JP4732385B2 - 弱い相互作用を有する物質の定性定量分析方法 - Google Patents

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分析試料中から弱い相互作用を有する物質を選択的に定性定量分析する方法に関する。
分析試料中の標的物質を定性的、定量的に分析する方法としては、吸収ピークの面積強度をモル吸収係数と比較することによって定量的に分析する方法などが知られている(非特許文献1参照)。
また、分析試料中の標的物質が、水素結合、ファンデールワールス結合、π電子間相互作用、静電相互作用などの弱い相互作用を有する物質である場合は、赤外吸収スペクトルを利用する方法が用いられてきた(非特許文献2参照)。
上記の弱い相互作用のエネルギーは熱ゆらぎ程度の小さなものであり、室温の周波数に換算すると約6テラヘルツ程度だと考えられる。赤外吸収分光法などで使用される波長では、そのような低振動数モードを直接観測できるわけでない。したがって、現行の赤外吸収分光法では分子の特定の官能基の振動モード、例えばO―H伸縮振動モードの周波数シフトやバンドの線幅の変化から、弱い相互作用の分子間振動の情報を得ている。このように、従来技術においても、標的物質である水素結合、ファンデールワールス結合、π電子間相互作用、静電相互作用などの弱い相互作用を有する物質の中で検出可能な物質はあり、それらを利用して定性定量分析が行われていた。
また、弱い相互作用を直接的に観測する方法でも、定性定量分析が行われてきた(非特許文献3参照)。
実験化学講座 7巻4章「吸収および反射スペクトル」第4版 丸善 1992年 実験化学講座 6巻3章「赤外分光」第4版 丸善 1992年 Analytical Chemistry Vol.78、p5427(2006)
しかしながら、従来の分析方法では、標的物質である水素結合、ファンデールワールス結合、π電子間相互作用、静電相互作用などの弱い相互作用を有する物質以外のピークが検出されるために、これらの物質の信号が分析の妨害になり、弱い相互作用を有する物質のピークを検出するのが困難であるという問題があった。
また、吸収ピークの面積強度をモル吸収係数と比較することによって定量的に分析する方法では、複数成分の標的物質を分析する場合、ピークだけでなくベースラインにも吸収強度を有することや、複数の標的物質のピーク同士の重なりが大きくなることがあり、誤差が著しく大きくなってしまうという問題がある。
さらに、赤外吸収スペクトルを利用する方法で弱い相互作用を有する標的物質を分析する場合、間接的に弱い相互作用を観測しているので、熱によるノイズの影響が大きくなり、そのため、温度に応じた吸収特性の変化および吸収特性変化率の情報を広い温度範囲にわたって利用することが難しいため、それらの情報から定量性の精度向上を図ることが難しい。
さらに、弱い相互作用を直接的に観測する従来方法においても、熱の影響でピーク形状がブロードになるため、特徴付けが困難な場合が多く、定量精度の向上を図ることが難しい。このため、室温の測定では、標準スペクトルの精度の向上を図るために膨大な標準スペクトル計測が必要になるなどの困難がある。
本発明においては、弱い相互作用を直接的に観測し、標的物質を分析試料から選択的に分析する方法を提供することを目的とする。
本発明の定性定量分析方法は弱い相互作用を有する標的物質を分析試料中から選択的に分析する方法であって、
該標的物質の弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を分析試料に照射し、透過した電磁波を測定することにより得られる吸収スペクトルのピーク位置を予め得られている該標的物質の標準吸収スペクトルのピーク位置と比較し、
ピーク位置が一致する標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと分析試料から得られる吸収スペクトルとの誤差が最小となる前記係数を算出し、分析試料中の標的物質の濃度を得ることを特徴とする。
本発明の定性定量分析方法においては、前記弱い相互作用が水素結合、ファンデールワールス結合、π電子間相互作用、静電相互作用のいずれかであることが好ましい。
本発明の定性定量分析方法においては、前記標的物質が、アミノ酸(メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、グリシン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、システイン)、アミノ酸誘導体、アミノ酸誘導体の金属塩、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、水和物、重水素化物のいずれかであることが好ましい。
本発明の定性定量分析方法においては、前記標的物質の前記標準吸収スペクトルを予め算出するには、
前記標的物質の吸収特性スペクトルを弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数領域で測定し、
得られたスペクトルを標準試料の厚さについて正規化し、その後、標準試料中の標的物質の濃度について正規化し、
さらに、不適当な周波数範囲を除去することが好ましい。
本発明の定性定量分析方法においては、標準吸収スペクトルの算出と分析試料の吸収スペクトルの測定を複数の温度で行い、
抽出された前記標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を各温度で算出し、
