JP4731322B2 - ブロック共重合体の組成物 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体組成物に関し、とりわけ透明性及び耐衝撃性に優れ、ブロック共重合体組成物そのものとしても、各種熱可塑性樹脂との配合用としても有用であるブロック共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が比較的高いブロック共重合体は、その透明性や耐衝撃性等の特性を利用して、射出成形用途や、シート、フィルム等の押出成形用途等に幅広く使用されている。
【0003】
とりわけブロック共重合体及びブロック共重合体を配合したスチレン系重合体組成物は、透明性、耐衝撃性等に優れることから、いくつかの提案がなされている。例えば、カップリングに先立つ2つの線状共重合体におけるビニル置換芳香族炭化水素ブロックの高分子量成分と低分子量成分の数平均分子量の比を3〜7とした分岐状ブロック共重合体およびその製造方法(例えば、特開昭53−000286号公報参照)が、そして3つ以上のビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを有する分岐状ブロック共重合体とその製造方法(例えば、特開平07-173232号公報参照)がある。
【0004】
更にはビニル芳香族炭化水素ブロック部の分子量分布を2.3〜4.5とした線状共重合体組成物、あるいはビニル芳香族炭化水素ブロック部の分子量分布が2.8〜3.5で、かつブレンドによって製造される分岐状ブロック共重合体組成物(例えば、特開昭52−078260号公報参照)が、またビニル芳香族炭化水素ブロック部の分子量分布を2.8〜3.5の範囲外とした分岐状ブロック共重合体を組み合わせる方法(例えば、 特開昭57−028150号公報参照)が、夫々記載されている。
【0005】
しかし、これらの方法では、ブロック共重合体及びそれを用いた各種熱可塑性樹脂との組成物は、透明性と耐衝撃性等のバランスが悪く、特に射出成形は高剪断下で成形を行なうため成形品に異方性を生じやすく、ある一方に対して強度が弱くなる等、成形品として十分なものではなかった。
【発明の開示】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、押出成形品やブロー成形品だけでなく射出成形品においても透明性と耐衝撃性等のバランスに優れるブロック共重合体組成物を得るべく種々の検討を行った結果、ビニル芳香族炭化水素を主体とするハードセグメントブロック部と共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部から構成され、カップリング反応により製造されるブロック共重合体において、ある特定構造のハードセグメントブロック部を有するブロック共重合体を2種ブレンドすることにより、押出成形品やブロー成形品のみならず射出成形品においても透明性を悪化することなく耐衝撃性が極めて改良されることを見いだし、本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記を要旨とするものである。
単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジェンからなるブロック共重合体組成物であって、下記の成分A及び成分Bを、成分A/成分B=20〜80/80〜20(質量比)の範囲の混合割合で含有することを特徴とするブロック共重合体の組成物。
【0007】
成分A;
(1)単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンからなり、
(2)下記の式(1)に記載される3種のブロック共重合体の混合物であり、
S1-B1、S2-B1 、(S1-B1)i-X‐(B1-S2)m (1)
(式中、S1、及びS2はビニル芳香族炭化水素を主体とする分子量の異なるハードセグメントブロック部を表し、B1は共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部を表し、B1の数平均分子量は10000〜30000の範囲にある。Xはカップリング剤の残基を示す。i、mは0以上の整数を示し、i+mは1以上8以下である。)
(3)ハードセグメントブロック部が、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部S1及びS2からなり、S1及びS2の数平均分子量をそれぞれM1及びM2とするとき、M1が75000〜170000及びM2が14000〜30000の範囲で、かつその比、M1/M2が4〜9の範囲にあり、S1及びS2の割合がS1/S2=6〜35/65〜94(モル比)の範囲にあり、
(4)カップリング反応により製造されるブロック共重合体の混合物
【0008】
成分B;
(1)単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンからなり、
(2)下記の式(2)に記載される3種のブロック共重合体の混合物であり、
S3-B2、S4-B2 、(S3-B2)n-Y‐(B2-S4)o (2)
(式中、S3、及びS4はビニル芳香族炭化水素を主体とする分子量の異なるハードセグメントブロック部を表し、B2は共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部を表し、B2の数平均分子量は9000〜20000の範囲にある。Yはカップリング剤の残基を示す。n、oは0以上の整数を示し、n+oは1以上8以下である。)
(3)ハードセグメントブロック部が、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部S3及びS4からなり、S3及びS4の数平均分子量をそれぞれM3及びM4とするとき、M3が80000〜160000及びM4が4000〜12000の範囲で、かつその比、M3/M4が13〜22の範囲にあり、S3及びS4の割合がS3/S4=5〜30/70〜95(モル比)の範囲にあり、
(4)カップリング反応により製造されるブロック共重合体の混合物
【発明の効果】
【0009】
本発明で得られるブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体組成物そのもの或いは各種熱可塑性樹脂と配合した樹脂組成物としても、押出成形、ブロー成形、射出成形等、多種多様な成形加工法に供することが出来、いずれにおいても透明性と耐衝撃性のバランスが極めて良好な成形加工品を得ることが出来る。
【0010】
本発明のブロック共重合体組成物から、何故にこのような透明性や耐衝撃性が良好な成形加工品が得えられるかのメカニズムについては、必ずしも明らかではないが、次のように推定される。本発明のブロック共重合体組成物は、その一次分子構造において、平均分子量、分子量分布、組成分布などがこれらの特性の発現に対して有効な範囲にあること、得られた成形体が規則正しいミクロ層分離構造からなり、所謂マクロ層分離構造を発生しないこと(組成物中の成分同士がおよそ1μm以上のマクロ相分離構造を数多く形成する場合、可視光を散乱して透明性が低下する)、及び形成されたミクロ層分離構造中のソフトセグメントが高い連続性をもってつながる比率が高いこと、などのためと思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のブロック共重合体組成物に用いられるビニル芳香族炭化水素としては、スチレン,o−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−tertブチルスチレン,1,3−ジメチルスチレン,α−メチルスチレン,ビニルナフタレン,ビニルアントラセン等で、特に一般的なものとしてはスチレンが挙げられる。これら1種のみならず2種以上の混合物として用いても良い。
【0012】
また、共役ジエンとしては、炭素数が4ないし8の1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン,2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン),2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン,1,3−ペンタジエン,1,3−ヘキサジエン等が挙げられるが、特に一般的なものとしては、1,3−ブタジエン,イソプレンが挙げられる。これら1種のみならず2種以上の混合物として用いても良い。
【0013】
本発明のブロック共重合体組成物は、該共重合体組成物の全質量に基づいて、単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンからなる。
【0014】
該ブロック共重合体組成物が単量体単位として95質量%を超えるビニル芳香族炭化水素および5質量%未満の共役ジエンからなる場合は、該ブロック共重合体組成物の耐衝撃性が劣るようになり好ましくない。一方、該ブロック共重合体組成物が単量体単位として55質量%未満のビニル芳香族炭化水素および45質量%を超える共役ジエンからなる場合も、該ブロック共重合体組成物は透明性、成形加工性、剛性、熱安定性等が劣るようになり、やはり好ましくない。
【0015】
なお該ブロック共重合体組成物が、該共重合体組成物の全質量に基づいて単量体単位として60〜85質量%のビニル芳香族炭化水素および15〜40質量%の共役ジエンからなると、得られるブロック共重合体組成物は耐衝撃性および透明性のバランスが一層良好なものになり好ましく、単量体単位として65〜80質量%のビニル芳香族炭化水素および20〜35質量%の共役ジエンからなると、得られるブロック共重合体組成物の耐衝撃性、透明性、成形加工性等の物性バランスがなお一層良好なものになり、さらに好ましい。
