JP4744854B2 - 相変化記録媒体、記録装置、及び記録方法 - Google Patents

相変化記録媒体、記録装置、及び記録方法 Download PDF

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Description

本発明は、記録媒体、記録装置、及び記録方法に係り、特には、相変化記録媒体、相変化記録媒体を有する記録装置、及び相変化記録媒体に情報を記録する記録方法に関する。
記録層に光ビームを照射することにより情報の記録や再生を行う光記録媒体は、記録再生装置から取り外し可能である、大容量である、高速アクセスが可能である、及び超寿命であるなどの優れた特徴を有している。そのため、光記録媒体は、音声、画像、及び計算機データなどの様々なデータを保存するのに利用されており、今後、さらに普及することが予想される。
光記録媒体の中でも、相変化記録媒体は、オーバーライトが容易である、繰り返し記録に対する耐性が高い、記録再生装置の光学系を簡単な構成とすることができるため低価格の装置を製造する上で有利である、及び、再生専用型光ディスクとの間の互換性の実現が容易であるなどの特徴を有している。このような特徴により、相変化記録媒体は、CD−RW、DVD−RAM、及びDVD−RWなどとして実用化されている。
相変化記録媒体への情報の記録は、記録層に高パワーの光を照射してその光照射部を非晶質とすることによって行われ、記録した情報の消去は、中パワーの光を照射して非晶質部を結晶化することによって行われる。また、記録した情報の再生は、非晶質部の結晶化が生じない程度の低パワーの光を照射することによって行われる。
ところで、これら記録及び消去には、以下に説明するように、非晶質部及び結晶質部の光吸収率のような光学的パラメータや、記録層の融点、結晶化温度、結晶核生成頻度、結晶成長頻度、及び光照射時における記録層の昇温/降温速度のような熱的パラメータが関係している。なお、核生成頻度及び結晶成長頻度は、記録層の結晶化温度以上であり且つ融点未満の温度範囲内で有意なパラメータである。すなわち、核生成頻度は、上記温度範囲内で非晶質中に微細結晶核が生成される確率分布に相当し、結晶化温度に近い温度で大きな値を示す。一方、結晶成長頻度は、上記温度範囲内で、記録マークとなる非晶質部を取り囲む結晶質部が結晶成長する速度、或いは、非晶質部内に生成した結晶核が成長する速度に相当し、融点付近の温度で高い値を示す。
情報の記録は、結晶質の記録層に記録レベルの高パワーの光を照射し、その光照射部の温度を融点以上として溶融させることにより行う。この溶融部が室温にまで冷却される過程で、溶融部の温度は、結晶成長が支配的な温度域及び核生成が支配的な温度域を順次経る。溶融状態からの降温速度は速いので、溶融部の温度は短時間で結晶成長が支配的な温度域及び核生成が支配的な温度域を通過して室温に至る。その結果、記録層の光照射部に対応して非晶質の記録マークが形成される。以上のようにして、記録層に情報が書き込まれる。
記録マークの形成についてより詳細に説明すると、光照射部の中心部と周縁部との間では、冷却速度、結晶成長時間、及び核生成時間などが一定である訳ではないため、記録層の光照射部が溶融状態から固化する過程で、溶融部の周縁から中央に向けて結晶成長が進行する。その結果、記録マークである非晶質部を取り囲むようにして溶融再結晶化リングが形成される。
適度な溶融再結晶化は、マークエッジの揺らぎ(ジッタ)を低減する効果を有しているため好ましい。しかしながら、過度な溶融再結晶化が生じた場合、適切なサイズの記録マークを形成するためには、形成すべき記録マークのサイズに比べて遥かに広い領域に光を照射しなければならない。そのため、トラックピッチを狭めた場合にクロスイレースが顕著となるという問題を生ずる。
このような問題に対し、従来技術では、記録層の組成を調節することや添加元素を使用することなどによって記録層の結晶成長速度を低下させるか、或いは、媒体の層構成を工夫して記録層の光吸収率を高めることや昇温/降温速度を速めることなどによる対処が試みられていた。
一方、情報の消去は、記録層に消去(或いは結晶化)レベルの中パワーの光を照射し、その光照射部を結晶化温度以上であり且つ融点未満の温度に昇温することにより行う。この昇温過程で、光照射部の温度は、核生成が支配的な結晶化温度付近の温度域を超えて上昇し、その後、結晶成長が支配的な融点付近の温度域に至る。前者の温度域では主として結晶核が生成され、後者の温度域ではそれら核が成長する。これら核の成長は降温過程でも継続し、その後、光照射部の温度は核生成が支配的な温度域にまで至る。さらに、光照射部の降温が進行することにより非晶質部の結晶化が完了する。すなわち、記録マークが消去される。記録層に記録された情報の消去は、以上のようにして行う。
記録した情報の消去率を高めるには、核生成頻度や結晶成長頻度を高めるか、或いは、記録層が核生成温度域や結晶成長温度域を通過するのに要する時間を長くすればよい。従来技術においては、消去率を高めるために、記録層の組成を調節することや添加元素を使用することなどによって記録層の核生成頻度や結晶成長頻度を高めること、或いは、媒体の層構成を工夫して記録層の光吸収率を低めることや昇温/降温速度を遅くすることなどが試みられていた。
しかしながら、上記の説明から明らかなように、溶融再結晶化を最適化するために講じる対策と、消去率を高めるために講じる対策とは全く逆の関係にある。すなわち、従来技術によると、適度な溶融再結晶化と高い消去率とはトレードオフの関係にあった。
特開平5−62249号公報 特開平2−42654号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、適度な溶融再結晶化と高い消去率とを同時に実現することが可能な相変化型の光記録媒体、そのような光記録媒体を有する記録装置、及びそのような光記録媒体に情報を記録する記録方法を提供することを目的とする。
本発明の第1側面によると、波長がλの光ビームを開口数がNAの焦点レンズへと導いて集光照射することにより情報を記録する記録装置において使用する相変化記録媒体であって、基板と前記基板の一方の主面上に設けられ且つ光照射により非晶質と結晶質との間の相変化を生じる記録層とを具備し、前記記録層は、相変化記録材料と、前記相変化記録材料の全体に亘って分布した複数の粒子とからなり、前記相変化記録材料は、GeSbTe、InSbTe、SbTe、AgInSbTe、及びGeSnSbTeからなる群より選択される材料であり、前記複数の粒子は、SiO 2 、Al 2 3 及びZnOからなる群より選択される材料からなり、前記複数の粒子の平均間隔はλ/(2NA)以下であり、前記複数の粒子のサイズは1nm以上であり、前記複数の粒子が前記記録層に占める割合は30体積%以下であることを特徴とする相変化記録媒体が提供される。
本発明の第2側面によると、第1側面に係る相変化記録媒体と、開口数がNAの焦点レンズを含み、波長がλの光ビームを前記焦点レンズへと導いて前記相変化記録媒体上に集光照射することにより前記記録層に情報を記録する記録機構と、前記相変化記録媒体と前記光ビームの光軸とを相対移動させる駆動機構とを具備したことを特徴とする記録装置が提供される。
本発明の第3側面によると、波長がλの光ビームを開口数がNAの焦点レンズへと導いて請求項1に記載の相変化記録媒体上に集光照射することにより前記記録層の光照射部に記録マークを形成することを含んだことを特徴とする記録方法が提供される。
なお、「ピンニングサイト」は、磁気記録の分野で既に確立されている概念であって、「ピン止め中心」とも呼ばれている。用語「ピンニングサイト」には様々な定義が可能であり、記録層の結晶質領域の一部をその融点以上に加熱して溶融部を生じさせた場合にその冷却過程で観測される溶融部周囲の結晶質領域から溶融部中央に向けての結晶成長を不連続化するものと定義することができる。また、用語「ピンニングサイト」は、上記冷却過程で観測される非晶質領域と結晶質領域との境界の移動を不連続化するものと定義することもできる。さらに、用語「ピンニングサイト」は、その位置で結晶成長を停止する役割と、核生成サイトとしての役割との双方を担うものとして定義することもできる。さらにまた、用語「ピンニングサイト」は、結晶成長を阻害するエネルギー障壁としての機能及び核生成サイトとしての機能の双方を有するものとして定義することもできる。加えて、用語「ピンニングサイト」は、情報の消去過程における結晶核生成頻度を高め且つ情報の記録過程における結晶成長頻度を低くするものとして定義することも可能である。
