JP4736362B2 - 光および熱応答性吸着材料、可溶性物質の回収方法 - Google Patents
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Description
金属イオンを含む廃液を浄化する方法として、中和凝集沈殿法・硫化ソーダ法・重金属捕集剤法・フェライト法等が実用化されている。これらの方法で廃液を処理した後、金属を回収するステップ、さらに再利用するステップが設けられている。
このうち、重金属捕集剤法は、重金属イオンと錯化合物を形成する捕集剤(例えばシアン化合物。)を用いる。捕集処理後の捕集剤に吸着した金属イオンを回収するには、捕集剤を酸化処理等の化学反応処理を経て金属イオンから分離した後、金属を陽イオンとして溶液中に単離させて精製・回収している。
上記のような捕集剤による重金属捕集後の重金属回収ステップにおける化学反応処理の実施にあたっては、専門的な知識や技術が要求されるだけでなく、煩雑な操作と、それによる長い処理時間や多大な処理コストとを要した。
そこで、化合物への光の照射の有無により可逆的に変色するフォトクロミズムを示す化合物(以下、フォトクロミック化合物という。)の、金属イオンが可視光照射に応答して可逆的に錯形成して吸着する光応答性に着目して、溶液中の金属イオンの捕集と回収の両機能を備える金属イオン吸着材料が提案された(例えば、特許文献1参照。)。
したがって、本発明の目的は、照射した光が溶液全体に行き渡ることにより効率良く金属イオン等の可溶性物質が回収できるように、可溶性物質吸着状態で溶媒中に溶解することができる吸着材料を提供することにある。
本発明者は、吸着材料に含まれる共重合体のセグメントのうち、ある温度を境に可逆的に相転移を示す性質(以下、熱応答性という。)、例えば溶媒中への可溶性および不溶性を可逆的に示す性質をもつ化合物により、吸着材料を制御することに着目し、諸条件を確立して本発明に至った。
(1)可溶性物質溶液中で可溶性物質の吸着及び脱離の転移を光照射の有無により可逆的に示す光応答性と、溶解及び析出、もしくは膨潤及び収縮の転移を温度により可逆的に示す熱応答性とを有することを特徴とする光および熱応答性吸着材料。
(3)水素結合性溶媒中で、温度の変動により不溶性または難溶性と、可溶性とを可逆的に示し、かつ光照射の有無により前記可溶性物質の吸着と脱離とを可逆的に示す共重合体を含む前記(1)または(2)記載の光および熱応答性吸着材料。
(4)架橋剤を含んでなり、水素結合性溶媒中で温度の変動により膨潤と収縮とを可逆的に示し、かつ光照射の有無により前記可溶性物質の吸着と脱離とを可逆的に示す共重合体を含む前記(1)または(2)記載の光および熱応答性吸着材料。
(6)前記共重合体が、1´,3´,3´−トリメチル−6−(アクリロイルオキシ)スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2´−インドール)と、N−イソプロピルアクリルアミドとを含む単量体の共重合体である前記(5)記載の光および熱応答性吸着材料。
前記吸着材料の溶液を暗所下かつ転移温度より高温に加熱して吸着材料中の共重合体を液中に析出させ、引き続き析出した該共重合体と添加された金属イオンとを液中で錯形成させる工程または、
前記吸着材料の溶液中で暗所下かつ転移温度より低温で、共重合体と添加された金属イオンとを錯形成させ、引き続き前記錯形成した共重合体を転移温度より高温に加熱して液中に析出させる工程と、
前記析出させた錯形成した共重合体を引き続き暗所下高温で液から分離する工程と、
前記分離した共重合体を暗所下溶媒中で転移温度より低温に冷却して溶解させて溶液とする工程と、
転移温度より低温で溶液に可視光を照射して金属イオンを共重合体から遊離させる工程と、
引き続き可視光を照射しながら溶液を転移温度より高温に加熱して共重合体を析出させる工程と、
引き続き高温で可視光を照射しながら前記析出させた共重合体を溶媒から分離する工程と
