しかしながら、特許文献1に開示されている従来の分波器は、第3のフィルタを基準としてインピーダンスを調整しているため、入出力端子と第2のフィルタとの間および入出力端子と第3のフィルタとの間で、第1の周波数帯域の信号に対するインピーダンスがそれぞれ無限大ではない。また、入出力端子と第1のフィルタとの間および入出力端子と第3のフィルタとの間で、第2の周波数帯域の信号に対するインピーダンスがそれぞれ無限大ではない。
そのため、例えば、第2のフィルタに第1の周波数帯域の信号が漏れてしまう、および第3のフィルタに第1の周波数帯域の信号が漏れてしまうという不具合があり、入力信号を正確に分波することができないという課題があった。
一方、図8に示された分波器の場合には、1つのフィルタに対応する周波数帯域以外の不要な2つの周波数帯域の信号を各分波線路で同時に逆位相にしなければならないことから、1つの分波線路が2つの周波数帯域の信号に対して同時に位相を調整する必要があり、1つの分波線路が調整する信号の位相量が大きくなるという問題があった。これは、分波器が広帯域の信号を扱うようになるにつれて大きな問題となっていた。
近年では移動体通信システムにおいて広帯域化が図られており、分波器に対しても、他のフィルタへ信号の漏れを抑えて分波することができ、かつ、広帯域化したいという新たな要求がされるようになってきた。例えばWiMAXシステム(IEEE802.16)は、3つの周波数帯域を持つとともに各周波数帯域は従来よりも約6倍広帯域であるため、分波器もそれに応じて広帯域とする必要がある。しかし、図7に示された従来の分波器では、入力される信号が広帯域になると、各分波線路が調整する位相量がそれぞれ大きくなることから、例えば、第2の分波線路30が、入出力端子25と第2の接続端子27との間で第1の周波数帯域の信号の位相が逆位相になるように信号の位相量を調整することが困難となり、位相を逆位相にすることができなかった。その結果、第1の周波数帯域の信号が第2の分波線路30を通り抜けて第2のフィルタ33に入り込むため、信号が漏れてしまい、入出力端子25に入力された信号を分波することができなかった。
また、各分波線路29〜31が調整する位相量がそれぞれ大きいことから、分波線路を形成する上で必要なスペースが広くなるので、分波器が大型化してしまい、小型の機器に搭載するのが困難となってしまうという課題があった。
このように、従来の分波器においては、入出力端子に入力される信号が非常に広帯域化した場合、各フィルタへの不要な周波数帯域の信号の漏れを抑えることは困難でありかつ、小型の分波器を得ることはできなかった。
本発明は上記の課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、入力された広帯域の信号をより正確に複数の周波数帯域に分波できる、分波線路を用いた小型の分波器を提供することにある。
本発明の分波器は、入力端子に入力される信号を、互いに異なるN(Nは3以上の正の整数)個の周波数帯域の信号に分波する分波器であり、前記N個の周波数帯域のうち対応する1つの周波数帯域の信号のみをそれぞれ通過させるN個のフィルタと、前記入力端子に入力された信号を前記N個の周波数帯域の信号に分波して、対応する該各フィルタにそれぞれ供給する分波回路とを備え、前記分波回路は、前記入力端子と前記各フィルタとの間に、該各フィルタに対応する周波数帯域以外のN−1個の周波数帯域の信号を除去する分波線路部をそれぞれ備え、少なくとも1つの前記分波線路部は、前記入力端子と対応する前記フィルタとの間に分波線路が複数段配置されて成ることを特徴とする。
本発明の分波器において好ましくは、前記少なくとも1つの分波線路部は、前記入力端子と対応する前記フィルタとの間に前記分波線路がN−1段配置されて成り、該各段の分波線路は、前記N−1個の周波数帯域のうち対応する1つの周波数帯域の信号をそれぞれ除去することを特徴とする。
本発明の分波器において好ましくは、前記入力端子に入力された信号は3つの周波数帯域の信号に分波され、前記N個のフィルタは、第1の周波数帯域の信号を通過させる第1のフィルタと、第2の周波数帯域の信号を通過させる第2のフィルタと、第3の周波数帯域の信号を通過させる第3のフィルタとからなり、前記分波回路は、前記入力端子と前記第1のフィルタとの間に接続された1段の分波線路から成る第1の分波線路部と、該入力端子と前記第2のフィルタとの間に接続された2段の分波線路から成る第2の分波線路部と、前記入力端子と前記第3のフィルタとの間に接続された2段の分波線路から成る第3の分波線路部とを備えることを特徴とする。
本発明の分波器において好ましくは、前記第2の分波線路部および第3の分波線路部は、前記第1の周波数帯域の信号を除去する分波線路を一段目で共有していることを特徴と
する。
本発明の分波器において好ましくは、前記分波回路は、前記入力端子と前記第1のフィルタとの間に接続された第2および第3の各周波数帯域の信号を除去する第1の分波線路と、前記入力端子に接続された第1の周波数帯域の信号を除去する第2の分波線路と、前記第2の分波線路と前記第2のフィルタとの間に接続された第3の周波数帯域の信号を除去する第3の分波線路と、前記第2の分波線路と前記第3のフィルタとの間に接続された第2の周波数帯域の信号を除去する第4の分波線路とからなることを特徴とする。
本発明の分波器において好ましくは、前記第1の周波数帯域は前記第2の周波数帯域および前記第3の周波数帯域よりも低い周波数であり、かつ、前記第2の周波数帯域は前記第3の周波数帯域よりも低い周波数であることを特徴とする。
本発明の分波器において好ましくは、前記第2の周波数帯域は、前記第1の周波数帯域よりも前記第3の周波数帯域に近いことを特徴とする。
本発明の分波器において好ましくは、前記分波回路は、N+1個以上の分波線路部を備え、少なくとも1つの前記フィルタは、複数の前記分波線路部に接続されることを特徴とする。
