JP4736702B2 - 液晶装置の製造装置、液晶装置の製造方法、液晶装置、及び電子機器 - Google Patents

液晶装置の製造装置、液晶装置の製造方法、液晶装置、及び電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、液晶装置の製造装置、液晶装置の製造方法、液晶装置、及び電子機器に関する。
液晶プロジェクタ等の投射型表示装置の光変調手段として用いられる液晶装置は、一対の基板間の周縁部にシール材が配設され、その中央部に液晶層が封止されて構成されている。その一対の基板の内面側には液晶層に電圧を印加する電極が形成され、これら電極の内面側には非選択電圧印加時において液晶分子の配向を制御する配向膜が形成されている。このような構成によって液晶装置は、非選択電圧印加時と選択電圧印加時との液晶分子の配向変化に基づいて光源光を変調し、画像光を作製するようになっている。
ところで、前述した配向膜としては、側鎖アルキル基を付加したポリイミド等からなる高分子膜の表面に、ラビング処理を施したものが一般に用いられている。ラビング処理とは、柔らかい布からなるローラで、高分子膜の表面を所定方向に擦ることにより、高分子を所定方向に配向させるものである。その配向性高分子と液晶分子との分子間相互作用により、配向性高分子に沿って液晶分子が配置されるので、非選択電圧印加時の液晶分子を所定方向に配向させることができるようになっている。また、側鎖アルキル基により、液晶分子にプレティルトを与えることができるようになっている。
しかし、このようなラビング法は簡便であるものの、物理的にポリイミド膜をこすることでポリイミド膜に対して配向特性を付与するために、種々の不都合が指摘されている。具体的には、
(1)配向性の均一さを確保することが困難であること、
(2)ラビング処理時の筋跡が残り易いこと、
(3)配向方向の制御およびプレチルト角の選択的な制御が可能ではなく、また広視野角を得るために用いられるマルチドメインを使用した液晶パネルには適さないこと、
(4)ガラス基板からの静電気による薄膜トランジスタ素子の破壊や、配向膜の破壊が生じ、歩留まりを低下させること、
(5)ラビング布からのダスト発生による表示不良が発生しがちであること、
などである。
また、このような有機物からなる配向膜では、液晶プロジェクタのような高出力光源を備えた機器に用いた場合、光エネルギーにより有機物がダメージを受けて配向不良を生じてしまう。特に、プロジェクタの小型化および高輝度化を図った場合には、液晶パネルに入射する単位面積あたりのエネルギーが増加し、入射光の吸収によりポリイミドそのものが分解し、また、光を吸収したことによる発熱でさらにその分解が加速される。その結果、配向膜に多大なダメージが付加され、機器の表示特性が低下してしまう。
そこで、このような不都合を解消するため、ターゲットから放出されるスパッタ粒子が1方向から斜めに基板に入射するようにスパッタリングを実施することにより、基板に対して斜め方向に結晶成長した複数の柱状構造を有する無機材料からなる配向膜を形成する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。このような方法によれば、得られる無機配向膜は高い信頼性を有するものと期待されている。
特開2004−170744号公報
ところで、一般にスパッタ装置では、プラズマ雰囲気にAr等の放電用ガスを導入し、放電用ガスにエネルギーを付加してイオン化し、これをターゲットに衝突させることで、ターゲットから粒子、すなわちスパッタ粒子をたたき出し、基板上に成膜を行っている。
しかしながら、このようにプラズマを生成することから、基板がプラズマに晒されてしまい、結果として基板上に所望形状の無機配向膜を良好に形成することが困難であるという課題がある。すなわち、基板がプラズマに晒されてしまうと、基板面の濡れ性が向上し、スパッタ粒子(配向膜材料)が付着し易くなる。すると、このスパッタ粒子(配向膜材料)の付着状態、つまり無機配向膜としての柱状構造が制御できなくなってしまい、所望形状の無機配向膜が得られなくなってしまう。そして、このように所望形状の無機配向膜が得られなくなってしまうと、この無機配向膜によって液晶分子のプレチルト角をより良好に制御することができなくなってしまい、例えば液晶分子の配向状態をTNモードからVAモードまで自在に制御するのが困難になってしまう。
また、スパッタ法ではなく、蒸着法によって無機配向膜を形成することも知られているが、その場合には、蒸着源から発生するクラスター状粒子の持つエネルギーが小さいことから、例えばこのクラスター状粒子が装置の内壁面に付着し、その後振動等によって内壁面から脱落し、発塵を起こしてこれが基板上に異物となって付着してしまうおそれがある。
さらに、蒸着法は高い真空度で成膜を行うことから、成膜材料(配向膜材料)の平均自由行程が長くなり、したがって真空チャンバー等からなる成膜室が大型化し、装置に関する負担が大きくなる。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、プラズマに起因して所望形状の無機配向膜が得られなくなってしまうのを防止し、良好な無機配向膜を形成できるようにした液晶装置の製造装置及び液晶装置の製造方法と、これによって得られる液晶装置、電子機器を提供することを、主の目的としている。
前記目的を達成するため本発明の液晶装置の製造装置は、対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に無機配向膜を形成してなる液晶装置の製造装置であって、成膜室と、該成膜室内にて被処理体となる前記基板に配向膜材料をスパッタ法で成膜し、無機配向膜を形成するためのスパッタ装置とを備え、前記成膜室内の、前記スパッタ装置におけるターゲットと前記基板との間に、該基板が前記ターゲット側で発生したプラズマに晒されないようにプラズマを遮断するための接地された金属板が配設され、前記金属板には、前記ターゲットに対して所定の角度となる斜め方向の位置に、前記ターゲットから放出された配向膜材料を選択的に通過させるための開口部が設けられ、前記開口部には、金属製のメッシュが設けられていることを特徴としている。