を含むことを特徴とする可溶性物質の回収方法。
(8)前記錯形成させる工程では、金属イオン水溶液と、光および熱応答性吸着材料の水素結合性溶媒の溶液とを混合する前記(7)記載の可溶性物質の回収方法。
(10)(A)光および熱応答性吸着材料中の共重合体と可溶性物質とを、液中で吸着させて吸着化合物を得る工程と、
(B)前記吸着化合物を液から固液分離する工程と、
(C)分離した吸着化合物を回収用溶媒へ添加する工程と、
(D)可溶性物質と共重合体とを光応答性により遊離させる工程と、
(E)共重合体を回収用溶媒から取り出す工程と
を含む前記(9)記載の可溶性物質の回収方法。
(12)前記工程(A)から工程(C)までを暗所下で行い、
前記工程(B)では転移温度より高温で液中に析出している前記吸着化合物を、固液分離し、
前記工程(C)では、転移温度より低温で吸着化合物を回収用溶媒に溶解させ、
さらに、前記工程(E)では、可視光を引き続き照射しながら、回収用溶媒を転移温度より高温に加熱して溶解していた共重合体を析出させ、次いで固液分離する前記(10)または(11)記載の可溶性物質の回収方法。
(13)前記工程(A)から工程(C)までを暗所下で行い、
前記工程(E)では、可視光を引き続き照射しながら、膨潤または収縮している遊離の共重合体を固液分離で取り出す前記(10)または(11)記載の可溶性物質の回収方法。
工程(A)前に、暗所下で、前記共重合体が溶解している溶液を転移温度より高温に加熱して共重合体を析出させる工程を含む前記(10)、(11)、(12)のいずれか記載の可溶性物質の回収方法。
(15)前記工程(A)では、可溶性物質の水溶液と、前記光および熱応答性吸着材料の水素結合性溶媒の溶液とを混合する前記(10)、(12)、(13)のいずれか記載の可溶性物質の回収方法。
(16)前記回収する可溶性物質が金属イオン、金属錯イオン、水素イオンまたはアミノ酸であり、前記金属は鉛、亜鉛、銅、ニッケル、パラジウム、リチウム、カドミウム、砒素、クロム、水銀、ベリリウム、バナジウム、マンガン、コバルト、鉄、金、銀、白金から選ばれる前記(9)〜(15)のいずれか記載の可溶性物質の回収方法。
本発明の光および熱応答性吸着材料は、可溶性物質溶液中で可溶性物質の吸着及び脱離の転移を光照射の有無により可逆的に示す光応答性と、溶解及び析出、もしくは膨潤及び収縮の転移を温度により可逆的に示す熱応答性とを有することを特徴とする。
また、本発明の可溶性物質の回収方法は、本発明の吸着材料を用いて、可溶性物質を含む溶液から前記可溶性物質を回収用溶媒中へ回収することを特徴とする。
例えば、回収される可溶性物質として金属イオンを、温度による転移として溶解及び析出の相転移を示す場合を例として、以下に説明する。
このためには、まず、吸着材料中の共重合体は、少なくとも、金属イオンと錯形成した共重合体及び金属イオンが脱離した共重合体を溶媒から取り出す時では、好ましくは溶媒に不溶または難溶、より好ましくは不溶であり、一方、少なくとも金属イオンを遊離させる時には溶媒に可溶であるのが、作業性の上で好ましい。
本発明の吸着材料は、共重合体固有のある温度を境にして、その温度より高温に共重合体溶液を加熱すると、金属イオンが吸着しているか否かにかかわらず、共重合体が析出して不溶または難溶に転移し、上記温度より低温に冷却すると、析出していた共重合体は溶解状態に転移することができることが好ましい。熱応答性によるこのような相転移の境界の温度を、以下、転移温度ともいう。
すなわち、温度の変動により、前記共重合体が水素結合性溶媒中で、不溶性または難溶性と可溶性とを可逆的に示す熱応答性を示すのが好ましい。なお、本発明では水素結合性溶媒とは、水素結合による相互作用を可能とする溶媒であり、例えばアルコール類、水が挙げられ、特に水が好ましい。また、水素結合性溶媒は、2種以上の混合溶媒であってもよい。