本発明の分波器において好ましくは、前記入力端子に入力された信号は3つの周波数帯域の信号に分波され、前記N個のフィルタは、第1の周波数帯域の信号を通過させる第1のフィルタと、第2の周波数帯域の信号を通過させる第2のフィルタと、第3の周波数帯域の信号を通過させる第3のフィルタとからなり、前記分波回路は、前記入力端子と前記第1のフィルタとの間に接続された2段の分波線路から成る第1の分波線路部と、該入力端子と前記第2のフィルタとの間に接続された2段の分波線路からそれぞれ成る第2の分波線路部および第3の分波線路部と、該入力端子と前記第3のフィルタとの間に接続された2段の分波線路から成る第4の分波線路部とを備えることを特徴とする。
本発明の分波器において好ましくは、前記第1の分波線路部および第2の分波線路部は、前記第3の周波数帯域の信号を除去する分波線路を一段目で共有し、前記第3の分波線路部および第4の分波線路部は、前記第1の周波数帯域の信号を除去する分波線路を一段目で共有していることを特徴とする。
本発明の分波器において好ましくは、前記分波回路は、前記入力端子に接続された前記第3の周波数帯域の信号を除去する第1の分波線路と、前記入力端子に接続された前記第1の周波数帯域の信号を除去する第2の分波線路と、前記第1の分波線路と前記第1のフィルタとの間に接続された前記第2の周波数帯域の信号を除去する第3の分波線路と、前記第1の分波線路と前記第2のフィルタとの間に接続された前記第1の周波数帯域の信号を除去する第4の分波線路と、前記第2の分波線路と前記第2のフィルタとの間に接続された前記第3の周波数帯域の信号を除去する第5の分波線路と、前記第2の分波線路と前記第3のフィルタとの間に接続された前記第2の周波数帯域の信号を除去する第6の分波線路とからなることを特徴とする。
本発明の分波器によれば、入力端子に入力される信号を、互いに異なるN(Nは3以上の正の整数)個の周波数帯域の信号に分波する分波器であって、N個の周波数帯域のうち対応する1つの周波数帯域の信号のみをそれぞれ通過させるN個のフィルタと、入力端子に入力された信号をN個の周波数帯域の信号に分波して、対応する該各フィルタにそれぞれ供給する分波回路とを備え、分波回路は、入力端子と各フィルタとの間に、該各フィルタに対応する周波数帯域以外のN−1個の周波数帯域の信号を除去する分波線路部をそれぞれ備え、少なくとも1つの分波線路部は、入力端子と対応するフィルタとの間に分波線路が複数段配置されて成り、各分波線路は、入力された信号の位相量を、それぞれ対応する周波数帯域以外の周波数帯域の各信号に対するインピーダンスを無限大にするように調整することから、入力端子と各フィルタとの間で、各フィルタに対応する周波数帯域以外のN−1個の周波数帯域の信号がそれぞれ除去され、各フィルタに不要な周波数帯域の信号が通過しないので、各フィルタに対応する周波数帯域の信号が他のフィルタへ漏れることを抑えることができ、入力端子に入力された信号をより正確に分波することができる。
そして、少なくとも1つの分波線路部は、入力端子と対応するフィルタとの間に分波線路が複数段配置されて成ることから、各分波線路が位相量を調整する周波数帯域の数はそれぞれ少なくて済む。これにより、各分波線路は、対応する周波数帯域の信号がそれぞれ広帯域になった場合であっても、それらの位相量を調整することが可能になる。そのため、入力端子と対応するフィルタとの間でより広帯域の周波数帯域の信号を除去できるので、広帯域の入力信号を分波することが可能な分波器を実現することができる。
また、各分波線路が調整する信号の位相量はそれぞれ小さくなり、各分波線路が長くなることは抑制されることから、小型化に有効である。
したがって、本発明の分波器によれば、複数の周波数帯域により正確に分波でき、かつ広帯域な特性を有する小型の分波器を実現することができる。
また、本発明の分波器によれば、少なくとも1つの分波線路部は、入力端子と対応するフィルタとの間に分波線路がN−1段配置されて成り、該各段の分波線路は、N−1個の周波数帯域のうち対応する1つの周波数帯域の信号をそれぞれ除去することから、各分波線路は、入力された信号の位相量を、1つの周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にするようにそれぞれ調整するため、各分波線路が調整する信号の位相量はそれぞれ最も小さくなる。これにより、分波線路が対応する周波数帯域以外の不要な周波数帯域の信号に対して調整する位相量が小さくできるので、広帯域の信号に対してインピーダンスを無限大にすることができる。そのため、入力端子と対応するフィルタとの間で広帯域の周波数帯域の信号を除去できるので、広帯域の入力信号を分波することが可能な分波器を実現することができる。
また、本発明の分波器によれば、入力端子に入力された信号は3つの周波数帯域の信号に分波され、N個のフィルタは、第1の周波数帯域の信号を通過させる第1のフィルタと、第2の周波数帯域の信号を通過させる第2のフィルタと、第3の周波数帯域の信号を通過させる第3のフィルタとからなり、分波回路は、入力端子と第1のフィルタとの間に接続された1段の分波線路から成る第1の分波線路部と、該入力端子と第2のフィルタとの間に接続された2段の分波線路から成る第2の分波線路部と、入力端子と第3のフィルタとの間に接続された2段の分波線路から成る第3の分波線路部とを備え、第2の分波線路部および第3の分波線路部は、第1の周波数帯域の信号を除去する分波線路を一段目で共有していることから、分波線路の数を減らすことができるため、分波器をより小型化でき
る。
また、本発明の分波器によれば、分波回路は、入力端子と第1のフィルタとの間に接続された第2および第3の各周波数帯域の信号を除去する第1の分波線路と、入力端子に接続された第1の周波数帯域の信号を除去する第2の分波線路と、第2の分波線路と第2のフィルタとの間に接続された第3の周波数帯域の信号を除去する第3の分波線路と、第2の分波線路と第3のフィルタとの間に接続された第2の周波数帯域の信号を除去する第4の分波線路とからなることから、入出力端子と第1のフィルタとの間で、第2の周波数帯域および第3の周波数帯域の各信号に対するインピーダンスが無限大になるように、第1の分波線路を用いて入力信号の位相を調整することから、第2の周波数帯域および第3の周波数帯域の各信号の第1のフィルタへの通過を阻止することができる。