あるいは、対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に無機配向膜を形成してなる液晶装置の製造装置であって、成膜室と、該成膜室内にて被処理体となる前記基板に配向膜材料をスパッタ法で成膜し、無機配向膜を形成するためのスパッタ装置とを備え、前記成膜室内の、前記スパッタ装置におけるターゲットと前記基板との間に、該基板が前記ターゲット側で発生したプラズマに晒されないようにプラズマを遮断するための接地された金属板が配設され、前記金属板には、前記ターゲットに対して所定の角度となる斜め方向の位置に、前記ターゲットから放出された配向膜材料を選択的に通過させるための開口部が設けられ、前記開口部には、金属製の筒状体が、その中心軸が前記所定の角度にほぼ一致するようにして複数配設され、かつ、該筒状体は、その開口部が最密充填構造となるように配設されていることを特徴とする構成としてもよい。
この液晶装置の製造装置によれば、ターゲットと基板との間に配設された金属板の、前記ターゲットに対して所定の角度となる斜め方向の位置に、前記ターゲットから放出された配向膜材料を選択的に通過させるための開口部を設けているので、この開口部によってターゲットから放出されたスパッタ粒子の基板への入射角を規制することができ、したがって所望形状の柱状構造、すなわち所望の角度の柱状構造となる、配向性の良好な無機配向膜を形成することができる。そして、このように所望の角度で配向性良く配向膜を形成することができるため、得られた配向膜によって液晶分子のプレチルト角をより良好に制御することが可能になり、例えば液晶分子の配向状態をTNモードからVAモードまで自在に制御することが可能になる。
また、ターゲットと基板との間にプラズマを遮断するための接地された金属板を配設しているので、該金属板によって電子やイオン状物質をトラップすることができ、したがって前記基板が前記ターゲット側で発生したプラズマに晒されることを抑制することができる。よって、所望形状の配向膜が得られなくなってしまうといった不都合を防止し、無機配向膜をより良好に形成することができる。
また、スパッタ装置によるスパッタ法を採用しているので、例えば蒸着法に比べて低い真空度で成膜を行うことができ、したがって真空ポンプ等の真空装置に関する負担を軽減することができる。さらに、蒸着法に比べて低い真空度で成膜を行うことから、成膜材料(配向膜材料)の平均自由行程が短くなり、したがって蒸着法を採用した場合に比べて真空チャンバー等からなる成膜室を小型化することができ、装置に関する負担を軽減することができる。
また、スパッタ法によってターゲットから放出されるスパッタ粒子(配向膜材料)の持つエネルギーは例えば10eVであり、蒸着法によって蒸着源から発生するクラスター状粒子の持つエネルギーが例えば0.1eVであるのに比べて格段に大きいため、スパッタ粒子は蒸着法によるクラスター状粒子に比べて密着性が高いものとなる。よって、クラスター状粒子の場合、例えば装置の内壁面に付着した粒子が例えば振動等によって内壁面から脱落し、発塵を起こしてこれが基板上に異物となって付着してしまうおそれがあるが、スパッタ粒子の場合には、内壁面などに一旦付着すると、その高密着性によって容易には脱落せず、したがってこれが基板上に異物となって付着してしまうといった不都合が回避される。
また、前記の液晶装置の製造装置においては、前記開口部に、金属製のメッシュが設けられているのが好ましい。
このようにすれば、金属製メッシュも金属板を介して接地されるため、この金属製メッシュにより、プラズマが開口部を通って基板側に洩れるのを防止することができる。また、特にメッシュはその開口径を十分小さく形成できるので、所望の開口径にすることにより、プラズマの洩れ防止効果を十分発揮させることが可能になる。
また、前記の液晶装置の製造装置においては、前記開口部に、金属製の筒状体が、その中心軸が前記所定の角度にほぼ一致するようにして複数配設され、かつ、該筒状体は、その開口部が最密充填構造となるように配設されているのが好ましい。
このようにすれば、金属製筒状体も金属板を介して接地されるため、この金属製筒状体により、プラズマが開口部を通って基板側に洩れるのを防止することができる。また、筒状体はその中心軸が前記所定の角度にほぼ一致するようにして複数配設されているので、ターゲットから放出されたスパッタ粒子は筒状体を通過することで基板に対する入射角がより規制されるようになり、したがって得られる配向膜はより良好な配向性を有するものとなる。さらに、筒状体はその開口部が最密充填構造となるように配設されているので、筒状体の開口部からなる空間率が高く、よって圧力損失が小さくなり、したがって成膜性を損なうことなく、スパッタ粒子の基板に対する入射角を良好に規制することができる。
また、前記の液晶装置の製造装置においては、前記金属板の、前記ターゲットと反対の側に前記基板を移送するための移送手段が備えられ、前記ターゲットは、前記移動手段による基板の移動方向とほぼ直交する方向に延びてライン状に細長く形成され、かつ、前記開口部は、前記ターゲットに対応して細長く形成されているのが好ましい。
このようにすれば、移動手段によって基板を移送させつつ、ライン状のターゲットから配向膜材料を放出させ、連続してスパッタによる成膜を行うことにより、基板上にターゲットの長さに対応した幅で面状に配向膜を形成することができ、したがって生産性を高めることができる。
また、前記の液晶装置の製造装置においては、前記金属板の、前記ターゲットと反対の側に前記基板を保持する基板ホルダーが備えられ、該基板ホルダーに、前記基板を加熱するための加熱手段が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、加熱手段によって加熱を行うことにより、基板に対して脱水・脱ガス処理を行うことができ、また、基板を成膜に適した温度に上昇させることもできる。
また、前記の液晶装置の製造装置においては、前記金属板の、前記ターゲットと反対の側に前記基板を保持する基板ホルダーが備えられ、該基板ホルダーに、前記基板を冷却するための冷却手段が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、冷却手段によって基板を冷却することにより、スパッタにより基板上に付着した配向膜材料の分子の、基板上での拡散(マイグレーション)を抑制し、配向膜材料の一軸方向での成長を促進することができる。したがって、配向膜の配向性をより良好にすることができる。
本発明の液晶装置の製造方法は、対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に配向膜を形成してなる液晶装置の製造方法であって、
スパッタ装置を用い、ターゲットから配向膜材料を放出させて被処理体となる前記基板に配向膜を成膜するに際して、
前記ターゲットと前記基板との間に、該基板が前記ターゲット側で発生するプラズマに晒されないようにプラズマを遮断するための接地された金属板を配設しておくとともに、前記金属板の、前記ターゲットに対して所定の角度となる斜め方向の位置に、前記ターゲットから放出された配向膜材料を選択的に通過させるための開口部を設けておくことを特徴としている。
