本発明の実施形態を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施形態は、マルチホップ通信を実行する通信装置に関する。本実施形態に係る通信装置は、他の通信装置から報知された制御情報の受信状況に応じて、他の中継装置との間における通信経路の確立、維持などに関して制御する。一般的に、無線LANシステムにおいては、認証情報の受信電力の大きさ、中継数の少なさなどにより、通信経路が確立され、同一の周波数帯を使用している制御局、基地局装置、端末装置の間において通信経路に関するグループが形成される。「同一の周波数帯を使用」とは、直接の通信相手との間において同一の周波数帯を使用していることを含む。たとえば、制御局と基地局装置において第1の周波数帯が使用され、さらに、その基地局装置と端末装置との間において第2の周波数帯が使用されることを含む。
一方、多数の基地局装置が同一の周波数帯で通信を実行している場合、所定の基地局装置と離れた場所に存在する基地局装置の間において、いわゆる隠れ端末問題が発生する場合がある。また、IEEE802.11標準にて規定されているCSMA/CA(Carrier Sence Multiple Access/Collision Avoidance)方式においては、送信元の装置が中継する基地局装置を経由して、見通し外の装置宛にデータを送信するため、隠れ端末問題が多発する。そうすると、相手局からの制御情報であるハローパケットは定期的に送信されているにもかかわらず、他の基地局装置の通信負荷によっては、データの受信が不可能となり、相手局の認識が出来ず、経路を切断することとなる。一般的に、隠れ端末問題の回避に対しては、IEEE802.11標準にて規定されているRTS/CTS手法が用いられる。RTS/CTS手法とは、データ送信前にRTS/CTSパケットを交換して、送信許可を得る手法である。具体的には、データパケットを送信しようとする局が送信相手局に対し、RTSを送信する。RTSを受信した局は自局での接続状態を見て、CTSを返答する。このCTSの結果により送信許可を得て、データを送信する。
しかしながら、ハローパケットは同報送信であり、送信相手局を特定できないため、RTS/CTS手法による隠れ端末問題の解決に適用することは難しい。また、データ送信毎に送信相手局との確認手順が必須となるので、スループットの低下を招く場合もある。さらに、隠れ端末問題を解決するためにTDMA(Time Division Multiple Access)方式などのアクセス制御方式を改変すると無線LANの標準規格であるIEEE802.11から逸脱するため、機能実装時にハードウェア改変が必要であったり、既存無線LANシステムとの互換性の問題が生じうる。
そこで、本発明の実施形態においては、ハローパケットによる相手局認識による通信経路が構成され、安定状態に移行した後は、ハローパケットによる安定度認識処理において、安定状態から非安定状態への移行条件を非安定状態から安定状態に移行するときよりも緩く設定する。すなわち、新たな基地局装置との通信回線の確立よりも、安定状態にある基地局装置との通信回線を優先する。このような態様をとることによって、隠れ端末問題の発生しやすい高負荷状態である基地局装置との経路構成をしづらくなる。そうすると、通信負荷の小さい基地局装置と経路を確立するようになり、システム全体の負荷が分散され、隠れ端末問題の発生による問題点が低減できる。詳細は後述する。
図1は、本発明の実施形態にかかる通信システム100の構成例を示す。通信システム100は、有線ネットワーク200と、第1サーバ10と、第2サーバ20と、基地局装置30で代表される第1基地局装置32と第2基地局装置34と第3基地局装置36と、端末装置40とを含む。有線ネットワーク200は、インターネットなどの有線通信網である。第1サーバ10および第2サーバ20は、有線ネットワーク200と接続されており、基地局装置30を制御する。また、第1サーバ10は、有線回線を介して、第1基地局装置32と接続されている。第1基地局装置32、第2基地局装置34、または、第3基地局装置36は、無線回線を介して、端末装置40と通信を実行している。また、第1基地局装置32、第2基地局装置34、および、第3基地局装置36は、無線回線を介して、お互いに通信を実行している。いいかえると、第1基地局装置32、第2基地局装置34、または第3基地局装置36は、端末装置40との通信を互いに中継している。
