潮の干満により生じる潮位の変化量は、場所により異なるが、通常は1ないし数メートルであり、海面の上下に追従して上下するフロートを設けた場合、その最大変位量は僅かである。また潮位は最大レベルと最低レベルとの間を長い時間をかけて変化するため、海面の上下に追従するフロートの単位時間当たりの変位量はごく僅かである。従って、特許文献1に示されたように、海面の上下に追従して上下するフロートの変位でエアシリンダを駆動しても、アキュミュレータに空気圧を十分に蓄えることは困難であり、多くの電力を効率よく得ることは困難である。またフロートの単位時間当たりの変位量は僅かであるため、特許文献2に示されているように、フロートの変位そのものを回転変位に変換して、変換された回転変位を増速して発電機に伝える方法では、多くの電力を効率よく得ることを期待できない。
またフロートの単位時間当たりの変位量はごく僅かであり、フロートを直接回転変位に変換して負荷に伝達するようにした場合には、高い効率が得られる速度で負荷を駆動することが難しいため、エネルギの変換効率が悪くなるという問題があった。
更にフロートは波浪の影響を受けて細かく上下動するため、フロートの変位そのものを回転変位に変換して発電機に伝達するようにした場合には、発電機を安定に駆動することが難しい。
また、フロートの変位そのものを回転変位に変換して発電機に伝達する方式によった場合には、潮汐エネルギを蓄積することができないため、必要なときに発電機を駆動して電力を得ることができない。
潮汐エネルギを利用して、揚水ポンプや、送水ポンプなど、発電機以外の負荷を駆動することも考えられるが、発電機以外の負荷を駆動する場合にも、フロートの変位を空気圧に変換する方式や、フロートの変位を直接負荷を駆動する回転変位に変換する方式によった場合には、上記と同様の問題が生じる。
本発明の目的は、負荷を安定して効率よく駆動することができる潮汐エネルギ利用負荷駆動方法及びこの方法を実施する負荷駆動装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、潮汐エネルギを位置エネルギに変換して蓄積しておいて、必要なときに負荷を駆動することができるようにした潮汐エネルギ利用負荷駆動方法及びこの方法を実施する負荷駆動装置を提供することにある。
本発明は、潮汐エネルギを利用して負荷を駆動する潮汐エネルギ利用負荷駆動方法に係わるものである。
本発明においては、潮の干満に伴って生じる海面の上下に追従して上下するフロートと、フロートの質量よりも小さい質量を有して、下限位置と上限位置との間を変位し得るように支持されたウェイトとを設けておき、潮の干満に伴って生じるフロートの変位を拡大してウェイトに伝達することによりウェイトを上限位置に向けて上昇させるウェイト上昇過程と、フロートとウェイトとの間の変位の伝達を断った状態にしてウェイトを下限位置に向けて下降させながら、該ウェイトの下降の際の変位を負荷の駆動に適した変位に変換して負荷に伝達することにより該負荷を駆動する負荷駆動過程とを行う。
潮汐エネルギを蓄積する方法としては、フロートの変位をエアシリンダのピストンに伝達して、エネルギを空気圧として蓄積する方法が知られているが、フロートの極めてゆっくりとした変位で空気圧を高めることは容易ではない。これに対し、本発明のように、フロートの変位をウェイトに伝達して、ウェイトを上昇させるようにすると、フロートの変位が如何にゆっくりとしたものであっても、ウェイトを確実に上昇させて、潮汐エネルギを位置エネルギとして蓄えることができるため、エネルギの蓄積を容易かつ確実に行うことができる。
上記のように構成すると、潮の干満が起こっている時間の長短に関係なく、負荷の駆動が可能な速度でウェイトを下降させながらその変位を負荷の駆動に適した変位に変換して負荷に伝達することができるため、負荷を効率よく駆動することができる。
また上記のように構成すると、波浪によるフロートの揺動の影響を受けることなく安定に負荷を駆動することができる。
負荷を駆動するためのエネルギは、ウェイトの質量を大きくし、潮の干満が収まった時点でのウェイトの高さを高くする(フロートからウェイトに伝達する変位の拡大割合を大きくする)ことにより増大させることができる。また負荷を駆動する時間は、フロートからウェイトに伝達する変位の拡大割合を大きくして、ウェイトを高い位置まで上昇させておくことにより、長くすることができる。
フロートの変位を拡大してウェイトに伝達してウェイトを上昇させるためには、フロートの質量をウェイトの質量よりも大きくしておく必要がある。フロートの変位をn倍(nは1を超える自然数)に拡大してウェイトに伝達して、フロートの最大変位量のn倍の高さまでウェイトを上昇させるためには、ウェイトの質量のn倍を超える質量を有する大形のフロートを用いる必要があるが、大形のフロートは、船舶の建造技術を使うことにより製作するとができる。フロートは、例えば内部に空気を封入した扁平で中空の直方体や円筒体でよく、構造が簡単な上に、船舶のような艤装が不要であるため、その建造は容易である。
上記上限位置は下限位置の真上に設定された位置でもよく、下限位置の斜め上方に設定された位置でもよい。また下限位置は、満潮時の海面のレベル付近に設定されていてもよく、満潮時の海面のレベルよりも低い位置に設定されていても良い。
上記の方法を実施するために用いる本発明の潮汐エネルギ利用負荷駆動装置は、海面の上下に追従して上下するように設けられたフロートと、フロートの質量よりも小さい質量を有して、設定された下限位置と上限位置との間を変位し得るように支持されたウェイトと、引き潮時または上げ潮時のフロートの変位を拡大してウェイトに伝達する変位拡大伝達機構と、変位拡大伝達機構の変位伝達経路の途中に設けられてフロートの変位が変位拡大機構を通してウェイトに伝達されるのを許容するオン状態とフロートとウェイトとの間の変位の伝達を断つオフ状態とに切り換えが可能なクラッチ機構とを有して、クラッチ機構がオン状態にあるときにフロートの変位を拡大してウェイトに伝達して該ウェイトを上限位置に向けて上昇させ、クラッチ機構がオフ状態にあるときにフロートとウェイトとの間での変位の伝達を断つように構成されたフロート・ウェイト間変位伝達装置と、ウェイトの下降変位を回転変位に変換して負荷駆動軸に伝達するウェイト・負荷間変位伝達機構とを備えている。
上記の潮汐エネルギ利用負荷駆動装置においては、ウェイトを上昇させる際にクラッチ機構がオン状態にされ、引き潮時または上げ潮時に生じるフロートの変位が、ウェイトの変位の方向に沿う変位に変換されて拡大されてウェイトに伝達される。これによりウェイトが上限位置に向けて上昇させられる。フロートの変位が如何にゆっくりとしたものであっても、フロートの変位は確実にウェイトに伝達されるため、潮汐エネルギをウェイトの位置エネルギに効率よく変換することができる。
引き潮時または上げ潮時のフロートの変位が終了した後に、クラッチ機構をオフ状態にし、ウェイト保持機構を解除状態にすると、ウェイトが下降を開始する。ウェイトの下降変位はウェイト・負荷間変位伝達機構を介して負荷に伝達されるため、負荷が駆動される。負荷が駆動されている状態では、負荷によりウェイトの下降に強いブレーキがかかり、ウェイトはゆっくりと下降していく。
本発明に係わる潮汐エネルギ利用負荷駆動装置により駆動するのに適した負荷の代表的なものは発電機であるが、発電機に限らず、揚水ポンプや送水ポンプなどの他の負荷を駆動することもできる。例えば、海水浄化プラントに海水を送り込む送水ポンプや、海水淡水化プラントに海水を送り込む送水ポンプを本発明に係わる潮汐エネルギ利用負荷駆動装置により駆動することができる。
負荷を駆動する際には、負荷からウェイト・負荷間変位伝達機構を通してウェイトに負荷をかけて、ウェイトにブレーキを掛けることができるため、ウェイトを時間をかけて下降させて、その間負荷を駆動することができる。負荷が不足してウェイトの下降速度が速くなりすぎる場合や、負荷駆動軸を一定の速度で回転させる必要がある場合には、負荷駆動軸の回転速度を調整するガバナ機構を設けることもできる。
本発明の好ましい態様では、潮汐エネルギ利用負荷駆動装置が、上げ潮時の海面の最高レベルよりも高い位置に設置されたプラットホームと、プラットホームの下方に配置されて、潮の干満に伴って生じる海面の上下に追従して上下するフロートと、設定された下限位置と、該下限位置よりも高い位置で、潮の干満によって生じるフロートの上下方向への最大変位量のn倍(nは1を超える自然数)以上に設定された距離だけ下限位置から離れた位置に設定された上限位置との間を変位し得るように支持されたウェイトと、プラットホーム上に回転自在に支持されたフロート側回転軸及びウェイト側回転軸と、潮の干満に伴って生じるフロートの変位を回転変位に変換してフロート側回転軸に伝達するフロート側変位伝達機構と、ウェイト側回転軸の回転に伴ってウェイトを上限位置に向けて変位させるべく、ウェイト側回転軸の回転変位をウェイトの変位の方向に沿う変位に変換してウェイトに伝達するウェイト側変位伝達機構と、フロート側回転軸とウェイト側回転軸との間に設けられたクラッチ機構とを備えて、クラッチ機構がオン状態にあるときに引き潮時または上げ潮時の前記フロートの変位がn倍に拡大されてウェイトに伝達されるように構成されたフロート・ウェイト間変位伝達装置と、ウェイトの下降変位を回転変位に変換してプラットホーム上に回転自在に支持された負荷駆動軸に伝達するウェイト・負荷間変位伝達機構とを備えることにより構成される。
