JP4731004B2 - ロータウインデイジナット - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、概してターボ機械に関し、具体的にはロータまたはステータ組立体のセクションを一体に締結するボルトに使用されるナットの新設計に関する。
【０００２】
【従来技術】
軸方向に延びる締結ボルト（以下、単に「ボルト」ともいう。）は、発電用タービンなどの回転機械において、タービン段、ノズルおよびスペーサなどの様々な構成要素をロータのコア軸上に（または、ステータ組立体における他の構成要素を）一体に固定するのに使用される。通常、これらのボルトは、ロータの周りに円周方向に間隔を置いて配置され、組合されるナットを収容するために環状のロータ空洞または溝が設けられる。
【０００３】
ロータおよびステータの両構成要素により区画される空洞に延びるボルトで締結することは、ロータ周辺域に空気がポンピングされるため、それらの空洞における空気の流れに非常に影響を与える可能性がある。このポンピング作用は、ボルトがロータ上にある場合空気の接線速度を増大させ、ボルトがステータ上にある場合は、その接線速度を減少させる。方向に関係なく、加速することでガスの摩擦熱が生じ、ガスの温度および隣接した構成要素の温度が上昇する。
【０００４】
このいわゆる「ウインデイジ」は、ウインデイジが機械からのエネルギーを使用するため効率を悪くし、また、構成要素が高温になることで構成要素の寿命が限られるため、望ましくない。ナットおよびボルトにカバーを施し、生じるであろうポンピングを減少させることによってウインデイジを最小限にするという考え方が幾つか開発されてきた。カバーは別体の部品とすることができるし、あるいは、カバーを、分割された扇形部分が空洞に対して３６０度の表面をもたらすようなナットの形状にすることもできる。後者の提案は、本出願人の地上用ガスタービンのいくつかのロータの一端に使用されている。さらに詳細にいうと、ナット自身が、ロータおよびステータ構成要素間にある空気空洞の壁の一部を構成している。各ナットは複合周縁表面を持ち、その半径方向外側部は概してロータの湾曲と形状が一致しており、また、両側に延びる一対の片持ちの「ウイング」を構成する。ナットの中央にある大きな穴は、従来どおり、ボルトを受入れるねじ山を持つ。センタ穴の両側にあるそれより小さい２つの穴は、すなわち、「ウイング」の下方にあるが、ナットの重さを軽減するために設けられる。しかしながら、この形状特色を備えているにも拘らず、各ナットの重量は９．５ポンド（ｌｂｓ）をわずかに超えてしまう。
【０００５】
ナットにある「ウイング」は隣接するナット間のスペースを架橋し、隣接したナットの「ウイング先端」は、お互いに近接しているが、接触してはいない。従って、組立てられたナットの外側表面は、それらがその空洞の壁の一部を形成するロータ〜ステータの空洞に、実質的に連続した滑らかな表面をもたらす。ナットの壁の厚さは領域が異なると変化し、この不均一性が剛性の変化をもたらし、そのことからボルトへの荷重の伝達において円周方向での差を生じる原因となる。同様に、ウイング（本質的にナットの側面からの片持ちである）により、ナットの側面および底部に引張荷重が生じ、さらにナットの上部、すなわち、センタ穴の直上に圧縮荷重が生じる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、既存の後部ウインデイジナットの設計を改善したものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
特に、ナットのウイング領域が片持ち設計から支え壁設計に変更されることで、さらにスムーズでさらに均一化された形とすることができ、これにより同様に様々な厚さもさらに均一化することが可能になる。薄い支え壁により、ウイングにかかる荷重がナットのフープ方向にさらに均一に伝達され、荷重の均一化が進む。この均一な壁の厚さが重量の軽減をもたらし、結果としてボルトに伝達されるピークおよび平均荷重を軽減する。
【０００８】
正味断面降伏に関連するナット自身の応力も低くなる。ナットのウインデイジ形状特色、すなわちウイングの重量をさらに効率的に支えることでナット自身の重量の軽減が可能になる。
【０００９】
従って、本発明は、その中にねじ山付センタ穴を持つナット本体と；センタ穴にまたがって両側方向に延び一対のウイング部分を構成するセンタ穴の片側の第１の周縁表面と；ウイング部分を支える一対の支え壁部分とを含み、支え壁部分が、第１の周縁表面の両端にそれぞれ接合され、かつセンタ穴の反対側の丸みのある表面で互いに接合される第２および第３の周縁表面を持つ、ロータ締結ボルト用ナットに関する。