本発明の光および熱応答性吸着材料は、この可逆的な光応答性と熱応答性との両方を有する共重合体を含むことにより、金属イオン溶液から金属イオンを吸着させて効率よく繰り返し回収することができる。光応答性において、共重合体の吸着・脱離と同時に可逆的に変色する吸着材料が、作業性の理由でより好ましい。
すなわち、本発明の吸着材料に含まれる共重合体は、下記式(1)で示される、(a)のセグメントたとえばスピロピランセグメントまたはスピロオキサジンセグメントと、(b)のセグメント例えばN−アルキル(メタ)アクリルアミドセグメントとを含むのが好ましい。
R5はアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基またはアミド基である。R5は、具体的にはメチル基、エチル基、ドデシル基等が例示される。
Xは炭素原子または窒素原子であり、Yは酸素原子または硫黄原子である。
セグメント(b)中、R6およびR7は独立にH原子、ヘテロ原子を含む有機基で置換されていてもよいアルキル基またはシクロアルキル基である。ただし、R6およびR7の両方がH原子である場合を除く。また、R6およびR7は互いに結合したアルキレン基であっても良い。R6およびR7のアルキル基は具体的には、イソプロピル基、プロピル基、エチル基、メチル基が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロプロピル基等が挙げられ、アルキレン基としてはブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
特に、1´,3´,3´−トリメチル−6−(アクリロイルオキシ)スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2´−インドール)、およびN−イソプロピルアクリルアミドを含む単量体の共重合体であるのが好ましい。
例えばランダムな共重合の場合、(a)のセグメントと(b)のセグメントとのモル分率(モル比)は、特に限定されないが、それぞれn、(1−n)とすると、0<n≦0.5が好ましい。それ以外のブロック状やグラフト状の共重合の場合は、前記モル分率は特に限定されない。例えば上記nが0.8程度であってもセグメント(b)同士がブロック重合している個所があれば共重合体は充分な熱応答性を示すことができる。
以下、セグメント(a)について、式(1)のXが炭素原子で、Yが酸素原子の場合、すなわち共重合体がセグメント(a)としてスピロピラン系セグメントを有する場合を挙げて説明する。
次に、可視光の照射を停止し、共重合体を暗所下に置くと、再度、共重合体中のスピロピラン系セグメントはメロシアニン構造となり、遊離していた金属イオンと錯形成し、かつ共重合体は再度着色する。
一方、スピロピラン系セグメント(a)は金属イオンと錯形成する部位を有するため、該含有率が少なくなると錯形成される金属イオン量も減少する。よって、共重合体中のスピロピラン系セグメントの含有率は、熱応答性と錯形成能とに合わせて適宜選択される。セグメント(a)の含有率は、例えばセグメント(a)とセグメント(b)からなる共重合体の場合は、上述のモル分率nに相当する。
以上、共重合体が上記セグメント(a)とセグメント(b)を含み、析出及び溶解の熱応答性を示す吸着材料について説明したが、本発明の吸着材料には、光応答性は維持したまま、熱応答性として、共重合体が水素結合性溶媒中で、転移温度より低温では膨潤し、転移温度より高温では液分を放出して収縮して体積を減少する相転移を可逆的に示す吸着材料も含むことができる。この場合の共重合体として、架橋剤を含んで重合されたものが挙げられる。架橋剤は、アルキルジメタクリレート等の一般に用いられる架橋剤を、吸着材料の作用を妨げない範囲で適宜使用できる。架橋剤を含んで重合された本発明における共重合体は、一般に水に不溶なゲル状である。
さらに、共重合体中には、必要に応じて、他のセグメントを含んでも良い。これには、例えばエチレン性不飽和基を有する化合物や、(b)以外の構造の熱応答性セグメント等が挙げられる。
