JP4726325B2 - 水密・気密性3次元構造布の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアーデッキ、エアージャッキ、エアーマット、エアークッション、ウォーターベッド、水嚢、土嚢、砂嚢、救命具、断熱材、遮音材、電磁バリア材等としての使用に適した水密・気密性3次元構造布に関し、特に、相対する2枚の織布を連結糸により適宜の間隔をあけて連結して構成される3次元構造布を基布とする水密・気密性に優れた素材(これを、本発明では「水密・気密性3次元構造布」と称す)を連続生産する途上で、またこの水密・気密性3次元構造布による2次加工成型品を成型する途上で、相対する2枚の織布の位置ズレの発生をより確実に防止することのできる水密・気密性3次元構造布に関する。
【0002】
【技術背景】
従来、上記のような3次元構造布の表面にエアーあるいは水不透過性被膜を形成した素材を用いたウォーターベット、マットレス、クッション、枕、コンクリート用型枠等が提案されている(特開平4−295308号、同7−67749号、同9−151604号、実開平4−16952号、同7−7630号公報参照)。
【0003】
これらの公報には、上記のエアーあるいは水不透過性被膜として合成樹脂やゴムが使用できる旨を記載すると共に、合成樹脂やゴムを3次元構造布の相対する2枚の織布の表面に積層する方法としてコーティング法、トッピング法等の他に、織布表面に接着剤を介して合成樹脂シートやゴムシートをラミネートする方法等が使用できる旨をも記載している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
コーティング法やラミネート法では、3次元構造布の上側織布及び下側織布の表面に、良好なエアーあるいは水不透過性の被膜を形成することは可能であるが、トッピング法(カレンダーによるトッピング)では、トッピング工程中に、3次元構造布にシワが発生し、3次元構造布の上側織布及び下側織布の表面に、良好なエアーあるいは水不透過性の被膜を形成することが不可能な場合が多い。
【0005】
トッピング法であっても、カレンダーロールの速度調整や、ロール状の3次元構造布の巻出し速度と、製造された水密・気密性3次元構造布のロール状への巻取り速度の調整等により、良好な水密・気密性3次元構造布が製造できることもある。
しかし、良好な水密・気密性3次元構造布ができたとしても、3次元構造布の上側織布と下側織布との位置ズレが生じることが多く、このような位置ズレが生じた状態で、ロール状に巻かれて製品構造布とされる。
【0006】
ロール状の製品構造布は、一般にはロール状のまま、裁断・張り合わせ・成型等の2次加工工程に移送され、ロールから繰り出されて、2枚の織布が接触した状態で(すなわち、連結糸が2枚の織布間で伸びて、又は正常な位置からズレて、折り畳まれ、2枚の織布間の空間が存在しない状態で)、これらの2次加工が施される。
【0007】
このとき、ロールから繰り出される製品構造布は、上記のような位置ズレが生じた状態にあると、裁断・張り合わせ・成型等の2次加工が全て、上記2枚の織布の位置が正常な位置からズレた状態で行われることになり、効率の良い2次加工が不可能であるばかりか、得られる2次加工成型品にも歪みが生じ、高品質の成型品にはならない。
【0008】
しかも、上記した従来の各方法で製造される水密・気密性3次元構造布はいずれも、上側織布と下側織布との位置関係が固定されておらず、連結糸の長さだけ上下左右の方向にズレるのが一般的である。上側織布と下側織布とがズレたままで、上記の裁断等の2次加工を行えば、上記のように、得られる2次加工成型品に歪みが生じることは必至であり、高品質の成型品は得られない。
【0009】
従って、歪みのない高品質な2次成型品を得るためには、上側織布と下側織布との位置関係を正常な状態に修正し、2次加工を行わなければならない。