なお、図1においては、説明を簡易にするために、サーバとして第1サーバ10と第2サーバ20のみを図示したが、他のサーバが存在してもよい。また、第1サーバ10と接続されている基地局装置30のみ図示したが、第2サーバ20も同様に、有線回線を通じて他の基地局装置と接続されていてもよい。また、第1サーバ10に有線接続されている基地局装置30として、第1基地局装置32を図示したが、他の基地局装置が接続されていてもよい。また、端末装置40を1つのみ図示したが、所定の基地局装置と通信を実行する他の端末装置が存在してもよい。また、本実施形態において説明する無線マルチホップネットワークは、公知の方法によって実現されてもよく、たとえば、”T.Clause、他1名、「Optimized Link State Routing Protocol(OLSRプロトコル)」、IETF RFC3626、2003年10月”に記載されたOLSRプロトコルが適用されてもよい。
端末装置40は、第1基地局装置32もしくは第2基地局装置34を介して、第1サーバ10と接続される。また、端末装置40は、第2基地局装置34に中継され、第1基地局装置32を介して第1サーバ10と接続されてもよい。このように複数の通信経路が確立されることにより、柔軟性が向上する。たとえば、第1基地局装置32と端末装置40の間に遮蔽物が存在する場合、第1基地局装置32を介した第1サーバ10との通信においてスループットが低下するような場合がある。このような場合、端末装置40は、まず、第2基地局装置34と通信を実行し、第2基地局装置34は、端末装置40との通信を第1基地局装置32に中継し、第1基地局装置32は、第1サーバ10に中継する。このような態様をとることにより、端末装置40は、快適な通信環境を継続して実行することができる。
ここで、第1基地局装置32と第2基地局装置34の通信、および、端末装置40と第1基地局装置32もしくは第2基地局装置34との通信においては、同一の周波数帯域において実行されている。また、端末装置40は、第1基地局装置32および第2基地局装置34と同一のESS−ID(Extended Service Set IDentifier)が設定されることによって、第1基地局装置32および第2基地局装置34との通信が可能となる。また、第1基地局装置32と第2基地局装置34も同様に、同一のESS−IDが設定される。ESS−IDとは、特定のアクセスポイントと通信する機器を示すグループ名を示す。アクセスポイントと同じESS−IDを設定した端末装置のみがそのアクセスポイントと通信できる。また、アクセスポイントには、使用すべきチャネルが設定される。なお、アクセスポイントとは、第1サーバ10と端末装置40の通信を中継する通信装置を含み、たとえば、基地局装置30を含む。
ここで、無線LANについて説明する。無線LANは、IEEEにて標準化された規格であり、現状では、IEEE802.11aとIEEE802.11bとIEEE802.11gという規格がある。ここで、IEEE802.11bとIEEE802.11gは相互接続できるが、IEEE802.11aは、IEEE802.11bとIEEE802.11gと接続できない。また、IEEE802.11aとIEEE802.11gの伝送速度は、最大54Mbpsである一方、IEEE802.11bは、11Mbpsとなる。また、これらが利用する周波数帯域はそれぞれ異なり、IEEE802.11aが使う周波数帯域は5GHz帯であり、IEEE802.11bとIEEE802.11gが使う周波数帯域は2.4GHz帯である。IEEE802.11aが使う5GHz帯は周波数が高いので、電波が直線的に進む特性がある。その結果、アンテナの向きや途中にある壁などの遮蔽物が電波の受信状況に悪影響を及ぼしやすい。さらに、減衰が大きいので電波が届く伝送距離も短い。IEEE802.11aが使う5GHz帯に比べると、IEEE802.11aとIEEE802.11gで使用する2.4GHz帯は周波数が低い。その分、電波が遠くまで届き、伝送距離は、IEEE802.11aより長い。ただし、2.4GHz帯は電子レンジやブルーツース(IEEE802.15.1)など無線LAN以外の機器にも使用されているため、電波が混み合い、伝送速度に影響を与える場合がある。
