JP4724964B2 - 水分散体、それより形成される塗膜および水分散体の製造方法 - Google Patents

水分散体、それより形成される塗膜および水分散体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は缶内面用の塗料として優れたグラフトポリエステル樹脂を含む水分散体およびその製造方法に関する。さらに本発明は前記水分散体により形成される塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
缶の内面塗装にはエポキシ樹脂を主とする塗料が多く使用されている。その中でも特に水分散型(水系)のエポキシ−アクリル塗料は、自然環境の保護および作業環境の改善のため、溶剤系の塗料に置き代わり缶内面用塗料として多く用いられるようになっている。エポキシ−アクリル樹脂は水分散化後の安定性も良好であり、缶内面に塗装された後の加工性、耐レトルト性なども優れている。
【0003】
しかし、エポキシ−アクリル塗料の原料であるビスフェノールAは外因子内分泌撹乱物質(環境ホルモン)であるため、ビスフェノールAの使用を避けこれにに代わる水系塗料としてポリエステル樹脂が注目されているが、特に耐レトルト性に問題があるため、いまだ好適な缶内面塗装用ポリエステル樹脂は得られていない。
【0004】
たとえば特開平9−296100号公報、同11−61035号公報、同11−124542号公報、同11−236529号公報、特開2000−26709号公報では、ジカルボン酸、グリコール、ポリカルボン酸−無水物などでポリエステル樹脂の解重合、または開環付加反応を行い樹脂末端に酸価を与えることが望ましいとしている。さらにこれを塩基性化合物で分子内に有するカルボキシル基を中和することで水分散し、アミノ樹脂、保護コロイドを含有する水系塗料樹脂組成物が提案されている。これらの塗料は硬化性、加工性に優れるものの、アミノ樹脂は衛生性に乏しく、特にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂は耐レトルト性に乏しい。また、この耐レトルト性を改良するために疎水性のアミノ樹脂(ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂など)を使用することも可能であるが、これらの特許公報に記載の方法で得られたポリエステル樹脂はカルボキシル基が分子末端に偏在しているため、分散安定性が低い。したがって塗料の安定化を図るため保護コロイドを使用する必要があるが、この保護コロイドが耐レトルト性、衛生性を低下させるという問題がある。また、分散安定性が低いために缶内面用塗料としてスプレー塗装した際にスプレーノズルの目詰まりや塗装後のタレを生じるという問題がある。
【0005】
特開平11−315251号公報においてはポリエステル樹脂とレゾール型フェノール樹脂を組合せた塗料により、硬化性、加工性、耐レトルト性、衛生性が改善するとしている。しかしながら、公報に記載されているレゾール型フェノール樹脂は一部がアルキルエーテル化されているため水分散性に乏しく、水中で分散安定化させるにはやはり保護コロイドや界面活性剤などの使用が必要となり、耐レトルト性が低下する原因となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ビスフェノールAなどの環境ホルモンを原料として用いず、耐レトルト性に優れた塗膜を形成する缶内面塗装用のポリエステル樹脂を含む水分散体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の水分散体は、共重合ポリエステル樹脂に親水性基または親水性基に変化し得る官能基を有するラジカル重合性単量体をグラフト化したグラフトポリエステル樹脂および疎水性樹脂を含む。
【0008】
親水性基としてはカルボキシル基が好ましく、疎水性樹脂としてはフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物が好ましい。
【0009】
この水分散体の製造方法において、前記グラフトポリエステル樹脂は塩基性化合物で中和されることを特徴とする。
【0010】
本発明の塗膜は前記水分散体により形成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、共重合ポリエステル樹脂にラジカル重合性単量体をグラフト化したポリエステル樹脂および疎水性樹脂を含む水分散体に関する。
【0012】
(共重合ポリエステル樹脂)
共重合ポリエステル樹脂とはジカルボン酸またはジカルボン酸エステルとグリコールの縮合またはエステル交換により一般に得られるエステル結合を有する共重合体を意味する。
【0013】
共重合ポリエステル樹脂の製造に使用されるジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、重合性二重結合を有するジカルボン酸がある。
【0014】
芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸などがある。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などがある。脂環式ジカルボン酸としては1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその無水物などがある。また重合性二重結合を有するジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのα,β-不飽和ジカルボン酸類、その他2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸などがあり、グラフト重合における反応効率の点でフマル酸、マレイン酸および2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物が好ましい。