以上の光および熱応答性吸着材料を用いた一連の金属イオン回収方法の流れの一例を表1に示す。
回収方法として、暗所下かつ転移温度より低温で、上記本発明の光および熱応答性吸着材料の溶液を得る工程と(表1の工程1参照。)、
前記吸着材料の溶液を暗所下かつ転移温度より高温に加熱して吸着材料中の共重合体を液中に析出させ(表1の工程2参照。)、引き続き析出した前記共重合体と添加された金属イオンとを液中で錯形成させる工程(表1の工程3参照。)または、
前記吸着材料の溶液中で暗所下かつ転移温度より低温で、共重合体と添加された金属イオンとを錯形成させ、引き続き前記錯形成した共重合体を転移温度より高温に加熱して液中に析出させる工程と、
前記析出させた錯形成した共重合体を引き続き高温で液から分離する工程と(表1の工程3参照。)、
前記分離した共重合体を溶媒中で転移温度より低温に冷却して溶解させて溶液とする工程と(表1の工程4参照。)、
転移温度より低温で溶液に可視光を照射して金属イオンを共重合体から遊離させる工程と(表1の工程5参照。)、
引き続き可視光を照射しながら溶液を転移温度より高温に加熱して共重合体を析出させる工程と(表1の工程6参照。)、
引き続き高温で可視光を照射しながら前記析出させた共重合体を溶媒から分離する工程と(表1の工程6参照。)
を含む方法が例示される。
(A)本発明の吸着材料中の共重合体と可溶性物質とを、液中で吸着させて吸着化合物を得る工程と、
(B)前記吸着化合物を液から固液分離する工程と、
(C)分離した吸着化合物を回収用溶媒へ添加する工程と、
(D)可溶性物質と共重合体とを光応答性により遊離させる工程と、
(E)共重合体を回収用溶媒から取り出す工程とを含む回収方法、が挙げられる。
工程(B)では転移温度より高温で液中に析出している前記吸着化合物を、固液分離し、
表1の工程4のように、工程(C)では前記分離した吸着化合物を転移温度より低温で回収用溶媒に溶解させることが挙げられる。
次いで、工程(D)では、表1の工程5のように、前記吸着材料の転移温度より低温で回収用溶媒中に溶解している吸着化合物に、可視光を照射して可溶性物質と共重合体とを遊離させることが挙げられる。ここで吸着化合物が溶解状態であるため、効率よく受光することができる。
続いて、工程(E)では、表1の工程6のように、可視光を引き続き照射しながら、回収用溶媒を転移温度より高温に加熱して溶解していた共重合体を析出させ、次いで固液分離で該共重合体を取り出すことが挙げられる。
一方、工程(A)の吸着を析出状態で行う場合は、工程(A)前に予め表1の工程2のように、暗所下で、前記共重合体が溶解している溶液を転移温度より高温に加熱して共重合体を析出させることができる。
すなわち、工程(A1)から工程(C1)までを暗所下で行い、
(A1)本発明の吸着材料中の共重合体と可溶性物質とを、液中で吸着させて吸着化合物を得る工程と、
(B1)前記吸着化合物を液から固液分離する工程と、
(C1)分離した吸着化合物を回収用溶媒へ添加する工程と、
(D1)可溶性物質と共重合体とを可視光を照射して遊離させる工程と、
(E1)可視光を引き続き照射しながら、膨潤または収縮している遊離の共重合体を固液分離により回収用溶媒から取り出す工程とを含む回収方法が挙げられる。
なお、上記工程(D1)では、膨潤により表面積が増加した共重合体から可溶性物質が遊離しやすくなるため、転移温度より低温として膨潤している共重合体に可視光照射するのが好ましい。
また、(E1)で、吸着材料内の残存溶媒量を低減したい場合は転移温度より高温として収縮させるのが好ましい。
まず、あらかじめ、メタノール:水=(1:9)(容量比)の混合液と、吸着材料とを転移温度より低温で混合すると、吸着材料中の共重合体は溶解して青色に呈色した水溶液が得られる(以下、溶液1という。)。これは共重合体中にメロシアニン構造がある程度安定に存在していることを示す。
このように転移温度より低温かつ暗所で、一度吸着材料を溶媒中に完全に溶解させることにより、溶媒が隅々に馴染んで行き渡る。