しかし、上側織布と下側織布との位置関係を正常な状態に修正することは、きわめて困難であり、多大の手間が掛かり、2次加工を効率的に行うことは不可能である。
【0010】
そこで、本発明者らは、上記の問題を解決するために、2枚の織布と連結糸との位置合わせをして両耳部を縫合する手法、両耳部の縫合と共に織布に積層する合成樹脂やゴムを積極的にブロッキングして2枚の織布の内面同士を所定の強度で付着させる手法を提案している(特開平11−342047号公報参照)。これらの手法では、きわめて良好な位置ズレ防止効果が得られるが、両耳部のみの縫合では、耳部間が余り大きくない寸法の2次加工成型品では予想以上の効果を得ることができるものの、両耳部間が大きい寸法の2次加工成型品では、中央部分の領域で中だるみが生じ、ブロッキングの併用では、ブロッキング強度の制御が煩雑等の問題が生じる場合がある。
【0011】
本発明は、上記の水密・気密性3次元構造布を連続生産する上で、また該構造布による2次加工成型品を成型する上で、相対する2枚の織布の位置ズレの発生を確実に防止して、効率的な2次加工を可能とし、かつ高品質の2次成型品を得ることのできる水密・気密性3次元構造布を、安価に提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決する手段】
本発明の水密・気密性3次元構造布の製造方法は、上記目的を達成するために、相対する2枚の織布が多数の連結糸により適宜の間隔をあけて連結された3次元構造布を基布とし、前記基布の両耳部間の1カ所又は複数カ所が仮止めされた後に、前記2枚の織布の表面側に合成樹脂層又はゴム層が積層されてなり、かつ前記仮止めが2次加工成型品化後に開放され、前記仮止めの強度が、連結糸による織布同士の連結強度よりも弱く、及び/又は、前記仮止めが、流体の噴入による加圧で開放されることを特徴とする。
このとき、仮止めは、仮縫い、接着剤による仮接着、水溶性合成樹脂製の針による部分止め、前記連結糸の一部のうちの少なくとも1つであってよく、また仮止めの強度は、連結糸よりも弱いか、気体や液体等の流体の噴入による加圧で開放される程度か、これら両者を合わせて満足する程度であってよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、基布となる3次元構造布は、市販のものがそのまま使用できる。図1は、この3次元構造布の1構成例を説明するための模式図である。
図1において、1,1は相対する2枚の織布で、これら2枚の織布が、多数の連結糸2,2・・・により、各連結糸2,2・・・の長さ分の間隔Lをあけて連結されている。この間隔Lの寸法は、連結糸2,2・・・の長さを適宜選定することにより適宜のものに選定することができるため、所望する2次成型品の寸法(特に、厚さ)に応じて、所望の間隔Lを有する3次元構造布を選定すればよいが、通常は、用途に応じて、1〜50cm程度、好ましくは3〜30cm程度から選ばれる。
【0014】
基布の3次元構造布を構成する織布としては、木綿、絹、麻、ウール、レーヨン、ビニロン、ビニリデン、ナイロン、ポリエステル、アクリル、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維、ロックウール、金属繊維等のあらゆる繊維からなる織布を用いることができる。
【0015】
本発明では、図2に示すように、相対する2枚の織布1,1と連結糸との位置合わせをして、1カ所又は複数カ所(図2では、3カ所)に仮止め4をする。
また、両耳部E,Eをオーバーロック等により縫合Rする。この縫合Rは、本発明では必須のものではないが、両耳部E,Eが縫合されていれば、合成樹脂やゴムの積層時に織布1,1の端部がめくれてシワが発生するような事態を防ぐことができる等の効果を得ることができる。両耳部E,Eの縫合Rを行う場合は、両耳部E,E間に行う仮止め4と異なる手法で行ってもよいし、同じ手法で行ってもよい。
仮止め4の手法および耳部縫合Rの手法として、先ず、仮縫いを採用する場合について説明する。
