JP4743431B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
ところで、三元触媒は活性温度に達するまでは浄化性能を十分に発揮できず、三元触媒をエンジン本体に近接配置して早期活性化を図るとしても、エンジンの冷態始動時に特に多く排出されるHCを十分に浄化できないという問題があり、この問題を解決するため、HCの吸着に有効なHC吸着材を備えたHC吸着触媒が提案されている。
しかしながら、燃料カットは燃料の供給を止めて燃焼を停止させる操作であるため、燃料カットを実施している期間は燃焼熱を排出できず、排気温度が低下するために排気中の反応成分の活性度合いが低下し、或いはHC吸着触媒や下流側の三元触媒が冷却されてHC吸着触媒や三元触媒の酸化機能が低下するという問題がある。このようにHC吸着触媒や下流側の三元触媒の酸化機能が低下する場合、その低下の度合いが大きいと、HC吸着材から脱離するHCを十分に酸化除去できなくなるおそれがあり好ましいことではない。
一方で、HC吸着触媒の昇温が速く、HC吸着材がHCを脱離する一定温度(約150℃)にまで早期に達するような状況下では、HC吸着触媒や下流側の三元触媒が未だ十分に活性していないにも拘わらずHC吸着材からHCが脱離を開始するという問題があり、この場合にも、HC吸着材から脱離するHCを十分に酸化除去できなくなるおそれがあり好ましいことではない。この場合、いかに効果的にHC吸着材の昇温を抑えてHC吸着触媒や下流側の三元触媒が活性温度に達するまでの時間を稼ぐかが課題となる。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、燃料カットにより排出される酸素によって触媒中に酸素を供給しHC吸着材から脱離するHCを酸化除去する場合において、当該HC吸着材から脱離するHCを効率よく十分に酸化除去可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
請求項4の内燃機関の排気浄化装置では、請求項1において、前記複数の気筒群にそれぞれ対応して設けられた複数の分岐吸気通路と、前記複数の分岐排気通路のうち前記他の気筒群に対応する分岐排気通路から前記複数の分岐吸気通路のうち前記他の気筒群に対応する分岐吸気通路に排気の一部をEGRガスとして環流させるEGR手段とを備えたことを特徴とする。
また、HC吸着材の温度が所定の低温域にあり、且つ、HC吸着材の温度変化速度が所定速度以上であるとき、他の気筒群について燃料カットを行い、一の気筒群については燃料カットを行わずに燃料供給を行うので、他の気筒群に対応する分岐排気通路は比較的長いことから、外気に長時間冷やされて排気温度が大きく低下することになり、車両のドライバビリティの悪化を防止しながら、HC吸着材の温度上昇を抑制しつつ上記酸化触媒が活性温度に達するまでの時間を効果的に稼ぐようにできる。
これにより、以降、HC吸着材が所定の低温域を越えたときには、一の気筒群について燃料カットを行うことにより、上記脱離されたHCを十分に活性した上記酸化触媒上で酸化除去することができ、HCの浄化効率のさらなる向上を図ることができる。
図1、図2を参照すると、車両に搭載された本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の概略構成図が正面図及び側面図としてそれぞれ示されており、以下当該排気浄化装置の構成を説明する。
エンジン本体(内燃機関であって、以下、単にエンジンという)1の駆動軸2には流体継手4を介して自動変速機(A/T)10が接続されており、A/T10には、図示しないがデファレンシャルギヤユニット、車軸を介して一対の車輪が接続されている。なお、A/T10に変えて無段変速機(CVT)を用いるようにしてもよい。
また、シリンダヘッド20、21には、各気筒(#1、#2、#3、及び#4、#5、#6)の排気ポートとそれぞれ分岐通路を連通するようにして排気マニホールド30、31がそれぞれ接続されており、排気マニホールド30、31の排気下流側には各々排気管(複数の分岐排気通路)32、33が接続されている。詳しくは、エンジン1のレイアウト等の種々の理由から、排気管32、33は、図1に示すように、排気管32の長さL1の方が排気管33の長さL2よりも短くなるよう構成されている(L1<L2)。
そして、排気マニホールド30、31と吸気マニホールド22、23間には排気の一部をEGRガスとして吸気側に環流させるEGR通路14、15がそれぞれ設けられており、EGR通路14、15にはEGRガスの流量を調節するEGR弁16、17がそれぞれ介装されている(EGR手段)。
三元触媒34、35は、貴金属として白金(Pt)、ロジウム(Rh)等を含んでいる。当該貴金属は排気空燃比(排気A/F)がリーン空燃比(リーンA/F)である酸化雰囲気下で酸素(O2)を吸蔵するとともに排気A/Fがリッチ空燃比(リッチA/F)となる還元雰囲気下で当該吸蔵した酸素(ストレージO2)を放出する酸素吸蔵機能(O2ストレージ機能)を有している。これより、三元触媒34、35は、触媒温度が所定温度(約250℃〜350℃)以上の活性状態では、排気A/Fをストイキオ(理論空燃比)近傍で変動させると、酸素の吸蔵と放出とを繰り返しながら、HC、COを酸化除去するとともにNOxを良好に還元除去可能である。