図2は、図1の基地局装置30と端末装置40とが使用するチャネル配置500の構成例を示す。チャネル配置500は、第1チャネル501、第2チャネル502、・・・、第14チャネル514とを含んで構成される。無線LANでは、同時に複数の機器が通信できるように周波数帯域を細かく分割し、それぞれをチャネルと称している。たとえば、IEEE802.11bとIEEE802.11gで使用する2.4GHz帯は、14のチャネルに分けられており、IEEE802.11bは第1チャネル501〜第14チャネル514、IEEE802.11gは第1チャネル501〜第13チャネル513チャネルを使用できる。無線LANで通信する際は、アクセスポイントごとにどのチャネルを使うか設定される。同じ場所で複数のアクセスポイントを使う場合、離れたチャネルを設定することによって、伝送品質、スループットを向上できる。
無線LANにおいては、近い場所で複数のアクセスポイントが使えるように、複数のチャネルを用意している。ただし、2.4GHz帯を使うIEEE802.11bとIEEE802.11gのチャネルは、図2に示すように、互いに重なり合う部分が存在し、隣接チャネルを同時に使うと伝送速度が低下する場合がある。
無線LANが用いられている周波数帯では、さまざまな変復調方式・帯域幅を持った装置の共用が認められている。しかし、想定される帯域幅を最大限に取った無線チャネル割り当てであると、狭い帯域幅で十分な装置でのチャネル利用時に比べ、冗長な無線チャネル割り当てとなる。そのため、中心周波数をある程度ずらすような無線チャネル割り当てをし、さらに広帯域幅を使用する装置では装置の運用時に相互干渉の起きないように、使用者側が任意にチャネル配置をすることしている。例えば、IEEE802.11b方式とIEEE802.11g方式とでは変復調方式や伝送速度が異なるが、例えばIEEE802.11g方式の装置はIEEE802.11b方式の無線フレームを送受信できるようになっており、相互に共存できるようになっている。
無線LANで用いられている変復調方式では、ある程度距離が離れていれば、相互に帯域が重なり合っているチャネルで運用していても、受信レベルの低下や、遠近問題により実用上問題が無くなる。遠近問題とは、自局に近い局と遠い局が同時に自局に対して通信を行なうと、自局に近い方の局の電波の方が圧倒的に強く受信され、遠い局からの電波はほとんど埋もれてしまい、著しく通信品質が下がるか、あるいは通信できない状態といった問題をさす。
そのため、アクセスポイント毎の無線チャネルを相互に帯域が被ってしまうチャネル同士に設定しても干渉がおきにくい。従って、広範囲に運用する場合にチャネル間の距離が長い状態で干渉が置きにくい状態であれば、隣接チャネルにて運用が可能である。このような運用方法により、周波数利用効率の高い無線チャネル配置が実現できる。
ここで、基地局装置30同士における無線通信の経路の確立について説明する。無線通信の経路の確立においては、お互いにハローパケットを報知することによって、お互いを認識し、中継すべきか否かを判断する。また、すでに中継処理を実行している基地局装置であっても、その後、伝搬品質の悪化等により、中継するのに好ましくない状態に移行する場合がある。そのような場合、中継処理を切断することとなる。しかしながら、瞬時現象として、ハローパケットが偶発的に受け付けられなかったような場合、そのような事態をもって、安定状態にある基地局装置との中継処理を切断することは好ましくない。そこで、本発明の実施形態においては、一旦、安定状態に移行した後は、安定状態を継続することを優先させ、不安定状態への移行の頻発を防止し、システムの安定性を向上させ、もって隠れ端末によるハローパケット不達状態が引き起こす問題を解決することとした。
したがって、同一のサーバと通信を実行する基地局装置30において、使用するチャネルは、なるべく離れたチャネルに設定することが好ましい。さらに好ましくは、隣接するチャネルであっても、重複部分の少ない第14チャネル514が一方の基地局装置30に設定されることが好ましい。しかしながら、チャネル数は有限であり、また、周波数利用効率、チャネル割当の負担を軽減するという観点から、必ずしも離れたチャネルに設定できるとは限らない。したがって、本発明の実施形態のように、意図しない通信経路が切断されることを回避するために、一度、安定状態に移行した基地局装置との通信回線を後方保護することとした。これにより、スループットが向上でき、また、システム負荷が低減できることとなる。
図3は、図1の基地局装置30の構成例を示す。基地局装置30は、無線通信部50と、生成部52と、照合部58と、制御部60と、セレクタ62と、有線通信部64とを含む。