【0015】
共重合ポリエステル樹脂の製造に使用されるグリコールとしては、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数が6〜12の脂環式グリコール、エーテル結合を含有するグリコールなどがある。
【0016】
炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールなどがある。炭素数6〜12の脂環式グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどがある。また、エーテル結合を含有するグリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどがあり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどがある。
【0017】
本発明では3以上の官能基を有するポリカルボン酸および/またはポリオールを使用し得る。3以上の官能基を有するポリカルボン酸としては(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)などがある。一方、3以上の官能基を有するポリオールとしてはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどがある。
【0018】
本発明において原料として用いる共重合ポリエステル樹脂の重量平均分子量は5000〜50000が好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、乾燥後、塗膜の加工性などの樹脂物性が低下し、また樹脂が水溶化しやすくなり、後述するコアシェル構造を形成しにくくなる。一方、重量平均分子量50000より大きいと水に分散化しにくくなる。
【0019】
本発明では接着性、加工性などの缶内面用塗料として満たすべき性能を達成するために共重合した樹脂を原料として用いる。また本発明で用いる共重合ポリエステル樹脂は、ラジカル重合によりグラフト化し得る重合性二重結合を有する。かかる重合性二重結合の部位に、親水性基を有する単量体をグラフト化することにより、本来的に水不溶性の共重合ポリエステル樹脂を親水性化する。
【0020】
芳香族ジカルボン酸は塗膜の耐水性および水分散体としての安定性を保持するために全酸成分に対して70〜100モル%が好ましい。脂肪族ジカルボン酸は全酸成分に対して0〜30モル%が好ましい。また、重合性二重結合を有するジカルボン酸の場合は全酸成分に対して0.5〜10モル%が好ましく、2〜7モル%がより好ましい。重合性二重結合を有するジカルボン酸が0.5モル%未満の場合、共重合ポリエステル樹脂に対するラジカル重合性単量体の効率的なグラフト化が行われにくく、水分散時の分散粒子が大きくなり分散安定性が低下する。一方、重合性二重結合を有するジカルボン酸が10モル%より多くなると、グラフト化の後期にあまりにも粘度が上昇し反応の均一な進行を妨げるようになる。
【0021】
3以上の官能基を有するポリカルボン酸および/またはポリオールは、全酸成分あるいは全グリコール成分に対し0〜10モル%使用することができるが、0〜5モル%で使用するのが好ましい。5モル%より多いと加工性が低下するようになる。
【0022】
グラフト化前の共重合ポリエステル樹脂はグラフトポリエステル樹脂に対して95重量%以下が好ましい。より好ましくは90重量%以下であり、さらに好ましくは85重量%以下である。95重量%を超えると、水に対する分散性が低下する場合がある。また高い加工性が要求される場合には、グラフト化前の共重合ポリエステル樹脂は75重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは73重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。一方、グラフト化前の共重合ポリエステル樹脂の下限は、40重量%が好ましく、より好ましくは50重量%、さらに好ましくは55重量%、特に好ましくは60重量%である。
【0023】
(ラジカル重合性単量体)
本発明においては共重合ポリエステル樹脂に親水性基または親水性基に変化し得る官能基を有するラジカル重合性単量体をグラフト化する。グラフト化前の共重合ポリエステル樹脂は水に分散または溶解せず、本質的に水不溶性であるが、親水性基または親水性基に変化し得る官能基を有するラジカル重合性単量体をグラフト化することにより、水不溶性共重合ポリエステル樹脂は親水性を付与される。
【0024】
ラジカル重合性単量体としては、親水性基を有するか、または親水性基に変化し得る官能基を有するラジカル重合性単量体を用い、その他のラジカル重合性単量体含めることができる。親水性基としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩などがあり、親水性基に変化し得る官能基としては、酸無水物基、グリシジル基などがある。親水性基に変化し得る官能基は酸または塩基などの作用により親水性基に変化するため、本発明において親水性基に変化し得る官能基を有するラジカル重合性単量体は親水性基を有するラジカル重合性単量体と同様に機能して同様の効果を発揮し得る。親水性基の中では、酸価を変化させて水分散性をコントロールし易い点で、カルボキシル基が好ましい。したがってラジカル重合性単量体としてはカルボキシル基またはカルボキシル基に変化し得る官能基を有するものが好ましい。
