JP4732694B2 - ナノカーバイド析出強化超高強度耐食性構造用鋼 - Google Patents

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Description

(関連出願との相互参照)
本国際出願は2002年2月8日出願の米国特許出願第10/071,688号に基づき、これは以下の仮出願に基づき、これらは参照することにより本発明の一部をなし、かつそれらに対する優先権が主張される、「Nano−Precipitation Strengthened Ultra−High Strength Corrosion Resistant Structural Steels」と題する2001年2月9日出願の米国特許出願No.60/267,627号、および「Nano−Precipitation Strengthened Ultra−High Strength Corrosion Resistant Structural Steels」と題する2001年9月21日出願の米国特許出願No.60/323,996号。
主な様態において、本発明は、ナノスケールサイズのカーバイド析出、特にMC析出を特徴とする、超高強度および耐食性を有するコバルト、ニッケル、クロムステンレスマルテンサイト鋼合金に関する。
航空宇宙および他の高性能構造物における主要構造部品は、他の材料の使用に伴う重量、サイズおよび、場合によっては、経費のペナルティが重いため、ほとんど排他的に超高強度鋼で作製される。しかしながら、少なくとも1654.7MPaから2068.4MPaの範囲の引張強さを有する超高強度鋼は一般的な耐食性に劣り、かつ水素に敏感で環境脆化し易い。
したがって、航空宇宙および他の構造用鋼構成部品における一般的な耐食性を提供するため、部品のカドミウムメッキが典型的に用いられ、耐摩耗性が必要なときには、硬質クロムメッキが主に用いられる。これらのコーティングは、経費、製造、環境および信頼性の観点から不利である。したがって、超高強度鋼合金の設計または発見における目標は機械的欠損または強度の減少なく、カドミウムおよびクロムコーティングの必要性を排除することである。主題発明の合金が目的とする実績の1つは、約1654.7MPaを上回る引張強さを有し、カドミウムコーティングを必要とせず、かつクロムメッキまたは他の保護および耐摩耗コーティングなしに耐摩耗性を示すステンレスまたは耐食鋼で非ステンレス構造用鋼を置き換えることである。
最も広範に航空宇宙構造用途で用いられる超高強度鋼の1つは、300M鋼である。この合金は、本質的には、僅かに高い第I段階焼き戻し温度が得られるように改質され、それにより処理の間に導入される脆化性水素の加熱脱ガスを可能とする、4340鋼である。本発明の一部をなす、Aerospace Material Specification AMS 6257A[SAE International、 Warrendale, PA, 2001]は、航空宇宙用途における300M鋼の使用のほとんどをカバーする。この仕様では、最小引張り特性が、引張強さ(UTS)1930.5MPa、降伏強さ(YS)1585.8MPa、伸び8%および30%の断面減少率である。本発明の一部をなす、平均平面歪みモードI破壊靱性は、
57.1MPa・m 1/2
である[Philip, T. V. and T. J. McCaffrey, Ultrahigh−Strength Steels, Properties and Selection: Irons, Steels, and High−Performance Alloys, Materials Park, OH, ASM International, 1: 430−448, 1990]。3.5質量%塩化ナトリウム水溶液中での応力腐食割れ耐性は、
11.0MPa・m 1/2
と報告されている。
300M鋼の高い引張強さは、航空宇宙システム、例えば、着陸装置における軽量構造構成部品の設計を可能にする。しかしながら、一般的な耐食性の欠如はカドミウムコーティングを必要とし、低い応力腐食割れ耐性は環境脆化のため重大な現場での破壊を生じる。
本発明の一部をなす、析出強化ステンレス鋼、主として15−5PH、[AMS 5659K, SAE International, Warrendale, PA, 1998]も、構造用航空宇宙部品において用いることができるが、典型的には、その低強度のために重量ペナルティが大きくない低負荷用途においてのみ用いることができる。耐食性はそのような合金に十分なものであり、それ故カドミウムメッキを排除することができるが、最大強度H900処理における15−5PHの最小引張り特性は僅かに1310.0MPa UTSおよび1172.1MPa YSである。これは強度制限されていない構成部品への適用を制限する。
本発明の一部をなす、別の析出強化ステンレス鋼、Carpenter Custom 465(商標)鋼[Alloy Digest, SS−716, Materials Park, OH, ASM International, 1998]は、金属間化合物の析出を用い、1861.6MPaを僅かに下回る最大UTSに到達する。その強度レベルで、本発明の一部をなす、Custom 465(商標)鋼は、約0.69kg−mの低シャルピーVノッチ衝撃エネルギーを有する[Kimmel, W. M., N. S. Kuhnら, Cryogenic Model Materials, 39th AIAA Aerospace Sciences Meeting & Exhibit, Reno, NV, 2001]。ほとんどの構造的用途について、Custom 465(商標)鋼は、適切なシャルピーVノッチ衝撃耐性を維持するため、そのUTSを1861.6MPa未満に制限する条件において用いなければならない。
1861.6MPaまでの最高強度レベルに到達する幾つかの二次硬化ステンレス鋼が開発されている。これらは米国特許第Re.26,225号、第3,756,808号、第3,873,378号、および第5,358,577号に開示されている。これらのステンレス鋼は、耐食性を維持するためにより高いクロムレベルを用いており、したがって、強度を妥協している。これらの合金の主な特徴は、二次硬化の間に残留され、かつ形成される、多量のオーステナイトである。このオーステナイトは合金の流動作用を変え、それらは1861.6MPaという強さのUTSを達成し得るものの、それらの降伏強さは1379.0MPa以下である。この降伏強さと引張強さとの間の大きな格差は、これらの鋼を用いることができる用途を制限する。したがって、少なくとも約1585.8MPaの降伏強さ、および少なくとも約1930.5MPaの引張強さを有する超高強度非腐食性鋼合金に対する必要性が依然として存在する。
(発明の要約)
簡潔に述べると、本発明は、質量%で約0.1から0.3%の炭素(C)、8から17%のコバルト(Co)、4から8%のニッケル(Ni)、6%を上回り、かつ11%未満のクロム(Cr)、および3%未満のモリブデン(Mo)少量のSi、Cu、Mn、Nb、V、Ta、W、Ti、Zr、希土類およびB含む他の元素添加物、残部鉄がFeおよび不可避不純物とからなり、主として、成分の選択と量および処理プロトコルの結果として超高強度および非腐食性物理特性を有するマルテンサイト相の状態であるように処理されたステンレス鋼合金からなる。
主題発明の合金は、約2068.4MPaの引張強さ(UTS)を約1585.8MPaの降伏強さ(YS)と共に達成することができ、質量%で約6%および約11%未満、好ましくは、約10%未満のクロムを上回る耐食性も提供する。本発明の合金は、現在はカドミウムコートされ、かつ航空宇宙用途において用いられる構造鋼の観察される機械的特性およびステンレス鋼の腐食特性の組合せを、特別なコーティングまたはメッキなしに提供する。記載される合金の高度に効率的なナノスケールカーバイド(MC)強化は、クロムを酸化して不動態化酸化膜として供給するナノスケールカーバイドの能力によって耐食性を改善しつつ、より少ない炭素および合金含量で超高強度をもたらす。単一の材料におけるこの超高強度および耐食特性の組合せは、現在の構造用鋼に関連する重量ペナルティなしに、カドミウムコーティングの必要性を排除する。加えて、主題発明の合金は、それらがもはや環境からの保護に信頼のおけないコーティングに頼ることがないため、環境脆化による現場での破壊を減少させる。
したがって、本発明の目的は、新規クラスの超高強度耐食性構造用鋼合金を提供することである。
本発明のさらなる目的は、腐食に耐えるためにメッキまたはコーティングを必要としない超高強度耐食性構造用鋼合金を提供することである。
本発明の別の目的は、コバルト、ニッケルおよびクロム合金元素を他の元素との組合せで有し、それにより合金が耐食性である超高強度耐食性構造用鋼合金を提供することである。
本発明のさらなる目的は、約1654.7MPaを上回り、好ましくは、約1930.5MPaを上回る引張強さ(UTS)および約1379.0MPaを上回り、好ましくは、約1585.8MPaを上回る降伏強さ(YS)を有する超高強度耐食性構造用鋼合金を提供することである。
