JP3774426B2 - 基地局装置、通信システム及びフレーム送信方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の基地局装置とこれら複数の基地局装置のいずれかに接続する複数の端末装置から構成される通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
無線LANとして、IEEE 802.11に基づく無線LANシステムが知られている(例えば、非特許文献1参照)。この無線LANシステムの一形態として、基地局が複数の端末局をカバーするBasic Service Set(BSS)という構成単位があり、そのBSSが複数存在してネットワークを構築するというものがある。このBSS間を接続する構造的な要素をDistribution System (DS)と呼ぶ。基地局はこのDSへの接続を行う局であり、情報はBSSとDSとの間を基地局を介して伝達される。DSによって広げられたネットワーク全体を指して、ESS (Extended Service Set)と呼ぶ。IEEE 802.11無線LANシステムでは、DSの実行に関する記述は明記されていない。
【0003】
基地局間の通信は携帯電話システムにおいても、ある基地局に接続している端末から、異なる基地局に接続する端末に対してデータを伝達する際に用いられている。
【0004】
【非特許文献1】
ISO/IEC 8802-11:1999(E) ANSI/IEEE Std 802.11、1999 edition, 5.2.2 Distribution system concepts (p.11)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の無線LANシステムでは、以下に示すような問題点があった。
【0006】
(1)基地局間を無線で接続する際の具体的な手順が確立されていない。
【0007】
(2)基地局には複数の端末が接続しているため、基地局間の通信の信頼性が損なわれるとシステム全体に与える影響が大きい。
【0008】
(3)基地局間の通信のために無線資源を割かれ、特に、基地局と端末間が無線で接続されているシステムの場合には、各基地局がカバーするエリア内の通信容量が減少する。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、基地局間の無線接続・無線通信が容易に行える基地局装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、複数の端末が接続する複数の基地局間の通信が、基地局と端末との間の通信から影響を受けることなく、また、基地局と端末との間の通信に影響を与えることなく効率よく行える基地局装置および端末装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明の基地局装置は、複数の基地局装置と前記複数の基地局装置のいずれかと接続する複数の端末装置から構成される通信システムにおける基地局装置であって、前記複数の基地局装置のうちの他の基地局装置と無線接続する際には、前記他の基地局装置との間の認証過程の中で前記他の基地局装置に送信するフレーム中のデータを用いて自局が基地局であることを前記他の基地局装置に認識させる手段を具備したことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、さらに、前記複数の基地局装置のうちの他の基地局装置と無線接続する際には、前記他の基地局装置から定期的に送信される同期信号に基づき自装置を前記他の基地局装置に同期させる手段を具備する。
【0013】
本発明の基地局装置は、複数の基地局装置のうちの1つである第1の基地局装置に対応する基地局装置であって、前記第1の基地局装置には、複数の端末装置が接続し、前記第1の基地局装置は、前記複数の基地局装置のうちの他の1つの基地局装置である第2の基地局装置との間では複数の第1のパケットの送受信を行い、前記複数の端末装置との間では複数の第2のパケットの送受信を行い、前記第1の基地局装置は、前記第2の基地局装置と無線接続する際に当該第2の基地局装置との間で行う認証過程の中で当該第1の基地局装置から送信する前記第1のパケットのうちの1つである第3のパケット中に、当該第1の基地局装置が基地局装置であることを当該第2の基地局装置に認識させるための第1のデータを書込み、当該第3のパケットを当該第2の基地局装置へ送信する手段(送信制御部)を具備したことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、基地局間が容易に無線接続することができ、DSが容易に構成できる。従って、容易に新たな基地局を追加設置することができる。新たな基地局を必要に応じて容易に追加していくことが可能であることから、通信エリアの拡大、劣悪な無線通信環境下における端末装置との間の通信品質向上に迅速に対応できる。
【0015】
また、基地局装置は、無線信号で自装置宛てのフレーム以外のフレームを受信した際、そのフレームが自装置に接続可能な端末装置間で自装置を介さずに送受信されるフレームでないときは、自装置からのデータの送信を抑制するための動作は行わない。言い換えれば、無線信号で自装置宛てのフレーム以外のフレームを受信した際、そのフレームが自装置に無線接続可能な端末装置間で自装置を介さない通信で用いられているフレームであるときのみ、自装置からのデータの送信を抑制するための動作は行う。このように、基地局は、自局の属するBSSとは異なる他のBSS内で(自局および自局のBSS内の端末を含めず)通信を行っている際に用いられているフレームを受信しても自装置からのデータの送信を抑制するための動作は行わない。従って、他の基地局装置へ送信すべきデータがあるときは、ただちに当該他のBSS内の基地局への送信動作を開始することができる。
【0016】
(2)また、本発明の端末装置は、複数の基地局装置と前記複数の基地局装置のいずれかと接続する複数の端末装置から構成される通信システムにおける端末装置であって、無線信号で、自装置宛てのフレーム以外のフレームを受信した際、そのフレームのアドレスフィールドに自装置が接続可能な基地局装置のアドレスが含まれていないときは、自装置からのデータの送信を抑制するための動作は行わないことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、端末装置は、無線信号で、自装置宛てのフレーム以外のフレームを受信した際、そのフレームのアドレスフィールドに自装置が属するBSSの基地局のアドレスが(「BSSID」などとして)含まれていないときは、自装置からのデータの送信を抑制するための動作は行わない。従って、送信すべきデータがあるときは、無用な送信待ちを行う必要なく、効率よく送信動作を開始することができる。
【0018】
(3)本発明の基地局装置は、指向性ビーム制御を有する基地局装置であって、さらに、他の基地局装置との間でフレームの送受信を行う際には、当該他の基地局装置向けに前記指向性ビームを制御する手段を具備したことにより、基地局間の通信品質を向上することができる。
【0019】
その際、端末装置との間の通信は無指向性で行うようにしてもよい。
【0020】
また、本発明の基地局装置は、複数の前記指向性ビームを用いて、前記他の基地局装置および複数の端末装置と同時無線通信を行う手段をさらに具備していてもよい。
【0021】
(4)本発明の基地局装置は、前記他の基地局装置から送信されたフレームを受信した際に測定した受信電力と、当該受信したフレームの種別(ブロードキャストされるフレームとユニキャストされるフレーム)とに基づき、前記他の基地局装置の指向性ビーム制御の有無を判断し、この判断結果に応じて、当該他の基地局装置向けにデータを送信する際の送信電力を調節することを特徴とする。本発明によれば、基地局間のフレーム送受信が、近傍の端末の無線通信に対して干渉となることを削減できる。
【0022】
また、本発明の基地局装置は、前記他の基地局装置がフレームを送信する際の送信電力と、前記他の基地局装置から送信されたフレームを受信した際に測定した受信電力と、当該受信したフレームの種別(ブロードキャストされるフレームとユニキャストされるフレーム)とに基づき、前記他の基地局装置の指向性ビーム制御の有無を判断し、この判断結果に応じて、当該他の基地局装置向けにデータを送信する際の送信電力を調節することを特徴とする。本発明によれば、基地局間のフレーム送受信が、近傍の端末の無線通信に対して干渉となることを削減できる。
【0023】
また、本発明の基地局装置は、前記他の基地局装置から送信されたフレームを受信した際に測定した受信電力と、該受信したフレームの種別(ブロードキャストされるフレームとユニキャストされるフレーム)とに基づき、前記他の基地局装置の指向性ビーム制御の有無を判断し、この判断結果に応じて、該他の基地局装置向けにデータを送信する際の送信電力と自装置のキャリアセンスレベルのうちの少なくともいずれか一方を調節することを特徴とする。本発明によれば、基地局間のフレーム送受信が、近傍の端末の無線通信に対して干渉となることを削減できる。
【0024】
また、本発明の基地局装置は、前記他の基地局装置がフレームを送信する際の送信電力と、前記他の基地局装置から送信されたフレームを受信した際に測定した受信電力と、該受信したフレームの種別(ブロードキャストされるフレームとユニキャストされるフレーム)とに基づき、前記他の基地局装置の指向性ビーム制御の有無を判断し、この判断結果に応じて、該他の基地局装置向けにデータを送信する際の送信電力と自装置のキャリアセンスレベルのうちの少なくともいずれか一方を調節することを特徴とする。本発明によれば、基地局間のフレーム送受信が、近傍の端末の無線通信に対して干渉となることを削減できる。
【0025】
(5)本発明の基地局装置は、複数の基地局装置のうちの1つである第1の基地局装置に対応する基地局装置であって、前記第1の基地局装置には、複数の端末装置が接続し、前記第1の基地局装置は、前記複数の基地局装置のうちの他の1つの基地局装置である第2の基地局装置を通信相手とするときには、当該第2の基地局装置との間で複数の第1のパケットの送受信を行い、前記複数の端末装置のいずれかを通信相手とするときには当該通信相手との間で複数の第2のパケットの送受信を行い、前記第1の基地局装置は、前記第2の基地局装置と無線接続する際に当該第2の基地局装置との間で行う認証過程の中で当該第1の基地局装置から送信すべき前記第1のパケットのうちの1つであるパケットであって、当該第1の基地局装置が前記基地局装置であることを当該第2の基地局装置に認識させるための第1のデータを含む第3のパケットを当該第2の基地局装置へ送信する手段を具備したことを特徴とする。
【0026】
また、前記第1の基地局装置が当該第1の基地局装置宛てではない第4のパケットを受信した際、当該第4のパケットが、当該第1の基地局装置を介さずに前記複数の端末装置のうちの1つと前記複数の端末装置のうちの他の1つとの間で通信を行う際に送受信される第5のパケットであるときは、当該第1の基地局装置は、前記第1のパケットと前記第2のパケットの送信を抑制するための動作を行い(前記第1の基地局装置からの前記第1のパケットと前記第2のパケットの送信を予め定められた時間抑制する)、当該第4のパケットが前記第5のパケットでないときは、前記第1のパケットと前記第2のパケットの送信を抑制するための動作は行わないよう制御する手段をさらに具備したことを特徴とする。
【0027】
また、前記第3のパケットを送信するために、前記第2の基地局装置向けに指向性パターンを形成する手段をさらに具備したことを特徴とする。また、前記複数の端末装置との間で前記第2のパケットを送受信する際には、無指向性パターンを形成する手段をさらに具備したことを特徴とする。
【0028】
また、前記第2の基地局装置から送信される複数の第1のパケットを受信して複数の受信パケットを取得する手段と、前記複数の受信パケットのそれぞれの受信電力を測定する測定手段と、前記複数の受信パケットのそれぞれの種別を検出する検出手段と、前記複数の受信パケットのそれぞれについて、前記測定手段で測定された受信電力と前記検出手段で検出された種別とに基づき、前記第2の基地局装置が前記第1の基地局装置宛ての前記第1のパケットを送信する際に当該第1の基地局装置向けに指向性パターンを形成しているか否かを判断する判断手段と、この判断手段での判断結果に基づき、少なくとも、前記第2の基地局装置へ前記第1のパケットを送信する際の送信電力を調節する調節手段とをさらに具備したことを特徴とする。
【0029】
また、前記第2の基地局装置から送信される複数の第1のパケットを受信して複数の受信パケットを取得する手段と、前記複数の受信パケットのそれぞれの受信電力を測定する測定手段と、前記複数の受信パケットのそれぞれの種別を検出する第1の検出手段と、前記第2の基地局装置が前記複数の受信パケットのそれぞれを送信する際に用いた送信電力を検出する第2の検出手段と、前記複数の受信パケットのそれぞれについて、前記測定手段で測定された受信電力と前記第1の検出手段で検出された種別と前記第2の検出手段で検出された送信電力とに基づき、前記第2の基地局装置が前記第1の基地局装置宛ての前記第1のパケットを送信する際に当該第1の基地局装置向けに指向性パターンを形成しているか否かを判断する判断手段と、この判断手段での判断結果に基づき、少なくとも、前記第2の基地局装置へ前記第1のパケットを送信する際の送信電力を調節する調節手段と、をさらに具備したことを特徴とする。
【0030】
また、前記第2の基地局装置から送信される前記第1のパケットのうちの他の1つであって、当該第2の基地局からブロードキャストされる第6のパケットを受信する手段と、前記第6のパケットの受信電力を測定する第1の測定手段と、前記第2の基地局から送信される前記第1のパケットのうちのさらに他の1つであって、当該第2の基地局装置から当該第1の基地局装置へユニキャストされる第7のパケットを受信する手段と、前記第7のパケットの受信電力を測定する第2の測定手段と、前記第1の測定手段で測定された受信電力と前記第2の測定手段で測定された受信電力とを基に、前記第2の基地局装置が前記第7のパケットを送信する際に当該第1の基地局装置向けに指向性パターンを形成しているか否かを判断する判断手段と、この判断手段での判断結果に基づき、少なくとも、前記第2の基地局装置へ前記第1のパケットを送信する際の送信電力を調節する調節手段とをさらに具備したことを特徴とする。
【0031】
また、前記第2の基地局から送信される前記第1のパケットのうちの他の1つであって、当該第2の基地局からブロードキャストされる第6のパケットを受信する手段と、前記第6のパケットの受信電力を測定する第1の測定手段と、前記第2の基地局装置が、前記第6のパケットを送信する際に用いた送信電力を検出する第1の検出手段と、前記第2の基地局から送信される前記第1のパケットのうちのさらに他の1つであって、当該第2の基地局装置から当該第1の基地局装置へユニキャストされる第7のパケットを受信する手段と、前記第7のパケットの受信電力を測定する第2の測定手段と、前記第2の基地局装置が、前記第7のパケットを送信する際に用いた送信電力を検出する第2の検出手段と、前記第1の測定手段で測定された受信電力と前記第2の測定手段で測定された受信電力と、前記第1の検出手段で検出された送信電力と前記第2の検出手段で検出された送信電力とを基に、前記第2の基地局装置が前記第7のパケットを送信する際に当該第1の基地局装置向けに指向性パターンを形成しているか否かを判断する判断手段と、この判断手段での判断結果に基づき、少なくとも、前記第2の基地局装置へ前記第1のパケットを送信する際の送信電力を調節する調節手段とをさらに具備したことを特徴とする。
【0032】
なお、前記調節手段は、前記第2の基地局装置へ前記第1のパケットを送信する際の送信電力と、前記第1の基地局装置のキャリアセンスレベルのうちの少なくともいずれか一方を調節することを特徴とする。前記判断手段で前記第2の基地局装置が前記第1の基地局装置向けに指向性パターンを形成していると判断したときは、前記調節手段は、前記送信電力を抑制する調節と、前記キャリアセンスレベルの感度を抑制する調節とのうちの少なくともいずれか一方の調節を行うことを特徴とする。
【0033】
(6)複数の基地局装置のうちの1つである第1の基地局装置に対応する基地局装置であって、前記第1の基地局装置には、複数の端末装置が接続し、前記第1の基地局装置は、前記複数の基地局装置のうちの他の1つの基地局装置である第2の基地局装置を通信相手として通信するときには、当該第2の基地局装置との間で複数のパケットの送受信を行い、前記第2の基地局装置は、同期信号をブロードキャストし、前記第1の基地局装置は、前記第2の基地局装置からブロードキャストされる前記同期信号に基づき、当該第1の基地局装置が前記複数のパケットを送信する際の送信タイミングを当該第2の基地局装置が前記複数のパケットを送信する際の送信タイミングに同期させる手段と、前記第2の基地局装置と無線接続する際に当該第2の基地局装置との間で行う認証過程の中で当該第1の基地局装置から送信する前記複数のパケットのうちの1つであるパケットであって、当該第1の基地局装置が前記基地局装置であることを当該第2の基地局装置に認識させるための第1のデータを含む第1のパケットを前記第2の基地局装置に同期させた送信タイミングに従って、当該第2の基地局装置へ送信する手段とを具備したことを特徴とする。
【0034】
(7)本発明の端末装置は、複数の端末装置のうちの1つである第1の端末装置に対応する端末装置であって、前記第1の端末装置は1つの基地局装置に接続し、当該第1の端末装置は前記基地局装置と前記複数の端末装置のうちの当該第1の端末装置以外の端末装置とのいずれかを通信相手とするときには、当該通信相手との間で複数の第1のパケットの送受信を行い、前記第1の端末装置は、当該第1の端末装置宛でない第2のパケットを受信した際、当該第2のパケットが前記基地局装置と前記複数の端末装置のうちの前記第1の端末装置以外の端末装置との間で通信を行う際に送受信される第3のパケットであるとき、当該第1の端末装置は、前記第1のパケットの送信を抑制するための動作を行い(前記第1の端末装置からの前記第1のパケットの送信を予め定められた時間抑制する)、当該第2のパケットが前記第3のパケットでないときは、前記第1のパケットの送信を抑制するための動作は行わないよう制御する手段を具備したことを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0036】