この液晶装置の製造方法によれば、ターゲットと基板との間に配設された金属板の、前記ターゲットに対して所定の角度となる斜め方向の位置に、前記ターゲットから放出される配向膜材料を選択的に通過させるための開口部を設けておくので、この開口部によってターゲットから放出されたスパッタ粒子の基板への入射角を規制することができ、したがって所望形状の柱状構造、すなわち所望の角度の柱状構造となる、配向性の良好な無機配向膜を形成することができる。そして、このように所望の角度で配向性良く配向膜を形成することができるため、得られた配向膜によって液晶分子のプレチルト角をより良好に制御することが可能になる。
また、ターゲットと基板との間にプラズマを遮断するための接地された金属板を配設しているので、該金属板によって電子やイオン状物質をトラップすることができ、したがって前記基板が前記ターゲット側で発生したプラズマに晒されることを抑制することができる。よって、所望形状の配向膜が得られなくなってしまうといった不都合を防止し、無機配向膜をより良好に形成することができる。
本発明の液晶装置は、前記の製造装置、あるいは前記の製造方法によって得られたことを特徴としている。
この液晶装置によれば、前述したように配向性の良好な無機配向膜を備えているので、この無機配向膜によって液晶分子のプレチルト角をより良好に制御することができるなど、信頼性の高いものとなる。
本発明の電子機器は、前記の液晶装置を備えたことを特徴としている。
この電子機器によれば、信頼性の高い液晶装置を備えているので、この電子機器自体も信頼性の高いものとなる。
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
図1は本発明における液晶装置の製造装置の一実施形態の概略構成を示す図であり、図1中符号1は液晶装置の製造装置(以下、製造装置と記す)である。この製造装置1は、液晶装置の構成部材となる基板Wの表面に、無機材料からなる配向膜を形成するためのもので、真空チャンバーによって形成される成膜室2と、該成膜室2内にて前記基板Wに配向膜材料をスパッタ法で成膜し、無機配向膜を形成するためのスパッタ装置3とを備えて構成されたものである。
成膜室2は、この成膜室2内に基板Wを搬入するためのロードロックチャンバー(図示せず)に、接続し連通したものとなっている。成膜室2には、その内部圧力を制御し、所望の真空度を得るための排気制御装置(図示せず)が配管等を介して接続されている。なお、前記のロードロックチャンバーにも、これを独立して真空雰囲気に調整する排気制御装置(図示せず)が接続されている。このロードロックチャンバーと成膜室2との間には、それぞれの間の連通を気密に閉塞するゲートバルブ(図示せず)が備えられており、これによってロードロックチャンバーから成膜室2内への基板Wの搬入、及び成膜室2内からロードロックチャンバーへの基板Wの搬出が、成膜室2内の真空度を大きく低下させることなく行えるようになっている。
この成膜室2に備えられるスパッタ装置3は、本実施形態では公知のRFスパッタ装置からなっており、高周波電源4と、この高周波電源4に電気的に接続する電極に保持されたターゲット5とを有したものである。そして、ターゲット5の近傍、本実施形態ではターゲット5の下方でプラズマPを発生させ、このプラズマ雰囲気中にArガスやOガスなどの放電用ガスを導入し、放電用ガスにエネルギーを付加してイオンとし、このイオンをターゲット5に衝突させることで、ターゲット5から粒子、すなわちスパッタ粒子をたたき出し、基板W上に成膜を行うものである。
ターゲット5は、基板W上に形成する無機配向膜材料、例えばSiOやAlなどからなるもので、本実施形態では、特にライン状に細長く形成された直方体状のものとなっている。そして、その最も大きな面が、図1中実線で示すようにほぼ水平となり、したがって鉛直方向に向くように設置されている。なお、図1では、ターゲット5の長さ方向は紙面と直交する方向となっている。
また、このターゲット5については、その最も大きな面を水平に設置することなく、例えば図1中二点鎖線で示すように、その法線Lを水平面に対して所定角度θ(例えば45°)傾けて設置してもよい。
このような構成からなるスパッタ装置3の下方には、基板Wを、その被処理面(成膜面)が水平になるようにして保持する基板ホルダー6が配設されている。この基板ホルダー6には、該基板ホルダー6を前記のロードロックチャンバー(図示せず)側からその反対側へ水平に移送する公知の移送手段(図示せず)が設けられている。なお、この移送手段による基板Wの移送方向は、図1中において矢印A方向となっており、したがって前述したターゲット5の長さ方向と直交する方向となっている。
また、基板ホルダー6には、保持した基板Wを加熱するためのヒータ(加熱手段)7が設けられており、さらに、保持した基板Wを冷却するための冷却手段8が設けられている。ヒータ7は、図示しない電源及び温度調整器に接続されて、所望の温度に基板ホルダー6を加熱し、これによって基板Wを所望の温度に加熱できるように構成されたものである。冷却手段8は、基板ホルダー6内に設けられた冷媒配管(図示せず)と、この冷媒配管内に冷媒を循環させる冷媒供給部とからなるもので、図示しない冷媒供給部から冷媒供給口8a内に冷媒を導入し、さらに冷媒排出口8bから再度冷媒供給部に冷媒を循環させることにより、所望の温度に基板ホルダー6を冷却し、これによって基板Wを所望の温度に冷却できるように構成されたものである。ここで、冷媒供給部には、冷媒の温度を制御する公知の冷却機構が備えられている。
また、前記成膜室2内には、前記ターゲット5と前記基板Wとの間に金属板9が配設されている。この金属板9は、アルミニウム等の非磁性金属からなるもので、図1に示すように配線9aによって接地(アース)されたものとなっている。このような構成のもとに金属板9は、スパッタ装置3を作動させ、前記ターゲット5の近傍(下方)にプラズマPを発生させてプラズマ雰囲気を形成した際、前記基板WをこのプラズマPに晒さないようにしている。すなわち、プラズマP中の電子やイオン状物質を、接地された金属板9でトラップし除去することができることから、このプラズマPの影響を金属板9に対してプラズマ雰囲気と反対の側となる基板W側に、及ばないようにしているのである。
この金属板9には、前記ターゲット5に対して所定の角度となる斜め方向の位置に、前記ターゲット5から放出された配向膜材料を選択的に通過させるための開口部10が設けられている。この開口部10は、細長いスリット状のもので、その長さ方向が前記ターゲットの長さ方向にほぼ平行となっており、すなわち、図1中において紙面と直交する方向となっている。