本発明の別の目的は、ラスマルテンサイトミクロ組織と、結晶粒組織におけるMCナノスケールサイズ析出物を特徴とし、他の、x>2であるMC析出物が一般に可溶化されている、超高強度耐食性構造用鋼合金を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、超高強度および非腐食性を維持しながら、容易に加工して構成部品パーツおよび物品を形成することができる超高強度耐食性構造用鋼合金を提供することである。
本発明のさらなる目的は、非常に望ましい強度および非腐食性を有する合金ミクロ組織の創出を可能にする、開示されるステンレス鋼合金の処理プロトコルを提供することである。
これらの、および他の目的、利点および特徴は以下の詳細な説明に記載される。
(発明の詳細な説明)
以下の詳細な説明において、以下の図を含んでなる図面が参照される。
本発明の鋼合金は、様々な物理的特徴および処理能力を示す。これらの特徴および能力が一般基準として確立され、続いて、そのような鋼合金を創出してこれらの基準を満足するのに適する元素の組合せ、および処理工程が確認された。図1は、本発明の合金の処理/構造/特性/性能の関係を示すシステムフローのブロック図である。用途(例えば、航空宇宙構造物、着陸装置、スポーツ用品、ツール等)に望ましい性能が必要とされる一組の合金特性を決定する。本発明の合金は、望ましい特性の組合せを達成し、かつ図1の左に示される連続処理工程を通して評価することのできる構造特性を示す。以下は合金の物理的特性および処理能力または特徴の基準である。この発明に関連する分析と実験技術の説明、並びに一般に本発明を元素の領域と範囲、物理的特徴並びに処理機能で定義する合金の例がこれに続く。
物理的特徴
本発明の最も好ましい態様の物理的特徴または特性は、一般には、以下の通りである。
直線分極による測定で15−5PH(H900処理)に相当する耐食性300M合金に相当するか、またはそれを上回る強度、すなわち
引張強さ(UTS)≧1930.5MPa
降伏強さ(YS)≧1585.8MPa
伸び(EL)≧8%
断面減少率(RA)≧30%
応力腐食割れ耐性(KISCC)≧16.5MPa・m 1/2
IC/YS≧0.033m 1/2
耐摩耗性および耐疲労性のために、≧67ロックウェルC(HRC)まで表面硬化可能。
耐疲労性/耐腐食疲労性が最大になるための最適なミクロ組織の特徴。
処理性の特徴
主題発明の主な目的は、上に列挙される目的の物理特性を有し、かつそれらの合金を有用かつ実用的なものにする処理性を有する合金を提供することである。所定の用途のための製造の規模並びに得られる清浄性および品質に関連する幾つかの可能な処理方針に伴い、主題発明の合金の広範囲のプロセスとの適合性が望ましく、したがって、それが本発明の特徴である。
この合金の主な目的および特徴は溶融の実施、例えば、真空誘導溶解(VIM)、真空アーク再溶解(VAR)、およびエレクトロスラグ再溶解(ESR)並びに他の変形、例えば、真空エレクトロスラグ再溶解(VSR)との適合性である。主題発明の合金は、他のプロセス、例えば、大気溶解および粉末冶金によって製造することもできる。重要なことは、上記プロセスの凝固条件下で制限された凝固ミクロ偏析を示す合金の挙動である。主題発明の合金中の適切な元素含量を選択することにより、処理の間に二次デンドライトにわたって凝固から生じる組成の変動を最小化することができる。許容し得る変動は、商業的に実現可能な温度、通常は1100℃を超えて合金の初期溶融までの金属温度で、合理的な処理時間、典型的には72時間未満、好ましくは36時間未満で均質化することができる合金を生じる。
主題発明の合金は、均質化後の熱間加工を、現行の産業上の実務に典型的な温度および加工度の制約内で達成することができるような合理的な熱間延性も有する。主題発明の合金に対して典型的な熱間加工は、3対1を上回り、好ましくは、5対1を上回る断面減少率を可能にするものでなければならない。加えて、インゴットの初期熱間加工は、1100℃未満で可能であるべきであり、望ましい製品サイズへの最終熱間加工は、950℃未満の温度で可能でなければならない。
溶体化処理に関する目的には、微細スケール結晶粒微細化分散物(すなわち、MC)、及び、本発明の一部をなすASTM E112[ASTM, ASTM El12−96, West Conshohocken, PA, 1996]によるASTMグレインサイズ5番よりも一般には小さなグレインサイズを維持しつつ、すべての一次合金カーバイド(すなわち、MC、ここでx>2)を完全に固溶させる目標を含む。したがって、本発明の合金では、オーステナイト相領域への溶体化処理の間、前処理の間に形成される粗大スケールの合金カーバイドを固溶し、次いで生じる固溶炭素を焼き戻しの間の析出強化に利用可能である。しかしながら、同じプロセスの間、オーステナイト結晶粒が粗大になり、それにより強度、靱性および延性が低下することがある。本発明の合金を用いると、そのような結晶粒粗大化は結晶粒界を固定するMC析出物によって減速され、かつ、溶体化処理温度が増加するに伴い、この結晶粒粗大化を回避または減少させるのに必要なこの結晶粒微細化分散物の量が増加する。主題発明の合金は、850℃から1100℃、好ましくは950℃から1050℃の範囲の合理的な溶体化処理温度で、効率的な結晶粒微細化分散物を維持しながら、全ての粗大スケールのカーバイド、すなわち、x>2であるMCを、一般には、完全に固溶する。
溶体化処理の後、主題発明の合金から製造される構成部品を、典型的には、マルテンサイトが形成される温度未満に急速に冷却、すなわち、急冷する。このプロセスの好ましい結果は、本質的に全てマルテンサイトからなり、残留オーステナイト、他の変態生成物例えばベイナイトもしくはフェライト、またはこのプロセスの間残存もしくは形成される他のカーバイド生成物を事実上保持しないミクロ組織である。冷却される構成部品の厚みおよび冷却媒体、例えば、油、水、または空気が、このタイプのプロセスの冷却速度を決定する。冷却速度が増加するに従い、他の非マルテンサイト生成物形成の危険性は減少するが、構成部品における歪みが潜在的に増加し、したがって、処理することができる部分の断面厚みが減少する。主題発明の合金は、低温、または好ましくは室温に冷却されるとき、一般には、穏やかな速度での冷却または急冷の後、76.2mm未満、好ましくは152.4mm未満の断片サイズで完全にマルテンサイトである。
冷却または急冷の後、主題発明の合金を用いて製造される構成部品は、他のカーバイド生成物、すなわち、x>2である の形成を回避しながら、合金中の炭素が整合性ナノスケールMCカーバイドを形成する温度範囲および時間で焼き戻すことができる。この時効処理または二次硬化プロセスの間、構成部品は加熱炉の出力および構成部品断面のサイズによって決定される速度で処理温度に加熱されて合理的な時間保持された後、室温に冷却または急冷される。
前の溶体化処理がオーステナイトの残留の回避に無効である場合、この焼き戻しプロセスは複数の工程に分割することができ、ここで、各々の焼き戻し工程には室温への冷却または急冷および、好ましくは、引き続く低温への冷却を経て、マルテンサイトを形成する。この焼き戻しプロセスの温度は、典型的には、200℃から600℃、好ましくは、450℃から540℃であり、保持時間は24時間未満、好ましくは、2から10時間である。望ましいプロセスの結果は、このプロセスの早期段階で形成する一過性セメンタイトがなく、かつ処理時間が過度に長期化した場合に析出し得る他の合金カーバイドを含まない、ナノスケールMCカーバイド分散物によって強化されたマルテンサイトマトリックス(一般にはオーステナイト非含有)である。
本発明の合金の重要な特徴は、その二次硬化反応の達成に用いられる高い焼き戻し温度に関連する。明確な目標は、耐食性のためのカドミウムメッキを回避することであるが、本発明の合金から作製される多くの構成部品は、製造またはオーバーホールの間に電気メッキプロセス、例えば、ニッケルまたはクロムを必要とすることがある。電気メッキプロセスはミクロ組織に水素を導入するが、これは脆化につながる可能性があり、メッキの後にその部分を高温に露出することによってベークしなければならない。本発明の合金は、合金の強度を低下させることなく、ほぼそれら本来の焼き戻し温度と同程度の高さの温度でベークすることができる。通常用いられる4340および300M合金と比較して、本発明の合金においては焼き戻し温度が有意に高いため、このベークアウトプロセスはより迅速かつ確実に達成されうる。
耐摩耗性、耐食性、および装飾のための特定の表面修飾技術、例えば、物理的気相成長法(PVD)、または表面硬化技術、例えば、気体もしくはプラズマ窒化が、500℃のオーダーの温度で数時間のオーダーの時間、任意に行われる。主題発明の合金の別の特徴は、熱処理プロセスが、これらの表面コーティングまたは硬化プロセスに典型的な温度およびスケジュールに適合することである。
主題発明の合金で作製される構成部品は、典型的には、溶体化処理および時効処理の前に製造またはマシニングされる。これらの製造およびマシニング操作は、柔らかく、かつ材料が除去されたときに望ましい削り屑形成を示す材料を必要とする。したがって、主題発明の合金は、好ましくは、熱間加工プロセスの後、それらが製造者に供給される前に焼きなまされる。この焼きなましプロセスの目標は、過剰なオーステナイトの促進なしに、主題発明の合金の硬度を低下させることである。典型的には、焼きなましは、合金を600℃から850℃の範囲、好ましくは、700℃から750℃の範囲で24時間未満、好ましくは、2から8時間加熱し、室温まで徐々に冷却することによって達成される。場合によって、複数工程の焼きなましプロセスがより最適な結果をもたらす。そのようなプロセスにおいては、本発明の合金を一連の温度で、中間冷却工程(1つもしくは複数)によって分離されていてもいなくてもよい様々な時間、焼きなますことができる。