【0025】
カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などがあり、グラフト効率および水分散体の安定性の点でアクリル酸、メタアクリル酸が好ましい。一方、カルボキシル基に変化し得る官能基を有するラジカル重合性単量体としてはマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、メタクリル酸無水物などがあり、グラフト効率および水分散体の安定性の点でマレイン酸無水物が好ましい。ラジカル重合性単量体は単独で用いることもでき、複数種を併せて用いることもできる。
【0026】
本発明の実施においては、カルボキシル基を有しないラジカル重合性単量体とカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体とを併せて用いるのがグラフト効率の点で好ましい。カルボキシル基を有しないラジカル重合性単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシルプロピルなどのアクリル酸やメタクリル酸のエステル類、その他アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルエーテル類、N−ビニルピロリドン、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエンなどがあり、グラフト効率の点でアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレンが好ましい。これらの中から一種または複数種を選んで用いることもできる。
【0027】
ラジカル重合性単量体は2または3種以上を混合して用いることが好ましい。成分が1種類でありカルボキシル基含有単量体のみの場合はポリエステル鎖に対するグラフト化が円滑に起こらず、良好な水分散体に導くことが難しく、第2成分であるアクリル酸、メタクリル酸のエステル類などを併せて用い、共重合させることによってはじめて効率の高いグラフト化が可能となる。
【0028】
カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体の比率は、その上限についてはラジカル重合性単量体の全量に対して95重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。一方、下限については5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。カルボキシル基を有する単量体の比率はグラフトポリエステル樹脂の酸価を考慮して決定することができる。
【0029】
本発明のグラフトポリエステル樹脂の中和される前の総酸価は、500eq/106g以上が好ましく、600eq/106g以上がより好ましい。500eq/106g未満では水に分散するとき粒子径の小さい分散体が得られにくくなり、分散安定性が低下する。一方、総酸化は4000eq/106g以下が好ましく、3000eq/106g以下がより好ましい。4000eq/106gより大きいと水分散体から形成される塗膜の耐水性が低くなる。
【0030】
(グラフト化)
本発明のグラフトポリエステル樹脂は、共重合ポリエステル樹脂中の重合性二重結合にラジカル重合性単量体をグラフト化することにより得られる。グラフト化は、共重合ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解した状態でラジカル開始剤およびラジカル重合性単量体の混合物を反応させることにより実施される。グラフト化後は、グラフトポリエステル樹脂の他に、未反応の共重合ポリエステル樹脂や未反応のラジカル重合性単量体も含まれていると考えられるが、グラフト化率が低く、未反応の共重合ポリエステル樹脂や未反応のラジカル重合性単量体の比率が高い場合は安定性の良好な水分散体を得ることができない。
【0031】
グラフト化に際しては、溶媒に溶解されている共重合ポリエステル樹脂に、ラジカル重合性単量体とラジカル開始剤を一時に添加することができる。またラジカル重合性単量体とラジカル開始剤とを別々に一定時間をかけて滴下した後、さらに一定時間撹拌しながら加温を継続し反応を進行させることもできる。またラジカル重合成性単量体の一部をさきに一時に添加しておいてから残りのラジカル単量体とラジカル開始剤を別々に一定時間をかけて滴下した後、さらに一定時間撹拌しながら加温を継続して反応を進行させることもできる。
【0032】
反応に先立って、共重合ポリエステル樹脂と溶剤を反応機に投入し、撹拌しながら昇温して樹脂を溶解させる。共重合ポリエステル樹脂と溶媒の重量比率は、共重合ポリエステル樹脂とラジカル重合性単量体との反応性、溶剤への溶解性および重合の均一性の点から、70:30〜30:70が好ましい。
【0033】