無線通信部50は、複数の周波数帯のいずれかの周波数帯を使用して図示しない端末装置40と通信し、同一の周波数帯を使用して所定の中継装置の信号を別の中継装置に中継する。また、無線通信部50は、受信部54と、送信部56とを含む。送信部56は、無線により、端末装置40または基地局装置30との間で通信を実行する。また、送信部56は、生成部52によって生成されたハローパケットを所定の周期で報知する。ハローパケットは、周波数情報とESS−IDとを含んでもよい。
受信部54は、他の基地局装置30から報知された周波数情報を受信して、その周波数情報を照合部58に通知する。また、受信部54は、他の基地局装置30もしくは端末装置40から送信された信号を受信する。その際、受信した信号に含まれる制御情報などは制御部60に通知する。また、受信した信号に含まれるデータ情報などはセレクタ62に送る。セレクタ62は、制御部60の指示にもとづき、受信部54から送信された信号を送信部56もしくは有線通信部64に送信する。
生成部52は、無線通信部50において使用している周波数帯が示された周波数情報を生成する。また、生成部52は、無線通信部50において通信の対象となっている端末装置40および中継の対象となっている中継装置とを含むグループを示すグループ識別情報、すなわち、ESS−IDを生成する。生成部52は、無線通信部50において使用している周波数帯が示された周波数情報をハローパケットの一部として生成してもよいし、データ信号の一部として生成してもよい。また、生成部52は、当該基地局装置30のグループ識別情報であるESS−IDをハローパケットの一部として生成してもよいし、データ信号の一部として生成してもよい。また、ESS−IDだけでなく、ESS−IDの長さを示す情報を含めても良い。
照合部58は、受信部54によって受信されたデータ情報や識別情報に含まれた周波数帯と、生成部52によって生成された周波数情報に含まれる周波数帯とを照合する。照合部58は、受信部54によって受信されたESS−IDと、生成部52によって生成されたESS−IDとを照合してもよい。
制御部60は、照合部58によって照合された結果、双方の周波数帯が一致する場合、新たな中継の対象となるべき基地局装置30を無線通信部50における中継の対象とする。制御部60は、照合部58によって照合された結果、双方のグループ識別情報が一致する場合、新たな中継の対象となるべき基地局装置30を無線通信部50における中継の対象とする。詳細は後述する。ここで、「新たな中継の対象となるべき基地局装置30」とは、当該制御部60が図1に示す第1基地局装置32である場合、第1基地局装置32と通信経路が確立されていない基地局装置30を含み、たとえば、図1に示す第3基地局装置36を含む。
図4は、図2の無線通信部50が報知するハローパケット300の構成例を示す。ハローパケット300は、第1ヘッダ310と、パケットタイプ320と、第2ヘッダ330と、制御メッセージ340とを含む。第1ヘッダ310には、送信元を示す情報と、送信元のアクセスポイントのアドレスと、マルチキャストである旨を示す情報とを含むことや、上位プロトコルを規定(IP(Internet Protocol)/ARP(Address Resolution Protocol)/VLAN(Virtual Local Area Network)等)をする役割にも利用されている。これを独自な値とすることで、本実施形態を用いていない無線装置がハローパケットを受信したとしても、他の通信との混信を避けられる。パケットタイプ320には、IEEEで規定されたイーサタイプを示す情報であって、事業者や用途ごとに固定された情報を含む。第2ヘッダ330には、後述する制御メッセージ340に含まれる情報を識別する種別番号が含まれる。種別番号は少なくとも3つからなり、自局情報、経路構成に関する情報、相手局状態認識用の情報のいずれかを示す。制御メッセージ340には、第2ヘッダ330が示す種別番号により、含まれる内容が異なる。
たとえば、第2ヘッダ330に含まれる種別番号が自局情報を示す番号である場合、制御メッセージ340には当該基地局装置30の使用しているチャネル情報、および、ESS−IDなどが含まれる。また、第2ヘッダ330に含まれる種別番号が経路構成に関する情報を示す番号である場合、制御メッセージ340にはそのハローパケット300を送信した基地局装置30を含め、中継される基地局装置30の個数などが含まれる。なお、「中継される基地局装置30の数」は、ホップ数とも呼ばれる。また、第2ヘッダ330に含まれる種別番号が相手局状態認識用の情報である場合、制御メッセージ340には、受信確認通知やハローパケット300を報知した基地局装置30と、そのハローパケット300を受信した基地局装置30との間における通信の安定度を示す情報などが含まれる。また、この場合における制御メッセージ340には、当該ハローパケット300を受信すべき基地局装置30を示す情報も含まれる。