ここでは、IEEE 802.11無線LANシステムの場合を例にとり説明する。しかし、本発明は、IEEE 802.11無線LANシステムに限定するものではなく、他の無線LANシステムやFWA(Fixed Wireless Access:固定無線アクセス)などの無線MAN(Metropolitan Area Network)システム、BWA(Broadband
Wireless Access)システムにも適用することができる。
【0037】
また、以下の実施形態に係る通信システムは、複数の基地局と、各基地局に接続された複数の端末とからなる通信システムであって、基地局間は無線接続を行い、端末は、上記複数の基地局のうちの1つの基地局に有線で接続する場合と、無線接続する場合とがある通信システムにも適用可能である。なお、基地局が他の基地局とは無線接続を行い、端末とは有線にて接続する場合、そのような基地局には、他の基地局と通信を行うための無線通信部と端末と通信を行うための通信部とをもつ必要がある。
【0038】
但し、このような通信システムの場合には、基地局間で無線通信を行う場合と、基地局と無線接続する端末と基地局との間で通信を行う場合(基地局を介して他の端末と通信を行うなどの場合も含む)などに、以下の実施形態が適用可能である。
【0039】
(第1の実施形態)
まず、2つの基地局間で通信を行う際に、互いに基地局であることを認識し合うまでの手順について説明する。
【0040】
図1は、IEEE 802.11無線LANシステムにおいて、2つのBSS(第1のBSS,第2のBSS)から構成されるESS(Extended Service Set)の構成を模式的に示したものである。
【0041】
第1のBSSは、アクセスポイントとしての基地局AP1と、そこに接続する複数の(例えば、ここでは、2つの)無線端末(以下、端末と呼ぶ)STA11、STA12からなる。第2のBSSは、アクセスポイントとしての基地局AP2と、そこに接続する複数の(例えば、ここでは、2つの)無線端末(以下、端末と呼ぶ)STA21、STA22からなる。
【0042】
図1に示すように、基地局(ここでは、例えば基地局AP1)は、有線ネットワーク5に接続していてもよい。
【0043】
図3は、基地局AP1およびAP2の要部の構成例を示したものである。なお、以下の説明において、基地局AP1とAP2を区別する必要のないときは(両方に共通する説明の場合には)、単に基地局APと呼ぶ。
【0044】
図3において、受信機11では、アンテナ20で端末からの送信信号が受信され、復調及び復号を含む処理によって受信信号が生成される。送信機12で、アンテナ20を介して端末へ送信すべき送信信号が生成され、これらの送信信号はアンテナ20に供給される。
【0045】
受信機11からの受信信号は受信制御部13に入力され、受信制御部13は、例えば、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に準拠した所定の受信処理などを行う。
【0046】
送信制御部14は、端末へブロードキャスト、ユニキャストで送信するためのデータの生成等の、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に準拠した所定の送信処理などを行う。ここで生成されたデータは、送信機12を通じて送信信号として端末へ送信される。アドレステーブル21,タイマ22については、後述する。
【0047】
図4は、端末STA11、STA12、STA21、STA22の要部の構成例を概略的に示したものである。なお、以下の説明において、端末STA11、STA12、STA21、STA22を区別する必要のないときは(全ての端末に共通する説明の場合には)、単に端末STAと呼ぶ。
【0048】
端末STAは、少なくとも、アンテナ200と受信部201と送信部207と情報処理部208とタイマ210から構成されている。
【0049】
情報処理部208で、例えば、ユーザの操作により送信データを作成したり、送信データの送信が指示されると(送信要求が生ずると)、これを受けて送信データを送信部207へ渡す。送信部207は、この送信データ(例えば、IPパケットであってもよい)をIEEE802.11で規定するMACフレームと呼ばれるパケットに変換する。ディジタルデータとしてのMACフレーム(すなわち、パケット)は、所定周波数(例えば、2.4GHz)の無線信号に変換した後、アンテナ200から電波として発信される。MACフレームは、
一方、アンテナ200で受信された信号は、受信部201でディジタルデータとしてのMACフレームに変換され、このMACフレーム中の情報フィールドから受信データを抽出して情報処理部208へ渡す。この場合、情報処理部208は、受信データをディスプレイに表示する等の処理を行う。なお、情報処理部208は、上記以外にも各種情報処理を行うようになっていてもよい。
【0050】
タイマ210は、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定されている(TSF(Timing Synchronization Function)のためのもので、このタイマ(TSFタイマ)210については後述する。
【0051】
図1に示す構成において、基地局AP1に対し、基地局AP2からアクセスする場合について説明する。現在、基地局AP1は、基地局AP2が存在することを知らない(認識していない)ものとする。この場合においても基地局AP2は、基地局AP1から送信されるIEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定されているビーコン(Beacon)フレームを受信することができる。
【0052】
図5は、基地局AP1とAP2間で通信を行う際に、互いに基地局であることを認識し合うまでの手順を説明するためのフローチャートである。以下、このフローチャートを参照して説明する。
【0053】
IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定によれば、BSS内では、その基地局に接続する全ての端末は、当該基地局の有するタイマ22に同期するようになっている。すなわち、基地局はタイマ(TSF(Timing Synchronization Function)タイマ)22を有し、それに接続する端末に対し、当該タイマ値を含むビーコンフレームを周期的に送信している。端末側では、このビーコンフレームを受信すると、その中に含まれるタイムスタンプ(Timestamp)フィールド中のタイマ値に自身のもつタイマ(TSFタイマ)210を合わせることにより、基地局に同期するようになっている。ビーコンフレームは、このような機能を有していることから、同期信号とも呼ばれる。
【0054】
基地局AP2が基地局AP1にアクセスする際に、まず、基地局AP1に接続する端末と同様に、基地局AP2のもつタイマ22のタイマ値を基地局AP1のもつタイマ22に合わせて(同期させて)から、基地局AP1と通信を行う場合について説明する。
【0055】
図5に示すように、基地局AP2は、基地局AP1から周期的に送信されるビーコンフレームを受信する(ステップS301)。
【0056】
IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定によれば、受信したビーコンフレームのタイムスタンプフィールドには、基地局AP1のもつタイマ22のタイマ値のコピー(タイムスタンプ値)が書き込まれているので、基地局AP2では、そのタイマ22を受信したタイムスタンプ値にセットする(ステップS302)。
【0057】
次に、基地局AP2は、基地局AP1に、自分が基地局であることを認識させるための手順を開始する。
【0058】
IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)の規定によれば、次に、オーセンティケーション(authentication)およびアソシエーション(association)が続く。本実施形態では、このauthenticationやassociationで用いられるフレーム中に、基地局AP2が基地局である旨を基地局AP1に通知する情報を書き込むようになっている。
【0059】
IEEE802.11で規定されているMACフレームは、図6に示すように、各種制御情報が納められた最大30バイトのMACヘッダー、最大2312バイトのデータが収まるデータフィールド、そしてデータが正しく送られたのかを調べるためのフレーム・チェック・シーケンス(FCS)で構成されている。
【0060】
MACフレームには、ビーコン(Beacon)、オーセンティケーション(Authentication)のフレームやアソシエーション(Association)のフレームなどの管理用フレーム、ACK(Acknowledgment)フレームやRTS(Request to Send)、CTS(Clear to Send)フレームのようにアクセス制御で使う制御用フレーム、データ通信用のデータフレームという3種類がある。このような3つのMACフレームの種類は、MACヘッダーにあるフレームコントロール中の「タイプ」に示されている。さらに、フレームコントロール中の「サブタイプ」で、上記のような、ビーコン、オーセンティケーション、アソシエーション、ACK、RTS(Request to Send)、CTS(Clear to Send)などのMACフレームの詳細な種別を示している。
【0061】
フレームコントロールには、「ToDS」フィールド(1ビット)と、「FromDS」フィールド(1ビット)が含まれている。これらは、データフレームのときに利用されるものであって、それ以外の種類のフレーム(例えば、オーセンティケーションやアソシエーションのフレーム)では、常に「0」が書き込まれていて利用されていない。そこで、本実施形態では、オーセンティケーションの際(あるいは、アソシエーションの際)、基地局AP2は、基地局AP1へ図6に示したフレームを送信する際、基地局から基地局への送信フレームという意味を込めて、「ToDS」フィールドと、「FromDS」フィールドに「1」を書き込んで、基地局AP1へ送信する。
【0062】
図5では、オーセンティケーションの際に、「ToDS」と「FromDS」を「1」にして送信する場合を示している。この場合、基地局の送信制御部14では、基地局を相手としたオーセンティケーション対応の処理を行う際、送信するフレーム中、「ToDS」フィールドと「FromDS」フィールドを「1」に書き換える処理機能を追加する必要がある。また、基地局の受信制御部13では、基地局を相手としたオーセンティケーション対応の処理を行う際、受信したフレーム中、「ToDS」フィールドと「FromDS」フィールドをチェックする処理機能を追加する必要がある。
【0063】
まず、基地局AP1に、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定されたauthenticationを要求するフレーム(authentication transaction sequence number(以下、簡単にATSNと呼ぶ)=1のオーセンティケーション(authentication)フレーム)を送信する(ステップS303)。このフレーム中、「ToDS」フィールドと「FromDS」フィールドは「1」である。これを受信した基地局AP11は、「ToDS」フィールドと「FromDS」フィールドが「1」であることから、受信したフレームの送信元は基地局であると仮定した上で、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定された応答ATSN=2のオーセンティケーションフレームを基地局AP2に送信する(ステップS304)。このフレーム中の「ToDS」フィールドと「FromDS」フィールドは「1」である。
【0064】
authenticationの結果が成功(success)であった場合には、基地局AP2は次に、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定されたassociationの要求(association request)フレームを基地局AP1に送信する(ステップS305)。これを受信した基地局AP1は、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定された応答(association response)フレームを基地局AP2に送信する(ステップS306)。associationの結果が成功であった場合には、基地局AP2は、基地局AP1は基地局AP2を基地局と認識する(ステップS307)。
【0065】
なお、アソシエーションの際にも、「ToDS」と「FromDS」を「1」にして送信するようにしてもよい。
【0066】
IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)の規定によれば、association requestフレーム内の「capability information」フィールドのESSとIBSSを記述する部分は、ビーコンフレームのときと、Probe Response フレームのときのみ利用されているものであるのである。そこで、アソシエーションの際に、この記述部分を用いて、基地局AP2が基地局である旨を基地局AP1に通知する情報を書き込むようにしてもよい。この場合も、上記同様にして、基地局AP1は基地局AP2を基地局と認識することができる。
【0067】
さて、ここまでの手順により、基地局AP1は基地局AP2を基地局と認識するに至った。
【0068】
ところで、DS通信で、一方のBSS内の端末から他方のBSS内の端末にデータフレームを中継する場合、その中継点となる基地局では、どの基地局にどのような端末が接続されているかを予め知っておく必要がある場合もある。そのために、各基地局は、自分を含め、どの基地局にどのような端末が接続されているかを登録したアドレステーブル21を持つようにしてもよい。
【0069】
このアドレステーブル21は、例えば、図7に示すように、中継装置となる基地局のアドレス(例えば、MACアドレス)毎に、その基地局に接続される端末のアドレス(例えばMACアドレス)を登録したものである。例えば、図7(a)は、基地局AP1の属する第1のBSSに対応するアドレステーブルであり、図7(b)は、基地局AP2の属する第2のBSSに対応するアドレステーブルである。
【0070】
なお、以下の説明において、基地局AP1、AP2のアドレス(MACアドレス)は、それらの符号をそのまま用いて、それぞれ「AP1」「AP2」とし、端末STA11、STA12,STA21、STA22のアドレス(MACアドレス)も、それらの符号をそのまま用いて、それぞれ「STA11」、「STA12」、「STA21」、「STA22」とする。また、各基地局のアドレス(MACアドレス)は、当該基地局の属するBSSの識別子(BSSID)として用いる。
【0071】
図5のステップS307が終了した時点では、基地局AP1は、基地局AP2に接続されている端末を示した情報(例えば、図7(b)のアドレステーブル)を得ていない。また、基地局AP2は、基地局AP1に接続されている端末を示した情報(例えば、図7(a)のアドレステーブル)を得ていない。そこで、次に、基地局AP1と基地局AP2はそれぞれのアドレステーブルを交換する(ステップS308)。その結果、基地局AP1では、図7(a)に示したアドレステーブルに加え、図7(b)に示したアドレステーブルを得る(ステップS309)。また、基地局AP2でも、図7(b)に示したアドレステーブルに加え、図7(a)に示したアドレステーブルを得る(ステップS309)。
【0072】
このように、各基地局が、その基地局と通信可能な他の基地局のアドレステーブルを有することにより、データフレームの中継が容易に行える。すなわち、ある基地局が受信したデータフレームが自局の属するBSS以外のBSS向けのものであるときは、アドレステーブルを参照して、当該データフレームをどのBSSの基地局へ送信すべきかを判断して、その基地局宛てに当該データフレームを送信することができる。
【0073】
このようなアドレステーブル21は、何も、基地局AP1、AP2自身が保持する必要はない。例えば、図2に示すように、全ての基地局のアドレステーブルを一括管理する管理装置100が別途存在し、この管理装置100が基地局AP1、AP2と互いに通信可能に接続されていてもよい。この場合、図5のステップS308で基地局AP2が自局のBSS対応のアドレステーブル(図7(b))を管理装置100に登録する。そして、基地局側でアドレステーブルを参照する必要が生じた場合に、この管理装置100にアクセスするような構成であってもよい。
【0074】
また、小規模なシステムの場合、各基地局は、自局のBSS対応のアドレステーブルのみを保持し、他の基地局のアドレステーブルを保持しなくともよい。この場合、ある基地局が受信したデータフレームが自局の属するBSS以外のBSS向けのものであるときは、他の全ての基地局へ当該データフレームを送信すればよい。
【0075】
以上のようにして、基地局AP2は、基地局AP1から基地局であると認識され、基地局AP1とのDS通信が可能となる。それと同時に、基地局AP2は、基地局として自局のBSS(第2のBSS)内の端末とも通信が可能となる。すなわち、基地局AP2はビーコンフレームの送出を開始する。
【0076】
すると、第2のBSS内の端末(例えば、端末STA21)は、基地局AP2から送信されるビーコンフレームを受信した後、基地局AP2および第2のBSS内の他の端末(例えば端末STA22)との間で通信が行える。また、第2のBSS内の端末(例えば、端末STA21)は、基地局AP2を介して、第1のBSSに属する基地局AP1とも通信が可能となる。また、第2のBSS内の端末(例えば、端末STA21)は、基地局AP1を介して第1のBSSに属する端末(端末STA11)とも通信が可能となる。さらに、第2のBSS内の端末(例えば、端末STA21)は、基地局AP1を介して、有線ネットワーク上の端末とも通信が可能となる。
【0077】
以上説明したように、上記第1の実施形態によれば、基地局間の無線通信接続が可能となり、DSが容易に構成でき、従って、容易に新たな基地局を追加設置することができる。新たな基地局を必要に応じて容易に追加していくことが可能であることから、通信エリアの拡大、劣悪な無線通信環境下の端末の通信品質向上に迅速に対応できる。
【0078】
図8を参照して、新たな基地局を追加することの利点を説明する。
【0079】
