる必要がある。つまり、排気音を周辺住民に影響が出ない値以下に制御する(以下、この状態を「排気音重視の状態」という。)。
また、図5に背圧と燃料消費量との関係の一例を示す。弁開度を下げる(バルブを閉める)につれ、排気音は低減する。しかし、バルブを閉めることで背圧は上昇する。背圧が上昇すると燃料消費量も上昇する。つまり、バルブを閉めて排気音を低減させると、燃料消費量は上昇する。よって、排気音が問題にならない場合はバルブを全開にして運転する(以下、この状態を「燃焼性能重視の状態」という。)ことが望ましい。排気音が問題にならない場合とは、例えば、周辺に住宅等がない沖合を船舶が航行中の場合等である。上記排気音重視の状態と、燃焼性能重視の状態とをそれぞれ自動的に制御する。
排気音重視の状態の制御態様について説明する。電力が必要な場合、発電用舶用補機であるエンジン1aを運転する。エンジン1aを運転すると、排気管5の出口から排気音が発生する。船舶に必要な電力によって、エンジン1aの回転数を変化させる。例えば、必要電力が増えた場合は回転数を増加させる。エンジン1aの回転数の変化により、エンジン1aから排出される排気流量が変化するとともに、排気管5の出口から発生する排気音も変化する。船舶が港湾等に停泊中の場合、大きくなった排気音は周辺に対する騒音となる可能性がある。そのため、排気音をある一定値以下に抑える必要がある。本制御態様は、排気管5の出口における排気音がある一定値以下となるように、前記弁機構10a及び10bを前記排気音に連動させて制御するものである。
この場合、ある一定値以下に保とうとする排気管5の出口における排気音の値を予めコントローラ100に記憶する(以下、この記憶される排気音の値を「排気音目標値Vb」とする。)。この排気音目標値Vbは、許容される排気音よりも低く設定される。許容される排気音の値は、周辺環境によって異なる。つまり、付近に住宅がある港湾等では低くなり、出航して港湾から離れれば離れるほど高くなるといった具合である。
コントローラ100は、排気音予測手段102から排気管5の出口における排気音の予測結果(以下、「排気音検出値Vr」)を受信し、排気音目標値Vbと常時比較を行う。そして、排気音検出値Vrが排気音目標値Vb以下となるように制御弁20の開度を制御する。即ち、エンジン1aの回転数が増加するなどして、排気音検出値Vrが排気音目標値Vbよりも高くなると、コントローラ100は排気管3および5の排気通路面積が縮小するように弁機構10a及び10bを制御する。このときコントローラ100は、エアシリンダ110a及び110bに対して、制御弁20を閉じる方向に作動させる制御信号を送る。コントローラ100は排気管3及び5の排気通路面積を縮小させ、排気音を低下させる。
エンジン1aの回転数が減少するなどして、排気音検出値Vrが排気音目標値Vbよりも低くなると、コントローラ100は排気管3及び5の排気通路面積が拡大するように弁機構10a及び10bを制御する。このとき、コントローラ100は、エアシリンダ110a及び110bに対して制御弁20を開く方向に作動させる制御信号を送る。コントローラ100は排気管3及び5の排気通路面積を拡大させ、排気背圧を減少させる。
このようにコントローラ100が弁機構10a及び10bを制御することで、排気音を排気音目標値Vb以下に低減することができる。排気音目標値Vbを周辺の環境に応じた値、つまり、周辺に影響のない値に随時変更することで、周囲に排気音による迷惑をかけることなく発電用舶用補機の運転を行うことができる。
燃焼性能重視の状態の制御態様について説明する。前述の通り、排気音が問題にならない場合はバルブを全開にしてエンジン1aを運転する状態が、燃料消費量が少なく効率の良い状態である。
この場合、コントローラ100は排気管3及び5の排気通路面積が最大となるように弁機構10a及び10bを制御する。即ち、コントローラ100は、エアシリンダ110a及び110bに対して制御弁20を開く方向に作動させる制御信号を送り、制御弁20を最大まで開く。これにより、エンジン1aは燃料消費量の少ない運転を行うことができる。
上記の排気音重視の状態と燃焼性能重視の状態とを切換えることにより、周辺の環境に応じた運転状態を制御することができる。つまり、オペレータが運転状態の切換え信号をコントローラ100に送ることで、コントローラ100は運転状態を切換える。排気音重視の状態においては、予め周辺の環境に適した排気音目標値Vbをコントローラ100に記憶することで、排気音を排気音目標値Vb以下に低減する。燃焼性能重視の状態においては、バルブを全開にして燃料消費量が少なく効率の良い運転を行う。
