JP4743986B2 - ポンプ羽根車翼部における流れの剥離制御構造、及びポンプの水圧脈動防止方法 - Google Patents

ポンプ羽根車翼部における流れの剥離制御構造、及びポンプの水圧脈動防止方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸流ポンプや斜流ポンプのポンプ羽根車翼部における流れの剥離制御構造、及びポンプの水圧脈動防止方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水を揚水して所定の場所に吐出するポンプ機場のポンプとして例えば図6に示すような構造のものがあった。同図に示すポンプは軸流ポンプであり、ケーシング60の下部に羽根車61を収納し、羽根車61に連結したシャフト66をケーシング60の上部から突出して減速機67に連結し、さらに減速機67の入力軸を駆動機69に連結して構成されている。そして駆動機69を駆動すれば、減速機67とシャフト66を介して羽根車61が回転され、吸込側70の水がケーシング60を介して所定の場所に排水されていく。
【0003】
ところでこの種のポンプにおいては、運転流量が定格点の場合は、図7(a)に示すように羽根車61の翼部70の先端角度(先端が向く方向)と水の流れの角度(方向)が一致するように設計されており、この状態で最適な流れを実現できるようにしている。
【0004】
しかしながら運転流量が定格点からずれると、図7(b)に示すように羽根車61の翼部70の先端角度と水の流れの角度が不一致となり、水の流れが翼部70表面から剥離する。そして場合によっては剥離した水の流れが再び翼部70後部に付着する(再付着)。ところが再付着点aはある周波数で前後に移動し、そのことにより翼部70に加わる流体モーメントが変動し、ポンプにその周波数の加振力が加わる。そしてその振動周波数がポンプ機場の配管系(配管自体と配管中の水を合わせた全体の配管系)の振動の固有値と一致すると、大きな水圧脈動が生じ、場合によってはポンプ機場全体に小さな地震のような振動が生じてしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の点に鑑みでなされたものでありその目的は、例え運転流量が定格点からずれても大きな水圧脈動が生じるのを容易に防止できるポンプ羽根車翼部における流れの剥離制御構造、及びポンプの水圧脈動防止方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題点を解決するため本発明にかかるポンプ羽根車翼部における流れの剥離制御構造は、羽根車の回転によって揚水を行なうポンプにおいて、前記揚水の運転流量が定格流量よりも多い場合に水流れの剥離を生じる前記羽根車の翼部の面に、前記剥離した水流れの再付着点の移動周波数を変更せしめる突起又は窪みを設けたことを特徴とする。そしてこの再付着点の移動周波数をポンプ機場の配管系の振動の固有値と共振しないようにすれば、大きな水圧脈動は防止できる。
【0007】
また本発明は、前記突起又は窪みは、翼部先端近傍及び/又は翼部後端近傍に設けられていることを特徴とする。突起又は窪みの形成場所は一箇所に限られず、必要に応じて複数個所に設けてもよい。
【0008】
また本発明は、前記突起又は窪みは、翼部の幅方向に向かって線状であって且つ断続的に設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、羽根車の回転によって揚水を行うポンプの水圧脈動を防止するポンプの水圧脈動防止方法であって、前記羽根車の翼部の表面に、突起又は窪みを設け、前記翼部で生じる水流れの剥離の再付着点の移動周波数を前記突起又は窪みを設けていない場合と相違させることを特徴とする。このように翼部で生じる水流れの剥離の再付着点の移動周波数を突起又は窪みを設けていない場合と相違させることにより、該移動周波数とポンプ機場の配管系の固有振動数が共振することなく、共振により発生ポンプの水圧脈動を防止できる。また、前記突起又は窪みは、翼部の両面又は片面の、翼部先端近傍及び/又は翼部後端近傍に設けることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる羽根車61の翼部10を示す図であり、同図(a)は側断面図(同図(b)のA−A断面図)、同図(b)は平面図である。同図に示すようにこの翼部10の上面側の進行方向先端近傍には、先端辺11に平行に複数の微細な突起15が設けられている。この突起15は羽根車61を回転した際の翼部10周囲の流れの状態を変化させるためのものである。