ここで、この開口部10の前記ターゲット5に対する角度(所定の角度)については、形成する配向膜の配向角度、すなわち形成する柱状構造体の中心軸の、基板Wの成膜面に対する傾斜角度に対応して決定される。本実施形態では、開口部10の位置についての角度(図1中のθで示す角度)が、45°とされている。すなわち、図1中実線で示すターゲット5の下面の法線方向(すなわち鉛直方向)に対し、45°傾いた方向に、開口部10が形成配置されている。このような構成のもとに、後述するようにスパッタによってターゲット5から放出された配向膜材料(スパッタ粒子)は、その一部が開口部10を通過して基板Wに堆積し、残部はそのほとんどが金属板9上に堆積するようになる。したがって、基板Wに堆積する配向膜材料(スパッタ粒子)は、開口部10の位置によって基板Wへの入射角が規制されていることにより、この入射角に対応して基板W上で堆積成長し、斜め方向に傾いた柱状構造体となるようになっている。
また、この開口部10には、本実施形態では金属製メッシュ11と複数の金属製筒状体12とが設けられている。金属製メッシュ11は、金属板9と同様にアルミニウム等の非磁性金属からなるもので、金属板9の底面側において、開口部10を覆って取り付けられたものである。このような構成のもとに、金属製メッシュ11は金属板9と電気的に導通し、したがってこの金属板9を介して接地(アース)されたものとなっている。よって、この金属製メッシュ11も、金属板9と同様に、前記プラズマP中の電子やイオン状物質をトラップして除去し、これによりプラズマPの影響を基板Wに及ばないようにしている。すなわち、開口部10はスリット状で面積は比較的小さいものの、この開口部10からプラズマPが洩れ出て基板Wに接してしまうおそれがあり、したがって、このような金属製メッシュ11を配設することにより、プラズマPが開口部10から洩れ出てくるのを防止しているのである。なお、この金属製メッシュ11については、その開口径を例えば2〜3mm程度に小さくできるため、所望の開口径にすることにより、プラズマPの洩れ防止効果を十分発揮させることができる。
金属製筒状体12は、アルミニウム等の非磁性金属からなる六角筒状のもので、金属製メッシュ11の底面側に取り付けられたものである。また、金属製筒状体12は、図2に示すように多数の金属製筒状体12が並列させられたことにより、筒状体群13を構成したものとなっている。なお、図2では見やすくするため、金属メッシュ11の一部を省略して記載いるが、本実施形態では、金属板9の開口部10には前述したようにその底面側に金属製メッシュ11が取り付けられており、この金属製メッシュ11を介して筒状体群13は、前記開口部10を覆った状態で取り付けられている。
筒状体群13を構成する各金属製筒状体12は、その中心軸が、水平面に対する法線方向、すなわち鉛直方向に対して、前記θにほぼ一致する角度で傾斜するよう配設されている。したがって、前記中心軸は、前記ターゲット5と開口部10とを結ぶ直線の鉛直方向に対する傾斜角と同じ傾斜角で傾斜させられたものとなっている。このような構成により、前記ターゲット5から放出されたスパッタ粒子は、金属製筒状体12を通過することにより、基板Wに対する入射角が設定された角度に、より良好に規制されるようになっている。なお、金属製筒状体12の長さ(高さ)については特に制限がないものの、例えば数cm〜十数cm程度とされる。
また、各金属製筒状体12からなる筒状体群13は、各金属製筒状体12の開口部が、ハニカム構造と呼ばれる最密充填構造となるように配設されている。このような構成のもとに筒状体群13は、各金属製筒状体12の開口部からなる空間率が高く、よって圧力損失が小さくなり、したがって成膜性を損なうことなく、スパッタ粒子の基板Wに対する入射角を良好に規制することができるようになっている。
なお、本実施形態では、筒状体群13も金属板9と同様に接地(アース)されており、これによってこの筒状体群13も、前記プラズマP中の電子やイオン状物質をトラップして除去し、これによりプラズマPの影響を基板Wに及ばないように機能している。
次に、このような構成の製造装置1による配向膜の製造方法に基づき、本発明の製造方法の一例について説明する。
まず、基板WとしてITOからなる透明導電膜を形成した石英ガラス基板を用意し、この基板Wをロードロックチャンバー内に投入し、ここで真空状態に保持する。また、これとは別に、排気制御装置を作動させて成膜室2内を所望の真空度に調整しておく。
続いて、基板Wを成膜室2内に搬送し、基板ホルダー6にセットする。そして、配向膜形成の前処理として、基板ホルダー6のヒータ7によって基板Wを例えば250℃〜300℃程度で加熱し、基板Wの表面に付着した吸着水やガスなどの脱水・脱ガス処理を行う。
次いで、ヒータ7による加熱を停止した後、スパッタリングによる基板温度の上昇を抑制するため、基板ホルダー6内の冷却手段8を作動させ、基板ホルダー6内に冷媒を循環させることで基板Wを所定温度、例えば室温に保持する。
次いで、アルゴンガス及び酸素ガスを所定の流量で導入するとともに、排気制御装置を作動させ、所定の操作圧力、例えば10−1Pa程度に調整する。プラズマ領域Pにおいて酸素ラジカル、酸素の負イオンが発生するため、酸素ガスは、プラズマ空間へ直接導入しない場合もある。また、必要に応じてヒータ7、冷却手段8を作動させることにより、基板Wを室温に保持する。
その後、このような成膜条件のもとで、基板Wを移動手段(図示せず)によって図1中の矢印A方向に所定の速度で移動させつつ、スパッタリングを行う。すると、ターゲット5からは、配向膜形成材料となるスパッタ粒子が放射状に放出されるものの、ターゲット5と基板Wとの間には金属板9が配設されているため、スパッタ粒子は、金属板9の開口部10を通過するもののみが、基板W上に入射するようになる。
すなわち、スパッタ粒子は、前記開口部10内において、金属製メッシュ11及び金属製筒状体12の開口内に臨む基板Wの成膜面に対してのみ、選択的に入射するようになる。また、このようにして開口部10を通過し、さらに金属製メッシュ11及び金属製筒状体12の開口内を通過したスパッタ粒子は、基板Wの成膜面に対して所定の角度、すなわち前記θで入射するようになる。その結果、得られる無機配向膜は、前記の入射角θに対応した角度で傾斜する柱状構造を有した所望の配向膜となる。