図8(a)は、基地局AP1から壁などで隔てられた会議室内に端末STA501〜STAT503が存在する場合を示している。この場合、壁により、基地局AP1と端末STA501〜STA503の間の通信は、非見通し通信(NLOS: Non Line Of Sight)となり、通信条件が悪い。そこで、端末STA501〜STAT503との通信が容易な場所、すなわち、図8(b)に示すように端末STA501〜STA503と見通し通信(LOS: Line Of Sight)を確保できる場所に、新たに基地局として基地局AP2を設置する。
【0080】
基地局AP1、AP2間を上記第1の実施形態のように無線接続し、さらに、基地局AP2に端末STA501〜STA503を接続する。基地局AP2を中継点として、基地局AP1と端末STA501〜STA503が通信を行うことにより、図8(a)の構成に比べ、高速で高品質な通信が可能となる。
【0081】
このように、基地局を追加設置することは、上記無線LANシステムに限らず、FWAなどのシステムでも利用することができる。
【0082】
また、上記第1の実施形態では、基地局AP2のタイマ22と基地局AP1のタイマ22は同期している(双方の基地局におけるビーコンフレームなどのフレームの送信タイミングがほぼ同じである)。従って、第1のBSSと第2のBSSの同期が取れ、BSS間で生じる隠れ端末問題が回避できる。すなわち第1および第2のBSSでの信号を受信することが可能な端末間でのフレーム送信時の衝突を、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定されたNAV(Network Allocation Vector)によって回避できる。すなわち、上記第1の実施形態によれば、干渉を削減し、互いのBSSにおける通信品質の向上が図れる。
【0083】
なお、ここで、基地局AP2のタイマ22と、基地局AP1のタイマ22とは同期しているので、両者から送信されるビーコンフレームの送信タイミングはほぼ同じである。従って、基地局AP2でのビーコンフレームの送信時に基地局AP1からのビーコンフレームが全く重なって受信できないこともある。
【0084】
そこで、基地局AP2の送信制御部14では、基地局AP1とビーコンフレームを送信するタイミングが合っているかを判断するために、所定回数ビーコンフレームを送信した後は、次からのビーコンフレームの送信を止め、基地局AP1からのビーコンフレームを受信する。そして、それ以降のビーコンフレームの送信タイミングを調整するようにしてもよい。
【0085】
また、基地局AP2が受信フェーズ時に基地局AP1からのビーコンフレームを受信しないときには、ビーコンフレーム送信のタイミングが基地局AP1と合っていると判断してもよい。一方、受信フェーズ時に基地局AP1からのビーコンフレームを受信したときには、その送信タイミングに自局のビーコンフレームの送信タイミングを合わせるように調整するようにしてもよい。
【0086】
さらに、基地局AP1と基地局AP2で送信するビーコンフレームのチャネルが異なる場合には、基地局AP2には、ビーコンフレームの送信時に基地局AP1がビーコンフレーム送信に用いるチャネル用に別の受信部が設けられていてもよい。この場合、基地局AP2がビーコンフレームを送信する間も基地局AP1からのビーコンフレームを受信できる、これによりビーコンフレーム送信のタイミングを基地局AP1に合うように調整することができる。
【0087】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、基地局AP2は、基地局AP1にアクセスする際には、まず自局のタイマ22のタイマ値を基地局AP1のタイマ22に合わせて(同期させて)から、基地局AP1と通信を行うようになっていた(図5のステップS302)。しかし、この場合に限らず、基地局AP2は、基地局AP1と非同期に動作するようにしてもよい。すなわち、図5のステップS302の処理(すなわち、自局のタイマ22のタイマ値を基地局AP1から送信されるビーコンフレームに基づき、基地局AP1のタイマ22のタイマ値に合わせる動作)を省略してもよい。
【0088】
基地局AP1とAP2とが同期して動作する場合および非同期に動作する場合、基地局AP1(基地局AP2)は、基地局AP1(基地局AP2)の属する第1のBSS(第2のBSS)内のみで送受信されるフレームを受信して、衝突を避けるために送信待ち時間を設定する動作を行う(NAVを設定する)。
【0089】
基地局AP1とAP2とが非同期に動作すると、基地局AP1と基地局AP2からビーコンフレームを送信するタイミングが異なる。従って、基地局AP2は、基地局AP1の属する第1のBSS内のみで送受信されるフレームを受信して、NAVを設定し、さらに、基地局AP1からのビーコンフレームを受信し、それに対しても衝突をさけるために、NAVを設定する。このため、基地局AP2から基地局AP1への通信や、第2のBSS内での通信が極端に抑制されてしまう。また、基地局AP1についても上記同様である。
【0090】
このような問題を解決するため、基地局APは、電波の衝突を敢えて容認し、基地局間の通信を自局の属するBSS内での通信に優先させるようにしてもよい。
【0091】
第2の実施形態にかかる基地局では、フレームを受信した際に、そのフレームのアドレスフィールドをチェックして、(a1)自局宛てのフレーム(自局の属するBSSとは異なる他のBSSから自局宛てに送信されたフレーム、自局のBSS内の端末が受信先や送信元になっているフレームを含む)に対しては、所定の受信処理を行う。また、(a2)自局の属するBSS内の端末間で自局を介さない通信で用いられているデータフレームの場合には、自局からのデータフレームの送信を抑制するための動作を行う(NAVを設定する)。(a3)自局の属するBSSとは異なる他のBSS内で(自局および自局のBSS内の端末を含めず)通信を行っている際に用いられているデータフレームであるときは(従来は、NAVを設定していたが)、当該フレームに対する処理は行わず(NAVを設定せず)棄却する。
【0092】
上記(a3)の場合には、NAVを設定することがないので、基地局は、当該他のBSS内の基地局へ送信すべきデータがあるときは、ただちに当該他のBSS内の基地局への送信動作を開始することができる。
【0093】
また、自局の属するBSS内の端末へ送信するデータがあるときも、自局の属するBSS内での通信が行われていなければ、直ちに当該端末へ送信動作を開始することができる。
【0094】
第1および第2のBSS内の信号を受信することが可能な端末の場合、受信するフレームが多いために、NAVによって通信が抑制されてしまう。
【0095】
そこで、第1および第2のBSS内の信号を受信することが可能な端末では、フレームを受信した際に、その受信フレームのアドレスフィールドをチェックして、(b1)基地局宛てでなく、しかも自装置宛てのフレームに対しては所定の受信処理を行う。(b2)上記以外のフレームの場合は(従来はNAVを設定していたが)、受信フレームのアドレスフィールドに自装置が属するBSSの基地局のアドレスが(「BSSID」などとして)含まれているときのみ、自装置からのデータフレームの送信を抑制するための動作を行う(NAVを設定する)。(b3)一方、自装置が属するBSSの基地局のアドレスが(「BSSID」などとして)含まれていないときは(従来は、NAVを設定するようになっていたが)、当該フレームに対する処理は行わず(NAVを設定することなく)、棄却する。
【0096】
このようにして、第2の実施形態に係る各端末は、自装置が属するBSSの基地局のアドレスが(「BSSID」などとして)含まれていないフレームを受信してもNAVを設定しないので、送信すべきデータがあるときは、送信待ちを行う必要なく、効率よく送信動作を開始することができる。
【0097】
このような基地局AP、端末STAにおける受信フレームに対する処理は、何も、基地局AP1とAP2とが非同期に動作する場合に限られるものではなく、効率よく通信を行うために、第1の実施形態で説明した基地局AP1とAP2とが同期して動作する場合にも適用する事が望ましい。
【0098】
基地局AP、端末STAにおける以上の受信フレームに対する処理は、図6に示すMACフレームの4つのアドレスフィールド(「アドレス1」「アドレス2」「アドレス3」「アドレス4」)と、コントロールフィールド中の「ToDS」フィールドと、「FromDS」フィールドをチェックすることにより実行可能である。
【0099】
IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定された上記各フィールの利用方法について簡単に説明する。
【0100】
「ToDS」フィールドは、データフレームの場合に使用されるもので、DS通信において、基地局に向けて送信されたフレームであるときは、このフィールドには「1」がセットされ、それ以外は「0」となる。
【0101】
「FromDS」フィールドは、データフレームの場合に使用されるもので、DS通信において、基地局から送信されたフレームであるときは、このフィールドには「1」がセットされ、それ以外は「0」となる。
【0102】
「ToDS」フィールドが「0」で「FromDS」フィールドが「0」のときは、同じBSS内の1つの端末から他の端末へ向けて送信されたデータフレームである。「ToDS」フィールドが「1」で「FromDS」フィールドが「0」のときは、DS通信であって、端末から基地局へ送信されたデータフレームである。「ToDS」フィールドが「0」で「FromDS」フィールドが「1」のときは、DS通信であって、基地局から端末へ送信されたデータフレームである。「ToDS」フィールドが「1」で「FromDS」フィールドが「1」のときは、DS通信であって、基地局から基地局へ送信されたデータフレームである。
【0103】
4つのアドレスフィールドには、それぞれBSSID(basic service set identifier)、sourceアドレス(SA)、destinationアドレス(DA)、transmitterアドレス(TA)、receiverアドレス(RA)のいずれかが含まれる。
【0104】
BSSIDは、当該フレームの送信元はどのBSSに存在するかを示す。通常は基地局のMACアドレスである。
【0105】
DAは、当該フレームを最終的に受信する受信先のMACアドレスを示す。
【0106】
SAは、当該フレームを生成した送信元のMACアドレスを示す。
【0107】
TAは、当該フレームをDAに送信するための中継点として、当該フレームを受信し送信した、その送信元のMACアドレスを示す。
【0108】
RAは、当該フレームをDAに送信するための中継点として、当該フレームを受信する受信先のMACアドレスを示す。
【0109】
例えば、端末STA21から端末STA11へフレームを送信する場合を例にとり、図9を参照して、4つのアドレスフィールドと、「ToDS」フィールドと「FromDS」フィールドの利用方法について説明する。
【0110】
図5に示した手順を経て、基地局AP2は、既に、基地局AP1から基地局であると認識されているものとする。
【0111】
図10に示すように、端末STA21は、基地局AP2から送信されるビーコンフレームを受信し(ステップS351)、オーセンティケーション、アソシエーションを行い(ステップS352、ステップS353)、それらが成功すると次に、端末STA11宛てのデータフレームを送信する。
【0112】
その際、まず、基地局AP2へ送信する(ステップS354)。このときのデータフレーム中の4つのアドレスフィールドと、「ToDS」フィールドと「FromDS」フィールドを、図9の最上段に示す。
【0113】
次に、基地局AP2は、基地局AP1にデータフレームを送信する(ステップS355)。このときのデータフレーム中の4つのアドレスフィールドと、「ToDS」フィールドと「FromDS」フィールドを、図9の上から2段目に示す。
【0114】
さらに、基地局AP1は、端末STA11にデータフレームを送信する(ステップS356)。このときのデータフレーム中の4つのアドレスフィールドと、「ToDS」フィールドと「FromDS」フィールドを、図9の上から3段目に示す。
【0115】
次に、図11を参照して、端末STA、基地局APにおけるデータフレームを受信する際の処理動作について説明する。なお、データフレームを送受信する際には、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)の規定によれば、予めRTS/CTSフレームの交換を行ってもよく、ユニキャストのデータフレームを受信した側からはACKフレームが送信される。ここで、データフレームとは、説明の簡単のために、データフレームを送受信する際に交換されるこれら全てのフレームを含むものとする。
【0116】
ここでは、上記のような、自分宛のフレームを受信したり、フレームを棄却したり、NAVを設定したりするに至るまでの判断処理について説明する。なお、図11において、点線で示した動きは、従来の動作であり、参考のために従来との違いを明確にするために示している。
【0117】
まず、基地局APにおけるデータフレームの受信処理動作について説明する。基地局APは、フレームを受信し(ステップS401)、それが、「DA」あるいは「RA」あるいは「BSSID」として自局のアドレスが記述されている、自局宛てのフレーム(自局の属するBSSとは異なる他のBSSから自局宛ての送信されたフレーム、自局のBSS内の端末が受信先や送信元になっているフレームを含む)であるとき(ステップS411)、当該受信フレーム対応の受信処理を行う(ステップS412)。
【0118】
当該受信フレームが、自局の属するBSS内の端末間で自局を介さない通信で用いられているデータフレームの場合には(ステップS413)、基地局APは、ステップS414へ進み、自局からのデータフレームの送信を抑制するための動作を行う(NAVを設定する)。
【0119】
ステップS413において、当該受信フレームが、自局の属するBSSとは異なる他のBSS内で(自局および自局のBSS内の端末を含めず)通信を行っている際に用いられているデータフレームであるときは(従来は、NAVを設定するようになっていたが)、基地局APは、ステップS415へ進み、当該フレームに対する処理は行わず(NAVを設定せず)棄却する。
【0120】
すなわち、基地局APでは、フレームを受信した際、当該受信フレームが自局宛てでない場合、当該受信フレームが、自局を介さずに自局のBSS内の端末間で通信を行う際に送受信されるフレームであるという条件を満たすときには、自局からデータフレームの送信を抑制するための動作を行う(NAVを設定する)が、当該受信フレームが上記条件を満たさないときにはVAVの設定は行わない。
【0121】
具体的には、図11に示すように、ステップS411において、「アドレス1」フィールドに自局のアドレスがあるときは、当該受信フレームを受信する(ステップS412)。
【0122】
ステップS413では、当該受信フレームが、例えば、自局の属するBSS内の端末間で自局を介さない通信で用いられているデータフレームのように、自局のBSS内に関係あるフレームであるとき、基地局APは、ステップS414へ進み、自局からのデータフレームの送信を抑制するための動作を行う(NAVを設定する)。
【0123】
自局のBSS内に関係あるフレームであるときとは、例えば、当該受信フレームの「FromDS」フィールドが「1」である場合には、「アドレス2」フィールドに、例えば「TA」、「BSSID」として、自局のMACアドレスや自局の属するBSS内の端末のアドレスが記述されているときであり、また、当該受信フレームの「FromDS」フィールドが「0」である場合には、「アドレス1」フィールドに、例えば「BSSID」「DA」として、自局のMACアドレスや自局の属するBSS内の端末のアドレスが記述されているときである。
【0124】
ステップS413において、上記以外のフレーム、すなわち、自局の属するBSSとは異なる他のBSS内で(自局を含めず)通信を行っている際に用いられているデータフレームであるときは、基地局APは、当該フレームに対する処理は行わず(NAVを設定せず)棄却する(ステップS415)。
【0125】
次に、端末STAにおけるデータフレームの受信処理動作について説明する。
【0126】
端末STAはフレームを受信すると(ステップS401)、基本的には、当該受信フレームが、基地局宛てでなく(「ToDS」=0)、しかも「DA」として自装置のアドレスが記述されているとき(ステップS403)、ステップS404に進み、そのような受信フレームに対し受信処理を行う。
【0127】
ステップS403において、受信フレームのアドレスフィールドに、「DA」として自装置のアドレスが記述されていないときであっても、「BSSID」あるいは「SA」あるいは「DA」あるいは「TA」あるいは「RA」として自装置の属するBSS内の基地局のアドレスが記述されているときは(ステップS405)、端末STAは、ステップS406へ進み、自装置からのデータフレームの送信を抑制するための動作を行う(NAVを設定する)。
【0128】
一方、ステップS402において、当該受信フレームが基地局宛ての場合、受信フレームのアドレスフィールドに、「BSSID」あるいは「SA」あるいは「DA」あるいは「TA」あるいは「RA」として、自装置が属するBSSの基地局のアドレスが含まれていれば(ステップS408)、端末STAは、ステップS409へ進み、自装置からのデータフレームの送信を抑制するための動作を行う(NAVを設定する)。
【0129】
ステップS408において、当該受信フレームのアドレスフィールドに自装置が属するBSSの基地局のアドレスが含まれていないときは、端末STAは、ステップS410へ進み、当該フレームに対する処理は行わず(NAVを設定することなく)棄却する。
【0130】
このように、端末STAでは、受信したフレームが自分宛でない場合、以下の2つの条件のうちのいずれか一方を満たす場合に、NAVを設定する。第1の条件としては、当該受信フレームが、自分の属するBSSの基地局と他の基地局との間の通信の際に送受信されているフレームであること、第2の条件としては、自分の属するBSSの基地局と、当該BSS内の自分以外の他の端末との間で通信を行う際に送受信されるフレームであること、である。
【0131】
具体的には、図11に示すように、ステップS402において、「ToDS」フィールドが「0」で、その受信フレームが基地局宛でないときは、端末STAは、ステップS403へ進む。ステップS403において、「アドレス1」に、「DA」として自分のMACアドレスが記述されているときは、端末STAは、当該受信フレームを受信する(ステップS404)。