【００１０】
別の形態において、本発明は、ロータ構成要素が軸方向に延びる複数の締結ボルトにより一緒に固定され、各ボルトがボルトの１端部にねじ込まれたナットを有する回転機械用ロータ本体であって、ロータには、その中で複数のボルトが終端し、かつ複数のナットが配置される環状の空洞を形成されており、各ナットが、ねじ山付センタ穴を持つナット本体と；センタ穴にまたがって両側方向に延び一対のウイング部分を構成するセンタ穴の片側の第１の周縁表面と；ウイング部分を支える一対の支え壁部分とを含み、支え壁部分が、第１の周縁表面の両端にそれぞれ接合され、かつセンタ穴の反対側の丸みのある表面で互いに接合される第２および第３の周縁表面を持つ、回転機械用ロータ本体を提供する。
【００１１】
【発明の実施の形態】
図１は、ガス・タービンのロータなどの、回転機械のロータ１０を部分的に示し、その一部が、溝１２の回りに配置された複数のロータウインデイジナット１４を収容する円周方向の環状溝１２が形成され、同数の複数の締結ボルト１６のねじ山付端部をナットに受入れるようになっている。ステータ１８が部分的に示され、ステータ１８はロータ１０を取囲み、両者間に半径方向のギャップ２０を備えていることが解る。
【００１２】
図２は、センタ穴２２を形成された従来のロータウインデイジナット１４の周縁部形状を示し、センタ穴２２の内面は、ボルト１６のねじ山付の端部を受入れるためにねじ山が付いている。補足的な２つの小さい穴２４および２６が、それぞれのウイング部分２８、３０にそれぞれ設けられているが、これらは、単にナット全体の重量を軽減するためである。ナットは、センタ穴２２にまたがる第１の周縁表面３２およびウイング部分２８、３０を含んでいるのが解る。表面３２は、ロータ１０の湾曲と実質的に同一の湾曲を持つ。複数の同様のウインデイジナット１４が、湾曲した表面部分３２が、空洞または溝１２の周りに実質的に連続した周縁表面を形成するようにロータの周縁の環状溝１２内に取り付けられ、ウインデイジの影響が最小化される。
【００１３】
また、各ナット１４には湾曲した面３４、３６が設けられ、表面部分３２と協同して両側のウイング部分２８、３０を形成する。内側表面３８および４０は、底部または基部表面４２で接合されることで、ナットの周縁部形状が完成する。ウイング部分２８および３０は、本質的にナットの主要部分から片持ちの形になっていることが解る。この配置および壁の厚さが明らかに均一でないことから生じる欠点は、上記に説明されている。
【００１４】
次いで図３には、本発明による改良設計のウインデイジナット４４が示されている。重複するが、ここには、センタ穴４６があり、センタ穴の内面にはボルト１６のねじ山付の端部を受入れるねじ山が設けられいる。概して三角形形状をしている２つの穴４８、５０が、一対の両側ウイング部分５２、５４内にそれぞれ設けられている。ナットの外側周縁表面５６（すなわち「第１の周縁表面５６」、以下、単に「表面５６」ともいう。）は図２のナットの表面３２と同様であり、複数のナット４４が円周の溝１２内に整列されると、同様の複数の表面５６が、図３から明らかなように、ロータの周りに実質的に連続した周縁表面を形成する。
【００１５】
両側ウイング端部表面５８および６０は、実質的に真直ぐな表面６２、６４（すなわち「第２および第３の周縁表面６２、６４」、以下、単に「表面６２、６４」ともいう。）に合流し、真直ぐな表面６２、６４は丸みのある内側部分６６（すなわち「丸みのある表面６６」、以下、単に「表面６６」ともいう。）に合流している。特に、これらの表面６２、６４および６６を新しく設計することで、ウイング部分５２および５４は、片持ち配置からウイング部分５２、５４を支える薄い支え壁部分６８、７０を備えた支え壁配置に変更される。これによりまたナット内の異なった壁の厚さを実質的に均一にし、開口部４８および５０を、従来のロータウインデイジナットの設計で用いられている開口部よりも大きくすることが可能になる。薄い支え壁部分６８、７０により、ウイング部分５２、５４の荷重がナットのフープ方向に効率的に伝達され、さらに、荷重の均一化が促進される。
【００１６】