HCトラップ触媒40は、例えばゼオライト(β型ゼオライト等)を主成分とするHC吸着材を含み、所定の低温域(例えば、150℃の領域)で排気中のHCを吸着するとともに、触媒温度が上昇して所定温度(例えば、150℃)以上になると吸着したHCを放出する特性を有している。つまり、HCトラップ触媒40は、エンジン1が冷態にあってHCの排出量が多く、且つ三元触媒34、35が未だ活性状態にないような場合において、排気中のHCを吸着してHCの大気中への排出量を低減する役割を有している。
なお、HCトラップ触媒40も三元触媒34、35と同様、貴金属や酸素吸蔵材を有している。具体的には、HCトラップ触媒40は、担体の表面にHC吸着材を塗布して下層を形成し、その上層に貴金属や酸素吸蔵材からなる三元触媒層を形成して構成されている。これにより、HCトラップ触媒40は、HCトラップ触媒40自身においてもHC吸着材から放出されるHCを酸化除去することが可能である。
また、エンジン1には、アクセルペダル51の操作量(アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ(APS)52、冷却水温度、即ちエンジン水温を検出することでエンジン1の暖機状態を検出する水温センサ53が設けられている。
電子コントロールユニット(ECU)60は、中央処理装置(CPU)等からなるエンジン1の制御を含む車両の各種制御を司る主制御装置であり、その入力側には、上述の温度センサ46、クランク角センサ50、APS52、水温センサ53、O2センサ54、55の他、各種センサ類が接続されている。
図3を参照すると、ECU60が実行する燃料カット判定の判定ルーチンがフローチャートで示されており、図4を参照すると、燃料カット制御の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下これらフローチャートに沿い説明する。
ステップS10では、燃料カット判定を行うべく各種センサ類から各種データを読込む。
ステップS12では、水温センサ44からの冷却水温度情報に基づき、エンジン水温が所定温度Tw1未満であるか否かを判別する。判別結果が偽(No)で、エンジン水温が所定温度Tw1以上であってエンジン1が暖機状態にあると判定された場合には、ステップS24に進み、パーシャル燃料カットフラグをOFFに設定する。即ち、エンジン1が暖機状態にあるような場合には、冷態時に比べてHCの排出量が少なく、また排気熱によって三元触媒34やHCトラップ触媒40は活性状態にあると判断でき、全気筒についての燃料カットを許容するべく、パーシャル燃料カットフラグをOFF設定としてパーシャル燃料カットについては行わないようにする。
ステップS14では、アイドルSW42がONでエンジン1がアイドル運転状態にあるか否かを判別する。詳しくは、ここでは、車両が停止してエンジン1がアイドル運転状態にある場合のみならず、車両が減速中であってエンジン1がアイドル運転状態にあるか否かを判別する。判別結果が偽(No)の場合にはステップS24に進む。一方、判別結果が真(Yes)でアイドルSW42がON、即ち車両が減速中であって大きなエンジン出力を特に必要とせず、パーシャル燃料カットを実施しても問題ないような状況と判定された場合には、ステップS16に進む。
ステップS18では、HCトラップ触媒40の温度がHCトラップ触媒40からHCが脱離しなくなる所定の高温Th(例えば、Tl+150℃以上)より小であるか否かを判別する。判別結果が偽(No)でHCトラップ触媒40の温度が所定の高温Th以上であると判定された場合には、不要なパーシャル燃料カットの実施を防止すべく、ステップS24に進む。一方、判別結果が真(Yes)でHCトラップ触媒40の温度が所定の高温Thより小と判定された場合には、ステップS20に進む。
ステップS30では、上記燃料カット判定において設定された短側パーシャル燃料カットフラグがONであるか否かを判定する。判別結果が真(Yes)で、短側パーシャル燃料カットフラグがONである場合には、ステップS31に進む。
ステップS34では、パーシャル燃料カット制御を開始してから所定時間が経過したか否かを判別する。ここに、所定時間としては、例えばHC吸着材からHCが脱離し終わるまでの時間を実験等により予め求めておき、当該時間が設定される。判別結果が偽(No)の場合には、パーシャル燃料カット制御が継続実施される。一方、判別結果が真(Yes)で所定時間が経過したと判定された場合には、ステップS36に進み、燃料カットを終了して燃料供給を復帰し、全気筒について燃料噴射を行い、通常運転を実施する。
ステップS38では、全気筒燃料カットの実施条件が成立したか否かを判別する。全気筒燃料カットの実施条件としては、例えばアイドルSWがONであって車両が減速状態にあり、且つ、ロックアップクラッチ6がON、即ち直結状態であるか否かが適用される。判別結果が真(Yes)で全気筒燃料カットの実施条件が成立したと判定された場合には、ステップS40に進み、全気筒燃料カットを実施する。