本発明の好ましい態様では、上記フロート側変位伝達機構が、フロート側回転軸に取り付けられたフロート側上部スプロケットホイールと、プラットホームの下方に配置されたベースフレームに回転自在に支持されたフロート側下部スプロケットホイールと、フロート側上部スプロケットホイールとフロート側下部スプロケットホイールとに掛け渡されてフロートに連結されたフロート側チェーンとを備えている。またウェイト側変位伝達機構は、プラットホームに設置されたフレームに回転自在に支持されたウェイト側下部スプロケットホイールと、上限位置に設置されたフレームに回転自在に支持されたウェイト側上部スプロケットホイールと、ウェイト側下部スプロケットホイールとウェイト側上部スプロケットホイールとに掛け渡されたウェイト側チェーンとを備え、ウェイト側下部スプロケットホイールの外径がフロート側上部スプロケットホイールの外径のn倍に設定される。
潮汐エネルギを有効に活用するためには、引き潮時にも上げ潮時にも、ウェイトを上昇させえ、引き潮時の潮汐エネルギと上げ潮時の潮汐エネルギとの双方を位置エネルギに変換して蓄積するのが好ましい。
そこで、本発明に係わる潮汐エネルギ利用負荷駆動方法の好ましい態様では、海面の上下に追従して上下するように設けられたフロートと、フロートの質量よりも小さい質量を有して、設定された下限位置と上限位置との間を変位し得るように支持されたウェイトと、引き潮時のフロートの変位及び上げ潮時のフロートの変位を拡大してウェイトを上昇させる方向の変位としてウェイトに伝達する変位拡大伝達機構と、変位拡大伝達機構の変位伝達経路の途中に設けられてフロートの変位が変位拡大伝達機構を通してウェイトに伝達されるのを許容するオン状態とフロートとウェイトとの間の変位の伝達を断つオフ状態とに切り換えが可能なクラッチ機構とを有して、クラッチ機構がオン状態にあるときにフロートの変位を拡大してウェイトに伝達して該ウェイトを上限位置に向けて上昇させ、クラッチ機構がオフ状態にあるときにフロートとウェイトとの間での変位の伝達を断つように構成されたフロート・ウェイト間変位伝達装置と、ウェイトの下降変位を回転変位に変換して負荷駆動軸に伝達するウェイト・負荷間変位伝達機構とを備えることにより、潮汐エネルギ利用負荷駆動装置が構成される。
上記のように構成しておくと、上げ潮時にも引き潮時にも潮汐エネルギを位置エネルギに変換して蓄積しておくことができるため、潮汐エネルギの有効利用を図ることができる。
本発明の好ましい態様では、上記潮汐エネルギ利用負荷駆動装置が、上げ潮時の海面の最高レベルよりも高い位置に設置されたプラットホームと、プラットホームの下方に配置されて、潮の干満に伴って生じる海面の上下に追従して上下するフロートと、設定された下限位置と、該下限位置よりも高い位置で、潮の干満によって生じるフロートの上下方向への最大変位量のn倍(nは1を超える自然数)以上に設定された距離だけ下限位置から離れた位置に設定された上限位置との間を変位し得るように支持されたウェイトと、プラットホーム上に回転自在に支持されたフロート側回転軸及びウェイト側回転軸と、引き潮時に生じる前記フロートの変位及び上げ潮時に生じるフロートの変位を一方向の回転変位に変換してフロート側回転軸に伝達するフロート側変位伝達機構と、ウェイト側回転軸の前記一方向の回転に伴ってウェイトを上限位置に向けて変位させるべく、ウェイト側回転軸の回転変位をウェイトの変位の方向に沿う変位に変換してウェイトに伝達するウェイト側変位伝達機構と、フロート側回転軸とウェイト側回転軸との間に設けられたクラッチ機構とを備えて、クラッチ機構がオン状態にあるときにフロートの変位がn倍に拡大されてウェイトに伝達されるように構成されたフロート・ウェイト間変位伝達装置と、ウェイトの下降変位を回転変位に変換してプラットホーム上に回転自在に支持された負荷駆動軸に伝達するウェイト・負荷間変位伝達機構とを備えた構成とされる。
本発明の好ましい態様では、上記フロート側変位伝達機構が、フロート側回転軸に取り付けられたフロート側上部スプロケットホイールと、フロートの下方に配置されたベースフレームに回転自在に支持されたフロート側下部スプロケットホイールと、フロート側上部スプロケットホイールとフロート側下部スプロケットホイールとに掛け渡されたフロート側チェーンとを備え、フロート側チェーンの、フロート側上部スプロケットホイールとフロート側下部スプロケットホイールとの間を上下に延びる2つの部分が、フロートを上下に貫通させて設けられた一対のチェーン貫通孔を貫通した状態で設けられる。フロート側チェーンは、多数のプレートをピンにより連結した構造を有し、一対の回動アームからなる係合子が、チェーンの長手方向に並べて多数個設けられて、各係合子を構成する一対の回動アームの後端部がフロート側チェーンのピンに回動自在に結合されている。各係合子は、一対の回動アームのそれぞれの先端部が互いに離反した状態になる開状態と前記一対の回動アームのそれぞれの先端が互いに接近した状態になる閉状態とをとるように構成されていて、常時は開状態をとるように各係合子を構成する一対の回動アームがバネで付勢されている。この場合、各係合子は、チェーンの長手方向に対して同じ向きを向くように設けられていて、閉状態で各チェーン貫通孔内をチェーンとともに通過して、各チェーン貫通孔を抜け出た際に開状態に復帰するように構成される。そして、フロートが下降する際には一対のチェーン挿通孔の一方を抜け出て開状態になったいずれかの係合子の回動アームの先端が該一方のチェーン挿通孔の下端側の開口部の周辺に係合してフロートの下降に伴ってチェーンを一方向に走行させるようにフロートをチェーンに結合し、フロートが上昇する際には一対のチェーン挿通孔の他方を抜け出て開状態になったいずれかの係合子の回動アームの先端が該他方のチェーン挿通孔の上端側の開口部の周辺に係合してフロートの上昇に伴ってチェーンを一方向に走行させるようにフロートをチェーンに結合して、フロートが下降する際にも上昇する際にも、フロート側上部スプロケットホイールを前記一方向に回転させるように構成される。
この場合も、ウェイト側変位伝達機構は、プラットホームに設置されたフレームに回転自在に支持されたウェイト側下部スプロケットホイールと、上限位置側に設置されたフレームに回転自在に支持されたウェイト側上部スプロケットホイールと、ウェイト側下部スプロケットホイールとウェイト側上部スプロケットホイールとに掛け渡されたウェイト側チェーンとを備えて、ウェイト側下部スプロケットホイールの外径がフロート側上部スプロケットホイールの外径のn倍に設定されていることが好ましい。
上記のように、フロート側変位伝達機構を構成しておくと、引き潮時にも上げ潮時にもフロート側回転軸を一方向に回転させて、フロートの変位に伴ってウェイトを上昇させることができるため、負荷を駆動する機会を増やすことができる。例えば、引き潮時にウェイトを上昇させた後、上げ潮が始まるまでの間にウェイトを下降させて負荷を駆動し、次いで上げ潮時に再び負荷を上昇させた後、次の引き潮が始まるまでの間にウェイトを下降させて負荷を駆動するサイクルを繰り返すことにより、1日に4回負荷を駆動することができる。
本発明の好ましい態様では、ウェイトの上昇は許容するが下降は阻止してウェイトの位置を保持する保持状態とウェイトの保持を解除して該ウェイトの下降を許容する解除状態とに切り換えが可能なウェイト保持機構が設けられる。
上記のようなウェイト保持機構を設けておくと、負荷を駆動する必要がないときにはウェイトを上昇させられた位置に保持しておき、負荷を駆動する必要があるときにウェイトを下降させて負荷を駆動することができるため、ウェイトの位置エネルギとして蓄積したエネルギを無駄に消費させることなく、エネルギの有効利用を図ることができる。
ウェイトの上限位置は、下限位置の真上に設定することもでき、下限位置の斜め上方の位置に設定することもできる。上限位置を下限位置の斜め上方に設定する場合には、下限位置と上限位置との間を伸びるガイドレールを敷設しておく。この場合、ウェイトにはガイドレールに案内されて転動する車輪を設けておき、該車輪をガイドレールに案内させて転動させながらウェイトをガイドレールに沿って上昇または下降させるようにするのが好ましい。