【0016】
本発明のブロック共重合体組成物は、成分A及び成分Bを、成分A/成分B=20〜80/80〜20(質量比)の範囲の混合割合で含有する。
【0017】
ここで成分Aは、(1)単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンからなり、(2)ビニル芳香族炭化水素を主体とするハードセグメントブロック部と共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部から構成され、(3)ハードセグメントブロック部が、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部S1及びS2からなり、S1及びS2の数平均分子量をそれぞれM1及びM2とするとき、M1が75000〜170000及びM2が14000〜30000の範囲で、かつその比M1/M2が4〜9の範囲にあり、S1及びS2の割合がS1/S2=6〜35/65〜94(モル比)の範囲にあり、(4)カップリング反応により製造されるブロック共重合体である。
【0018】
一方の成分Bは、(1)単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンからなり、(2)ビニル芳香族炭化水素を主体とするハードセグメントブロック部と共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部から構成され、(3)ハードセグメントブロック部が、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部S3及びS4からなり、S3及びS4の数平均分子量をそれぞれM3及びM4とするとき、M3が80000〜160000及びM4が4000〜12000の範囲で、かつその比M3/M4が13〜22の範囲にあり、S3及びS4の割合がS3/S4=5〜30/70〜95(モル比)の範囲にあり、(4)カップリング反応により製造されるブロック共重合体である。
【0019】
成分Aが、単量体単位として95質量%を超えるビニル芳香族炭化水素および5質量%未満の共役ジエンからなる場合は、最終的に得られるブロック共重合体組成物の耐衝撃性が劣るようになり好ましくない。一方、成分Aが、単量体単位として55質量%未満のビニル芳香族炭化水素および45質量%を超える共役ジエンからなる場合も、最終的に得られるブロック共重合体組成物は透明性、成形加工性、剛性、熱安定性等が劣るようになり、やはり好ましくない。
なお成分Aが、単量体単位として60〜90質量%のビニル芳香族炭化水素および10〜40質量%の共役ジエンからなると、最終的に得られるブロック共重合体組成物は耐衝撃性および透明性のバランスが一層良好なものになり好ましく、単量体単位として65〜85質量%のビニル芳香族炭化水素および15〜35質量%の共役ジエンからなると、最終的に得られるブロック共重合体組成物の耐衝撃性、透明性、成形加工性等の物性バランスがなお一層良好なものになり、さらに好ましい。
【0020】
次に、成分Aは、ビニル芳香族炭化水素を主体とするハードセグメントブロック部と共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部から構成される。
【0021】
ここで、ビニル芳香族炭化水素を主体とするハードセグメントブロック部とは、単量体単位として70〜100質量%のビニル芳香族炭化水素と0〜30質量%の共役ジエンからなるブロック部を指す。そしてビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部が、単量体単位として80〜100質量%のビニル芳香族炭化水素と0〜20質量%の共役ジエンからなるブロック部であると、最終的に得られるブロック共重合体組成物の剛性が良好になるため好ましく、単量体単位として95〜100質量%のビニル芳香族炭化水素と0〜5質量%の共役ジエンからなるブロック部であると更に好ましく、単量体単位としてビニル芳香族炭化水素からなるブロック部であると一層好ましい。
【0022】
なお、ビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部が、単量体単位としてビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体ブロックである場合、単量体単位の配列様式はランダム構造であってもテーパー構造であってもよく、またブロック構造であっても構わない。なおブロック構造としては、例えば共役ジエンブロック部をD、ビニル芳香族炭化水素ブロック部をVと表した時にV−D−V(なおDの両側のVの重合度は等しくても、異なっていても構わない)で表される構造等が挙げられる。
【0023】
また、共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部とは、単量体単位として60〜100質量%の共役ジエンと0〜40質量%のビニル芳香族炭化水素からなるブロック部を指す。ここで共役ジエンを主体とするブロック部が、単量体単位として70〜100質量%の共役ジエンと0〜30質量%のビニル芳香族炭化水素からなるブロック部であると、得られるブロック共重合体の耐衝撃性が良好になるため好ましく、単量体単位として共役ジエンからなるブロック部であると一層好ましい。なおソフトセグメントブロック部として、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体ブロック部を用いる場合は、単量体の配列様式はテーパー構造であってもランダム構造であってもどちらでも構わないが、好ましくはランダム構造が挙げられる。
【0024】
さらに、成分Aでは、ハードセグメントブロック部が、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部S1及びS2からなり、S1及びS2の数平均分子量をそれぞれM1及びM2とするとき、M1が75000〜170000及びM2が14000〜30000の範囲で、かつその比M1/M2が4〜9の範囲にあり、S1及びS2の割合がS1/S2=6〜35/65〜94(モル比)の範囲にある。
成分Aのハードセグメントブロック部が、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部からなることで、最終的に得られるブロック共重合体組成物の成型加工性が良好になる上に、透明性、耐衝撃性のバランスも良好になる。
【0025】
そして、2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部をS1及びS2と表した時、成分Aでは、それぞれの数平均分子量M1及びM2は、75000〜170000及びM2が14000〜30000の範囲にあることが必須である。S1の数平均分子量M1が75000未満であると、最終的に得られるブロック共重合体組成物の耐衝撃性が劣り170000を越えると、最終的に得られるブロック共重合体組成物の透明性が低下する。S2の数平均分子量M2が14000未満であると、最終的に得られるブロック共重合体組成物の透明性および耐衝撃性が劣り、30000を越えても最終的に得られるブロック共重合体組成物の耐衝撃性が低下する。なお最終的に得られるブロック共重合体組成物の成型加工性、透明性、耐衝撃性のバランスの点から、特に好ましいS1及びS2の数平均分子量の範囲としては、それぞれ100000〜150000、15000〜18000の範囲が挙げられる。
さらに、成分Aでは数平均分子量M1及びM2の比M1/M2が4〜9の範囲にある。比M1/M2が4未満の場合は、最終的に得られるブロック共重合体組成物の成型加工性および耐衝撃性が劣り、比M1/M2が9を越える場合は最終的に得られるブロック共重合体組成物の透明性が劣る。最終的に得られるブロック共重合体組成物の成型加工性、透明性、耐衝撃性のバランスの点から、特に好ましい比M1/M2の範囲としては、5〜8の範囲が挙げられる。
【0026】
また、成分Aでは、S1及びS2の割合としてS1/S2=6〜35/65〜94(モル比)の範囲になるように該2種のブロック部の割合を設定する。これにより最終的に得られるブロック共重合体組成物の成型加工性、透明性、耐衝撃性バランスが良好なものになる。S1の割合が上記範囲の下限未満かつS2の割合が上記範囲の上限を越えるとブロック共重合体の耐衝撃性および透明性が劣り、S1の割合が上記範囲の上限を越えかつS2の割合が上記範囲の下限未満であるとブロック共重合体の成型加工性が低下するとともにやはり耐衝撃性が低下する。なおブロック共重合体の成型加工性、透明性、耐衝撃性のバランスの点から、特に好ましいS1及びS2の割合としてS1/S2=10〜30/70〜90(モル比)の範囲が挙げられる。
ところで、成分Aの分子量は特に制限は無いが、本発明のブロック共重合体組成物の成形加工性の点から好ましい分子量の範囲を例示すると、数平均分子量として60000〜160000、重量平均分子量として90000〜220000となる。更に好ましくは数平均分子量として80000〜140000、重量平均分子量として120000〜200000となる。また成分Aの分子量分布も特に制限は無いが、本発明のブロック共重合体組成物の成形加工性の点から好ましい分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)の範囲を例示すると、1.2〜1.8となり、更に好ましくは1.3〜1.6となる。