また、入出力端子と第2のフィルタとの間で、第2の分波線路を用いて第1の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にし、第3の分波線路を用いて第3の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にすることから、第1の周波数帯域および第3の周波数帯域の各信号の第2のフィルタへの通過を阻止することができる。
また、入出力端子と第3のフィルタとの間で、第2の分波線路を用いて第1の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にし、第4の分波線路を用いて第2の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にすることから、第1の周波数帯域および第2の周波数帯域の各信号の第3のフィルタへの通過を阻止することができる。
このように、本発明による分波器によれば、各フィルタに、対応する周波数帯域以外の不要な信号が漏れなくなることから、入力端子に入力された信号を3つの周波数帯域の信号により正確に分波することができる。
そして、入出力端子と第2のフィルタとの間、および入出力端子と第3のフィルタとの間には2段の分波線路がそれぞれ接続されており、各分波線路が対応する1つの周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にするように、入力された信号の位相量をそれぞれ調整することから、各分波線路が調整する位相量はそれぞれ最も小さくなる。その結果、各分波線路は、対応する周波数帯域の信号がそれぞれ広帯域になった場合であっても、それらの位相量を調整することが可能になるので、広帯域の信号に対してインピーダンスを無限大にすることができ、広帯域の信号に対しても正確な分波が可能になる。
そのため、入力端子と対応するフィルタとの間で広帯域の周波数帯域の信号を除去できるので、広帯域の入力信号に対応する分波器を実現することができる。
本発明の分波器によれば、上記構成において、第1の周波数帯域は第2の周波数帯域および第3の周波数帯域よりも低い周波数であり、かつ、第2の周波数帯域は第3の周波数帯域よりも低い周波数であることから、第2の周波数帯域および第3の周波数帯域は第1の周波数帯域よりも共に高い周波数であり、インピーダンスが近い値となるため、入出力端子と第1のフィルタとの間で、第1の分波線路を用いて、第2の周波数帯域の信号に対するインピーダンスおよび第3の周波数帯域の信号に対するインピーダンスをそれぞれ容易に無限大にすることができる。よって、第1のフィルタに、その第1のフィルタに対応する周波数帯域以外の不要な信号がさらに通らなくなり、入力端子に入力された信号をフィルタへ信号の漏れを抑えて3つの周波数帯域の信号に正確に分波することができる。
また、インピーダンスを無限大にする周波数帯域の信号が2つの高い周波数帯域の信号であることから、第1の分波線路の線路長は短くなり、第1の分波線路は小型になる。これは、周波数の高い信号の位相量を調整する場合と周波数の低い信号の位相量を調整する場合とでは、同じ位相量を調整する場合であっても、周波数の高い信号の位相量を調整する場合の方が分波線路の線路長が短くて済むからである。
一方、第2の分波線路は、インピーダンスを無限大にする信号の周波数帯域が他の周波数帯域のうち最も低い第1の周波数帯域であることから、線路長は長くなるが、第3および第4の分波線路を小さくすることができるため、全体として分波器を小型にすることができる。
さらに、本発明の分波器によれば、第2の周波数帯域は、第1の周波数帯域よりも第3の周波数帯域に近いことにより、第2の周波数帯域および第3の周波数帯域の各信号に対するインピーダンスはより近くなることから、第1の分波線路を用いて第2および第3の各フィルタにそれぞれ対応する周波数帯域を容易に、かつ同時に、除去することができる。そのため、第1のフィルタに、対応する周波数帯域以外の不要な周波数帯域の信号、すなわち、第2および第3の各フィルタにそれぞれ対応する周波数帯域の信号が通らなくなり、第1のフィルタに供給される信号に不要な周波数帯域が漏れることをより効果的に抑制させる。
また、本発明の分波器によれば、入力端子に入力された信号は3つの周波数帯域の信号に分波され、N個のフィルタは、第1の周波数帯域の信号を通過させる第1のフィルタと、第2の周波数帯域の信号を通過させる第2のフィルタと、第3の周波数帯域の信号を通過させる第3のフィルタとからなり、分波回路は、入力端子と第1のフィルタとの間に接続された2段の分波線路から成る第1の分波線路部と、該入力端子と第2のフィルタとの間に接続された2段の分波線路からそれぞれ成る第2の分波線路部および第3の分波線路部と、該入力端子と第3のフィルタとの間に接続された2段の分波線路から成る第4の分波線路部とを備え、第1の分波線路部および第2の分波線路部は、第3の周波数帯域の信号を除去する分波線路を一段目で共有し、第3の分波線路部および第4の分波線路部は、第1の周波数帯域の信号を除去する分波線路を一段目で共有していることから、分波線路の数を減らすことができ、分波器をより小型化することができる。
また、本発明の分波器によれば、分波回路は、入力端子に接続された第3の周波数帯域の信号を除去する第1の分波線路と、入力端子に接続された第1の周波数帯域の信号を除去する第2の分波線路と、第1の分波線路と第1のフィルタとの間に接続された第2の周波数帯域の信号を除去する第3の分波線路と、第1の分波線路と第2のフィルタとの間に接続された第1の周波数帯域の信号を除去する第4の分波線路と、第2の分波線路と第2のフィルタとの間に接続された第3の周波数帯域の信号を除去する第5の分波線路と、第2の分波線路と第3のフィルタとの間に接続された第2の周波数帯域の信号を除去する第6の分波線路とからなる。
