JP4745524B2 - 試料高さ出し方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、集束イオンビーム装置においてガス銃と試料面との距離を所定値にするための試料の高さだし技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
集束イオンビーム装置(FIB装置)でエッチング加工やデポジションを実施する際に、ガス銃によるガス吹きつけが行われる。試料表面に対し一定濃度のガスを供給するためにはガスノズルと試料との距離を一定に保つ必要がある。試料としては半導体デバイス、薄膜磁気ヘッド等があり、形状も厚さも様々であるため、試料ステージの高さを調整してガスノズルと試料表面との距離を一定に保つようにしている。因みにシリコンウエハの厚さは0.5mm〜1.0mm、薄膜磁気ヘッド用ウエハは2mm以下である。ガスノズルと試料表面との距離はガス効果の安定のため、0.5±0.1mm以内に調整する必要がある。また、この加工に先立ち試料面の画像を観察して加工位置を確認する必要があるが、鏡筒と試料表面との距離を一定にしないと像の倍率が変わってしまうという問題も生じる。装置として構造的に鏡筒とガスノズルとの位置関係は決められているので、鏡筒若しくはガスノズルに対して試料表面の位置を調整すればよい。
【0003】
従来この位置調整として、ユーセントリックチルトステージを使用して調整する方法があった。このタイプの試料ステージは図5の(a)に示すようにチルト(傾斜)軸上をz軸が交差する形になっている。ただし、x軸y軸及びR(回転)軸については省略して図示している。試料高さがチルト軸上に無いときは図の(b)に示すようにステージをチルトさせるとイオンビームの照射位置は移動してしまうが、図の(c)に示すように一致している場合には位置ズレを起こすことがない。この関係を利用して試料面を観察しながらチルト角を変更し、チルト角変更によっても位置ズレしないz軸高さを求めて高さだし調整を行うものである。ただし、この方法はチルト駆動軸を有している試料ステージでなければ実行することができない。チルト軸を有するものは断面観察を行うためのもので、単に表面加工を実行するFIB装置にはxyz3軸駆動が多く、当該装置ではこの手法は適用できない。また、チルト軸を有する装置であっても最近はガス銃が複数個取り付けられるものがあり、チルト動作によってガス銃のノズルと試料が衝突してしまうという不都合も生じる。
【0004】
特許第2875940号公報に示されたものは、図6に示すように斜めから入射するレーザビームを試料面で反射させ、受光器を設置してその受光位置を検知することにより該試料の高さだしを実行するというものである。この手法はレーザ照射系と検出器の設置が必要となるが、イオン光学系と二次荷電粒子検出器の他に電子ビーム照射系、複数のガス銃などを配設するFIB装置に更にこれらの部材を配置することは設計上困難という問題と、高さだしのためだけのレーザ系の設置はコストパフォーマンスの上からも好ましくない。
また、別の手法としては、▲1▼標準試料を用い、該試料表面とガス銃のノズルとを接触させてから所定距離(例えば0.5mm下げた位置)で規定の高さを決め、▲2▼イオン光学系の対物レンズの焦点を該試料の表面に調整し固定する。▲3▼被測定試料をステージ上に設置する。▲4▼ピントの合う位置に試料の高さ(z軸)調整を行うという方法もある。この手法は、試料画像の鮮明度で高さを調節することになるが、光学系の焦点深度が深いと0.1mmの高さ精度がでないので、焦点深度を浅くして実行する必要がある。(図7参照)焦点深度を浅くすることはビーム電流を大きくとることになるが、因みにビーム電流を30pAとすると高さだし精度は±0.2mmまで、ビーム電流を400pAとすると高さだし精度は±0.15mmまでとれる。所望の精度を得るためには大電流とし5000倍以上の高倍率で観察する必要がある。しかし、これは試料に対するダメージの問題を考慮しなければならない。
【0005】
また、別の方法としては図8に示すような試料ホルダーを用い、試料の上面規制をした状態で例えばホルダーの縁部をガスノズルと接触させて所定距離さげることにより、規定位置を決める手法もあるが、これは試料表面の起伏がない平坦な試料にはよいが、100μm程度の起伏がある薄膜磁気ヘッドなどや反りのあるウエハーなどにはこの手法は対応できない。