ウェイトの下限位置を海面よりも上方に設定し、上限位置を下限位置の真上に設定する場合には、ウェイトを支えるために高い塔を建てる必要があるが、下限位置を上限位置の斜め上方に設定するようにすれば、塔を建てることなく、海岸に隣接する傾斜地を利用してウェイトを移動させるガイドレールを敷設して、ウェイトをケーブルカーと同様に上下させることができる。この場合、ウェイトを案内するガイドレールを地下に設けたトンネル内に敷設するようにすることもできる。
ウェイトの下限位置は、海面よりも下方のレベルに設定することもできる。例えば、海岸の近くの地中に縦管を埋設して、この縦管内でウェイトを上下させるようにすることもできる。
損失を少なくするため、ウェイトは空気中で移動させることが好ましいが、場合によっては、海中に下限位置を設定して、海中でウェイトを上下させるようにすることもできる。
ウェイトを海面よりも上方で下限位置と上限位置との間で変位させる場合には、海面よりも上方に突出した塔を建設して、この塔にウェイトを上下に移動し得る状態で支持する。この場合、塔に風力発電用の風車を支持して、潮汐エネルギを利用した発電と併せて風力発電を行わせるようにすると、塔の有効利用を図ることができる。
上記のように、本発明によれば、潮の干満に伴って生じるフロートの変位を拡大してウェイトに伝達することによりウェイトを上限位置に向けて上昇させるようにしたので、フロートの変位が如何にゆっくりとしたものであっても、ウェイトを確実に上昇させて、潮汐エネルギを位置エネルギとして確実に蓄えることができ、エネルギの蓄積を容易かつ確実に行うことができる。またウェイトを上昇させた後、フロートとウェイトとの間の変位の伝達を断った状態にしてウェイトを下限位置に向けて下降させながら、該ウェイトの下降の際の変位を負荷の駆動に適した変位に変換して負荷に伝達するようにしたので、発電機等の負荷を駆動することができる。
本発明によればまた、潮の干満が起こっている時間の長短に関係なく、負荷を駆動するのに適した速度でウェイトを下降させながらその変位を負荷を駆動するのに適した変位に変換して負荷に伝達することができるため、負荷を効率よく駆動することができる。
また本発明によれば、フロートの変位を波浪の影響を受けないウェイトの変位に変換してから負荷に伝達するので、波浪によるフロートの揺動の影響を受けることなく安定に負荷を駆動することができる。
また本発明において、引き潮時に生じるフロートの変位及び上げ潮時に生じるフロートの変位を一方向の回転変位に変換してフロート側回転軸に伝達するようにフロート側変位伝達機構を構成した場合には、引き潮時にも上げ潮時にもフロート側回転軸を一方向に回転させて、フロートの変位に伴ってウェイトを上昇させることができるため、負荷を駆動する機会を増やすことができ、潮汐エネルギの有効利用を図ることができる。
更に本発明において、ウェイトの上昇は許容するが下降は阻止してウェイトの位置を保持する保持状態とウェイトの保持を解除して該ウェイトの下降を許容する解除状態とに切り換えが可能なウェイト保持機構を設けた場合には、負荷を駆動する必要がないときにはウェイトを上昇されられた位置に保持しておき、負荷を駆動する必要があるときにのみウェイトを下降させて負荷を駆動することができるため、ウェイトの位置エネルギとして蓄積したエネルギを無駄に消費させることなく、エネルギの有効利用を図ることができる。
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
本発明に係わる潮汐エネルギ利用負荷駆動方法の第1の実施形態ににおいては、潮の干満に伴って生じる海面の上下に追従して上下するフロートと、フロートの質量よりも小さい質量を有して、下限位置と上限位置との間を変位し得るように支持されたウェイトとを設けておいて、潮の干満に伴って生じるフロートの変位を拡大してウェイトに伝達することによりウェイトを上限位置に向けて上昇させ、フロートとウェイトとの間の変位の伝達を断った状態にしてウェイトを下限位置に向けて下降させながら、該ウェイトの下降の際の変位を負荷の駆動に適した変位に変換して負荷に伝達することにより該負荷を駆動する負荷駆動過程とを行う。
上記の潮汐エネルギ利用負荷駆動方法を実施するために用いる本発明の潮汐エネルギ利用負荷駆動装置の第1の実施形態を図1ないし図5に示した。図1は本実施形態の要部の構成を一部断面して概略的に示した正面図、図2は一部を断面して示した側面図、図3及び図4はそれぞれ本実施形態で用いるクラッチ機構の部分の断面図及び正面図、図5は本実施形態で用いるウェイト保持機構の一例を模式的に示した正面図である。
図1及び図2において、1は大潮の際の上げ潮時にもその先端が海中に没することがないように、海面2の上げ潮時の最高レベルよりも高い位置に設置されたプラットホームで、図示のプラットホーム1は、海底3に埋設された矩形状のベース4に下端が固定された複数の(図示の例では4本の)支柱5の上端に固定されて支えられている。
6はプラットホームの下方に配置されて、潮の干満に伴って生じる海面の上下に追従して上下するフロート、7はプラットホーム1の上に固定された鉄塔、8は図1に示すように、設定された下限位置PLと、該下限位置よりも高い位置で、潮の干満によって生じるフロート6の上下方向への最大変位量のn倍(nは1を超える自然数)以上に設定された距離だけ下限位置PLから離れた位置に設定された上限位置Puとの間を変位し得るようにして鉄塔7に支持されたウェイトである。また9は鉄塔7の下方に位置させて、ベース4に設けられた凹部4a内に固定された状態で海底3に設置されたベースフレーム、10はフロートが波浪の影響を受けて揺れるのを抑制するために、フロート6が上下する領域を取り囲むように設けられた防波壁である。防波壁10の下端寄りの部分には該防波壁を貫通した多数の流通孔10aが形成され、流通孔10aを通して防波壁10の内外が連通させられて、防波壁10の内外の海面2のレベルが常に同じになるようになっている。
フロート6は、十分に大きな質量を有し、かつ中空部を有して、海水から受ける浮力により海面に浮くように構成される。フロート6は上端が開口していてもよいが、内部に海水や雨水が入らないようにするため、その中空部が密閉された構造を有することが好ましい。引き潮時にフロート6が海底に着座するようにフロート6を設ける場合には、フロートの水面下に位置する部分の高さ寸法をできるだけ小さくして、潮の干満により生じるフロートの変位量をできるだけ大きくするために、フロートを扁平な形状に構成するのが好ましい。図示のフロート6は、全体が扁平な直方体の形状を呈して、その内部の中空部が完全に密閉された構造を有し、引き潮時に海底に着座するように設けられている。
図示のフロート6は、プラットホーム1を支える各支柱5を緩く貫通させる孔601を有して、プラットホーム1の下方で、支柱5によりガイドされつつ、海面の上下に伴って上方及び下方にそれぞれ変位させられる。
プラットホーム1の上には、鉄塔7の下部の内側に位置させて、フロート側回転軸11と、ウェイト側回転軸12とがそれぞれの中心軸線を一致させた状態で、回転自在に支持されている。フロート側回転軸11は、鉄塔7に固定された鉄塔下部フレーム701及びプラットホーム1にそれぞれ上端及び下端が固定されたフレーム13及び14に図示しない軸受けを介して回転自在に支持され、ウェイト側回転軸12は、同じく鉄塔下部フレーム701及びプラットホーム1に固定されたフレーム15及び16に図示しない軸受けを介して回転自在に支持されている。
フロート側回転軸11とウェイト側回転軸12との間にはフロート・ウェイト間クラッチ機構18が設けられていて、クラッチ機構18がオン状態にある時にフロート側回転軸11の回転変位がウェイト側回転軸12に伝達され、クラッチ機構18がオフ状態にされたときにフロート側回転軸11とウェイト側回転軸12との間の変位の伝達が遮断されて、ウェイト8がフロート6から機械的に切り離されるようになっている。
フロート側回転軸11にはフロート側上部スプロケットホイール21が取りつけられ、プラットホーム1の下方に配置されたベースフレーム9に回転自在に支持された回転軸22にフロート側下部スプロケットホイール23が取りつけられている。図1に示したように、フロート6を上下に貫通した状態で、大径のチェーン挿通孔6aと小径のチェーン挿通孔6bとが設けられ、これらのチェーン挿通孔に通されたフロート側チェーン25がフロート側上部スプロケットホイール21及びフロート側下部スプロケットホイール23に掛け渡されている。