したがって、このような構成の製造装置1にあっては、前記ターゲット5から放出されたスパッタ粒子(配向膜材料)を選択的に通過させるための開口部10を設けているので、この開口部10によってターゲット5から放出されたスパッタ粒子の基板Wへの入射角を規制することができ、したがって所望形状の柱状構造、すなわち所望の角度の柱状構造となる、配向性の良好な無機配向膜を形成することができる。そして、このように所望の角度で配向性良く配向膜を形成することができるため、この配向膜を備えてなる液晶装置は、この配向膜によって液晶分子のプレチルト角をより良好に制御することができるようになる。
また、ターゲット5と基板Wとの間にプラズマを遮断するための接地された金属板9を配設しているので、該金属板9によって電子やイオン状物質をトラップすることができ、したがって前記基板Wが前記ターゲット5側で発生したプラズマに晒されることを抑制することができる。よって、所望形状の配向膜が得られなくなってしまうといった不都合を防止し、無機配向膜をより良好に形成することができる。
また、RFスパッタ装置(スパッタ装置3)によるスパッタ法を採用しているので、例えば蒸着法やイオンビームスパッタ法に比べて低い真空度で成膜を行うことができ、したがって真空ポンプ等の真空装置(排気制御装置)に関する負担を軽減することができる。さらに、蒸着法に比べて低い真空度で成膜を行うことから、成膜材料(配向膜材料)の平均自由行程が短くなり、したがって蒸着法を採用した場合に比べて真空チャンバー等からなる成膜室を小型化することができ、装置に関する負担を軽減することができる。
また、スパッタ法によってターゲットから放出されるスパッタ粒子(配向膜材料)の持つエネルギーは例えば10eVであり、蒸着法によって蒸着源から発生するクラスター状粒子の持つエネルギーが例えば0.1eVであるのに比べて格段に大きいため、スパッタ粒子は蒸着法によるクラスター状粒子に比べて密着性が高いものとなる。よって、クラスター状粒子の場合、例えば成膜室2の内壁面や金属板9に付着した粒子が例えば振動等によって脱落し、発塵を起こしてこれが基板W上に異物となって付着してしまうおそれがあるが、スパッタ粒子の場合には、内壁面などに一旦付着すると、その高密着性によって容易には脱落せず、したがってこれが基板W上に異物となって付着してしまうといった不都合が回避される。
また、金属板9の開口部10に金属製メッシュ11を設けているので、この金属製メッシュ11も金属板9を介して接地される。したがって、この金属製メッシュ11により、プラズマが開口部10を通って基板W側に洩れるのを防止することができる。特に金属メッシュ11はその開口径を十分小さく形成できるので、所望の開口径にすることにより、プラズマの洩れ防止効果を十分発揮させることができる。
また、金属板9の開口部10に金属製筒状体12を設けているので、この金属製筒状体12によっても、プラズマが開口部10を通って基板W側に洩れるのを防止することができる。また、金属製筒状体12は、その中心軸が前記θにほぼ一致するように傾斜して複数が配設されているので、ターゲット5から放出されたスパッタ粒子は金属製筒状体12を通過することで基板Wに対する入射角がより規制されるようになり、したがって得られる配向膜はより良好な配向性を有するものとなる。さらに、金属製筒状体12はその開口部が最密充填構造となるように配設されているので、金属製筒状体12の開口部からなる空間率が高く、よって圧力損失が小さくなり、したがって成膜性を損なうことなく、スパッタ粒子の基板Wに対する入射角を良好に規制することができる。
また、前記ターゲット5を、移動手段(図示せず)による基板Wの移動方向(図1中矢印A方向)とほぼ直交する方向に延びてライン状に細長く形成し、かつ、前記開口部10を、該ターゲット5に対応して同じ方向に細長く形成しているので、基板Wを移送させつつ、ライン状のターゲットから配向膜材料を放出させ、連続してスパッタによる成膜を行うことにより、基板W上にターゲットの長さに対応した幅で面状に配向膜を形成することができ、したがって生産性を高めることができる。
また、基板ホルダー6に基板Wを冷却するための冷却手段8を設けているので、成膜時、冷却手段8によって基板Wを冷却し、該基板Wを所定温度、例えば室温に保持することにより、スパッタによって基板W上に付着した配向膜材料の分子の、基板W上での拡散(マイグレーション)を抑制し、配向膜材料の一軸方向での成長を促進することができる。したがって、配向膜の配向性をより良好にすることができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態ではスパッタ装置3としてRFスパッタ装置を用いたが、DCスパッタ装置などの他のスパッタ装置を用いることも可能である。また、ターゲット5の形態についても、平行平板型ターゲットや、対向ターゲットなどを用いることが可能である。
また、金属板9の開口部10に、金属製メッシュ11と金属製筒状体12からなる筒状体群13の両方を設けたが、いずれか一方のみを設けるようにしてもよく、また、開口部10の幅が十分に狭い場合などでは、これらを設けないようにしてもよい。
次に、このような製造装置1による製造方法で形成された配向膜を備えた、本発明の液晶装置について説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図3は、本発明の液晶装置の一実施形態の概略構成を示すTFTアレイ基板の平面図であり、図3中符号80はTFTアレイ基板(基板)である。このTFTアレイ基板80の中央には画像作製領域101が形成されている。その画像作製領域101の周縁部に前記シール材89が配設されて、画像作製領域101に液晶層(不図示)が封止されている。この液晶層は、TFTアレイ基板80上に液晶が直接塗布されて形成されたもので、シール材89には液晶の注入口が設けられていない、いわゆる封口レス構造となっている。そのシール材89の外側には、後述する走査線に走査信号を供給する走査線駆動素子110と、後述するデータ線に画像信号を供給するデータ線駆動素子120とが実装されている。その駆動素子110、120から、TFTアレイ基板80の端部の接続端子79にかけて、配線76が引き廻されている。
一方、TFTアレイ基板80に貼り合わされる対向基板90(図6参照)には、共通電極61(図6参照)が形成されている。この共通電極61は、画像作製領域101のほぼ全域に形成されたもので、その四隅には基板間導通部70が設けられている。この基板間導通部70からは、接続端子79にかけて配線78が引き廻されている。
そして、外部から入力された各種信号が、接続端子79を介して画像作製領域101に供給されることにより、液晶装置が駆動されるようになっている。