本発明では、結晶成長を阻害するエネルギー障壁としての機能及び核生成サイトとしての機能の双方を有するピンニングサイトを記録層に設けている。そのため、情報の消去過程における結晶核生成頻度を高め且つ情報の記録過程における結晶成長頻度を低くすることができる。したがって、適度な溶融再結晶化と高い消去率とを同時に実現することができる。
すなわち、本発明によると、適度な溶融再結晶化と高い消去率とを同時に実現することが可能な相変化型の光記録媒体、そのような光記録媒体を有する記録装置、及びそのような光記録媒体に情報を記録する記録方法が提供される。
以下、本発明について、図面を参照しながらより詳細に説明する。なお、各図において、同様または類似する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一態様に係る相変化記録媒体を概略的に示す断面図である。図1に示す相変化記録媒体1は、基板2の一方の主面上に、干渉層3、記録層4、干渉層5、及び反射層6を順次積層した構造を有している。
基板2は、例えば、一方の主面にアドレスピットやトラッキンググルーブが設けられた透明基板である。この透明基板2としては、ポリカーボネート基板が代表的であるが、ポリメチルメタクリレート基板、ポリオレフィン基板、2Pグルーブ付きガラス基板、及びRIEグルーブ付きガラス基板なども使用することができる。
干渉層3,5は、必須の構成要素ではないが、一般には、記録層4の保護や光学応答を最適化することなどを目的として設けられる。干渉層3,5の材料としては、ZnS・SiO2が代表的であるが、それ以外にもSiO、ZnS、TaO、AlN、AlO、及びSiNなどのような透明金属化合物等を使用することが可能である。
記録層4は、光照射により非晶質と結晶質との間の相変化を生じる相変化記録材料を主成分としている。記録層4に使用可能な相変化記録材料としては、例えば、GeSbTe、InSbTe、SbTe、AgInSbTe、及びGeSnSbTeなどのカルコゲン系材料のように相変化光記録媒体で一般に使用されているのと同様の材料を挙げることができる。
反射層6は、必ずしも設ける必要はないが、一般には、記録層4の光入射面に対して裏面側に設けられる。反射層6の材料としては、例えば、Al合金、Ag合金、Au、Cu、及びTiNなどのように情報の記録、再生、及び消去に利用する光,特にはレーザ光,に対して高い反射率を有する材料が代表的である。
なお、図1に示す相変化記録媒体1は、基板2上に、干渉層3、記録層4、干渉層5、及び反射層6の積層構造を配置した構造を採用したが、それらの積層順は逆であってもよい。また、それら積層構造を、基板2と図示しない基板とで挟持してもよい。
また、一般に、相変化記録媒体1は記録再生装置に対して着脱可能であり、しかも、相変化記録媒体1には様々な規格が存在している。すなわち、記録再生装置には、様々な規格の光記録媒体が装填される可能性がある。そのため、通常、相変化記録媒体1にはそれがいずれの規格に対応するものかを特定するための識別情報が記録されており、記録再生装置は、この識別情報から装填された媒体1がいずれの規格に基づくものであるのかを識別している。なお、ここで言う「識別情報」は、反射層6に設けられたピットのような記録マークの形態で記録されたものに限られず、相変化記録媒体1の反射率、相変化記録媒体1のサイズ、及び相変化記録媒体1の形状的特徴なども包含する。また、相変化記録媒体1が、相変化記録媒体1を収容し且つ媒体1とともに記録再生装置に装填されるカセットをさらに有している場合は、このカセットに記録されていてもよい。
さて、本態様では、記録層4の内部に、複数のピンニングサイトが設けられる。これらピンニングサイトは、記録層4内に分布する複数の微粒子であり、以下に説明するように、その位置で結晶成長を停止する役割と、核生成サイトとしての役割を担っている。
ピンニングサイトを設けていない記録層に対して情報を記録するために光を照射した場合、その冷却過程では、溶融再結晶化リングの内周の位置がその中心に向けて連続的に移動するという現象が観察される。これは、ピンニングサイトを設けていない場合、記録層内には結晶成長を阻害するエネルギー障壁が殆ど存在していないためである。
それに対し、ピンニングサイトを設けた記録層4内には、ピンニングサイトを設けていない場合とは異なり、記録層内には結晶成長を阻害するエネルギー障壁が存在している。そのため、ピンニングサイトを設けた記録層4に対して情報を記録するために光を照射した場合、その冷却過程では、溶融再結晶化リングの内周の位置がその中心に向けて不連続的に移動するという現象が観察される。なお、このような現象は、記録層4にピンニングサイトが設けられていることを示す特徴の1つである。
上記のエネルギー障壁は、溶融再結晶化リングの内周の位置がその中心に向けて移動するのを妨げる。それゆえ、ピンニングサイトを設けた記録層4によると、過度な溶融再結晶化が防止される。すなわち、適切なサイズの記録マークを形成するのに、形成すべき記録マークのサイズに比べて遥かに広い領域を溶融する必要はなく、したがって、トラックピッチを狭めた場合においてもクロスイレースを十分に防止することが可能となる。
また、上述のようにピンニングサイトは核生成サイトとしての役割を担っているため、記録層4に記録された情報の消去に際しては核生成頻度を増加させる。したがって、例え結晶成長速度が遅い場合であっても、非晶質部の結晶化を十分に進行させることができる。すなわち、高い消去率を実現することができる。
このように、本態様では、結晶成長を抑制し且つ核生成頻度を高めるというピンニングサイトの機能を利用して、適度な溶融再結晶化と高い消去率とを同時に実現することを可能としている。このようなピンニングサイトの相変化記録における有用性は、本発明者らによって初めて見出されたものである。
以上の説明から明らかなように、適度な溶融再結晶化と高い消去率とを同時に実現するという効果を得るためには、記録層4にピンニングサイトが十分な密度で設けられている必要がある。例えば、サイズが記録マークの幅程度の領域内にピンニングサイトが1つも存在していない場合、結晶成長を抑制する効果を殆ど得ることができない。また、この場合、核生成頻度を十分に高めることができず、消去率を高める効果が殆ど得られない。
それゆえ、ピンニングサイトは、サイズが記録マークの幅程度である領域内に1つ以上存在していることが望ましい。なお、記録マークの幅は、使用する光の波長λ及び焦点レンズの開口数NAとを用いると、概ねλ/(2NA)で与えられる。したがって、ピンニングサイトの平均間隔はλ/(2NA)以下であることが好ましい。
また、ピンニングサイトのサイズは1nm以上であることが好ましい。ピンニングサイトのサイズが過剰に小さい場合、その結晶成長を抑制する効果が不十分となることがある。
また、ピンニングサイトの平均サイズが過剰に大きい場合、ノイズレベルが上昇してCNRを損ねることがある。ピンニングサイトの平均サイズはピンニングサイトの平均間隔以下であることが好ましく、通常、光学系の分解能,すなわちλ/(4NA),以下であれば、それらを十分に防止することができる。
ピンニングサイトの記録層4に占める割合は30体積%以下とする。ピンニングサイトの記録層4に占める割合が30体積%を超える場合、ノイズレベルが上昇してCNRを損ねることがある。

上述したピンニングサイトについては、図2〜図4を参照しながら説明する。
図2は、図1に示す相変化光記録媒体1の記録層4の構造の一例を概略的に示す断面図である。図3は、一参考例に係る記録層の構造を概略的に示す断面図である。図4は、他の参考例に係る記録層の構造を概略的に示す断面図である。