【0132】
ステップS403において、当該受信フレームが自分宛てでないときは、端末STAは、ステップS405へ進む。ステップS405において、当該受信フレームは自分宛てではないが、自分が属するBSS内のものであるとき、NAVを設定する。すなわち、当該受信フレームの「FromDS」フィールドが「1」である場合には、さらに「アドレス2」フィールドに、「BSSID」あるいは「TA」として、自分の属するBSSの基地局のアドレスが記述されているとき、あるいは、当該受信フレームの「FromDS」フィールドが「0」である場合には、さらに「アドレス3」フィールドに、「SA」として自分の属するBSSの基地局のアドレスが記述されているとき、ステップS406へ進み、NAVを設定する。
【0133】
ステップS405において、当該受信フレームの宛先が自分宛てではなく、しかも自分が属するBSSのものでもないときは、当該受信フレームを棄却する(ステップS407)。
【0134】
ステップS402において、「ToDS」フィールドが「1」で、その受信フレームが基地局宛である場合には、端末STAは、ステップS408へ進む。ステップS408において、当該受信フレームの受信先や送信元に、自装置の属するBSSの基地局のアドレスが記述されているとき、すなわち、「アドレス1」あるいは「アドレス2」に、「BSSID」、「RA」、「TA」、「SA」、「DA」として自身が属するBSSの基地局のアドレスが記述されていているときは、端末STAは、NAVを設定する(ステップS409)。
【0135】
ステップS408において、当該受信フレームの受信先や送信元に、自装置の属するBSSの基地局のアドレスが記述されていないときは、端末STAは、ステップS410へ進み、当該受信フレームを棄却する。
【0136】
なお、上記処理は、基地局APの場合、受信制御部13で実行されて、受信制御部13が送信制御部14を制御するよう動作するようになっている。また、端末STAの場合、上記処理は、受信部201で実行されて、受信部201が送信部207を制御するよう動作するようになっている。
【0137】
このように、基地局APでは、フレームを受信した際、その受信フレームが、自局の属するBSSとは異なる他のBSS内で(自局および自局のBSS内の端末を含めず)通信を行っている際に用いられているデータフレームであるときは(従来は、NAVを設定するようになっていたが)、当該フレームに対する処理は行わず(NAVを設定せず)棄却する。従って、基地局APは、当該他のBSS内の基地局へ送信すべきデータがあるときは、ただちに当該他のBSS内の基地局へデータを送信するための送信動作を開始することができる。このように、基地局では、他のBSS内での送受信フレームを受信した場合は、電波の衝突を敢えて容認し、基地局間の通信および自局の属するBSSでの通信を優先させることにより、基地局間の通信および自局の属するBSSでの通信が効率よく行える。
【0138】
また、端末STAでは、フレームを受信した際、その受信フレームのアドレスフィールドに自装置が属するBSSの基地局のアドレスが(「BSSID」などとして)含まれていないとき(従来は、NAVを設定するようになっていたが)、当該フレームに対する処理は行わず(NAVを設定することなく)棄却する。従って、端末STAは、送信すべきデータがあるときは、送信待ちを行う必要なく、効率よく送信動作を開始することができる。
【0139】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、図1に示した無線LANシステムにおいて、基地局AP1とAP2のうちの一方(例えば、ここでは基地局AP2)が、指向性アンテナを有している場合の基地局間の通信について説明する。すなわち、基地局AP2は、基地局AP1に対して指向性アンテナのビームを向けて、基地局間で通信を行う場合について説明する。なお、以下の説明において、基地局AP2が指向性アンテナを有する場合を例に説明するが、逆に基地局AP1が指向性アンテナを有する場合も同様である。
【0140】
なお、基地局AP1に対し、基地局AP2が基地局である旨を認識させるための処理は、第1あるいは第2の実施形態で説明した手法を用いるものとする。
【0141】
[全体構成]
図12は、第3の実施形態に係る無線通信システムであり、図1と同一部分には同一符号を付している。基地局AP2は、図3のアンテナ20に替えて、指向性アンテナ2を備えている。指向性アンテナ2は1つの比較的狭い指向性パターン(指向性ビームあるいはアンテナビームという)3−1を形成して、基地局AP1、端末STA21、STA22のいずれかと通信を行うようになっている。
【0142】
また、図12に示すように、基地局AP2は特定の固定位置に設置され、有線ネットワーク5に接続されていてもよい。
【0143】
[基地局装置について]
本実施形態に係る基地局AP1の構成は、図3において、アンテナ20が指向性アンテナ2に置き換えられたものである。
【0144】
次に、図13を用いて指向性アンテナ2の具体的な構成例について説明する。
【0145】
指向性アンテナ2は、図13に示すようにアンテナ素子30−1、送受切り替えスイッチ31−1、低雑音増幅器(LNA)32−1、ダウンコンバータ33−1、受信ビーム形成回路35−1、送信ビーム形成回路36−1、アップコンバータ38−1、高周波電力増幅器(HPA)39−1及びビーム制御部40を有する。
【0146】
指向性アンテナ2の動作を説明する。アンテナ素子30−1によって受信されたRF信号は、送受切り替えスイッチ31−1を介してLNA32−1に入力され、所定レベルに増幅される。LNA32−1で増幅されたRF信号は、ダウンコンバータ33−1に入力され、周波数帯が電波周波数(RF)から中間周波数(IF)もしくはベースバンド(BB)へ変換された後、受信ビーム形成回路35−1に入力する。
【0147】
受信ビーム形成回路35−1では、入力された信号は、ビーム制御部40によって設定された受信用複素重み係数に従って重み付けされて合成されることにより、受信アンテナビームが形成される。受信ビーム形成回路35−1からの受信アンテナビームに対応した信号は、図3中の受信機11に供給される。
【0148】
一方、送信ビーム形成回路36−1には、図3中の送信機12からの送信信号TS1が入力する。送信ビーム形成回路36−1では、入力された送信信号に対してビーム制御部40によって設定された送信用複素重み係数が乗じられる。
【0149】
送信ビーム形成回路36−1からの出力信号は、アップコンバータ38−1に入力される。ここで当該出力信号(すなわち、送信信号)は、その周波数帯が、中間周波数(IF)もしくはベースバンド(BB)から電波周波数(RF)へ変換されて、HPA39−1に入力される。HPA39−1により増幅された送信信号は、スイッチ31−1を介してアンテナ素子30−1に供給され、基地局APや端末装置STAへ送信される。
【0150】
ビーム制御部40は、前述したように受信ビーム形成回路35−1に対しては受信用複素重み係数を設定し、送信ビーム形成回路36−1に対しては送信用複素重み係数を設定するが、それらは、同一の基地局、端末と通信を行うための重み係数が設定されるようになっている。
【0151】
ここでは、基地局AP2は、その指向性アンテナのビームを基地局AP1に対して向けるために、基地局AP2の位置を基準としたときの基地局AP1の相対的な位置情報を用いる。
【0152】
この場合、図14に示したように、基地局AP2は、基地局AP1と認証過程(オーセンティケーション、アソシエーション)を経た後(図5の説明参照)、基地局AP1に対して、基地局AP1の位置情報(x1、y1、z1)を通知するよう要求を出してもよい(ステップS311)。これにより基地局AP1の位置情報(x1、y1、z1)を得る(ステップS312)。基地局AP1の位置情報(x1、y1、z1)と自局の位置情報(x2、y2、z2)との差分を取り、これによって基地局AP2は、基地局AP1の上記相対的な位置情報を得ることができる。
【0153】
基地局AP1の相対的な位置情報を取得した基地局AP2はそれに基づき、基地局AP1に指向性アンテナのビームが向くように、受信用複素重み係数と、送信用複素重み係数を設定し、それをその後の基地局AP1との間での無線通信の送受に用いる(ステップS313)。
【0154】
この場合、基地局AP1や基地局AP2は自身の位置情報をGPS(Global Positioning System)などを用いることによって把握してもよいし、予め規定値として定められていることによって把握してもよい。
【0155】
あるいは基地局AP2はユーザ入力などによって基地局AP1の位置情報を把握してもよい。この場合も基地局AP1の位置情報が絶対的な位置情報(x1、y1、z1)で与えられた場合には、基地局AP2の絶対的な位置情報(x2、y2、z2)との差分を取り、基地局AP2の位置を基準としたときの基地局AP1の相対的な位置情報を得ることができる。予め相対的な位置情報を与えられていてもよい。
【0156】
位置情報は前述のように、指向性アンテナのビーム構成のための重み係数を設定するためのものである。例えば基地局同士の高さがほぼ同じであれば、z軸の情報などを省略して、上記重み係数を設定することもできる。
【0157】
以上説明したように、上記第3の実施形態によれば、指向性ビームを用いることにより、基地局間の通信品質を向上することができる。また、特に第2の実施形態と組み合わせて用いた場合、NAVを設定しないことにより発生する無線信号の衝突を軽減するのに有効である。
【0158】
次に、基地局AP2における、指向性アンテナの重み係数を決定する他の方法について説明する。すなわち、基地局AP2は、基地局AP1の位置情報を、基地局間でのフレーム交換から間接的に得るようにしてもよい。
【0159】
交換するフレームとは、オーセンティケーションやアソシエーションで用いるフレームや、データフレームを送信する際のRTS/CTSの組み合わせや、データフレームとその後のACKの応答、などのように基地局間での全てのフレーム交換を指す。
【0160】
基地局AP2は、基地局AP1から送信されるフレームの到来角に基づき、指向性アンテナの重み係数を設定する。基地強AP2は、引き続き基地局AP1から送信されたフレームを受信し、指向性アンテナの指向角を修正する必要があると判断した場合には修正する。また、フレーム交換を何回か重ねる中で到来角があるレンジ内に収まっていると判断できた場合にはビーム幅をそのレンジにまで狭めるようにビームのパラメータを定めてもよい。
【0161】
この設定された重み係数から得られるアンテナビームによって基地局AP2は基地局AP1に信号を送信する。
【0162】
この手法は、例えば、図14のステップS312で基地局AP2が既に基地局AP1の位置情報を把握している場合にも、指向性アンテナの指向角の精度を増すために用いることができる。
【0163】
このように、基地局AP2では、その指向性アンテナの重み係数を、受信したフレームの到来角に基づき修正していくことにより、相手基地局AP1に向ける指向性アンテナのビームを構成するための重み係数の精度が増し、ビーム幅を狭めることができる。これにより、基地局AP2から同一のチャネルを用いている他の基地局あるいは端末STAに及ぼす干渉の影響をさらに削減することができ、通信容量の拡大を図ることができる。
【0164】
特に、第2の実施形態と組み合わせた場合には、NAVを設定しないことにより発生する無線信号の衝突をより軽減することができる。
【0165】
上記第3の実施形態では、基地局間の通信において、基地局AP2のみが指向性アンテナを有し、基地局AP1にアンテナビームを向けて送受を行なっていたが、この場合に限らず、双方の基地局が指向性アンテナを有し、互いに相手基地局に対してアンテナビームを向けて送受を行うようにしてもよい。
【0166】
この場合、基地局AP1の構成は、第3の実施形態で説明した図13と同様である。
【0167】
基地局AP1も、指向性アンテナのビームが基地局AP2に向くように重み係数を設定するため、基地局AP2の位置情報を把握する必要ある。この場合、図14を参照して説明したように、ステップS311〜ステップS313の手順を基地局AP1においても行えばよい。
【0168】
通信する2つの基地局が相互に指向性アンテナのビームを向けて送受をすることによって、一方のみが指向性アンテナを有する場合に比べ、基地局間の通信品質をさらに高めることができる。
【0169】
したがって、基地局AP2のみが指向性アンテナを有する場合には、基地局AP2からの同一チャネルへの干渉の影響を削減できるのみであったのが、基地局AP1も指向性アンテナを用いることによって、基地局AP1からの同一チャネルへの干渉の影響も削減することができ、さらなる通信容量の拡大を図ることができる。
【0170】
また、特に、第2の実施形態と組み合わせた場合には、NAVを設定しないことにより発生する無線信号の衝突をより軽減することができる。
【0171】
なお、基地局AP1が指向性アンテナの重み係数を決定するためには、前述の第3の実施形態での説明と同様、基地局AP1は、基地局AP2の位置情報を、基地局間でのフレーム交換から間接的に得るようにしてもよい。
【0172】
また、上記第3の実施形態に係る指向性アンテナを有する基地局AP2は、基地局間の通信には相手基地局に向けた指向性ビームを用いて通信を行い、端末との通信の際には指向性を解除して通信を行うようにしてもよい。
【0173】
例えば、図14に示したように、基地局AP2が基地局AP1からビーコンフレームを受信し、基地局AP1との間で認証過程を経て、指向性アンテナのビームを基地局AP1に向けるための重み係数を設定する。図10に示したように、第2のBSS内の端末STA21から第1のBSS内の端末STA11のMACアドレスをDA(destinataionアドレス)とするデータフレームの送信がある場合、基地局AP2は、図10のステップS351〜ステップS354における、端末STA21との間は無指向性のビームを用いて通信を行い、図10のステップS355における基地局AP1との間の通信は指向性のビームを用いて行う。
【0174】
また、基地局AP1から基地局AP2を介して第2のBSS内の端末STA21宛てのフレームを送信する場合、基地局AP2は、基地局AP1に指向性アンテナのビームを向け、基地局AP1から予め定められた数のデータフレームを受信する。その後、基地局AP2は基地局AP1に向けた指向性を解除し(重み係数を均一にして)無指向にして、当該受信フレームを端末STA21に向けて送信する。
【0175】
ここで、基地局AP1から送信されるフレームの最終的な宛先(DA)は基地局AP2を含む複数の端末であってもよい。
【0176】
基地局AP2は、基地局AP1から送信されるデータフレームを予め定められた数だけ受信した後、まだ未受信のデータフレームがあると判断した場合には、再び基地局AP1に指向性アンテナのビームを向け、そのデータフレームを受信する。
【0177】
基地局AP2において、基地局AP1から送信されるべきデータフレームのうち、未受信のデータフレームがあると判断するときは、例えば、基地局AP2がアンテナを無指向にした際に基地局AP1からの送信があるとき、あるいは予め定められた数のデータフレームを受信した際、その最後のフレーム中で残余分の存在を基地局AP1により通知されたときなどである。未受信(残余分)のデータフレームの存在を判断できない場合にも、基地局AP2はある一定期間を置いた後に再び基地局AP1に対し指向性アンテナのビームを向け、基地局AP1からの再送処理によるデータフレームを受信することができる。
【0178】
このように基地局AP1に向けたアンテナビームの指向性を解除し、無指向にすることにより、基地局AP2は、第2のBSS内の端末STA21,STA22との間でも通信を行うことができる。
【0179】
また、基地局AP2は、基地局AP1と通信する際、基地局AP2は基地局AP1がビーコンフレームを送信する時間には、基地局AP1に向けた指向性アンテナ2の指向性を解除し、無指向性にしてもよい。
【0180】
基地局AP2は、アンテナ2を無指向性にした状態で基地局AP1からIEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定された制御フレームの一種であるRTSフレームなどを受け、基地局AP1からデータフレームが送信されると判断した場合には、基地局AP2は基地局AP1にアンテナ2のビームを向け、該フレームを受信し、必要に応じて応答を返す。
【0181】
この手法によれば、すでに認証が済んだ後、基地局AP1との間でデータの送受信を行う必要のないときは、基地局AP1からのビーコンフレームの受信のために基地局AP2が基地局AP1にアンテナ2のビームを割り当てることがない。従って、その分のビームを基地局AP2の属する第2のBSS内の端末STA21、STA22との通信に割り当てることができ、無線資源を無駄なく効率よく通信が行える。
【0182】
また、基地局AP2は、基地局AP1と通信品質を高める必要のあるデータフレームの送受信を行う際には、再びアンテナ2のビームを基地局AP1に向けて絞り、通信品質の要求に応えることができる。
【0183】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、基地局AP2が、アダプティブアレイアンテナを有している場合について説明する。すなわち、基地局AP2は、複数のアンテナのビームを用いて相手基地局AP1や、第2のBSS内の端末STA21、STA22と同時に同一チャネルでの同時通信を行う場合について説明する。基地局AP2と、基地局AP1、端末STA1、STA2との間の通信は、空間分割多元接続(SDMA:Space Division Multiple Access)方式で行われる。なお、ここにおいても、基地局AP1に対し、基地局AP2が基地局である旨を認識させるための処理は、第1あるいは第2の実施形態で説明した手法を用いてもよい。
【0184】
[全体構成]
図15は、第4の実施形態に係る無線通信システムであり、図1、図12と同一部分には同一符号を付している。基地局AP2は、アダプティブアレイアンテナ25を備えている。アダプティブアレイ25は複数の比較的狭い指向性パターン(指向性ビームあるいはアンテナビームという)3−1〜3−3を形成する。また、図15に示すように、基地局AP2は特定の固定位置に設置され、有線ネットワーク5に接続されていてもよい。