その後、この溶液1を暗所下のまま転移温度より高温にし、共重合体を不溶化させて析出物を得る(以下、溶液2という。)。
なお、暗所とは、金属イオンの有無にかかわらず、通常の室内光程度であれば問題はない。
次に、上記溶液2に、暗所下かつ高温を維持しつつ、2価鉛イオンの水溶液を添加して混合する。鉛イオンは式(2)のようにメロシアニン構造体に吸着されて錯体を形成する。高温により、共重合体は析出したまま錯形成する。共重合体による呈色は迅速に青色から黄色へ変化する。
もしも、錯形成工程終了後に、金属イオンと錯形成している吸着材料が溶解状態である場合、または析出が不完全である場合には、暗所下を維持したまま、転移温度より高く上記液を加熱する。これにより錯形成した共重合体(金属イオンと共重合体とが錯形成により吸着している吸着化合物)が不溶化して液中に充分な析出物が得られる。
暗所下かつ転移温度より高温を維持したまま、黄色の上記析出物を液分から分離して回収用の水槽へ移す。
分離した析出物を引き続き暗所下で水槽中の金属回収用溶媒と混合し、転移温度より低温に冷却する。冷却により析出物(錯形成した共重合体)は溶解し、黄色透明の溶液となる。
その後引き続き転移温度より低温で可視光(例えば>420nm)を照射する。可視光照射により、式(2)において左方向で示すように、メロシアニン構造体からスピロピラン構造体への光異性化と共に、共重合体と錯形成していた鉛イオンが溶液中に遊離する。このため溶液は無色透明を呈する。
なお、析出物可溶化と光照射とは、同時でも、析出物可溶化が先でも良い。
可視光照射を維持したまま溶液を転移温度より上に加熱すると、鉛イオンを遊離させたまま、共重合体が不溶化して液中に白色に析出する。これを可視光照射及び温度を維持しながら固液分離すると、液分には鉛イオンが残って回収され、一方、共重合体の析出物は再度新しい鉛イオンの水溶液に同様に混合して鉛イオン回収に使用できる。
以上のように、金属イオンの吸着および遊離は目視により色とその濃度で判断できる。
なお、上記実施態様及び表1中の呈色は、錯形成用にメタノール:水=(1:9)を用いた場合であり、例えば水のみを用いた場合は、上記吸着材料溶液調製工程の溶液1(表1の工程1)では赤紫色を、同工程の溶液2(表1の工程2)では白濁色を呈する。
また、暗所下とする際に、紫外光の照射で代用しても良く、この場合、次に可視光を照射する際は同時に紫外光照射を停止する。
また、逆に、熱応答性の相転移が、転移温度より低温で析出または収縮し、転移温度より高温で溶解または膨潤を示しても良いし、光応答性の相転移が、紫外光照射で吸着し、可視光照射または暗所で脱離しても良い。
(スピロピランアクリレート(SPA)の合成)
(1) 1´,3´,3´−トリメチル−6−ヒドロキシスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2´−インドール) 4.72g(0.0161mol)(ACROS ORGANICS社製、純度99%、Fw 293.37、品番42192-0050)をトルエン(関東化学株式会社製(蒸留後使用)、特級、純度99.5%、沸点110.625℃) 28.3ミリリットルに溶解させた。
(2) アクリル酸クロライド(東京化成工業株式会社製品番A0147(蒸留後使用)、Fw90.51) 1.59g(0.0176mol)を、トルエン(同上) 14.2ミリリットルに溶解させた。
(6) 分液ロート上層の液を、エバポレータによりトルエンを蒸発させ、次いで減圧乾燥させた。これによって得られた褐色固体をジクロロメタンに溶かしてカラムクロマトグラフィにかけ、不純物を分離した。カラムはシリカゲル(関東化学株式会社製、品番:9385-4M、Rf:0.86)、展開溶媒はジクロロメタンを使用した。