一方のチェーン挿通孔6aは、チェーン25を拘束することがないように、チェーン25を緩く貫通させ得る大きさの内径を有し、他方のチェーン挿通孔6bは一方のチェーン挿通孔6aよりは小径に形成されている。そして、図2に示したように、チェーン25のチェーン挿通孔6bの上端及び下端から外に出た部分にそれぞれチェーン固定板27及び28が固定され、これらのチェーン固定板27及び28がそれぞれフロート6の上面及び下面に当接されることにより、フロート側チェーン25がフロート6に連結されている。この例では、チェーン固定板27及び28により、フロート側チェーン25とフロート6とを連結する連結部が構成されている。
上記のようにフロート6がチェーン25に連結されているため、引き潮時にフロート6が下方に変位すると、チェーン25が一方向に変位してフロート側上部スプロケットホイール21を一方の側に回転させ、上げ潮時にフロート6が上方に変位すると、チェーン25が他方向に変位してフロート側上部スプロケットホイール21を他方の側に回転させる。フロート側上部スプロケットホイール21の回転はフロート側回転軸11とクラッチ機構18とを通してウェイト側回転軸12に伝達される。
本実施形態では、フロート側回転軸11に取り付けられたフロート側上部スプロケットホイール21と、プラットホーム1の下方に配置されたベースフレーム9に回転自在に支持されたフロート側下部スプロケットホイール23と、フロート側上部スプロケットホイール21とフロート側下部スプロケットホイール23とに掛け渡されてフロート6に連結されたフロート側チェーン25とによりフロート側変位伝達機構が構成されている。
ウェイト8は十分に大きな質量を有するが、フロート6よりは小さい質量を有するように形成されている。鉄塔7の下端寄りの部分に固定されたフレーム701及び鉄塔7の上端付近に固定されたフレーム702にそれぞれ複数のガイドレール31の下端及び上端が固定されている。複数のガイドレール31は、ウェイト8を上下方向に貫通した孔にスライド自在に嵌合され、これらのガイドレールにより、ウェイト8が上下方向にスライド自在に支持されている。
ウェイト側回転軸12にはウェイト側下部スプロケットホイール32が取りつけられ、鉄塔7の上端部付近(ウェイト8の上限位置付近)に設けられたフレーム703に固定された軸33にウェイト側上部スプロケットホイール34が取りつけられている。ウェイト8の中央部を貫通した状態で設けられてウェイト8に固定されたウェイト側チェーン35がウェイト側下部スプロケットホイール32及びウェイト側上部スプロケットホイール34に掛け渡され、ウェイト側回転軸12が一方向に回転したときにウェイト側チェーン35が一方向に変位してウエイト8を下限位置PL側から上限位置Pu側に向けて上昇させるようになっている。
本実施形態では、ウェイト側下部スプロケットホイール35の外径がフロート側上部スプロケットホイール21の外径のn倍に設定されていて、クラッチ機構18がオン状態にあるときに、フロート6の下方への変位がn倍に拡大されてウェイト32に伝達されるようになっている。即ち、フロート6が下方にY[m]変位する間に、ウェイト8がn×Y[m]上昇するようになっている。
ウェイト側回転軸12にはまた、図5に示すように外周に歯部41aを有するラチェットホイール41が取りつけられ、プラットホーム1に固定されたラチェット爪駆動支持機構42により回動自在に支持されたラチェット爪43が、ラチェットホイール41の外周の歯部41aに噛み合わされている。ラチェット爪43は駆動支持機構42に設けられた図示しないバネによりラチェットホイール41側に付勢されていて、ウェイト側回転軸12がウェイト8を上昇させる方向(本実施形態では図5の矢印U方向)に回転する際には、ラチェット爪43がラチェットホイール41の歯部から逃げて回転軸12の回転を可能にすることによりウェイト8の上昇を許容し、ウェイト8の質量によりチェーン35及びスプロケットホイール32を介して回転軸12がウェイト8を下降させる方向(図5の矢印C方向)に回転させられようとしたときには、ラチェット爪43がラチェットホイール41の歯部に噛み合うことにより回転軸12の矢印C方向への回転を阻止してウェイト8の位置を保持するようになっている。
ラチェット爪駆動支持機構42には、ラチェットホイール41からラチェット爪43に加えられている力を軽減する方向(図5の矢印S方向)にラチェット爪43を変位させると同時に、該ラチェット爪をラチェットホイール41から逃がす方向(図5の矢印R方向)に強制的に回動させて、ラチェット爪43をラチェットホイール41から引き外すラチェット爪引き外し機構が設けられ、この引き外し機構によりラチェット爪43をラチェットホイール41から引き外すことにより、回転軸12の図示の矢印C方向への回転を可能にして、ウェイト8の下降を許容するようになっている。
本実施形態では、ラチェットホイール41と、ラチェット爪43と、図示しないラチェット爪引き外し機構とにより、ウェイト8の上昇を許容した状態で該ウェイトの下降を阻止してウェイト8の位置を保持する保持状態と、このウェイト8の保持を解除してウェイト8の下降を許容する解除状態とに切り換えが可能なウェイト保持機構45が構成されている。
クラッチ機構18は、引き潮時にフロート6の下降に伴ってウェイト8を上昇させる際にフロート側回転軸11とウェイト側回転軸12とを結合して、フロート側回転軸11からウェイト側回転軸12への変位の伝達を行わせ、引き潮が完了してフロート6の下降が停止した後にフロート側回転軸11とウェイト側回転軸12との間を切り離すために設けられたものである。このクラッチ機構18は、例えば図3に示すように構成することができる。図3に示されたクラッチ機構18は、フロート側回転軸11の先端(ウェイト側回転軸12側の端部)にスラスト可能に支持された第1のクラッチ部材51と、ウェイト側回転軸12の回転軸11側の端部に固定された第2のクラッチ部材52と、第1のクラッチ部材51をスラスト方向に駆動するクラッチ操作機構53とにより構成されている。
図示の例では、第1のクラッチ部材51側に突起51aが、また第2のクラッチ部材52側には突起51aを嵌合させる凹部52aがそれぞれ設けられていて、第1のクラッチ部材51を第2のクラッチ部材52側に変位させたときに、図3に示すように、突起51aが凹部52aに嵌合することにより第1のクラッチ部材51と第2のクラッチ部材52とが結合されてクラッチ機構18がオン状態になり、第1のクラッチ部材51を第2のクラッチ部材52から引き離す側に変位させたときに図4に示すように突起51aが凹部52aから離脱して、クラッチ機構18がオフ状態になるようになっている。
クラッチ機構を操作するため、図示の例では、スライダ55が、ガイド機構54により、回転軸11及び12の軸線方向に変位し得るように(スライドし得るように)支持され、このスライダ55の先端に設けられた二股部(U字状部)55aが,第1のクラッチ部材51に設けられた周設溝51bに遊嵌されている。スライダ55の先端の二股部55aと第1のクラッチ部材51の溝51bとの嵌合により、第1のクラッチ部材51の回転が許容された状態でスライダ55が第1のクラッチ部材51とともにスラスト方向に移動し得るように、スライダ55と第1のクラッチ部材51とが結合されている。
スライダ55を駆動するため、油圧シリンダや電動機などを駆動源としてスライダ55を駆動するクラッチ駆動機構56が設けられ、クラッチ駆動機構56から導出された操作軸57がスライダ55に連結されている。本実施形態では、スライダ55と、クラッチ駆動機構56とにより、クラッチ操作機構53が構成されている。
ウェイト側回転軸12は、負荷側クラッチ機構61を介して増速機構62の入力軸62aに接続され、増速機構62の出力軸が負荷駆動軸63として外部に導出されている。本実施形態では、発電機64が負荷として設けられていて、発電機64の回転軸が負荷駆動軸63に接続されている。負荷側クラッチ機構61は、クラッチ機構18と同様に構成することができる。また増速機構62は、歯車機構により構成することができる。
本実施形態においては、フロート側回転軸11に取り付けられたフロート側上部スプロケットホイール21と、プラットホーム1の下方に配置されたベースフレーム9に回転自在に支持されたフロート側下部スプロケットホイール23と、フロート側上部スプロケットホイール21とフロート側下部スプロケットホイール23とに掛け渡されてフロート6に連結されたフロート側チェーン25とにより、潮の干満に伴って生じるフロート6の変位を回転変位に変換してフロート側回転軸11に伝達するフロート側変位伝達機構が構成されている。
