JP3854309B2 - エアフォイル騒音制御 - Google Patents
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Description
本発明は、エアフォイルから生成される騒音を制御するための手段に関する。
発明の背景
近年、航空機の設計者や製造者においては、エアフォイルから生成される騒音やノイズの動的制御が注目されてきており、特に、ガス・タービン・エンジンの圧縮器やタービン・セクション等に用いられるような、回転翼や静翼等の翼列を順に配置したときに生成される騒音の動的制御への注目度が高い。これらのエンジンで生成される騒音の重要な成分は、プレッシャー・ウェイク即ち圧力伴流が発生して、各回転翼のブレードの下流側から各静翼のベーンの前縁へと移動し、この前縁と相互に作用を及ぼすことで発生する。このプレッシャー・ウェイクは、圧力及び速度双方の変動即ちフラクチュエーションを含むものであり、下流側にある静翼の前縁と衝突して、ある周波数帯域で音響波を生成し、騒音として知覚される。
エンジンで生成される騒音を抑える方法としては、吸音ライナ、ミキサ等の、音を吸収するか、あるいは、ガス・タービン・エンジンやそのその被覆部材内に音を閉じ込める方法等が挙げられる。米国特許第4,979,521号“インペラ・ファンのエアフォイル・ブレード及びその製造方法”には、共鳴チャンバを備えた中空のエアフォイルが開示されており、このエアフォイルでは、流体を流通させるための小孔を、エアフォイルの表面の一方の側面にのみ設けてノイズを抑制している。
これらの手法は、ある程度有効ではあるが、上記のように回転翼の後縁で発生するウェイクと静翼の前縁との間の相互作用により生じる騒音を、さらに効率的に抑制することが求められている。
発明の開示
本発明は、翼型すなわちエアフォイルの前縁と、上記生成される速度/圧力変動と、の間の相互作用により生じる騒音を抑えるための手段を提供する。上記速度/圧力変動は、例えば、軸流ガス・タービン・エンジンの回転ブレードの翼列の下流で生じるものである。本発明によれば、アクチュエータの数が最小限に抑える一方で、騒音を10dB程度のオーダーとすることができる。
本発明によれば、周期的な圧力及び速度の変動にさらされる、翼型の前縁に対して、容積式吸収源(volumetric source-sink)やその他の手段によって、上記変動と翼型の前縁との相互作用によって生じる音響圧力波を打ち消すような位相及び振幅を有する、反対称圧力波を生成している。この吸収源は、上記前縁に隣接し設けられる。ここでいう隣接とは、上記前縁から一波長以内のこととして定義される。
本発明の他の形態によれば、反対称音響波の生成手段が示され、例えば、埋め込みピストン、表面ピストン、可動式前縁フラップ等が示される。
【図面の簡単な説明】
図1は、翼型の断面図を示し、その外表面を流体が図示のように流通している。
図2は、ガス・タービン・エンジン等におけるステータ・ベーン・エアフォイルにおける、時間に対する、前縁の静圧変動を示すグラフである。
図3および図4は、本発明にかかるエアフォイルの二つの実施形態の各説明図である。
発明の好適実施形態
図1に、典型的なエアフォイル10の断面を、流体のフロー・フィールド12内に配置した状態で示す。エアフォイル10は、正圧面(pressure surface)14、負圧面(suction surface)16、前縁18、後縁20を有する。なお、ここでいうエアフォイル及びその外側の流体のフロー・フィールド等は、従来通りの意味で用いられている。
図2に、エアフォイル10の前縁で測定された静圧の時間変動22を示す。このような変動は、軸流式ガス・タービン・エンジン等で見られるような、エアフォイル・ブレードの回転環状翼列の下流側に設けられた固定エアフォイル、静翼に共通するものである。図2に示される圧力変動は、上流側の運動ブレード(図示せず)の後縁の下流からのびるウェイク領域によって引き起こされる。上記運動ブレードは、下流側の固定エアフォイル10を、環状のブレード翼列(cascade)の回転速度に直接比例している周波数によって通過する。
音響分野では、圧力変動(従って速度変動においても)と、下流側のエアフォイル10との間の相互作用によって、更なる一連の圧力変動がフロー・フィールド12に発生し、航空機の推進力として用いられる軸流ガス・タービン・エンジンにおいては、この圧力変動は、不快な音響ノイズとして知覚される。本発明は、このような、周期的圧力及び速度変動とベーン・エアフォイルとの相互作用から生じる不快なノイズの抑制または除去を目的とする。
音を打ち消す圧力変動を生じさせる手段を、エアフォイルの前縁18に隣接させて配置することで、音響ノイズを10dbまたはそれ以上に抑えることができる。この生成される圧力変動は、「アンチサウンド」(antisound)とも記載されるものであり、上述したベーンとウェイクとの相互作用により生成される音響ノイズの大半を打ち消すに十分な振幅及び適切な位相を有する。このようなアンチサウンドを適切に用いることで、ガス・タービン・エンジンの騒音を減少もしくは除去効率が向上する一方、エンジンの操作性、重量、コスト等には殆ど影響を与えることはない。