仮縫い4と耳部縫合(すなわち、耳部の仮縫合)Rは、3次元構造布を織成した後に行うこともできるし、3次元構造布の織成の際に織成と同時に行うこともできる。また、仮縫い4と耳部仮縫合Rは、どちらを先に行ってもよいし、同時に行うこともできる。
3次元構造布を織成した後に仮縫い4や耳部仮縫合Rをする場合は、相対する2枚の織布1,1と連結糸2,2・・・とを位置合わせする必要があるが、後者の3次元構造布を織成すると同時に仮縫い4や耳部仮縫合Rをする場合は、この位置合わせの必要がない。
【0016】
仮縫い4の強度は、連結糸2,2・・・による織布1,1同士の連結強度よりも弱く、エアーや水等の流体の噴入による加圧で開放される程度とすることが好ましい。
例えば、仮縫い4に用いる糸として、連結糸2よりも引っ張り強度が小さく、気密・水密状態の2次加工成型品内にエアーや水等を噴入して加圧した際に切断できる程度のものとすることが挙げられ、このような糸を用いれば、2次加工を行った後に、成型品内部にエアーや水等の流体を噴入することで、仮縫い4の糸を切断することができる(なお、耳部仮縫合Rは、2次加工途上で切り取られたり、2次加工成型品中に取り込まれる等のために、2次加工後の始末は不要であり、従って耳部仮縫合Rに用いる糸は、仮縫い4に用いる糸と同じであっても、これより強い糸であってもよい)。
一例を挙げれば、仮縫い4の糸を恒長式番手(テックス)(一定の長さ《L》の糸に対する糸の質量《W》を表し、その数値《D》はD=L/Wで表される)で25〜35番手のものとすると、仮縫い4の作業も行い易く、かつ仮縫い4の糸を切断する場合にも、2次加工により気密・水密性を持たせた成型品内部にエアーや水を噴入するだけで容易に切断することができる。
また、連結糸と同程度の強度を有する糸、あるいは2次加工成型品を縫製する際に用いる通常の糸等を用い、仮縫い4のカ所を、図2に示すように連続させず、断続的にしたり、あるいはパターン化して部分的にする等して、少ないカ所で仮縫い4をし、仮縫い4全体の強度を上記程度とすることもできる。
【0017】
更に、仮縫い4の糸として、水溶性の合成樹脂からなる糸を使用すれば、気密・水密性の成型品内部に水や温湯を注入することにより、容易に切断することができる。
この場合の仮縫い4の強度は特に制限しないが、合成樹脂層3,3の積層工程や2次加工工程中で、仮縫い4の効果がなくなってしまわない程度とすること重要である。
【0018】
加えて、仮縫いの糸を切断するに際しては、細く強度の低い糸が切断し易く好ましいが、大量生産に際しては、太く強度の高い糸でなければ、作業中に糸が切れ、その度に作業の中断を余儀なくされる。つまり、仮縫い等の作業時には糸の強度が高く、仮縫い部分の解放時(仮縫い糸の切断時)には糸の強度が低くなるような糸が好ましい。
そこで、仮縫い4の糸として、水溶性の合成樹脂と非水溶性の合成樹脂からなる混紡糸や、水溶性の合成樹脂からなる糸と非水溶性の合成樹脂からなる糸の混合糸(例えば、複数種の繊維を縒り合わせた糸や、芯鞘型構造の糸等)を用い、仮縫い等の作業の後に、湯通し等を行って、水溶性の合成樹脂部分を溶かし、仮縫い糸の強度を低下させることにより、仮縫い4部分の解放(糸の切断)を容易にすることができる。
【0019】
次いで、図2に示す仮縫い4がなされ、両耳部E,Eが仮縫合Rされた態様の3次元構造布の2枚の織布1,1の表面に合成樹脂層3,3を積層する。
この合成樹脂としては、エアーデッキ、エアージャッキ、エアーマット、エアークッション、ウォーターベット、水嚢、救命具等の2次成型品とした場合に、成型品内部(すなわち、水密・気密性3次元構造布の基布内部)にエアーや水等の流体を充填して成型品を膨張することができる柔軟性を有するものを使用する。
具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらは架橋剤等を使用した架橋可能なものであってもよく、耐熱性、耐久性等の点からは、架橋可能な合成樹脂が好ましい。