ここで、弁機構10aと弁機構10bの動作の差異について説明する。図6に、弁機構10aと弁機構10bのいずれか一のみの弁開度を変化させたときに、排気音が変化する様子の概略図を示す。
弁機構10bにおいて、弁開度を100%から下げていくと、それに伴い排気音も減少していく。しかし、ある弁開度Xを境に排気音が上昇するようになる。これは、排気通路面積が減少するにつれ、弁機構10bで発生する気流音が増大するためである。つまり、弁機構10bにおいては、弁開度を弁開度X以下にすると、かえって排気音を増大させる結果となる。
弁機構10aにおいて、弁開度を100%から下げていくと、それに伴い排気音も減少していく。弁機構10aの場合、図2に示すように、その下流側には消音器4が具備されている。消音器4により弁機構10aの気流音は消音されるため、弁開度を下げても排気音が上昇することはない。
上記の通り、弁機構10a及び10bの弁開度と排気音の相関関係には差異がある。よって本実施例における弁機構10a及び10bの制御においても、弁機構10aと弁機構10bの動作に差異を設ける。即ち、排気音を低減する場合、コントローラ100により弁機構10a及び10bは制御される。弁開度が100%から弁開度Xの範囲では、弁機構10a及び10bは同様に制御される。つまり、この範囲において弁機構10a及び10bの弁開度は同じである。しかし、さらに排気音を低減するために弁開度を弁開度X以下に下げる場合、弁機構10aの弁開度のみを下げる。このとき、弁機構10bの弁開度は弁開度Xで固定する。これにより、弁機構10bの気流音の影響を最小限に抑え、最も高い消音効果が得られる。弁開度を上げる場合、弁開度が弁開度X以下の範囲では、弁機構10aの弁開度のみを上げる。このとき、弁機構10bの弁開度は弁開度Xで固定する。弁開度が弁開度X以上の範囲では、弁機構10a及び10bは同じ弁開度に制御される。
前述の通り、本実施例における弁機構10a及び10bの制御では、弁開度X以上では弁機構10a及び10bの弁開度を同様に制御した。つまり、コントローラ100は弁開度を制御する際、弁開度X以上では弁機構10a及び10bに対し同時に同様の作動を行い、弁開度X以下では弁機構10aのみを作動するよう制御した。しかし本発明はこれに限るものではなく、弁機構10aと弁機構10bを交互に作動させる制御方法や、同時に異なる弁開度に制御する方法なども考えられる。
次に、補機運転台数の制御態様について説明する。コンテナ船等の大型船舶では、発電用舶用補機数台を同時に運転する場合がある。この場合とは、例えば船舶内で冷凍コンテナ等により大量の電力を消費する場合である。発電用舶用補機を複数台同時に運転し、それにより大量の電力を発電する。燃料の浪費などの無駄が無く、効率の良い運転をするためには、大量の電力が必要になった場合のみ、補機運転台数を必要な電力に応じて必要な台数だけ増やす必要がある。また本発明においては、排気音をある一定の目標値以下に制御するためにバルブ開度を下げる必要がある。バルブ開度を下げることは、背圧・排気温度の上昇を伴う。背圧・排気温度にはそれぞれ性能等を考慮した限界値である背圧・排気温度がある。背圧・排気温度がそれぞれの限界値を超える場合は、補機運転台数を増やして補機1台あたりの負荷を減らし、背圧・排気温度を下げる必要がある。そこで、本制御態様は、制御手段により排気音を一定値に制御しながら、負荷が増大した場合や背圧・排気温度が設定した各限界値に達した場合など、補機運転台数を増やす必要がある場合にのみ自動的に補機運転台数を増やし、効率の良い運転を行うものである。
図7に並列運転可能なエンジン1a・1b・1cを具備する発電用舶用補機の概略構成を示す。ここで、本実施例においては発電用舶用補機の台数をエンジン1a・1b・1cの3台として説明するが、本発明はこれに限らず、発電用舶用補機の台数は2台、若しくは4台以上でも良い。図7に示すように、エンジン1bとエンジン1cは図1に示したコントローラ100と接続している。エンジン1bとエンジン1cは、図示は省略するが、図1で示したようなエンジン1aと同様の排気管構造を具備している。また、各排気管構造における各センサ・エアシリンダは、エンジン1aの排気管構造における各センサ・エアシリンダと同様にコントローラ100と接続している(図示せず)。