【0185】
このようなアンテナビーム3−1〜3−3によって、基地局AP2は複数の端末(例えば、ここでは、端末STA21,STA22)と、他の基地局AP1との間で同一チャネルでの同時通信を行うことが可能である。すなわち、基地局AP2と端末STA21、STA22と基地局AP1との間の通信は、空間分割多元接続(SDMA)方式で行われる。なお、本実施形態では基地局AP2が3個のアンテナビーム3−1〜3−3を形成し、2個の端末STA21、STA22と、基地局AP1との間で同時通信を行う例について説明するが、アンテナビームの数及び同時通信を行う端末数は、2以上の任意の数であればよい。端末STA21、STA22は、一般に固定位置に設置されるが、移動体であるか、移動体に搭載されていてもよい。
【0186】
[基地局装置について]
次に、図16を用いて本実施形態に係る基地局AP2の構成を説明する。
【0187】
受信機11−1〜11−3は、アダプティブアレイアンテナ25の各アンテナビーム3−1〜3−3を介して端末STA21、STA22、基地局AP1からの送信信号を受信する。そして、受信機11−1〜11−3は、受信した信号に対し復調及び復号を含む処理を行って、受信信号RS1〜RS3を生成する。
【0188】
一方、送信機12−1〜12−3は、端末STA21、STA22、基地局AP1のそれぞれへ送信すべき送信信号TS1〜TS3を生成し、これら送信信号TS1〜TS3をアダプティブアレイアンテナ25に供給する。送信信号TS1〜TS3は、アダプティブアレイアンテナ25の各アンテナビーム3−1〜3−3を介して端末STA21,STA22,基地局AP1のそれぞれへ送信される。
【0189】
受信機11−1〜11−3からの受信信号RS1〜RS3は、受信制御部13に入力され、所定の受信処理が行われる。
【0190】
送信制御部14は、端末STA21、STA22、基地局AP1へブロードキャスト、ユニキャストで送信するためのデータの生成等の送信処理を行う。ここで生成されたデータは、送信機12−1〜12―3を通じて送信信号TS1〜TS3として端末STA21、STA22、基地局AP1へ送信される。
【0191】
[アダプティブアレイアンテナについて]
次に、図17を用いてアダプティブアレイアンテナ25の具体的な構成例について説明する。
【0192】
アダプティブアレイアンテナ25は、図17に示すようにアンテナ素子30−1〜30−3、送受切り替えスイッチ31−1〜31−3、低雑音増幅器(LNA)32−1〜32−3、ダウンコンバータ33−1〜33−3、分配器34−1〜34−3、受信ビーム形成回路35−1〜35−3、送信ビーム形成回路36−1〜36−3、合成器37−1〜37−3、アップコンバータ38−1〜38−3、高周波電力増幅器(HPA)39−1〜39−3及びビーム制御部40を有する。
【0193】
送受切り替えスイッチ31−1〜31−3、LNA32−1〜32−3、ダウンコンバータ33−1〜33−3、分配器34−1〜34−3、合成器37−1〜37−3、アップコンバータ38−1〜38−3及びHPA39−1〜39−3は、各アンテナ素子30−1〜30−3に対応してアンテナ素子30−1〜30−3の個数(この例では3個)と同数個設けられる。一方、受信ビーム形成回路35−1〜35−3及び送信ビーム形成回路36−1〜36−3は、アダプティブアレイアンテナ25が形成するアンテナビームの数(この例では3ビーム)と同数個設けられる。アンテナビームの数は、アンテナ素子30−1〜30−3の個数より少なくても多くても構わない。
【0194】
アダプティブアレイアンテナ25の動作を説明する。アンテナ素子30−1〜30−3によって受信されたRF信号は、送受切り替えスイッチ31−1〜31−3をそれぞれ介してLNA32−1〜32−3に入力され、ここで所定レベルに増幅される。LNA32−1〜32−3で増幅されたRF信号は、ダウンコンバータ33−1〜33−3にそれぞれ入力され、周波数帯が電波周波数(RF)から中間周波数(IF)もしくはベースバンド(BB)へ変換された後、分配器34−1〜34−3に入力される。
【0195】
分配器34−1は、ダウンコンバータ33−1からの出力信号を受信ビーム形成回路35−1〜35−3に分配する。分配器34−2は、ダウンコンバータ33−2からの出力信号を受信ビーム形成回路35−1〜35−3に分配する。分配器34−3は、ダウンコンバータ33−3からの出力信号を受信ビーム形成回路35−1〜35−3に分配する。
【0196】
受信ビーム形成回路35−1〜35−3は、入力された信号をビーム制御部40によって設定された受信用複素重み係数に従って重み付けして合成することにより、複数の受信アンテナビームを形成される。受信ビーム形成回路35−1〜35−3からの各受信アンテナビームに対応した信号は、図16中の受信機11−1〜11−3にそれぞれ供給される。
【0197】
一方、送信ビーム形成回路36−1〜36−3には、図16中の送信機12−1〜12−3からの送信信号TS1〜TS3がそれぞれ入力される。送信ビーム形成回路36−1〜36−3は、それぞれに入力された送信信号に対して、ビーム制御部40によって設定された複数の送信用複素重み係数を乗じる。
【0198】
送信ビーム形成回路36−1からの複数の出力信号は合成器37−1〜37−3に入力され、送信ビーム形成回路36−2からの複数の出力信号も合成器37−1〜37−3に入力され、送信ビーム形成回路36−3からの複数の出力信号も合成器37−1〜37−3に入力される。合成器37−1〜37−3は、それぞれに入力された複数の信号を1つの信号に合成するる。
【0199】
合成器37−1〜37−3からの出力信号は、アップコンバータ38−1〜38−3にそれぞれ入力され、ここで、その周波数帯が、中間周波数(IF)もしくはベースバンド(BB)から電波周波数(RF)へ変換された後、HPA39−1〜39−3へ出力される。HPA39−1〜39−3により増幅された送信信号は、スイッチ31−1〜31−3をそれぞれ介してアンテナ素子30−1〜30−3に供給され、端末装置や基地局へ送信される。
【0200】
ビーム制御部40は、前述したように受信ビーム形成回路35−1〜35−3に対しては受信用複素重み係数を設定し、送信ビーム形成回路36−1〜36−3に対しては送信用複素重み係数を設定するが、送受で互いに対応するビーム形成回路(例えば、受信ビーム形成回路35−1と送信ビーム形成回路36−3)に対しては、同一の端末と通信を行うための重み係数が設定される。
【0201】
なお、以下の説明において、基地局AP2がアダプティブアレイアンテナを有する場合を例に説明するが、逆に基地局AP1がアダプティブアレイアンテナを有する場合も同様である。また、基地局AP1とAP2の両方がアダプティブアレイアンテナを有していてもよい。
【0202】
第4の実施形態に係る基地局AP2は、アダプティブアレイアンテナ25を用いて、通信相手としての他の基地局(例えば基地局AP1)や端末STA21、STA22のそれぞれに対し、それぞれに割り当てた指向性ビームを形成して通信を行う。その結果、端末側では、基地局AP2から自分以外の端末に向けた信号を受信する機会が減少する。したがって干渉が削減でき、基地局AP2に無線接続できる端末数すなわち基地局AP2のBSSでの通信容量を増加させることができる。
【0203】
なお、指向性ビームは、複数の端末のグループ毎に指向性ビームを割り当てるようにしてもよい。この場合には、全ての端末毎にビームを割り当てる場合に近い効果を得つつ、かつ基地局AP2でのアダプティブアンテナの構成及び制御をより簡易にすることができる。
【0204】
基地局AP2は、基地局AP1と無線通信する際、基地局AP1がデータを送信する際の送信電力と、基地局AP1から送信されたデータを受信した際に測定した受信電力と、該受信したデータの種別とに基づき、基地局AP1の指向性ビーム制御の有無を判断し、この判断結果に応じて、基地局AP1向けにデータを送信する際の送信電力を調節するようにしてもよい。
【0205】
また、基地局AP2は、基地局AP1と無線通信する際、基地局AP1から送信されたデータを受信した際に測定した受信電力と、該受信したデータの種別とに基づき、基地局AP1の指向性ビーム制御の有無を判断し、この判断結果に応じて、基地局AP1向けにデータを送信する際の送信電力を調節するようにしてもよい。
【0206】
CSMA(Carrier Sense Multiple Access:キャリアセンス多元接続)方式を用いるIEEE802.11(IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に基づく無線LANシステムにおいては、端末はフレーム(データ)を送信すべき基地局へのフレーム送信前にキャリアセンスを行う。キャリアセンスとは、無線通信媒体が使用中(ビジー)であるか、未使用(アイドル)であるかを受信信号レベルから判断する物理的なキャリアセンス(Physical Carrier Sense Mechanism)と、受信信号に含まれる予約情報から判断する仮想キャリアセンス(Virtual Carrier Sense Mechanism)の双方を含む。
【0207】
端末は、このキャリアセンスにより、他の端末から基地局を含めて他の端末へ向けての信号の受信レベルがある閾値より大きいとき、あるいは、他の端末からのチャネル予約情報(NAV)を含むフレームを受信したとき、フレーム送信を延期する。ランダムな送信待機時間の経過後、無線通信媒体がアイドルとなったとき、端末は、基地局や端末との間の接続を開始するか、あるいは、すでに接続されている場合には、基地局や他の端末のアドレスを宛先に指定したフレームを送信する。
【0208】
一方、SDMA方式によると、基地局装置に備えられたアダプティブアレイアンテナにより、互いの干渉を低減する複数のアンテナビームを形成することによって、通信品質の向上、さらには基地局装置と複数の端末装置との同時通信の実現が可能である。CSMA方式の無線LANシステムにおいても、SDMA方式を適用することにより、このような利点を享受できると考えられる。
【0209】
ところが、CSMA方式の無線LANシステムに単純にSDMA方式を適用すると、次のような問題が発生する。
【0210】
一般的に、端末は、構成および制御が複雑なアダプティブアレイアンテナのような指向性アンテナを持たないことが想定されている。従って、基地局間でフレーム伝送を行っているとき、他の端末が上記キャリアセンス機能により無線通信媒体がビジーであると判断し、フレーム(パケット)送信を控えてしまう。そのため、基地局にアダプティブアレイアンテナを備えたとしても、CSMA方式を採用している無線通信システムでは、同一チャネルで他の基地局と複数の端末が同時通信を行うような空間分割多元接続方式を利用した通信が効率よく行えない。
【0211】
そこで、基地局間の無線通信で、送信電力制御とキャリアセンスレベル制御のうちの少なくとも一方を行うことにより、多元接続数を増加させることができ、従って、SDMA方式を適用した場合の伝送効率の向上が図れる。
【0212】
図18は、基地局AP2が基地局AP1向けにデータを送信する際の送信電力を調節するための機能を実現するための基地局AP2の要部の構成例を示したものである。もちろん、基地局AP1も、図18に示した構成で、基地局AP2と同様に送信電力制御を行うものであってもよい。以下、基地局AP2を例にとり説明するが、基地局AP1も同様である。
【0213】
ここでは、基地局AP1がアダプティブアレイアンテナを有し、基地局AP2が送信電力を調整する機能を有する場合について説明するが、この場合に限らず、基地局AP2がアダプティブアレイアンテナを有し、基地局AP1が送信電力を調整する機能を有していてもよい。また、基地局AP1、AP2がアダプティブアレイアンテナを有しているとともに、送信電力を調整する機能を有していてもよい。
【0214】
アダプティブアレイアンテナを持つ基地局APは、一定時間間隔に、その基地局APの周囲に複数いる端末STAが受信できる送信電力で、ビーコンフレームを送信する。このビーコンフレームは、他の基地局AP、全ての端末STAに送信する必要があり、ブロードキャストで伝送するため、無指向性パターンを用いて送信される。一方、オーセンティケーション(Authentication)、アソシエーション(Association)処理時におけるフレームの送受信は、他の基地局APや各端末STAに対し個別に行う必要があり、ユニキャストで送信するため指向性ビームが用いられる。
【0215】
そこで、この特徴に着目し、基地局AP2は、基地局AP1からのデータを受信した際には、まず、受信したデータの種別を調べる。すなわち、受信したデータが、無指向性のパターン(無指向性ビームとも呼ぶ)で送信されるフレーム(例えば、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定されているビーコンフレーム)であるか、基地局AP1が指向性ビームを形成することが可能であれば指向性ビームを形成して送信されるフレーム(例えば、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)に規定されているオーセンティケーション(Authentication)のフレームやアソシエーション(Association)のフレームなど)であるかを識別する。そして、ビーコンフレームのように、無指向性ビームで送信されるフレームデータの送信電力情報と、オーセンティケーションのフレームやアソシエーションのフレームのように、基地局AP1が指向性ビームを形成することが可能であれば指向性ビームを形成して送信されるフレームデータの送信電力情報と、実際にこれらフレームデータを受信したときの受信電力とを用いて、基地局AP1からユニキャストで自局宛てのフレームを送信する際の指向性ビームの利得を推定する。
【0216】
そして、その結果を基に、基地局AP1が基地局AP2に対し指向性ビームを形成しているか否か(指向性ビーム制御の有無)、言い換えれば、基地局AP1が基地局AP2に対し、SDMA(空間分割多元接続)を行っているか否かを判断する。SDMAを行っていると判断した場合には、基地局AP1宛てのデータの送信電力を調節するようになっている。
【0217】
図18に示すように、基地局AP2は、図3、図16に示した構成に加え、さらに、受信電力測定部102と受信フレーム種別検出部103と送信電力検出部104とビーム利得推定部105と送信電力制御部106から構成されている。
【0218】
受信電力測定部102は、受信制御部13でフレームデータを受信した際に、アンテナ20に誘起された電力(受信電力)を測定するようになっている。アンテナ20の代わりに、指向性アンテナあるいはアダプティブアレイアンテナ25でってもよい。
【0219】
受信フレーム種別検出部103は、受信制御部13で得たMACフレーム中の「タイプ」と「サブタイプ」などの情報から当該MACフレームがブロードキャストされたものか、ユニキャストされたものかを判断する。
【0220】
すなわち、MACフレーム中の「タイプ」と「サブタイプ」とから、当該MACフレームがビーコンフレーム(ブロードキャストされたフレームデータ)であるか、オーセンティケーションやアソシエーションのフレーム(ユニキャストされたフレームデータ)であるかを判断する。
【0221】
なお、受信フレーム種別検出部103は、受信制御部13で得たMACフレーム中の宛先アドレス「DA」から、当該MACフレームがブロードキャストされたものか、ユニキャストされたものかを判断することもできるが、ここでは、一例として、前者の場合を例にとり説明する。
【0222】
送信電力検出部104は、受信制御部13で得たMACフレーム中から、当該MACフレームを基地局AP1から送信する際の送信電力に関する情報(送信電力情報)を抽出する。送信電力情報は、電力値そのものでもよいが、ある予め定められた値を基準とした相対的な値(例えば、レベル値)であってもよい。要は、送信電力の変動がどのくらいかが基地局AP2側が判断できる情報であればよい。送信電力情報は、MACフレームの予め定められた位置に格納されているものとする。例えば、「フレーム・ボディ」中のIEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)規格では未定義の(リザーブになっている)フィールドを用いて示されていることが望ましいが、この場合に限らず、MACフレーム中の無線通信システムの運用上未使用となっているフィールドを用いて示されていてもよい。
【0223】
例えば、オーセンティケーションのフレームの場合、「フレーム・ボディ」中のステータス・コード(Status code)のフィールドで、未定義のステータス・コードを1つまたは複数用いて送信電力情報を表現することもできる。
【0224】
なお、ここでは、基地局AP2は、基地局AP1が指向性ビームを形成することが可能であれば指向性ビームを形成して送信されるフレームデータの送信電力情報と、実際にこれらフレームデータを受信したときの受信電力とを用いて、基地局AP1からユニキャストで自局宛てのフレームを送信する際の指向性ビームの利得を推定するようになっているが、この場合に限らない。例えば、基地局AP1が指向性ビームを形成することが可能であれば指向性ビームを形成して送信されるフレームデータの送信電力情報を用いず、これらフレームデータを受信したときの受信電力を用いて、基地局AP1からユニキャストで自局宛てのフレームを送信する際の指向性ビームの利得を推定するようにしてもよい。但し、前者のように、送信電力情報を用いることで、推定(計算)される利得の信頼度が上がる。また、後者のように、送信電力情報を用いない場合には、図18の送信電力検出部104は省略してもよい。
【0225】
また、各種MACフレームの送信電力が予め定められていて、ビーコン、オーセンティケーション、アソシエーションなどのMACフレームの種類対応に、その送信電力が送信電力検出部104に予め記憶されていてもよい。この場合、送信電力検出部104は、受信フレーム種別検出部103で、受信したMACフレームの種類が検出されたら、その種類対応の送信電力を読み出す。
【0226】
ビーム利得推定部105は、受信制御部13で受信したデータに対し、データ種別検出部103で検出された当該受信データの種別(ブロードキャストされたフレームデータ(例えば、ビーコンフレーム)であるか、ユニキャストされたフレームデータ(例えば、オーセンティケーションやアソシエーションのフレーム)である)かと、受信電力測定部102で測定された受信電力と、送信電力検出部104で得た当該受信データの送信電力情報とから、その指向性ビームの利得(指向性利得)を推定する。そして、この推定された指向性利得を基に、基地局AP1の指向性ビーム制御の有無を判断するとともに、指向性利得の値(レベル)が所定レベル以上あるいは所定レベルを超えているときは、基地局AP1がSDMAを行っていると判断する。