【0020】
上記織布1,1表面への合成樹脂層3,3の積層方法は、特に制限されず、合成樹脂液をドクターナイフコート法、ロールコート法、リバースロールコート法等のコーティング法により塗布し乾燥する方法、合成樹脂フィルムを接着剤によりラミネートするフィルムラミネーション法、合成樹脂を熱ロールで混練しカレンダーでトッピングする方法等が採用できる。
【0021】
合成樹脂として架橋剤を配合した架橋可能な合成樹脂を使用する場合は、合成樹脂を架橋させるための加熱キュア工程が必要である。
加熱キュアは、合成樹脂層積層後の3次元構造布を、加熱オーブン中を通したり、加熱ドラムとベルトとの間に挟持する等して行うことができる。
【0022】
合成樹脂層3,3はそれぞれ、1層としてもよいし、複数層とすることもでき、厚さは100〜3000μm、好ましくは100〜1500μmである。
なお、合成樹脂3,3の積層は、相対する2枚の織布1,1のそれぞれの表面に同時に行ってもよいし、片面ずつ行ってもよい。
【0023】
また、本発明では、上記の合成樹脂層3,3に代えて、ゴム層を、織布1,1の表面側に積層することもできる。
このゴム層の積層は、次のようにして行う。
先ず、上・下織布1,1の各表面側に未加硫ゴム層3,3を積層する。この未加硫ゴム層3,3は、上記の合成樹脂層3,3と同様に、それぞれ1層あるいは複数層とすることができる。未加硫ゴム層3,3の厚みはそれぞれ、100〜3000μm、より好ましくは100〜1500μmとする。
【0024】
この未加硫ゴム層3,3の積層方法は、通常のゴム引布の製造方法において行われている方法が採用できる。
すなわち、カレンダー加工や、押出機による押出加工等により分出し(sheeting)した未加硫ゴムシートを、両耳部E,Eを仮縫合Rし、これら両耳部E,E間の1カ所又は複数カ所(例えば3カ所)に仮止め(仮縫い4)した3次元構造布の織布1,1の表面にトッピングする方法や、ゴムを溶剤に溶解させたゴム溶液を該構造布の織布1,1の表面にコーティングし,乾燥、成膜化する方法等が採用できる。
前者の未加硫ゴムシートのトッピング方法の場合、3次元構造布の織布1,1には、未加硫ゴムシートとの接着性を向上させるために、予め、接着剤(ゴム系接着剤)を塗布しておくことが好ましい。
【0025】
なお、2枚の織布1,1の表面へのゴム層3,3の形成、言い換えれば3次元構造布表面へのゴム引きは、片面ずつ行うこともできるし、Z型カレンダー機等により両面同時に行うこともできる。
【0026】
ゴムとしては、通常のゴム引布に用いられるものであれば、全て適用可能である。具体的には、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンブタジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、シリコンゴム(SiR)、フッ素ゴム(FKM)、塩素化ポリエチレンゴム(CPE)、ポリウレタンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム(BR)、多加硫ゴム、エチレン酢酸ビニルゴム(EVA)等を挙げることができる。
中でも、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)は、耐熱性、耐寒性、耐候性等に特に優れており、前記したエアーデッキ、エアージャッキ、エアークッション、ウォーターベット、水嚢、土嚢、砂嚢、救命具、断熱材、遮音材としての使用に特に適している。
これらは、それぞれ単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。
また、これらのゴムには、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、その他、通常のゴム引布に用いられる各種の添加剤を配合することもできる。