オペレータが始動キーの操作などによりコントローラ100にエンジン1aの起動指令Faを入力すると、コントローラ100はエンジン1aへ起動信号Gaを送信する。この起動信号Gaにより、エンジン1aが起動する。エンジン1aが運転中に、前述したような補機運転台数を増やす必要がある場合には、コントローラ100が自動的にエンジン1bへ起動信号Gbを送信する。この起動信号Gbにより、エンジン1bが起動する。エンジン1a及び1bが運転中に、さらに補機運転台数を増やす必要がある場合には、コントローラ100が自動的にエンジン1cへ起動信号Gcを送信する。この起動信号Gcにより、エンジン1cが起動する。
続いて、補機運転台数の制御について具体的に説明する。
まず、背圧に基づく補機運転台数の制御について説明する。図8に背圧に基づく補機運転台数制御時における全負荷に対する排気音・背圧・排気温度・弁開度の、変化の様子の一例を示す。図8において、全負荷とは、運転中の補機(1台、若しくは複数台)にかかる負荷の合計である。図中の排気音・背圧・排気温度・弁開度は、エンジン1aに具備した排気管構造におけるものである。前記弁開度とは、弁機構10の弁開度を意味するものとする。
本実施例においては、エンジン1aに具備した排気管構造において検出された排気音(排気音検出値Vr)、背圧Pr、及び運転中のエンジン全てから検出された負荷を基に制御を行う。コントローラ100は、排気音検出値Vr・背圧Prを入力し、それぞれ排気音目標値Vb・背圧限界Pbと常時比較を行う。
図8において、負荷Aの時点では船舶内で必要な電力が少なく、全負荷も小さい。全負荷が小さいため、補機運転台数は1台でも必要な電力の発電ができる。また、弁開度が100%でも、排気音検出値Vrは排気音目標値Vbに対して小さい。船舶に必要な電力が増加すると発電量も増加するため、全負荷も増加する。全負荷が増加するにつれ、排気音検出値Vr・背圧Prは上昇する。
負荷Bの時点で排気音検出値Vrが排気音目標値Vbに達する。ここで、コントローラ100は排気管3及び5の排気通路面積が縮小するように弁機構10a及び10bを制御する。つまり、弁開度を下げて、排気音検出値Vrを低減させ、排気音検出値Vrが排気音目標値Vbとなるように制御する。全負荷が上昇するにつれ排気音検出値Vrも増大するため、コントローラ100は弁開度を下げていき、排気音検出値Vrを排気音目標値Vbに一定に保つ。弁開度を下げることにより、さらに背圧Prが上昇する。
負荷Cの時点で、背圧Prが背圧限界Pbに達する。これ以上弁開度を下げると背圧Prが背圧限界Pbを超えてしまう。ここでコントローラ100は自動的にエンジン1bへ起動信号Gbを送信する。起動信号Gbにより、エンジン1bが起動する。補機運転台数が2台になるため、補機1台あたりの負荷を下げることができる。これにより背圧Prが下がる。また、1台あたりの排気音も下がることになるので、弁開度も上げることができ、さらに背圧Prが下がる。
本実施例においては、補機運転台数が複数の場合は、各補機に対する負荷が均等になるように運転する。これにより負荷がある特定の補機に偏るのを防止し、各補機における排気音・背圧・排気温度を略均等の値に制御することができる。しかし、本発明は前記の補機運転方法に限らず、各補機に異なる負荷をかける等の方法も可能である。
負荷Cの時点からさらに全負荷が増加すると、排気音検出値Vrが増加するため、再び弁開度を下げていき、排気音検出値Vrを排気音目標値Vbに一定に保つ。それに伴い背圧Prも上昇する。負荷Dの時点で、再び背圧Prが背圧限界Pbに達する。ここでコントローラ100は自動的にエンジン1cへ起動信号Gcを送信する。起動信号Gcにより、エンジン1cが起動する。補機運転台数が3台になるため、1台あたりの負荷を下げることができる。これにより背圧Prが下がる。また、1台あたりの排気音も下がることになるので、弁開度も上げることができ、さらに背圧Prが下がる。
負荷Dの時点からさらに全負荷が増加すると、排気音検出値Vrが増加するため、再び弁開度を下げて、排気音検出値Vrを排気音目標値Vbに一定に保つ。それに伴って背圧Prが上昇していく。
このように、コントローラ100は、排気音検出値Vrを排気音目標値Vbに一定に制御しながら、背圧Prが背圧限界Pbに達した時点で自動的に補機運転台数を1台増加させる。