各温度で得られた係数から平均値と標準偏差を算出することで、
分析試料中の標的物質の濃度とその誤差範囲を得ることが好ましい。
本発明の定性定量分析方法においては、分析試料中の標的物質の濃度とその誤差範囲を得た後、分析試料の吸収スペクトルのベースラインを、特定の周波数領域の範囲で、定数、もしくは、周波数に対して一定の関係を有する値を加算または減算することで補正し、得られたベースラインを補正した分析試料の吸収スペクトルと理論吸収特性スペクトルとの誤差が最小となる前記係数を算出し、分析試料中の標的物質の濃度を得ることが好ましい。
本発明の分析装置は光源、分光器、計算器・制御装置を備え、
該光源は標的物質の弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を励起させる励起光を発生し、
該分光器は、前記励起光から標的物質の弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を発生させ試料に照射する光発生器、試料を透過した前記の電磁波を測定する光検出器、試料の測定温度を変化させることが可能な温度可変チャンバ、試料の厚さを測定する厚さ測定装置を有し、
該計算器・制御装置は温度可変チャンバの温度調整を行い、厚さ測定装置からの測定情報を記憶し、光検出器から吸収スペクトル、吸収特性スペクトルの情報を記憶し、標準吸収スペクトルや濃度とその誤差範囲の算出を行うことを特徴とする。
本発明の定性定量分析方法と分析装置によって、標的物質の弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を分析試料に照射し、透過した電磁波を測定することにより吸収スペクトルを得られ、その後、得られた吸収スペクトルのピーク位置を予め得られている標的物質の標準吸収スペクトルのピーク位置と比較することにより、分析試料中の標的物質を高い精度で特定することができ、ピーク位置が一致する標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、分析試料から得られる吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を算出することで、分析試料中の標的物質の濃度を高い精度で算出することができ、標的物質の定性定量分析を高い精度で行うことができる。
さらに、標準吸収スペクトルの算出と分析試料の吸収スペクトルの測定を複数の温度で行い、各温度で、吸収スペクトルのピーク位置とピーク位置が一致する標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された前記標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を各温度で算出し、各温度で得られた係数から平均値と標準偏差を算出することで、温度に応じた吸収特性の変化および吸収特性変化率の情報を利用することができ、より高い精度で分析試料中の標的物質の濃度とその誤差範囲を得ることができる。
本発明は、弱い相互作用を有する標的物質を分析試料から選択的に分析する方法である。
以下、弱い相互作用を有する標的物質がアミノ酸である実施形態例を中心に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態例にのみに限定されるものではない。
本発明においては、予め標的物質の標準吸収スペクトルを取得する必要がある。
標的物質として複数の候補が考えられる場合、それらすべての標準吸収スペクトルを測定、算出する必要があり、例えば、標的物質としてアミノ酸が考えられる場合、20種類のアミノ酸すべてについての吸収特性スペクトルを測定し、それを基に標準吸収スペクトルを算出する必要がある。
本発明の標準吸収スペクトルは標的物質の吸収特性スペクトルから算出される。本発明の吸収特性スペクトルとは標的物質を含んだ標準試料から得られる吸収スペクトルのことである。標準試料は標的物質とポリエチレンとの混合物であることが好ましく、混合させる割合は1〜50質量%濃度であることが好ましい。また、濃度が異なる標準試料を、複数用意し、それぞれについて測定することが好ましい。濃度が異なる標準試料は2〜10種類用意することが好ましい。混合する物質としては、弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波が透過する物質であればよく、ポリエチレンの他に、例えば酸化マグネシウムやフッ素樹脂(四フッ化エチレン樹脂など)でも良い。
これら複数の濃度の異なる標準試料を、それぞれについてプレスし、ペレットを作成し、吸収特性スペクトルを測定する。同時に、参照試料として標的物質を含まないポリエチレンのみの上記と同じ重さのペレットを準備し、吸収特性スペクトルを測定する。
ペレットの大きさは10mm前後でよく、厚さは1.3〜1.7mmの範囲でよい。
本発明の標的物質としては、弱い相互作用を有する物質であることを特徴とする。
弱い相互作用は水素結合、ファンデールワールス結合、π電子間相互作用、静電相互作用のいずれかであることが好ましく、標的物質としては結晶質あるいは非結晶質どちらであっても良い。
さらに、前記標的物質は、アミノ酸(メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、グリシン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、システイン)、アミノ酸誘導体、アミノ酸誘導体の金属塩、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、水和物、重水素化物のいずれかであることが好ましい。