図2に示す記録層4は、相変化記録材料4aと、この相変化記録材料4a中に分布する微粒子4bとを有している。図2に示す記録層4では、これら微粒子4bがピンニングサイトを構成している。
図3に示す記録層4も、図2に示す記録層4と同様に、相変化記録材料4aと微粒子4bとを有している。しかしながら、図3に示す記録層4では、図2に示す記録層4とは異なり、これら微粒子4bは相変化記録材料4aの表面に分布しており、これら微粒子4b或いはこれら微粒子4bによって記録層4の表面に形成される凹凸構造がピンニングサイトを構成している。
図4に示す記録層4は、図2及び図3に示す記録層4とは異なり、相変化記録材料4aのみで構成されている。図4では、記録層4には、それと接する薄膜,例えば下地層である干渉層3,との界面に凹凸構造が設けられており、ピンニングサイトはこの凹凸構造によって構成されている。
図2及び図3に示す微粒子4bとしては、金属化合物、金属、有機物、及び空孔などを使用することができる。微粒子4bに用いられる金属化合物は、照射光を透過可能なものであってもよく或いは透過不可能なものであってもよい。微粒子4bに用いられる金属化合物としては、例えば、SiO、SiN、AlO、AlN、BN、CaF、TiO、TiN、CuO、ZnO、ZnN、ZnS、ZrO、ZrN、MoO、InO、SnO、TaO、TaN、及びWOなどを挙げることができる。また、微粒子4bに用いられる金属としては、例えば、Au、Ag、Cu、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Zn、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ta、W、及びPtなどを挙げることができる。また、微粒子4bの材料としては、これらの合金やC及びSiなどの半導体も使用することができる。微粒子4bに用いられる有機物としては、CH系やCF系のプラズマ重合物質が代表的である。また、微粒子4bが空孔である場合、それら空孔は、Ar、Ne、及びHeなどの希ガス、窒素、及び酸素などで満たされ得る。
図2に示す記録膜4は、例えば、相変化記録材料4aの原料を含有するターゲットと微粒子4bの原料を含有するターゲットとを用いて同時にスパッタリングすることができる。また、相変化記録材料4aの原料及び微粒子4bの原料の双方を含有するコンポジットターゲットを用いてスパッタリングすることにより形成することもできる。さらに、相変化記録材料4aの原料を含有するターゲットを用い且つプラズマ重合物質の原料ガスと希ガスとの混合ガス中でスパッタリングすることにより形成することもできる。加えて、希ガス、窒素、及び酸素などのいずれかをスパッタリングガスとして使用し且つスパッタリング条件を調整して空孔を形成することにより形成することもできる。
また、図3に示す記録膜4は、スパッタリングや蒸着を初期の段階で停止することにより島状の微粒子4bを形成し、その後、相変化記録材料4aの薄膜を成膜することにより形成することができる。また、微粒子4bを構成する材料からなる薄膜を形成し、この薄膜をミリング処理した後、相変化記録材料4aの薄膜を成膜することにより形成することもできる。さらに、下地層の上にマスクを形成し、その状態で微粒子4bを構成する材料からなる薄膜を成膜し、マスクを除去した後に、相変化記録材料4aの薄膜を成膜することにより形成することもできる。
図4に示すように表面に凹凸構造を有する記録膜4は、例えば、透明基板2に凹凸表面処理を施した後に干渉層3及び記録層4を順次成膜することにより形成することができる。また、干渉層3のような下地層に凹凸表面処理を施した後に記録層4を成膜することにより形成することもできる。さらに、成膜後の記録層4に凹凸表面処理を施すことも可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、各実施例で行う検討事項等について説明する。
実施例1ではピンニングサイトを有する記録層4の形成方法について検討し、実施例2ではピンニングサイトのサイズ及び間隔等とクロスイレース及び有効消去率との関係を調べる。また、実施例3では、記録層4にピンニングサイトを有する相変化記録媒体1を搭載した記録再生装置について説明する。
[実施例1]
本実施例では、以下に説明するように、内部にピンニングサイトが設けられた記録膜4を、二元同時スパッタリング法、軽希ガススパッタリング法、及びプラズマ重合スパッタリング法を用いて形成する。また、表面にピンニングサイトが設けられた記録膜4を、島状蒸着法、マスクデポジション法、FIBエッチング法、及び島状スパッタリング+エッチング法を用いて形成する。
(1)二元同時スパッタリング法
二元同時スパッタリング法による記録層4の成膜は、相変化記録材料4aの原料,すなわち相変化材料,を含有するターゲットと微粒子4bの原料,すなわち微粒子材料,を含有するターゲットとを用いて同時にスパッタリングすることによるものである。二元同時スパッタリング法による成膜過程では、相変化材料に対する微粒子材料の濡れ性が低い場合、微粒子材料と相変化材料とは均一に混合されず、微粒子材料は相変化材料中で略球状に凝集する。これは、微粒子材料が原子または分子として相変化材料中に分布するよりも、微粒子上に凝集して相変化材料から相分離した構造をとる方がエネルギー的に安定であるためであると考えられる。このように、1つには相変化材料及び微粒子材料を適宜選択することにより、相変化記録材料4a中に微粒子4bが分散してなる記録層4を得ることができる。
ここでは、以下に説明するように、相変化材料に対する濡れ性が低い微粒子材料を使用して様々な条件下で二元同時スパッタリング法により多数種の記録層4を成膜し、それぞれの記録層4について微粒子4bのサイズ及び間隔を調べた。
すなわち、記録層4中の微粒子材料濃度は、それぞれのターゲットにつき単体でのスパッタリングレートと放電入力との関係を予め調べ、二元同時スパッタリング時のそれぞれのターゲットへの放電入力比を調節することにより制御した。なお、ガス圧、成膜速度(放電入力)、及び基板バイアスなども適宜変更した。
微粒子4bのサイズは、記録層4中の微粒子材料濃度、成膜時のガス圧、成膜速度、及び、基板にバイアスを印加した場合はバイアス入力などにより制御可能であった。すなわち、微粒子材料濃度を高くすること、ガス圧を高めること、成膜速度を遅くすること、及び基板にバイアスを印加した場合にはバイアス入力を高めることのいずれかを実行することにより大きくなった。
これは、成膜中に微粒子材料が凝集する過程を考慮すれば理解することができる。すなわち、微粒子材料濃度が高い場合、微粒子材料の原子または分子間の距離が短くなるため凝集が容易に生じる。また、成膜時にガス圧を高めた場合、微粒子材料原子または分子が記録層4に衝突する際の運動エネルギーが低下して、微粒子材料原子または分子が膜の面内方向へ移動し易くなるため凝集が促進される。成膜速度が遅い場合は、微粒子材料原子または分子が移動可能な時間が長くなるため凝集が促進される。基板にバイアスを印加しつつスパッタリングする場合は、バイアス入力を高めることにより、微粒子材料原子または分子の表面マイグレーションが助長されるため凝集が促進される。微粒子4bの平均サイズは、このようなメカニズムを利用して制御可能である。
微粒子4b間の平均間隔は、記録層4中の微粒子材料濃度、成膜時のガス圧、成膜速度、及び、基板にバイアスを印加した場合はバイアス入力などにより制御可能であった。すなわち、微粒子材料濃度を低くすること、ガス圧を低めること、成膜速度を速くすること、及び基板にバイアスを印加した場合にはバイアス入力を低めることのいずれかを実行することにより長くすることができた。なお、これらも、上記と同様に、成膜中に微粒子材料が凝集する過程を考慮すれば理解することができる。
