JP4744656B2 - Cmp研磨剤及び基板の研磨方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子製造技術に使用される研磨方法に関し、基板表面の平坦化工程、特に層間絶縁膜の平坦化工程、シャロー・トレンチ分離の形成工程等において使用されるCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)研磨剤及びこれらCMP研磨剤を使用した基板の研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在の超々大規模集積回路では、実装密度を高める傾向にあり、種々の微細加工技術が研究、開発されている。既に、デザインルールは、サブハーフミクロンのオーダーになっている。このような厳しい微細化の要求を満足するために開発されている技術の一つにCMP技術がある。この技術は、半導体装置の製造工程において、露光を施す層を完全に平坦化し、露光技術の負担を軽減し、歩留まりを安定させることができるため、例えば、層間絶縁膜の平坦化、シャロー・トレンチ分離等を行う際に必須となる技術である。
【0003】
従来、半導体装置の製造工程において、プラズマ−CVD(ChemicalVapor Deposition、化学的蒸着法)、低圧−CVD等の方法で形成される酸化珪素絶縁膜等無機絶縁膜層を平坦化するためのCMP研磨剤として、コロイダルシリカ系の研磨剤が一般的に検討されていた。コロイダルシリカ系の研磨剤は、シリカ粒子を四塩化珪酸を熱分解する等の方法で粒成長させ、pH調整を行って製造している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この様な研磨剤は無機絶縁膜の研磨速度が十分な速度をもたず、実用化には低研磨速度という技術課題があった。
デザインルール0.5μm以上の世代では、集積回路内の素子分離にLOCOS(シリコン局所酸化)が用いられていた。その後さらに加工寸法が微細化すると素子分離幅の狭い技術が要求され、シャロー・トレンチ分離が用いられつつある。シャロー・トレンチ分離では、基板上に成膜した余分の酸化珪素膜を除くためにCMPが使用され、研磨を停止させるために、酸化珪素膜の下に研磨速度の遅いストッパ膜が形成される。ストッパ膜には窒化珪素などが使用され、酸化珪素膜とストッパ膜との研磨速度比が大きいことが望ましい。従来のコロイダルシリカ系の研磨剤は、上記の酸化珪素膜とストッパ膜の研磨速度比が3程度と小さく、シャロー・トレンチ分離用としては実用に耐える特性を有していなかった。
【0005】
一方、フォトマスクやレンズ等のガラス表面研磨剤として、酸化セリウム研磨剤が用いられている。酸化セリウム粒子はシリカ粒子やアルミナ粒子に比べ硬度が低く、したがって、研磨表面に傷が入りにくいことから、仕上げ鏡面研磨に有用である。しかしながら、ガラス表面研磨用酸化セリウム研磨剤にはナトリウム塩を含む分散剤を使用しているため、そのまま半導体用研磨剤として適用することはできない。
【0006】
また、最近は産業廃棄物の処理が社会問題化しつつある。CMP研磨剤はリサイクルが難しく、使用後のCMP研磨剤は産業廃棄物として廃棄される。CMP研磨剤廃液中に含まれる研磨粒子はそのまま下水処理できないために廃水と分離する必要がある。CMP研磨剤中に研磨粒子以外に添加剤が加えられている場合には、添加剤も廃水から分離するのが望ましいが、簡便な分離技術に乏しいのが現状である。
【0007】
本発明は、廃液処理が容易で、酸化珪素膜等の被研磨面を、傷なく、高速に研磨することが可能で、酸化珪素膜研磨速度と窒化珪素膜研磨速度の比を10以上にするCMP研磨剤及びこれらCMP研磨剤を使用した基板の研磨方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のシャロー・トレンチ分離用のCMP研磨剤は、酸化セリウム粒子、分散剤、生分解性を有する添加剤及び水を含有する。生分解性を有する添加剤は、ポリアスパラギン酸のアンモニウム塩である。