各濃度の標的物質の吸収特性スペクトルデータは、標的物質の弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を、標的物質を含んだ標準試料に照射させ、透過した電磁波を測定することから得られるが、図1の分析装置を用いて、例えば、0.1〜10.0テラヘルツの周波数領域において測定すると良い。測定温度は、4〜300Kの範囲内で行うことが好ましく、のちに述べる分析試料の測定温度と一致させる。また、参照試料についても同様の測定を行い、吸収特性スペクトルデータを得れば良い。
また、このとき、吸収特性スペクトルデータの測定と共に、標準試料、参照試料それぞれの厚さの測定も行えば良い。
標的物質それぞれについて、それぞれの濃度の標的物質の吸収特性スペクトルを得た後、標準試料の単位厚さあたりについて正規化を行う。
ここで、単位厚さあたりの正規化は、厚さと吸収強度の比例関係を利用し、標準試料の厚さのデータと、各々の吸収特性スペクトルデータから比例関係を算出することで行う。
さらに、標的物質を含まないポリエステルのみの吸収スペクトルの吸収強度を標的物質の各吸収特性スペクトルから差し引いた後、標準試料中の標的物質の単位濃度あたりについて正規化することが好ましい。
ここで、単位濃度あたりの正規化も、単位厚さあたりの正規化と同じく、濃度と吸収強度の比例関係を利用し、標準試料の濃度と、各々の吸収特性スペクトルデータから比例関係を算出することで行う。
次に、分析に不適当な周波数範囲の吸収特性スペクトルデータを除去することが好ましい。不適当な周波数範囲とは、当該周波数範囲が除かれた結果、それぞれ濃度の標的物質の吸収特性スペクトルデータが10%程度の誤差範囲に収まることができるような範囲である。好ましくは、試料の界面でおこる多重反射などの影響が大きい0.5テラヘルツより短波長側の範囲と、濃度の増加とともにノイズレベルが大きくなる3.0テラヘルツより長波長側の範囲のデータを除去することが望ましい。
これらの、過程を経て、0.5〜3.0テラヘルツの範囲で、複数種類の異なる濃度の標準試料について、10%程度の誤差範囲で収まる標的物質の標準吸収スペクトルを各測定温度で算出することが好ましい。
次に分析試料中の標的物質を同定し、定量的に分析する。
標的物質を含んだ分析試料の吸収スペクトルは、標的物質の弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を分析試料に照射し、透過した電磁波を測定することにより得られるが、図1の分析装置を用いて、例えば、0.1〜10.0テラヘルツの周波数領域において、吸収スペクトルの測定を行えば良い。測定温度については4〜300Kの条件でよく、標的物質の特定の精度を上げるためには、複数の温度条件で測定を行うことが好ましい。
測定の際、分析試料のペレットは標準試料と同じように作成すれば良い。
また、分析試料の形態はペレットでなくても良い。本発明で用いられる周波数の電磁波は、プラスチック、紙、布などの物質は容易に透過する。したがって、これらの物質で梱包された弱い相互作用を有する標的物質を含む分析試料も分析が可能である。例えば、プラスチックケースに入った錠剤であっても、未開封のまま、錠剤のみを選択的に分析することが可能である。
その後、図2に示すように、得られた吸収スペクトル(図2(X)、実線)のピーク位置を予め得られている該標的物質の標準吸収スペクトル(図2(a)〜(e))のピーク位置と比較することを特徴とし、上記で得られた標的物質の標準吸収スペクトルと一致するピークを決定することで、標的物質の特定を行うことができる。
例えば、図2(X)において、実線で示されるスペクトルは分析試料から得られた吸収スペクトルであり、図2の(a)〜(e)に実線で示されるスペクトルは標的物質であるグルタミン、バリン、セリン、アスパラギン、アスパラギン酸を含んだ標準試料から得られたそれぞれの標準吸収スペクトルである。図2(X)における分析試料の吸収スペクトルのピーク位置は、図2の(a)〜(e)の標準吸収スペクトルのピーク位置と一致しているので、分析試料にはグルタミン、バリン、セリン、アスパラギン、アスパラギン酸が含まれていることがわかる。
次に、標準吸収スペクトルの中から、図2の(a)〜(e)に示すように、ピーク位置が一致するアミノ酸の標準吸収スペクトルを抽出する。さらに、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、分析試料から得られる吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を算出することで、定量分析を行う。理論吸収特性スペクトルは図2の例ではka+kb+kc+kd+keで計算され、例えば、図2(X)において、点線で示されるスペクトルように算出される。ここで、k、k、k、k、kは実測された吸収スペクトルと理論吸収特性スペクトルの誤差を最小にする係数群である。
各標準吸収スペクトルは単位濃度あたりで正規化されているので、得られた係数が分析試料中の標的物質の濃度となる。
前記係数は複数の温度の測定データから算出することが好ましい。
すなわち、標準吸収スペクトルの算出と分析試料の吸収スペクトルの測定を複数の温度で行い、吸収スペクトルと抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を各温度で算出し、定量分析を行うことが好ましい。その後、各温度で得られた係数から平均値と標準偏差を算出する。