図4は、液晶装置の等価回路図である。透過型液晶装置の画像作製領域を構成すべくマトリクス状に配置された複数のドットには、それぞれ画素電極49が形成されている。また、その画素電極49の側方には、該画素電極49への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子30が形成されている。このTFT素子30のソースにはデータ線46aが接続されている。各データ線46aには、前述したデータ線駆動素子から画像信号S1、S2、…、Snが供給されるようになっている。
また、TFT素子30のゲートには走査線43aが接続されている。走査線43aには、前述した走査線駆動素子から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmが供給される。一方、TFT素子30のドレインには画素電極49が接続されている。そして、走査線43aから供給された走査信号G1、G2、…、Gmにより、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオンにすると、データ線46aから供給された画像信号S1、S2、…、Snが、画素電極49を介して各ドットの液晶に所定のタイミングで書き込まれるようになっている。
液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極49と後述する共通電極との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。なお、保持された画像信号S1、S2、…、Snがリークするのを防止するため、画素電極49と容量線43bとの間に蓄積容量17が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶に入射した光源光が変調されて、画像光が作製されるようになっている。
図5は、液晶装置の平面構造の説明図である。本実施形態の液晶装置では、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITOという)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極49(破線49aによりその輪郭を示す)が、マトリクス状に配列形成されている。また、画素電極49の縦横の境界に沿って、データ線46a、走査線43aおよび容量線43bが設けられている。本実施形態では、各画素電極49の形成された矩形領域がドットであり、マトリクス状に配置されたドットごとに表示を行うことが可能な構造になっている。
TFT素子30は、ポリシリコン膜等からなる半導体層41aを中心として形成されている。半導体層1aのソース領域(後述)には、コンタクトホール45を介して、データ線46aが接続されている。また、半導体層41aのドレイン領域(後述)には、コンタクトホール48を介して、画素電極49が接続されている。一方、半導体層41aにおける走査線43aとの対向部分には、チャネル領域41a’が形成されている。
図6は、液晶装置の断面構造の説明図であり、図5のA−A’線における矢視側断面図である。図6に示すように、本実施形態の液晶装置60は、TFTアレイ基板80と、これに対向配置された対向基板90と、これらの間に挟持された液晶層50とを主体として構成されている。TFTアレイ基板80は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体80A、およびその内側に形成されたTFT素子30や画素電極49、さらにこれを覆う無機配向膜86などを主体として構成されている。ここで、配向膜86は、前記の製造装置1によって形成されたものである。一方の対向基板90は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体90A、およびその内側に形成された共通電極61、さらにこれを覆う下地膜85、無機配向膜92などを主体として構成されている。この対向基板90においても配向膜92は、前記の製造装置1によって形成されたものとなっている。
TFTアレイ基板80の表面には、後述する第1遮光膜51aおよび第1層間絶縁膜12が形成されている。そして、第1層間絶縁膜52の表面に半導体層41aが形成され、この半導体層41aを中心としてTFT素子30が形成されている。半導体層41aにおける走査線43aとの対向部分にはチャネル領域41a’が形成され、その両側にソース領域およびドレイン領域が形成されている。このTFT素子30はLDD(Lightly Doped Drain)構造を採用しているため、ソース領域およびドレイン領域に、それぞれ不純物濃度が相対的に高い高濃度領域と、相対的に低い低濃度領域(LDD領域)とが形成されている。すなわち、ソース領域には低濃度ソース領域41bと高濃度ソース領域41dとが形成され、ドレイン領域には低濃度ドレイン領域41cと高濃度ドレイン領域41eとが形成されている。
半導体層41aの表面には、ゲート絶縁膜42が形成されている。そして、ゲート絶縁膜42の表面に走査線43aが形成されて、チャネル領域41a’との対向部分がゲート電極を構成している。また、ゲート絶縁膜42および走査線43aの表面には、第2層間絶縁膜44が形成されている。そして、第2層間絶縁膜44の表面にデータ線46aが形成され、第2層間絶縁膜44に形成されたコンタクトホール45を介して、そのデータ線46aが高濃度ソース領域41dに接続されている。さらに、第2層間絶縁膜44およびデータ線46aの表面には、第3層間絶縁膜47が形成されている。そして、第3層間絶縁膜47の表面に画素電極49が形成され、第2層間絶縁膜44および第3層間絶縁膜47に形成されたコンタクトホール48を介して、その画素電極49が高濃度ドレイン領域41eに接続されている。さらに、画素電極49を覆って、前記製造装置1で形成された無機配向膜86が形成され、非選択電圧印加時における液晶分子の配向を規制しうるようになっている。
なお、本実施形態では、半導体層41aを延設して第1蓄積容量電極41fが形成されている。また、ゲート絶縁膜42を延設して誘電体膜が形成され、その表面に容量線43bが配置されて第2蓄積容量電極が形成されている。これらにより、前述した蓄積容量57が構成されている。
また、TFT素子30の形成領域に対応する基板本体80Aの表面に、第1遮光膜51aが形成されている。第1遮光膜51aは、液晶装置に入射した光が、半導体層41aのチャネル領域41a’、低濃度ソース領域41bおよび低濃度ドレイン領域41cに侵入することを防止するものである。