図5は、図3の制御部60の構成例を示す。制御部60は、受付部70と、カウンタ部72と、中継許可部74とを含む。受付部70は、無線通信部50を介して、他の基地局装置から報知された制御情報を受け付ける。この受け付け処理は、制御情報にかかる基地局装置ごとに、所定の周期で実行される。カウンタ部72は、所定の周期に対応する所望のタイミングにおいて、受付部70において他の基地局装置からの制御情報が受け付けられた場合、他の基地局装置に関する受信回数を増加する。一方、所望のタイミングにおいて、受付部70において他の基地局装置からの制御情報が受け付けられなかった場合、受信回数を減少させる。ここで、受信回数とは、その制御情報にかかる基地局装置と、当該基地局装置との間における通信回線の安定度を示している。
ここで、安定度である受信回数がしきい値と一致した場合、その受信回数にかかる制御情報を報知した基地局装置は安定状態に移行したと判断できるため、カウンタ部72は、当該受信回数に所定の値を加算する。所定の値を加算することによって、それ以降に、その基地局装置から報知された制御情報を正常に受け付けられなかった場合であっても、その基地局装置の安定性を信頼し、安定状態から不安定状態への移行させない。いいかえると、安定性の高い基地局装置との間において、なんらかの悪条件が発生し、1、2回程度、制御情報を受け取らなかったことをもって、その安定性を覆すことは、通信経路の安定性の維持の観点より好ましくない。したがって所定の値を加算することによって、通信経路の切断を回避することとした。
同様に、カウンタ部72は、他の基地局装置からの受信回数がしきい値より大きいときに、受付部70において、他の基地局装置からの制御信号が再び受け付けられた場合、しきい値に所定の値を加算した値を受信回数として設定する。いいかえると、安定状態において、正常に制御情報を受け付けられた場合には、安定度を最大とさせることによって、安定度の継続条件を緩和し、不安定への移行条件を厳しくする。さらに、カウンタ部72は、受信回数がしきい値より大きい場合、制御情報のかわりに、制御情報にかかる他の基地局装置からのデータ信号を受信したことをもって、他の基地局装置から制御情報を受信したもの判定してもよい。このような場合であっても、基地局装置との通信経路は安定していると考えられるからである。
中継許可部74は、カウンタ部72において計測された受信回数がしきい値より大きい場合、無線通信部50に対して、他の基地局装置との間における中継を許可する。中継許可部74は、より中継回数が少ない、もしくは、受信電界強度がより高い制御情報を報知した他の基地局装置に対し、他の基地局装置以外の別の基地局装置よりも優先的に中継を許可する。また、相手局への送信した制御情報について、ACK信号もしくはNACK信号のいずれの送信確認応答が受信できなかったことを検知し、検知できなかったことを契機として、通信経路の変更処理を実行してもよい。また、これらの処理は、データ信号、もしくは、ハローパケットに含まれたホップ数や受信品質などを用いて判定されることにより、実現されてもよい。
上述のような態様をとることにより、高負荷時にハローパケットが受信しづらい状態でも安定状態を維持できる。また、中継許可部74は、ハローパケットに含まれる受信品質情報や、中継回数、もしくは、相手局への送信失敗の検出といった現象をトリガとして、通信経路の確立、維持に関し、より好ましい基地局装置との間における通信経路の制御を併用してもよい。これにより、ハローパケットの受信失敗による安定状態からの離脱が遅れるといった状況を回避でき、また、無線通信状況の変化に対応できることとなる。
図6(a)〜(c)は、図5のカウンタ部72の動作例を示す。図6(a)〜(c)において、横軸は時間、縦軸は受信回数を示す。ここで、tが整数のタイミングにおいて、受付部70が他の基地局装置からのハローパケットの受け付け処理を実行するものとする。また、ここでは、説明を簡易とするために、特定の1の基地局装置における受信回数のみを示す。
まず、図6(a)について説明する。受付部70は、t=0〜2において、3回連続してハローパケットの受け付けることに成功している。つぎに、t=3において、受付部70は、ハローパケットの受け付けられなかったため、カウンタ部72は、受信回数を1つ減じている。その後、t=4および7においてハローパケットを受け付け、t=5、6において、ハローパケットを受け付けていないため、t=7の時点における受信回数は2となっている。