各標準吸収スペクトルは標準試料の単位濃度あたりで正規化されているので、得られた係数の平均値を分析試料中の標的物質の濃度とし、標準偏差を濃度の誤差範囲とすると良い。
このように、温度に応じた吸収特性の変化および吸収特性変化率の情報を利用するために、複数の温度において測定を行い、各温度において係数を算出し、それらの平均値と標準偏差を算出することで、定量分析の精度を向上させることができる。さらに精度を向上させるためには、測定温度条件は多いほど良いが、実験の煩雑さと得られる定量分析データの精度のバランスを考慮すると、2〜10種類であることが望ましい。
上記のように、定量分析を行うことができるが、分析試料の吸収スペクトルは、実験装置に含まれるレーザの出力安定性や光学部品の熱作用等により、そのベースラインが変化することがある。そのような場合、標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、分析試料から得られる吸収スペクトルの誤差が最小となる係数を算出しても、図3、4に示すように、理論吸収特性スペクトルと、分析試料から得られる吸収スペクトルの誤差が大きくなってしまう場合がある。
このような場合、ベースラインの補正を行うことが好ましい。ベースラインの補正は理論吸収特性スペクトルと、分析試料から得られる吸収スペクトルの誤差が大きい周波数領域のみを抽出して、誤差が小さくなる方向に行う。具体的には、分析試料から得られる吸収スペクトルに定数を加算または減算すること、もしくは、周波数に対して一定の関係を有する値を加算または減算することで行う。周波数に対して一定の関係とは、一次関数による直線的な関係でもよく、二次関数以上の曲線的な関係でもよく、特に制限はない。
このようなベースライン補正を行った後に、再度、誤差が最小となる係数を算出することで、実験装置の安定性に関わらず、図5、6に示すように、より正確に理論吸収特性スペクトルに算出することができ、分析試料中の標的物質のより正確な濃度を得ることができる。
本発明の分析装置は図1に示すように、光源2、分光器3、計算器・制御装置4を備えている。光源2は前記標的物質の前記相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を励起できればよく、例えば、フェムト秒レーザー励起光であるパルスレーザーやチタンサファイアレーザーなどでよい。
分光器3の光発生器31は非線形光学結晶や光伝導スイッチでよく、これらに光源からフェムト秒パルスレーザーを照射することによって標的物質の弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を発生する。また、半導体、量子井戸、高温伝導薄膜等にフェムト秒パルスレーザーをあてて前記電磁波を発生させても良い。光発生器31で発生した前記電磁波は光学レンズなどにより、集光され、試料32に投射され、光検出器33で検出される。ここで、試料32とは、上記で述べた標準試料と分析試料の両方が含まれる。
光検出器33にも光伝導スイッチが利用されるが、電気光学効果を利用した検出法などでも良い。
また、試料32は温度を変化させることが可能な温度可変チャンバ34により温度を管理され、試料32の厚さを測定する厚さ測定装置35により試料32の厚さを測定できる。
光検出器33、温度可変チャンバ34、厚さ測定装置35は計算器・制御装置4と接続され、制御され、該計算器・制御装置4は温度可変チャンバ34の温度調整を行い、厚さ測定装置35からの測定情報を記憶し、光検出器33から吸収スペクトル、吸収特性スペクトルの情報を記憶し、標準吸収スペクトルや濃度の算出を行うことを特徴とする。
本発明の定性定量分析方法およびその分析装置1は水素結合、ファンデールワールス結合、π電子間相互作用、静電相互作用などの弱い相互作用を有する標的物質を含む分析試料の定性定量分析に好適に使用される、例えば、アミノ酸を含んだ健康食品や薬剤の定性定量分析に使用することができる。また、弱い相互作用を有する標的物質を含む生体関連分子の定性定量分析にも好適に利用され、医療や生化学分野で広く応用される可能性が高い。
本発明の定性定量分析方法は、標的物質の弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を分析試料に照射し、透過した電磁波を測定することにより得られる吸収スペクトルのピーク位置を予め得られている標的物質の標準吸収スペクトルピーク位置と比較することによって、標的物質を高い精度で特定することができ、ピーク位置が一致する標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、分析試料から得られる吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を算出することで、分析試料中の標的物質の濃度を高い精度で得ることができ、高い精度で定性定量分析を行うことができる。
前記相互作用が水素結合、ファンデールワールス結合、π電子間相互作用、静電相互作用のいずれかであることで分析精度を向上させることができる。
前記標的物質は、結晶質あるいは非結晶質であり、アミノ酸(メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、グリシン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、システイン)、アミノ酸誘導体、アミノ酸誘導体の金属塩、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、水和物、重水素化物のいずれかであることで、分析精度を向上させることができる