微粒子4bの平均サイズと平均間隔とは、得られた記録層4のそれぞれを透過電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べた。すなわち、微粒子4bの平均サイズと平均間隔は、TEM像を画像処理して微粒子4bのサイズ分布と間隔分布とを導出し、これらの分布曲線から求めた。図5に、そのような方法により得られた分布曲線の一例を示す。
図5は、微粒子4bのサイズ分布と間隔分布を示すグラフである。図中、横軸は微粒子4bのサイズまたは間隔を示し、縦軸は頻度を示している。また、図中、曲線51は微粒子4bのサイズ分布を示し、曲線52は微粒子4bの間隔分布を示している。
なお、図5に示すデータは、相変化記録材料4aとしてGeSbTeを選択し、微粒子4bとしてSiO2を選択して、上述した条件を変化させてスパッタリング法により成膜した多数種の記録層4の1つに関するものである。より具体的には、図5に示すデータは、比較的大きな平均サイズを狙って、微粒子4bの含有率を1%(設定値)とし、ガス圧力を10mTorr、成膜速度を0.5nm/秒、基板バイアス入力密度を0.2W/cm2としてArバイアススパッタリングにより成膜した場合に得られた記録層4に関するものである。
図5に一例を示すように、微粒子4bのサイズは、スパッタリング条件などにも依存するが、概ね平均サイズに対して±5nmの範囲内に微粒子4bの90%以上が含まれるという比較的ばらつきの少ない分布を示した。一方、微粒子4b間の間隔のばらつきは、概ね平均間隔に対して±10nmの範囲内であった。
次に、高分解能エネルギー分散性X線回折(高分解能EDXD)により、記録層4を線分析した。その結果、相変化材料中への微粒子材料の混入及び微粒子材料中への相変化材料の混入のいずれも生じておらず、相変化記録材料4aと微粒子4bとに相分離していることが確認された。このように、相変化材料中への微粒子材料の混入が生じていないことは相変化記録材料4aの相変化を生じる機能が微粒子4bの存在により全く影響を受けないことを意味し、微粒子材料中への相変化材料の混入が生じていないことは微粒子4bが十分なピン止め効果を有していることを示唆している。なお、この材料系に関しては、成膜条件を調節することにより、微粒子4bの平均サイズを1〜30nmの範囲内で制御し、平均間隔を30〜600nmの範囲内で制御することができた。
微粒子4bを含有する記録層4は、相変化材料としてInSbTeやAgInSbTeを使用し、微粒子材料としてSiN、AlO、AlN、BN、CaF、TiO、TiN、CuO、ZnO、ZnN、ZnS、ZrO、ZrN、MoO、InO、SnO、TaO、TaN、及びWOなどの金属化合物;Au、Ag、Cu、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Zn、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Ta、W、及びPtなどの金属;並びにC及びSiなどの半導体を使用した場合においても形成することができた。それら材料の中でも、微粒子材料として相変化材料に対して濡れ性の低いものを使用した場合に、最も容易に微粒子4bを形成することができた。また、金属化合物の中でも酸化物系材料を使用した場合、微粒子4bのサイズ及び間隔の制御性がより良好であった。
(2)軽希ガススパッタリング法
スパッタリング法を用いて成膜すると、得られる薄膜中には不可避的にスパッタリングガスが混入することはよく知られている。特に、原子半径の小さな軽希ガスは薄膜中に取り込まれ易い。ここでは、以下に説明するように薄膜中に積極的にスパッタリングガスを混入させることにより、ピンニングサイトとしての機能を発揮し得る空孔を微粒子4bとして含む記録層4を得た。
すなわち、スパッタリングガスとしてHe、Ne、Ar、Kr、及びXeのそれぞれを使用し、相変化材料をスパッタリングすることにより複数種の記録層4を成膜した。また、それら記録層4の成膜に際しては、ガス圧力、放電入力、及び基板バイアスなどの成膜条件を変化させた。このようにして得られた記録層4に対しては、ラザフォード後方散乱分光(RBS)による記録層4中のガス量測定、TEM観察、及び高分解能EDXDによる線分析を行った。
その結果、スパッタリングガスとしてKrやXeを用いた場合には、基板に高いバイアスを印加した場合を除いて、記録層4中のガス取り込み量はRBSの検出限界(1原子%)未満であった。また、この場合、TEM観察によっても、空孔(或いは微粒子4b)の存在は認められなかった。
スパッタリングガスに使用する希ガスの原子半径が小さいほど膜中のガス量は増加した。Ne及びAr,特にはNe,を使用した場合、空孔の形成が容易であった。しかしながら、Heを使用した場合、拡散によりHeが膜中から抜け出してしまうため空孔の形成は困難であった。
膜中へのガス取り込み量は、ガス圧力に対してはピークを呈し、放電入力の増加や基板バイアスの増加に対しては漸増した。空孔として形成された微粒子4bのサイズは、ガス取り込み量を高めること、放電入力を低めること、及び基板バイアスを高めることのいずれかを実施することにより増加した。また、空孔として形成された微粒子4b間の間隔は、ガス取り込み量を高めること、放電入力を高めること、及び基板バイアスを低めることのいずれかを実施することにより増加した。得られた微粒子4bのサイズは先に述べた二元同時スパッタリング法を使用した場合に比べると小さく、平均サイズの最大値は数nm程度であった。
なお、ここではスパッタリングガスとして単一元素からなるガスを使用したが、混合ガスを使用することも可能である。すなわち、NeやArを主成分としていれば、KrやXeを混合して使用してもよく、或いは、窒素や酸素などの反応性ガスを混合して使用することもできる。
(3)プラズマ重合スパッタリング法
スパッタリングガス中にプラズマ重合を生じる原料ガスを混合してスパッタリングを行った場合、主としてプラズマ重合物質からなる微粒子を含有する薄膜が得られる。例えば、メタン、エタン、及びアルコール蒸気のようなCH系のプラズマ重合原料ガスや、CF4及びCHF3のようなCF系のプラズマ重合原料ガスを必要に応じて希ガスなどとともにスパッタリングガスに混合した場合、プラズマ中で原料ガスは分解・重合反応を起こすため、ポリエチレンやポリフルオロエチレンなどのような重合生成物からなる微粒子を取り込んだ薄膜が得られる。そのような微粒子はピンニングサイトとして機能し得る。なお、微粒子のサイズ及び間隔は、原料ガスの混合比やスパッタリング条件などにより制御可能である。
ここでは、上記の方法により記録層4を成膜し、その構造を調べた。その結果、得られた記録層4では、相変化記録材料4aと重合生成物からなる微粒子4bとは相分離しており、微粒子4bの平均サイズは、(1)の場合と(2)の場合との中間の値を示した。
(4)島状蒸着法など
スパッタリング法や蒸着法により成膜材料に対して濡れ性の低い下地上に薄膜を成膜する場合、成膜の初期では成膜材料は下地上に島状に堆積され、その後、成長して隣り合う島同士が合体することにより連続膜が形成される。したがって、上述のように、スパッタリングや蒸着を初期の段階で停止して島状の微粒子4bを形成し、その後、相変化記録材料4aの薄膜を成膜することにより記録層4を得ることができる。
なお、島状の微粒子4bを形成するには、蒸着法の場合は、真空蒸着よりもガス中蒸着によって成膜すること,すなわち、ガス中で微粒子を生成して下地上に島を形成すること,が好ましい。一方、スパッタリング法の場合には、ガス圧力を高めること、成膜速度を遅くすること、及び基板に適当なバイアスを印加することなどが好ましい。
また、金属系或いは半導体系の島状微粒子4bを形成する場合は、下地の材料としては、例えば、金属化合物系、好ましくは誘電体系、より好ましくは酸化物系材料が用いられる。一方、金属化合物系の島状微粒子4bを形成する場合は、下地の材料としては、例えば、金属、好ましくはAu、Ag、及びCuなどが用いられる。
さらに、島状微粒子4bのサイズ及び間隔は、島状微粒子4bの形成時間、島状微粒子4bに用いる材料と下地に用いる材料との組み合わせ、及び成膜条件などによって制御可能である。上記方法によると、通常、島状微粒子4bの平均サイズは1〜20nm程度となり、間隔は20〜500nm程度となる。