一方、対向基板90における基板本体90Aの表面には、第2遮光膜63が形成されている。第2遮光膜63は、液晶装置に入射した光が半導体層41aのチャネル領域41a’や低濃度ソース領域41b、低濃度ドレイン領域41c等に侵入するのを防止するものであり、平面視において半導体層41aと重なる領域に設けられている。また対向基板90の表面には、ほぼ全面にわたってITO等の導電体からなる共通電極61が形成されている。さらに、共通電極61の表面には、前記製造装置1で形成された無機配向膜92が形成され、非選択電圧印加時における液晶分子の配向を規制しうるようになっている。
そして、TFTアレイ基板80と対向基板90との間には、ネマチック液晶等からなる液晶層50が挟持されている。このネマチック液晶分子は、正の誘電率異方性を有するものであり、非選択電圧印加時には基板に沿って水平配向し、選択電圧印加時には電界方向に沿って垂直配向する。またネマチック液晶分子は、正の屈折率異方性を有するものであり、その複屈折と液晶層厚との積(リタデーション)Δndは、例えば約0.40μm(60℃)となっている。なお、TFTアレイ基板80の配向膜86による配向規制方向と、対向基板90の配向膜92による配向規制方向とは、約90°ねじれた状態に設定されている。これにより、本実施形態の液晶装置60は、ツイステッドネマチックモードで動作するようになっている。
また、両基板80、90の外側には、ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素をドープした材料等からなる偏光板58、68が配置されている。なお、各偏光板58、68は、サファイヤガラスや水晶等の高熱伝導率材料からなる支持基板上に装着して、液晶装置60から離間配置することが望ましい。各偏光板58、68は、その吸収軸方向の直線偏光を吸収し、透過軸方向の直線偏光を透過する機能を有する。TFTアレイ基板80側の偏光板58は、その透過軸が配向膜86の配向規制方向と略一致するように配置され、対向基板90側の偏光板68は、その透過軸が配向膜92の配向規制方向と略一致するように配置されている。
液晶装置60は、対向基板90を光源側に向けて配置される。その光源光のうち偏光板68の透過軸と一致する直線偏光のみが偏光板68を透過して液晶装置60に入射する。
非選択電圧印加時の液晶装置60では、基板に対して水平配向した液晶分子が液晶層50の厚さ方向に約90°ねじれたらせん状に積層配置されている。そのため、液晶装置60に入射した直線偏光は、約90°旋光されて液晶装置60から出射する。この直線偏光は、偏光板68の透過軸と一致するため、偏光板68を透過する。したがって、非選択電圧印加時の液晶装置60では白表示が行われるようになっている(ノーマリーホワイトモード)。
また、選択電圧印加時の液晶装置60では、液晶分子が基板に対して垂直配向している。そのため、液晶装置60に入射した直線偏光は、旋光されることなく液晶装置60から出射する。この直線偏光は、偏光板58の透過軸と直交するため、偏光板58を透過しない。したがって、選択電圧印加時の液晶装置60では黒表示が行われるようになっている。
ここで、前述したように両基板80、90の内側には、前記製造装置1で形成された無機配向膜86、92が形成されている。これら無機配向膜86、92は、前述したようにSiO等によって好適に形成されるが、Al、ZnO、MgOやITO等の金属酸化物、さらにはSiN、TiN等の窒化物等によっても形成することができる。
このような無機配向膜86、92を形成してなる液晶装置60にあっては、特に配向膜86、92として、前述したように配向性の良好な無機配向膜を備えているので、この無機配向膜86、92によって液晶分子のプレチルト角をより良好に制御することができるなど、信頼性の高いものとなる。
ここで、前記の製造装置1における傾斜角度θを60°にし、これによって約60°に傾斜したSiO製の柱状構造からなる無機配向膜86、92を形成し、さらに、液晶として垂直配向用のものを用いた液晶装置を作製した。得られた液晶装置について、プレチルト角を垂直配向モードで測定したところ、およそ3°であり、本発明に係る無機配向膜により、液晶分子のプレチルト角をより良好に制御できることが確認された。
(プロジェクタ)
次に、本発明の電子機器としてプロジェクタの一実施形態について、図7を用いて説明する。図7は、プロジェクタの要部を示す概略構成図である。このプロジェクタは、前述した実施形態に係る液晶装置を光変調手段として備えたものである。
図7において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は本発明の液晶装置からなる光変調手段、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投射レンズである。光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、赤色光用光変調手段822に入射される。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、緑色光用光変調手段823に入射される。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が青色光用光変調手段824に入射される。
各光変調手段822、823、824により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投影され、画像が拡大されて表示される。
前述したプロジェクタは、前記の液晶装置を光変調手段として備えている。この液晶装置は、前述したように信頼性が高いものとなっているので、このプロジェクタ(電子機器)自体も信頼性が高いものとなる。
なお、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、前記実施形態ではスイッチング素子としてTFTを備えた液晶装置を例にして説明したが、スイッチング素子として薄膜ダイオード(Thin Film Diode)等の二端子型素子を備えた液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、前記実施形態では透過型液晶装置を例にして説明したが、反射型液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、前記実施形態ではTN(Twisted Nematic)モードで機能する液晶装置を例にして説明したが、VA(Vertical Alignment)モードで機能する液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、実施形態では3板式の投射型表示装置(プロジェクタ)を例にして説明したが、単板式の投射型表示装置や直視型表示装置に本発明を適用することも可能である。