ラジカル重合性単量体の比率は、グラフトポリエステル樹脂に対して60重量%以下が好ましく、45重量%以下がより好ましく、40重量%以下が特に好ましい。ラジカル重合性単量体が60重量%より多くなると、共重合ポリエステル樹脂が相対的に少なくなり、共重合ポリエステル樹脂の優れた性能、すなわち高い加工性、優れた耐水性、各種基材への優れた密着性を十分に発揮することができず、ラジカル重合性単量体として配合するアクリル樹脂などの望ましくない性能、すなわち加工性、光沢および耐水性などが低いという欠点が顕在化するようになる。一方、ラジカル重合性単量体の比率は、グラフトポリエステル樹脂に対して5重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましく、10重量%以上が特に好ましい。ラジカル重合性単量体が5重量%未満になると、グラフト鎖中に含まれるカルボキシル基などの親水性基が不足し、良好な水分散体を得ることができないようになる。
【0034】
グラフト化を十分に進める上で、グラフト化の反応温度は50〜120℃、反応時間は1〜5時間が好ましい。
【0035】
(グラフト化のラジカル開始剤など)
ラジカル開始剤としては、よく知られた有機過酸化物や有機アゾ化合物を使用することができる。有機過酸化物としてはベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、有機アゾ化合物としては2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などがある。ラジカル開始剤は、反応温度におけるラジカル生成速度すなわち半減期を考慮して選定し、一般にその温度における半減期が1分〜2時間であるラジカル開始剤が好ましい。
【0036】
ラジカル開始剤の使用量は、ラジカル反応を開始し十分なグラフト化を行なうようにする点でラジカル重合性単量体に対して02重量%以上が好ましく、0.4重量%以上がより好ましい。
【0037】
連鎖移動剤、たとえばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノールはグラフト鎖の重合度を調節する点でラジカル重合性単量体に対して0〜5重量%使用するのが好ましい。
【0038】
(反応溶媒)
グラフト化で使用する溶媒は、親水性基を有するラジカル重合性単量体を容易に溶解する点で水性溶媒が好ましく、本来的に水不溶性の共重合ポリエステル樹脂を容易に溶解する点で有機溶媒が好ましい。かかる水性の有機溶媒としては20℃における水に対する溶解性が10g/L以上の有機溶媒が好ましく、20g/L以上である有機溶媒がより好ましい。また、溶媒の沸点は50〜250℃が好ましい。沸点が250℃より高いと蒸発速度がおそく、塗膜を高温焼付しても十分に溶媒を取り除くことができない。一方沸点が50℃未満であると、50℃未満でラジカルを発生する開始剤を使用しなければならないので取扱上の危険が増大する。
【0039】
このような特性を有する第一群の水性有機溶媒としては、共重合ポリエステル樹脂をよく溶解し、かつカルボキシ基などの親水性基を有する重合性単量体などを比較的よく溶解し、さらに反応後のグラフトポリエステル樹脂も溶解する溶媒である。具体的には酢酸エチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール類もしくはグリコールエーテルの低級エステル類、ダイアセトンアルコールなどのケトンアルコール類、さらにジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのN−置換アミド類などがある。
【0040】
共重合ポリエステル樹脂をほとんど溶解しないが、カルボキシル基などの親水性基を有するラジカル重合性単量体およびグラフトポリエステル樹脂などを比較的よく溶解する第二群の水性有機溶媒としては、水、低級アルコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類などがあるが、本発明においては塗工時の塗工性、作業性の点で炭素数1〜8のアルコール類およびグリコール類が好ましい。
【0041】
グラフト化を単一溶媒で行なう場合は、第一群の水性有機溶媒から一種を選んで行なうことができる。混合溶媒で行なう場合は第一群の水性有機溶媒からのみ複数種選んで行なうことができ、また第一群の水性有機溶媒から少なくとも一種を選びそれに第二群の水性有機溶媒から選んだ少なくとも一種を加えて行なうこともできる。しかしグラフト化の進行、挙動、グラフトポリエステル樹脂およびそれから導かれる水分散体の外観、性状などの点で、第一群および第二群の水性有機溶媒からそれぞれ一種選び混合する溶媒が好ましい。また共重合ポリエステル樹脂分子鎖は、第一群の溶媒中では広がりが大きく鎖の伸びた状態にあるが、第一群と第二群からの混合溶媒中では広がりが小さく糸まりのように絡まった状態にあることが粘度測定により確認されている。したがって共重合ポリエステル樹脂の溶解状態を調節し分子間架橋を起こりにくくすることがゲル化防止に有効であるから、グラフト化を効率化しゲル化を抑制する点で、第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒が好ましい。
【0042】
第一群の溶媒と第二群の溶媒との混合溶媒とする場合には、第一群の溶媒の配合量は混合溶媒の全量に対して95重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましく、85重量%以下が特に好ましい。また下限については10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上が特に好ましい。各反応における溶媒の混合比率は原料とする共重合ポリエステル樹脂の溶解性などに応じて具体的に決定される。
【0043】
(疎水性樹脂)