ここでは、相変化記録媒体1の干渉層3として一般に使用されているZnS・SiO2膜上に、Au、Ag、及びCuなどの金属を蒸着またはスパッタリングして島状の微粒子4bを形成し、その後、スパッタリング法により相変化記録材料4aを堆積した。このような方法によると、干渉層3側の表面に直径10nm程度の島状微粒子4bが設けられた記録層4を容易に得ることができた。また、(1)で使用した微粒子4bの材料からも、成膜条件を調節することや、下地層として濡れ性の低い薄膜を一層以上設けることなどにより、ピンニングサイトとして機能する直径数nm程度の島状微粒子4bが設けられた記録層4を形成することができた。
図3に示す記録層4の形成は、上記の島状蒸着法を利用するのが最も簡便であるが、上述のように、マスクデポジション法やFIBエッチング法などによって形成することもできる。マスクデポジション法によると、薄膜などの上にレジスト膜を形成した後、このレジスト膜をFIBでメッシュ加工してレジストパターンを形成し、上記薄膜の露出部をイオンミリングなどで除去することにより、島状の微粒子4bを形成することができる。また、FIBエッチング法によると、薄膜をFIBにより直接的にメッシュ加工することにより、島状の微粒子4bを形成することができる。なお、上記薄膜のイオンミリングやFIBエッチングを島状の微粒子4bが形成される直前で停止すれば、図4に示す構造を得ることができる。これら方法を用いた場合でも、図3及び図4に示す構造を得ることができた。
さらに、図3及び図4に示す記録層4は、島状蒸着(またはスパッタリング)法とエッチング法とを組み合わせて形成することもできる。例えば、島状蒸着法により下地上に島状微粒子4bを形成し、その後、エッチングを行う。下地に比べて微粒子4bのエッチングレートが速ければ、島状微粒子4bの高さや径を制御することができる。この方法を用いた場合でも、図3及び図4に示す構造を得ることができた。
[実施例2]
本実施例では、図1に示す相変化記録媒体1を作製し、それら媒体1に対して記録/再生試験を行い、クロスイレース及び有効消去率について調べた。また、それぞれの媒体1について、記録層4に記録レベルのレーザビームを照射し、その冷却過程で観測される溶融再結晶化リングの成長を観察した。なお、本実施例では、記録層4は、実施例1で説明したのと同様の方法により形成した。
本実施例では、基板2として一方の主面にトラッキンググルーブが設けられたポリカーボネート基板を使用した。そのトラックピッチは、厳密なクロスイレース評価を行う目的で0.34μmとした。干渉層3,5としてはZnS・SiO2膜を使用した。記録層4を図3に示す構造とする場合には、ZnS・SiO2膜と記録層4との間に必要に応じて島状微粒子4bに対する濡れ性の低い薄膜を設けた。記録層4の材料は、擬似二元合金組成系のGeSbTe、共晶組成(Sb70Te30)系のGeSbTe、及びAgInSbTeの中から選択した。また、反射層6には、Al合金系材料を使用した。
なお、記録層4の形成は実施例1で説明したのと同様の方法により行い、それ以外の層はスパッタリング法により形成した。また、それらの成膜後、反射層6上には図示しない透明基板を貼り合わせ、その後、記録層4の初期結晶化を行った。
記録層4を構成する相変化記録材料4aの組成は、具体的には、擬似二元合金組成系のGeSbTeについてはGe2Sb2Te5及びGe40Sb8Te52とし、共晶組成系のGeSbTeについてはGe5Sb76Te19とし、AgInSbTeについてはAg10In18Sb52Te20とした。また、擬似二元合金組成系のGeSbTeについては、状態図中で、Ge2Sb2Te5の座標から擬似二元合金合金線に垂直な方向であり且つTeプア側に4原子%シフトさせた座標に相当する組成(以下、シフトGST225という)も検討した。
各層の膜厚は、記録層4が非晶質状態にある場合と結晶質状態にある場合との間の光学コントラスト比や結晶質状態にある場合の反射率などの光学応答が適正になるように設計した。典型的には、干渉層3の膜厚は40〜70nmであり、記録層4の膜厚は10〜25nmであり、干渉層5の膜厚は5〜15nmであり、反射層6の膜厚は100〜200nmである。
以上のようにして作製したそれぞれの相変化記録媒体1に対して記録/再生試験を行い、クロスイレース及び有効消去率について調べた。まず、試験条件及び試験結果を記載する前に、クロスイレース及び有効消去率について説明する。
クロスイレースは、トラックピッチをλ/(2NA)程度にまで狭くした場合に、あるトラックに記録することにより、それに隣接するトラックの記録マークの一部が消去される現象である。クロスイレースの原因は、あるトラックに記録する際にビームスポットの端部が隣接するトラックにも及んで直接的に加熱されるため、あるトラックにレーザビームを照射した場合に面内方向の熱拡散によってそれに隣接するトラックが加熱されるため、及び、過度な溶融再結晶化のためである。ここでは、それらの中でも、過度な溶融再結晶化に基づくクロスイレースに着目する。
図6は、記録層4に形成される記録マークの一例を概略的に示す平面図である。図6においては、径wmの記録マーク11の周囲に外径wcの溶融部或いは溶融再結晶化リング12が描かれている。
また、図7は、溶融再結晶化のメカニズムを説明するためのグラフである。図7において、横軸は記録層4の温度を示し、縦軸は頻度を示している。また、図7において、Txは結晶化温度を示し、Tmは融点を示し、曲線53は結晶核生成頻度を示し、曲線54は結晶成長頻度を示している。
相変化記録によると、記録層4への情報の記録は、結晶質状態にある記録層4の一部を融点Tm以上に加熱して溶融し、その後、室温にまで急冷して非晶質状態とすること,すなわち非晶質の記録マーク11を形成すること,により行われる。一方、記録した情報の消去は、記録マーク11を融点Tm未満であり且つ結晶化温度Tx以上の温度に昇温すること,すなわち、徐熱徐冷すること,によって結晶質状態とすることにより行われる。溶融再結晶化は、記録過程においても、その冷却の際に結晶化可能な温度域を通過するが故に起こる現象である。
溶融再結晶化には、特に図7に曲線54で示す結晶成長頻度が関与しており、結晶成長頻度は融点Tm付近で最大となっている。そのため、記録過程で融点Tmよりも僅かに低い温度域を通過する際に、溶融部12を取り囲む結晶質部からマーク11の中心に向けて結晶成長が生ずる。
ところで、良好なCNR値を得るためには、記録マーク11はある程度の大きさが必要であり、通常、これはレーザスポットのFWHM程度である。上記から明らかなように、融点Tmよりも僅かに低い温度域を通過する際の結晶成長が著しい場合、適切な大きさの記録マーク11を形成するためには、マーク幅wmよりも遥かに大きな径wcの領域を溶融しなければならない。その結果、トラックピッチを狭めた場合には、クロスイレースが顕著となる。したがって、従来技術では、クロスイレースを抑制するために、記録層4に結晶成長頻度の低い材料を使用するか、或いは、記録過程での冷却の際に結晶成長頻度の高い温度域を短時間で通過可能な急冷構造を採用していた。
また、記録した情報を消去する過程では、記録マーク11を融点Tm未満であり且つ結晶化温度Tx以上の温度域に比較的長い時間保持して非晶質を結晶化させる。より詳細には、消去過程では、記録マーク11を、まず、曲線53で示す結晶核生成頻度の高い温度域に昇温して微細結晶核を生成させ、さらに曲線54で示す結晶成長頻度の高い温度域に昇温することにより結晶成長を生じさせ、その後、冷却の際に再び結晶核生成頻度の高い温度域に通過させることにより結晶化を進行させる。この消去過程では、曲線53で示す結晶核生成頻度の高い温度域に滞在する時間が長いため、良好な有効消去率を得るためには結晶核生成頻度が十分に高いことが重要である。従来技術では、良好な有効消去率を実現するために、記録層4に結晶核生成頻度の高い材料を使用するか、或いは、消去過程で上記温度域に保持される時間を長くする構造を採用していた。