また、本発明の液晶装置を、プロジェクタ以外の電子機器に適用することも可能である。その具体例として、携帯電話を挙げることができる。この携帯電話は、前述した各実施形態またはその変形例に係る液晶装置を表示部に備えたものである。また、その他の電子機器としては、例えばICカード、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が挙げられる。
本発明の製造装置の一実施形態の概略構成図である。 金属製筒状体からなる筒状体群の概略構成を示す斜視図である。 液晶装置のTFTアレイ基板の平面図である。 液晶装置の等価回路図である。 液晶装置の平面構造の説明図である。 液晶装置の断面構造の説明図である。 プロジェクタの要部を示す概略構成図である。
符号の説明
1…液晶装置の製造装置、2…成膜室、3…スパッタ装置、4…高周波電源、5…ターゲット、6…基板ホルダー、7…ヒータ(加熱手段)、8…冷却手段、9…金属板、10…開口部、11…金属製メッシュ、12…金属製筒状体、13…筒状体群、50…液晶層、60…液晶装置、80…基板(TFTアレイ基板)、80A…基板本体、86…無機配向膜、90…基板(対向基板)、90A…基板本体、92…無機配向膜、W…基板

Claims (10)

  1. 対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に無機配向膜を形成してなる液晶装置の製造装置であって、
    成膜室と、該成膜室内にて被処理体となる前記基板に配向膜材料をスパッタ法で成膜し、無機配向膜を形成するためのスパッタ装置とを備え、
    前記成膜室内の、前記スパッタ装置におけるターゲットと前記基板との間に、該基板が前記ターゲット側で発生したプラズマに晒されないようにプラズマを遮断するための接地された金属板が配設され、
    前記金属板には、前記ターゲットに対して所定の角度となる斜め方向の位置に、前記ターゲットから放出された配向膜材料を選択的に通過させるための開口部が設けられ、
    前記開口部には、金属製のメッシュが設けられていることを特徴とする液晶装置の製造装置。
  2. 対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に無機配向膜を形成してなる液晶装置の製造装置であって、
    成膜室と、該成膜室内にて被処理体となる前記基板に配向膜材料をスパッタ法で成膜し、無機配向膜を形成するためのスパッタ装置とを備え、
    前記成膜室内の、前記スパッタ装置におけるターゲットと前記基板との間に、該基板が前記ターゲット側で発生したプラズマに晒されないようにプラズマを遮断するための接地された金属板が配設され、
    前記金属板には、前記ターゲットに対して所定の角度となる斜め方向の位置に、前記ターゲットから放出された配向膜材料を選択的に通過させるための開口部が設けられ、
    前記開口部には、金属製の筒状体が、その中心軸が前記所定の角度にほぼ一致するようにして複数配設され、かつ、該筒状体は、その開口部が最密充填構造となるように配設されていることを特徴とする液晶装置の製造装置。
  3. 前記開口部には、金属製の筒状体が、その中心軸が前記所定の角度にほぼ一致するようにして複数配設され、かつ、該筒状体は、その開口部が最密充填構造となるように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造装置。
  4. 前記金属板の、前記ターゲットと反対の側には、前記基板を移送するための移送手段が備えられ、
    前記ターゲットは、前記移送手段による基板の移動方向とほぼ直交する方向に延びてライン状に細長く形成され、かつ、前記開口部は、前記ターゲットに対応して細長く形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶装置の製造装置。
  5. 前記金属板の、前記ターゲットと反対の側には、前記基板を保持する基板ホルダーが備えられ、該基板ホルダーには、前記基板を加熱するための加熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶装置の製造装置。
  6. 前記金属板の、前記ターゲットと反対の側には、前記基板を保持する基板ホルダーが備えられ、該基板ホルダーには、前記基板を冷却するための冷却手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶装置の製造装置。
  7. 対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に無機配向膜を形成してなる液晶装置の製造方法であって、
    スパッタ装置を用い、ターゲットから配向膜材料を放出させて被処理体となる前記基板に無機配向膜を成膜するに際して、
    前記ターゲットと前記基板との間に、該基板が前記ターゲット側で発生するプラズマに晒されないようにプラズマを遮断するための接地された金属板を配設しておくとともに、前記金属板の、前記ターゲットに対して所定の角度となる斜め方向の位置に、前記ターゲットから放出された配向膜材料を選択的に通過させるための開口部を設けておき、かつ前記開口部に金属製のメッシュを設けることを特徴とする液晶装置の製造方法。
  8. 対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に無機配向膜を形成してなる液晶装置の製造方法であって、
    スパッタ装置を用い、ターゲットから配向膜材料を放出させて被処理体となる前記基板に無機配向膜を成膜するに際して、
    前記ターゲットと前記基板との間に、該基板が前記ターゲット側で発生するプラズマに晒されないようにプラズマを遮断するための接地された金属板を配設しておくとともに、前記金属板の、前記ターゲットに対して所定の角度となる斜め方向の位置に、前記ターゲットから放出された配向膜材料を選択的に通過させるための開口部を設けておき、かつ前記開口部に金属製の筒状体を、その中心軸を前記所定の角度に一致させるように複数配設するとともに、前記筒状体を、その開口部が最密充填構造となるように配設することを特徴とする液晶装置の製造方法。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造装置、あるいは請求項7又は8記載の製造方法によって得られたことを特徴とする液晶装置。
  10. 請求項9記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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