更には、別置きの光学顕微鏡で試料の場所や高さ座標を測定し、この情報を記憶しておいてFIB装置のステージ制御部に該記憶情報を入力し、必要に応じて座標変換をして該ステージの位置制御を実行して試料の場所と高さだしを行う方法(特許第2926426号)や、実用新案第1807585号に示されたようにイオン光学系の光学軸と光学顕微鏡の光学軸とが一致するように設置し、光学顕微鏡の焦点が規定位置で合うように調整しておいて光学顕微鏡をみながら高さだしを実行する手法もある。これらは別途光学顕微鏡の準備設置が必要であるだけでなく、後者の場合にはガス銃周辺のスペースを占有する問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高さ出しのためにレーザー系や光学顕微鏡といった高価な手段を必要とせず、スペースとして余裕のないガス銃周辺に場所をとる手段の設置をすることもなく、試料にダメージを与えることもなく、上面規制ホルダーを必要とせず、x,y,z3軸駆動の単純なFIB装置において、容易に実施できる試料高さだし方法の提供とそれを実行する装置の提供にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の試料高さだし方法は、偏向手段をイオン光学軸方向に二段設置し、一段目で一方向にθ1 偏向をかけ、二段目では逆方向にθ2 戻すようにして試料面にイオンビームを照射してそのスポット位置を確認し、次のステップでは一段目で一方向に−θ1 偏向をかけ、二段目では逆方向に−θ2 戻すようにして試料面にイオンビームを照射してスポット位置を確認し、両スポット位置を一致させることで試料の高さを調整する。
また、この方法を実行する集束イオンビーム装置としては、一段目の偏向手段の光学軸方向長さをL1、間隔L2をおいて設置する二段目の偏向手段の光学軸方向長さをL3に構成し、該二段目の偏向手段から適正試料面までの距離をL4としたとき、前記一段目の偏向手段によって偏向される角θ1 と前記二段目の偏向手段によって偏向される角θ2 との関係が
θ1 /θ2 =−(L3/2+L4)/(L1/2+L2+L3+L4)
を満たすように設定されることによって試料高さだし機能を備えた。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1の(a)に示すように、イオン光学系光学軸方向に二段の偏向器を組み込む。新たに二段としてもよいが、従来の偏向器を1段目とし更に一段加えて二段とした構成でよく、この方がスペース的にも有効である。一段目の偏向器1の有効長はL1、二段目の偏向器2の有効長はL3で両者の間隔はL2、二段目の偏向器2の端部から試料面までの適正距離をL4 とする。この適正距離をL4 は標準試料を試料ステージに載置しガス銃のノズルと該標準試料とを接触させ、その試料高さ位置から所定距離(例えば0.5mm)下げた位置に規定する。ここで、L1乃至L3は装置の設計によって決まる固定値となる。L4 が本発明によって調整されることになる適正高さの値である。偏向器1及び/又は偏向器2に通常の走査信号のみを加えれば通常の試料面走査が実行される。試料面観察の際はこの形態でビームが走査される。偏向器1及び偏向器2に所定の直流信号を加えれば、イオンビームはその分だけ偏向されることになる。いま直流偏向信号は一方向にだけ与えられるものとし、一段目では正の向きにθ1 二段目では負の向きにθ2 だけ戻すように直流信号を偏向器に加える。この時の状態を図1の(b)に示す。本発明では図に示されたように、試料面の高さが適正位置にあるときに偏向走査信号を加えないでこの直流信号のみを加え、イオンビームスポットがイオン光学軸上にくるように一段目では正の向きにθ1 二段目では負の向きにθ2 だけ戻すように直流信号を偏向器に加えるように設定する。この関係は
θ1 /θ2 =−(L3/2+L4)/(L1/2+L2+L3+L4)
で表せる。
この直流信号に基く偏向角度が決まりそれが偏向器に加えれていれば試料面が変位した場合スポット位置は光学軸上からズレることになる。この設定された偏向信号に通常の走査信号を重畳させると図1の(c)に示すように通常走査と同様な領域走査が実行され、その領域の画像を得ることができる。
【0009】
次に、直流信号の正負を逆転させ、一段目では負の向きにθ1 二段目では正の向きにθ2 だけ戻すように直流信号を偏向器に加えるようにする。図1の(d)に示すように試料面が適正高さ位置にあるときは、ビームの曲折が逆になるだけでビームスポットはやはりイオン光学軸上の同じ位置にくることになる。このとき、通常の走査信号を重畳すれば得られる試料画像は図のEのようにして得られるが、これは先の図の(c)のものと同じとなる。