また、プラットホーム1に設置されたフレーム15,16に回転自在に支持されたウェイト側下部スプロケットホイール32と、ウェイトの上限位置付近に設置されたフレーム703に回転自在に支持されたウェイト側上部スプロケットホイール34と、ウェイト側下部スプロケットホイール32とウェイト側上部スプロケットホイール34とに掛け渡されたウェイト側チェーン35とにより、ウェイト側回転軸12の回転に伴ってウェイト8を上限位置Puに向けて変位させるべく、ウェイト側回転軸12の回転変位をウェイト8の変位の方向に沿う変位(本実施形態では上下方向の変位)に変換してウェイト8に伝達するウェイト側変位伝達機構が構成され、ウェイト側下部スプロケットホイール32の外径がフロート側上部スプロケットホイールの外径のn倍(nは1を超える自然数)に設定されることにより、引き潮時のフロート6の変位がn倍に拡大されてウェイト8に伝達されるようになっている。
上記フロート側変位伝達機構と、ウェイト側変位伝達機構と、クラッチ機構18とにより、クラッチ機構18がオン状態にあるときに引き潮時のフロートの変位がn倍に拡大されてウェイト8に伝達されるように、フロート側変位伝達機構及びウェイト側変位伝達機構が構成されたフロート・ウェイト間変位伝達装置が構成されている。
また本実施形態では、スプロケットホイール32及び34と、ウェイト側チェーン35と、クラッチ機構61と、増速機構62とにより、ウェイト8の下降変位を回転変位に変換して増速機構を介して負荷駆動軸63に伝達するウェイト・負荷間変位伝達機構が構成されている。
本実施形態の潮汐エネルギ利用負荷駆動装置を運転する際には、上げ潮時にフロート6が上昇する過程でクラッチ機構18をオフ状態にして、フロート側回転軸11とウェイト側回転軸12との間を切り離しておき、フロート6が満潮時の上限レベルに達するのを許容する。フロート6が満潮時の上限レベルまで到達した後引き潮が開始されるまでの間にクラッチ機構18をオン状態にしておく。また引き潮が開始されるまでの間に、クラッチ機構61をオフ状態にするとともに、ウェイト保持機構45のラチェット爪43をラチェットホイール41側に付勢して、ウェイト8の上昇を許容し、ウェイト8の下降を阻止する状態にウェイト保持機構45を切り換える。
満潮時には、フロート6が海面に浮いている。この状態では、フロートに働く浮力と、ウェイト8側からフロート6に作用する力(フロートを上方に引っ張り上げようとする力)との和が、フロート6の質量により生じる重力とバランスしている。引き潮が開始され、海面のレベルが低下すると、浮力が減った分だけ、力のバランスが崩れるため、フロート6は、浮力とウェイト8側から作用する力との和の力とフロート6の質量により生じる重力とをバランスさせるように下降していく。このようにして、フロートは海面の低下に追従して下降していく。このフロート6の変位が拡大されてウェイト8に伝達されるため、ウェイト8は上限位置Puに向けて上昇していく。引き潮が終わり、フロート6の下降が停止したときにクラッチ機構18をオフ状態にしてフロート6とウェイト8との間の変位の伝達を断ち、負荷を駆動するまでの間、ウェイト8を上昇させられた位置に保持する。フロート6の下降が停止した時点でのウェイト8の高さ位置は、ウェイト8の上昇を開始させる際のウェイトの高さ位置により異なり、また大潮時と小潮時とで異なる。
フロート6が下限位置に達し、クラッチ機構18がオフ状態にされた後、負荷を駆動する際には、クラッチ機構61をオン状態にし、ウェイト保持機構45を、ウェイトの保持を解除する解除状態に切り換える。これにより、ウェイト8の変位がチェーン35とスプロケットホイール32とを介して回転変位に変換されて、クラッチ機構61と増速機構62とを介して発電機(負荷)64に伝達され、発電機64が発電を開始する。発電機64の回転速度が適正な範囲となるように、増速機構62での増速比を設定しておく。このときウェイト8には、増速機構62を介して発電機64が負荷されるため、ウェイト8の下降には大きなブレーキが作用し、ウェイト8はゆっくりと下降していく。
なお発電機64が負荷として軽すぎるために、ウェイト8にうまくブレーキがかからず、ウェイト8の下降速度が高くなりすぎる場合や、負荷の回転速度を一定の範囲に保つことが必要になる場合に備えて、負荷駆動軸63の回転速度を一定の範囲に保つように調整するガバナ機構を設けておくこともできる。
負荷に与えることができるエネルギをできるだけ大きくするため、ウェイト8の上限位置は、できるだけ高い位置に設定することが好ましく、ウェイト8の質量はできるだけ大きくしておくことが好ましい。質量が大きいウェイト8を高い位置まで上昇させるためには、フロート6の質量をウェイトの質量よりも十分に大きくおくことが必要である。質量M[t]のウェイトをフロートの変位量Yのn倍の高さまで上昇させるためには、フロート6の質量をn×M[t]を超える大きさとしておくことが必要である。従って、フロート6として相当に大きい質量を有するものを用意する必要があるが、質量が大きいフロートは造船技術を用いることにより容易に建造可能である。
上記の実施形態では、引き潮時のフロートの変位を拡大してウェイトに伝達することにより、潮汐エネルギをウェイトの位置エネルギとして蓄え、上げ潮時にウェイトを下降させてその下降変位を負荷に伝達することにより負荷を駆動するようにしたが、上げ潮時のフロートの変位をウェイトに拡大して伝達するように構成することもできる。上げ潮時のフロートの変位でウェイトを上昇させるようにする場合には、例えば、上記の実施形態の潮汐エネルギ利用負荷駆動装置において、フロート6が上昇する際のフロート側回転軸11の回転方向をウェイト8を上昇させる方向とするようにチェーン25をフロート6に連結するか、または、フロート6が上昇する際のウェイト側チェーン35の変位でウェイト8を上昇させるように、ウェイト側チェーン35とウェイト8とを連結するようにすればよい。
上記の実施形態では、ウェイト8の下降変位を回転変位に変換した後、増速機構62を通して負荷に伝達するようにしているが、負荷が大きく、ウェイトの下降変位を回転変位に変換して負荷に伝達するだけでウェイトにブレーキをかけることができる場合には、増速機構62を省略することができる。
上記のように、潮の干満に伴って生じる海面の上下に追従して上下するフロート6と、フロート6の質量よりも小さい質量を有して、下限位置と、上限位置との間を変位し得るように支持されたウェイト8とを設けて、引き潮時に生じるフロートの下方への変位を拡大してウェイトに伝達することによりウェイト8を上限位置に向けて上昇させ、フロート6とウェイト8との間の変位の伝達を断った状態にして、ウェイト8を上昇させられた位置から下限位置に向けて下降させながら、ウェイト8の下降の際の変位を負荷の駆動に適した変位に変換して負荷に伝達するようにすると、潮汐エネルギを位置エネルギとして蓄えておいて、負荷の駆動が必要なときに、ウェイト8を時間をかけて下降させながら負荷を駆動することができるため、負荷を的確に駆動して潮汐エネルギの有効利用を図ることができる。
上記のように、フロートの変位をウェイトに伝達して、該ウェイトを上昇させるようにすると、フロートの変位が如何にゆっくりと行われる場合でも、フロートの変位に伴ってウェイトを確実に上昇させて、潮汐エネルギを位置エネルギとして蓄積することができるため、潮汐エネルギの蓄積を容易かつ確実に行うことができる。
また上記のように構成すると、潮の干満が起こっている時間の長短に関係なく、負荷を駆動するのに適した速度でウェイトを下降させながらその変位を負荷を駆動するのに適した変位に変換して負荷に伝達することができるため、負荷を効率よく駆動することができる。
また上記のように構成すると、フロートの変位を波浪の影響を受けないウェイトの変位に変換してから負荷に伝達することができるので、波浪によるフロートの揺動の影響を受けることなく、安定に負荷を駆動することができる。
上記の実施形態では、引き潮時または上げ潮時にウェイトを上昇させてエネルギを蓄積するようにしたが、引き潮時にも上げ潮時にもウェイトを上昇させてより多くのエネルギを蓄積するように構成することもできる。
図6及び図7は引き潮時及び上げ潮時の双方にウェイトを上昇させてエネルギを蓄積することができるようにした潮汐エネルギ利用負荷駆動装置の構成例を概略的に示したものである。
本実施形態では、海面の上下に追従して上下するように設けられたフロート6と、フロート6の質量よりも小さい質量を有して、それぞれに対して設定された下限位置と上限位置との間を変位し得るように支持された第1及び第2のウェイト8及び8′とが設けられている。図6は、引き潮時にウェイト8を上昇させた状態を示し、図7は上げ潮時にウェイト8′を上昇させた状態を示している。
図6及び図7に示した装置において、フロート側上部スプロケット21及びフロート側下部スプロケット23及びフロート側チェーン25は、図1ないし図5に示したものと同様であり、フロート6の変位がスプロケット21及び23とチェーン25とにより回転変位に変換される。11及び12はそれぞれ前記の実施形態で用いられたフロート側回転軸及びウェイト側回転軸と同じものであるが、本実施形態では、これらの回転軸11及び12をそれぞれ第1のフロート側回転軸及び第1のウェイト側回転軸と呼ぶ。第1のフロート側回転軸11と第1のウェイト側回転軸12との間には第1のフロート・ウェイト間クラッチ機構18が設けられ、このクラッチ機構がオン状態の時に第1のフロート側回転軸11の回転が第1のウェイト側回転軸に伝達される。