上記で得た単量体SPA:1´,3´,3´−トリメチル−6−(アクリロイルオキシ)スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2´−インドール) (分子量347.41)を66mg(0.19mmol)用意した。また、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)(分子量113.15)を566mg(5.0mmol)用意した。
他に、エタノール 3ミリリットル、重合開始剤AIBN 8.4mg(SPAとNIPAAmの合計モル数の1/100)、重合禁止剤ハイドロキノン(東京化成工業株式会社製、99.0%、品番H0186) 3.75mg、ジエチルエーテルを用意した。
前記フラスコ内に乾燥窒素をパスツールピペットから30分間フローさせて装置内から湿気および空気を除去した。
重合開始剤を加えて引き続き乾燥窒素を20分間フローさせた後、オイルバスでフラスコの温度を60℃に上げ、さらに3時間反応させた後、重合禁止剤を加えて反応を止めた。
同様に調製したA液に、さらにPb(II)を、SPA:2価の鉛イオンPb2+のモル濃度比が、1:10(鉛イオン濃度が0.01mM)となるように過塩素酸鉛三水塩の形態で添加した(B液)。
A液およびB液それぞれを、撹拌しながら10℃〜30℃における560nmでの光透過率を測定したグラフを図2に示す。図2中、A液を破線、B液を実線で示す。図2に示すように、A液、B液いずれも、25℃を境にして高温側では析出し、低温側では溶解した。
Pb2+の40μM水溶液に、共重合体P(SPA−NIPAAm)溶液を、Pb2+と共重合体が同モル濃度比となるように添加した(C液)。
前記C液を、暗所下で、10℃から40℃まで昇温後にろ過してろ液を得た。このろ液のSWVを暗所下10℃にて行った。結果のグラフを図4の(b)に示す。
前記C液を、可視光を照射下で、同様に昇温後ろ過してろ液を得た。このろ液のSWVを暗所下10℃にて行った。結果のグラフを図4の(c)に示す。
図4(a)に示すように、Pb2+の40μM水溶液の還元電位は−0.504V、還元電流値は4.74μAであった。(b)に示すように、暗所下でC液の昇温ろ過した溶液の還元電流値は0.99μAとなり、また検量線から算出したこの溶液中のPb2+濃度は2.24μMであり、吸着率は95%であった。(c)に示すように、可視光照射下でC液の昇温ろ過した溶液の還元電流値は2.87μAとなり、検量線から算出したこの溶液中のPb2+濃度は18.4μMであり、脱離効率は40%であった。
この光応答性錯形成は、SWVにより可逆的に観測された。
別に、紫外可視吸収スペクトル測定及びSWVとの組み合わせからも、光可逆性性錯形成が確認された。
以上より、共重合体P(SPA−NIPAAm)溶液の可逆的相転移が確認できた。
Claims (16)
- 可溶性物質溶液中で可溶性物質の吸着及び脱離の転移を光照射の有無により可逆的に示す光応答性と、溶解及び析出、もしくは膨潤及び収縮の転移を温度により可逆的に示す熱応答性とを有し、前記溶液中の可溶性物質は金属イオン、金属錯イオンまたは水素イオンである光および熱応答性吸着材料であって、
下式(a)に示すセグメントを含む共重合体を含み、
前記共重合体は、水素結合性溶媒中で、光照射の有無により前記(a)に示すセグメントが前記可溶性物質の吸着と脱離とを可逆的に示す
ことを特徴とする光および熱応答性吸着材料。
- 前記金属は鉛、亜鉛、銅、ニッケル、パラジウム、リチウム、カドミウム、砒素、クロム、水銀、ベリリウム、バナジウム、マンガン、コバルト、鉄、金、銀、白金から選ばれる請求項1記載の光および熱応答性吸着材料。
- 前記共重合体は、水素結合性溶媒中で、温度の変動により不溶性または難溶性と、可溶性とを可逆的に示す請求項1または2記載の光および熱応答性吸着材料。
- 前記共重合体は、架橋剤を含んでなり、水素結合性溶媒中で温度の変動により膨潤と収縮とを可逆的に示す請求項1または2記載の光および熱応答性吸着材料。