マシニング、溶体化処理および時効処理の後、主題発明の合金で作製される構成部品は、部品の望ましい最終寸法を維持する研磨工程を必要とすることがある。表面の研磨は、高速セラミックホイールに対する摩耗作用によって部品から材料を除去する。部品の表面の加熱による構成部品に対する損傷、および材料の摩耗による研磨ホイールに対する損傷は、回避する必要がある。これらの厄介な問題は、主として、合金中の残留オーステナイト含量を低下させることによって回避することができる。この理由、および上述の他の理由により、主題発明の合金は、溶体化処理の後、オーステナイトをほとんど残留しない。
主題発明の合金から製造される多くの構成部品は、様々な溶接プロセス、例えば、ガスアーク溶接、水中アーク溶接、摩擦攪拌溶接、電子ビーム溶接等による接合を必要とすることがある。これらのプロセスは、処理の後に、溶接の溶融部または熱影響部において凝固して延性になる材料を必要とする。合金が溶接および熱影響部内で経験する熱履歴を制御するのに、予備加熱および後加熱を用い、溶接延性を促進することができる。延性溶接の主な駆動源は、材料中のより低い炭素含量であるが、これは強度も制限する。主題発明の合金は非常に効率的なナノスケールMCカーバイドを用いて、それらの強度を達成しており、したがって、300M鋼のような鋼よりも低い炭素含量で所定レベルの強度を達成することができ、結果的にこれが溶接性を促進する。
ミクロ組織および組成の特徴
これらの合金の設計は最小限のCr含量で要求される耐食性を達成するが、これは高Cr含量が他の望ましい特性を幾つかの方法で制限するためである。例えば、高Crの結果の1つはマルテンサイトM温度の低下であり、これは次に、他の望ましい合金元素、例えば、Niの含量を制限する。高Cr濃度は過剰な凝固ミクロ偏析も促進し、これは高温均質化処理では排除が困難である。高Crはカーバイド析出強化に必要なCの高温固溶度も制限し、これはグレインサイズ制御が困難になる高溶体化処理温度の使用を招く。したがって、本発明の合金の特徴は、質量%で約6%を上回り、かつ約11%未満(好ましくは、約10%未満)の範囲のCrの、構造的強度と共に耐食性を達成をするものと記載される他の元素との組合せでの利用である。
合金の別の特徴は、最小限の炭素含量で要求されるカーバイド強化を達成することである。Crと同様に、CはM温度を大幅に低下させ、かつ固溶温度を上昇させる。高C含量は溶接性も制限し、結晶粒界でのCrカーバイド析出に関連する腐食の問題を生じ得る。高Cは、機械加工性を強化するために焼きなましによって達成することができる軟化の程度も制限する。
たった今論じた主な特徴の両者はCoの使用によって強化される。CoおよびCrの熱力学的相互作用は不動態化の間に形成される酸化膜へのCrの分配を強化し、したがって、よりCrの多い鋼に相当する腐食保護を提供する。Coは、析出熱力学的駆動力の増大によって、および転位の回復を遅延させて転位上へのカーバイドの不均一核形成を促進することによって、焼き戻しの間のカーバイド析出を引き起こす。したがって、記載されたようなCrおよび他の微量成分元素を伴う、質量%で約8%から17%の範囲のCoと組み合わされた、質量%で約0.1%から0.3%の範囲のCは、耐食性および超高強度を伴う合金を提供する。
耐食性および超高強度の望ましい組合せは、カーバイド強化分散物の微細化をナノ構造レベル、すなわち、直径約10ナノメートル未満、好ましくは、約5ナノメートル未満まで低下させることによっても改良することができる。他の強化析出物、例えば、マルエージング鋼において用いられる金属間化合物相と比較して、MC合金カーバイドの比較的高い剪断率が強化に最適な粒子サイズを僅かに約3ナノメートルの直径まで低下させる。このレベルへのカーバイド析出サイズへの微細化は、非常に効率的な強化分散物を提供する。これは合金化によって十分に高い熱動力学的駆動力を得ることにより達成される。この微細化はカーバイドを不動態化酸化膜と同じ長さスケールとし、カーバイド中のCrが膜形成に関与させることができるというさらなる利点をもたらす。したがって、カーバイド形成が耐食性を大幅に低下させることはない。ナノスケールカーバイド分散物のさらなる利点は、応力腐食割れ耐性の強化に有効なカーバイド界面での水素捕獲である。効率的なナノスケールカーバイド強化は、焼き戻しの間の窒化により、その系を、耐食性の重大な喪失を伴わないさらなる効率的な強化のための同じサイズスケールのM(C,N)炭窒化物を生成し、十分表面硬化に適するものとする。そのような窒化は、70HRCに相当する1100ビッカース硬度(VHN)という高さの表面硬度を達成することができる。
焼きならしおよび溶体化処理の間に結晶粒の固定を維持し、かつ延性破壊の間のミクロボイド核形成に抗する結晶粒微細化MCカーバイド分散物の最適分散による結晶粒微細化によって、靱性がさらに強化される。溶融脱酸素の実務は、この目的のためのTiに富むMC分散物の形成を助けるように制御されるほか、破壊の間に一次ボイドを形成する酸化物および酸硫化物介在物粒子の数密度を最小にするように制御される。最適条件下では、利用可能なTi含量から質量バランスによって決定されるMCの量は、合金C含量の10%未満を占める。他の要求の拘束内でのNi含量の増加は、脆性破壊に対する耐性を強化する。析出駆動力の制御によるMC粒子の微細化は、MCに先立って析出し、かつミクロボイド核形成によって破壊靱性を制限するFeCセメンタイトカーバイドを完全に固溶するために、超高強度をMC析出の完了で維持することを可能にする。このセメンタイト固溶は、本発明の一部をなす、Montgomery[Montgomery, J. S. and G. B. Olson, MC Carbide Precipitation in AF1410, Gilbert R. Speich Symposium: Fundamentals of Aging and Tempering in Bainitic and Martensitic Steel Products, ISS−AIME, Warrendale, PA, 177−214, 1992]によって記載される技術を用いて測定されるMC相の分率による評価で、MCが合金C含量の85%を占めるときに有効に完了したものと考えられる。靱性を制限し得る他の相、例えば、他のカーバイド(例えば、M23、MCおよびM)およびTCP金属間化合物相(例えば、σおよびμ相)の析出は、それらの形成の熱力学的駆動力の拘束によって回避される。
水素の拡散を遅くするナノスケールM 2 Cカーバイドによる効率的な水素捕獲に加えて、旧オーステナイト粒界への不純物および合金元素の偏析を制御して水素脆化による粒界破壊を防止することにより、水素応力腐食に対する耐性がさらに強化される。これは、望ましくない不純物、例えば、PおよびSの含量を低レベルに制御し、かつ合金中のそれらの残存量を安定な化合物、例えば、LaSまたはCeSにゲッターリングすることによって促進される。粒界結合は、熱処理の間の結合強化元素、例えば、B、MoおよびWの偏析を考慮することによってさらに強化される。応力腐食割れ耐性を促進するこれらの要素は腐食疲労に対する耐性も強化する。
これらの条件の全ては発見された合金のクラスによって過度に高くはない溶体化処理温度を維持しながら達成される。焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によって測定されるマルテンサイトM温度も、ラスマルテンサイトミクロ組織を確立し、かつ、降伏強さを他の方法で制限し得る残留オーステナイトの含量を最小化するのに十分な高さで維持される。
好ましい処理技術
これらの合金は様々なプロセス、例えば、鋳造、粉末冶金またはインゴット冶金によって製造することができる。合金成分は大気溶解のようなあらゆる通常の溶融プロセスによって溶融することができるが、より好ましくは、真空誘導溶解(VIM)によって溶融することができる。その後、合金を均質化および熱間加工することができるが、改良された破壊靱性および疲労特性を達成するため、二次溶融プロセス、例えば、エレクトロスラグ再溶解(ESR)または真空アーク再溶解(VAR)が好ましい。より高度な破壊靱性および疲労特性を達成するため、均質化および熱間加工に先立ってさらなる再溶融操作を用いることができる。いかなる場合においても、成分の組合せにより溶融プロセスで合金が最初に形成される。
合金は、次に、熱間加工に先立って均質化することができ、または加熱して直接熱間加工することができる。均質化が用いられる場合、合金を約1100℃もしくは1110℃もしくは1120℃から1330℃もしくは1340℃もしくは1350℃の範囲または、ことによると、1400℃もの金属温度に少なくとも4時間の時間加熱して可溶性元素およびカーバイドを固溶し、かつその組織を均質化もすることによって行うことができる。合金の設計基準の1つはミクロ偏析の少なさであり、したがって、合金の均質化に必要な時間は、典型的には、他のステンレス鋼合金よりも短い。適切な時間は均質化金属温度範囲で6時間以上である。一般には、均質化温度での均熱時間は72時間を上回るまでに及ぶべきではない。均質化温度範囲で12から18時間が非常に適することが見出されている。典型的な均質化金属温度は約1240℃である。