このような構成を備えることから、入出力端子と第1のフィルタとの間で、第1の分波線路を用いて第3の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にし、第3の分波線路を用いて第2の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にすることから、第2の周波数帯域および第3の周波数帯域の各信号の第1のフィルタへの通過を阻止することができる。
また、入出力端子と第3のフィルタとの間で、第2の分波線路を用いて第1の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にし、第6の分波線路を用いて第2の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にすることから、第1の周波数および第2の周波数帯域の各信号の第3のフィルタへの通過を阻止することができる。
また、入出力端子と第2のフィルタとの間で、第1の分波線路および第5の分波線路を用いて第3の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にし、第2の分波線路および第4の分波線路を用いて第1の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを無限大にすることから、第1の周波数帯域および第3の周波数帯域の各信号の第2のフィルタへの通過を阻止することができる。
以上のような構成により、入出力端子と各フィルタとの間で対応する周波数帯域以外の不要な信号が通らなくことから、入力された信号を、他のフィルタへ信号の漏れを抑えて3つの周波数帯域に正確に分波することができる。
そして、各分波回路は、それぞれ1つの周波数帯域のみのインピーダンスが無限大になるように分波線路の位相量を調整するため、分波線路が調整する信号の位相量はそれぞれ小さくなる。これにより、分波線路は、対応する周波数帯域の信号がそれぞれ広帯域になった場合であっても、それらの位相量を調整することが可能になる。そのため、入力端子と対応するフィルタとの間でより広帯域の周波数帯域の信号を除去できるので、広帯域の入力信号を分波することが可能な分波器を実現することができる。
以下に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明による分波器は、入力された信号をN(Nは3以上の整数)個の周波数帯域に分波する構成とすることが可能であるが、以下では、入力信号を3つの周波数帯域に分波する場合を例に挙げて説明する。この分波器は、例えばWiMAX(IEEE802.16)等のシステムに適用でき、WiMAXにおいて、その通過帯域は2.3GHzから2.7GHzと、3.3から3.9GHzと、5.15から5.9GHzである。以下では、2.3GHzから2.7GHzを2GHz帯域、3.3から3.9GHzを3GHz帯域、5.15から5.9GHzを5GHz帯域とする。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の分波器の第1の実施の形態の例を示した回路図である。この分波器は図1に示すように、例えばアンテナ(図示せず)等の送受信部に接続される入出力端子1と、外部の電気回路等に接続される複数の接続端子2〜4との間に形成されている。
図1に示されるように、本実施の形態による分波器は、4つの分波線路5,6,7,8と3つのフィルタ9,10,11とを備える。第1のフィルタ9、第2のフィルタ10、および第3のフィルタ11は、第1の接続端子2、第2の接続端子3、および第3の接続端子4にそれぞれ対応して接続されている。なお、第1のフィルタ9は、第1の周波数帯域の信号を通過させるフィルタであり、第2のフィルタ10は、第2の周波数帯域の信号を通過させるフィルタであり、第3のフィルタ11は、第3の周波数帯域の信号を通過させるフィルタである。
入出力端子1には、第1の分波線路5の一端と第2の分波線路6の一端がそれぞれ接続されている。第1の分波線路5の他端には、第1のフィルタ9が接続されており、第2の分波線路6の他端には、第3の分波線路7の一端および第4の分波線路8の一端がそれぞれ接続されている。また、第3の分波線路7の他端には、第2のフィルタ10が接続され、第4の分波線路8の他端には、第3のフィルタ11が接続されている。ここで、第1、第2、第3および第4の各分波線路5,6,7,8の特性インピーダンスはそれぞれ50Ωである。各分波線路5〜8は、該各分波線路5〜8に入力された信号の位相を線路長に応じてそれぞれ変化させる。
なお、第1乃至第4の各分波線路5〜8は分波回路を成す。分波回路は、入出力端子1と各フィルタ9〜11との間に、2個の周波数帯域の信号を除去する分波線路部をそれぞれ有するとみなすことができる。例えば、第1のフィルタ9に対しては、第2および第3の各周波数帯域を除去する第1の分波線路5から成る第1の分波線路部が接続されている。同様に、第2のフィルタ10に対しては、第1の周波数帯域を除去する第2の分波線路6と第3の周波数帯域を除去する第3の分波線路7とから成る第2の分波線路部が接続されている。さらに、第3のフィルタ11に対しては、第1の周波数帯域を除去する第2の分波線路6と第2の周波数帯域を除去する第4の分波線路8とから成る第3の分波線路部が接続されている。つまり、図1に示された分波器では、2つの分波線路部において、入出力端子1と対応するフィルタ10,11との間に、分波線路がそれぞれ複数段配置されている。なお、第2および第3の各分波線路部は、第2の分波線路6を共有している。