本発明の水分散体は、グラフトポリエステル樹脂の微粒子のほかに疎水性樹脂を含む。疎水性樹脂を配合することにより、水分散体により形成される塗膜の耐レトルト性が向上し、缶内面用塗料として適合するようになる。
【0044】
疎水性樹脂とは、水との親和性がなく、乾燥時に水の吸収がなく、水をはじく樹脂をいい、一般にはエポキシ樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂などがあるが、本発明ではグラフトポリエステル樹脂との相溶性および缶用塗料としての性能を満たすため、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物が好ましい。フェノール類としてはアルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなど)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−,m−,p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニルクレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどがあり、グラフトポリエステル樹脂との相溶性および反応性の点で、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールが好ましい。
【0045】
疎水性樹脂の配合量は、グラフトポリエステル樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜15重量部がより好ましく、1〜10重量部が特に好ましい。配合量が0.1重量部未満になると、水分散体により形成される塗膜の耐レトルト性が十分に改善しない。一方、配合量が20重量部より多くなると加工性が不良となる。
【0046】
疎水性樹脂は、有機溶媒に溶解している状態または水に分散している状態で配合することができる。疎水性樹脂の配合する時期は、(1)グラフトポリエステル樹脂の水分散体に配合して、溶解もしくは分散する方法、(2)グラフト化後で、水分散化の前に配合する方法があり、疎水性樹脂の種類、性状などにより選択することができる。また疎水性樹脂には促進剤として、触媒であるドデシルベンゼンスルホン酸などを併用することもできる。
【0047】
(水分散化)
本発明はグラフトポリエステル樹脂を含む水分散体に関する。
【0048】
この水分散体にはグラフトポリエステル樹脂の微粒子が水に分散している。グラフトポリエステル樹脂の微粒子は水分散体としての安定性を保持する上で平均粒子径が500nm以下であることが好ましい。本発明にかかわるグラフトポリエステル樹脂は塩基性化合物で中和することにより容易に平均粒子径500nm以下の微粒子に分散することができる。
【0049】
塩基性化合物としては、焼付硬化などによる塗膜形成時に揮散する点で、アンモニア、有機アミン類が好ましい。有機アミン類としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどがある。これらの中では、水分散体の安定性および焼付硬化時の揮散性の点で、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0050】
塩基性化合物の添加量は、安定な水分散体を製造する観点から、グラフトポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基などの酸基の量に応じて、すくなくとも部分中和または完全中和によりPHが5.0〜9.0となるように調整するのが好ましい。
【0051】
水分散化の方法としては、グラフト化が終了した直後に塩基性化合物を含有する水を反応生成物中へ投入し、加熱しながら撹拌をする方法(ワン・ポット法)が安定な水分散体を得る点で好ましい。水分散化の別の方法としては、グラフト化後あらかじめグラフトポリエステル樹脂が含有する溶媒を減圧下、エクストルダーなどにより除去してメルト状または固体状(ペレット、粉末などの状態)とした後、塩基性化合物を含有する水中へグラフトポリエステル樹脂を投じ、加熱しながら撹拌する方法もある。グラフト化で用いた溶媒の沸点が100℃以下の場合は、溶媒の一部または全部を蒸留により容易に取り除くことができる。
【0052】
水分散体中のグラフトポリエステル樹脂の固形分濃度は、水分散体の安定性を保持するため20〜60重量%が好ましい。
【0053】
(水分散体の特徴)
本発明においては、原料である共重合ポリエステル樹脂をラジカル重合性単量体によりグラフト化するが、グラフト化後のラジカル重合性単量体の重合度は重量平均分子量で500〜50000が好ましい。重量平均分子量を500未満にコントロールすることは一般に困難であり、500未満ではグラフト化の効率も低く、共重合ポリエステル樹脂への親水性基の導入が不十分になる。また、ラジカル重合性単量体の重合体(グラフト鎖)は分散粒子の水和層を形成するが、十分な厚さの水和層を形成し、安定な分散体を得る点で重量平均分子量で500以上が好ましい。一方、重量平均分子量の上限は溶液重合における重合性の点で50000が好ましい。重量平均分子量500〜50000の範囲内での分子量のコントロールはラジカル開始剤の量、ラジカル重合性単量体の滴下時間、グラフト化の時間、反応溶媒、ラジカル重合性単量体の組成を調整することにより、また連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせて用いることにより行なうことができる。
【0054】