本発明の原理は図2から判るように偏向器1,2に加える直流信号を反転/非反転させたとき試料高さがz1またはz3にあるときはビームスポット位置が一致せず、z2の高さにあるときビームスポット位置が一致する。試料がこの高さz2の位置にあるとき、二段目の偏向器2の端部から試料面までの距離が適正なL4 になっていることになる。すなわち、本発明の試料高さだし方法は、偏向手段をイオン光学軸方向に二段設置し、一段目で一方向にθ1 偏向をかけ、二段目では逆方向にθ2 戻すようにして試料面にイオンビームを照射してそのスポット位置を確認し、次のステップでは一段目で一方向に−θ1 偏向をかけ、二段目では逆方向に−θ2 戻すようにして試料面にイオンビームを照射してスポット位置を確認し、両スポット位置を一致させることで試料の高さを調整するものである。
【0010】
【実施例1】
本発明の方法を実現する装置の実施例を示す。イオン光学系光学軸方向に二段の偏向器を組み込む。一段目の偏向器1の有効長はL1=5mm、二段目の偏向器2の有効長はL3=5mmで両者の間隔はL2=1mmとし、二段目の偏向器2の端部から試料面までの適正距離をL4=10mmとする。標準試料を試料ステージに載置しガス銃のノズルと該標準試料とを接触させ、その試料高さ位置から0.5mm下げた位置に規定する。偏向器1,2に加える直流信号をそれぞれの偏向角がθ1 ,θ2 が次式を満たすように設定する。
この状態で偏向器2に直流信号を反転/非反転して加え、それに走査信号を重畳して標準試料の画像を撮ったとき、両画像が一致していることを確認する。しかし、実際には、設計通りに物が出来ていない場合がある。特に、L4の値は±0.2mm程度のばらつきがある。従って、両画面が一致するように偏向比(偏向器1,2に印加する電圧の比率)の微調整を行う。続いて、被検査試料をステージに載置して、偏向器1,2に設定した直流信号を反転/非反転して加え、それに走査信号を重畳して試料の画像を撮り、二枚の画像を重ねる。このとき、図3の(b)のように像が一致していれば試料表面の位置z2は適正位置にあることになるが、一般には図3の(a)または(c)に示したように二重画像の状態となる。これは図2の試料高さがz1またはz3の位置にあるためである。従って、試料ステージの高さを調整して像が一致するようにする。このときz=z2となる。例えば、入射角±0.6deg.で二重像の間隔が2μm以下となるように高さ調節を行うと、高さ精度0.1mmを確保することができる。
【0011】
【実施例2】
次に、重ね画像上から試料位置が高すぎるのか低すぎるのかを簡便に判定できる実施例を示す。この方法は直流信号反転時の画像を取得するフレーム数と非反転時の画像を取得するフレーム数とに差をつけ、両画像に濃淡の区別をつける方法である。図4の(a)に示すように一段目の偏向器1と偏向器2に印加する直流信号の反転/非反転する時間間隔を同じとせず、この実施例では(b)に示すように時間差すなわち画像を取得するフレーム数に差(例えば非反転時にnフレーム、反転時に1/2フレーム)をつけるようにした。このことにより、直流信号反転時の画像と非反転時の画像のうち、いずれが長い時間表示されるかを見れば試料位置が高いのか低いのかを判定することができる。すなわち、図3の(a)に示されるように試料高さが高いときには、反転時の画像は右にズレ非反転時の画像は左にズレる関係にあるから非反転時のフレーム数を多くとったこの場合に左側が長く表示されれば試料位置が高いということが判るのである。これに対し右側が長く表示されるならば試料位置が低いということが判る。判定した方向にz軸を駆動しながら撮像を繰返し画像が等しくなるように調整する。
【0012】
【実施例3】
次に、重ね画像上から試料位置が高すぎるのか低すぎるのかを簡便に判定できる異なる実施例を示す。この方法は図4の(c)に示すように、非反転時の画像を多くのフレーム数で取得した後瞬時的に反転走査に入り、少ないフレーム数の走査の後ランプ状に直流信号を変化させて徐々に非反転時の画像に移行させる。このような偏向信号を付与すると、試料が適正位置にある時には非反転時の画像も反転時の画像も一致しているので画像のズレはないが、高過ぎるときは右側画像から左側画像に切り替わる際に尾を引くように移行する現象が見られる。これに対し、試料位置が低いときには反対に左側画像から右側画像に切り替わる際に尾を引くように移行する現象が見られる。判定した方向にz軸を駆動しながら撮像を繰返し画像が等しくなるように調整する。
上記の実施例では対物レンズの後段に二段の偏光器を配置するものとしたが、対物レンズの前後に分離して配置するようにしても良い。その場合には対物レンズの焦点は標準試料を規定値の高さにして調整し、固定して使用する。焦点深度が深い場合でも本発明によれば精度よく高さ調整が可能である。なお、この方式においては反転/非反転時のフレーム数に差を設けることは必ずしも必須ではない。