しかしながら、記録層4の材料を選定することで高い結晶成長頻度及び結晶核成長頻度の双方を実現することは困難である。また、同様に、構造を工夫することで、記録過程での冷却の際に結晶成長頻度の高い温度域を短時間で通過させること、及び、消去過程で上記温度域に保持される時間を長くすることの双方を実現することは困難である。すなわち、従来技術では、クロスイレースを十分に抑制し且つ高い有効消去率を実現することは困難であった。したがって、本実施例に係る相変化記録媒体1についてそれらを評価することにより、本発明の効果を確認することができる。
次に、本実施例で行った記録/再生試験の各種条件等について説明する。この試験は、波長λが405nmの半導体レーザ光源及び開口数NAが0.65の焦点レンズを有する評価システムを用い、記録時及び再生時の線速度を8m/sとして行った。すなわち、本実施例において、λ/(2NA)は312nmであり、λ/(4NA)は156nmである。
試験に際しては、まず、再生CNRが45dB以上となる条件でそれぞれのマーク長が0.25μmの単一周波数のマーク列を形成した。次に、そのマーク列を形成したトラックへの、オーバーライト記録によるマーク長0.92μmのマーク列の形成と、オーバーライト記録によるマーク長0.25μmのマーク列の形成とを交互に計10回行った。さらに、オーバーライト記録によりマーク長0.25μmのマーク列を形成し、記録されたマーク列(マーク長0.25μm)に対応するキャリアレベルと、消去したマーク列(マーク長0.92μm)に対応するキャリアの消え残りレベルとの差である有効消去率を調べた。
次いで、上記マーク列(マーク長0.25μm)を形成したトラックに隣接するトラックのそれぞれに対し、マーク長が0.92μmのマーク列を形成するオーバーライト記録を10回繰り返した。その後、それらの間に介在するトラックの上記オーバーライト記録前のキャリアレベルと上記オーバーライト記録後のキャリアレベルとの差をクロスイレースとして調べた。
また、それぞれの媒体1について、記録層4に記録レベルのレーザビームを照射し、その冷却過程で観測される溶融再結晶化リングの成長を観察した。
それら結果を、記録層4の種類別に示す。
(1)擬似二元合金組成系GeSbTe
図8は、相変化記録材料4aの組成をGe2Sb2Te5とした相変化記録媒体1についての有効消去率及びクロスイレースを示すグラフである。図中、横軸は微粒子4b間の平均間隔を示し、縦軸は有効消去率及びクロスイレースを示している。また、曲線55は有効消去率に関するデータを示し、曲線56はクロスイレースに関するデータを示している。なお、有効消去率が高いほど媒体1は高性能であると判断され、また、クロスイレースが低いほど媒体1は高性能であると判断される。
図8に示すデータは、記録層4を、Ge2Sb2Te5ターゲットとSiO2ターゲットとを用いた二元同時スパッタリング法により形成して図2に示す構造とした場合に得られたものである。なお、微粒子4b間の平均間隔は、ターゲット中のSiO2含有量やスパッタリング条件を調節することにより制御した。また、微粒子4b間の平均間隔は、相変化記録媒体1を構成する記録層4と同条件で別途薄膜を形成し、この薄膜をTEM観察することにより求めた。このようにして得られた媒体1のいずれにおいても、微粒子4bの平均サイズは概ね8〜12nmの範囲内にあった。
図8に示すように、有効消去率は、微粒子4b間の平均間隔が300nm以下では平均間隔の増加に伴って若干の低下傾向を示すものの32.5dB以上の高い値を示し、平均間隔がλ/(2NA)に相当する300nmを超えると比較的急激に低下し、その後は、微粒子4b間の平均間隔に応じて緩やかに低下した。これに対し、微粒子4bからなるピンニングサイトを設けなかったこと以外は同様の方法により形成した比較例に係る媒体では、有効消去率は27dBであった。なお、ピンニングサイトが設けられていない場合は、微粒子4b間の間隔が無限遠である場合に相当する。図8から明らかなように、比較例に係る媒体について得られた有効消去率は、図8に示す結果から外挿される値と高い精度で一致した。
また、クロスイレースは、微粒子4b間の平均間隔が300nm以下では平均間隔の増加に伴って微増するものの1dB以下の実用的な範囲内にあり、平均間隔がλ/(2NA)に相当する300nmを超えると比較的急激に増加して、400nm程度でほぼ飽和した。それに対し、上記比較例に係る媒体では、クロスイレースは4.5dBであった。
このように、記録層4にピンニングサイトを設けた場合、クロスイレースを十分に抑制し且つ高い有効消去率を実現することができた。なお、微粒子4bにSiO2を用いる代わりにAl23を用いた場合でも図8に示したのと同様の結果が得られた。
次に、これら媒体1に係る媒体について、記録層4に記録レベルのレーザビームを照射し、その冷却過程で観測される溶融再結晶化リング12の成長を観察したところ、記録マーク11と溶融再結晶化リング12との境界はその中心に向けて不連続的に移動する現象が確認された。また、比較例に係る媒体について同様の観察を行ったところ、記録マーク11と溶融再結晶化リング12との境界はその中心に向けて連続的に移動する現象が確認された。
(2)シフトGST225
図9は、シフトGST225ターゲット及びCターゲットを用いた二元同時スパッタリング法により記録層4を形成した相変化記録媒体1についての有効消去率及びクロスイレースを示すグラフである。図中、横軸は微粒子4b間の平均間隔を示し、縦軸は有効消去率及びクロスイレースを示している。また、曲線57は有効消去率に関するデータを示し、曲線58はクロスイレースに関するデータを示している。なお、それら媒体1のいずれにおいても、Cからなる微粒子4bの平均サイズは概ね3〜7nmの範囲内にあった。
図9に示すように、微粒子4b間の間隔が300nm以下である場合、高い有効消去率及び低いクロスイレースの双方が実現されている。これに対し、微粒子4bからなるピンニングサイトを設けなかったこと以外は同様の方法により形成した比較例に係る媒体では、有効消去率は5dBであり、クロスイレースは2dBであった。
また、シフトGST225ターゲットを使用した比較例では、Ge2Sb2Te5ターゲットを使用した比較例に比べて有効消去率が著しく低下した。これは、シフトGST225ターゲットを使用した場合、核生成頻度が低下するためである。また、シフトGST225ターゲットを使用した比較例では、Ge2Sb2Te5ターゲットを使用した比較例に比べてクロスイレースが低下した。これは、シフトGST225ターゲットを使用した場合、結晶成長頻度が低下したためである。
このように、シフトGST225ターゲットを使用した場合、Ge2Sb2Te5ターゲットを使用した場合に比べて有効消去率が著しく低下するにも関わらず、記録層4にピンニングサイトを設けることにより、クロスイレースを十分に抑制し且つ高い有効消去率を実現することができた。なお、シフトGST225ターゲットを用いてAr−CH4−H2混合ガス中でプラズマ重合スパッタリングを行うことにより記録層4を形成した場合においても、図9に示したのと同様の結果を得ることができた。
次に、これら媒体1に係る媒体について、記録層4に記録レベルのレーザビームを照射し、その冷却過程で観測される溶融再結晶化リング12の成長を観察したところ、記録マーク11と溶融再結晶化リング12との境界はその中心に向けて不連続的に移動する現象が確認された。また、比較例に係る媒体について同様の観察を行ったところ、記録マーク11と溶融再結晶化リング12との境界はその中心に向けて連続的に移動する現象が確認された。
(3)Ge40Sb8Te52
図3に示す構造の記録層4を有する相変化記録媒体1を作製した。なお、記録層4は、ZnS・SiO2膜3上にAuを島状にスパッタリングすることにより島状微粒子4bを形成し、その後、Ge40Sb8Te52ターゲットを用いてAr雰囲気中でスパッタリングすることにより得た。また、島状微粒子4b間の間隔は、Auのスパッタリング量やスパッタリング条件などを適宜変更することにより調節した。