【0027】
未加硫ゴム層3,3の加硫技術としては、オープン加硫(非加圧下での加硫)、ロート加硫(回転する加熱シリンダに巻掛けられて回転する無端ベルトの間に挟み、連続的に加圧して行う加硫)等が考えられる。
但し、オープン加硫の場合は、ゴム被膜と3次元構造布との密着性が十分にならなかったり、ゴム被膜自体の気密性も十分でないことがある上、ゴム被膜に気泡が発生することもあるため、本発明では、このような問題のないロート加硫技術を採用し、未加硫ゴム層を形成した3次元構造布を、加熱シリンダに巻掛けられて回転する無端ベルト間に挟んで、連続的に加圧加硫を行うことが好ましい。
【0028】
このロート加硫を行う装置は、特に制限されず、例えば、図3に模式的示すような通常のロート加硫装置20を使用することができる。
図3において、11,12,13,14はシリンダであり、これらのシリンダに巻掛けられて無端ベルト(スチールベルト等)15が矢印α方向に回転している。
これらのシリンダ11,12,13,14の全てにヒーターを内蔵させて加熱シリンダとしてもよいし、11,12,13の3つのシリンダ、あるいは12のシリンダのみを加熱シリンダとすることもできるし、図3に示すように、シリンダ12の近傍部にヒータ16を設けて、この部分を加熱ゾーンとすることもできる。
【0029】
ゴムをトッピングした3次元構造布、すなわち未加硫ゴムトッピング基布10aは、矢印β方向から送られて来て、シリンダ11,12,13と無端ベルト15との間に挟持され、このシリンダ11,12,13と無端ベルト15との間を通る際に加硫が行われる。この後、ガイドロール17を経て、所望により設けられるアフターキュア用の加熱炉18に送られ、製品引布10bとなってロール状に巻き取られる。
なお、シリンダ11,12,13と無端ベルト15との間を通る際に未加硫ゴムトッピング基布10aに加えられる圧力は、シリンダ14を2重矢印γ方向に移動させることによって調製させる
【0030】
次に、本発明では、仮止めとして、上記の仮縫い(仮縫合)の外に、以下に説明するような諸々の手法を用いることができる。
そのうちの1つは、接着剤による仮接着である。
この仮接着も、図2に示す仮縫い4の場合と同様に、両耳部E,E間の1カ所又は複数カ所に、連続的あるいはパターン化して部分的に行い、3次元構造布を織成した後、あるいは織成の際に行うことができ、また両耳部E,Eもオーバーロック等による仮縫合Rに代えて接着剤により仮接着することもできる。
【0031】
仮接着用の接着剤は、織布1,1を接着できるものであれば、どのようなものでもよいが、この接着剤による仮接着が、合成樹脂層3の積層時や2次加工時に容易に剥がれず、しかも連結糸2よりも接着強度が小さく、気密・水密性の2次加工成型品内部にエアーや水等の噴入による加圧で剥がれる程度の強度を発現するものが好ましい。
また、仮接着用の接着剤として、水溶性のものを用いると、水や温湯を充填することで、容易に剥離することができる。
【0032】
仮接着は、例えば、仮縫い4に使用するミシンや、耳部のオーバーロックRに使用するミシンを用い、仮縫い4用の針やオーバーロックR用の針に代えて、後端部付近から接着剤が連続して注入でき、この接着剤が先端部付近から織布を刺したときに注出できるように構成した針を装着し、仮縫いを行う場合と同様にして、行うことができる。
この針の一態様例を図4(A),(B)に模式的に示す。
図4(A)において、20は針本体であり、後端部201には例えばゴムパイプ21が接続されており、このパイプ21を介して針20内に接着剤が連続注入され、先端部202近傍には、針20の外部に突き抜け所定の回動角度で回動する突起221が設けられたバルブ22が設けられており、針20の先端部202が織布1を刺したときに、図4(B)に示すように、突起221が回動してバルブ22が開き、先端部202の若干上方に設けた開口部203から接着剤が二重矢印方向に注出され、仮縫い4の糸に代えて接着剤により仮接着がなされる。