そして成分Aはカップリング反応により製造されるブロック共重合体である。成分Aは、炭化水素溶媒中において有機リチウム化合物を開始剤に用いた通常のリビングアニオン重合法により得られる。ここでビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを単量体として使用し、炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤に用いてアニオン重合してリビング活性末端を生成させた後に、カップリング剤を添加してリビング活性末端とカップリング剤を反応させるというカップリング反応を経て合成される。即ちカップリング反応とは、リビング活性部位を片末端に持つポリマー鎖をたばね、かつ結合させることをいう。そしてカップリング剤は、リビング活性部位が攻撃しうる反応サイトを1分子当たり2個以上有する、リビング活性部位を片末端に持つポリマー鎖をたばねかつ結合させることの出来る化合物である。
【0027】
本発明ではカップリング剤には、反応サイトを1分子当たり2点有する2官能性カップリング剤を用いてもよいし、反応サイトを1分子当たり3点以上有する多官能性カップリング剤を用いてもよい。また多官能性カップリング剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上の多官能性カップリング剤を併用してもよく、さらに1種以上の2官能性カップリング剤と1種以上の多官能性カップリング剤の併用も可能である。好ましくは多官能性カップリング剤を1種単独で用いるのがよい。
なお、カップリング反応を行う際、カップリング剤におけるリビング活性部位が攻撃しうる反応サイトは必ずしも完全に反応する必要はなく、一部は反応せずに残っていてもよい。さらに全てのリビング活性部位を片末端に持つポリマー鎖がカップリング剤の反応サイトと全てが反応している必要はなく、反応せずに残ったポリマー鎖が最終的に生成したブロック共重合体に残ってもよい。
【0028】
そして、多官能性カップリング剤を使用した場合には、使用したカップリング剤の反応サイトが完全に反応した際に見込まれる分岐数よりも、少ない分岐数を有するブロック共重合体が、最終的に生成したブロック共重合体に混在していても構わないし、リビング活性部位にカップリング剤が置き換わっただけの、片末端にカップリング剤のみが結合したポリマー鎖が最終的に生成したブロック共重合体に混在していても構わない。
【0029】
このような場合、2官能性カップリング剤を用いた時の成分Aは、使用したカップリング剤の反応サイトが完全に反応したブロック共重合体、リビング活性部位にカップリング剤が置き換わって結合しただけのポリマー鎖、及びカップリング剤の反応サイトと反応せずに残ったポリマー鎖が混在したものとなる。また多官能性カップリング剤を用いた時の成分Aは、使用したカップリング剤の反応サイトが完全に反応した際に見込まれる分岐数に等しい分岐数を持つブロック共重合体、使用したカップリング剤の反応サイトが完全に反応した際に見込まれる分岐数よりも少ない分岐数を有するブロック共重合体、リビング活性部位にカップリング剤が置き換わって結合しただけのポリマー鎖、及びカップリング剤の反応サイトと反応せずに残ったポリマー鎖のいずれか2種以上が混在したものとなる。
ここで、本発明で用いられるカップリング剤としては、四塩化ケイ素や1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン等のクロロシラン系化合物、テトラメトキシシランやテトラフェノキシシラン等のアルコキシシラン系化合物、四塩化スズ、ポリハロゲン化炭化水素、カルボン酸エステル、ポリビニル化合物、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化油脂などが挙げられる。
【0030】
このようなカップリング剤の中で、1分子当たり2個の反応サイトを有する2官能性カップリング剤としてはジメチルジクロロシランやジメチルジメトキシシラン等がある。一方1分子当たり3個以上の反応サイトを有する多官能性カップリング剤としては、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラメトキシシランおよびテトラフェノキシシラン等がある。またエポキシ化油脂も、1分子当たり3個のエステル結合のカルボニル炭素があり、かつ長鎖アルキル基側には最低1個以上のエポキシ基を持つことから、多官能性カップリング剤となる。
【0031】
本発明で好ましく用いられるカップリング剤は多官能性カップリング剤であり、その中で好ましいものとしてエポキシ化油脂が挙げられる。エポキシ化油脂にはエポキシ化大豆油やエポキシ化アマニ油等があるが、なかでもエポキシ化大豆油が特に好ましい。
エポキシ化大豆油やエポキシ化アマニ油のようなエポキシ化油脂は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸のような不飽和酸を含む長鎖カルボン酸混合物のグリセリンエステルをエポキシ化した化合物である。よってこれらを多官能性カップリング剤として用いた場合、反応サイトが完全に反応した時に見込まれるブロック共重合体の分岐数は、リノレン酸残基1個にはエポキシ基3個およびカルボニル基1個が、オレイン酸残基1個にはエポキシ基1個およびカルボニル基1個が、リノール酸残基1個にはエポキシ基2個およびカルボニル基1個が存在するので、それぞれの構造に由来して分岐数5、3及び4のブロック共重合体が生成しうる。即ち反応サイトが完全に反応した時に分岐数3〜5のブロック共重合体組成物が得られ、つまりブロック共重合体の分岐数は最大5となる。
【0032】
続いて成分Bも、(1)単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンからなり、(2)ビニル芳香族炭化水素を主体とするハードセグメントブロック部と共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部から構成され、(4)カップリング反応により製造されるブロック共重合体であるという点は、成分Aと同じであり、成分Aで記載した要件が成分Bについても当てはまる。
しかし、成分Bは、(3)ハードセグメントブロック部が、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部S3及びS4からなり、S3及びS4の数平均分子量をそれぞれM3及びM4とするとき、M3が80000〜160000及びM4が4000〜12000の範囲で、かつその比M3/M4が13〜22の範囲にあり、S3及びS4の割合がS3/S4=5〜30/70〜95(モル比)の範囲にあるという点が、成分Aとは異なる。次にこの点について説明する。
まず、成分Bのハードセグメントブロック部は分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部からなる。これにより最終的に得られるブロック共重合体組成物の成型加工性が良好になる上に、透明性、耐衝撃性のバランスも良好になる点は、成分Aと同じである。
【0033】
しかし、成分Bでは、2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部をS3及びS4と表した時、成分Bでは、それぞれの数平均分子量M3及びM4が、80000〜160000及び4000〜12000の範囲にあることが必須である。S3の数平均分子量M3が80000未満であると最終的に得られるブロック共重合体組成物の耐衝撃性が劣り、160000を越えても最終的に得られるブロック共重合体組成物の耐衝撃性が劣る上に透明性も低下する。S4の数平均分子量M4が4000未満であると、最終的に得られるブロック共重合体組成物の透明性が劣ると同時に流動性が高くなりすぎて成型加工性も不良となる一方、12000を越えても最終的に得られるブロック共重合体組成物の耐衝撃性が低下する。なお最終的に得られるブロック共重合体組成物の成型加工性、透明性、耐衝撃性のバランスの点から、M3は90000〜140000が特に好ましく、また、M4は4000〜12000が特に好ましく、更には5000〜9000が好適である。
さらに、成分Bでは数平均分子量M3及びM4の比M3/M4が13〜22の範囲にあるのが必須である。比M3/M4が13未満の場合は、最終的に得られるブロック共重合体組成物の耐衝撃性が劣り、比M3/M4が22を越える場合は最終的に得られるブロック共重合体組成物の透明性が劣る。最終的に得られるブロック共重合体組成物の成型加工性、透明性、耐衝撃性のバランスの点から、特に好ましい比M1/M2の範囲としては、14〜19の範囲が挙げられる。
【0034】
また、成分Bでは、S3及びS4の割合としてS3/S4=5〜30/70〜95(モル比)の範囲になるように該2種のブロック部の割合を設定する。これにより最終的に得られるブロック共重合体組成物の成型加工性、透明性、耐衝撃性バランスが良好なものになる。S3の割合が上記範囲の下限未満かつS4の割合が上記範囲の上限を越えるとブロック共重合体の耐衝撃性及び透明性が劣り、S3の割合が上記範囲の上限を越え、かつS4の割合が上記範囲の下限未満であるとブロック共重合体組成物の耐衝撃性はやはり劣る上に、成型加工性も低下する。なおブロック共重合体の成型加工性、透明性、耐衝撃性のバランスの点から、特に好ましいS3及びS4の割合としてS3/S4=10〜25/75〜90(モル比)の範囲が挙げられる。