均質化の後、典型的には、合金を熱間加工する。合金は、これらに限定されるものではないが、熱間圧延、熱間鍛造もしくは熱間押出しまたはそれらのあらゆる組合せによって熱間加工することができる。合金中に既に存在する熱を利用するため、均質化処理の直後に熱間加工を開始することが一般的である。MCカーバイドの析出による組織の結晶粒微細化を確かなものとするため、最終熱間加工金属温度が実質的に開始熱間加工金属温度を下回ることが重要である。第1熱間加工工程の後、典型的には、最終的な望ましいサイズおよび形状まで熱間加工を継続するため、合金を再加熱する。再加熱金属温度範囲は約950℃もしくは960℃もしくは970℃から1230℃もしくは1240℃もしくは1250℃または、ことによると、1300℃という高さであり、好ましい範囲は約1000℃もしくは1010℃から1150℃もしくは1160℃である。再加熱金属温度はMCカーバイドのソルバス温度近傍であるか、またはほぼその温度であり、その目的は鋳造から残存するか、または先行する熱間加工の間に析出し得る可溶性成分を固溶または部分的に固溶することである。この再加熱工程は一次および二次相粒子を最小化または回避し、疲労亀裂進展抵抗および破壊靱性を改善する。
合金を連続的に熱間加工および再加熱するので、断面サイズが減少し、結果として、金属はより迅速に冷却する。最後には高再加熱温度を用いることがもはやできなくなり、より低い再加熱温度を用いなければならない。より小さい断面については、再加熱金属温度範囲は約840℃もしくは850℃もしくは860℃から1080℃もしくは1090℃もしくは1100℃または、ことによると、1200℃という高さであり、好ましい範囲は約950℃もしくは960℃から1000℃もしくは1010℃である。より小さい断面のためのより低い再加熱金属温度は他の(非MC)カーバイドのソルバス温度を下回るものであり、その目的は、それらが次の焼きならしまたは溶体化処理の間に迅速に固溶し得るように、再加熱の間のそれらの粗大化を最小限に止めるか、または防止することである。
最終ミル製品形態、例えば、棒鋼ストックおよび鍛造鋼ストックは、典型的には、消費者に出荷する前に焼きならしおよび/または焼き戻される。焼きならしの間、合金はMCカーバイドを除く全てのカーバイドのソルバス温度を上回る金属温度まで加熱され、その目的はそれに先立つ熱間加工の間に析出し得る可溶性成分を固溶し、グレインサイズを標準化することである、焼きならし金属温度範囲は約880℃もしくは890℃もしくは900℃から1080℃もしくは1090℃もしくは1100℃であり、好ましい範囲は約1020℃から1030℃もしくは1040℃である。適切な時間は1時間以上であり、典型的には、焼きならし温度での均熱時間は3時間を上回るまでに及ぶべきではない。その後、合金を室温に冷却する。
焼きならしの後、典型的には、引き続く消費者の処理、例えば、マシニングに適する硬度または強度レベルまで合金を焼きなます。焼きなましの間、合金を約600℃もしくは610℃から840℃もしくは850℃、好ましくは、700℃から750℃の金属温度範囲に少なくとも1時間の時間加熱し、MCカーバイドを除く全てのカーバイドを粗大化する。適切な時間は2時間以上であり、典型的には、焼きなまし温度での均熱時間は24時間以上にまでに及ぶべきではない。
典型的には、合金が消費者に納品されてその最終形態まで、またはその近くまで処理された後、それに、好ましくは約850℃もしくは860℃から1090℃もしくは1100℃、より好ましくは約950℃から1040℃もしくは1050℃の金属温度範囲で3時間未満の時間の溶体化処理を施す。溶体化処理の典型的な時間は1時間である。この溶体化処理金属温度はMCカーバイドを除く全てのカーバイドのソルバス温度を上回るものであり、その目的は先行する処理の間に析出し得る可溶性成分を固溶することである。これは、強度、破壊靱性および疲労耐性を強化しながら、結晶粒成長を阻止する。
溶体化処理の後、ミクロ組織を主としてラスマルテンサイト組織に変態し、かつ一次合金カーバイドの粒界析出を防止し、またはそれを最小限に止めるため、合金を十分迅速に室温に冷却することが重要である。適切な冷却速度は、断面の厚みに依存して、水、油、または様々な急冷ガスを用いることで達成することができる。
室温に急冷した後、合金に極低温処理を施すことができ、または焼き戻し温度まで直接加熱することができる。極低温処理はミクロ組織のラスマルテンサイト組織へのより完全な変態を促進する。極低温処理が用いられる場合、好ましくは、約−70℃未満で行われる。より好ましい極低温処理は約−195℃未満である。典型的な極低温処理は、約−60℃もしくは−70℃から−85℃もしくは−95℃の金属温度範囲である。別の典型的な極低温処理は、約−180℃もしくは−190℃から220℃もしくは−230℃の金属温度範囲である。通常、極低温での均熱時間は10時間を上回るまでに及ぶべきではない。極低温処理の典型的な時間は1時間である。
低温処理の後、または低温処理を省略する場合には急冷の直後に、合金を中間金属温度で焼き戻す。この焼き戻し処理は、好ましくは、約200℃もしくは210℃もしくは220℃から580℃もしくは590℃もしくは600℃、より好ましくは、約450℃から530℃もしくは540℃の金属温度範囲である。通常、焼き戻し温度での均熱時間は24時間を上回るまでに及ぶべきではない。この焼き戻し温度範囲で2から10時間が非常に適することが見出されている。この焼き戻し処理の間、ナノスケールMC強化粒子の析出が合金の熱的安定性を高め、温度および時間の異なる組合せを用いることによって強度および破壊靱性の様々な組合せを達成することができる。
MS温度がより低い本発明の合金に対しては、多段熱処理で残留オーステナイトを最小限に止めることによって強度および破壊靱性をさらに強化することが可能である。多段処理は、上記本文中に概述される極低温処理およびそれに続く熱処理の追加サイクルからなる。1つの追加サイクルで有益であり得るが、典型的には複数のサイクルがより有益である。
本発明の特定の合金における処理方針と相安定性との関係の一例が図2Aおよび2Bに示される。
図2Aは、表1に示されるように炭素含量が質量%で0.23%である本発明の合金2Cの平衡相を示す。
図2Bは、記載される合金2Cに関して用いられる処理系列を開示する。溶融処理工程によって溶融物を形成した後、約1220℃の単相(fcc)平衡温度を超える金属温度で合金を均質化する。この温度で全てのカーバイドが可溶化する。望ましいビレット、ロッドまたは他の形状を定義する鍛造は様々な複合カーバイドが形成され得る範囲への冷却を生じる。この鍛造工程は、少なくとも、MCカーバイドのみが平衡状態にある金属温度範囲((980℃から1220℃)に再加熱することによって反復することができる。
引き続く冷却(空冷)は、一般には、主にMCカーバイド、他の一次合金カーバイド、例えば、MおよびM23並びに、一般には、マルテンサイトマトリックスの形成を保持する。同じ金属温度範囲の焼きならしおよびそれに続く冷却は、MCカーバイドを保存しながら、MおよびM23一次カーバイドを固溶する。金属温度範囲600℃もしくは610℃から840℃もしくは850℃での焼きなましおよび冷却は硬度レベルをマシニングに対して合理的な値まで低下させる。焼きなましプロセスは、合金を大幅に強化するには大きすぎるが後の溶体化処理の間に容易に固溶させるのには十分小さい合金カーバイド中に炭素を析出させることにより、マルテンサイトを軟化する。構成部品パートの最終製造および適切な熱処理および仕上げのための合金製品の消費者への出荷がこのプロセスに続く。
典型的には、消費者は合金を望ましい形状に形成する。MCカーバイド温度範囲での溶体化処理および、それに続く、望ましいマルテンサイト構造を維持または形成する急冷がこれに続く。次に前述の焼き戻しおよび冷却を用いて望ましい強度および破壊靱性を得ることができる。
実験結果および例
一連のプロトタイプ合金を調製した。精錬プロセス用の溶融操作はLaおよびCe不純
物ゲッターリング添加を伴う二重真空溶解であるように選択した。置換型結晶粒界結合強
化元素、例えば、WおよびReは第1プロトタイプの作製においては考慮しなかったが、20ppmのBの添加をこの目的で含めた。脱酸素プロセスのため、Tiを脱酸素剤として添加し、TiC粒子を促進して結晶粒界を固定し、焼き戻しの前に溶体化処理の間の結晶粒成長を減少させた。
第1プロトタイプ中の主要合金元素は、C、Mo、およびV(MCカーバイド形成体)、Cr(MCカーバイド形成体および不動態化酸化膜形成体)、並びにCoおよびNi(様々な必要マトリックス特性用)。実際の合金組成および材料処理パラメータは、連鎖を考慮する全体的な設計統合および他所に記載される一組のコンピューターモデル、本発明の一部をなす[Olson, G. B、 “Computational Design of Hierarchically Structured Materials.”, Science 277, 1237−1242, 1997]によって決定した。以下は初期プロトタイプ手順の要約である。選択されたパラメータは図3−6において星印★によって示される。