本発明のシャロー・トレンチ分離用のCMP研磨剤は、酸化セリウム粒子、分散剤及び水を含有する酸化セリウムスラリー及び生分解性を有する添加剤と水を含有する添加液とから調整することができる。CMP研磨剤には、他の成分を含有することができる。酸化珪素膜研磨速度と窒化珪素膜研磨速度の比(酸化珪素膜研磨速度/窒化珪素膜研磨速度)は10以上であることが好ましい。本発明の基板の研磨方法は、研磨する膜を形成した基板を研磨定盤の研磨布に押しあて加圧し、前記のシャロー・トレンチ分離用のCMP研磨剤を研磨膜と研磨布との間に供給しながら、基板と研磨定盤を相対的に動かして研磨する膜を研磨することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
一般に酸化セリウムは、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、しゅう酸塩のセリウム化合物を酸化することによって得られる。TEOS−CVD法等で形成される酸化珪素膜の研磨に使用する酸化セリウム研磨剤は、一次粒子径が大きく、かつ結晶ひずみが少ないほど、すなわち結晶性が良いほど高速研磨が可能であるが、研磨傷が入りやすい傾向がある。そこで、本発明で用いる酸化セリウム粒子は、その製造方法を限定するものではないが、酸化セリウム結晶子径は5nm以上300nm以下であることが好ましい。また、半導体チップ研磨に使用することから、アルカリ金属及びハロゲン類の含有率は酸化セリウム粒子中10ppm以下に抑えることが好ましい。
【0010】
本発明において、酸化セリウム粉末を作製する方法として焼成または過酸化水素等による酸化法が使用できる。焼成温度は350℃以上900℃以下が好ましい。
上記の方法により製造された酸化セリウム粒子は凝集しているため、機械的に粉砕することが好ましい。粉砕方法として、ジェットミル等による乾式粉砕や遊星ビーズミル等による湿式粉砕方法が好ましい。ジェットミルは例えば化学工業論文集第6巻第5号(1980)527〜532頁に説明されている。
【0011】
本発明におけるCMP研磨剤は、例えば、上記の特徴を有する酸化セリウム粒子と分散剤と水からなる組成物を分散させ、さらに生分解性を有する添加剤を添加することによって得られる。ここで、酸化セリウム粒子の濃度に制限はないが、分散液の取り扱いやすさから0.5重量%以上20重量%以下の範囲が好ましい。また、分散剤として、半導体チップ研磨に使用することから、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属及びハロゲン、イオウの含有率は10ppm以下に抑えることが好ましく、例えば、共重合成分としてアクリル酸アンモニウム塩を含む高分子分散剤が好ましい。また、共重合成分としてアクリル酸アンモニウム塩を含む高分子分散剤と水溶性陰イオン性分散剤、水溶性非イオン性分散剤、水溶性陽イオン性分散剤、水溶性両性分散剤から選ばれた少なくとも1種類を含む2種類以上の分散剤を使用してもよい。
【0012】
水溶性陰イオン性分散剤としては、例えば、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、特殊ポリカルボン酸型高分子分散剤等が挙げられ、水溶性非イオン性分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアルカノールアミド等が挙げられ、水溶性陽イオン性分散剤としては、例えば、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等が挙げられ、水溶性両性分散剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。分散剤は生分解性のものであっても良い。
【0013】
これらの分散剤添加量は、スラリー中の粒子の分散性及び沈降防止、さらに研磨傷と分散剤添加量との関係から酸化セリウム粒子100重量部に対して、0.01重量部以上2.0重量部以下の範囲が好ましい。分散剤の分子量は、100〜50,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましい。分散剤の分子量が100未満の場合は、酸化珪素膜あるいは窒化珪素膜を研磨するときに、十分な研磨速度が得られず、分散剤の分子量が50,000を越えた場合は、粘度が高くなり、CMP研磨剤の保存安定性が低下するからである。