本発明によれば、前記標的物質の吸収特性スペクトルを弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数領域で測定し、得られた吸収特性スペクトルを標準試料の厚さについて正規化し、その後、標準試料中の標的物質の濃度について正規化し、さらに、不適当な周波数範囲を除去することで、標的物質の標準吸収スペクトルをより高い精度で算出することができ、その結果、分析精度を向上させることができる。
本発明によれば、標準吸収スペクトルの算出と分析試料の吸収スペクトルの測定を複数の温度で行い、抽出された前記標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を各温度で算出し、各温度で得られた係数から平均値と標準偏差を算出することで、分析試料中の標的物質の濃度とその誤差範囲を得ることで、温度に応じた吸収特性の変化および吸収特性変化率の情報を利用することができ、より高い精度で分析試料中の標的物質の濃度とその誤差範囲を得ることができる。
分析試料の吸収スペクトルのベースラインを、特定の周波数領域の範囲で、定数、もしくは、周波数に対して一定の関係を有する値を加算または減算することで補正し、得られたベースラインを補正した分析試料の吸収スペクトルと理論吸収特性スペクトルとの誤差が最小となる前記係数を算出することで、より正確に理論吸収特性スペクトルに算出することができ、分析試料中の標的物質のより正確な濃度を得ることができる。
本発明の分析装置1によって、標的物質の弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を分析試料に照射し、透過した電磁波を測定することにより得られる吸収スペクトルのピーク位置を予め得られている標的物質の標準吸収スペクトルのピーク位置と比較することによって、標的物質を高い精度で特定することができる。
さらに、ピーク位置が一致する標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、分析試料から得られる吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を算出することで、分析試料中の標的物質の濃度を高い精度で算出することができ、標的物質の定性定量分析を高い精度で行うことができる。
さらに、標準吸収スペクトルの算出と分析試料の吸収スペクトルの測定を複数の温度で行い、各温度で、吸収スペクトルのピーク位置とピーク位置が一致する標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された前記標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を各温度で算出し、各温度で得られた係数から平均値と標準偏差を算出することで、温度に応じた吸収特性の変化および吸収特性変化率の情報を利用することができ、より高い精度で分析試料中の標的物質の濃度とその誤差範囲を得ることができる。
<標準スペクトルの測定1>
標的物質として、表1に記載の20種類のアミノ酸を使用した。これらのアミノ酸をそれぞれポリエチレン粉末に混合しプレスし標準試料とし、直径10mm、厚さ1.5mm±0.2mmのペレットを作成した。混合したアミノ酸の質量は5mgから40mgまで5mg刻みで変化させ、ポリエチレン粉末と合わせて全体を100mgとした。これによりそれぞれのアミノ酸において、8種類の異なる濃度の標準試料のペレットが得られた。同時に、参照試料として標的物質を含まないポリエチレンのみの上記と同じ重さのペレットを準備した。
Figure 0004732385
表1に記載の20種類のアミノ酸について、これらの8種類の異なる濃度の標準試料とアミノ酸を含まない参照試料の吸収特性スペクトルの測定を図1の分析装置1を用いて0.1〜10.0テラヘルツの周波数領域において行った。分析装置1の分光器3としてはテラヘルツ時間領域分光光度計を用いた。テラヘルツ時間領域分光光度計は温度可変チャンバ34、厚さ測定装置35、計算器・制御装置4を備えたものであり、光発生器31と光検出器33はそれぞれ低温成長ガリウム砒素を用いて作製された光伝導アンテナ素子を使用した。分析装置1の光源2としては近赤外のフェムト秒パルスレーザーを使用した。 ここで、測定温度は室温(297K)、250K、200K、150K、100K、77Kの6点で測定を実施した。その結果20種類の各アミノ酸に固有の吸収特性スペクトルが得られた。このとき、吸収特性スペクトルデータの測定と共に、標準試料、参照試料のそれぞれの厚さの測定も行った。
各温度で得られたこれらのスペクトルの吸収強度を、各標準試料の単位厚さあたりについて正規化し、アミノ酸を含まないポリエチレン粉末100mgからなる参照試料の吸収スペクトル強度を差し引いた後、単位濃度あたりについて正規化した。また、誤差の大きい0.1〜0.5テラヘルツの範囲と、ノイズレベルの大きい3.0〜10.0テラヘルツの部分のスペクトルデータについては、解析に不適当なデータと判定し、それらのデータを無効とする周波数範囲の除去を行った。このようにして、8種類の濃度について、0.5〜3.0テラヘルツの周波数領域の各温度の標準吸収スペクトルを得られた。
<標準スペクトルの測定2>