Crの量は耐食性の要求およびCambellによって開発された不動態化熱力学モデル、本発明の一部をなす[Campbell, C, Systems Design of High Performance Stainless Steels, Materials Science and Engineering, Evanston, IL, Northwestern 243, 1997]によって決定した。Cの量は強度の要求および図3に示される相関によるMC析出/強化モデルによって決定した。53HRC硬度を達成するという目標に基づき、0.14質量%のC含量を選択した。焼き戻し温度およびMCカーバイド形成体MoおよびVの量は、適切なMC析出速度論で強度要求を満たし、1000℃の溶体化処理温度を維持し、かつミクロ偏析を回避するように決定した。図4および5は、最終VおよびMo含量を決定した方法を示す。1.5質量%Moおよび0.5質量%Vの最終含量を選択した。凝固ミクロ偏析のレベルは、予想されるインゴット処理の凝固冷却速度および関連デンドライトアーム間隔のための凝固シミュレーションによって評価する。CoおよびNiの量は、(1)焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によって測定されるMs温度に較正されたモデルを用いて少なくとも200℃のマルテンサイト開始温度が維持され、それ故に急冷後にラスマルテンサイトマトリックス組織を達成することができ、(2)効率的な強化のための高いMCカーバイド初期駆動力が維持され、(3)Ni含量を最大化することによってbcc劈開耐性が改善され、および(4)約8質量%以上のCo含量を維持して、転位の回復に対する十分な抵抗性を達成してMC核形成を促進し、かつマトリックスCr活性の増加による酸化膜へのCr分配が高まるように、決定する。図6は、それらの最終レベルに設定された他の合金元素量および焼き戻し温度と共に、上記4つの因子の最適化が、それぞれ、質量%で約13%および4.8%のCoおよびNi量の選択を生じることを示す。これらの材料組成および焼き戻し温度は、他の析出硬化Ni−Co鋼の過去の研究を参照し、MCおよび他のカーバイドと金属間化合物相との駆動力比を検査することによって微調整した。
1と命名される第1設計プロトタイプの組成が後の設計の反復と共に表1に示される。初期設計は以下の処理パラメータを含んでいた。
・不純物ゲッターリングおよびTi脱酸素を伴う二重真空溶解、
・バナジウムカーバイド(VC)形成により熱力学的平衡に従って制限される、1005℃の最小溶体化処理温度、および
・最適強度および靱性を達成する見積もり焼き戻し時間が3時間である、482℃の焼き戻し温度。
第1プロトタイプの評価(表1におけるエントリ1)は評価した全ての特性について有望な結果をもたらした。最も重大な欠点は、望ましいM温度より25℃から50℃低いこと、および目標を15%下回る強度レベルであった。次に、表1において2A、2Bおよび2Cと示される設計の第2系列を評価した。3つの第2反復試作品の全てが満足のいく変態温度をもたらし、第2反復の最良の機械的特性は合金2Cによって示された。後者の基本組成に基づき、表1において3A、3Bおよび3Cと呼ばれる合金の第3反復系列は、TiC、(Ti,V)C、およびNbCを比較して、結晶粒微細化MCカーバイドにおける微小変動を探索した。主なパラメータは、均質化温度での完全MC固溶度の束縛に影響を受ける、溶体化処理温度でのMC相分率および粗大化耐性であった。(Ti,V)Cを最適結晶粒微細化アプローチとして選択して、表1において4Aから4Gと呼ばれる第4反復設計系列は、(a)残留オーステナイト含量を最小化するマルテンサイト変態速度論の精密化、(b)破壊靱性を強化するためにMC析出強化の間のセメンタイトの完全固溶を促進する、競合MCカーバイドの安定性の増加、および(c)セメンタイトの析出を完全に回避し、かつ劈開耐性を高めるのに用いられる低温鉄(Fe)ベースMC析出強化を試験した。後者の2つの系列におけるカーバイド熱力学および速度論における変更にはWおよびSiの添加が含まれていた。
表1において5Bから5Fと呼ばれる合金の第5系列は、延性から脆性への遷移温度を低下することによって破壊靱性を改善するために合金に添加することができるNiの限度を試験した。Ni含量が質量%で約10パーセントに到達したとき、これらの組成の合金Msを室温未満に収めながら、各工程間に極低温冷却を伴う多段工程での合金の焼き戻しが残留オーステナイトの大部分をマルテンサイトに変換できることが見出された。これは、急冷後に完全にオーステナイト性である合金においてさえ、良好な強度特性を高Ni含量との組合せで達成して延性破壊挙動の制御を可能にする。鋼中の残留オーステナイトを最小化するのに複数回の焼き戻しが通常用いられているが、そのような高Ni含量および高オーステナイト含量を伴う合金においてその技術を有効に用いることができることは予期外のことであった。
表1において6Aから6Mと呼ばれる第6系列の合金は、最初の5つの系列において表される特徴を組み込むように決定され、本発明の好ましい態様と考えられる。したがって、記載される合金の適切な処理は本質的にマルテンサイト性の相を提供する。
以下は記載される実験および合金の要約である。
Figure 0004732694
(実施例1)
表1における合金1を152.4mm径電極に真空誘導溶解(VIM)し、次にそれを203.2mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。その材料を、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1200℃で72時間均質化し、鍛造および焼きなましをした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が175℃と測定された。
試験試料を機械加工し、1025℃で1時間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、482℃で8時間焼き戻しした。測定された特性を下記表2に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例2)
表1における合金2Aを152.4mm径電極に真空誘導溶解(VIM)し、次にそれを203.2mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1190℃で12時間均質化し、1120℃で開始して38.1mm角棒鋼に鍛造および圧延し、焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が265℃と測定された。
角棒鋼から試験試料を機械加工し、1050℃で1時間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、500℃で5時間焼き戻しし、空冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、500℃で5.5時間焼き戻しした。測定された特性を下記表3に列挙する。15−5PH(H900処理)の腐食速度の参照は同一条件下で試験した試料を用いて行った。この試験に対する15−5PH(H900処理)の平均腐食速度は毎年0.0066mm/yであった。
Figure 0004732694
引張り試料を角棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、焼き戻し工程の間に1時間の液体窒素(LN)処理を行うとともに496℃で4時間または6時間多段焼き戻しを行った。測定された引張り特性を下記表4に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例3)
表1における合金2Bを152.4mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを203.2mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1190℃で12時間均質化し、1120℃で開始して25.4mm径丸棒鋼に鍛造および圧延し、焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が225℃と測定された。
試験試料を丸棒鋼から機械加工し、1100℃で70分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、482℃で24時間焼き戻しした。測定された特性を下記表5に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例4)
表1における合金2Cを152.4mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを203.2mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1190℃で12時間均質化し、1120℃で開始して57.15mm角棒鋼に鍛造し、焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が253℃と測定された。