このようにすると、排気管33は全長が比較的長いため、排気管33が外気に冷却される期間が長くなり、急激な排気昇温を防止でき、HCトラップ触媒40からHCが早期に脱離してしまわないようにしつつ、HCトラップ触媒40の三元触媒層や三元触媒42が活性状態になるまでの時間を稼ぐことができる。これにより、以降、HCトラップ触媒40の温度が所定の低温Tlを越え、パーシャル燃料カット制御が開始されたときにおいて、HCトラップ触媒40の三元触媒層や三元触媒42を確実に活性状態に維持してHCを酸化除去でき、HCの浄化効率のさらなる向上を図ることができる。
例えば、上記実施形態では、エンジン1を吸気管噴射型V型6気筒ガソリンエンジンとし、バンク毎に燃料カットを行うことでパーシャル燃料カット制御を実施するようにしたが、これに限られず、複数の排気マニホールドが気筒群毎に設けられて各排気マニホールドから延びる複数の排気管(複数の分岐排気通路)の長さが異なる構成であって、気筒群毎に燃料カット可能であれば、エンジン1は如何なるエンジンであってもよく、V型に代えて直列エンジン(例えば、4気筒ガソリンエンジン)であってもよいし、吸気管噴射型に代えて筒内噴射型エンジン等であってもよい。この場合、HC吸着材から脱離するHCの除去のためには複数の排気管のうち最も短い排気管に対応する気筒群についてのみ燃料カットを行い、HC吸着材の昇温を抑制するためには当該最も短い排気管以外の排気管に対応する気筒群についてのみ燃料カットを行えばよい。
また、上記実施形態では、HCトラップ触媒40の排気下流側に三元触媒42を設けるようにしたが、上記のようにHCトラップ触媒40が三元触媒層を有している場合には三元触媒42を省略することも可能である。
14、15 EGR通路
16、17 EGR弁
28 燃料噴射弁
32、33 排気管(複数の分岐排気通路)
36 排気管(主排気通路)
39 点火プラグ
40 HCトラップ触媒(HC吸着材)
42 三元触媒(酸化触媒)
46 温度センサ(温度検出手段)
60 ECU(電子コントロールユニット)
Claims (4)
- 多気筒からなる内燃機関の複数の気筒群にそれぞれ対応して設けられ少なくとも2種類の異なる長さの複数の分岐排気通路と、
これら複数の分岐排気通路を排気下流側で合流して延びる主排気通路と、
該主排気通路に介装され、所定の低温域にあるときに排気中のHCを吸着する一方、前記所定の低温域を越えると前記吸着したHCを脱離するHC吸着材と、
該HC吸着材の温度を推定もしくは実測する温度検出手段と、
該HC吸着材の同位置或いは排気下流側に位置して設けられた酸化触媒と、
内燃機関の各気筒への燃料供給を制御する燃料制御手段と、
前記温度検出手段からの情報に基づき前記HC吸着材の温度変化率を算出する温度変化率算出手段とを備え、
前記燃料制御手段は、燃料カット条件が成立すると内燃機関への燃料供給を停止して燃料カットを行うとともに燃料カット復帰条件が成立すると該燃料カットを終了して内燃機関への燃料供給を復帰する燃料カット手段を含み、
前記温度検出手段により前記HC吸着材の温度が前記所定の低温域を越えたことが検出されると、該燃料カット手段により前記複数の気筒群のうち少なくとも前記複数の分岐排気通路中の短い分岐排気通路に対応する一の気筒群について燃料カットを行い、少なくとも長い分岐排気通路に対応する他の気筒群については燃料カットを行わずに燃料供給を行い、
前記温度検出手段により前記HC吸着材の温度が前記所定の低温域にあることが検出され、且つ、前記温度変化率算出手段により算出された前記HC吸着材の温度変化速度が所定速度以上であるとき、前記燃料カット手段により前記複数の気筒群のうち前記他の気筒群について燃料カットを行い、前記一の気筒群については燃料カットを行わずに燃料供給を行うことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。 - 前記複数の気筒群にそれぞれ対応して設けられた複数の分岐吸気通路と、
前記複数の分岐排気通路から前記複数の分岐吸気通路に気筒群毎にそれぞれ排気の一部をEGRガスとして環流させるEGR手段とを備え、
前記EGR手段は、前記燃料カット手段により前記一の気筒群について少なくとも燃料カットを開始する直前から終了するまでの間、該一の気筒群に対応する分岐吸気通路へのEGRガスの環流量を制限することを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。 - 前記EGR手段は、前記燃料カット手段により前記一の気筒群について少なくとも燃料カットを開始する直前から終了するまでの間、該一の気筒群に対応する分岐吸気通路へのEGRガスの環流を中止することを特徴とする、請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記複数の気筒群にそれぞれ対応して設けられた複数の分岐吸気通路と、
前記複数の分岐排気通路のうち前記他の気筒群に対応する分岐排気通路から前記複数の分岐吸気通路のうち前記他の気筒群に対応する分岐吸気通路に排気の一部をEGRガスとして環流させるEGR手段とを備えたことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
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