また、補機運転台数が複数の状態において、背圧Prが減少し背圧限界Pbを大きく下回り、ある一定の背圧に達した場合、コントローラ100により自動的に補機運転台数を減少させるように制御することもできる。
次に、排気温度に基づく補機運転台数の制御について説明する。図9に排気温度に基づく補機運転台数制御時における全負荷に対する排気音・背圧・排気温度・弁開度の、変化の様子の一例を示す。
本実施例においては、エンジン1aに具備した排気管構造において検出された排気音(排気音検出値Vr)、排気温度Tr、及び運転中のエンジン全てから検出された負荷を基に制御を行う。コントローラ100は、排気音検出値Vr・排気温度Trを入力し、それぞれ排気音目標値Vb・排気温度限界Tbと常時比較を行う。
図9において、負荷Jの時点では船舶内で必要な電力が少なく、全負荷も小さい。全負荷が小さいため、補機運転台数は1台でも必要な電力の発電ができる。また、弁開度が100%でも、排気音検出値Vrは排気音目標値Vbに対して小さい。船舶に必要な電力が増加すると発電量も増加するため、全負荷も増加する。全負荷が増加するにつれ、排気音検出値Vr・排気温度Trは上昇する。
負荷Kの時点で排気音検出値Vrが排気音目標値Vbに達する。ここで、コントローラ100は排気管3及び5の排気通路面積が縮小するように弁機構10a及び10bを制御する。つまり、弁開度を下げて、排気音検出値Vrを低減させ、排気音検出値Vrが排気音目標値Vbとなるように制御する。全負荷が上昇するにつれ排気音検出値Vrも増大するため、コントローラ100は弁開度を下げていき、排気音検出値Vrを排気音目標値Vbに一定に保つ。弁開度を下げることにより、さらに排気温度Trが上昇する。
負荷Mの時点で、排気温度Trが排気温度限界Tbに達する。これ以上弁開度を下げると排気温度Trが排気温度限界Tbを超えてしまう。ここでコントローラ100は自動的にエンジン1bへ起動信号Gbを送信する。起動信号Gbにより、エンジン1bが起動する。補機運転台数が2台になるため、補機1台あたりの負荷を下げることができる。これにより排気温度Trが下がる。また、1台あたりの排気音も下がることになるので、弁開度も上げることができ、さらに排気温度Trが下がる。
負荷Mの時点からさらに全負荷が増加すると、排気音検出値Vrが増加するため、再び弁開度を下げていき、排気音検出値Vrを排気音目標値Vbに一定に保つ。それに伴い排気温度Trも上昇する。負荷Nの時点で、再び排気温度Trが排気温度限界Tbに達する。ここでコントローラ100は自動的にエンジン1cへ起動信号Gcを送信する。起動信号Gcにより、エンジン1cが起動する。補機運転台数が3台になるため、1台あたりの負荷を下げることができる。これにより排気温度Trが下がる。また、1台あたりの排気音も下がることになるので、弁開度も上げることができ、さらに排気温度Trが下がる。
負荷Nの時点からさらに全負荷が増加すると、排気音検出値Vrが増加するため、再び弁開度を下げて、排気音検出値Vrを排気音目標値Vbに一定に保つ。それに伴って排気温度Trが上昇していく。
このように、コントローラ100は、排気音検出値Vrを排気音目標値Vbに一定に制御しながら、排気温度Trが排気温度限界Tbに達した時点で自動的に補機運転台数を1台増加させる。
また、補機運転台数が複数の状態において、排気温度Trが減少し排気温度限界Tbを大きく下回り、ある一定の排気温度に達した場合、コントローラ100により自動的に補機運転台数を減少させるように制御することもできる。
次に、背圧及び排気温度に基づく補機運転台数の制御について説明する。背圧及び排気温度に基づく補機運転台数制御とは、背圧Pr又は排気温度Trのいずれか一方が、それぞれ背圧限界Pb又は排気温度限界Tbに達した時点で自動的に補機運転台数を1台増加させるものである。つまり、背圧に基づく補機運転台数制御において、排気温度Trの上昇は補機運転台数制御に考慮されない。また、排気温度に基づく補機運転台数制御において、背圧Prの上昇は補機運転台数制御に考慮されない。しかし、背圧及び排気温度に基づく補機運転台数制御においては、背圧Pr及び排気温度Trの上昇は共に補機運転台数制御に考慮される。
上記の、背圧に基づく補機運転台数制御、排気温度に基づく補機運転台数制御、背圧及び排気温度に基づく補機運転台数制御、を切換えることにより、前記の制御状態のうち、所望の制御状態で運転することができる。つまり、オペレータが制御状態の切換え信号をコントローラ100に送ることで、コントローラ100は制御状態を切換え、その制御態様に基づいた制御を行う。