【0227】
送信電力制御部106は、ビーム利得推定部105で基地局AP1がSDMAを行っていると判断したときは、基地局AP1宛てのデータの送信電力を、例えば、予め定められたレベルだけ下げる。好ましくは、基地局AP1宛てのデータの送信電力は、基地局AP1が受信可能な範囲内でできるだけ小さい送信電力、すなわち、必要最小限の送信電力であることが好ましい。なお、送信電力制御を行うための回路自体は公知のものである。
【0228】
図19は、基地局AP2の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【0229】
図19において、基地局AP2は、電源がオンされると(ステップS1)、受信モードとなり、例えば、基地局AP1や端末STAからの要求があれば、いつでもコネクションを確立して通信が行える状態となっている(ステップS2)。
【0230】
受信モードの状態で、基地局AP2に(例えば、ユーザの操作により)データを送信するための送信要求が発生し、自局を基地局AP1に接続するための接続要求が発生したとする(ステップS3)。この場合、基地局AP2と基地局AP1との間で、オーセンティケーション、アソシエーションなる処理が実行される(ステップS4,ステップS5)。なお、オーセンティケーション、アソシエーションに関しては、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)規格に準拠している。
【0231】
オーセンティケーション(Authentication)、アソシエーション(Association)が正常に終了して、基地局AP2と基地局AP1との間のコネクションが確立されると、このコネクションを通じて、基地局AP2は基地局AP1と通信を行うことができる。すなわち、通信モードの状態となる(ステップS6)。
【0232】
なお、オーセンティケーション、アソシエーションは無線接続するもの同士がが1回行えばよい(データフレーム送信の度に行う必要はないということである)。
【0233】
基地局AP2は基地局AP1との間の無線接続を切断するときには、ディスアソシエーション(Disassociation)、ディオーセンティケーション(Deauthentication)なる動作を経て、上記確立したコネクションを切断し(ステップS7,ステップS8)、再び受信モードに移行する(ステップS2)。
【0234】
図19では、一例として基地局AP1と基地局AP2との間におけるコネクションの確立・切断について説明したが、端末STAと基地局AP2との間におけるコネクションの確立・切断についても上記同様である。
【0235】
なお、ディスアソシエーション、ディオーセンティケーションに関しては、IEEE802.11 (IEEE802.11a,IEEE802.11bも含む)規格に準拠している。
【0236】
次に、図20を参照して、基地局AP2が基地局AP1にデータを送信する際の送信電力制御手順について説明する。
【0237】
基地局AP1からは、ビーコンフレームが一定周期毎に送信されている(ステップS101)。基地局AP2は、原理的には、図19のステップS2の受信モードのとき以外に、ステップS4のオーセンティケーション、ステップS5のアソシエーション、ステップS7のディスアソシエーション、ステップS8のディオーセンティケーションの処理中においても、ビーコンフレームの受信は可能である。
【0238】
例えば、受信モードのときに基地局AP2は、アンテナ20あるいは指向性アンテナ2あるいはアダプティブアレイアンテナ25を介して受信したデータが受信フレーム種別検出部103でビーコンフレームであると判断したときは、ビーム利得推定部105には、少なくとも、受信電力測定部102で測定された当該ビーコンフレームの受信電力が入力する。なお、前述したように、より正確に利得を推定するために、ビーム利得推定部105には、送信電力検出部104から、当該ビーコンフレームに含まれていた、あるいは、ビーコンフレーム対応に予め記憶していた送信電力情報を入力するようにしてもよい(ステップS102)。以下、ビーム利得推定部105には、上記受信電力と上記送信電力情報とが入力するものとする。
【0239】
ビーコンフレームを受信する度に、そのときに測定された受信電力と送信電力情報を対にして時系列に記憶しておいてもよい。
【0240】
その後、基地局AP2に送信要求が生じて(図19のステップS3)、図19のステップS4のオーセンティケーションの処理に移行したとする。この場合、まず、基地局AP2の送信制御部14は、基地局AP1に対し(基地局AP1宛ての)、オーセンティケーションの要求を開始するフレームであるATSN=1のオーセンティケーションフレームを送信する(ステップS103)。その際、当該基地局AP1へ向けたデータ送信の際に送信電力制御部106で以前に設定された送信電力があるときは、その送信電力でATSN=1のオーセンティケーションフレームを送信する。そうでないときは、予め定められたデフォルトの送信電力で送信するようにしてもよい。
【0241】
なお、ATSNは、オーセンティケーションフレームのフレームボディ中に示されている。
【0242】
ATSN=1のオーセンティケーションフレームを受信した基地局AP1は、そのときの受信電力などを基に、基地局AP2へ向ける指向性ビームを設定する(ステップS104)。すなわち、基地局AP2の存在する方向対応の上記重み係数を設定する。
【0243】
基地局AP1は、この設定された指向性ビームを用いて基地局AP2宛てに、ATSN=2のオーセンティケーションフレーム(ATSN=1のオーセンティケーションフレームの応答)を送信する(ステップS105)。
【0244】
このATSN=2のオーセンティケーションフレームには、前述したように、送信電力情報が含まれていてもよい。
【0245】
アンテナ100を介して受信したデータが受信フレーム種別検出部103で、ATSN=2のオーセンティケーションフレームであると判断したときは、ビーム利得推定部105には、少なくとも受信電力測定部102で測定された当該フレームの受信電力が入力する。さらに、送信電力検出部104で当該フレームから抽出された、あるいは、ATSN=2のオーセンティケーションフレーム対応に予め記憶していた送信電力情報が入力してもよい(ステップS106)。以下、ビーム利得推定部105には、上記受信電力と上記送信電力情報とが入力するものとする。
【0246】
このとき、ビーム利得推定部105と送信電力制御部106は、図20のステップS102で得た、受信したビーコンフレームの受信電力、送信電力情報と、上記ステップS105で得た、ATSN=2のオーセンティケーションフレームの受信電力と送信電力情報とを用いて、図21に示すような処理を行い、送信電力の調節を行う(ステップS107)。
【0247】
図21において、まず、ビーム利得推定部105は、図20のステップS102で得た、受信したビーコンフレームの受信電力と送信電力情報と、上記ステップS105で得た、ATSN=2のオーセンティケーションフレームの受信電力と送信電力情報とから基地局AP1の指向性ビーム制御の有無を判断する(ステップS201)。すなわち、指向性ビーム制御の有無とは、言い換えれば、基地局AP1で基地局AP2向けに指向性が絞られているか否か、アンテナビームが基地局AP2に向けられているか否かである。
【0248】
例えば、無指向性のパターンで送信されてきたビーコンフレームの送信電力情報が「3」で、その受信電力が「2」であったとする。そして、指向性ビームを用いて送信されてきただろうオーセンティケーションフレームの送信電力情報が「3」で、その受信電力が「4」であったとする。なお、ここで示す数値は、実際の電力値ではなく、電力値に対応したレベルを示している。このように、基地局AP1の送信電力が「3」と変わらないのに、受信電力が大きくなれば、基地局AP1は、例えば、レベル1の利得を持つ指向性ビーム制御を行っていると推定する。
【0249】
同様に、ビーコンフレームの送信電力情報が「3」で、その受信電力が「2」であったとする。そして、オーセンティケーションフレームの送信電力情報が「4」で、その受信電力が「4」であったとする。このように、基地局AP1の送信電力が「1」だけ大きくなっているが受信電力は「2」大きくなるといった、送信電力の変化の度合いと、受信電力の変化の度合いが対応しないときも、基地局AP1は、例えば、レベル1の利得を持つ指向性ビーム制御を行っていると推定する。
【0250】
また、ビーコンフレームの送信電力情報が「3」で、その受信電力が「2」であったとする。そして、オーセンティケーションフレームの送信電力情報が「4」で、その受信電力が「3」であったとする。このとき、基地局AP1の送信電力が「1」だけ大きくなったのに伴い受信電力も「1」だけ大きくなっており、送信電力の変化の度合と、受信電力の変化の度合いが対応している。このときは、基地局AP1での送信電力制御があって,受信電力もそれに対応して変化しているので、基地局AP1は指向性アンテナを用いた指向性ビーム制御をしていないと推定できる。
【0251】
なお、ビーコンフレームなどのように、無指向性ビームで送信される2つ以上のフレーム、オーセンティケーションフレームなどのように、指向性ビームを用いて送信される可能性のある2つ以上のフレームの受信結果から、指向性ビーム制御の有無を推定することにより、推定の精度をより向上させることができる。
【0252】
また、基地局AP2では、ステップS102で得た、受信したビーコンフレームの受信電力と送信電力情報と、上記ステップS105で得た、ATSN=2のオーセンティケーションフレームの受信電力と送信電力情報とから基地局AP1の指向性ビーム制御の有無を判断するようになっているが、前述したように、受信電力のみを用いて判断するようにしてもよい。しかし、受信電力と送信電力情報の両方を用いた方が、基地局AP1の指向性ビーム制御の有無をより高精度に推定することができる。
【0253】
ここで、基地局AP2のビーム利得推定部105において、受信したビーコンフレームやオーセンティケーションフレームの送信電力情報を用いないで、基地局AP1の指向性ビーム制御の有無を判断する場合について説明する。
【0254】
この場合、基地局AP1からビーコンフレームやオーセンティケーションなどのフレームを送信する際には、常に予め定められた送信電力(例えば、「3」)で送信するものと定められている。例えば、図20のステップS102で得た、受信したビーコンフレームの受信電力が「2」で、上記ステップS105で得た、ATSN=2のオーセンティケーションフレームの受信電力が「4」であったとする。この場合、基地局AP1からこれらフレームを送信するときの送信電力は常に同一であるのに、ユニキャストされるフレーム(オーセンティケーションフレーム)を受信したときの受信電力が大きくなっている。このような場合には、基地局AP1は、例えば、レベル1の利得を持つ指向性ビーム制御を行っていると推定する。
【0255】
上記ステップS201で、基地局AP2は、基地局AP1では指向性ビーム制御が行われていると判断した場合、次に、ステップS202へ進む。テップS202では、基地局AP2は、基地局AP1で基地局AP2向けに指向性が十分絞られていて、SDMAが可能な充分強いアンテナビームであるか否かを判断する。すなわち、上記のようにして推定された、指向性ビームの利得のレベルが、例えば、所定レベル以上のとき(ステップS202)、ビーム利得推定部105は、SDMAが可能であると判断する(ステップS203)。
【0256】
例えば、ここでは、レベル1以上の指向性ビームの利得があれば、基地局AP1での指向性の絞り具合が、SDMAを行うに充分であると判断する(SDMAが可能であると判断する)。
【0257】
なお、ステップS202は、必ずしも必要ではなく、なくてもよい。この場合は、ステップS201で基地局AP1が指向性ビーム制御を行っていると判断したときは、ステップS202、ステップS203をスキップして、ステップS204へ進む。
【0258】
ステップS203で、ビーム利得推定部105で上記のようにして、基地局AP2は、SDMAが可能であると判断したときには、ステップS204へ進む。ステップS204では、基地局AP2の送信電力制御部106は、基地局AP1宛てのデータの送信電力を予め定められたレベルだけ下げる(好ましくは、基地局AP1宛てのデータの送信電力を必要最小限に設定する)。すなわち、基地局AP1宛てのデータの送信電力を、基地局AP1が受信可能な範囲で十分小さい値に、設定する。
【0259】
図20の説明に戻り、ステップS107で、図21に従って送信電力制御が行われて、新たな送信電力が設定されたときは、その設定された送信電力をその後の基地局AP1宛てのデータ送信の際の送信電力として用いる。
【0260】
オーセンティケーションが正常に終了すると、次に、IEEE802.11の規定に従えば、アソシエーションを行う。すなわち、基地局AP2の送信制御部14は、ステップS107で送信電力が設定されたときは、その設定された送信電力で、アソシエーションの開始を要求するためのアソシエーションリクエストフレームを基地局AP1宛てに送信する(ステップS108)。
【0261】
アソシエーションリクエストフレームを正常に受信した基地局装置1は、その応答として、アソシエーションレスポンスフレームを基地局AP2宛てに送信する(ステップS109)。アソシエーションが正常に終了すると、アクセス制御フェーズが終了して、図19のステップS6に対応する基地局AP1との間でデータフレームの送受信が行われる(ステップS110)。
【0262】
次に、図22を参照して、共有鍵(Shared key)のオーセンティケーションをする場合について説明する。なお、図20と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。すなわち、共有鍵のオーセンティケーションの場合、基地局AP2は、ステップS105で、ATSN=2のオーセンティケーションフレームを受信した後、ATSN=3のオーセンティケーションフレームを基地局AP1宛てに送信する(ステップS151)。その際、当該基地局AP1へ向けたデータ送信の際に送信電力制御部106で以前に設定された送信電力があるときは、その送信電力でATSN=3のオーセンティケーションフレームを送信する。なお、送信電力制御部106で以前に設定された送信電力がないときは、予め定められたデフォルトの送信電力で送信するようにしてもよい。
【0263】
ATSN=3のオーセンティケーションフレームを受信した基地局AP1は、そのときの受信電力などを基に、基地局AP2へ向ける指向性ビームを設定し直す(ステップS152)。すなわち、基地局AP2の存在する方向対応の上記重み係数を設定し直す。
【0264】
基地局AP1は、この設定された指向性ビームを用いて基地局AP2宛てに、ATSN=4のオーセンティケーションフレームを送信する(ステップS153)。
【0265】
このATSN=4のオーセンティケーションフレームには、前述したように、送信電力情報が含まれていてもよい。
【0266】
アンテナ20あるいは指向性アンテナ2あるいはアダプティブアレイアンテナ25を介して受信したデータが受信フレーム種別検出部103で、ATSN=4のオーセンティケーションフレームであると判断したときは、ビーム利得推定部105には、受信電力測定部102で測定された当該フレームの受信電力と、送信電力検出部104で当該フレームから抽出された、あるいは、ATSN=4のオーセンティケーションフレーム対応に予め記憶していた送信電力情報を入力する(ステップS154)。
【0267】
このとき、ビーム利得推定部105と送信電力制御部106は、図22のステップS102で得た、受信したビーコンフレームの受信電力と送信電力情報と、上記ステップS154で得た、ATSN=4のオーセンティケーションフレームの受信電力と送信電力情報とを用いて、図21に示すような処理を行い、送信電力の設定を行う(ステップS155)。
【0268】
なお、ステップS105の後に、図20のステップS106、ステップS107と同様な処理を行い、ここで設定した電力を用いて、図22のステップS153で送信されたATSN=4のオーセンティケーションフレームを受信する。そして、ステップS154,ステップS155で送信電力を設定し直すようにしもてもよい。
【0269】
以後は、図20のステップS108以降の処理動作と同様である。
【0270】
なお、図22において、基地局AP2は、ステップS155において、受信したビーコンフレームの受信電力と送信電力情報と、ATSN=4のオーセンティケーションフレームの受信電力と送信電力情報とから基地局AP1の指向性ビーム制御の有無を判断して、送信電力の設定を行うようになっているが、前述したように、受信したビーコンフレームやATSN=4のオーセンティケーションフレームの受信電力のみを用いて判断するようにしてもよい。しかし、受信電力と送信電力情報の両方を用いた方が、基地局AP1の指向性ビーム制御の有無をより高精度に推定することができる。
【0271】
次に、図23を参照して、基地局AP2がオーセンティケーションの際ではなく、アソシエーションの際に送信電力制御を行う場合について説明する。なお、図20と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。すなわち、基地局AP2は、ステップS105で、ATSN=2のオーセンティケーションフレームを受信した後、ステップS106、ステップS107をスキップして、ステップS108へ進み、アソシエーションの開始を要求するためのアソシエーションリクエストフレームを基地局AP1宛てに送信する(ステップS108)。アソシエーションリクエストフレームを正常に受信した基地局AP1は、その応答として、アソシエーションレスポンスフレームを基地局AP2宛てに送信する(ステップS109)。
【0272】
このアソシエーションレスポンスフレームには、前述したように、送信電力情報が含まれていてもよい。
【0273】
基地局AP2では、アンテナ20あるいは指向性アンテナ2あるいはアダプティブアレイアンテナ25を介して受信したデータが受信フレーム種別検出部103で、アソシエーションレスポンスフレームであると判断したときは、ビーム利得推定部105には、受信電力測定部102で測定された当該フレームの受信電力と、送信電力検出部104から当該フレームから抽出された、あるいは、アソシエーションレスポンスフレーム対応に予め記憶していた送信電力情報を入力する(ステップS161)。