次に、図1に示された分波器の動作を説明する。入出力端子1に入力された信号は、第1の分波線路5を介して、第1のフィルタ9に入力されるとともに、第2の分波線路6および第3の分波線路7を介して第2のフィルタ10に入力され、さらに、第2の分波線路6および第4の分波線路8を介して第3のフィルタ11に入力される。ここで、第1の分波線路5は、第2および第3の各周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長が定められている。これにより、第1の分波線路5は、入出力端子1に入力された信号のうち第2および第3の各周波数帯域の信号の通過を阻止して、第1のフィルタ9からは、第1の周波数帯域の信号のみが出力される。
また、第2の分波線路6は、第1の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長が定められている。これにより、第2の分波線路6は、入出力端子1に入力された信号のうち第1の周波数帯域の信号の通過を阻止する。
さらに、第3の分波線路7は、第3の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長が定められている。これにより、第3の分波線路7は、第3の周波数帯域の信号の通過を阻止して、第2のフィルタ10からは、第2の周波数帯域の信号のみが出力される。
また、第4の分波線路8は、第2の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長が定められている。これにより、第4の分波線路8は、第2の周波数帯域の信号の通過を阻止して、第3のフィルタ11からは、第3の周波数帯域の信号のみが出力される。
上述の分波器によれば、入出力端子1と第1のフィルタ9との間で、第2および第3の各周波数帯域の信号が第1のフィルタ9に漏れることを防止することができる。同様に、第2のフィルタ10に第1および第3の各周波数帯域の信号が漏れることを防止することができ、第3のフィルタ11に第1および第2の各周波数帯域の信号が漏れることを防止することができる。すなわち、各フィルタに該各フィルタに対応する周波数帯域以外の周波数帯域の信号が漏れることを防止することができる。その結果、入出力端子1に入力された信号をより正確に3つの周波数帯域の信号に分波することができる。
そして、入出力端子1と第2のフィルタ10との間、および入出力端子1と第3のフィルタ11との間に、分波線路がそれぞれ複数段(この場合は2段)配置されていることから、第2および第3の各分波線路6、7は、位相量を調整する周波数帯域の数はそれぞれ少なくて済む。これにより、第2および第3の各分波線路6,7は、対応する周波数帯域の信号がそれぞれ広帯域になった場合であっても、それらの位相量を調整することが可能になる。そのため、入力端子と対応するフィルタとの間でより広帯域の周波数帯域の信号を除去できるので、広帯域の入力信号を分波することが可能な分波器を実現することができる。
また、各分波線路5〜8が調整する信号の位相量はそれぞれ小さいので、分波線路5〜8の線路超が長くなることは抑制され、分波器を小型化することができる。
したがって、本発明の分波器によれば、他のフィルタへ信号の漏れを抑えて複数の、特に3つの周波数帯域に分波でき、かつ広帯域な特性を有する小型の分波器を提供することができる。
なお、第1の実施の形態による分波器は、入出力端子1に入力された信号を3つの周波数帯域の信号に分波するものであるが、入出力端子1に入力された信号を、互いに異なるN(Nは3以上の正の整数)個の周波数帯域に分波する分波器についても、同様のことがいえる。そのような場合に、分波器は、N個の周波数帯域のうち対応する1つの周波数帯域の信号のみをそれぞれ通過させるN個のフィルタと、入力端子に入力された信号をN個の周波数帯域の信号に分波して、対応する該各フィルタにそれぞれ供給する分波回路とを備える。分波回路は、入力端子と各フィルタとの間に、該各フィルタに対応する周波数帯域以外のN−1個の周波数帯域の信号を除去する分波線路部をそれぞれ備える。
このような分波器において、少なくとも1つの分波線路部は、入出力端子と対応するフィルタとの間に分波線路がN−1段配置されて成り、各段の分波線路は、N−1個の周波数帯域のうち対応する1つの周波数帯域の信号をそれぞれ除去するものであることが好ましい。この第1の実施形態(N=3)による分波器においては、第2および第3の分波線路6、7、第2および第4の分波線路6、8が、それぞれ2段に配置されている。
この場合、N−1段の分波線路が配置されて成る分波線路部において、各分波線路は、入力された信号の位相量を、1つの周波数帯域のみのインピーダンスを無限大にするようにそれぞれ調整するため、各分波線路が調整する信号の位相量はそれぞれ最も小さくなる。これにより、各分波線路は、対応する周波数帯域の信号がそれぞれ広帯域になった場合であっても、それらの位相量を調整することが可能になる。そのため、入力端子と対応するフィルタとの間でより広帯域の周波数帯域の信号を除去できるので、広帯域の入力信号を分波することが可能な分波器を実現することができる。
図2は、図1に示された第1の実施形態による分波回路の周波数特性を示すグラフである。図2においては、横軸は周波数(単位:GHz)を、縦軸は信号通過量S21(単位:dB)を表し、太線の特性曲線は本実施の形態による分波器の周波数特性を、点線の周波数特性は図7に示す従来の分波器の周波数特性を示している。図2より、従来の分波器では広帯域な3GHz帯域および5GHz帯域では分波することができていないが本実施の形態による分波器によれば、3つの周波数帯域において対応する周波数帯域以外の不要な信号が通らなくなり、分波器が広帯域となり、所望の周波数帯域で分波することができていることが分かる。
図3は、図1に示された第1の実施形態における分波器の分波線路の長さを示した表である。本実施の形態による分波器では、図3に示されるように、第1の周波数帯域を2GHz帯域に、第2の周波数帯域を3GHz帯域に、第3の周波数帯域を5GHz帯域にそれぞれ設定することによって、図7に示す従来の分波器にくらべて分波線路の全体の長さが短くなり、分波器が小型になることが分かる。