図10は、Auからなる島状微粒子4bを形成した後にGe40Sb8Te52ターゲットを用いてAr雰囲気中でスパッタリングすることにより得られた記録層4を形成した相変化記録媒体1についての有効消去率及びクロスイレースを示すグラフである。図中、横軸は島状微粒子4b間の平均間隔を示し、縦軸は有効消去率及びクロスイレースを示している。また、曲線59は有効消去率に関するデータを示し、曲線60はクロスイレースに関するデータを示している。なお、それら媒体1のいずれにおいても、Auからなる島状微粒子4bの平均サイズは概ね6〜10nmの範囲内にあった。
図10に示すように、相変化記録材料4aの組成をGe40Sb8Te52とした場合、図8に示すように相変化記録材料4aの組成をGe2Sb2Te5とした場合に比べて核生成頻度及び結晶成長頻度がやや低い。しかしながら、図10でも図8と同様に、微粒子4b間の間隔が300nm以下である場合、高い有効消去率及び低いクロスイレースの双方が実現されている。これに対し、島状微粒子4bからなるピンニングサイトを設けなかったこと以外は同様の方法により形成した比較例に係る媒体では、有効消去率は25dBであり、クロスイレースは3dBであった。
このように、記録層4を図3に示す構造とした場合においても、クロスイレースを十分に抑制し且つ高い有効消去率を実現することができた。なお、Auからなる島状微粒子4bを記録層4の干渉層3側の面に形成する代わりに、記録層4の干渉層5側の面に形成し、これら島状微粒子4bをマスクとして用いて記録層4の上面をイオンエッチングすることにより記録層4の上面にネットワーク上の凹凸構造を形成した場合においても、図10に示したのと同様の結果を得ることができた。すなわち、図4に示すように記録層4の表面に凹凸構造を形成した場合においても、クロスイレースを十分に抑制し且つ高い有効消去率を実現することが可能となることが確認された。これは、記録層4の上面のうち、島状微粒子4bの直下に位置する非エッチング部及び/または島状微粒子4bがピンニングサイトを構成していることを示している。
次に、これら媒体1に係る媒体について、記録層4に記録レベルのレーザビームを照射し、その冷却過程で観測される溶融再結晶化リング12の成長を観察したところ、記録マーク11と溶融再結晶化リング12との境界はその中心に向けて不連続的に移動する現象が確認された。また、比較例に係る媒体について同様の観察を行ったところ、記録マーク11と溶融再結晶化リング12との境界はその中心に向けて連続的に移動する現象が確認された。
(4)共晶系Ge5Sb76Te19
図2に示す構造の記録層4を有する相変化記録媒体1を作製した。なお、記録層4は、Ge5Sb76Te19ターゲットを用い、Ne−Kr混合ガス中でスパッタリングすることにより、Ge5Sb76Te19からなる相変化記録材料4a中にNeガスで満たされた空孔からなる微粒子4bが分散された構造とした。また、微粒子4b間の間隔は、ガス混合比を含むスパッタリング条件を調節することにより制御した。
図11は、Ge5Sb76Te19からなる相変化記録材料4a中に空孔からなる微粒子4bが分散された構造の記録層4を形成した相変化記録媒体1についての有効消去率及びクロスイレースを示すグラフである。図中、横軸は微粒子4b間の平均間隔を示し、縦軸は有効消去率及びクロスイレースを示している。また、曲線61は有効消去率に関するデータを示し、曲線62はクロスイレースに関するデータを示している。なお、それら媒体1のいずれにおいても、Neガスで満たされた空孔からなる微粒子4bの平均サイズは概ね3〜5nmの範囲内にあった。
図11に示すように、微粒子4b間の間隔が300nm以下である場合、高い有効消去率及び低いクロスイレースの双方が実現されている。これに対し、微粒子4bからなるピンニングサイトを設けなかったこと以外は同様の方法により形成した比較例に係る媒体では、有効消去率は30dBであり、クロスイレースは7dBであった。
なお、(4)の比較例と上記(1)の比較例とから明らかなように、記録層4にピンニングサイトを設けず共晶組成とした場合では、記録層4にピンニングサイトを設けず擬似二元合金組成とした場合に比べて有効消去率は高いが、クロスイレースが顕著である。これは、記録層4が共晶組成である場合、上記の擬似二元合金組成に比べて結晶成長頻度が高く、結晶化速度が遅いためである。
以上説明したように、記録層4に空孔からなるピンニングサイトを設けた場合においても、クロスイレースを十分に抑制し且つ高い有効消去率を実現することができた。なお、空孔からなる微粒子4bを有する記録層4を形成する代わりに、Ge5Sb76Te19ターゲット及びSiO2ターゲットを用いて二元同時スパッタリング法により記録層4を形成した場合においても、図11に示したのと同様の結果を得ることができた。
次に、これら媒体1に係る媒体について、記録層4に記録レベルのレーザビームを照射し、その冷却過程で観測される溶融再結晶化リング12の成長を観察したところ、記録マーク11と溶融再結晶化リング12との境界はその中心に向けて不連続的に移動する現象が確認された。また、比較例に係る媒体について同様の観察を行ったところ、記録マーク11と溶融再結晶化リング12との境界はその中心に向けて連続的に移動する現象が確認された。
(5)Ag10In18Sb52Te20
図2に示す構造の記録層4を有する相変化記録媒体1を作製した。なお、記録層4は、Ag10In18Sb52Te20ターゲット及びZnOターゲットを用いて二元同時スパッタリング法により形成した。また、微粒子4b間の間隔は、スパッタリング条件を調節することにより制御した。
図12は、Ag10In18Sb52Te20ターゲット及びZnOターゲットを用いて二元同時スパッタリング法により記録層4を形成した相変化記録媒体1についての有効消去率及びクロスイレースを示すグラフである。図中、横軸は微粒子4b間の平均間隔を示し、縦軸は有効消去率及びクロスイレースを示している。また、曲線63は有効消去率に関するデータを示し、曲線64はクロスイレースに関するデータを示している。なお、それら媒体1のいずれにおいても、ZnOからなる微粒子4bの平均サイズは概ね8〜12nmの範囲内にあった。
図12に示すように、微粒子4b間の間隔が300nm以下である場合、高い有効消去率及び低いクロスイレースの双方が実現されている。これに対し、微粒子4bからなるピンニングサイトを設けなかったこと以外は同様の方法により形成した比較例に係る媒体では、有効消去率は35dBであり、クロスイレースは9dBであった。
次に、これら媒体1に係る媒体について、記録層4に記録レベルのレーザビームを照射し、その冷却過程で観測される溶融再結晶化リング12の成長を観察したところ、記録マーク11と溶融再結晶化リング12との境界はその中心に向けて不連続的に移動する現象が確認された。また、比較例に係る媒体について同様の観察を行ったところ、記録マーク11と溶融再結晶化リング12との境界はその中心に向けて連続的に移動する現象が確認された。
以上説明したように、本発明に係る相変化記録媒体1では、記録層4にピンニングサイトが設けられているため、記録層4に様々な組成の材料を用いた場合においても、高い有効消去率及び低いクロスイレースの双方を同時に実現することができる。
なお、本実施例で示した範囲内では、ピンニングサイト間の間隔を狭めても(或いは、ピンニングサイトの密度を高めても)特性の劣化は生じていないが、密度が過剰に高い場合にはCNRが劣化することがある。そのような劣化を防止するには、記録層4に対するピンニングサイトの密度を20体積%以下とすることが好ましく、10%以下とすることがより好ましく、5体積%以下とすることがさらに好ましい。
また、本実施例では、ピンニングサイトのサイズが十分に小さかったため、媒体ノイズの上昇は見られなかったが、サイズが光学系の分解能,すなわち、λ/(4NA),を超えると、ノイズが増加するものと考えられる。ノイズの増加を防止するには、ピンニングサイトの平均サイズをλ/(4NA)とすることが好ましく、サイズに分布が存在していることを考慮すると、平均サイズをλ/(6NA)以下とすることがより好ましい。
[実施例3]