これらの酸化セリウム粒子を水中に分散させる方法としては、通常の攪拌機による分散処理の他にホモジナイザー、超音波分散機、湿式ボールミルなどを用いることができる。
こうして作製されたCMP研磨剤中の酸化セリウム粒子の平均粒径は、0.01μm〜1.0μmであることが好ましい。酸化セリウム粒子の平均粒径が0.01μm未満であると研磨速度が低くなりすぎ、1.0μmを越えると研磨する膜に傷がつきやすくなるからである。
【0014】
また、生分解性を有する添加剤には、
(a)アザセリン、アスパラギン、アスパラギン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、アラニン、β−アラニン、アロイソロイシン、アロトレオニン、イソロイシン、エチオニン、エルゴチオネイン、カナバニン、S−(カルボキシメチル)−システイン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、サルコシン、シスタチオニン、シスチン、システイン、システイン酸、シトルリン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アラニン、3,5−ジヨードチロシン、セリン、タウリン、チロキシン、トリプトファン、トレオニン、ノルバリン、ノルロイシン、バリン、ヒスチジン、4−ヒドロキシプロリン、フェニルアラニン、プロリン、ホモセリン、メチオニン、1−メチルヒスチジン、3−メチルヒスチジン、ランチオニン、ロイシンから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸を構成単位とするポリアミノ酸及びその誘導体、
(b)リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、グリセリン酸、シトラマル酸、デソキサル酸、テトラヒドロキシコハク酸、3−ヒドロキシグルタル酸から選ばれる少なくとも1種のオキシカルボン酸を構成単位とする水溶性ポリエステル、
(c)ポリグリオキシル酸、ポリグリオキシル酸塩及びそれら誘導体、
(d)ペクチン酸、アルギン酸等の多糖類、
(e)(A)アクロレイン、メタアクロレインから選ばれる少なくとも1種を構成単位とするアクロレイン系重合体に対し、(B)アクリル酸、メタアクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、4−ペンテン酸、アリルマロン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、2−メチルクロトン酸、2−メチルイソクロトン酸、エチレンスルホン酸の不飽和モノ及びジカルボン酸または不飽和スルホン酸から選ばれる少なくとも1種をグラフト共重合して得られるのグラフト共重合体及びその誘導体、
(f)(B)の不飽和モノ及びジカルボン酸または不飽和スルホン酸から選ばれる少なくとも1種に対し、(C)ビニルアルコール、酢酸ビニル、シクロヘキセノン及びシクロペンタノンから選ばれる少なくとも1種を共重合して得られるアクリル酸系共重合体
の中からアニオン性のものを使用することができる。
これらの生分解性を有する添加剤添加量は、CMP研磨剤中の粒子の分散性及び沈降防止、さらに研磨傷と添加剤添加量との関係から酸化セリウム粒子100重量部に対して、0.01重量部以上1000重量部以下の範囲が好ましい。また生分解性を有する添加剤の分子量は、100〜500,000が好ましく、1,000〜50,000が好ましい。添加剤の分子量が100未満の場合は、酸化珪素膜あるいは窒化珪素膜を研磨するときに、十分な研磨速度が得られず、添加剤の分子量が500,000を越えた場合は、粘度が高くなり、CMP研磨剤の保存安定性が低下するからである。
【0015】