このように小型化できる理由の1つとして、第2の周波数帯域および第3の周波数帯域が第1の周波数帯域よりも共に高い周波数であることから、第1の分波線路5の線路長を短くできるということがある。これは、周波数の高い信号の位相量を調整する場合と周波数の低い信号の位相量を調整する場合とでは、同じ位相量を調整する場合であっても、周波数の高い信号の位相量を調整する場合の方が分波線路の線路長が短くて済むことに起因している。
一方、第2の分波線路6は、入力された信号の周波数帯域のうち最も低い第1の周波数帯域の信号に対してインピーダンスを無限大にすることから、線路長は長くなるが、第3の分波線路7および第4の分波線路8を小さくすることができるため、全体として分波器を小型にすることができる。
この第1の実施形態において、分波器は、第1の周波数帯域は第2の周波数帯域および第3の周波数帯域よりも低い周波数であり、かつ、第2の周波数帯域は第3の周波数帯域よりも低い周波数であるとともに、第2の分波線路6で第1の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを調整するものであることが好ましい。
この場合、第2の周波数帯域および第3の周波数帯域は第1の周波数帯域よりも共に高い周波数であり、インピーダンスが近い値となるため、入出力端子1と第1のフィルタ9との間で、第1の分波線路5を用いて、第2の周波数帯域の信号に対するインピーダンスおよび第3の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを容易に無限大になるように調整することができるので、入出力端子1と第1のフィルタ9との間で、第1のフィルタ9に対応する周波数帯域以外の不要な信号がさらに通過しなくなることから、他のフィルタ10、11への信号の漏れを抑えることができる。
さらに、このように、第1の周波数帯域が第2の周波数帯域および第3の周波数帯域よりも低い周波数であり、かつ、第2の周波数帯域が第3の周波数帯域よりも低い周波数であるとともに、第2の分波線路6で第1の周波数帯域の信号に対するインピーダンスを調整させる場合、第2の周波数帯域は、第1の周波数帯域よりも第3の周波数帯域に近いことが好ましい。
この場合、第2の周波数帯域の信号に対するインピーダンスおよび第3の周波数帯域の信号に対するインピーダンスはより近くなり、第1の分波線路で第2および第3のフィルタに対応する周波数帯域の信号を容易に、同時に、除去することができる。
そのため、入出力端子1と第1のフィルタ9との間で、そのフィルタ9に対応する周波数帯域以外の不要な信号(特に第2および第3のフィルタ10、11に対応する周波数帯域)が通過しなくなり、第1のフィルタ9に供給される信号に不要な周波数帯域の信号が漏れることをより効果的に抑制することができる。
(第2の実施形態)
図4は、本発明の分波器の第2の実施の形態の例を示した回路図である。この分波器は図4に示すように、例えば、アンテナ(図示せず)等の送受信部と接続される入出力端子12と、外部の電気回路等に接続される複数の接続端子13〜15との間に形成されている。
図4に示されるように、本実施の形態による分波回路は、6つの分波線路16、17、18、19,20,21と3つのフィルタ22,23,24とを備える。第1のフィルタ22、第2のフィルタ23、および第3のフィルタ24は、第1の接続端子13、第2の接続端子14、および第3の接続端子15にそれぞれ対応して接続されている。
入出力端子12には、第1の分波線路16の一端と第2の分波線路17の一端がそれぞれ接続されている。第1の分波線路16の他端には、第3の分波線路18の一端と第4の分波線路19の一端がそれぞれ接続されており、第2の分波線路17の他端には、第5の分波線路20の一端と第6の分波線路21の一端がそれぞれ接続されている。また、第3の分波線路18の他端には第1のフィルタ22が接続され、第4の分波線路19の他端および第5の分波線路20の他端には第2のフィルタ23が接続され、第6の分波線路21の他端には第3のフィルタ24が接続されている。
ここで、第1乃至第6の各分波線路16〜21の特性インピーダンスはそれぞれ50Ωである。各分波線路16〜21は、該各分波線路16〜21に入力された信号の位相を線路長に応じてそれぞれ変化させる。なお、第1のフィルタ22は、第1の周波数帯域の信号を通過させるフィルタであり、第2のフィルタ23は、第2の周波数帯域の信号を通過させるフィルタであり、第3のフィルタ24は、第3の周波数帯域の信号を通過させるフィルタである。
なお、第1乃至第6の各分波線路16〜21は分波回路を成す。分波回路は、入出力端子12と各フィルタ16〜21との間に、2個の周波数帯域の信号を除去する分波線路部をそれぞれ有するとみなすことができる。例えば、第1のフィルタ22に対しては、第3の周波数帯域を除去する第1の分波線路16と第2の周波数帯域を除去する第3の分波線路18とから成る第1の分波線路部が接続されている。同様に、第2のフィルタ23に対しては、第3の周波数帯域を除去する第1の分波線路16と第1の周波数帯域を除去する第4の分波線路19とから成る第2の分波線路部、および第1の周波数帯域を除去する第2の分波線路17と第3の周波数帯域を除去する第5の分波線路20とから成る第3の分波線路部が接続されている。また、第3のフィルタ24に対しては、第1の周波数帯域を除去する第2の分波線路17と第2の周波数帯域を除去する第6の分波線路21とから成る第4の分波線路部が接続されている。つまり、本実施の形態による分波回路では、4つの分波線路部において、入出力端子12と対応するフィルタ22,23,24との間に、分波線路が複数段配置されている。なお、第1および第2の各分波線路部は、第1の分波線路16を共有し、第3および第4の各分波線路部は、第2の分波線路17を共有する。