【0274】
このとき、ビーム利得推定部105と送信電力制御部106は、ステップS102で得た、受信したビーコンフレームの受信電力と送信電力情報と、上記ステップS161で得た、アソシエーションレスポンスフレームの受信電力と送信電力情報とを用いて、図21に示すような処理を行い、送信電力の設定を行う(ステップS162)。
【0275】
アソシエーションが正常に終了すると、アクセス制御フェーズが終了して、図19のステップS6に対応する基地局AP1との間でデータフレームの送受信が行われる(ステップS163)。
【0276】
なお、図23において、基地局AP2は、ステップS162において、受信したビーコンフレームの受信電力と送信電力情報と、アソシエーションレスポンスフレームの受信電力と送信電力情報とから基地局AP1の指向性ビーム制御の有無を判断して、送信電力の設定を行うようになっているが、前述したように、受信したビーコンフレームやアソシエーションレスポンスフレームの受信電力のみを用いて判断するようにしてもよい。しかし、受信電力と送信電力情報の両方を用いた方が、基地局AP1の指向性ビーム制御の有無をより高精度に推定することができる。
【0277】
また、図23に示したような手順で送信電力の設定を行う場合、さらに、図20のステップS106、ステップS107、図22のステップS154、ステップS155に示したような、オーセンティケーションフレームを用いて送信電力の設定を行う場合と組み合わせて用いてもよい。この場合、より高精度に送信電力を設定する事が可能となる。
【0278】
以上説明したように、上記第4の実施形態によれば、基地局AP2は、基地局AP1がブロードキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と、基地局AP1がユニキャストで送信するデータを受信した際の受信電力とから、基地局AP1で指向性ビーム制御を行っているか否かを判断する。指向性ビーム制御を行っていると判断した際には、さらに、指向性の絞り具合が、SDMAを行うに充分であるか否かを判断するようにしてもよい。基地局AP2は、基地局AP1が(SDMAを行うに充分な指向性の絞り具合で)指向性ビーム制御を行っていると判断したときには、以後の基地局AP1宛てのデータ送信のための送信電力を、必要最小限に設定し直す。このようにして、基地局AP2は、基地局AP1へフレームを送信する際の送信電力を制御することにより、基地局AP2から基地局AP1に向けた(ユニキャストの)データ送信が、近傍の端末STAの通信に対して干渉となることを削減できる。
【0279】
また、上記第4の実施形態によれば、基地局AP2は、基地局AP1がブロードキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と当該受信データ対応の送信電力情報と、基地局AP1がユニキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と当該受信データ対応の送信電力情報とから、基地局AP1で指向性ビーム制御を行っているか否かを判断する。指向性ビーム制御を行っていると判断した際には、さらに、指向性の絞り具合が、SDMAを行うに充分であるか否かを判断するようにしてもよい。基地局AP2は、基地局AP1が(SDMAを行うに充分な指向性の絞り具合で)指向性ビーム制御を行っていると判断したときには、以後の基地局AP1宛てのデータ送信のための送信電力を、必要最小限に設定し直す。このようにして、基地局AP2は、基地局AP1へフレームを送信する際の送信電力を制御することにより、基地局AP2から基地局AP1に向けた(ユニキャストの)データ送信が、近傍の端末STAの通信に対して干渉となることを削減できる。
【0280】
基地局AP2が上記のように送信電力制御を行う場合と、基地局AP2が上記のような送信電力制御を行なわない場合とを比較すると、前者の方が基地局AP2から基地局AP1に向けての送信信号の受信電力が十分小さい。そのため、前者の方が、基地局AP2の属するBSS内の端末STA21,STA22がキャリアセンスする際に、無線媒体がビジーであると検知する場合が少なくなる。すなわち、端末STA21、STA22において、基地局AP2から基地局AP1への通信信号の受信電力を検知しない場合、端末STA21、STA22は、IEEE802.11に規定されているNAVを設定することがない(NAVが設定されると、端末装置はNAVにて指定された時間、基地局装置AP2へのアクセスを控えることになる)。
【0281】
従って、基地局AP2は、複数の端末STAと空間分割多元接続が可能となり、基地局AP2が上記送信電力制御を行わない場合と比較して多元接続数を増加させることができる。
【0282】
なお、上記第4の実施形態では、基地局AP2において、基地局AP1が指向性ビーム制御を行っているか否かの判断を行うようになっていたが、この場合に限らず、端末(端末STA21,STA22)に対しても同様に行うようにしてもよい。
【0283】
また、上記第4の実施形態の受信フレーム種別検出部103は、受信したフレームデータが、基地局AP1(端末STA21,STA22であってもよい)が指向性ビーム制御を行っているならば無指向性パターンで送信するであろうブロードキャストのフレームデータであるか、基地局AP1が指向性ビーム制御を行っているならば指向性ビームを形成して送信するであろうユニキャストのフレームデータであるかを識別するためのものである。その際、受信フレーム種別検出部103は、受信制御部13で得たMACフレーム中の「タイプ」と「サブタイプ」などの情報を抽出して、これらから受信したフレームデータの種別、すなわち、ブロードキャストされるビーコンフレームであるか、ユニキャストされるオーセンティケーションフレーム/アソシエーションフレームであるかを識別していた。
【0284】
基地局AP1が指向性ビーム制御を行っているか否かの判断を行うため、ブロードキャストのフレームデータとユニキャストのフレームデータとを識別するには、上記の手法の他、基地局AP1から送信されるフレームデータ中の宛先アドレスをチェックすることによっても可能である。すなわち、受信フレーム種別検出部103は、受信したフレーム(図6に示したMACフレーム)の宛先アドレス(DA)をチェックして、それがブロードキャストアドレスである場合には、ブロードキャスされたフレームと判断し、自装置のアドレスである場合には、ユニキャストされたフレームであると判断することもできる。このようにして、受信したフレームが、ブロードキャストされたフレームか、ユニキャストされたフレームかを識別することができる。
【0285】
(第5の実施形態)
上記第4の実施形態では、基地局AP2が送信電力制御を行う場合について説明したが、第5の実施形態では、基地局AP2がキャリアセンスレベルを制御する場合について説明する。
【0286】
この場合も基本的には、第4の実施形態と同様である。すなわち、基地局AP2は、基地局AP1がブロードキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と当該受信データ対応の送信電力情報と、基地局AP1がユニキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と当該受信データ対応の送信電力情報とから、基地局AP1で指向性ビーム制御を行っているか否かを判断する。指向性ビーム制御を行っていると判断した際には、さらに、基地局AP2は、指向性の絞り具合が、SDMAを行うに充分であるか否かを判断してもよい。基地局AP1が(SDMAを行うに充分な指向性の絞り具合で)指向性ビーム制御を行っていると判断したときには、基地局AP2は、以後の自装置のキャリアセンスレベルを上げる方向に設定し直し、必要最小限にキャリアセンスの感度を抑えるように調節する。
【0287】
なお、この場合においても、前述した第4の実施形態の場合と同様に、基地局AP2は、基地局AP1がブロードキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と、基地局AP1がユニキャストで送信するデータを受信した際の受信電力とから、基地局AP1で指向性ビーム制御を行っているか否かを判断するようにしてもよい。
【0288】
図24は、第5の実施形態に係る基地局AP2の要部の構成例を示したもので、図18と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。すなわち、図24において、キャリアセンス制御部109が新たに追加されている。
【0289】
第4の実施形態と同様、基地局AP1もアダプティブアレイアンテナを有し、図24に示した構成で、基地局AP2と同様に送信電力制御を行うものであってもよい。以下、基地局AP2を例にとり説明するが、基地局AP1も同様である。
【0290】
キャリアセンス制御部109は、ビーム利得推定部105でSDMAが可能と判断したときは、自装置のCSMAにおけるキャリアセンスレベルをその機能が損なわれない程度に高く設定し、キャリアセンスの感度を抑えるように調節する。なお、キャリアセンスレベルを上げたり下げたりするための回路は公知である。
【0291】
キャリアセンス制御部109でキャリアセンスレベルを設定するタイミングは、第4の実施形態の送信電力制御の場合と同様である。すなわち、図20のステップS107,図22のステップS155,図23のステップS162での送信電力の設定と同時に、あるいは、送信電力の設定に換えて、キャリアセンス制御部109がキャリアセンスレベルを設定する。
【0292】
図25は、キャリアセンスレベル制御手順を説明するためのフローチャートである。なお、図21と同一部分には同一符号を付し、主に異なる部分について説明する。
【0293】
図25のステップS201〜ステップS203は、図21と同様である。すなわち、ビーム利得推定部105は、図20のステップS106,図22のステップS154,図23のステップS161において、図21で説明したように、基地局AP1がブロードキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と当該受信データ対応の送信電力情報と、基地局AP1がユニキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と当該受信データ対応の送信電力情報とから、基地局AP1で指向性ビーム制御を行っているか否かを判断する(ステップS201)。指向性ビーム制御を行っていると判断したときは、ビーム利得推定部105は、さらに、基地局AP1での指向性の絞り具合が、SDMAを行うに充分であるか否かを判断する(ステップS202〜ステップS203)。
【0294】
なお、図25においても、前述同様、送信電力情報を用いずに、基地局AP1がブロードキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と、基地局AP1がユニキャストで送信するデータを受信した際の受信電力とから、基地局AP1で指向性ビーム制御を行っているか否かを判断してもよい。
【0295】
例えば、指向性ビームの利得のレベルが、所定レベル以上のとき、SDMAが可能であると判断する(ステップS201〜ステップS203)。なお、第4の実施形態の場合と同様、ステップS202〜ステップS203の判断処理はなくてもよく、この場合は、ステップS201で、基地局AP1が指向性ビーム制御を行っていると判断したときは、ステップS202、ステップS203をスキップして、ステップS205へ進む。
【0296】
ステップS203で、ビーム利得推定部105がSDMAが可能であると判断したときには、キャリアセンス制御部109は、自装置のキャリアセンスレベルを例えば、予め定められたレベルだけ上げて、キャリアセンスの感度を抑えるように設定する(ステップS205)。以後、この設定されたキャリアセンスレベルを用いてキャリアセンスを行う。
【0297】
以上説明したように、上記第5の実施形態によれば、基地局AP2は、基地局AP1がブロードキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と、基地局AP1がユニキャストで送信するデータを受信した際の受信電力とから、基地局AP1で指向性ビーム制御を行っているか否かを判断する。指向性ビーム制御を行っていると判断した際には、さらに、指向性の絞り具合が、SDMAを行うに充分であるか否かを判断するようにしてもよい。基地局AP1が(SDMAを行うに充分な指向性の絞り具合で)指向性ビーム制御を行っていると判断したときには、自装置のキャリアセンスレベルを上げる(キャリアセンスの感度を最小限度抑える)。このように、基地局AP2は、キャリアセンスの感度を最小限度抑えることにより、その後のキャリアセンスの際に、基地局AP2は、基地局AP1が第1のBSS内の端末STA11、STA12や、さらに他の基地局との通信の際に発する電波を検知することが少なくなる。従って、基地局AP2は、基地局AP1の通信相手が存在しないものと判断し、IEEE802.11に規定されているNAV(Network Allocation Vector)を設定することがない(NAVが設定されると、基地局AP2はNAVにて指定された時間、基地局AP1へのアクセスを控えることになる)ので、基地局AP1に対し、フレームの送信を開始することができる。
【0298】
また、基地局AP2は、基地局AP1がブロードキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と当該受信データ対応の送信電力情報と、基地局AP1がユニキャストで送信するデータを受信した際の受信電力と当該受信データ対応の送信電力情報とから、基地局AP1で指向性ビーム制御を行っているか否かを判断する。指向性ビーム制御を行っていると判断した際には、さらに、指向性の絞り具合が、SDMAを行うに充分であるか否かを判断するようにしてもよい。基地局AP1が(SDMAを行うに充分な指向性の絞り具合で)指向性ビーム制御を行っていると判断したときには、自装置のキャリアセンスレベルを上げる(キャリアセンスの感度を最小限度抑える)。このように、基地局AP2は、キャリアセンスの感度を最小限度抑えることにより、その後のキャリアセンスの際に、基地局AP2は、基地局AP1が第1のBSS内の端末STA11、STA12や、さらに他の基地局との通信の際に発する電波を検知することが少なくなる。従って、基地局AP2は、基地局AP1の通信相手が存在しないものと判断し、IEEE802.11に規定されているNAV(Network Allocation Vector)を設定することがない(NAVが設定されると、基地局AP2はNAVにて指定された時間、基地局AP1へのアクセスを控えることになる)ので、基地局AP1に対し、フレームの送信を開始することができる。
【0299】
なお、基地局AP2は、図24に示したように、上記キャリアセンス制御部109と前述した送信電力制御部106を合わせ持ち、キャリアセンスレベルと、送信電力とをともに制御するようにしてもよいし、いずれか一方のみを制御するようにしてもよい。いずれであっても、本発明の要旨を逸脱するものではない。
【0300】
また、基地局AP2は、上記キャリアセンス制御部109と前述した送信電力制御部106のいずれか一方のみを持つような構成であってもよい。
【0301】
(第6の実施形態)
IEEE802.11では、RTS/CTSというアクセス制御方式を定めている。これは、図6に示したMACフレームの制御フレームを使って送信権を確保する方法である。なお、RTS/CTS制御では、RTSフレームとCTSフレームを用いるが、RTSフレームであるか、CTSフレームであるかは、MACヘッダーにあるフレームコントロール中の「タイプ」と「サブタイプ」で判断することができる。
【0302】
このRTS/CTS制御方式を図15の無線通信システムにも適用可能である。この場合、基地局AP1が基地局AP2からRTSフレームを受信すると、その応答として当該基地局AP2に返すCTSフレームは当該基地局AP2向けに設定された指向性ビームを用いて送信される。そこで、この点に着目し、上記第4、第5の実施形態と同様にして、基地局AP2では、受信したビーコンフレームの送信電力情報と受信電力、受信したCTSフレームの送信電力情報と受信電力とから、送信電力や、キャリアセンスレベルの制御を行うものである。あるいは、基地局AP2では、受信したビーコンフレームの受信電力と、受信したCTSフレームの受信電力とから、送信電力やキャリアセンスレベルの制御を行うものである。
【0303】
それ以外は、前述の第4,第5の実施形態とほぼ同様であるので、以下、簡単に第6の実施形態について説明する。
【0304】
送信要求の生じた基地局AP2は、基地局AP1に対し、RTSフレームを送信する。その際、当該基地局AP1へ向けたデータ送信の際に送信電力制御部106で以前に設定された送信電力があるときは、その送信電力でRTSフレームを送信する。そうでないときは、予め定められたデフォルトの送信電力で送信するようにしてもよい。
【0305】
基地局AP1は、RTSフレームを受信すると、そのときの受信電力などを基に、基地局AP2へ向ける指向性ビームを設定する。すなわち、基地局AP2の存在する方向対応の上記重み係数を設定する。
【0306】
基地局AP1は、この設定された指向性ビームを用いて基地局AP2宛てに、CTSフレームを送信する。このCTSフレームには、前述同様、送信電力情報が含まれていてもよい。
【0307】
アンテナ20あるいは指向性アンテナ2あるいはアダプティブアレイアンテナ25を介して受信したデータが、受信フレーム種別検出部103で、CTSフレームであると判断されたときは、ビーム利得推定部105には、受信電力測定部102で測定された当該フレームの受信電力と、送信電力検出部104から当該フレームから抽出された、あるいは、CTSフレーム対応に予め記憶していた送信電力情報が入力される。
【0308】
このとき、ビーム利得推定部105と送信電力制御部106は、上記CTSフレームの受信電力と送信電力情報と、例えば、図20のステップS102で得た、受信したビーコンフレームの受信電力と送信電力情報とを用いて、図21に示したような処理を行い、送信電力の設定を行う。
【0309】
あるいは、図25に示したような処理を行いキャリアセンスレベルの設定を行う。
【0310】
あるいは、送信電力の設定とキャリアセンスレベルの設定を同時に行うようにしてもよい。