本発明の水分散体は半透明ないし乳白色の外観を呈する。水分散体の粒子径は重合方法により調整でき、レーザ光散乱法により測定される平均粒子径で10〜500nmが好ましい。500nmより大きくなると塗膜の表面光沢が低下しやすくなる。
【0055】
本発明の水分散体を13C−NMRで測定すると、共重合ポリエステル樹脂のエステル部におけるカルボニル基のシグナルの半値幅は300Hz以上と大きく観測される。またラジカル重合性単量体の重合体(グラフト鎖)が有するカルボキシル基の中和後のシグナルの半値幅は150Hz以下と小さく観測される。一般にNMRでは測定溶媒中に溶解している樹脂のシグナルは半値幅が小さく、測定溶媒に不溶である樹脂のシグナルは半値幅が大きく観測される。このことから本発明の水分散体では本来水に分散または溶解しない共重合ポリエステル樹脂が凝集状態でコア部に存在し、その周りを親水性基を有するラジカル重合性単量体の重合体(グラフト鎖)がシェル部として包み込んだ構造、すなわちコアシェル構造を発現しているものと解される。コアシェル構造とは、分散媒に不溶で凝集状態にある樹脂からなるコア部を、分散媒に可溶な樹脂からなるシェル部が包み込んだ二層構造をいう。コアシェル構造は分散媒への溶解性が異なる樹脂が化学結合した分散体において特徴的に現われる構造であり、単に分散媒への溶解性が異なる樹脂の混合によっては発現し得ない構造である。また分散媒への溶解性が異なる樹脂の単なる混合物は、500nm以下の粒子径をもつ水分散体として存在し得ない。
【0056】
(水分散体の利用)
本発明の水分散体は塗料、インキ、コーティング材、接着剤などのベヒクルとして、または繊維、フィルム、紙製品の加工剤として利用することができ、優れた耐レトルト性を有する塗膜を形成する。本発明の水分散体はそのままでも使用できるが、架橋剤(硬化用樹脂)を配合して焼付硬化を行なうこともでき、これにより高度の耐水性が発現され得る。架橋剤としては、アミノ樹脂、イソシアネート化合物およびその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物などがある。
【0057】
アミノ樹脂としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどのホルムアルデヒド付加物、これらの炭素原子数が1〜6のアルコールによるアルキルエーテル化合物がある。具体的にはメトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロール−N,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどがあり、グラフトポリエステル樹脂との反応性の点でメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミンおよびメチロール化ベンゾグアナミンが好ましい。これらは単独で用いることもでき、併用することもできる。
【0058】
イソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれも使用することができる。具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、これらのイソシアネート化合物の3量体などがある。また、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物などがある。
【0059】
ブロック化イソシアネートを用いることもできる。ブロック化イソシアネートは、前記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを通常の方法より付加させることにより得ることができる。イソシアネートブロック化剤としては、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン化アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノールなどの3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類、その他芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ソーダなどがある。
【0060】
架橋剤の配合方法としては、(1)直接水分散体に溶解または分散する方法、(2)グラフト化後で水分散化の前に架橋剤を加え、コア部でポリエステル樹脂と共存させる方法があり、架橋剤の種類、性状により選択することができる。これらの架橋剤には硬化剤あるいは促進剤を添加することもできる。
【0061】
硬化反応は、一般に本発明の水分散体100重量部(固形分)に対して架橋剤(硬化用樹脂)5〜40重量部(固形分)を配合し、硬化剤の種類に応じて60〜250℃で0.5〜60分間程度加熱することにより行うことができる。本発明の水分散体には、顔料、染料、各種添加剤などを配合することができる。本発明の水分散体は、他の水性樹脂、水分散体と混合して使用することにより加工性を向上させることができる。
【0062】
本発明の水分散体を基材とする塗料、インキ、コーティング剤、接着剤および各種加工剤は再分散性に優れているので、ディップコート法、はけ塗り法、ロールコート法、スプレー法、各種印刷法のすべてに適用することができる。
【0063】
【実施例】
(共重合ポリエステル樹脂の製造)