なお、成分Bの分子量は特に制限は無いが、本発明のブロック共重合体組成物の成形加工性の点から好ましい分子量の範囲を例示すると、数平均分子量として60000〜110000、重量平均分子量として100000〜180000となる。更に好ましくは数平均分子量として80000〜90000、重量平均分子量として120000〜150000となる。また成分Bの分子量分布も特に制限は無いが、本発明のブロック共重合体組成物の成形加工性の点から好ましい分子量分布の範囲を例示すると、1.3〜2.0となり、更に好ましくは1.4〜1.8となる。
【0035】
本発明のブロック共重合体組成物は、このような成分A及び成分Bを含有するが、その混合比率は成分A/成分B=20〜80/80〜20(質量比)の範囲である。混合比率がこの範囲にあることにより、成形加工性、耐衝撃性、透明性のバランスの良好なブロック共重合体組成物を得ることが可能となる。
【0036】
混合比率が成分Aが20未満かつ成分Bが80を越える場合は、最終的に得られるブロック共重合体組成物の流動性が高くなりすぎて成型加工性が不良となると同時に透明性も劣るようになる一方、混合比率が成分Aが80を越えかつ成分Bが20未満の場合は、最終的に得られるブロック共重合体組成物の流動性が低下してやはり成形加工性が劣ると共に、衝撃強度が低下するようになる。
【0037】
特に成分A単独では流動性が著しく低く衝撃強度が大きく劣ったブロック共重合体しか、また成分B単独では流動性が著しく高くかつ透明性が大きく劣ったブロック共重合体しか得ることができないが、本発明のように成分Aと成分Bを混合することにより、成形加工性、耐衝撃性、透明性のバランスが良好なブロック共重合体組成物を得ることが出来る。
【0038】
なお、さらに好ましい混合比率としては、成分A/成分B=30〜70/70〜30(質量比)の範囲が挙げられる。
【0039】
本発明の成分A及び成分Bを含有するブロック共重合体組成物の分子量は特に制限は無いが、該ブロック共重合体組成物の成形加工性の点から好ましい分子量の範囲を例示すると、数平均分子量として60000〜140000、重量平均分子量として110000〜200000となる。更に好ましくは数平均分子量として80000〜110000、重量平均分子量として120000〜180000となる。また該ブロック共重合体組成物の分子量分布も特に制限は無いが、該ブロック共重合体組成物の成形加工性の点から好ましい分子量分布の範囲を例示すると、1.4〜2.0となり、更に好ましくは1.4〜1.8となる。
【0040】
本発明における成分A及び成分Bは、前述の通り、炭化水素溶媒中において有機リチウム化合物を開始剤に用いた通常のリビングアニオン重合法により得られる。即ち、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを単量体として使用し、炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤に用いてアニオン重合してリビング活性末端を生成させた後に、カップリング剤を添加してリビング活性末端とカップリング剤を反応させるというカップリング法によって製造される。例えばハードセグメントブロック部としてビニル芳香族炭化水素を単量体とするブロック部を、ソフトセグメントブロック部として共役ジエンを単量体とするブロック部からなる成分Aおよび成分Bを製造する際、初めに開始剤を用いてビニル芳香族炭化水素をアニオン重合した後、これに続いてさらに重合系へ開始剤およびビニル芳香族炭化水素を逐次添加して、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを形成させ、次いで共役ジエンを添加し、最後にカップリング工程を経るという順序によって生成することが可能である。
成分A及び成分Bの製造に用いられる有機溶剤としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素あるいはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素など公知の有機溶剤が使用できる。
【0041】
また、有機リチウム化合物は分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどが使用できる。
【0042】
本発明の成分A及び成分Bの製造においては、少量の極性化合物を溶剤に溶解してもよい。極性化合物は開始剤の効率を改良するため、また共役ジエンのミクロ組成を調整するため、或いはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを共重合する際はランダム化剤として使用される。本発明の成分A及び成分Bの製造に用いられる極性化合物としては、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類、チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホルアミド類、アルキルペンゼンスルホン酸塩、カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられるが、好ましい極性化合物はテトラヒドロフランである。
【0043】
本発明の成分A及び成分Bを製造する際の重合温度は一般に−10℃ないし150℃、好ましくは40℃ないし120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、特に好適には0.5ないし10時間である。また、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガスをもって置換することが望ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液層に維持するのに十分な圧力の範囲で行なえばよく、特に限定されるものではない。さらに重合系内には開始剤及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、たとえば、水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないように留意する必要がある。
【0044】
重合及びカップリング反応終了後、カップリング反応に関係していない活性ブロック共重合体は、水、アルコール、二酸化炭素、有機酸、無機酸等の活性水素を有する物質を重合停止剤として用い、活性末端を不活性化せしめるのに充分な量を添加することにより不活性化される。この際、例えば重合停止剤として水やアルコール類を使用する場合は重合鎖末端に水素が、二酸化炭素を使用する場合はカルボキシル基が導入される。従って、重合停止剤を適当に選ぶことにより末端に種々の官能基を有するブロック共重合体成分を含有するブロック共重合体を製造することもできる。
【0045】
ところで、カップリング剤の添加量は任意の有効量でよいが、好ましくはリビング活性末端に対してカップリング剤の反応サイトが化学量論量以上で存在するように設定する。具体的には、カップリング工程前の重合液中に存在するリビング活性末端のモル数に対して1〜2当量の反応サイトが存在するようにカップリング剤の添加量を設定するのが好ましい。これには例えば、開始剤である有機リチウム化合物の仕込量から反応系に存在するリチウム原子のモル数を算出できるので、このモル数をリビング活性末端のモル数と見なすことにより、所望の当量数の反応サイトが反応系に存在するようにカップリング剤の添加量を決めることが出来る。なおここで当量とは、 反応系に添加したカップリング剤の反応サイト数をリビング活性末端数の倍数として表したものである。
【0046】
ここで、本発明のブロック共重合体組成物が、エポキシ化油脂を用いてカップリングされて合成された成分A及び成分Bを含有するブロック共重合体組成物である場合、該ブロック共重合体組成物におけるエポキシ化油脂残基に存在する開環したエポキシ基残基のモル数の比が、エポキシ化油脂残基に存在するエポキシ基及び該開環したエポキシ基残基の合計のモル数に対して、0.7未満であると、該ブロック共重合体組成物およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性が向上して、透明性、成形加工性を初めとするその他の物性とのバランスが非常に良好なものとなるため、好ましい。前記モル数の比が0.03〜0.65であるとさらに好ましく、なおも好ましくは0.03〜0.5が挙げられる。特にこの比が0.1〜0.3の範囲にある時、該ブロック共重合体組成物の耐衝撃性のなかでも、シャルピー衝撃強度で代表されるノッチ存在下での耐衝撃性が向上し、好ましい。ところでこの比は、カップリング工程におけるカップリング剤の添加量により制御することが出来、好ましくは1〜2当量、さらに好ましくは1〜1.5当量の反応サイトが反応系に存在するようにカップリング剤の添加量を設定するとよい。
【0047】
なお、前記モル数に対する比は、重クロロホルム、重テトラヒドロフラン等の重溶媒や四塩化炭素を用いて、本発明のブロック共重合体組成物をプロトンNMRスペクトル測定することにより求めることができる。