【0311】
なお、この場合においても前述したように、ビーム利得推定部105には、受信電力測定部102で測定された当該フレームの受信電力のみを入力するようにして、この受信電力から送信電力の設定を行うようにしてもよい。
【0312】
上記の説明は、基地局AP2から基地局AP1へRTSフレームを送信する場合であるが、逆に、基地局AP1から基地局AP2へRTSフレームを送信する場合もある。
【0313】
次に、基地局AP1から基地局AP2へRTSフレームを送信する場合を説明する。
【0314】
この場合、基地局AP1は、以前に、通信相手とする基地局AP2から送信されてきたフレームデータを受信したことがあるときは、そのときの受信電力などを基に、当該基地局AP2向けに指向性ビームを設定して、RTSフレームを送信する。
【0315】
そこで、この点に着目し、上記第4,第5の実施形態と同様にして、基地局AP2では、受信したビーコンフレームの送信電力情報と受信電力、受信したRTSフレームの送信電力情報と受信電力とから、送信電力や、キャリアセンスレベルの制御を行うこともできる。
【0316】
すなわち、基地局AP2がアンテナ20あるいは指向性アンテナ2あるいはアダプティブアレイアンテナ25を介して受信したデータが受信パケット種別検出部103で、RTSフレームであると判断したときは、ビーム利得推定部105には、受信電力測定部102で測定された当該フレームの受信電力と、送信電力検出部104から当該フレームから抽出された、あるいは、RTSフレーム対応に予め記憶していた送信電力情報を入力する。
【0317】
このとき、ビーム利得推定部105と送信電力制御部106は、上記RTSフレームの受信電力と送信電力情報と、例えば、図20のステップS102で得た、受信したビーコンフレームの受信電力と送信電力情報とを用いて、図21に示したような処理を行い、送信電力の設定を行う。
【0318】
これと同時に、あるいは、送信電力の設定の代わりに、図25に示したような処理を行いキャリアセンスレベルの設定を行ってもよい。
【0319】
なお、この場合においても、前述同様、ビーム利得推定部105と送信電力制御部106は、ビーコンフレームの受信したときに測定された受信電力のみを用いて送信電力の設定を行うようにしてもよい。
【0320】
基地局AP2で、上記のようにして、送信電力制御が行われて、新たな送信電力が設定されたときは、その設定された送信電力で、基地局AP1宛てにCTSフレームを送信する。
【0321】
基地局AP1は、CTSフレームを受信すると、そのときの受信電力などから、当該基地局AP2向けの指向性ビームを設定し直して、その後の当該基地局AP2との通信に用いる。
【0322】
このようにして、上記第6の実施形態の場合も、第4,第5の実施形態の場合と同様な効果を得ることができる。
【0323】
なお、上記第4〜第6の実施形態において、基地局AP2は、図19の受信モード(ステップS2)、オーセンティケーション(ステップS4)、アソシエーション(ステップS5)、通信中(ステップS6)、ディスアソシエーション(ステップS7)、ディオーセンティケーション(ステップS8)のいずれにおいても、原理的には、ビーコンフレームを受信することができる。従って、基地局AP2は、ビーコンフレームを受信した後に、自装置宛てに送信された(ユニキャストの)フレームを受信すれば、図21,図25に示した送信電力制御やキャリアセンスレベル制御はいつでも行える。
【0324】
(追記)
以上第1〜第6の実施形態では、2つの基地局間について説明したが、この手法を用いて3つ以上の基地局間を無線通信で接続することも可能である。特に、各基地局が指向性アンテナを有している場合、複数の基地局をシリアルに接続するばかりか、ツリー状、リング状、メッシュ状に接続することも可能である。
【0325】
このように、新たに無線接続する基地局を1つに限らず、複数設置することができ、通信エリアの拡大、または劣悪な無線通信環境下の端末局の通信品質向上に迅速かつより柔軟に対応することができる。
【0326】
また、上記第1〜第6の実施形態は適宜組み合わせて用いることができる。
【0327】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明は含まれており、開示される複数の構成用件における適宜な組み合わせにより、種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題(の少なくとも1つ)が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果(のなくとも1つ)が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0328】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、基地局間の無線接続・無線通信が容易に行える。また、容易に新たな基地局を設置することができ、通信エリアの拡大を図ることができる。
【0329】
また、複数の端末に接続する複数の基地局間の通信が基地局と端末との間の無線通信から影響を受けることなく、また、基地局と端末との間の無線通信に影響を与えることなく効率よく行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線LANシステムの全体の構成例を示した図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る他の無線LANシステムの全体の構成例を示した図。
【図3】基地局装置の機能ブロック図を示した図。
【図4】端末装置の機能ブロック図を示した図。
【図5】基地局AP1とAP2間で通信を行う際に、互いに基地局であることを認識し合うまでの手順を説明するためのフローチャート。
【図6】IEEE802.11に規定されているMACフレームについて説明するための図。
【図7】アドレステーブルの一例を示した図。
【図8】DS通信の一例を示した図。
【図9】MACフレームのアドレスフィールドの利用方法を説明するための図。
【図10】2つの基地局を介した無線通信の手順を説明するためのシーケンス。
【図11】基地局および端末におけるデータフレームの受信時の処理を説明するためのフローチャート。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る無線LANシステムの要部の構成例を示した図。
【図13】指向性アンテナ2の構成例を示した図。
【図14】基地局AP1とAP2間で通信を行う際に、互いに基地局であることを認識し合うまでの手順を説明するためのフローチャート。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る無線LANシステムの要部の構成例を示した図。
【図16】基地局装置の構成例を示した図。
【図17】アダプティブアレイアンテナの構成例を示した図。
【図18】送信電力制御を行う基地局装置の要部の構成例を示した図。
【図19】基地局装置の処理動作を説明するためのフローチャート。
【図20】基地局間でデータを送受信する際の送信電力制御手順について説明するための図。
【図21】基地局の送信電力制御手順を説明するためのフローチャート。
【図22】基地局間でデータを送受信する際の送信電力制御手順について説明するための図で、共有鍵(Shared key)のオーセンティケーションをする場合を示している。
【図23】基地局間でデータを送受信する際の送信電力制御手順について説明するための図で、アソシエーションの際に送信電力制御を行う場合を示している。
【図24】キャリアセンスレベルの制御を行う基地局装置の構成例を示した図。
【図25】基地局装置のキャリアセンスレベルの制御手順を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
AP1、AP2…基地局(基地局装置)
STA11、STA12、STA21、STA22…端末(端末装置)
2…指向性アンテナ
11、11−1〜11−3…受信機
12、12−1〜12−3…送信機
13…受信制御部
14…送信制御部
20、200…アンテナ
21…アドレステーブル
22、110…タイマ
25…アダプティブアレイアンテナ
100…管理装置
102…受信電力測定部
103…受信フレーム種別検出部
104…送信電力検出部
105…ビーム利得測定部
106…送信電力制御部
109…キャリアセンス制御部
200…アンテナ
201…受信部
207…送信部
208…情報処理部
210…タイマ
Claims (20)
- 中継機能を有する基地局装置であって、
他の基地局装置と無線接続する際に当該他の基地局装置との間で行う認証過程の中で、自局が前記中継機能を有する基地局装置であることを前記他の基地局装置へ認識させるための第1のデータを含む第1のフレームを当該他の基地局装置へ送信する送信手段、
を具備したことを特徴とする基地局装置。 - 前記他の基地局装置からブロードキャストされる同期信号に基づき、当該他の基地局装置へフレームを送信する際の送信タイミングを、当該他の基地局装置がフレームを送信する際の送信タイミングに同期させる手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
- 前記基地局装置宛てでないデータフレームを受信した際、当該データフレームが、前記基地局装置及び当該基地局装置に無線接続している複数の端末装置の間、もしくは前記複数の端末装置間で送受信されたデータフレームであるという条件を満たすか否かを判定し、前記条件を満たすときに、前記他の基地局装置へのフレームの送信及び前記複数の端末装置へのフレームの送信を抑制するよう制御する手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
- 前記第1のフレームを送信するために、前記他の基地局装置向けに指向性パターンを形成する手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
- 前記基地局装置に無線接続する複数の端末装置との間でフレームを送受信する際には、無指向性パターンを形成する手段をさらに具備したことを特徴とする請求項4記載の基地局装置。
- 前記他の基地局装置から送信されたフレームを受信した際、当該受信フレームの受信電力を測定する測定手段と、
前記他の基地局装置からの各受信フレームの種別を検出する検出手段と、
前記他の基地局装置からの各受信フレームについて、前記測定手段で測定された受信電力と前記検出手段で検出された種別とに基づき、前記他の基地局装置が前記基地局装置宛てのフレームを送信する際に当該基地局装置向けに指向性パターンを形成しているか否かを判断する判断手段と、
この判断手段での判断結果に基づき、前記他の基地局装置へフレームを送信する際の送信電力と、キャリアセンスレベルのうちの少なくとも一方を調節する調節手段と、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の基地局装置。 - 前記他の基地局装置から送信されたフレームを受信した際、当該受信フレームの受信電力を測定する測定手段と、
前記他の基地局装置からの各受信フレームの種別を検出する第1の検出手段と、
前記他の基地局装置がフレームを送信する際に用いた送信電力を検出する第2の検出手段と、
前記他の基地局装置からの各受信フレームについて、前記測定手段で測定された受信電力と前記第1の検出手段で検出された種別と前記第2の検出手段で検出された送信電力とに基づき、前記他の基地局装置が前記基地局装置宛てのフレームを送信する際に当該基地局装置向けに指向性パターンを形成しているか否かを判断する判断手段と、
この判断手段での判断結果に基づき、前記他の基地局装置へフレームを送信する際の送信電力と、キャリアセンスレベルのうちの少なくとも一方を調節する調節手段と、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の基地局装置。 - 前記他の基地局装置から送信されたブロードキャストフレームを受信した際、当該受信したブロードキャストフレームの受信電力を測定する第1の測定手段と、
前記他の基地局から送信された前記基地局装置宛てのユニキャストフレームを受信した際、当該受信したユニキャストフレームの受信電力を測定する第2の測定手段と、
前記第1の測定手段で測定された受信電力と前記第2の測定手段で測定された受信電力とを基に、前記他の基地局装置が前記ユニキャストフレームを送信する際に当該基地局装置向けに指向性パターンを形成しているか否かを判断する判断手段と、
この判断手段での判断結果に基づき、前記他の基地局装置へフレームを送信する際の送信電力と、キャリアセンスレベルのうちの少なくとも一方を調節する調節手段と、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の基地局装置。 - 前記他の基地局装置から送信されたブロードキャストフレームを受信した際、当該受信したブロードキャストフレームの受信電力を測定する第1の測定手段と、
前記他の基地局装置が、前記ブロードキャストフレームを送信する際に用いた送信電力を検出する第1の検出手段と、
前記他の基地局装置から送信された前記基地局装置宛てのユニキャストフレームを受信した際、当該受信したユニキャストフレームの受信電力を測定する第2の測定手段と、
前記他の基地局装置が、前記ユニキャストフレームを送信する際に用いた送信電力を検出する第2の検出手段と、
前記第1の測定手段で測定された受信電力と前記第2の測定手段で測定された受信電力と、前記第1の検出手段で検出された送信電力と前記第2の検出手段で検出された送信電力とを基に、前記他の基地局装置が前記ユニキャストフレームを送信する際に当該基地局装置向けに指向性パターンを形成しているか否かを判断する判断手段と、
この判断手段での判断結果に基づき、少なくとも、前記他の基地局装置へフレームを送信する際の送信電力と、キャリアセンスレベルのうちの少なくとも一方を調節する調節手段と、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の基地局装置。 - 前記判断手段で前記他の基地局装置が前記基地局装置向けに指向性パターンを形成していると判断したときは、
前記調節手段は、前記送信電力を抑制する調節と、前記キャリアセンスレベルの感度を抑制する調節とのうちの少なくともいずれか一方の調節を行うことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1つに記載の基地局装置。 - 前記他の基地局装置へのフレームの送信及び前記複数の端末装置へのフレームの送信を予め定められた時間抑制することを特徴とする請求項3記載の基地局装置。
- 前記第1のフレームは、IEEE802.11で規定されているMACフレームのオーセンティケーションフレーム及びアソシエーションフレームのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
- 前記第1のフレーム中の前記第1のデータを含むフィールドは、前記基地局装置と当該基地局装置に接続する端末装置との間の認証過程及び当該基地局装置に接続する端末装置間の認証過程では利用されていないフィールドであることを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
- 前記第1のフレーム中のToDSフィールドとFromDSフィールドのうちの少なくとも1つが、前記第1のデータを含むことを特徴とする請求項12記載の基地局装置。
- 前記第1のフレーム中のcapability informationフィールドが、前記第1のデータを含むことを特徴とする請求項12記載の基地局装置。
- 複数の端末装置と、当該複数の端末装置と無線接続可能な基地局装置を含む通信システムであって、
前記基地局装置は、
他の基地局装置と無線接続する際に当該他の基地局装置との間で行う認証過程の中で、自局が基地局であることを前記他の基地局装置へ認識させるための第1のデータを含む第1のフレームを送信する送信手段、
を具備し、
前記基地局装置に接続する端末装置は、
当該端末装置宛てでないデータフレームを受信した際、当該データフレームが前記基地局装置及び当該基地局装置に無線接続する前記複数の端末装置の間、もしくは前記複数の端末装置間で送受信されるデータフレームであるという条件を満たすか否かを判定し、前記条件を満たすときに、当該基地局装置と、当該複数の端末装置のうちの当該端末装置以外の端末装置とに対するフレームの送信を抑制するよう制御する手段
を具備したことを特徴とする通信システム。 - 前記端末装置は、前記基地局装置と、当該基地局装置に接続する前記複数の端末装置のうちの当該端末装置以外の端末装置とに対するフレームの送信を予め定められた時間抑制することを特徴とする請求項16記載の通信システム。
- 前記基地局装置は、
前記基地局装置宛てでないデータフレームを受信した際、当該データフレームが、前記基地局装置及び当該基地局装置に無線接続している前記複数の端末装置の間、もしくは前記複数の端末装置間で送受信されたデータフレームであるという条件を満たすか否かを判定し、前記条件を満たすときに、前記他の基地局装置へのフレームの送信及び前記複数の端末装置へのフレームの送信を抑制するよう制御する手段をさらに具備したことを特徴とする請求項16記載の通信システム。 - 中継機能を有する基地局装置におけるフレーム送信方法であって、
他の基地局装置と無線接続する際に当該他の基地局装置との間で行う認証過程の中で、前記中継機能を有する基地局装置であることを前記他の基地局装置へ認識させるための第1のデータを生成するステップと、
前記第1のデータを、前記認証過程で当該他の基地局装置へ送信すべき第1のフレームに含ませて送信するステップと、
を含むフレーム送信方法。 - 前記基地局装置宛てでないデータフレームを受信した際、当該データフレームが、前記基地局装置及び当該基地局装置に無線接続している複数の端末装置の間、もしくは前記複数の端末装置の間で送受信されたデータフレームであるという条件を満たすか否かを判定するステップと、
前記データフレームが前記条件を満たすときに、前記他の基地局装置へのフレームの送信及び前記複数の端末装置へのフレームの送信を抑制するよう制御するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項19記載のフレーム送信方法。
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