つぎに、図6(b)について説明する。ここで、安定度に移行するためのしきい値を4とし、また、所定の値を1と仮定して説明する。受付部70は、t=0〜3において、4回連続してハローパケットを受け付けることに成功している。ここで、カウンタ部72は、受信回数がしきい値である4と一致したため、受信回数に所定の値を加えて5と設定している。つぎに、t=4〜6において、受付部70は、3回連続してハローパケットが受け付けられなかったため、カウンタ部72は、受信回数を計3つ減じている。その後、t=7、8において連続してハローパケットを受け付けたことにより、受信回数がしきい値に達したため、カウンタ部72は、受信回数に所定の値を加えて5としている。
さらに、図6(c)について説明する。ここで、安定度に移行するためのしきい値を4とし、また、所定の値を3と仮定して説明する。受付部70は、t=0〜3において、4回連続してハローパケットを受け付けることに成功している。ここで、カウンタ部72は、受信回数がしきい値である4と一致したため、受信回数に所定の値を加えて7と設定している。つぎに、t=4〜6において3回連続して、受付部70は、ハローパケットを受け付けられなかったため、カウンタ部72は、受信回数を計3つ減じている。その後、受付部70は、t=7においてハローパケットを受け付けている。ここで、受信回数がしきい値以上の5の状態であるため、受信回数を最大値に設定するために、カウンタ部72は、しきい値4に所定の値である3を加えた値、すなわち7を受信回数として設定している。さらに、t=8、9において連続してハローパケットを受け付けられなかったことにより、カウンタ部72は、受信回数を計2つ減じている。ここで、t=3以降においては、その基地局装置との間における通信回線は安定状態に移行しているため、連続して4回以上、ハローパケットの受け付けに失敗しないかぎり、不安定状態には移行させないこととなる。また、カウンタ部72は、ハローパケットの受け付けに失敗したとしても、データ信号の受信に成功した場合には、その基地局装置における安定性は信頼できるため、ハローパケットの受け付けを成功したとみなして、安定状態を最大とし、安定状態を継続させてもよい。
以上のような態様をとることによって、簡易な方法で安定性の高い通信経路を確立できる基地局装置を実現できる。具体的には、既存無線LANのアクセス制御方法であるCSMA/CA方式を改変せずに動作可能であるため。既存無線LANアーキテクチャを持つ装置に対し、ソフトウェア実装のみで容易に実現可能であるためである。これは、本実施形態では、あくまでもハローパケットの送受信結果によってのみ判断するため、簡易なソフトウェア的な処理のみによって所望の効果を得ることが出来る。さらに、CSMA/CA方式を改変しないことの利点として、同一周波数帯にて運用され、中継装置に無線接続される無線LAN端末に対しての互換性を保つことができる。
上述したこれらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリのロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図7は、図3の制御部60の動作例を示すフローチャートである。まず、受付部70は、受信部54から通知されたハローパケットを受け付ける(S10)。ここで、受付部70において、所定のタイミングにおいてハローパケットを受け付けた場合(S10のY)、カウンタ部72は、安定度である受信回数を増加させる(S12)。つぎに、増加させた受信回数がしきい値以上である場合(S14のY)、カウンタ部72は、受信回数に所定の値を加えることによって、最大値に設定する(S16)。さらに、中継許可部74は、そのハローパケットを報知した他の基地局装置との間における中継を許可する(S18)。なお、すでに中継が許可されている場合は、その状態を継続する。
一方、S10において、受付部70が、所定のタイミングにおいてハローパケットを受け付けられなかった場合(S10のN)、カウンタ部72は、安定度である受信回数を減少させる(S20)。つぎに、減少させた受信回数がしきい値以上である場合であって(S22のY)、ハローパケットのかわりに、データ信号を受信できている場合(S23のY)、安定度を継続させるため、S16、S18の処理に移行し、中継を継続する。一方、減少させた受信回数がしきい値以上である場合であって(S22のY)、データ信号を受信できていなかった場合(S23のN)であっても、受信回数は不安定状態に移行する条件を満たしていないので、この段階においては、中継許可部74は、まだ中継を継続させる(S18)。