試験試料を角棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、498℃で8時間焼き戻しした。測定された特性を下記表6に列挙する。
Figure 0004732694
試験試料を角棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、498℃で12時間焼き戻しした。測定された特性を下記表7に列挙する。
Figure 0004732694
腐食試験試料を角棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、498℃で8時間焼き戻しし、空冷し、498℃で4時間焼き戻しした。測定された特性を下記表8に列挙する。15−5PH(H900処理)の腐食速度の参照は同一条件下で試験した試料を用いて行った。この試験に対する15−5PH(H900処理)の平均腐食速度は毎年0.0066mm/yであった。
Figure 0004732694
引張り試料を角棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、焼き戻し工程の間に1時間の液体窒素(LN)処理を行うとともに496℃で4時間または6時間多段焼き戻しを行った。測定された引張り特性を下記表9に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例5)
表1における合金3Aを152.4mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを203.2mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1260℃で12時間均質化し、1090℃で開始して57.15mm角棒鋼に鍛造し、焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が250℃と測定された。
試験試料を角棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、510℃で5時間焼き戻しした。測定された特性を下記表10に列挙する。
Figure 0004732694
試験試料を角棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、510℃で4時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に510℃でさらに4時間焼き戻しした。測定された特性を下記表11に列挙する。
Figure 0004732694
腐食試験試料を角棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、200℃で1時間焼き戻しした。測定された特性を下記表12に列挙する。15−5PH(H900処理)の腐食速度の参照は同一条件下で試験した試料を用いて行った。この試験に対する15−5PH(H900処理)の平均腐食速度は毎年0.0051mm/yであった。
Figure 0004732694
腐食試験試料を角棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、510℃で8時間焼き戻しした。測定された特性を下記表13に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例6)
表1における合金3Bを152.4mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを203.2mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1260℃で12時間均質化し、1090℃で開始して57.15mm角棒鋼に鍛造し、焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が240℃と測定された。
試験試料を角棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、最後に510℃で5時間焼き戻しした。測定された特性を下記表14に列挙する。
Figure 0004732694
試験試料を角棒から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、510℃で4時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に510℃でさらに4時間焼き戻しした。測定された特性を下記表15に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例7)
表1における合金4Aを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が275℃と測定された。
腐食試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、510℃で12時間焼き戻しした。測定された特性を下記表16に列挙する。15−5PH(H900処理)の腐食速度の参照は同一条件下で試験した試料を用いて行った。この試験に対する15−5PH(H900処理)の平均腐食速度は毎年0.0051mm/yであった。
Figure 0004732694
腐食試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、510℃で24時間焼き戻しした。測定された特性を下記表17に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例8)
表1における合金4Bを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が285℃と測定された。
腐食試験試料を長方形棒から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、510℃で12時間焼き戻しした。測定された特性を下記表18に列挙する。15−5PH(H900処理)の腐食速度の参照は同一条件下で試験した試料を用いて行った。この試験に対する15−5PH(H900処理)の平均腐食速度は毎年0.0051mm/yであった。
Figure 0004732694
(実施例9)
表1における合金4Cを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が310℃と測定された。
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、200℃で2時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に200℃でさらに2時間焼き戻しした。測定された特性を下記表19に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例10)
表1における合金4Dを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が300℃と測定された。
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、200℃で2時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に200℃でさらに2時間焼き戻しした。測定された特性を下記表20に列挙する。
Figure 0004732694
腐食試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1000℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、510℃で12時間焼き戻しした。測定された特性を下記表21に列挙する。15−5PH(H900処理)の腐食速度の参照は同一条件下で試験した試料を用いて行った。この試験に対する15−5PH(H900処理)の平均腐食速度は毎年0.0051mm/yであった。
Figure 0004732694
(実施例11)
表1における合金4Eを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が300℃と測定された。
(実施例12)
表1における合金4Fを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が300℃と測定された。
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、200℃で2時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に200℃でさらに2時間焼き戻しした。測定された特性を下記表22に列挙する。
Figure 0004732694