【0011】
そして運転流量が定格点の場合は、図2(a)に示すように羽根車61の翼部10の先端角度と水(流体)の流れの角度が一致し、最適な流れを実現する。一方運転流量が定格点からずれた場合、図2(b)に示すように翼部10の先端角度と水の流れの角度が不一致となり(この例では運転流量が定格流量よりも多い場合の流れ方向を示している)、流れが翼部10表面から剥離し、剥離した流れが再び翼部10後部に付着する(再付着)。なお再付着点Aの下流側においては同図に示すように再び剥離が生じる場合もあれば、剥離がなくなって翼部10に沿うように流れる場合もある。再付着点Aは前述のようにある周波数で前後に移動するが、この実施形態においては突起15を設けているので、前記再付着点Aの移動周波数を突起15を設けていない場合の移動周波数と少し相違させることができ、ポンプに加わる加振力の周波数(振動周波数)をポンプ機場の配管系(配管自体と配管中の水を合わせた全体の配管系)の振動の固有値と相違させることができ、従って大きな水圧脈動を防止できる。
【0012】
つまり本発明においては、羽根車61の翼部10の表面に、羽根車61を回転した際に翼部10で生じる水の流れの剥離の再付着点Aの移動周波数を変更せしめる突起15を設けたので、再付着点Aの移動周波数をポンプ機場の配管系の振動の固有値から離すことができ、これによって大きな水圧脈動を防止できるのである。
【0013】
上記実施形態では水の流れの剥離の再付着点Aの移動周波数を変更せしめる手段として突起15を設けたが、突起15の代りに微細な窪みを設けても良い。窪みの場合でも翼部10周囲の水の流れの状態を変化させることができ、従って突起15の場合と同様の作用効果を生じる。
【0014】
図3(a)〜(j)は突起15の形状・構造の種々の変形例を示す要部平面図である。同図に示すように突起15の形状は種々の変形が可能であり、要は翼部10周囲の水の流れの状態を少し変化させることが出来ればよい。即ち例えば図3(a)に示すように突起(又は窪み)15は、翼部10の進行方向先端辺11近傍の外周近傍部分のみに設けても良い。何故なら翼部10の外周近傍部分のあたりが水の流れの剥離の生じ易い部分だからである。また図3(b)に示すように突起(又は窪み)15の形状を円形ではなく四角形状(又はそれ以外の形状)にしても良く、図3(c)に示すように複数列設けても良く、図3(d)に示すように翼部10の先端辺11に平行な直線状に延びる一本の突起(又は窪み)15でもよく、図3(e)に示すようにそれを複数本平行に設けてもよく、図3(f)に示すようにそれを波打つように(S字状に)設けても良く、また図3(g)に示すようにV字状等の他の形状にしても良い。
【0015】
また図3(h)に示す突起(又は窪み)15は、翼部10の幅方向(翼部10の進行方向に向かって略垂直な方向)に向かって線状であって且つ断続的に設けられている。このように構成したのは以下の理由による。即ち図1に示すようなドット状の突起(又は窪み)15に比し、線状の突起(又は窪み)15の方が、空気等に比べて動粘性係数の高い水等では流れ状態を変化させる効果が得られ易く、好適だからである。同時に図3(d)に示すような一本の連続した突起(又は窪み)15では、翼部10の先端で問題となるキャビテーションが生じ易くなるが、図3(h)に示す断続型ではキャビテーション発生への影響が少ないからである。
【0016】
また図3(i)に示す突起(又は窪み)15は、図3(h)に示す突起(又は窪み)15を千鳥状に互い違いに設けている。このように構成すれば、各突起(又は窪み)15による乱流の位相が変わり、問題となる剥離再付着点位置の変動による翼部10への変動モーメントが相殺され、減少するので好適である。千鳥配列にする場合は、図3(j)に示すように、隣り合う突起(又は窪み)15間に幅方向の隙間を設けなくても良い。
【0017】
さらに上記各実施形態では翼部10の先端辺11近傍の上面の剥離が始まる部分近傍に突起(又は窪み)15を設けたが、図4(a)に示すように翼部10の下端辺13近傍の上面に突起(又は窪み)15を設けても良く、また図4(b)に示すように翼部10上面の剥離の再付着点A(図2(b)参照)近傍部分に突起(又は窪み)15を設けても良い。突起(又は窪み)15の形状が図3に示すように種々変更可能であることは言うまでもない。このように再付着点A近傍部分又はそれよりも下流側に突起(又は窪み)15を設けることによっても再付着点Aの移動周波数を少し変更することが出来、ポンプ機場の配管系との共振を防止できる。
【0018】