次に、背圧Pr・排気温度Trが共にその限界値に達しない場合の補機運転台数の制御について説明する。各エンジンには負荷の限界値(負荷限界)が存在する。各エンジンには、それぞれの負荷限界を超える負荷をかけることはできない。つまり必要な電力が増大するなどして、全負荷(以下、「全負荷Lr」とする)が、運転中であるエンジンの負荷限界の合計値(以下、「負荷限界の合計値Lb」とする)に達した場合、充分な電力を発電するために補機運転台数を増やす必要がある。
具体的に、エンジン1aのみが運転中の場合の制御態様を説明する。この場合、予め各エンジンの負荷限界をコントローラ100に記憶させておく。記憶させる負荷限界は、実際の負荷限界よりも低く設定される。コントローラ100は全負荷Lrと、運転中であるエンジンの負荷限界の合計値Lbを常時比較する。エンジン1aの負荷の増加に伴って排気音検出値Vrを排気音目標値Vbにするために弁開度を下げる。背圧・排気温度が共にその限界値に達しないまま、全負荷Lrがエンジン1aの負荷限界まで達した場合、コントローラ100は自動的にエンジン1bへ起動信号Gbを送信する。起動信号Gbにより、エンジン1bが起動する。補機運転台数が2台になるため、補機1台あたりの負荷を下げることができる。
さらに全負荷が増加し、背圧・排気温度が共にその限界値に達しないまま、全負荷Lrがエンジン1a・1bの負荷限界の合計値Lbまで達した場合、コントローラ100は自動的にエンジン1cへ起動信号Gcを送信する。起動信号Gcにより、エンジン1cが起動する。補機運転台数が3台になるため、1台あたりの負荷を下げることができる。
また、エンジン1a・1b・1cが運転中に、必要な電力が減少するなどして全負荷Lrが減少し、全負荷Lrがエンジン1a・1bの負荷限界の合計値Lb以下になった場合、コントローラ100は自動的にエンジン1cを停止する。さらに全負荷Lrが減少し、エンジン1aの負荷限界以下になった場合、コントローラ100は自動的にエンジン1bを停止する。
背圧及び排気温度に基づく補機運転台数制御態様について、図10を用いて説明する。コントローラ100は、背圧Prが背圧限界Pbに達しているか判断する(S110)。背圧Prが背圧限界Pbに達している場合、コントローラ100は補機を一台起動し、補機運転台数を一台増加させる(S150)。背圧Prが背圧限界Pbに達していない場合、コントローラ100は、排気温度Trが排気温度限界Tbに達しているか判断する(S120)。排気温度Trが排気温度限界Tbに達している場合、コントローラ100は補機を一台起動し、補機運転台数を一台増加させる(S150)。排気温度Trが排気温度限界Tbに達していない場合、コントローラ100は、全負荷Lrが運転中であるエンジンの負荷限界の合計値Lbに達しているか判断する(S130)。全負荷Lrが運転中であるエンジンの負荷限界の合計値Lbに達している場合、コントローラ100は補機を一台起動し、補機運転台数を一台増加させる(S150)。全負荷Lrが運転中であるエンジンの負荷限界の合計値Lbに達していない場合、上記S110からの制御を繰り返す。また本発明において、S110、S120及びS130の判断の順序はこれに限るものではない。
上記補機運転台数の制御により、コントローラ100は排気音検出値Vrを一定の排気音目標値Vbに保ちながら、背圧Pr・排気温度Trを常に自動で監視し、そのいずれかが限界に達した場合は、補機運転台数を1台増やすことで、自動的に補機運転台数の制御が可能となる。また、大量の電力が必要な場合だけ、コントローラ100により自動的にその必要量に応じた台数の補機を運転することが可能となる。これらの制御態様により、補機運転台数を手動で切換える場合に比べて、燃料の浪費等の無駄がない効率の良い運転が可能となる。
本実施例において、コントローラ100のみで全ての制御を行ったが、本発明はこれに限るものではなく、排気管構造を制御するコントローラを各排気管構造に1台ずつ具備し、それらのコントローラをさらに1台の親となるコントローラで制御する構成なども考えられる。
また、本実施例においては、エンジン1aに具備した排気管構造において検出された排気音検出値Vr・背圧・排気温度を基に制御を行ったが、本発明はこれに限るものではない。例えば、運転中の排気管構造の排気音・背圧・排気温度の各検出値を平均した値を基に前述した制御を行っても良い。