次に、図4に示された分波器の動作を説明する。入出力端子12に入力された信号は、第1の分波線路16および第3の分波線路18を介して第1のフィルタ22に入力されるとともに、第1の分波線路16および第4の分波線路19を介して並びに第2の分波線路17および第5の分波線路20を介して第2のフィルタ23に入力され、さらに、第2の分波線路17および第6の分波線路21を介して第3のフィルタ24に入力される。ここで、第1の分波線路16は、第3の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長が定められており、第3の分波線路18は、第2の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長が定められている。これにより、第1の分波線路5および第3の分波線路18は、入出力端子12に入力された信号のうち第3および第2の各周波数帯域の信号の通過を阻止して、第1のフィルタ22からは、第1の周波数帯域の信号が出力される。
また、第4の分波線路19は、第1の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長が定められている。これにより、第4の分波線路19は、第1の周波数帯域の信号の通過を阻止する。
さらに、第2の分波線路17は、第1の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長が定められており、第5の分波線路20は、第3の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長が定められている。これにより、第2の分波線路17および第5の分波線路20は、入出力端子12に入力された信号のうち第1および第3の各周波数帯域の信号の通過を阻止する。以上により、第2のフィルタ23からは、第2の周波数帯域の信号が出力される。
また、第6の分波線路21は、第2の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長が定められている。これにより、第6の分波線路21は、第2の分波線路17を通過した信号のうち第2の周波数帯域の信号の通過を阻止して、第3のフィルタ24からは、第3の周波数帯域の信号が出力される。
上述の分波器によれば、入出力端子12と第1のフィルタ22との間で、第2および第3の各周波数帯域の信号を除去するため、第2および第3の各周波数帯域の信号が第1のフィルタ22に漏れることを防止することができる。同様に、第2のフィルタ23に第1および第3の各周波数帯域の信号が漏れることを防止することができ、第3のフィルタ24に第1および第2の各周波数帯域の信号が漏れることを防止することができる。すなわち、各フィルタに該各フィルタに対応する周波数帯域以外の周波数帯域の信号が漏れることを防止することができる。その結果、入出力端子12に入力された信号をより正確に3つの周波数帯域の信号に分波することができる。
そして、入出力端子12と第1のフィルタ22との間、入出力端子12と第2のフィルタ23との間、および入出力端子12と第3のフィルタ24との間に、分波線路が複数段(この場合は2段)配置されていることから、各分波線路16〜21は、位相量をそれぞれ調整する周波数帯域の数はそれぞれ少なくて済む。これにより、各分波線路16〜21は、対応する周波数帯域の信号がそれぞれ広帯域になった場合であっても、それらの位相量を調整することが可能になる。そのため、入力端子と対応するフィルタとの間でより広帯域の周波数帯域の信号を除去できるので、広帯域の入力信号を分波することが可能な分波器を実現することができる。
また、各分波線路16〜21が調整する信号の位相量はそれぞれ小さいので、各分波線路16〜21の線路長が長くなることは抑制され、分波器を小型化することができる。
したがって、本発明の分波器によれば、他のフィルタへ信号の漏れを抑えて複数の、特に3つの周波数帯域に分波でき、かつ広帯域な特性を有する小型の分波器を提供することができる。
さらに、第1および第2の各分波線路部は、第1の分波線路16を共有し、第3および第4の各分波線路部は、第2の分波線路17を共有していることから、分波線路を共有しない回路に比べて、分波器を小型にすることができる。
なお、第2の実施の形態による分波器は、入出力端子1と第2のフィルタ23との間に、入出力端子12に入力された信号から第1および第3の各周波数帯域を除去する分波線路部を2つ備えているが、3以上の分波線路部を備えてもよい。また、入出力端子12と第1のフィルタ22との間、入出力端子1と第2のフィルタ23との間に、および入出力端子12と第3のフィルタ24との間の少なくとも1つに、複数の分波線路部を備えていてもよい。さらに、各分波線路部は、分波線路を共有してもしなくてもよいが、共有すると分波器をさらに小型化できる。
以上から、入出力端子12と第1のフィルタ22との間は第1の分波線路16と第3の分波線路18、入出力端子12と第3のフィルタ24との間は第2の分波線路17と第6の分波線路21、そして入出力端子12と第2のフィルタ23との間は第1の分波線路16と第4の分波線路19の経路および第2の分波線路17と第5の分波線路20の経路と、1つの分波線路でそれぞれ1つの周波数帯域のみのインピーダンスが無限大になるように入力された信号の位相量を調整するため、分波線路が調整する信号の位相量はそれぞれ少なくなる。つまり、各分波線路16〜21は、いずれにおいても2つの周波数帯域を除去する必要がないので、信号の位相量の調整がそれぞれ極めて容易である。
その結果、各分波線路16〜21は、対応する周波数帯域の信号がそれぞれ広帯域になった場合であっても、それらの位相量を調整することが可能になる。そのため、入力端子と対応するフィルタとの間でより広帯域の周波数帯域の信号を除去できるので、広帯域の入力信号を分波することが可能な分波器を実現することができる。したがって分波器をより一層広帯域にすることができる。