撹拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブにジメチルテレフタレート455重量部、ジメチルイソフタレート455重量部、エチレングリコール472重量部、ジエチレングリコール35重量部およびテトラ−n−ブチルチタネート0.37重量部を仕込み、160〜220℃で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いでフマル酸29重量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行なった。次に255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、26.6Pa下で1時間30分反応させ共重合ポリエステル樹脂(A−1)を得た。共重合ポリエステル樹脂(A−1)は淡黄色透明で重量平均分子量は12000であり、NMRなどにより測定した結果、表1に示す組成を有する共重合ポリエステル樹脂であった。
【0064】
【表1】
Figure 0004724964
【0065】
同様の方法により種々の共重合ポリエステル樹脂(A−2)〜(A−5)を製造した。各共重合ポリエステル樹脂のNMRによる組成分析の結果を表1に示す。
【0066】
実施例1
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に共重合ポリエステル樹脂(A−1)を90重量部とメチルエチルケトン137重量部を入れ65℃で撹拌し共重合ポリエステル樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、イソプロピルアルコール46重量部を添加し混合した。次にアクリル酸11重量部およびアクリル酸エチル19重量部の混合物ならびにベンゾイルパーオキサイド0.74重量部をメチルエチルケトン45重量部とイソプロピルアルコール15重量部に溶解した溶液を0.2ml/分で共重合ポリエステル樹脂溶液中に滴下し、さらに2時間30分撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリング(5g)を行なった後、N,N−ジメチルエタノールアミン14重量部と水244重量部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。その後、分散体の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを蒸留により溜去した。生成した白色のグラフトポリエステル樹脂の分散体100重量部にフェノール樹脂(昭和高分子株式会社製PCE1050)5重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸0.3重量部を配合して水分散体(B−1)を得た。水分散体(B−1)をアルミ板上に乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、200℃雰囲気下で0.5分間焼付し塗膜を形成した。
【0067】
水分散体(B−1)の固形分濃度、粒子径およびB型粘度ならびに形成された塗膜の耐レトルト性、加工性および耐溶剤性の評価結果を表2に示す。
【0068】
なお各特性はつぎの方法により評価した。
(1)水分散体の粒子径
水分散体をイオン交換水だけを用いて固形分濃度0.1重量%に調整し、レーザ光散乱粒度分布計Coulter model N4(Coulter社製)により20℃で測定した。
【0069】
(2)水分散体のB型粘度
回転粘度計(東京計器株式会社製のEM型粘度計)を用い、25℃で測定した。
【0070】
(3)耐レトルト性
塗装アルミ板を立てた状態でステンレスカップに入れ、イオン交換水をアルミ板の半分位の高さまで入れた後、水蒸気雰囲気下125℃で30分間処理する。液相部については白化の状態を、また気相部については塗膜の荒れ状態を目視により観察し、液相部については白化がなければ○、あれば×と評価し、また気層部については塗膜の荒れがなければ○、あれば×と評価した。
【0071】
(4)加工性
塗装アルミ板と同じ厚さの金属板を1枚挟み180度方向に万力で折り曲げる。この曲げ加工部に1%NaCl水溶液を含浸したスポンジを接触し、5.5Vの電圧をかけたときの電流値を測定した。電流値が小さいほど加工性は良好である。
【0072】
(5)耐溶剤性
塗装アルミ板の塗膜をメチルエチルケトンを含浸したガーゼで擦り、下地が現われるまでの回数を記録した。
【0073】
【表2】
Figure 0004724964
【0074】
実施例2、5、6、10、12および13
実施例1と同様にして、表2および表3に示す組成で種々の水分散体(B−2)、(B−5)、(B−6)、(B−10)、(B−12)および(B−13)を製造し、塗膜を形成して、各種特性を評価した。その結果を表2および表3に示す。
【0075】
【表3】
Figure 0004724964
【0076】
実施例3