ところで、本発明のブロック共重合体組成物におけるエポキシ化油脂残基に存在する開環したエポキシ基残基のモル数の比が、エポキシ化油脂残基に存在するエポキシ基及び該開環したエポキシ基残基の合計のモル数に対して、0.7未満であるようにするには、該ブロック共重合体組成物を構成する成分A及び成分Bのそれぞれについて、エポキシ化油脂残基に存在する開環したエポキシ基残基のモル数の比を、エポキシ化油脂残基に存在するエポキシ基及び該開環したエポキシ基残基の合計のモル数に対して、0.7未満にしておくことが、該ブロック共重合体組成物およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性、透明性、成形加工性等の物性バランスを良好にする上で好ましい。
【0048】
次に、本発明のブロック共重合体組成物を構成する成分A及び成分Bについて、特に好ましい構造を例示すると、以下のようになる。
【0049】
まず成分Aでは、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部を有するカップリング反応により製造されるブロック共重合体として、下記の(1)に記載される3種のブロック共重合体の混合物等が挙げられる。
S1-B1、S2-B1 、(S1-B1)i-X‐(B1-S2)m (1)
(式中、S1、S2は、ビニル芳香族炭化水素を主体とするハードセグメントブロック部を表し、B1は、共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部を表し、B1の数平均分子量は10000〜30000の範囲にある。Xはカップリング剤の残基を示す。i、mは0以上の整数を示し、i+mは1以上8以下である。)
【0050】
なお、成分Aにおいて、ソフトセグメントブロック部としての共役ジエンを主体とするブロック部B1の分子量は、数平均分子量として10000〜30000の範囲にあることが好ましい。この範囲にあると、透明性、耐衝撃性及び成形加工性のバランスが良好なブロック共重合体を得ることが出来る。ソフトセグメントブロック部B1の数平均分子量が10000未満であると、ブロック共重合体の耐衝撃性が劣り、30000を超えると透明性および成形加工性に劣る。なお透明性、耐衝撃性及び成形加工性のバランスが良好なブロック共重合体を得るための、特に好ましいソフトセグメントブロック部の数平均分子量の範囲として11000〜26000の範囲が挙げられる。またi+mは1以上8以下であると、透明性、耐衝撃性及び成形加工性が良好なブロック共重合体を得ることが出来て好ましく、さらに好ましくは1以上5以下である。
ところで、成分Aは、分岐状ブロック共重合体を65〜90質量%含有することが好ましい。なお、ここで言う分岐状ブロック共重合体とは、(1)に記載されるブロック共重合体の混合物から、カップリング反応に関係しなかった残留ポリマー鎖及びリビング活性部位にカップリング剤が置き換わって結合しただけのポリマー鎖を除いた成分である。
【0051】
成分A中の分岐状ブロック共重合体の含有率はゲルパーミエーションクロマトグラムを用いて以下のように求めることができる。
【0052】
すなわち、成分Aのゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、カップリングに先立つ線状ブロック共重合体S1−B1、S2−B1に対応するピーク面積の和(これが即ち、カップリング反応に関係しなかった残留ポリマー鎖及びリビング活性部位にカップリング剤が置き換わって結合しただけのポリマー鎖のピーク面積となる)を算出し、その値を全ピーク面積の値から引くことで、成分A中における分岐状ブロック共重合体のピーク面積が求められる。
【0053】
このようにして求めた分岐状ブロック共重合体のピーク面積の、全ピーク面積に対する面積割合を百分率で求めることによって成分A中の分岐状ブロック共重合体の含有率を質量%で求めることができる。
【0054】
なお、特に好ましい分岐状ブロック共重合体の含有率は70〜85質量%の範囲が挙げられる。また、成分A中の分岐状ブロック共重合体の含有率が65質量%未満の範囲にあるとブロック共重合体およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性、透明性、成型加工性が劣る場合があり好ましくなく、90質量%を超える範囲にあるとブロック共重合体およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性が劣る場合があり好ましくない。
次に、成分Bは、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部を有するカップリング反応により製造されるブロック共重合体として、下記の(2)に記載される3種のブロック共重合体の混合物等が挙げられる。
S3-B2、S4-B2 、(S3-B2)n-Y‐(B2-S4)o (2)
(式中、S3、S4はビニル芳香族炭化水素を主体とするハードセグメントブロック部を表し、B2は共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部を表し、B2の数平均分子量は9000〜20000の範囲にある。Yはカップリング剤の残基を示す。n、oは0以上の整数を示し、n+oは1以上8以下である。)
【0055】
なお、成分Bにおいて、ソフトセグメントブロック部としての共役ジエンを主体とするブロック部B2の分子量は、数平均分子量として9000〜20000の範囲にあることが好ましい。この範囲にあると、透明性、耐衝撃性及び成形加工性のバランスが良好なブロック共重合体を得ることが出来る。ソフトセグメントブロック部B2の数平均分子量が9000未満であると、ブロック共重合体の耐衝撃性が劣り、20000を超えると透明性および成形加工性に劣る。なお透明性、耐衝撃性及び成形加工性のバランスが良好なブロック共重合体を得るための、特に好ましいソフトセグメントブロック部の数平均分子量の範囲として12000〜16000の範囲が挙げられる。またn+oは1以上8以下であると、透明性、耐衝撃性及び成形加工性が良好なブロック共重合体を得ることが出来て好ましく、さらに好ましくは1以上5以下である。
【0056】
ところで、成分Bは、分岐状ブロック共重合体を65〜90質量%含有することが好ましい。なお、ここで言う分岐状ブロック共重合体とは、(2)の記載されるブロック共重合体の混合物から、カップリング反応に関係しなかった残留ポリマー鎖及びリビング活性部位にカップリング剤が置き換わって結合しただけのポリマー鎖を除いた成分である。成分B中の分岐状ブロック共重合体の含有率はゲルパーミエーションクロマトグラムを用いて、成分Aの時と同様の方法により求めることができる。
【0057】
特に好ましい成分B中の分岐状ブロック共重合体の含有率は70〜85質量%の範囲が挙げられる。また、成分B中の分岐状ブロック共重合体の含有率が65質量%未満の範囲にあるとブロック共重合体およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性、透明性、成型加工性が劣る場合があり好ましくなく、90質量%を超える範囲にあるとブロック共重合体およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性が劣る場合があり好ましくない。
なお本発明のブロック共重合体組成物は成分A及び成分Bを混合して得る。ここで混合の方法には特に制限はなく、成分A及び成分Bの重合後の不活性化した溶液を混合して得てもよいし、成分A及び成分Bのペレットを混合して押出機で溶融混練してもよい。
【0058】
本発明のブロック共重合体組成物には、必要に応じてさらに各種の添加剤を配合することができる。ブロック共重合体が各種の加熱処理を受ける場合や、その成形品などが酸化性雰囲気や紫外線などの照射下にて使用され物性が劣化することに対処するため、また使用目的に適した物性をさらに付与するため、たとえば安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、耐候性向上剤、軟化剤、可塑剤、顔料などの添加剤を添加できる。
【0059】
安定剤としては、例えば2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートや、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0060】
また、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチルなどの脂肪酸エステルやペンタエリスリトール脂肪酸エステル、さらにエルカ酸アマイド、オレイン酸アマイド、ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アマイドや、エチレンビスステアリン酸アマイド、またグリセリン−モノ−脂肪酸エステル、グリセリン−ジ−脂肪酸エステル、その他にソルビタン−モノ−パルミチン酸エステル、ソルビタン−モノ−ステアリン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどに代表される高級アルコールなどが挙げられる。
【0061】
さらに、耐候性向上剤としては2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系や2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどのサリシレート系、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、また、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどのヒンダードアミン型耐候性向上剤が例として挙げられる。さらにホワイトオイルや、シリコーンオイルなども加えることができる。