腐食試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1000℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、510℃で12時間焼き戻しした。測定された特性を下記表23に列挙する。15−5PH(H900処理)の腐食速度の参照は同一条件下で試験した試料を用いて行った。この試験に対する15−5PH(H900処理)の平均腐食速度は毎年0.0051mm/yであった。
Figure 0004732694
(実施例13)
表1における合金4Gを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が320℃と測定された。
(実施例14)
表1における合金5Bを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が200℃と測定された。
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、468℃で24時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に468℃でさらに24時間焼き戻しした。測定された特性を下記表24に列挙する。
Figure 0004732694
試験試料を長方形棒から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、468℃で36時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に468℃でさらに36時間焼き戻しした。測定された特性を下記表25に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例15)
表1における合金5Cを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が180℃と測定された。
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、468℃で16時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に468℃でさらに16時間焼き戻しした。測定された特性を下記表26に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例16)
表1における合金5Dを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が240℃と測定された。
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、468℃で24時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に468℃でさらに24時間焼き戻しした。測定された特性を下記表27に列挙する。
Figure 0004732694
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、最後に468℃で28時間焼き戻しした。測定された特性を下記表28に列挙する。
Figure 0004732694
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、最後に468℃で72時間焼き戻しした。測定された特性を下記表29に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例17)
表1における合金5Eを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が165℃と測定された。
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、468℃で16時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に468℃でさらに16時間焼き戻しした。測定された特性を下記表30に列挙する。
Figure 0004732694
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、468℃で24時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に468℃でさらに24時間焼き戻しした。測定された特性を下記表31に列挙する。
Figure 0004732694
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、468℃で14時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に468℃で14時間焼き戻しした。測定された特性を下記表32に列挙する。
Figure 0004732694
(実施例18)
表1における合金5Fを101.6mm径電極に真空誘電溶解(VIM)し、次にそれを127mm径インゴットに真空アーク再溶解(VAR)した。そのインゴットを、上述され、かつ図2Aおよび2Bに示される好ましい処理技術に従い、1250℃で12時間均質化し、1015℃の頻繁な再加熱を用いて50.8mm角丸方形に熱間圧延し、19.05mm厚×57.15mm幅の長方形棒鋼に熱間圧延し、焼きならしおよび焼きなましした。ディラトメーター試料を機械加工し、焼入れ材のディラトメトリー法および1%変態分率によってM温度が25℃未満である測定された。
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、468℃で16時間多段焼き戻しした後、1時間液体窒素(LN)処理し、最後に468℃でさらに16時間焼き戻しした。測定された特性を下記表33に列挙する。
Figure 0004732694
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、最後に468℃で28時間焼き戻しした。測定された特性を下記表34に列挙する。
Figure 0004732694
試験試料を長方形棒鋼から機械加工し、1025℃で75分間溶体化処理し、油冷し、液体窒素に1時間浸漬させ、室温に暖め、最後に468℃で48時間焼き戻しした。測定された特性を下記表35に列挙する。
Figure 0004732694
表34および35の例はより高い強度を提供する合金の多段焼き戻しの利点を示す。
合金設計にとって重要なことは、耐食性および応力腐食耐性のための有効な水素捕獲を維持しながら、効率的な強化を達成することである。これらの特性の全ては、強化性MCカーバイド粒子サイズを析出完了時に約3ナノメートルの最適サイズに微細化することによって促進される。図7は、三次元原子−プローブ微量分析を用いる、最適に熱処理された合金2C中の3ナノメートルMCカーバイドの原子スケール画像形成を示し、本発明の一部をなす[M. K. Miller, Atom Probe Tomography, Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York, NY, 2000]は、設計されたサイズおよび粒子組成が実際に達成されていることを立証する。この画像は合金のスラブの原子再構築であり、各々の原子はその元素に対応する色およびサイズを有する図上の点として表される。図7に描かれる円は画像においてMCナノスケールカーバイドを定義する合金カーバイド形成体および炭素の集合を表す。
結果として、発見された合金は表36に示される元素の一連の組合せを有する。
Figure 0004732694
好ましくは、不純物は回避される、しかしながら、幾らかの不可避不純物は許容され、かつ本発明の範囲内にある。したがって、質量%で、最も好ましくは、Sは0.02%未満、Pは0.012%未満、Oは0.015%未満およびNは0.015%未満である。ミクロ組織は、記載される通りに処理されるとき主としてマルテンサイト性であり、望ましくは、体積で2.5%未満、好ましくは、1%未満の残留または析出オーステナイトを含むラスマルテンサイト性として維持される。ミクロ組織は、主として、MがMo、Nb、V、Ta、WおよびCrを含む群から選択される1以上の元素であるMCナノスケールカーバイドを含む。カーバイドの化学式、サイズおよび存在する場所が重要である。好ましくは、カーバイドはMCの形態のみで、およびある程度まではMCカーバイドで、他のカーバイドの存在なしに存在し、そのサイズ(平均径)は約10ナノメートル未満、好ましくは、約3ナノメートルから5ナノメートルの範囲にある。特に回避されるものは他のより大規模な非整合カーバイド、例えば、セメンタイト、M23、MCおよびMである。他の脆化性相、例えば、TCP金属間化合物相も回避される。
強化ナノカーバイドが埋め込まれるマルテンサイトマトリックスは、不動態化酸化膜へのCr分配を強化し、MC駆動力を強化し、かつナノカーバイドの転位上への核形成を維持するのに十分な高さのM温度を十分なCoによって維持するため、最適バランスのCoおよびNiを含む。劈開に対する耐性は、十分なNiを維持し、かつ焼きならしまたは溶体化処理温度での粗大化に抗する安定なMCカーバイド分散物による結晶粒微細化を促進することによって強化される。合金組成および熱処理は、靱性および疲労耐性を制限する他の全ての分散粒子を最少化または排除するように最適化される。水素応力腐食に対する耐性は、結合強化元素、例えば、B、MoおよびWの結晶粒界偏析によって、およびナノスケールMCカーバイド分散物の水素捕獲効果によって強化される。合金組成は、製品スケールのインゴット凝固条件下でミクロ偏析が制限されるように制約される。