また、バルブ22や突起221を具備しない針本体20のみからなる接着剤注入用針を用い、ゴムパイプ21の他端に接続されている接着剤容器(図示省略)内に一定の間隔(針本体20の先端部202が織布1を刺すタイミング)で圧を加え、この圧で接着剤が針本体20の開口部203から断続的に供給されるようにしてもよい。
【0033】
他の仮止め手法は、水溶性合成樹脂製の針による部分止めが挙げられ、これは例えばホッチキス様の留め具を用い、合成樹脂層3の積層時や2次加工時に容易に外れない程度の強度を発現するように、例えばパターン化して部分的に止める手法である。
この場合は、合成樹脂層やゴム層3,3の積層工程が、この針が存在していても良好に進行するように、針の太さや数等を調整することが好ましい。
また、針の材料となる水溶性合成樹脂は、気密・水密性の2次加工成型品内部に水が注入された際には容易に溶解し、しかも上記のホッチキス等の留め具での止めが可能な硬度を有するものを使用することが重要となる。
【0034】
更に他の仮止め手法は、上記した連結糸2,2・・・の一部を使用するものである。
すなわち、多数の連結糸2,2・・・の一部(これを便宜上「仮止め用糸」と言う)を、3次元構造布とするための連結糸(これを便宜上「3次元構造布用連結糸」と言う)の長さLよりも極く短くし、上・下2枚の織布1,1が、仮止め用糸が存在する部分で、接触するようにすればよく、図2の例で説明するなら、仮縫い4の部分や両耳部E,Eが仮止め用糸で構成されるものである。
この仮止め用糸による仮止め部分は、合成樹脂層3の積層時や2次加工時に容易に切れず(開放されず)、しかも気密・水密性の2次加工成型品内部にエアーや水等の充填による加圧で切れる(開放される)程度の強度を発現するようにすることが好ましい。
なお、耳部E,E間における仮止め用糸での仮止め部分は、上記の仮縫い4の場合と同様に、連続的であってもよいし、パターン化して部分的であってもよい。これらいずれの場合も、仮止め部分には、3次元構造布用連結糸2,2・・・が存在しないこととなるが、3次元構造布用連結糸2,2・・・の本数が極めて多い、言い換えれば密度が極めて高いため、2次加工成型品となった後に、この部分の連結が無くなっても、成型品の品質には何ら問題ない。
【0035】
以上のように、本発明における仮止めは、仮止め強度がエアー又は水等の流体の噴入による加圧で開放される程度の場合、また仮止め材料として水溶性の糸や針を使用する場合において、2次加工成型品の内部洗浄の際や、当該成型品の水密・気密等の品質検査の際等に、内部に噴入又は注入するエアーや水等により、容易に開放することができるため、このような内部洗浄あるいは品質検査の際に開放することが効率的である。
【0036】
また、仮止めは、以上の手法のいずれか1種類のみとしてもよいし、複数種類を適宜組み合わせることもできる。
更に、耳部E,Eのオーバーロック等による縫合あるいは接着剤等による固定は、上記のような強度の低い仮縫合や仮接着等の仮固定に限らず、強度の高い通常の縫合や接着等のような通常固定としてもよいことは言うまでもない。
【0037】
更に、本発明において、合成樹脂層やゴム層の積層面には、仮止め痕が残存する場合がある。
この仮止め痕を積極的に利用し、例えば、本発明による3次元構造布をエアーデッキとして使用する場合は、図5(A)に示すように、1人の腰掛けスペースの目印31をこの仮止め痕で付したり、跳び箱等の着地用マット等のように衝撃吸収用のエアーマット等においては、同図(B)に示すように、足形32を形成して着地目標を付したり、幼稚園や小学校等の施設等で使用する場合には、同図(C)に示すように、文字や花柄33を付したりのように種々の目的で使用することができる。
【0038】
【実施例】
実施例1