第1のウェイト側回転軸12に第1のウェイト側下部スプロケットホイール32が取り付けられ、第1のウェイト側下部スプロケットホイール32の上方に第1のウェイト側上部スプロケットホイール34が配置されている。第1のウェイト側回転軸12及び第1のウェイト側上部スプロケットホイール34にチェーン35が掛け渡され、チェーン35に第1のウェイト8が連結されている。第1のウェイト側回転軸32の回転は、第1の負荷側クラッチ機構61と図示しない増速機構とを介して負荷としての発電機64に伝達されている。本実施形態においても、第1のウェイト8の上昇を許容した状態で該第1のウェイトの下降を阻止して該第1のウェイトの位置を保持する保持状態と該第1のウェイトの保持を解除して該第1のウェイトの下降を許容する解除状態とに切り換えが可能な第1のウェイト保持機構45が設けられている。
本実施形態では、フロート側上部及び下部スプロケットホイール21及び23と、チェーン25と、回転軸11及び12と、スプロケットホイール32,34及びチェーン35とにより、引き潮時のフロート6の変位を拡大して第1のウェイト8に伝達する第1の変位拡大伝達機構TS1が構成されている。第1のクラッチ機構18は、第1の変位拡大伝達機構TS1の変位伝達経路の途中に設けられていて、フロート8の変位が第1の変位拡大伝達機構を通して第1のウェイト8に伝達されるのを許容するオン状態とフロート6と第1のウェイト8との間の変位の伝達を断つオフ状態とに切り換えられる。第1のクラッチ機構18は、引き潮時にオン状態にされ、上げ潮時にオフ状態にされる。
また本実施形態では、第1のフロート側回転軸11に第2のフロート側回転軸11′が接続され、この第2のフロート側回転軸11′に第2のフロート・ウェイト間クラッチ機構18′を介して第2のウェイト側回転軸12′が接続されている。
また第2のウェイト側回転軸12′には第2のウェイト側下部スプロケットホイール32′が取り付けられ、第2のウェイト側下部スプロケットホイール32′の上方には第2のウエイト側下部スプロケットホイール34′が配置されている。第2のウェイト側下部スプロケットホイール32′及び第2のウェイト側上部スプロケットホイール34′にチェーン35′が掛け渡され、チェーン35′にウエイト8′が連結されている。第2のウェイト側回転軸12′の回転は、第2の負荷側クラッチ機構61′と図示しない増速機構とを介して負荷としての発電機64′に伝達される。また第2のウェイト8′の上昇を許容した状態で該第2のウェイトの下降を阻止して該第2のウェイトの位置を保持する保持状態と該第2のウェイトの保持を解除して該第2のウェイトの下降を許容する解除状態とに切り換えが可能な第2のウェイト保持機構45′が設けられている。
本実施形態では、フロート側上部及び下部スプロケットホイール23及び21と、チェーン25と、回転軸11′及び12′と、スプロケットホイール32′,34′と、チェーン35′とにより、上げ潮時のフロート6の変位を拡大して第2のウェイト8′に伝達する第2の変位拡大伝達機構TS2が構成されている。第2のクラッチ機構18′は、第2の変位拡大伝達機構TS2の変位伝達経路に設けられて、フロート6の変位が第2の変位拡大伝達機構TS2を通して第2のウェイト8′に伝達されるのを許容するオン状態とフロート6と第2のウェイト8′との間の変位の伝達を断つオフ状態とに切り換えられる。第2のクラッチ機構18′は、上げ潮時にオン状態にされ、引き潮時にオフ状態にされる。
本実施形態に係わる潮汐エネルギ利用負荷駆動装置は、図1ないし図5に示した実施形態において、プラットホーム1上に、引き潮時にウェイト8を上昇させる第1の変位拡大伝達機構と、上げ潮時にウェイト8′を上昇させる第2の変位拡大伝達機構とを左右対称に設けたものに相当する。
図6及び図7に示した装置を用いて行う潮汐エネルギ利用負荷駆動方法では、引き潮時に第1のクラッチ機構18をオン状態にし、第2のクラッチ機構18′をオフ状態にして、フロート6の下方への変位を拡大して第1のウェイト8に伝達することにより第1のウェイト8を上限位置に向けて上昇させるウェイト上昇過程(第1のウェイト上昇過程)を行う。このウェイト上昇過程を行っている間に、第2のクラッチ機構18′をオフ状態にしてフロート6と第2のウェイト8′との間の変位の伝達を断った状態で、第2のウェイト8′を下降させながら、該第2のウェイトの下降の際の変位を負荷64′の駆動に適した変位に変換して、負荷64′に伝達することにより該負荷を駆動する負荷駆動過程(第2の負荷駆動過程)を行う。
また上げ潮時には、第1のクラッチ機構18をオフ状態にし、第2のクラッチ機構18′をオン状態にして、上げ潮時に生じるフロート6の上方への変位を拡大して第2のウェイト8′に伝達することにより第2のウェイト8′を上限位置に向けて上昇させる第2のウェイト上昇過程を行う。このウェイト上昇過程を行っている間に、第1のクラッチ機構18をオフ状態にして、フロート6と第1のウェイト8との間の変位の伝達を断った状態で第1のウェイト8を下降させながら、該第1のウェイトの下降の際の変位を負荷の駆動に適した変位に変換して負荷64に伝達することにより該負荷64を駆動する負荷駆動過程(第1の負荷駆動過程)を行う。
上記の方法によれば、引き潮時にウェイト8にエネルギを蓄積し、上げ潮時にウェイト8′にエネルギを蓄積することができるため、負荷を駆動し得る時間を長くすることができ、潮汐エネルギを有効に利用することができる。
上記の実施形態では、ウェイト8または8′を上昇させる機構としてチェーンスプロケット機構を用いているが、ウェイトを上昇させる機構はチェーンスプロケット機構に限定されない。例えば、図8及び図9に示したように、ウェイト側回転軸12にワイヤロープ70を巻き付けたドラム71を取り付けて、ドラム71から繰り出したワイヤロープ70をドラム71の上方に配置した滑車72及び73に引っ掛け、滑車73から垂れ下がったワイヤロープ70の先端にウェイト8を固定するようにしてもよい。この場合は、フロートの変位に伴って、ドラム71を図9において反時計方向(矢印CCL方向)に回転させて、ワイヤロープ70をドラム71に巻き取ることにより、ウェイト8を上昇させることができ、フロート側上部スプロケットホイール21の外径よりもドラム71の外径を大きくしておくことにより、フロートの変位を拡大してウェイト8に伝達することができる。
同様に、フロート6の変位を回転変位に変換して回転軸11に伝達する機構としても、チェーンスプロケット機構以外の機構、例えばラックアンドピニオン機構等を用いることができる。
上記の実施形態では、フロート6の変位を1つのチェーンスプロケット機構を通してフロート側回転軸11に伝達するようにしているが、チェーン及びスプロケットにかかる負担を軽減するためにフロート6の変位を、バランスよく配置した複数のチェーンスプロケット機構を通してフロート側回転軸11に伝達するように構成することもできる。
上記の実施形態では、フロート側上部スプロケットホイール21の外径よりも、ウェイト側下部スプロケットホイール32の外径を大きくすることにより、フロートの変位を拡大してウェイトに伝達するようにしているが、フロート側回転軸11とウェイト側回転軸12との間に歯車増速機構を設けることにより、フロートの変位を拡大してウェイトに伝達するようにしてもよい。
上記の実施形態では、ウェイト8の上限位置を下限位置の真上に設定しているが、本発明はウェイトの上限位置をこのように設定する場合に限定されない。例えば、ウェイト8の上限位置を下限位置の斜め上方の位置に設定してもよい。この場合は、例えば図10に示すように、海岸に隣接する傾斜地にガイドレール75を敷設しておくとともに、ガイドレールに案内されて転動する車輪76をウェイト8に設けて、ウェイト8をガイドレール75に沿って上下させるようにすることができる。図10に示した例では、ウエイト側回転軸にワイヤロープ70が巻かれたドラム71が取り付けられて、ドラム71から繰り出されたワイヤロープ70がウェイト8の上限位置よりも高い位置に設置された滑車72を経由してウェイト8に連結されている。この例では、引き潮時のフロート6の下方への変位を拡大してロープ70を通してウェイト8に伝達することにより、ウェイト8を上限位置に向けて上昇させる。上げ潮時には、フロート8の変位を拡大してウェイトに伝達する変位拡大伝達機構の変位伝達経路に設けられたクラッチ機構(図10には図示せず。)をオフ状態にして、ウェイト8をフロート6から機械的に切り離した状態とし、更にウェイト8の位置を保持していたウェイト保持機構45を解除状態として、ウェイト8を下降させながらその変位を負荷に伝達する。