【0013】
【発明の効果】
本発明の試料高さだし方法は、偏向手段をイオン光学軸方向に二段設置し、一段目で一方向にθ1 偏向をかけ、二段目では逆方向にθ2 戻すようにして試料面にイオンビームを照射してそのスポット位置を確認し、次のステップでは信号印加極性を反転させ一段目で一方向に−θ1 偏向をかけ、二段目では逆方向に−θ2 戻すようにして試料面にイオンビームを照射してスポット位置を確認し、両スポット位置を一致させることで試料の高さを調整するようにしたもので、従来方式のような高さ出しのためにレーザー系や光学顕微鏡といった高価な手段を必要とせず、スペースとして余裕のないガス銃周辺に場所をとる手段の設置をすることもなく、試料にダメージを与えることもなく、上面規制ホルダーを必要とせず、x,y,z3軸駆動の単純なFIB装置においてさえ、試料高さだし方法が容易に実施できる。
本発明は、二段の偏向手段に印加する反転/非反転直流信号に通常の走査偏向信号を重畳させ、試料面の二次元画像を得て、両画像を重ねたとき二重とならないように試料の高さを調整する試料高さだし方法であって、二段の偏向手段に印加する直流信号の反転/非反転印加時間に差をもたせ、左右にズレる画像の表示時間差から調整方向を判別するであるとか、二段の偏向手段に印加する直流信号の反転/非反転切り替えの一方をランプ状に変化させ、画像が尾を引く向き情報から調整方向を判別する方法を採用することで、試料の位置が高いのか低いのかの判別が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作動を説明する図であり、(a)は画像取り込みの走査を、(b)は非反転時のビーム軌道を、(c)は非反転時の走査を、(d)は反転時のビーム軌道を、(e)は反転時の走査を示す図である。
【図2】本発明の試料高さだし原理を説明する図である。
【図3】本発明による高さ位置と反転時/非反転時の画像との関係を説明する図である。
【図4】本発明において二段偏向器にかける直流信号を示す図である。
【図5】ユーセントリックステージを使用した従来の試料高さだし法を説明する図である。
【図6】レーザー光を利用した従来の試料高さだし法を説明する図である。
【図7】像焦点法による従来の試料高さだし法を説明する図である。
【図8】試料ホルダーを利用した従来の試料高さだし法を説明する図である。
【符号の説明】
1 前段偏向器 L1 前段偏向器の光軸方向有効長
2 後段偏向器 L2 前段偏向器と後段偏向器間の間隔
3 試料 L3 後段偏向器の光軸方向有効長
θ1 前段偏向器による偏向角 L4 適正高さ位置の試料と後段偏向器
θ2 後段偏向器による偏向角 端部間の間隔
z1,z2,z3 試料高さ
Claims (2)
- 偏向手段をイオン光学軸方向に二段設置し、一段目で一方向にθ1偏向をかけ、二段目では逆方向にθ2戻すようにして試料面にイオンビームを照射してそのスポット位置を確認し、次のステップでは一段目で一方向に−θ1偏向をかけ、二段目では逆方向に−θ2戻すようにして試料面にイオンビームを照射してスポット位置を確認し、両スポット位置を一致させることで試料の高さを調整する試料高さ出し方法において、
二段の前記偏向手段に印加する反転/非反転直流信号に通常の走査偏向信号を重畳させ、前記試料面の二次元画像を得て、両画像を重ねたとき二重とならないようにし、かつ、
反転/非反転印加時間に差をもたせ、左右にズレる画像の表示時間差から調整方向を判別する試料高さ出し方法。 - 偏向手段をイオン光学軸方向に二段設置し、一段目で一方向にθ 1 偏向をかけ、二段目では逆方向にθ 2 戻すようにして試料面にイオンビームを照射してそのスポット位置を確認し、次のステップでは一段目で一方向に−θ 1 偏向をかけ、二段目では逆方向に−θ 2 戻すようにして試料面にイオンビームを照射してスポット位置を確認し、両スポット位置を一致させることで試料の高さを調整する試料高さ出し方法において、
二段の前記偏向手段に印加する反転/非反転直流信号に通常の走査偏向信号を重畳させ、前記試料面の二次元画像を得て、両画像を重ねたとき二重とならないようにし、かつ、
前記偏向手段に印加する直流信号の反転/非反転切り替えの一方をランプ状に変化させ、画像が尾を引く向き情報から調整方向を判別する試料高さ出し方法。
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