本発明によれば、ベーンとウェイクとの相互作法によるノイズを十分に減少させるには、二つのパラメータが重要である。第一に、アンチサウンド圧力変動を生成するための手段は、エアフォイル10の前縁18に隣接して設ける必要がある。ここでいう「隣接」とは、アンチサウンド圧力変動を生成する手段が、上記前縁18から音響ノイズの一波長分以内の距離にあることを意味する。
第二に、アンチサウンド圧力変動生成手段は、エアフォイルに対して反対称な圧力波を生成しなければならない。ここでいう反対称とは、生成された周期的圧力フィールドが、例えば、どの時点においても、生成された圧力変動が、エアフォイル10の一方側では負(negative)であり、同時に、エアフォイルの反対側では正(positive)であることを意味する。
上記二つのパラメータに従って、アンチサウンド変動生成手段を配置し、かつ、生成されるアンチサウンド圧力変動の振幅、位相、及び周波数を適切に選択することで、ベーンとウェイクとの相互作用による音響ノイズの大半が抑えられる。
適切なアンチサウンド圧力変動を生成するための例を、図3、4、5にそれぞれ示す。
図3は、本発明の一実施形態で、反対称圧力振動を生成する埋め込みピストンが設けられている。このピストン30は、ベーン10の弦方向(chordal dimension)34を横切る方向、即ち図で符号32として示される、この弦方向に対して垂直な方向に振動する。このピストンは、外表面14、16で画定される、ベーン10の内部に設けられていることから、埋め込みピストンと記載している。図3の実施形態に示されるように、ピストン30のすぐ上あるいは下の表面36、38は多孔性であり、これにより、ピストン30が、符号32で示される周期的変位を行うにつれて、外部の流体12がピストン・チャンバ40に流入及び流出することが可能となる。
図4は、ベーン10の前縁18に隣接して反対称圧力変動を生成する他の実施形態を示す。この実施形態では、ベーンは、可動部位10aを有し、前縁18はこの可動部位に設けられている。ベーンの可動部位10aが、ヒンジまたは他のフレキシブル・ジョイント44の周囲に、この図で符号42で示されるように振動すると、前方のベーンの可動部位10aの弦方向34aと、外側流体フロー12の速度ベクトルと、の間に形成される角度が変化する。この角度の変動は、エアフォイルの衝突角とも記載され、正圧面14a及び負圧面16aの上にかかる表面圧力が変動する。これにより、本発明にかかる反対称圧力変動フィールドが得られる。
以上説明した実施形態は、本発明による音響ノイズの抑制を物理的に達成する手段を単に例示したものに過ぎない。例えば、図3に示されるような単一式の埋め込みピストンに代えて、二つの分離したピストンや可動メンブレン(membrane)を、ベーン10の正圧面14及び負圧面と連続するように設けて、各表面のピストンやメンブレンを、本発明にかかる反対称圧力変動を生成するように作動させることもできる。
当業者であれば、本発明の請求項及び上記記述から、種々の変形や改良が可能であることは明らかであろう。
Claims (4)
- 正圧面(14)、負圧面(16)、前縁(18)、弦方向を有するエアフォイル(10)であって、該エアフォイルは、前記各面を流通する流体のフローにさらされ、前記流体のフローは定期的に変動する圧力及びフローとのフィールドを画定し、前記エアフォイル(10)と前記流体のフローとの相互作用によって、特性周波数及び波長を有する音響ノイズが生成されるものにおいて、
前記エアフォイルは、該エアフォイル(10)の前縁(18)に隣接して設けられた能動的な装置(10aまたは30)を有し、かつ、この装置は、互いに略表裏をなす前記各面の双方において同時に周期的圧力変動を生成するように調整されており、かつ、この変動は、前記面の一方が負であるときは、前記面の他方が正であり、これにより前記音響ノイズが減少されることを特徴とするエアフォイル。 - 前記装置は、前記エアフォイルに可動部(10a)を更に有し、この可動部は、前記前縁(18)に設けられていることを特徴とする請求項1記載のエアフォイル。
- 前記装置は、前記エアフォイル(10)内に設けられてその内部で可動であるピストン(30)を有し、該ピストン(30)は、互いに略表裏をなす第一の側面と第二の側面とを有し、前記第一の側面は、前記正圧面近傍の前記流体のフローの一部と流体的に連通し、前記第二の側面は、前記負圧面近傍の流体のフローの一部と流体的に連通していることを特徴とする請求項1記載のエアフォイル。
- 前記ピストンの第一の側面と前記正圧面の流体のフローの一部との流体的連通は、前記正圧面(14)につながる連続面を形成する多孔質バリア(38)によって得られ、
前記ピストンの第二の側面と前記負圧面の流体のフローの一部との流体的連通は、前記負圧面(16)につながる連続面を形成する多孔質バリア(36)によって得られることを特徴とする請求項3記載のエアフォイル(10)。
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