【0062】
これらの添加剤は本発明のブロック共重合体組成物中、0〜5質量%以下の範囲で使用することが望ましい。
【0063】
このようにして得た本発明のブロック共重合体組成物は、従来公知の任意の成形加工方法、例えば、押出成形,射出成形,中空成形などによってシート,発泡体,フィルム,各種形状の射出成形品,中空成形品,圧空成形品,真空成形品,2軸延伸成形品等極めて多種多様にわたる実用上有用な製品に容易に成形加工出来る。
本発明のブロック共重合体組成物は、必要に応じて各種熱可塑性樹脂と配合して樹脂組成物とすることができる。
【0064】
使用できる熱可塑性樹脂の例としては、ポリスチレン系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体、ポリエチレン系重合体、ポリプロピレン系重合体、ポリブテン系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体、ポリ酢酸ビニル系重合体、ポリアミド系重合体、熱可塑性ポリエステル系重合体、ポリアクリレート系重合体、ポリフェノキシ系重合体、ポリフェニレンスルフィド系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアセタール系重合体、ポリブタジエン系重合体、熱可塑性ポリウレタン系重合体、ポリスルフィン系重合体等が挙げられるが、好ましい熱可塑性樹脂はスチレン系重合体であり、とりわけポリスチレン樹脂、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体が好適に使用できる。
【0065】
本発明のブロック共重合体組成物と熱可塑性樹脂との配合質量比は、好ましくはブロック共重合体組成物/熱可塑性樹脂=3/97〜90/10である。前記ブロック共重合体組成物の配合量が3質量%未満の場合には、生成樹脂組成物の耐衝撃性の改良効果が充分でなく、また熱可塑性樹脂の配合量が10質量%未満の場合は熱可塑性樹脂の配合による剛性等の改善効果が充分でないので好ましくない。特に好ましい該ブロック共重合体組成物と熱可塑性樹脂との配合質量比は、ブロック共重合体組成物/熱可塑性樹脂=30/70〜80/20であり、さらに好ましくはブロック共重合体組成物/熱可塑性樹脂=40/60〜70/30である。
【0066】
以下に本発明を、実施例を用いて説明する。なお本発明の内容をこれらの実施例に限定するものではない。ところで実施例および比較例において示すデータは、下記方法に従って測定した。
全光線透過率および曇価はJIS−K7105、シャルピー衝撃強度はJIS K−7111(ノッチ付き)に準拠し、射出成形機により樹脂ペレットから試験片を成形して測定した。
落錘衝撃強度は、厚さ2mmの平板を射出成形機により成形し、落錘グラフィックインパクトテスター(東洋精機製作所の計装化落錘衝撃試験機の商標)を用いて、高さ62cmより質量6.5kgの重鎮をホルダー(径40mm)に固定した試験片平面上に自然落下させ、重鎮下部に設けてあるストライカー(径12.7mm)によって試験片を完全破壊または貫通させ、この時に要した全エネルギー(全吸収エネルギーと称す)を測定した。
ブロック共重合体組成物中のポリブタジエンゴム成分量(PBd量)は、二重結合に塩化ヨウ素を付加して測定するハロゲン付加法により求めた。
高温下における流動性(MFR)はJIS K−7210に準拠し測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は、下記の測定条件1および測定条件2によった。
【0067】
[測定条件1]
溶媒(移動相):THF
流速:1.0ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー社製TSKguardcolumn MP(×L)6.0mmID×4.0cm,1本、及び東ソー社製TSK−GEL MULTIPORE HXL−M、7.8mmID×30.0cm(理論段数16000段)2本の計3本をこの順序にて配列(全体として理論段数32000段)、
サンプル注入量:100μL(試料液濃度1mg/ml)
送液圧力:39kg/cm
検出器:RI検出器
[測定条件2]
溶媒(移動相):THF
流速:0.2ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:昭和電工製KF−G 4.6mmID×10cm 1本、および昭和電工製
KF−404HQ 4.6mmID×250cm(理論段数25000段)
4本の計5本をこの順序で配列(全体として理論段数100000段))
サンプル注入量:10μL(試料液濃度2mg/ml)
送液圧力:127kg/cm
検出器:RI検出器
【0068】
なお、共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部の数平均分子量の測定は次の様に行った。成分Aの場合は、S1及びS2の混合物の測定条件1のGPCによるクロマトグラム上の対応する各ピークの数平均分子量の値をそれぞれM1、M2とし、S1-B1及びS2-B1の混合物の測定条件2のGPCによるクロマトグラム上の対応する各ピークの数平均分子量の値をそれぞれM5、M6としたとき、下記式により得られる値Xを、ソフトセグメントブロック部の数平均分子量のポリスチレン換算値とした。
X={(M5−M1)+(M6−M2)}/2
続いて分子量既知の標準ポリブタジエンをGPCで測定してこれら標準ポリブタジエンのポリスチレン換算分子量を求める事で得た、ポリスチレン換算分子量値Xから絶対分子量値Yへの変換式Y=0.58×Xを用いて、共役ジエンの単独重合体からなるソフトセグメントブロック部の数平均分子量を算出した。
【0069】
成分Bについても、S3及びS4の混合物の測定条件1のGPCによるクロマトグラム上の対応する各ピークの数平均分子量の値をそれぞれM3、M4とし、S3-B2及びS4-B2の混合物の測定条件2のGPCによるクロマトグラム上の対応する各ピークの数平均分子量の値をそれぞれM7、M8としたとき、下記式により得られる値Xを、ソフトセグメントブロック部の数平均分子量のポリスチレン換算値とした。
X={(M7−M3)+(M8−M4)}/2
続いて、成分Aの場合と同様にして、ソフトセグメントブロック部の数平均分子量を算出した。
【0070】
次に、成分A及び成分B中に含まれる分岐状ブロック共重合体の含有率はゲルパーミエーションクロマトグラムを用いて以下に述べる方法により求めた。
成分Aの場合、まずカップリングに先立つ線状ブロック共重合体S1−B1及びS2−B1に対応するピークについて、3段目ブタジエン重合完結後のサンプリング物のゲルパーミエーションクロマトグラムから得られるS1−B1及びS2−B1に対応する成分のピークトップ分子量M5及びM6を測定した。
【0071】
次に、最終的に得られた成分Aのゲルパーミエーションクロマトグラム上でM5、M6のそれぞれの分子量を持つピークを選定することによりS1−B1及びS2−B1に対応するピークを帰属した。
帰属されたS1−B1及びS2−B1に対応する成分のピークの面積は、それぞれ隣接するピークの間の谷間からベースラインに向かって垂線を降ろし、ベースラインと垂線で囲まれる部分のピークの面積として算出した。
【0072】
次に、この2種の成分のピークの面積の和を算出し、その値を成分Aの全体のクロマトグラムの面積の値から引くことで、成分A中の分岐状ブロック共重合体のピーク面積を求めた。このようにして求めた分岐状ブロック共重合体のピーク面積の、成分Aの全体のクロマトグラムの面積に対する面積割合を百分率で求めることによって成分A中の分岐状ブロック共重合体の含有率を質量%で求めた。
成分Bについても、成分Aと同様にして、成分B中の分岐状ブロック共重合体の含有率を質量%で求めた。
なお、成分AにおけるS1及びS2のモル比は次のように求めた。S1及びS2の混合物の測定条件1のGPCによるクロマトグラムにおいて、成分S1及び成分S2に対応する各ピークのピークトップ分子量値をそれぞれMp1及びMp2とし、各ピークの面積比をそれぞれA1及びA2として、下記式によりS1及びS2のモル比を算出した。
S1:S2(モル比)=(A1/Mp1):(A2/Mp2)
また、成分Bについても、成分Aと同様にして、成分BにおけるS3及びS4のモル比を求めた。
【0073】
また、ブロック共重合体組成物におけるエポキシ化油脂残基に存在する開環したエポキシ基残基のモル数の、エポキシ化油脂残基に存在するエポキシ基及び開環したエポキシ基残基の合計のモル数に対する比は、プロトンNMRスペクトル測定により、次のように求めた。
まず試料40mgを1mlの重クロロホルムに溶解して、日本電子製JNM−α500FT−NMRを用いて、次の条件でプロトンNMRスペクトルを測定した。
パルス幅=5.90μs(45°)、データポイント=16384、繰り返し時間=7.0480秒、ADコンバーター=32Kビット、積算回数=792、サンプル管=5mmφ、測定温度=室温
得られたプロトンNMRスペクトルにおいて、エポキシ化油脂残基に存在するエポキシ基に由来するメチンプロトン(図1の●印のついたプロトン)のピークは2.8〜3.2ppmに現れる。一方、エポキシ化油脂残基に存在する開環したエポキシ基残基に由来するメチンプロトン(図2の◎印のついたプロトン)のピークは3.75ppmに現れる。
【0074】