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に共重合ポリエステル樹脂(A−1)を90重量部とメチルエチルケトン137重量部を入れ65℃で撹拌し共重合ポリエステル樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、イソプロピルアルコール46重量部を添加し混合した。次にアクリル酸11重量部およびアクリル酸エチル19重量部の混合物ならびにベンゾイルパーオキサイド0.45重量部をメチルエチルケトン45重量部とイソプロピルアルコール15重量部に溶解した溶液を0.2ml/分で共重合ポリエステル樹脂溶液中に滴下し、さらに2時間30分撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリング(5g)を行なった後、N,N−ジメチルエタノールアミン14重量部、フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製PCE1015)5重量部と水244重量部を反応溶液に加え、0.5時間撹拌した。その後、分散体の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを蒸留により溜去し、乳白色の水分散体(B−3)を得た。水分散体(B−3)をアルミ板上に乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、200℃雰囲気下で0.5分間焼付し塗膜を形成した。
【0077】
水分散体(B−3)の固形分濃度、粒子径およびB型粘度ならびに形成された塗膜の耐レトルト性、加工性および耐溶剤性の評価結果を表2に示す。
【0078】
実施例4、7、8、9および11
実施例3と同様にして、表2に示す組成で種々の水分散体(B−4)、(B−7)、(B−8)、(B−9)および(B−11)を製造し、塗膜を形成して、各種特性を評価した。その結果を表2および表3に示す。
【0079】
比較例1
撹拌器、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に共重合ポリエステル樹脂(A−1)を90重量部とメチルエチルケトン137重量部を入れ、65℃で撹拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、イソプロピルアルコール46重量部を添加し混合した。つぎにアクリル酸11重量部、アクリル酸エチル19重量部およびベンゾイルパーオキサイド0.45重量部を、メチルエチルケトン45重量部とイソプロピルアルコール15重量部に溶解した溶液を0.2ml/分で共重合ポリエステル樹脂溶液中に滴下し、さらに2時間30分撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリング(5g)を行なった後、N,N−ジメチルエタノールアミン14重量部と水244重量部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。その後、分散体の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトンおよびイソプロピルアルコールを蒸留により溜去した。生成した白色の水分散体(B−14)をアルミ板上に乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、200℃雰囲気下で0.5分間焼付し、塗膜を形成した。
【0080】
水分散体(B−14)の固形分濃度、粒子径およびB型粘度ならびに形成された塗膜の耐レトルト性、加工性および耐溶剤性の評価結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
Figure 0004724964
【0082】
比較例2および比較例3
比較例1と同様にして、表4に示す組成で水分散体(B−15)および(B−16)を製造し、塗膜を形成して、各種特性を評価した。その結果を表4に示す。
【0083】
表2〜表4の結果により、共重合ポリエステル樹脂に親水性基または親水性基に変化し得る官能基を有するラジカル重合性単量体でグラフト化したグラフトポリエステル樹脂および疎水性樹脂を含む水分散体は、耐レトルト性を有する塗膜を形成し、缶内面塗装用ポリエステル樹脂として優れていることがわかった。
【0084】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等などの意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、ビスフェノールAなどの環境ホルモンを原料として用いず、耐レトルト性に優れた塗膜を形成する缶内面塗装用のポリエステル樹脂を含む水分散体を提供することができる。

Claims (5)

  1. 共重合ポリエステル樹脂に、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩のいずれかである親水性基または酸無水物基、グリシジル基のいずれかである親水性基に変化し得る官能基を有するラジカル重合性単量体をグラフト化したグラフトポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂のいずれかである疎水性樹脂を含む水分散体により形成される塗膜を有する缶用アルミ板
  2. 前記親水性基カルボキシル基である請求項1記載の缶用アルミ板
  3. 前記疎水性樹脂フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物である請求項1または2に記載の缶用アルミ板
  4. 前記共重合ポリエステル樹脂が前記グラフトポリエステル樹脂に対して60重量%以上75重量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の缶用アルミ板。
  5. 記グラフトポリエステル樹脂塩基性化合物で中和されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の缶用アルミ板
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