上記の説明では、図5に示したウェイト保持機構45を用いるとしたが、ウェイト保持機構は、ウェイトの上昇を許容した状態で該ウェイトの下降を阻止して該ウェイトの位置を保持する保持状態と、ウェイトの保持を解除して該ウェイトの下降を許容する解除状態とに切り換えが可能なものであればよく、図5に示したものに限定されない。
例えば、図12に示したように、ウェイト側回転軸12に取り付けられて、ウェイトを上昇させる際に図面上反時計方向に回転し、ウェイトを下降させる際に時計方向に回転するラチェットホイール41と、ウェイト側回転軸12の直下の位置から、ウェイト側回転軸12の軸線と直交する平面に沿って、水平方向に所定の距離を隔てた位置に位置させて、プラットホーム1に固定された支持台46に回転自在に支持された回転軸47と、回転軸47に後端部が固定され、先端にローラ48aが回転自在に支持されて、ローラ48aがラチェット爪41aに係合することによりラチェットホイール41を係止して該ラチェットホイールが時計方向に回転するのを阻止するラチェットホイール係止アーム48と、ウェイト側回転軸12の下方の空間を該回転軸12を越えて延びるように配置されて後端部が回転軸47に固定された操作アーム49とを備えた構造のウェイト保持機構45を用いることもできる。
図12に示されたウェイト保持機構45においては、操作アーム49がラチェットホイール係止アーム48よりも長く形成されていて、操作アーム49が、ラチェットホイール係止アーム48よりも大きい質量を有し、かつ、回転軸47の中心と操作アーム49の重心との間の距離が回転軸47の中心とラチェットホイール係止アーム48の重心との間の距離よりも長くなるように、ラチェットホイール係止アーム48及び操作アーム49が設けられている。
図12に示されたようにウェイト保持機構45においては、操作アーム49が図示の係止位置と、図示の係止位置よりも時計方向に一定角度ずれた位置に設定された係止解除位置との間を回動し得るようになっており、操作アーム49が係止解除位置に保持されているときには、図示しない機構により、ラチェットホイール係止アーム48の先端のローラ48aがラッチェットホイール41のラチェット爪から離れた状態に保持されるようになっている。
フロートの変位によりウェイトを上昇させる際には、操作アーム49がフリーの状態(操作力が与えられない状態)に置かれている。このとき、操作アーム49の質量により回転軸47に働く図面上反時計方向のトルクにより、ラチェットホイール係止アーム48がラチェットホイール41側に常時付勢された状態にある。この状態では、ウェイトの質量によりラチェットホイール41が付勢されて該ラチェットホイールが時計方向に回転しようとしたときに、ラチェットホイール係止アーム48の先端のローラ48aがラチェット爪41aに係合してラチェットホイール41及びウェイト側回転軸12の回転を阻止するため、ウェイトの下降が阻止されてその位置が保持される。
フロート側からウェイト側回転軸12にウェイトを上昇させる方向(図面上反時計方向)の回転力が与えられたときには、ラチェットホイール係止アーム48の先端のローラ48aがラチェット爪41aにより外側に押されて該ラチェット爪から外れるため、ラチェットホイール41の回転が許容され、ウェイトの上昇が許容される。
ウェイトの上昇が完了した後、負荷を駆動する際には、操作アーム49の先端に該操作アームを時計方向に回動させる向きの操作力Fを与えることにより、操作アーム49を係止解除位置まで回動させてその位置に保持する。ラチェット爪係止アームの先端にはローラ48aが取り付けられているため、ラチェット爪41aからの係止アーム49の引き外しは容易に行うことができる。この状態では、ラチェットホイール係止アーム48の先端のローラ48aがラチェット爪41aから離れた位置に保持されるため、ラチェットホイール41及びウェイト側回転軸12の回転が許容され、ウェイトの下降が許容される。
操作アーム49の操作力Fは、商用電源等の商用エネルギを利用する油圧シリンダやモータ等の駆動源から与えてもよく、商用エネルギを用いることなく、フロート6側から与えてもよい。例えば、引き潮時のフロート6の変位を拡大してウェイト8に伝達してウエイトを上昇させる場合には、フロート6が引き潮時の下限位置に達する直前のフロートの下降変位を逆方向の変位に変換して操作アーム49に伝達することにより、操作アーム49に操作力Fを与えるようにしてもよい。この場合、操作アーム49が係止解除位置まで回動したときに該操作アーム49をその係止解除位置に保持する操作アーム保持機構を設けておいて、フロートが小潮の際の上げ潮時の上限位置に達する直前の該フロートの変位により操作アーム保持機構による操作アームの保持を解除して、操作アームを係止位置に自動的に復帰させるようにしておくと、商用エネルギを用いることなく、潮汐力によりウェイト保持機構45を自動操作することができる。
同様に、フロート6が所定の位置に達したときに、フロートの変位を利用してクラッチ機構18をオン状態またはオフ状態にするように構成することもできる。例えば、フロートが引き潮時の下限位置に達する直前のフロートの変位をクラッチ機構18に伝達して該クラッチ機構18をオフ状態にして、フロートが小潮の際の上げ潮時の上限レベルに達する直前のフロートの変位をクラッチ機構18に伝達して該クラッチ機構をオン状態にするようにしてもよい。
図6に示すように、引き潮時及び上げ潮時にそれぞれウェイト8及び8′を上昇させる構成をとる場合に、上記のようにフロートの変位を利用してクラッチ機構18及び18′とウェイト保持機構45及び45′とを自動操作するように構成しておくと、引き潮時にも上げ潮時にも、商用エネルギを用いることなく、潮汐エネルギ利用負荷駆動装置を自動運転して発電機などの負荷を駆動することができる。
上記の実施形態では、引き潮時のフロートの変位または上げ潮時のフロートの変位を拡大して、ウェイトを上昇させる方向の変位に変換してウェイトに伝達するようにしたが、引き潮時のフロートの変位及び上げ潮時のフロートの変位の双方を拡大してウェイトを上昇させる方向の変位としてウェイトに伝達するように構成することもできる。
この場合、フロート・ウェイト間変位伝達装置は、引き潮時のフロートの変位及び上げ潮時のフロートの変位の双方を拡大してウェイトを上昇させる方向の変位としてウェイトに伝達する変位拡大伝達機構と、変位拡大伝達機構の変位伝達経路の途中に設けられてフロートの変位が変位拡大伝達機構を通してウェイトに伝達されるのを許容するオン状態とフロートとウェイトとの間の変位の伝達を断つオフ状態とに切り換えが可能なクラッチ機構とを有して、クラッチ機構がオン状態にあるときにフロートの変位を拡大してウェイトに伝達して該ウェイトを上限位置に向けて上昇させ、クラッチ機構がオフ状態にあるときにフロートとウェイトとの間での変位の伝達を断つように構成される。
上記フロート・ウェイト間変位伝達装置は、プラットホーム上に回転自在に支持されたフロート側回転軸及びウェイト側回転軸と、引き潮時に生じるフロートの変位及び上げ潮時に生じるフロートの変位の双方を一方向の回転変位に変換してフロート側回転軸に伝達するフロート側変位伝達機構と、ウェイト側回転軸の一方向の回転に伴ってウェイトを上限位置に向けて変位させるべく、ウェイト側回転軸の回転変位をウェイトの変位の方向に沿う変位に変換してウェイトに伝達するウェイト側変位伝達機構と、フロート側回転軸とウェイト側回転軸との間に設けられたクラッチ機構とを備えて、クラッチ機構がオン状態にあるときにフロートの変位がn倍に拡大されてウェイトに伝達されるように構成することができる。
図13ないし図15は、引き潮時に生じるフロートの変位及び上げ潮時に生じるフロートの変位の双方を一方向の回転変位に変換してフロート側回転軸に伝達するフロート側変位伝達機構の構成例を示したものであり、図13はこの機構の側面図、図14は要部の拡大断面図、図15はフロート側チェーンの一部を拡大して示した断面図である。
図13に示したように、フロート側チェーン25の、フロート側上部スプロケットホイール21及びフロート側下部スプロケットホイール23の間を上下に延びる2つの部分25A及び25Bは、フロート6を上下に貫通させて設けられた一対のチェーン貫通孔601A及び601Bを貫通した状態で設けられている。