標的物質として、表1に記載の20種類のアミノ酸を使用し、標準スペクトルの測定1と同じく、8種類の異なる濃度の標準試料とアミノ酸を含まない参照試料の吸収特性スペクトルの測定を図1の分析装置1を用いて0.1〜10.0テラヘルツの周波数領域において行った。ここで、標準スペクトルの測定1と同じく、測定温度は室温(297K)、250K、200K、150K、100K、77Kの6点で測定を実施した。その結果20種類の各アミノ酸に固有の吸収特性スペクトルが8種類の濃度で得られた。このとき、吸収特性スペクトルデータの測定と共に、標準試料、参照試料のそれぞれの厚さの測定も行った。
各温度で得られたこれらのスペクトルの吸収強度を、各標準試料の単位厚さあたりについて正規化し、アミノ酸を含まないポリエチレン粉末100mgからなる参照試料の吸収強度を差し引いた後、単位濃度あたりについて正規化を行ったが、その後、標準スペクトルの測定1とは異なり不適当な周波数範囲の除去を行わなかった。このように、不適当な周波数範囲の除去を行わなかった以外、標準スペクトルの測定1と同じ方法で、8種類の濃度について、0.1〜10.0テラヘルツの周波数領域の各温度の標準吸収スペクトルを得られた。
<評価>
上記で得られた標準スペクトルの測定1と標準スペクトルの測定2のそれぞれ各温度において、8種類の濃度の異なるデータから得られた標準吸収スペクトルデータの誤差範囲を求めた。その結果、各温度において、標準スペクトルの測定2で得られた8種類の標準スペクトルデータは誤差範囲が約30%であったにも関わらず、標準スペクトルの測定1で得られた8種類の標準スペクトルデータは誤差範囲が約10%であった。したがって、不適当な周波数範囲を除去することで、標準吸収スペクトルのデータの精度が向上し、その結果、分析試料の分析精度を向上させることが可能であることがわかった。
<実施例1>
本実施例においては標的物質として数種類のアミノ酸を含んだ分析試料を使用した。分析試料をポリエチレン粉末に混合してプレスし、直径10mm厚さ1.5mm±0.2mmのペレットを作成し、これを分析した。これらの吸収スペクトルの測定を図1の分析装置1を用いて0.1〜10.0テラヘルツの周波数領域において行った。ここで、測定温度は室温(297K)での測定のみを実施した。
次に、あらかじめ標準スペクトルの測定1で測定した20種類のアミノ酸の室温(297K)の標準吸収スペクトルのピーク位置と比較した。その結果、図2に示すように、いくつかのアミノ酸の標準吸収スペクトルのピーク位置と一致するピークが観測された。これらの一致したピークから、分析試料に含有するアミノ酸が特定できることがわかった。
さらに、図2の(a)〜(e)に示すように、ピーク位置が一致するアミノ酸の標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる297Kの理論吸収特性スペクトル(図2(X)点線)と、分析試料から得られる297Kの吸収スペクトル(図2(X)実線)の誤差が最小となる前記係数を算出した。その係数をアミノ酸含有濃度としたところ、実際のアミノ酸濃度と約15%の誤差で一致することがわかった。
<実施例2>
分析試料として実施例1と同じアミノ酸を含んだポリエチレン粉末を混合してプレスし、実施例1と同様に、これらの吸収スペクトルの測定を図1の分析装置1を用いて0.1〜10.0テラヘルツの周波数領域において行った。ここで、測定温度は室温(297K)、250K、200K、150K、100K、77Kの6点で測定を実施した。
次に、あらかじめ標準スペクトルの測定1で測定した20種類のアミノ酸の各温度の標準吸収スペクトルのピーク位置と比較した。その結果、図2に示すように、いくつかのアミノ酸の標準吸収スペクトルのピーク位置と一致するピークが観測された。これらの一致したピークから、各温度においてそれぞれ、分析試料に含有するアミノ酸が特定できることがわかった。
さらに、図2の(a)〜(e)に示すように、各温度においてそれぞれ、ピーク位置が一致するアミノ酸の標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトル(図2(X)点線)と、分析試料から得られる吸収スペクトル(図2(X)実線)の誤差が最小となる前記係数を各温度で算出した。それらの各温度で得られた係数から平均値および標準偏差を求め、それをそれぞれ、分析試料中のアミノ酸含有濃度と濃度誤差範囲としたところ、実際のアミノ酸濃度と約10%の誤差で一致することがわかった。
ここで、一点の測定温度で定量分析を行った実施例1と比較し、複数の測定温度で定量分析を行った実施例2のアミノ酸含有濃度の方が、実際の濃度との誤差が小さいことがわかった。
したがって、標準物質の理論吸収特性スペクトルと分析試料から得られる吸収スペクトルの測定を複数の温度で行い、定量分析を行うことで、温度に応じた吸収特性の変化および吸収特性変化率の情報を利用して、定量精度の向上が図られることがわかった。
<実施例3>
分析試料として20種類のアミノ酸の中から数種類を含有する健康食品Aを分析した。Aを良くすりつぶして、それぞれポリエチレン粉末を混合してプレスし、直径10mm厚さ1.5mm±0.2mmのペレットを作成し、これを分析した。これらの吸収スペクトルの測定を図1の分析装置1を用いて0.1〜10.0テラヘルツの周波数領域において行った。ここで、測定温度は室温(297K)、250K、200K、150K、100K、77Kの6点で測定を実施した。