酸化セリウム粒子、分散剤、及び水からなる酸化セリウムスラリーと、生分解性を有する添加剤及び水からなる添加液とを分けたCMP研磨剤として保存すると酸化セリウム粒子が凝集しないため、保存安定性が増し、研磨傷の発生防止、研磨速度の安定化が得られて好ましい。上記のCMP研磨剤で基板を研摩する際に、添加液は、酸化セリウムスラリーと別々に研磨定盤上に供給し、研磨定盤上で混合するか、研磨直前に酸化セリウムスラリーと混合し研磨定盤上に供給する方法がとられる。
【0016】
本発明のCMP研磨剤は、上記CMP研磨剤をそのまま使用してもよいが、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等の添加剤を添加してCMP研磨剤とすることができる。
【0017】
本発明のCMP研磨剤が使用される無機絶縁膜の作製方法として、低圧CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。低圧CVD法による酸化珪素膜形成は、Si源としてモノシラン:SiH4 、酸素源として酸素:O2 を用いる。このSiH4 −O2 系酸化反応を400℃以下の低温で行わせることにより得られる。場合によっては、CVD後1000℃またはそれ以下の温度で熱処理される。高温リフローによる表面平坦化を図るためにリン:Pをドープするときには、SiH4 −O2 −PH3 系反応ガスを用いることが好ましい。プラズマCVD法は、通常の熱平衡下では高温を必要とする化学反応が低温でできる利点を有する。プラズマ発生法には、容量結合型と誘導結合型の2つが挙げられる。反応ガスとしては、Si源としてSiH4 、酸素源としてN2 Oを用いたSiH4 −N2 O系ガスとテトラエトキシシラン(TEOS)をSi源に用いたTEOS−O2 系ガス(TEOS−プラズマCVD法)が挙げられる。基板温度は250℃〜400℃、反応圧力は67〜400Paの範囲が好ましい。このように、本発明の酸化珪素膜にはリン、ホウ素等の元素がドープされていても良い。同様に、低圧CVD法による窒化珪素膜形成は、Si源としてジクロルシラン:SiH2 Cl2 、窒素源としてアンモニア:NH3 を用いる。このSiH2 Cl2 −NH3 系酸化反応を900℃の高温で行わせることにより得られる。プラズマCVD法は、反応ガスとしては、Si源としてSiH4 、窒素源としてNH3 を用いたSiH4 −NH3 系ガスが挙げられる。基板温度は300℃〜400℃が好ましい。
【0018】
基板として、回路素子と配線パターンが形成された段階の半導体基板、回路素子が形成された段階の半導体基板等の半導体基板上に酸化珪素膜層あるいは窒化珪素膜層が形成された基板が使用できる。このような半導体基板上に形成された酸化珪素膜層あるいは窒化珪素膜層を上記CMP研磨剤で研磨することによって、酸化珪素膜層表面の凹凸を解消し、半導体基板全面にわたって平滑な面とすることができる。また、シャロー・トレンチ分離にも使用できる。シャロー・トレンチ分離に使用するためには、酸化珪素膜研磨速度と窒化珪素膜研磨速度の比、酸化珪素膜研磨速度/窒化珪素膜研磨速度が10以上であることが必要である。この比が10未満では、酸化珪素膜研磨速度と窒化珪素膜研磨速度の差が小さく、シャロー・トレンチ分離をする際、所定の位置で研磨を停止することができなくなるためである。この比が10以上の場合は窒化珪素膜の研磨速度がさらに小さくなって研磨の停止が容易になり、シャロー・トレンチ分離により好適である。また、シャロー・トレンチ分離に使用するためには、研磨時に傷の発生が少ないことが必要である。ここで、研磨する装置としては、半導体基板を保持するホルダーと研磨布(パッド)を貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)定盤を有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。また、研磨布にはCMP研磨剤がたまるような溝加工を施すことが好ましい。研磨条件には制限はないが、定盤の回転速度は半導体基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましく、半導体基板にかける圧力は研磨後に傷が発生しないように1kg/cm2 以下が好ましい。研磨している間、研磨布にはスラリーをポンプ等で連続的に供給する。この供給量には制限はないが、研磨布の表面が常にスラリーで覆われていることが好ましい。