図5は、図4に示された第2の実施形態による分波回路の周波数特性を示すグラフである。図5においては、横軸は周波数(単位:GHz)を、縦軸は信号通過量S21(単位:dB)を表し、太線の特性曲線は本実施の形態による分波器の周波数特性を、点線の周波数特性は図7に示す従来の分波器の周波数特性を示している。図5より、従来の分波器では広帯域な3GHz帯域および5GHz帯域では分波することができていないが本実施の形態による分波器によれば、3つの周波数帯域において対応する周波数帯域以外の不要な信号が通らなくなり、分波器が広帯域となり、所望の周波数帯域で分波することができていることが分かる。また、図1の分波器に比べ、損失なく広帯域に分波することができていることが分かる。
図6は、図4に示された第2の実施形態における分波線路の長さを示した表である。本実施の形態による分波器は、図6に示されるように、図7に示す従来の分波器にくらべて、小型になることが分かる。
なお、分波線路5〜8および16〜21は、例えば、基板にストリップライン構造を用いて線路導体により形成される。そして、その分波線路の線路長を調整することで位相を変化する。また、その分波線路は特定の特性インピーダンス(たとえば50Ω)になるように線路幅、基板厚等が調整される。
また、フィルタ9〜11および22〜24は、例えば、インダクタとキャパシタとを備える、いわゆるLCフィルタ等であり、上述した第1〜第3の周波数帯域等の所定の周波数帯域において信号を通過させるように構成されている。
このような分波線路5〜8および16〜21やフィルタ9〜11および22〜24は、例えば、アルミナセラミックス,ムライトセラミックス等のセラミックス材料やガラスセラミックス等の無機系材料、またはフッ素樹脂やガラスエポキシ樹脂,ポリイミド等の樹脂系材料等を用いて形成された絶縁基板に、メタライズ層等の厚膜導体や、めっき層、蒸着層等の薄膜導体が所定のパターンに被着されることにより形成される。
なお、本発明の分波器は、以上の各実施形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更は可能である。
例えば、Nは3に限らず、4以上でもかまわない。例えばN=4の場合、入出力端子から順次、2個の分波線路を3段に分岐させて6つの分波線路部を設け、この分波線路部の2つずつにそれぞれ第1〜第4のフィルタを1つずつ接続してもよい(図4の第2のフィルタ23と同様)。図7は、この場合の分波器の構成例を示す回路図である。この分波器は、例えばアンテナ(図示せず)等の送受信部に接続される入出力端子41と、外部の電気回路等に接続される複数の接続端子42から45との間に形成されており、図8に示されるように、10個の分波線路46〜55と4個のフィルタ61〜64とを備える。第1のフィルタ61、第2のフィルタ62、および第3のフィルタ63、および第4のフィルタ64は、第1の接続端子42、第2の接続端子43、第3の接続端子44、および第4の接続端子45にそれぞれ対応して接続されている。なお、第1のフィルタ61は、第1の周波数帯域の信号を通過させるフィルタであり、第2のフィルタ62は、第2の周波数帯域の信号を通過させるフィルタであり、第3のフィルタ63は、第3の周波数帯域の信
号を通過させるフィルタであり、第4のフィルタ64は、第4の周波数帯域の信号を通過させるフィルタである。
入出力端子41には、第1の分波線路46の一端と第2の分波線路47の一端がそれぞれ接続されている。第1の分波線路46の他端には、第3の分波線路48の一端と第4の分波線路49の一端がそれぞれ接続されており、第2の分波線路47の他端には、第5の分波線路50の一端と第6の分波線路51の一端がそれぞれ接続されている。また、第4の分波線路49の他端には、第7の分波線路52の一端と第8の分波線路53の一端がそれぞれ接続されており、第5の分波線路50の他端には、第9の分波線路54の一端と第10の分波線路55の一端がそれぞれ接続されている。さらに、第3の分波線路18の他端には第4のフィルタ64が接続され、第7の分波線路52の他端および第9の分波線路54の他端には第3のフィルタ63が接続され、第8の分波線路53の他端および第10の分波線路55の他端には第2のフィルタ62が接続され、第6の分波線路51の他端には、第1のフィルタ61が接続されている。
この分波器において、第1および第5の各分波線路46,50は、第1の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長がそれぞれ定められ、第7および第9の各分波線路52,54は、第2の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長がそれぞれ定められ、第8および第10の各分波線路53,55は、第3の周波数帯域に対してインピーダンスが無限大になるように線路長がそれぞれ定められ、第2および第4の各分波線路47,49は、第4の周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長がそれぞれ定められ、第3および第6の各分波線路48,51は、第2および第3の各周波数帯域の信号に対してインピーダンスが無限大になるように線路長がそれぞれ定められている。なお、この分波器の動作は、上述の分波器の動作に準じているので、説明を省略する。
このように、入出力端子と各フィルタとの間で、各3段の各分波線路でそれぞれ1つの周波数帯域が順次阻害されるため、各分波線路では3つの周波数帯域が阻害され、対応する周波数帯域の信号のみがフィルタに供給される。
なお、本発明による分波器において、各分波線路は、1つの分波線路から2つの分波線路が分岐するようにそれぞれ配置されることが好ましい。このために、各分波線路部において、複数の分波線路を他の分波線路に共有させずに複数段に渡って連続的に接続するよりも、可能な限り分波線路を他の分波線路部と共有させるのがよい。
また、分波器で使用されるシステムはWiMAX(IEEE802.16)以外のシステムを用いてもよい。たとえば、GSM(Global System for Mobile Communications)やDCS(Digital Cellular System)などでもよい。