例示的な実施形態例では、センタ穴の直径は３．５インチ、表面５６の円周方向の長さは約１０インチ、及びいかなる場所での壁の厚さは約０．５０インチとなっている。ナット４４の予測重量は、９ポンド以下まで軽くなり、図２に示すナットの設計と比較すると、約６％の重量が軽減される。その結果、ピーク応力は６％以上低められる。荷重を再分配することの効果は、荷重がボルトの円周方向だけでなくボルトに沿って軸方向にも、さらに均等に分配されることである。事実、本発明の出願人のある特定のガスタービンの設計では、応力分析を行ったところ、ミーゼス（Ｖｏｎ Ｍｉｓｅｓ）応力値は、約１５０Ｋｓｉから１４０Ｋｓｉに下がっていた。
【００１７】
要約すると、ここに説明されているように、ロータウインデイジナットは、
１．ナットのウインデイジ形状特色性能を維持し、
２．（ナット重量を軽減することで）ボルトに対する正味荷重を低減し、
３．（ナットの壁の厚さをさらに均一にすることで）ボルトに対するピーク荷重を低減し、
４．ナットの正味断面応力を低減して、返品部品の領域で見られる非軸対称降伏を除去し、さらに
５．ナットの引張試験性能を維持する。
【００１８】
本発明は、現時点で最も実際的で好ましい実施形態と考えられるものに関して説明をしてきたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるものではなく、それどころか、特許請求の範囲の技術思想および技術的範囲に含まれる様々の変更形態および均等装置を保護せんとするものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【図１】 従来技術で既知のロータおよび関連のウインデイジナットの部分断面図。
【図２】 図１に示すナットの端面正面図である。
【図３】 本発明によるウインデイジナットの端面正面図。
【符号の説明】
４４ ナット
４６ センタ穴
４８、５０ 開口部
５２、５４ ウイング部分
５６ 第１の周縁面
５８、６０ 端部表面
６２ 第２の周縁表面
６４ 第３の周縁表面
６６ 丸みのある表面
６８、７０ 支え壁部分

Claims (10)

1. ねじ山付センタ穴（４６）を持つナット本体と、前記センタ穴にまたがって両側方向に延び一対のウイング部分（５２、５４）を構成するセンタ穴の片側の第１の周縁表面（５６）と、前記ウイング部分を支える一対の支え壁部分（６８、７０）とを含み、前記支え壁部分が、前記第１の周縁表面（５６）の両端にそれぞれ接合され、かつ前記センタ穴の反対側の丸みのある表面（６６）で互いに接合される第２および第３の周縁表面（６２、６４）を持ち、前記一対のウイング部分（５２、５４）および前記一対の支え壁部分（６８、７０）が前記センタ穴の両側のほぼ三角形形状の一対の開口部（４８、５０）によって実質的に均一な厚さに画成されることを特徴とするロータ締結ボルト用ナット（４４）。
2. 前記第２および第３周縁表面（６２、６４）が、実質的に真直ぐであることを特徴とする請求項１に記載のロータ締結ボルト用ナット。
3. 前記ほぼ三角形形状の一対の開口部（４８、５０）の各々の片側が、前記支え壁部分（６８、７０）のそれぞれ１つを部分的に構成することを特徴とする請求項１に記載のロータ締結ボルト用ナット。
4. 前記丸みのある表面（６６）が、前記センタ穴の湾曲に実質的に平行な湾曲を持つことを特徴とする請求項１に記載のロータ締結ボルト用ナット。
5. 前記ウイング部分（５２、５４）および支え壁部分（６８、７０）の壁の厚さが、実質的に均一であることを特徴とする請求項１に記載のロータ締結ボルト用ナット。
6. 前記第１の周縁表面（５６）が、湾曲し、２４５ｍｍ（１０インチ）の長さを持つことを特徴とする請求項１に記載のロータ締結ボルト用ナット。
7. 前記センタ穴（４６）が８９ｍｍ（３ １／２インチ）の直径を有することを特徴とする請求項６に記載のロータ締結ボルト用ナット。
8. 前記ロータ締結ボルト用ナットが、ステンレス鋼で作製されることを特徴とする請求項１に記載のロータ締結ボルト用ナット。
9. 前記壁の厚さが、１２．７ｍｍ（０．５０インチ）であることを特徴とする請求項５に記載のロータ締結ボルト用ナット。
10. ロータ構成要素が軸方向に延びる複数の締結ボルト（１６）により一緒に固定され、各締結ボルトが前記締結ボルトの１端部にねじ込まれたナット（４４）を有する回転機械用ロータ組立体であって、前記ロータには、その中で前記複数の締結ボルトが終端し、かつ前記複数のナットが配置される環状の空洞（１２）を形成されており、各ナットが請求項１乃至９のいずれか１項に記載のロータ締結ボルト用ナットであることを特徴とするロータ組立体。

Images