次に、あらかじめ標準スペクトルの測定1で測定した20種類のアミノ酸の各温度の標準吸収スペクトルのピーク位置と比較した。その結果、いくつかのアミノ酸の標準吸収スペクトルのピーク位置と一致するピークが観測された。これらの一致したピークから、各温度においてそれぞれ、健康食品Aに含有するアミノ酸が特定できることがわかった。
さらに、各温度においてそれぞれ、ピーク位置が一致するアミノ酸の標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、健康食品Aから得られる吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を各温度で算出した。それらの各温度で得られた係数から平均値および標準偏差を求め、それをそれぞれ、健康食品A中のアミノ酸含有濃度と濃度誤差範囲とした。
したがって、本発明によれば、弱い相互作用を有する標的物質として含む健康食品を分析試料としても、定性定量分析を行うことができることがわかった。
<比較例1>
赤外吸収スペクトルを用いて健康食品Aの分析を行った。
まず、赤外吸収スペクトルについても、20種類の各アミノ酸に固有の赤外吸収特性スペクトルを測定し、20種類のアミノ酸について標準赤外吸収スペクトルを算出した。標準赤外吸収スペクトルの測定と算出は、吸収特性スペクトルの測定を赤外吸収分光装置を用いて赤外線領域において行ったこと以外は、標準スペクトルの測定1と同様に行い、20種類のアミノ酸について、8種類の濃度で、6種類の測定温度それぞれの標準赤外吸収スペクトルを得られた。
次に、実施例3と同様に、健康食品Aを分析したところ、図7に示すように、いくつかのピークを持つ赤外吸収スペクトル(図7(X))を得られた。しかしながら、アミノ酸由来のピークの他に、様々な他の含有物質に由来すると思われる多数のピークが観測されたため、赤外吸収スペクトルのピーク位置はいくつかの種類のアミノ酸について標準赤外吸収スペクトルのピーク位置と完全に一致せず、正確に標的物質の特定を行うことができず、また定量分析も正確に行うことができなかった。
<比較例2>
ラマンスペクトルを用いて健康食品Aの分析を行った。
まず、ラマンスペクトルについても、測定をラマン分光器で行ったこと以外は、比較例1と同様に、20種類の各アミノ酸に固有のラマン特性スペクトルを測定し、20種類のアミノ酸について標準ラマンスペクトルを算出することで、健康食品Aの分析を試みた。 しかしながら、図8に示すように、健康食品Aの吸収スペクトルにおいて、蛍光による大きなバックグランドが観測されたため、正確に標的物質であるアミノ酸を特定することができず、定量分析を実施することはできなかった。
<実施例4>
標的物質として、表1に記載の20種類のアミノ酸を使用し、実施例1と同様に、測定温度が室温(297K)、287K、277Kの標準吸収スペクトルを測定、算出した。
次に、分析試料として20種類のアミノ酸の中から数種類を含有する薬剤Bを分析した。薬剤Bは、プラスチックケースに梱包されている錠剤を開封せずにそのまま、実施例1と同様に分析した。ここで、測定温度は室温(297K)、287K、277Kの3点で測定を実施した。
次に、あらかじめ標準スペクトルの測定1と同様に測定した20種類のアミノ酸の各温度の標準吸収スペクトルのピーク位置と比較した。その結果、いくつかのアミノ酸の標準吸収スペクトルのピーク位置と一致するピークが観測された。これらの一致したピークから、各温度においてそれぞれ、薬剤B中に含有するアミノ酸が特定できることがわかった。
さらに、各温度においてそれぞれ、ピーク位置が一致するアミノ酸の標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、薬剤Bから得られる吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を各温度で算出した。それらの各温度で得られた係数から平均値および標準偏差を求め、それをそれぞれ、薬剤Bのアミノ酸含有濃度と濃度誤差範囲とした。
したがって、本発明によれば、プラスチック、紙、布などに梱包された物質であっても、ペレットの分析と同様に、物質中に含有するアミノ酸が特定でき、定量分析できることがわかった。
<比較例3>
比較例として、プラスチックを透過する紫外・可視吸収分光法を利用した。分析試料として薬剤Bを、プラスチックケースに梱包されている錠剤を開封せずにそのまま、実施例6と同様に使用した。
しかしながら、紫外・可視吸収分光法では、標的物質であるアミノ酸からの信号が殆ど観測されないため、定性定量分析が可能な薬剤Bの吸収スペクトルが得ることはできなかった。
<比較例4>
さらに、プラスチックを透過しない赤外吸収分光法を利用した。分析試料として薬剤Bを、開封してすり潰しペレットとして測定した。
しかしながら、開封してすり潰したことにより、空気中の酸素や湿度などによる経時変化が観測されたため、定性定量分析を正確に行うことはできなかった。
<実施例5>
本実施例においては標的物質としてアミノ酸の一種であるグルタミン酸を含んだ分析試料を使用した。分析試料をポリエチレン粉末に混合してプレスし、直径10mm厚さ1.5mm±0.2mmのペレットを作成し、これを分析した。これらの吸収スペクトルの測定を図1の分析装置1を用いて0.1〜10.0テラヘルツの周波数領域において行った。ここで、測定温度は室温(297K)での測定のみを実施した。
次に、あらかじめ標準スペクトルの測定1で測定した20種類のアミノ酸の室温(297K)の標準吸収スペクトルのピーク位置と比較した。その結果、グルタミン酸の標準吸収スペクトルのピーク位置と一致するピークが観測された。図3に示すように、これらの一致したピークから、分析試料に含有するグルタミン酸を特定できることがわかった。