これにより、2.8〜3.2ppmのケミカルシフトのピーク(面積をMとする)と3.75ppmのケミカルシフトのピーク(面積をNとする)を用いて下記式により、ブロック共重合体組成物におけるエポキシ化油脂残基に存在する開環したエポキシ基残基のモル数の、エポキシ化油脂残基に存在するエポキシ基及び該開環したエポキシ基残基の合計のモル数に対する比Rを算出した。
R=(2×N)/(M+2×N)
なお、成分A及び成分Bにおけるエポキシ化油脂残基に存在する開環したエポキシ基残基のモル数の、エポキシ化油脂残基に存在するエポキシ基及び開環したエポキシ基残基の合計のモル数に対する比も、プロトンNMRスペクトル測定により、ブロック共重合体組成物の場合と同様にして求めた。
【0075】
[実施例1]
まず、成分Aを以下のように合成した。
内容積3Lのジャケット・撹拌機付きステンレス製重合槽を、シクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において、テトラヒドロフラン150ppmを含む、水分含量6ppm以下に脱水したシクロヘキサン1233gを重合槽に仕込み、次に水分含量5ppm以下に脱水したスチレン129gを加えた。内温50℃に昇温後、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液(モル濃度1.2mol/l)を1.5ml添加し最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(1段目重合)。
【0076】
次に、内温50℃一定の条件下で、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を7.8ml、続いて水分含量5ppm以下に脱水したスチレンを171g添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(2段目重合)。
【0077】
2段目重合完結後サンプリングを行ない、サンプリングした重合液をトルエンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより得た固形分のGPC測定を測定条件1で行ったところ、該サンプリング物中には2種のポリスチレン鎖が存在し、それぞれの数平均分子量を高い順にM1、M2としたとき、M1=95300、M2=15700であった。
さらに、内温80℃に昇温後、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエンを111g添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(3段目重合)。
【0078】
3段目重合完結後サンプリングを行ない、サンプリングした重合液をトルエンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより得た固形分のGPC測定を測定条件2で行ったところ、該サンプリング物中には2種のポリマー鎖(分子量の異なるスチレン−ブタジエンジブロック共重合体)が存在し、その数平均分子量(ポリスチレン換算値)を高い順にそれぞれM5、M6とするとき、M5=119500、M6=36300であった。
逐次重合完了後に内温80℃一定条件下で、エポキシ化大豆油Vikoflex7170(ATOFINA CHEMICALS社)1.4g(1.3当量に相当)をシクロヘキサン10ml中に溶解させた溶液を添加し、30分間カップリング反応を行った(カップリング工程)。
ここで、エポキシ化大豆油Vikoflex7170の添加量の決定方法を説明する。Vikoflex7170は分子量1000、オキシラン酸素含量7.1%であることから、Vikoflex7170は1モル当たり4.4モルのエポキシ基を有する。一方でVikoflex7170は1モル当たり3モルのカルボニル基を持つことから、Vikoflex7170は1モル当たり10.4モルのカップリング反応サイトを有することになる。ところで1段目重合及び2段目重合において添加したn−ブチルリチウム量から、反応系に存在するリチウム原子は0.0112モルと算出される。よってリチウム活性末端の1.3当量分のVikoflex7170の質量は、
0.0112(モル)×1.3(当量)×1000/10.4=1.4g
と計算される。
最後に、全ての重合活性末端をメタノールにより失活させて、成分Aの重合液(ポリマー濃度25質量%)を得た。
なお、メタノール失活後にサンプリングを行ない、サンプリングした重合液をトルエンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより成分Aの固形分を得た。
【0079】
次に、成分Bを以下のように合成した。
内容積3Lのジャケット・撹拌機付きステンレス製重合槽を、シクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において、テトラヒドロフラン150ppmを含む、水分含量6ppm以下に脱水したシクロヘキサン1222gを重合槽に仕込み、次に水分含量5ppm以下に脱水したスチレン189gを加えた。内温50℃に昇温後、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を1.5ml添加し最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(1段目重合)。
【0080】
次に、内温50℃一定の条件下で、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を10.0ml、続いて水分含量5ppm以下に脱水したスチレンを76g添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(2段目重合)。
【0081】
2段目重合完結後サンプリングを行ない、サンプリングした重合液をトルエンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより得た固形分のGPC測定を測定条件1で行ったところ、該サンプリング物中には2種のポリスチレン鎖が存在し、それぞれの数平均分子量を高い順にM3、M4としたとき、M3=91100、M4=6000であった。
さらに、内温80℃に昇温後、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエンを143g添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(3段目重合)。
【0082】
3段目重合完結後サンプリングを行ない、サンプリングした重合液をトルエンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより得た固形分のGPC測定を測定条件2で行ったところ、該サンプリング物中には2種のポリマー鎖(分子量の異なるスチレン−ブタジエンジブロック共重合体)が存在し、その数平均分子量(ポリスチレン換算値)を高い順にそれぞれM7、M8とするとき、M7=118400、M8=26700であった。
逐次重合完了後に内温80℃一定条件下で、エポキシ化大豆油Vikoflex7170(ATOFINA CHEMICALS社)1.5g(1.1当量に相当)をシクロヘキサン10ml中に溶解させた溶液を添加し、30分間カップリング反応を行った(カップリング工程)。
最後に、全ての重合活性末端をメタノールにより失活させて、成分Bの重合液(ポリマー濃度25質量%)を得た。
なおメタノール失活後にサンプリングを行ない、サンプリングした重合液をトルエンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより成分Bの固形分を得た。
【0083】
続いて、成分A及び成分Bの重合液をそれぞれ1300gづつ、等量計量して、両者をよく混合した。この混合重合液をシクロヘキサンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより粉末状のポリマーを得た。
【0084】
最後に、この粉末状のポリマー100質量部に対して安定剤として2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾールを0.2質量部の割合で添加した後、粉末状ポリマーを20mm単軸押出機に供給して210℃でダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷後カッターにて切断してペレット状の樹脂(ブロック共重合体組成物)を得た。各種仕込み値を表1及び表5に、各種分析値を表2〜4及び表6〜9に、固体物性評価結果を表10にそれぞれ示す。
【0085】
[実施例2〜9および比較例1〜8]
実施例2〜9及び比較例1〜8は、表1、表5、表12及び表16に示す容積の重合槽と原料の仕込み量を用いた以外は、実施例1と同様にして、成分Aおよび成分Bを合成し、これらを混合してブロック共重合体組成物を製造しペレットを得た。各種分析値を表2〜4、表6〜9、表13〜15及び表17〜20に、固体物性評価結果を表10及び表21に示す。
なお、GPCの測定は2段目重合完結後の測定を測定条件1で、3段目重合完結後の測定を測定条件2で、得られた成分A、成分B及びブロック共重合体組成物のゲルパーミエーションクロマトグラムの測定を測定条件2で行なった。
【0086】
[実施例10〜18および比較例9〜16]