【0019】
研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。このようにして平坦化されたシャーロー・トレンチを形成したあと、酸化珪素絶縁膜層の上に、アルミニウム配線を形成し、その配線間及び配線上に再度上記方法により酸化珪素絶縁膜を形成後、上記CMP研磨剤を用いて研磨することによって、絶縁膜表面の凹凸を解消し、半導体基板全面にわたって平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の層数の半導体を製造する。
実際に研磨を行う場合、例えばpH8以下では酸化珪素膜層表面の電荷は負に帯電し、窒化珪素膜層表面の電荷は正に帯電している。そのため本発明で用いる生分解性のアニオン性添加剤を使用すれば、負の電荷をもつアニオン性添加剤が優先的に、正の電荷を持つ窒化珪素膜層に吸着し、窒化珪素膜層の研磨速度を低減させることで、酸化珪素膜研磨速度/窒化珪素膜研磨速度が増大し、シャロー・トレンチ分離により好適になると考えられる。
【0020】
本発明のCMP研磨剤は、半導体基板に形成された酸化珪素膜だけでなく、所定の配線を有する配線板に形成された酸化珪素膜、ガラス、窒化珪素等の無機絶縁膜、フォトマスク・レンズ・プリズムなどの光学ガラス、ITO等の無機導電膜、ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路、光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶、固体レーザ単結晶、青色レーザLED用サファイヤ基板、SiC、GaP、GaAS等の半導体単結晶、磁気ディスク用ガラス基板、磁気ヘッド等を研磨することができる。
【0021】
【実施例】
次に、実施例により本発明を説明する。
(酸化セリウム粒子の作製)
炭酸セリウム水和物2kgを白金製容器に入れ、700℃で2時間空気中で焼成することにより黄白色の粉末を約1kg得た。この粉末をX線回折法で相同定を行ったところ酸化セリウムであることを確認した。酸化セリウム粉末10重量%になるように脱イオン水と混合し、横型湿式超微粒分散粉砕機を用いて1400rpmで120分間粉砕処理をした。得られた研磨液を110℃で3時間乾燥することにより酸化セリウム粒子を得た。この酸化セリウム粒子は、透過型電子顕微鏡による観察から粒子径が10nm〜60nmであること、さらにBET法による比表面積測定の結果が39.5m2 /gであることがわかった。
【0022】
(酸化セリウムスラリーの作製)
上記の方法で作製した酸化セリウム粒子125gとアクリル酸とアクリル酸メチルを3:1で共重合した分子量10,000のポリアクリル酸アンモニウム塩水溶液(40重量%)3gと脱イオン水2372gを混合し、攪拌をしながら超音波分散を行った。超音波周波数は40kHzで、分散時間10分で分散を行った。得られたスラリーを0.8ミクロンフィルターでろ過し、さらに脱イオン水を加えることにより2重量%の酸化セリウムスラリー(A−1)を得た。酸化セリウムスラリー(A−1)のpHは8.5であった。酸化セリウムスラリー(A−1)の粒度分布をレーザー回折式粒度分布計で調べたところ、平均粒子径が0.20μmと小さいことがわかった。また、1.0μm以下の粒子が95.0%であった。
【0023】
(添加液の作製)
分子量5,000のポリアスパラギン酸アンモニウム10gに脱イオン水990gを加え、1重量%のポリアスパラギン酸アンモニウム塩を含む添加液を得た。
【0024】
(絶縁膜層の研磨)