表1の具体的な合金組成はこのクラスの合金における現在既知の好ましく最適の配合を表し、記載される物理特性と一致する配合の変形、処理工程の変形および開示される範囲内にある変形の他に等価物は本発明の範囲内にある。これらの好ましい態様は、表37に示される合金組成の7つのサブクラスとして要約することができる。サブクラス1は組成が表1の合金2C、3Aおよび3Bに類似し、約1861.6MPaから2068.4MPaの範囲のUTSをもたらすCr−MoベースのMCカーバイドを析出する約400℃から600℃の二次硬化焼き戻しに最適である。サブクラス2は組成が表1の合金4Dおよび4Eに類似し、セメンタイトを脱安定化し、かつCr−Mo−WベースのMCカーバイドを析出する約400℃から600℃の二次硬化焼き戻しでより高い熱的安定性をもたらすWおよび/またはSiの添加を含む。より高い破壊靱性を必要とする用途のため、サブクラス3は組成が表1における合金1、2Aおよび2Bに類似し、約1654.7MPaから1861.6MPaの中間UTS範囲をもたらす。サブクラス4は組成が表1の合金4Fおよび4Gに類似し、セメンタイトの析出なしにFeベースのMCカーバイドを析出させる約200℃から300℃での低温焼き戻しに最適である。合金サブクラス5はサブクラス1の最も好ましい態様である。サブクラス6は組成が合金5Bから5Fおよび6Aから6Kに類似する。サブクラス6は高Ni含量のために最適の靱性をもたらすが、最終ミクロ組織中の多量の残留オーステナイトを回避するため、工程間に低温処理を有する複数の焼き戻し処理を必要とすることがある。サブクラス7は破壊靱性のさらなる最適化であり、低Co含量が合金の延性−脆性遷移温度を低下させる合金6Lおよび6Mに類似する。
Figure 0004732694
したがって、超高強度耐食性構造用鋼合金のクラス並びにそのような合金の製造および使用方法を含む本発明は以下の請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ限定されるものである。
図1は、本発明の合金の設計概念を特徴付けるフローブロック論理図である。 図2は、図2Aは、本発明の合金の一例における、様々な温度でのカーバイドの相および組成を示す平衡相図である。図2Bは、提示される平衡相に関する本発明の合金の典型的な処理方針の図である。 図3は、様々な炭素(C)含量について、質量パーセントの値で、硬度ピークおよびMC駆動力が相関するグラフである。 図4は、様々なモリブデン(Mo)およびバナジウム(V)含量に対する、MC駆動力(ΔG)並びにスケール速度定数の曲線を示すグラフであり、ここで、温度は482℃に設定されており、他の合金元素の量は0.14質量%炭素(C)、9質量%クロム(Cr)、13質量%コバルト(Co)、および4.8質量%ニッケル(Ni)に設定されている。 図5は、0.14質量%の炭素(C)含量に対する最終バナジウム(V)含量を決定するのに用いられる1000℃での相図であり、ここで、他の合金元素量は9質量%クロム(Cr)、1.5質量%モリブデン(Mo)、13質量%コバルト(Co)、および4.8質量%ニッケル(Ni)に設定されている。 図6は、本発明の一態様における、様々なコバルト(Co)およびニッケル(Ni)含量に対するMs温度の勾配並びにMC駆動力(ΔG)の曲線を示すグラフであり、ここで、温度は482℃に設定されており、かつ他の合金元素量は0.14質量%炭素(C)、9質量%クロム(Cr)、1.5質量%モリブデン(Mo)、および0.5質量%バナジウム(V)に設定されている。 図7は、本発明の最適に熱処理された好ましい態様および例におけるMCカーバイドの三次元原子−プローブ像である。

Claims (18)

  1. 質量%で、
    C:0.1〜0.3%、Co:8〜17%、Ni:4〜8%、Cr:6〜11%、Mo:1〜3%、V:0.8%未満、W:3%未満、Si:1%未満、Ti:0.2%未満、残部がFeおよび不可避不純物から成る構造用ステンレス鋼合金であって、
    TCP金属間化合物相を含まないラスマルテンサイトミクロ組織を有し、
    前記CはナノスケールのMCカーバイド粒子として分散しており、
    前記MCカーバイド粒子は10ナノメートル未満の平均直径を有し、ここでMはCr、Mo、WおよびVからなる群から選択される2以上の元素であること、
    を特徴とする構造用ステンレス鋼合金。
  2. MがCrおよびMoを含むことを特徴とする請求項1記載の構造用ステンレス鋼合金。
  3. MがCr、MoおよびVを含むことを特徴とする請求項1記載の構造用ステンレス鋼合金。
  4. MがMo、並びにCr、WおよびVからなる群から選択される2以上の元素、を含むことを特徴とする請求項1記載の構造用ステンレス鋼合金。
  5. 1792.6MPaより大きな引張強さを持つことを特徴とする請求項1記載の構造用ステンレス鋼合金。
  6. 降伏強さに対する破壊靱性の比(KIC/YS)が
    0.033m1/2
    以上であることを特徴とし、ここでKICは平面歪み破壊靱性、YSは降伏強さであり、それぞれ、MPa・m1/2、MPaで表わされる請求項1記載の構造用ステンレス鋼合金。
  7. 引張強さが1792.6MPaより大きく、かつ降伏強さに対する破壊靱性の比(KIC/YS)が
    0.033m1/2
    以上であることを特徴とし、ここでKICは平面歪み破壊靱性、YSは降伏強さであり、それぞれ、MPa・m1/2、MPaで表わされる請求項1記載の構造用ステンレス鋼合金。
  8. セメンタイト(FeC)の固溶が完全であることを特徴とする請求項1記載の構造用ステンレス鋼合金。
  9. 質量%で、
    C:0.1〜0.3%、Co:8〜17%、Ni:4〜8%、Cr:6〜11%、Mo:1〜3%、W:3%未満、V:0.8%未満、Si:1%未満、Ti:0.2%未満、残部がFeおよび不可避不純物から成る構造用ステンレス鋼合金であって、
    耐食性を有する、TCP金属間化合物相を含まないラスマルテンサイトミクロ組織と、
    10ナノメートル未満の直径を有するナノスケールのMCカーバイド粒子とを有し、ここでMはMo、並びにCr、WおよびVからなる群から選択された1以上の元素であり、
    セメンタイト(FeC)の固溶が完全であること、
    を特徴とする構造用ステンレス鋼合金。
  10. 1792.6MPaより大きな引張強さを持つことを特徴とする請求項9記載の構造用ステンレス鋼合金。
  11. 降伏強さに対する破壊靱性の比(KIC/YS)が
    0.033m1/2
    以上であることを特徴とし、ここでKICは平面歪み破壊靱性、YSは降伏強さであり、それぞれ、MPa・m1/2、MPaで表わされる請求項9記載の構造用ステンレス鋼合金。
  12. 引張強さが1792.6MPaより大きく、かつ降伏強さに対する破壊靱性の比(KIC/YS)が
    0.033m1/2
    以上であることを特徴とし、ここでKICは平面歪み破壊靱性、YSは降伏強さであり、それぞれ、MPa・m1/2、MPaで表わされる請求項9記載の構造用ステンレス鋼合金。
  13. MがCr、MoおよびVを含むことを特徴とする請求項9記載の構造用ステンレス鋼合金。
  14. 質量%で、
    C:0.1〜0.3%、Co:8〜17%、Ni:4〜8%、Cr:6〜11%、Mo:1〜3%、V:0.8%未満、W:3%未満、Si:1%未満、Ti:0.2%未満、残部がFeおよび不可避不純物から成る構造用ステンレス鋼合金であって、
    TCP金属間化合物相を含まないラスマルテンサイトミクロ組織を有し、
    前記CはナノスケールのMCカーバイド粒子として分散しており、
    前記MCカーバイド粒子は10ナノメートル未満の平均直径を有し、ここでMはCr、Mo、WおよびVからなる群から選択される2以上の元素であること、
    を特徴とする構造用ステンレス鋼合金。
  15. MがCr、Mo、WおよびVを含むことを特徴とする請求項14記載の構造用ステンレス鋼合金。
  16. 1792.6MPaより大きな引張強さを持つことを特徴とする請求項14記載の構造用ステンレス鋼合金。
  17. 降伏強さに対する破壊靱性の比(KIC/YS)が
    0.033m1/2
    以上であることを特徴とし、ここでKICは平面歪み破壊靱性、YSは降伏強さであり、それぞれ、MPa・m1/2、MPaで表わされる請求項14記載の構造用ステンレス鋼合金。
  18. 引張強さが1792.6MPaより大きく、かつ降伏強さに対する破壊靱性の比(KIC/YS)が
    0.033m1/2
    以上であることを特徴とし、ここでKICは平面歪み破壊靱性、YSは降伏強さであり、それぞれ、MPa・m1/2、MPaで表わされる請求項14記載の構造用ステンレス鋼合金。
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