相対する2枚の長尺の織布1,1を、ナイロン糸(420デニール)で、縦糸を38本/インチ、横糸を40本/インチとし、連結糸2,2・・・を、ポリエチレンテレフタレート糸(500デニール)で、長さLを7cm、本数を10.5本/インチとして、織成した図1に示す3次元構造布を基布として用い、図2に示すように、該基布の両耳部E,Eをナイロン糸(420デニール)でオーバーロックで通常の縫合Rをし、かつ両耳部E,E間の3カ所を3次元構造布の長さ方向に、ポリエチレンテレフタレートとレーヨンの混合糸(30番手)で仮縫い4した。なお、本発明で言う番手は、恒長番手(テックス)を指す。
【0039】
この後、基布の相対する2枚の織布1,1それぞれの表面に、カレンダーにより、軟質塩化ビニル樹脂(PVC)3,3を厚み0.5mmとなるようにトッピングし、クーリングロールにより冷却し、図2に示すような水密・気密性3次元構造布を得た。
【0040】
この水密・気密性3次元構造布を2次加工してエアーデッキを製造(通常の縫合Rをした耳部E,Eは2次加工途上で切断)し、得られたエアーデッキの品質検査のために、内部にエアーを吹き込んだところ、仮縫い4は容易に切断でき、しかもこの部分からのエアー漏れはなかった。
また、2次加工品エアーデッキは、3次元構造布が、両耳部E,Eが縫合Rされ、かつ両耳部E,E間の3カ所が仮縫い4されているため、PVCの積層の際にも、また2次加工の際にも、上側織布1と下側織布1の位置ズレが生じることなく、良好な積層がなされており、また正確に2次加工がなされていることが確認できた。
【0041】
実施例2
実施例1と同じ基布を用い、両耳部E,Eの縫合R及び仮縫い4を実施例1と同様にして行い、相対する2枚の織布1,1それぞれの表面に、カレンダーにより、0.5mm厚に分出した未加硫クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)シート3,3をトッピングした。
【0042】
続いて、図3に示したロート加硫装置(アフターキュア用の加熱炉18を除く)により、シリンダ11,12,13,14と無端ベルト15との間の圧力をそれぞれ、ベルトゲージ圧で80kg/cm2に調整してロート加硫を行った。
なお、シリンダ11、13、14はヒータ非内蔵型の、すなわち加熱シリンダでないものを用い、シリンダ12はヒータ内蔵型の、すなわち加熱シリンダを用い、しかもシリンダ12の近傍部にはヒータ16を設け、ここを加熱ゾーンとして加硫を行った。加熱ゾーンの温度は185℃に調整した。
【0043】
この水密・気密性3次元構造布についても実施例1の場合と同様に、2次加工してエアーデッキを製造し、得られたエアーデッキの品質検査のために、内部にエアーを吹き込んだところ、仮縫い4は容易に切断でき、しかもこの部分からのエアー漏れはなかった。
また、この2次加工品エアーデッキも、実施例1と同様、未加硫ゴムのトッピング・ゴムの加硫の際にも、また2次加工の際にも、上側織布1と下側織布1の位置ズレが生じることなく、良好なゴム層が積層されており、しかも正確に2次加工がなされていることが確認できた。
【0044】
実施例3
実施例1の仮縫い4の代わりに、実施例1で使用した3次元構造布の10.5本/インチの連結糸2,2・・・うちの1.5本/インチを仮止め用糸として用いて仮止めを行う以外は、実施例1と全く同様にして水密・気密性3次元構造布を得た。
【0045】
この水密・気密性3次元構造布を2次加工してエアーデッキを製造し(通常の縫合Rをした耳部E,Eは2次加工途上で、エアーデッキ内にテープ止めで取り込み)、得られたエアーデッキの品質検査のために、内部にエアーを吹き込んだところ、仮止め用糸が容易に切断でき、しかもこの部分からのエアー漏れはなかった。
仮止め用糸が切断されても、2次加工品エアーデッキは、その形状が全く損なわれず、所期の形状を保持することができた。
また、このエアーデッキは、3次元構造布が、両耳部E,Eが縫合Rされ、かつ両耳部E,E間が、連結糸の一部である仮止め用糸により仮止めされているため、PVCの積層の際にも、また2次加工の際にも、上側織布1と下側織布1の位置ズレを生じることはなく、良好な積層がなされており、また正確に2次加工がなされていることが確認できた。