- 前記共重合体が、1´,3´,3´−トリメチル−6−(アクリロイルオキシ)スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2´−インドール)と、N−イソプロピルアクリルアミドとを含む単量体の共重合体である請求項5記載の光および熱応答性吸着材料。
- 請求項1〜6のいずれか記載の光および熱応答性吸着材料溶液を、暗所下かつ前記吸着材料の転移温度より低い温度で得る工程と、
前記吸着材料の溶液を暗所下かつ転移温度より高温に加熱して吸着材料中の共重合体を液中に析出させ、引き続き析出した該共重合体と添加された金属イオンとを液中で錯形成させる工程または、
前記吸着材料の溶液中で暗所下かつ転移温度より低温で、共重合体と添加された金属イオンとを錯形成させ、引き続き前記錯形成した共重合体を転移温度より高温に加熱して液中に析出させる工程と、
前記析出させた錯形成した共重合体を引き続き暗所下高温で液から分離する工程と、
前記分離した共重合体を暗所下溶媒中で転移温度より低温に冷却して溶解させて溶液とする工程と、
転移温度より低温で溶液に可視光を照射して金属イオンを共重合体から遊離させる工程と、
引き続き可視光を照射しながら溶液を転移温度より高温に加熱して共重合体を析出させる工程と、
引き続き高温で可視光を照射しながら前記析出させた共重合体を溶媒から分離する工程とを含むことを特徴とする可溶性物質の回収方法。 - 前記錯形成させる工程では、金属イオン水溶液と、光および熱応答性吸着材料の水素結合性溶媒の溶液とを混合する請求項7記載の可溶性物質の回収方法。
- 請求項1〜6のいずれか記載の光および熱応答性吸着材料を用いて、可溶性物質を含む溶液から前記可溶性物質を回収用溶媒中へ回収することを特徴とする可溶性物質の回収方法。
- (A)光および熱応答性吸着材料中の共重合体と可溶性物質とを、液中で吸着させて吸着化合物を得る工程と、
(B)前記吸着化合物を液から固液分離する工程と、
(C)分離した吸着化合物を回収用溶媒へ添加する工程と、
(D)可溶性物質と共重合体とを光応答性により遊離させる工程と、
(E)共重合体を回収用溶媒から取り出す工程と
を含む請求項9記載の可溶性物質の回収方法。 - 前記可溶性物質と共重合体とを遊離させる工程(D)では、吸着材料の転移温度より低温で回収用溶媒中に溶解または膨潤している吸着化合物に、可視光を照射して遊離させる請求項10記載の可溶性物質の回収方法。
- 前記工程(A)から工程(C)までを暗所下で行い、
前記工程(B)では転移温度より高温で液中に析出している前記吸着化合物を、固液分離し、
前記工程(C)では、転移温度より低温で吸着化合物を回収用溶媒に溶解させ、
さらに、前記工程(E)では、可視光を引き続き照射しながら、回収用溶媒を転移温度より高温に加熱して溶解していた共重合体を析出させ、次いで固液分離する請求項10または11記載の可溶性物質の回収方法。 - 前記工程(A)から工程(C)までを暗所下で行い、
前記工程(E)では、可視光を引き続き照射しながら、膨潤または収縮している遊離の共重合体を固液分離で取り出す
請求項10または11記載の可溶性物質の回収方法。 - さらに工程(A)後に、暗所下で、得られた前記吸着化合物を転移温度より高温に加熱して液中に析出させる工程を含むか、または
工程(A)前に、暗所下で、前記共重合体が溶解している溶液を転移温度より高温に加熱して共重合体を析出させる工程を含む請求項10、11、12のいずれか記載の可溶性物質の回収方法。 - 前記工程(A)では、可溶性物質の水溶液と、前記光および熱応答性吸着材料の水素結合性溶媒の溶液とを混合する請求項10、12、13のいずれか記載の可溶性物質の回収方法。
- 前記回収する可溶性物質が金属イオン、金属錯イオンまたは水素イオンであり、前記金属は鉛、亜鉛、銅、ニッケル、パラジウム、リチウム、カドミウム、砒素、クロム、水銀、ベリリウム、バナジウム、マンガン、コバルト、鉄、金、銀、白金から選ばれる請求項9〜15のいずれか記載の可溶性物質の回収方法。
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