実施例1〜9および比較例1〜8で得られたブロック共重合体組成物と汎用ポリスチレン(東洋スチレン(株)社製:G14L)とを、表11及び表22記載のブロック共重合体組成物/汎用ポリスチレンの重量比率でブレンドした後、20mm単軸押出機に供給して230℃でダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。その後実施例1と同様に物性を評価した。結果を表11及び表22に示す。
【0087】
【表1】
Figure 0004731322
【0088】
【表2】
Figure 0004731322
【0089】
【表3】
Figure 0004731322
【0090】
【表4】
Figure 0004731322
【0091】
【表5】
Figure 0004731322
【0092】
【表6】
Figure 0004731322
【0093】
【表7】
Figure 0004731322
【0094】
【表8】
Figure 0004731322
【0095】
【表9】
Figure 0004731322
【0096】
【表10】
Figure 0004731322
【0097】
【表11】
Figure 0004731322
【0098】
【表12】
Figure 0004731322
【0099】
【表13】
Figure 0004731322
【0100】
【表14】
Figure 0004731322
【0101】
【表15】
Figure 0004731322
【0102】
【表16】
Figure 0004731322
【0103】
【表17】
Figure 0004731322
【0104】
【表18】
Figure 0004731322
【0105】
【表19】
Figure 0004731322
【0106】
【表20】
Figure 0004731322
【0107】
【表21】
Figure 0004731322
【0108】
【表22】
Figure 0004731322
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のブロック共重合体組成物は各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の改質材,履物の素材,粘着剤・接着剤の素材,アスファルトの改質材,電線ケーブルの素材,加硫ゴムの改質材等、従来ブロック共重合体が利用されている用途に使用することができる。
特に、本発明のブロック共重合体組成物を各種熱可塑性樹脂配合した組成物は、シート及びフィルム用の素材として有効であり、優れた透明性,耐衝撃性及び低温特性を生かして食品包装容器の他、日用雑貨包装用,ラミネートシート・フィルムとしても活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1:エポキシ化油脂残基に存在するエポキシ基に由来するメチンプロトン(図1の●印のついたプロトン)
図2:エポキシ化油脂残基に存在する開環したエポキシ基残基に由来するメチンプロトン(図2の◎印のついたプロトン)

Claims (12)

  1. 単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジェンからなるブロック共重合体組成物であって、下記の成分A及び成分Bを、成分A/成分B=20〜80/80〜20(質量比)の範囲の混合割合で含有することを特徴とするブロック共重合体の組成物。
    成分A;
    (1)単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンからなり、
    (2)下記の式(1)に記載される3種のブロック共重合体の混合物であり、
    S1-B1、S2-B1 、(S1-B1)i-X‐(B1-S2)m (1)
    (式中、S1、及びS2はビニル芳香族炭化水素を主体とする分子量の異なるハードセグメントブロック部を表し、B1は共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部を表し、B1の数平均分子量は10000〜30000の範囲にある。Xはカップリング剤の残基を示す。i、mは0以上の整数を示し、i+mは1以上8以下である。)
    (3)ハードセグメントブロック部が、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部S1及びS2からなり、S1及びS2の数平均分子量をそれぞれM1及びM2とするとき、M1が75000〜170000及びM2が14000〜30000の範囲で、かつその比、M1/M2が4〜9の範囲にあり、S1及びS2の割合がS1/S2=6〜35/65〜94(モル比)の範囲にあり、
    (4)カップリング反応により製造されるブロック共重合体の混合物。
    成分B;
    (1)単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンからなり、
    (2)下記の式(2)に記載される3種のブロック共重合体の混合物であり、
    S3-B2、S4-B2 、(S3-B2)n-Y‐(B2-S4)o (2)
    (式中、S3、及びS4はビニル芳香族炭化水素を主体とする分子量の異なるハードセグメントブロック部を表し、B2は共役ジエンを主体とするソフトセグメントブロック部を表し、B2の数平均分子量は9000〜20000の範囲にある。Yはカップリング剤の残基を示す。n、oは0以上の整数を示し、n+oは1以上8以下である。)
    (3)ハードセグメントブロック部が、分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を主体とするブロック部S3及びS4からなり、S3及びS4の数平均分子量をそれぞれM3及びM4とするとき、M3が80000〜160000及びM4が4000〜12000の範囲で、かつその比、M3/M4が13〜22の範囲にあり、S3及びS4の割合がS3/S4=5〜30/70〜95(モル比)の範囲にあり、
    (4)カップリング反応により製造されるブロック共重合体の混合物。
  2. 成分A及び成分Bが、開始剤を用いてビニル芳香族炭化水素をアニオン重合した後、重合系へ開始剤及びビニル芳香族炭化水素を逐次添加して分子量の異なる2種のビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを形成させ、次いで共役ジエンを添加してブロック共重合体を形成し、更にカップリング剤を用いてカップリング反応を行うことにより得られた3種のブロック共重合体の混合物である請求項1に記載のブロック共重合体の組成物。
  3. ビニル芳香族炭化水素がスチレンであり、共役ジエンがブタジエンである請求項1又は2に記載のブロック共重合体の組成物。
  4. 成分A及び成分Bが、カップリング剤としてエポキシ化油脂を用いてカップリングさせたブロック共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のブロック共重合体の組成物。
  5. エポキシ化油脂がエポキシ化大豆油である請求項に記載のブロック共重合体の組成物。
  6. 成分A及び成分Bを含有するブロック共重合体組成物におけるエポキシ化油脂残基に存在する開環したエポキシ基残基のモル数の比が、エポキシ化油脂残基に存在するエポキシ基及び該開環したエポキシ基残基の合計のモル数に対して、0.7未満である請求項5は6に記載のブロック共重合体の組成物。
  7. 炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素をアニオン重合(1段目重合)し、さらに、有機リチウム化合物とビニル芳香族炭化水素を加えて重合(2段目重合)を行い、ブロック重合体を形成し、次いで、共役ジエンを加えて重合(3段目重合)を行い、ブロック共重合体の形成を行った後、カップリング剤としてエポキシ化油脂を用いてカップリング反応を行い、その後、重合活性末端をメタノールにより失活させて製造した成分Aと、
    炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素をアニオン重合(1段目重合)し、さらに、有機リチウム化合物とビニル芳香族炭化水素を加えて重合(2段目重合)を行い、ブロック重合体を形成し、次いで、共役ジエンを加えて重合(3段目重合)を行い、ブロック共重合体の形成を行った後、カップリング剤としてエポキシ化油脂用いてカップリング反応を行い、その後、重合活性末端をメタノールにより失活させて製造した成分Bと、
    を混合することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のブロック共重合体の組成物の製造方法。
  8. 成分Aと成分Bとを溶液状態で混合する、請求項7に記載のブロック共重合体の組成物の製造方法。
  9. 成分Aと成分Bとを溶液状態で混合した後、メタノール中に注いでポリマーを析出させて真空乾燥して粉末状のポリマーとする、請求項7又は8に記載のブロック共重合体の組成物の製造方法。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載のブロック共重合体の組成物と、それ以外の熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂の組成物。
  11. 請求項1〜6のいずれかに記載のブロック共重合体の組成物からなる成形体。
  12. 請求項10に記載の熱可塑性樹脂の組成物からなる成形体。
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