多孔質ウレタン樹脂製の研磨パッドを貼りつけた定盤上に、基板取り付け用の吸着パッドを貼り付けたホルダーにTEOS−プラズマCVD法で作製した酸化珪素膜を形成した直径125mmのシリコンウエハを絶縁膜面を下にしてセットし、研磨荷重が300g/cm2 になるように重りをのせた。定盤上に上記の酸化セリウムスラリー(固形分:2重量%)と添加液を各々25ml/minの速度で送り、定盤の直前で1液になるようにノズルを調節して滴下しながら、定盤を40rpmで2分間回転させ、絶縁膜を研磨した。研磨後ウエハをホルダーから取り外して、流水で良く洗浄後、超音波洗浄機によりさらに20分間洗浄した。洗浄後、スピンドライヤーで水滴を除去し、120℃の乾燥機で10分間乾燥させた。光干渉式膜厚測定装置を用いて、研磨前後の膜厚変化を測定し、研磨速度を計算した。同様にして、TEOS−プラズマCVD法で作製した酸化珪素膜の代わりに低圧CVD法で作製した窒化珪素膜を同じ条件で研磨し、研磨前後の膜厚変化を測定し、研磨速度を計算した。また、膜厚測定の結果から、TEOS−プラズマCVD法で作製した酸化珪素膜及び低圧CVD法で作製した窒化珪素膜は、ウエハ全面にわたって均一の厚みになっていることがわかった。また、水銀灯の光源下での目視観察では絶縁膜表面に傷はみられなかった。
【0025】
(生分解性の評価)
添加剤の生分解性の評価はJIS K 6950に準じて行った。ビューレットを備えたガラス製の培養瓶(300ml)に活性汚泥懸濁液200ml、無機塩液0.8ml(K2 HPO4 :0.46%、Na2 HPO4 ・12H2 O:1.16%、MgSO4 ・7H2 O:0.05%、FeCl3 ・6H2 O:0.01%、CaCl2 ・2H2 O:0.005%、NH4 Cl:0.1%)、サンプル液約1mlを加え、恒温装置を備えたBOD測定装置を用いて、25℃にて分解試験を行った。約28日間、BOD(生物化学的酸素消費量)を経時的に測定した。大気圧の変動によるBOD値の変化を補正するため空試験値を差し引いた値を真のBOD値とした。生分解度は(真のBOD値)÷(理論的酸素消費量)×100として算出した。
【0026】
実施例及び比較例
表1に示すように、酸化セリウムスラリーと添加液を調製してCMP研磨剤を作製し、絶縁膜層を研磨した。その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明によるCMP研磨剤に含まれる添加剤の生分解性は良好で、廃液処理が容易なことが分る。
また、本発明のCMP研磨剤及び基板の研磨方法を用いることによって、基板を傷なく、研磨することが可能で、かつ、酸化珪素膜研磨速度/窒化珪素膜研磨速度の比を10以上にするCMP研磨剤、及びこれらCMP研磨剤を使用した基板の研磨方法が得られることが分かる。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】
請求項1記載のシャロー・トレンチ分離用のCMP研磨剤は廃液処理が容易で、半導体素子製造技術に使用される研磨方法に好適に使用される。さらに、酸化珪素絶縁膜等の被研磨面を傷なく、高速に研磨することが可能となる。請求項2記載のシャロー・トレンチ分離用のCMP研磨剤は、さらに保存安定性を改良した点が優れる。請求項3記載のシャロー・トレンチ分離用のCMP研磨剤は、さらに酸化珪素絶縁膜研磨速度と窒化珪素絶縁膜研磨速度の比を10以上にする点でシャロー・トレンチ分離に好適である。請求項4記載の基板の研磨方法は、基板の被研磨面を、傷なく、研磨することに優れ、半導体素子製造技術に使用される研磨方法に好適に使用される。
Claims (4)
- 酸化セリウム粒子、分散剤、生分解性を有する添加剤及び水を含有してなり、上記生分解性を有する添加剤は、ポリアスパラギン酸のアンモニウム塩であるシャロー・トレンチ分離用のCMP研磨剤。
- 酸化セリウム粒子、分散剤及び水を含有する酸化セリウムスラリー及び、ポリアスパラギン酸のアンモニウム塩である生分解性を有する添加剤と水を含有する添加液と、からなることを特徴とするシャロー・トレンチ分離用のCMP研磨剤。
- 酸化珪素膜研磨速度と窒化珪素膜研磨速度の比(酸化珪素膜研磨速度/窒化珪素膜研磨速度)が10以上である請求項1又は2に記載のシャロー・トレンチ分離用のCMP研磨剤。
- 研磨する膜を形成した基板を研磨定盤の研磨布に押しあて加圧し、請求項1〜3のいずれかに記載のシャロー・トレンチ分離用のCMP研磨剤を研磨膜と研磨布との間に供給しながら、基板と研磨定盤を相対的に動かして研磨する膜を研磨する基板の研磨方法。
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