図15に示したように、フロート側チェーン25は、平行に配置された1対の内プレート25a,25a′と、平行に配置された1対の外プレート25b,25b′とをチェーンの長手方向に沿って交互に並べて配置して、隣り合う内プレート25a,25a′のペアと外プレート25b,25b′のペアとをピン25cで連結した公知の構造を有し、一つ置きに配置されたピン25cにローラ25dが回転自在に嵌合されている。また他の一つ置きに配置されたピン25cには、その両端寄りの部分に2つのローラ25e、25e′が回転自在に嵌合されている。回転軸11及び22にそれぞれ取り付けられたスプロケットホイール21及び23は、チェーンのピン25cの軸線方向に間隔をあけて1対ずつ設けられ、1対ずつ設けられたスプロケットホイール21及び23が、図15に鎖線S1及びS2で示した2箇所の部分でチェーン25のローラ25d及び25e,25e′に係合するようになっている。
ローラ25e,25e′が嵌合されたピン25dの中央寄りの部分(スプロケットホイール21及び23と干渉しない部分)には、係合子80を構成する一対の回動アーム81及び82の後端部に設けられたボス部81a及び82aが嵌合され、これにより一対の回動アーム81及び82がピン25dに回動自在に結合されている。係合子80は、一対の回動アーム81及び82のそれぞれの先端部が互いに離反した状態になる開状態と、一対の回動アーム81及び82のそれぞれの先端が互いに接近した状態になる閉状態とをとるように構成されていて、常時は開状態をとるように各係合子を構成する一対の回動アーム81及び82がバネ83で付勢されている。
各係合子80は、チェーンの長手方向に対して同じ向きを向くようにその回動範囲が規制されていて、閉状態で各チェーン貫通孔601A,601B内をチェーンとともに通過して、各チェーン貫通孔を抜け出た際に開状態に復帰するように構成されている。
図示の例では、チェーン挿通孔601Aの下端側及びチェーン挿通孔601Bの上端側にそれぞれ凹部602A及び602Bが形成され、チェーン挿通孔601Aの下端及びチェーン挿通孔601Bの上端がそれぞれ凹部602A及び602B内に開口するようになっている。従って、チェーン挿通孔601A及び601Bをそれぞれ抜け出た係合子80の回動アーム81,82の先端は、凹部602A及び602B内でチェーン挿通孔601Aの下端の開口部周辺及びチェーン挿通孔601Bの上端の開口部周辺に係合する。このように構成しておくと、凹部602A及び602Bにより、係合子80の回動アーム81,82の開き角を制限した状態で、係合子80の回動アーム81,82の先端をチェーン挿通孔601Aの下端の開口部周辺及びチェーン挿通孔601Bの上端の開口部周辺に係合させることができるため、フロート6から係合子80に作用する力により係合子80の回動アーム81、82が開くのを阻止して、フロート6とチェーン25との結合強度を高めることができる。
本実施形態のフロート側変位伝達機構においては、フロート6が下降する際には一対のチェーン挿通孔601A,601Bの一方601Aを抜け出て開状態になったいずれかの係合子80の回動アーム81,82の先端が該一方のチェーン挿通孔601Aの下端側の開口部の周辺に係合してフロート6の下降に伴ってチェーン25を一方向(図13の矢印方向)に走行させるようにフロート6をチェーン25に結合する。またフロート6が上昇する際には、一対のチェーン挿通孔601A,601Bの他方601Bを抜け出て開状態になったいずれかの係合子80の回動アーム81及び82の先端が該他方のチェーン挿通孔601Bの上端側の開口部の周辺に係合して、フロート6の上昇に伴ってチェーン25を前記一方向に走行させるようにフロート6をチェーン25に結合する。従って、この例では、フロート6が下降する際にも上昇する際にも、チェーン25が同じ方向に走行し、フロート側上部スプロケットホイール21が同じ方向(図13において反時計方向)に回転する。
図13ないし図15に示されたフロート側変位伝達機構を用いる場合、他の機構は図1ないし図4に示した実施形態で用いたものと同様でよい。
図13ないし図15に示されたフロート側変位伝達機構においては、チェーンの一つ置きのピンに係合子80を支持しているが、係合子80は、チェーン25の長手方向に並べて多数個設けられて、各係合子80を構成する一対の回動アーム81,82の後端部が前記フロート側チェーンのピンに回動自在に結合されていればよく、係合子80を取り付けるチェーンのピン25cは、必ずしも1つ置きのピン25cでなくてもよい。ピン25cの間隔が大きく、ピン25cに支持された係合子80が隣接するピン25cと干渉するおそれがない場合には、すべてのピン25cに係合子80を取り付けることもできる。
上記のようにフロート側変位伝達機構を構成しておくと、引き潮時にも上げ潮時にもフロート側回転軸11を一方向に回転させて、フロート6の変位に伴ってウェイト8を上昇させることができるため、負荷を駆動する機会を増やすことができる。例えば、引き潮時にウェイトを上昇させた後、上げ潮が始まるまでの間にウェイトを下降させて負荷を駆動し、次いで上げ潮時に再び負荷を上昇させた後、次の引き潮が始まるまでの間にウェイトを下降させて負荷を駆動するサイクルを繰り返すことにより、1日に4回負荷を駆動することができる。
図13ないし図15に示したフロート側変位伝達機構の構成を要約すると下記の通りである。
(a)フロート側回転軸11に取り付けられたフロート側上部スプロケットホイール21と、フロート6の下方に配置されたベースフレームに回転自在に支持されたフロート側下部スプロケットホイール23と、フロート側上部スプロケットホイール21とフロート側下部スプロケットホイール23とに掛け渡されたフロート側チェーン25とを備えている。
(b)フロート側チェーン25の、フロート側上部スプロケットホイール21及びフロート側下部スプロケットホイール23の間を上下に延びる2つの部分25A,25Bは、フロート6を上下に貫通させて設けられた一対のチェーン貫通孔を貫通した状態で設けられている。
(c)フロート側チェーン25は、多数のプレートをピン25cにより連結した構造を有している。
(d)一対の回動アームからなる係合子が、チェーン25の長手方向に並べて多数個設けられて、各係合子を構成する一対の回動アーム81及び82の後端部がフロート側チェーンのピンに回動自在に結合されている。
(e)各係合子80は、一対の回動アーム81,82のそれぞれの先端部が互いに離反した状態になる開状態と一対の回動アームのそれぞれの先端が互いに接近した状態になる閉状態とをとるように構成されていて、常時は開状態をとるように各係合子を構成する一対の回動アームがバネで付勢されている。
(f)各係合子80は、チェーンの長手方向に対して同じ向きを向くように設けられていて、閉状態で各チェーン貫通孔内を前記チェーンとともに通過して、各チェーン貫通孔を抜け出た際に前記開状態に復帰するように構成されている。
(g)引潮フロートが下降する際には一対のチェーン挿通孔の一方を抜け出て開状態になったいずれかの係合子80の回動アーム81,82の先端が該一方のチェーン挿通孔の下端側の開口部の周辺に係合してフロート6の下降に伴ってチェーンを一方向に走行させるようにフロートをチェーンに結合し、フロートが上昇する際には一対のチェーン挿通孔の他方を抜け出て開状態になったいずれかの係合子80の回動アーム81,82の先端が該他方のチェーン挿通孔の上端側の開口部の周辺に係合してフロート6の上昇に伴ってチェーンを一方向に走行させるようにフロートをチェーンに結合して、フロートが下降する際にも上昇する際にも、フロート側上部スプロケットホイールを一方向に回転させる。
上記の説明では、ウェイトの下限位置をプラットホーム1よりも上に設定するとしたが、ウェイトの下限位置は必ずしもプラットホームよりも上に設定する必要はなく、例えば、図11に示すように、プラット1よりも下方の位置にウェイト8の下限位置PLを設定してもよい。この場合、ウェイト8を上下方向に伸びる管78内で上下させるようにするのが好ましいが、場合によっては管78を省略して、海中でウェイト8を上下させるようにしてもよい。
図1ないし図5に示した実施形態のように、防波壁10の内側にフロート6を配置するようにすると、フロートが波の影響を受けるのを防ぐことができるため好ましいが、防波壁10は必須のものではなく、図10に示した例のように、防波壁を省略することもできる。
図6及び図7に示した実施形態では、ウェイト8及び8′の下降により、それぞれ異なる負荷64及び64′を駆動するようにしているが、ウェイト8及び8′の下降に伴う変位を変換して得た回転変位を共通の負荷に伝達するように装置を構成することもできる。
図1乃至図5に示した実施形態のように、鉄塔7を建造して、この鉄塔にウェイト8を支持する構造にする場合には、鉄塔7を風力発電用の風車を支持する手段として利用して、潮汐エネルギによる発電を行わせると同時に風力発電をも行わせるようにすることもできる。
上記の各実施形態において、クラッチ機構の操作やウェイト保持機構の操作は、コンピュータを用いて自動的に行わせてもよく、クラッチ機構やウェイト保持機構の駆動源を操作するスイッチを手動操作することにより行っても良い。