【0046】
実施例4
仮縫い糸を水溶性ポリビニルアルコール糸(30番手)にした以外は、実施例1と同様にして水密・気密性3次元構造布を得た。
この水密・気密性3次元構造布を2次加工して水嚢を製造し、得られた水嚢に水圧をかけて水を充填したところ、仮縫い糸が容易に切断でき、しかもこの部分からの水漏れはなかった。
また、この水嚢も、実施例1と同様、未加硫ゴムのトッピング、ゴムの加硫の際にも、2次加工の際にも、上側織布1と下側織布1の位置ズレを生じることなく、良好なゴム層が積層されており、しかも正確に2次加工がなされていることが確認できた。
【0047】
実施例5
仮縫い糸をレーヨンと水溶性ポリビニルアルコールの混合糸(30番手)にした以外は、実施例1と同様にして水密・気密性3次元構造布を得た。
この水密・気密性3次元構造布を湯通しし、乾燥させて、2次加工し、エアーデッキを製造した。得られたエアーデッキにエアーを吹き込むことにより、実施例1の場合よりも更に容易に仮縫い糸が切断でき、しかもこの部分からのエアー漏れはなかった。
また、このエアーデッキも、実施例1と同様、未加硫ゴムのトッピング、ゴムの加硫の際にも、2次加工の際にも、上側織布1と下側織布1の位置ズレを生じることなく、良好なゴム層が積層されており、しかも正確に2次加工がなされていることが確認できた。
【0048】
【発明の効果】
本発明の水密・気密性3次元構造布によれば、水密・気密性を確保するための合成樹脂層やゴム層の積層の際、あるいはこれらの層を積層した後の裁断・張り合わせ・成型などの2次加工の際に、相対する織布同士が連結糸の長さの範囲で位置ズレを生じることはない。
この結果、合成樹脂層やゴム層の積層作業はもとより、2次加工の作業も極めて高効率、高品質で行うことができ、美麗な積層状態で、かつ高い水密性、気密性を確保することができるばかりか、高い寸法精度を持った2次加工成型品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴム引布の基布となる3次元構造布を模式的に示す一部切欠き図である。
【図2】本発明における基布と、本発明で得られる製品構造布とを、模式的に示す一部切欠き図である。
【図3】本発明におけるロート加硫を行うのに適したロート加硫装置を模式的に示す図である。
【図4】本発明における仮止めの一実施態様例を実現するのに適した仮止め装置に使用する部材の一例を模式的に示す図である。
【図5】本発明における仮止めの一実施態様例を示す説明図である。
【符号の説明】
1,1 相対する2枚の織布
2 連結糸
3,3 合成樹脂層またはゴム層
4 仮縫い
E,E 3次元構造布の耳部
R オーバーロック
10a 未加硫ゴムトッピング基布
10b 製品構造布(製品引布)
11,12,13,14 シリンダ
15 無端ベルト
16 ヒータ
17 ガイドロール
18 アフタキュアー用の加熱炉
Claims (2)
- 相対する2枚の織布が多数の連結糸により適宜の間隔をあけて連結された3次元構造布を基布とし、
前記基布の両耳部間の1カ所又は複数カ所が仮止めされた後に、
前記2枚の織布の表面側に合成樹脂層又はゴム層が積層されてなり、かつ
前記仮止めが2次加工成型品化後に開放され、
前記仮止めの強度が、連結糸による織布同士の連結強度よりも弱く、及び/又は、前記仮止めが、流体の噴入による加圧で開放されることを特徴とする、水密・気密性3次元構造布の製造方法。 - 前記仮止めが、仮縫い、接着剤による仮接着、水溶性合成樹脂製の針による部分止め、前記連結糸の一部のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の水密・気密性3次元構造布の製造方法。
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