一方、受付部70が、所定のタイミングにおいてハローパケットを受け付けらるか否かにかかわらず、その受信回数がしきい値以上である場合(S14のN、S22のN)、そのハローパケットを報知した基地局装置との間における通信経路は、まだ不安定な状態から脱し切れていない、もしくは、すでに不安定な状態に移行したものと判断し、中継許可部74は、この段階においては、中継を許可しない(S24)。なお、S24においては、さらに、新たな中継先を選ぶ処理を行なっても良い。たとえば、中継許可部74において、ハローパケットに含まれる受信品質情報や、中継回数、もしくは、相手局への送信失敗の検出といった現象をトリガとして、通信経路の確立、維持に関し、より好ましい通信経路が確立できそうな基地局装置を中継先として選択してもよい。
本実施形態によれば、他の基地局装置から報知された制御情報の受信回数に応じた中継制御を実行することによって、安定した通信回線を構築できる。また、通信回線を構築した基地局装置との通信は安定しているため、その基地局装置にかかる受信回数に所定の値を加算し、後方保護することによって、意図しない通信回線の切断を防止でき、また、通信回線網を安定できる。また、他の基地局装置からの受信回数がしきい値より大きい間に制御信号が再び受け付けられた場合に、しきい値に所定の値を加算することによって、その基地局装置の安定性を示す受信回数を増加させることによって、通信回線を後方保護できる。すなわち、意図しない通信回線の切断を防止でき、また、通信回線網を安定できる。
また、中継回数が少ない、もしくは、受信電界強度がより高い制御情報を報知した基地局装置を優先的に通信経路に追加することによって、安定した通信経路が確立できる。また、安定性の高い基地局装置との通信経路の切断を防止することと併せて、中継回数の少ない等の基地局装置と通信経路を確立することによって、より安定性の高い通信経路を確立できる。また、システム全体の通信経路を最適化できる。また、通信回線をすでに確立している安定性の高い基地局装置から制御情報を正常に受付けられなかった場合であっても、データ信号が受信できた場合には、そのデータ信号の受信をもって制御情報を受信したと判断することによって、意図しない通信回線の切断を防止でき、また、通信回線網を安定できる。
また、隠れ端末問題の発生しやすい高負荷状態である基地局装置との経路構成をしづらくなる。そうすると、通信負荷の小さい基地局装置と経路を確立するようになり、システム全体の負荷が分散され、隠れ端末問題の発生が低減できる。また、通信経路の一部分で通信負荷が高まった場合でも、経路の不用意な切断を防止することが出来る。また、経路構成完了以降に処理を限定するので、既に高負荷な経路に対する経路構成を防止することが出来る。また、RTS/CTS等、データパケット送信に伴う煩雑な処理を実行する必要がないため、処理量を低減できる。また、隠れ端末問題の発生しやすい高負荷状態である中継局との経路構成をしづらくなる。通信負荷の小さい中継局と経路を結ぶような動作になる。上記の効果を、パケット送信方法(CSMA/CA)の改変をせずに実現できる。したがって、ハードウェアの改変の必要が無く、互換性、柔軟性を維持できる。
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本実施形態においては、通信システム100を無線LANによるシステムとして説明した。しかしながらこれにかぎらず、端末装置と有線ネットワーク網との間に中継装置が存在するようなシステムであってもよく、たとえば、アドホック通信システムであってもよい。
10 第1サーバ、 20 第2サーバ、 30 基地局装置、 32 第1基地局装置、 34 第2基地局装置、 36 第3基地局装置、 40 端末装置、 50 無線通信部、 52 生成部、 54 受信部、 56 送信部、 58 照合部、 60 制御部、 62 セレクタ、 64 有線通信部、 70 受付部、 72 カウンタ部、 74 中継許可部、 100 通信システム、 200 有線ネットワーク、 300 ハローパケット、 310 第1ヘッダ、 320 パケットタイプ、 330 第2ヘッダ、 340 制御メッセージ、 500 チャネル配置。