さらに、ピーク位置が一致するアミノ酸の標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる297Kの理論吸収特性スペクトル(図3、4点線)と、分析試料から得られる297Kの吸収スペクトル(図3、4実線)の誤差が最小となる係数を算出した。しかしながら、低周波数領域においてベースラインの誤差が生じた。
そこで、低周波領域において、吸収スペクトル(図5、6実線)から定数を減算し、吸収スペクトルを減少させるベースライン補正を行った。その後、再度、誤差が最小となる係数を算出した。その結果、図5、6に示すように、ベースラインが一致した定量分析に適した理論吸収特性スペクトル得られることがわかった。
本発明の分析装置の概略図である。 (X)は実施例1および実施例2で得られた分析試料の0.5〜3.0テラヘルツの周波数領域における297Kの吸収スペクトル(実線)および理論吸収特性スペクトル(点線)であり、(a)〜(e)はグルタミン、バリン、セリン、アスパラギン、アスパラギン酸のそれぞれの標準吸収スペクトルである。 ベースライン補正を行う前の0.5〜3.0テラヘルツの周波数領域における297Kのグルタミン酸の吸収スペクトル(実線)および理論吸収特性スペクトル(点線)である。 図3の低周波数領域の拡大図である。 ベースライン補正後の0.5〜3.0テラヘルツの周波数領域における297Kのグルタミン酸の吸収スペクトル(実線)および理論吸収特性スペクトル(点線)である。 図5の低周波数領域の拡大図である。 (X)は比較例1で得られた健康食品Aの赤外吸収スペクトルであり、(a)〜(e)はグルタミン、バリン、セリン、アスパラギン、アスパラギン酸のそれぞれの標準赤外吸収スペクトルである。 比較例2でラマン分光法により得られた健康食品Aの吸収スペクトルである。
符号の説明
1…分析装置
2…光源
3…分光器
4…計算器・制御装置
31…光発生器
32…試料
33…光検出器
34…温度可変チャンバ
35…厚さ測定装置計

Claims (6)

  1. 弱い相互作用を有する標的物質を分析試料中から選択的に分析する方法であって、
    該標的物質の弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数の電磁波を分析試料に照射し、透過した電磁波を測定することにより得られる吸収スペクトルのピーク位置を予め得られている該標的物質の標準吸収スペクトルのピーク位置と比較し、
    ピーク位置が一致する標準吸収スペクトルを抽出し、抽出された標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと分析試料から得られる吸収スペクトルとの誤差が最小となる前記係数を算出し、分析試料中の標的物質の濃度を得ることを特徴とする定性定量分析方法。
  2. 前記弱い相互作用が水素結合、ファンデールワールス結合、π電子間相互作用、静電相互作用のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の定性定量分析方法。
  3. 前記標的物質が、アミノ酸(メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、グリシン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、システイン)、アミノ酸誘導体、アミノ酸誘導体の金属塩、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、水和物、重水素化物のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の定性定量分析方法。
  4. 前記標的物質の前記標準吸収スペクトルを予め算出するには、
    前記標的物質の吸収特性スペクトルを弱い相互作用のエネルギーに共鳴する周波数領域で測定し、
    得られた吸収特性スペクトルを標準試料の厚さについて正規化し、その後、標準試料中の標的物質の濃度について正規化し、
    さらに、不適当な周波数範囲を除去することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の定性定量分析方法。
  5. 標準吸収スペクトルの算出と分析試料の吸収スペクトルの測定を複数の温度で行い、
    抽出された前記標準吸収スペクトルと係数の積から得られる理論吸収特性スペクトルと、吸収スペクトルの誤差が最小となる前記係数を各温度で算出し、
    各温度で得られた係数から平均値と標準偏差を算出することで、
    分析試料中の標的物質の濃度とその誤差範囲を得ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の定性定量分析方法。
  6. 分析試料の吸収スペクトルのベースラインを、特定の周波数領域の範囲で、定数、もしくは、周波数に対して一定の関係を有する値を加算または減算することで補正し、得られたベースラインを補正した分析試料の吸収スペクトルと理論吸収特性スペクトルとの誤差が最小となる前記係数を算出し、分析試料中の標的物質の濃度を得ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の定性定量分析方法。
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