本実施例では、上記の実施例2で作製した相変化記録媒体1に記録された情報の再生やその相変化記録媒体1への情報の記録に利用可能な記録再生装置について説明する。
図13は、本発明の実施例3に係る記録再生装置を概略的に示す図である。図13に示す記録再生装置21は光ディスク装置であって、相変化記録媒体(光ディスク)1、スピンドルモータ22、焦点レンズ23、ハーフミラー24、レーザ光源25、光検出器26、プリアンプ27、可変利得アンプ28、A/D変換回路29、線形等価回路30、データ検出回路31、デコーダ32、ドライブコントローラ33、駆動制御系34、インターフェース35、変調回路36、及びレーザドライバ37を有している。
図13に示す光ディスク装置21において、光ディスク1は、透明基板2が図中上向きとなるようにスピンドルモータ22の回転軸に着脱可能に或いは着脱不可能に支持されている。光ディスク1は、スピンドルモータ22の回転数を制御することにより、所定の回転数で回転され得る。
光ディスク1の上方には、ピックアップ系の一部を構成する焦点レンズ23が配置されている。これらピックアップ系及びスピンドルモータ22は、駆動制御系34を介してドライブコントローラ33によって駆動される。このように構成される駆動機構によって、光ディスク1の回転数の制御並びにフォーカシング及びトラッキング制御が可能とされている。
この光ディスク装置21では、光ディスク1の記録層4に設けたピンニングサイト間の平均間隔Dと、ピンニングサイトの平均サイズdと、レーザ光源25から出力されるレーザビームの波長λと、焦点レンズ23の開口数NAとは、以下の不等式:
D≦λ/(2NA)
d≦λ/(4NA)
を満足している。
このように構成される光ディスク装置21での情報の記録は、上述のように光ディスク1の回転数の制御並びにフォーカシング及びトラッキング制御を行いつつ以下の方法により行われる。すなわち、情報の記録に際しては、そのような制御のもと、まず、ドライブコントローラ33によってインターフェース35を介して取り込んだユーザデータ信号を変調回路36へと転送する。ユーザデータ信号は変調回路36で所定の符号ビット列へと変換される。レーザドライバ37は、レーザ光源25を符号ビット列に対応して駆動し、それにより、レーザ光源25はパルス状のレーザビームを記録光として出射する。
記録光は、ハーフミラー24を透過して焦点レンズ23へと導かれ、光ディスク1上に集光照射される。これにより、光ディスク1の記録膜8には、符号ビット列に対応した記録マークが形成される。図13に示す光ディスク装置21での情報の記録は、以上のようにして行われる。なお、最短マークピッチを狭めて記録するためには、変調回路36の出力信号や駆動制御系114の出力信号などを変化させればよい。
また、この光ディスク装置21での情報の再生は、上述のように光ディスク1の回転数の制御並びにフォーカシング及びトラッキング制御を行いつつ以下の方法により行われる。すなわち、情報の記録に際しては、そのような制御のもと、まず、レーザ光源25から再生パワーレベルのレーザビームを再生光として出射する。なお、レーザービームのパワーレベルは、レーザ光源25からの出力を周期が一定なパルス光とし、その周期を適宜設定することにより制御可能である。レーザ光源25から出射した再生光は、ハーフミラー24を透過して焦点レンズ23へと導かれ、光ディスク1上に集光照射される。光ディスク1の記録トラックからの反射光は、ハーフミラー24で反射されて光検出器26へと導かれ、そこで電気信号へと変換される。
光検出器26からの電気信号は、プリアンプ37及び可変利得アンプ28で増幅され、その後、A/D変換回路29でデジタル信号へと変換される。次いで、このデジタル信号は、線形等化回路30でフィルタリングされてノイズに起因するジッタ成分を除去される。データ検出回路31は、例えば、パーシャルレスポンスで等化した再生信号波形からデータを検出するマキシマムライクリフッド法によって符号ビット列を推定する信号処理回路であり、具体的にはビタビデコーダである。デコーダ32は、データ検出回路31によって検出された符号ビット列を元の記録データへと復元する。このようにして復元された記録データは、ドライブコントローラ27及びインターフェース26を介して装置外部へと出力される。図13に示す光ディスク装置21での情報の再生は、以上のようにして行われる。
このような光ディスク装置21によると、適度な溶融再結晶化と高い消去率とを同時に実現することができる。したがって、トラックピッチを狭めて記録密度を高めた場合においても、クロスイレースを十分に抑制し且つ高い有効消去率を実現することができる。
本発明の一態様に係る相変化記録媒体を概略的に示す断面図。 図1に示す相変化光記録媒体の記録層の構造の一例を概略的に示す断面図。 一参考例に係る記録層の構造を概略的に示す断面図。 他の参考例に係る記録層の構造を概略的に示す断面図。 微粒子のサイズ分布と間隔分布を示すグラフ。 記録層に形成される記録マークの一例を概略的に示す平面図。 溶融再結晶化のメカニズムを説明するためのグラフ。 相変化記録材料の組成をGe2Sb2Te5とし且つ微粒子の組成をSiO2とした場合の有効消去率及びクロスイレースを示すグラフ。 相変化記録材料の組成をシフトGST225とし且つ微粒子の組成をCとした場合の有効消去率及びクロスイレースを示すグラフ。 相変化記録材料の組成をGe40Sb8Te52とし且つ記録層の表面にAuからなる島状微粒子を設けた場合の有効消去率及びクロスイレースを示すグラフ。 相変化記録材料の組成をGe5Sb76Te19とし且つ微粒子として空孔を設けた場合の有効消去率及びクロスイレースを示すグラフ。 相変化記録材料の組成をAg10In18Sb52Te20とし且つ微粒子の組成をZnOとした場合の有効消去率及びクロスイレースを示すグラフ。 本発明の実施例3に係る光ディスク装置を概略的に示す図。
符号の説明
1…相変化記録媒体、2…基板、3…干渉層、4…記録層、4a…相変化記録材料、4b…微粒子、5…干渉層、6…反射層、21…記録再生装置、22…スピンドルモータ、23…焦点レンズ、24…ハーフミラー、25…レーザ光源、26…光検出器、27…プリアンプ、28…可変利得アンプ、29…A/D変換回路、30…線形等価回路、31…データ検出回路、32…デコーダ、33…ドライブコントローラ、34…駆動制御系、35…インターフェース、36…変調回路、37…レーザドライバ、51〜64…曲線。

Claims (3)

  1. 波長がλの光ビームを開口数がNAの焦点レンズへと導いて集光照射することにより情報を記録する記録装置において使用する相変化記録媒体であって、
    基板と前記基板の一方の主面上に設けられ且つ光照射により非晶質と結晶質との間の相変化を生じる記録層とを具備し、
    前記記録層は、相変化記録材料と、前記相変化記録材料の全体に亘って分布した複数の粒子とからなり、
    前記相変化記録材料は、GeSbTe、InSbTe、SbTe、AgInSbTe、及びGeSnSbTeからなる群より選択される材料であり、
    前記複数の粒子は、SiO 2 、Al 2 3 及びZnOからなる群より選択される材料からなり、
    前記複数の粒子の平均間隔はλ/(2NA)以下であり、
    前記複数の粒子のサイズは1nm以上であり、
    前記複数の粒子が前記記録層に占める割合は30体積%以下であることを特徴とする相変化記録媒体。
  2. 請求項1に記載の相変化記録媒体と、開口数がNAの焦点レンズを含み、波長がλの光ビームを前記焦点レンズへと導いて前記相変化記録媒体上に集光照射することにより前記記録層に情報を記録する記録機構と、前記相変化記録媒体と前記光ビームの光軸とを相対移動させる駆動機構とを具備したことを特徴とする記録装置。
  3. 波長がλの光ビームを開口数がNAの焦点レンズへと導いて請求項1に記載の相変化記録媒体上に集光照射することにより前記記録層の光照射部に記録マークを形成することを含んだことを特徴とする記録方法。
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