ところで上記実施形態では突起(又は窪み)15を翼部10の上面側に設けた場合を説明したが、突起(又は窪み)15は翼部10の下面側に設ける場合もある。即ち運転流量が定格流量よりも少ない場合は、図5に矢印で示すように水の流れ方向は図2(b)に示す場合とは逆方向になり、水の流れが剥離する面も翼部10の下面側になる。そこでこのような場合にポンプ機場の配管系と共振する場合は、翼部10の下面側に、前記図1,図3,図4に示すと同様の突起(又は窪み)15を設ける。
【0019】
なお上記各実施形態では翼部10の上面又は下面の何れか一箇所に突起(又は窪み)15を設ける例を示しているが、上記各実施形態に示す突起(又は窪み)15の各位置を組み合わせて複数の場所に設けても良い。それは実際のポンプ機場の配管系との共振の状態に応じて種々選択すれば良い。
【0020】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態ではポンプとして軸流ポンプの例を示したが、本発明は斜流ポンプ等の他の各種ポンプにも適用できる。
【0021】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明によれば、揚水の運転流量が定格流量よりも多い場合に水流れの剥離を生じる羽根車の翼部の上面に、剥離した水流れの再付着点の移動周波数を変更せしめる突起又は窪みを設けたので、ポンプ機場のポンプの運転流量が定格点からずれても、翼部に突起又は窪みを設けるという簡単な改造のみで極めて容易に剥離水の再付着点の周期的移動によるポンプに加わる加振力周波数とポンプ機場の配管系の固有振動周波数の共振を避けることができ、大きな水圧脈動の発生を防止できる。
【0022】
また、本発明によれば、羽根車の翼部の表面に、突起又は窪みを設け、翼部で生じる水流れの剥離の再付着点の移動周波数を突起又は窪みを設けていない場合と相違させることにより、水流れの剥離の再付着点の周期的移動周波数をポンプ機場の配管系の固有振動周波数から引き離し共振により発生するポンプの大きい水圧脈動を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる羽根車61の翼部10を示す図であり、同図(a)は側断面図(同図(b)のA−A断面図)、同図(b)は平面図である。
【図2】図2(a)は運転流量が定格点の場合の翼部10周囲の水の流れ状態を示す図、図2(b)は運転流量が定格点より多い場合の翼部10周囲の水の流れ状態を示す図である。
【図3】図3(a)〜(j)は突起(又は窪み)15の形状・構造の種々の変形例を示す要部平面図である。
【図4】図4(a),(b)は突起(又は窪み)15を設ける位置の種々の変形例を示す平面図である。
【図5】運転流量が定格点より少ない場合の翼部10周囲の水の流れ状態を示す図である。
【図6】本発明を適用するポンプ機場のポンプの一例を示す図である。
【図7】図7(a)は運転流量が定格点の場合の翼部70周囲の水の流れ状態を示す図、図7(b)は運転流量が定格点より多い場合の翼部70周囲の水の流れ状態を示す図である。
【符号の説明】
10 翼部
A 再付着点
15 突起又は窪み
11 先端辺
60 ケーシング
61 羽根車
66 シャフト
67 減速機
69 駆動機

Claims (5)

  1. 羽根車の回転によって揚水を行なうポンプにおいて、
    前記揚水の運転流量が定格流量よりも多い場合に水流れの剥離を生じる前記羽根車の翼部の面に、前記剥離した水流れの再付着点の移動周波数を変更せしめる突起又は窪みを設けたことを特徴とするポンプ羽根車翼部における流れの剥離制御構造。
  2. 前記突起又は窪みは、翼部先端近傍及び/又は翼部後端近傍に設けられていることを特徴とする請求項1記載のポンプ羽根車翼部における流れの剥離制御構造。
  3. 前記突起又は窪みは、翼部の幅方向に向かって線状であって且つ断続的に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプ羽根車翼部における流れの剥離制御構造。
  4. 羽根車の回転によって揚水を行うポンプの水圧脈動を防止するポンプの水圧脈動防止方法であって、
    前記羽根車の翼部の表面に、突起又は窪みを設け、
    前記翼部で生じる水流れの剥離の再付着点の移動周波数を前記突起又は窪みを設けていない場合と相違させることを特徴とするポンプの水圧脈動防止方法。
  5. 前記突起又は窪みは、翼部の両面又は片面の、翼部先端近傍及び/又は翼部後端近傍に設けることを特徴とする請求項4記載のポンプの水圧脈動防止方法。
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