JP4724081B2 - ファームポンド底部の堆積物を排出する方法 - Google Patents
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Description
ファームポンドの大きさや深さは、そのファームポンドが設置される地域に応じて適宜決定され、河川等の水源に近いところに設置されるものは大中規模であり、この大中規模のファームポンドから給水される水流の末端部であって内陸部の農地付近に設置されるものは小規模である。例えば、中規模のファームポンドとしては縦40m×横70m×深さ10mのものがあり、小規模のファームポンドとしては縦20m×横40m×深さ3.75mのものがある。
ファームポンド70は、コンクリート製の堤71で囲まれて形成されており、上部が開放した概ね直方体の形状である。ファームポンド70の壁面には、河川等の水源から送られてくる水をファームポンドに吐出するための吐水口72、並びにファームポンドに貯留された水を吸い上げて農地に供給するための吸水パイプ73が設けられている。図7中、ファームポンド70の壁面からは3本の吸水パイプ73が突出し下方へ伸びており、各吸水パイプ73の先端には吸水口(図示せず)が設けられている。該吸水パイプ73の周辺には該吸水パイプ73を取り囲むように吸水槽80が設けられている。吸水槽80は、その一面が前記吸水パイプ73が設置されたファームポンドの壁面であって、当該ファームポンドの壁面に対して垂直にコンクリート製の2枚の側壁81が前記吸水パイプ73を囲うように設けられ、吸水槽入口部82に格子状スクリーン83がその上部が吸水パイプ73の設けられた壁面に近接するように傾斜して設けられている。格子状スクリーン83は、横間隔が10cm程度で縦間隔が1m程度の鉄格子であり、これにより大きなゴミが除去される。また、吸水口には金網が設けられ、格子状スクリーン83を通過したゴミが除去される。
一方、従来、ファームポンドから農地に供給された農業用水中には、泥土のほかに、卵からかえった稚魚や、小石、貝、ゴミ等が混入していることもあり、これらがスプリンクラーに詰まるという問題もあった。
しかし、このような従来法では、ファームポンド内の農業用水を抜いてから作業を行うため、浚渫作業中には農地へ農業用水を供給することができないという問題があった。また、作業に著しく時間がかかるだけでなく、ある領域の泥土をポンプで吸引してもすぐに周囲から泥土が流れ込むためどこまで作業したのかがわかりにくく、作業効率が悪いという問題もあった。さらに、作業コストが高いので頻繁に浚渫作業ができず、数十年に一度の頻度でしか処理を行うことができなかった。
しかし、特許文献1記載の方法によれば、分離工程で砂利及び栗石等が農業用水から除去されるが、農業用水と腐葉土とが分離されない濁水のまま田畑へ供給されてしまう。そのため、このような濁水を田園に供給する場合は問題ないかもしれないが、葉物野菜の畑地に供給する場合には泥土が農作物にかかるという問題は依然として解消されない。このような濁水を農地に供給する前に農業用水と腐葉土とに分離するためには、分離工程用の沈殿槽を新たに別途建設する必要がありコストがかかる。
また、本発明者らは、さらに鋭意検討を重ねた結果、吸水口の位置が低いファームポンドにおいては、吸水槽と不織布フィルタを備えた枠体とで囲むことによって一定量の清浄な水を確保しておけば、ファームポンドの水位が吸水口よりも高い状態に維持しながらショベルローダー等の集土手段を利用してさらに効率的に泥土を除去できることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づきなされるに至ったものである。
(1)ファームポンドの水位を該ファームポンドに設けられた吸水口よりも高い状態に維持したまま該ファームポンドの底部の堆積物を排出する方法であって、
高さが前記ファームポンドの水深よりも高くかつ枠体底部と前記ファームポンドの底部との間に間隙を有する枠体を前記ファームポンドに沈設して、前記枠体内のファームポンド底部の堆積物をポンプで吸引してファームポンド外に排出する
ことを特徴とするファームポンド底部の堆積物を排出する方法、
(2)前記枠体を複数個用い、これらを配列して前記ファームポンドに沈設することを特徴とする前記(1)項に記載の方法、
(3)ファームポンドの水位を該ファームポンドに設けられた吸水口よりも高い状態に維持したまま該ファームポンドの底部の堆積物を排出する方法であって、
前記ファームポンドの水位をできるだけ低く維持し、
高さが前記ファームポンドの水深よりも高く、側面に不織布フィルタを有し、かつ枠体底部と前記ファームポンドの底部との間に間隙を有しない枠体を前記ファームポンドの吸水槽入口部に隣接して沈設して、前記枠体内のファームポンド底部の堆積物をポンプで吸引し、
前記枠体外のファームポンド底部の堆積物を、集土手段により収集し、搬送手段によりファームポンド外に搬送する
ことを特徴とするファームポンド底部の堆積物を排出する方法、
(4)前記枠体が、上から見た形状がコの字型で、その開放側が前記ファームポンドの吸水槽入口部に隣接して設置されることを特徴とする前記(3)項に記載の方法、
(5)前記枠体が、上から見た形状が四角形で、前記ファームポンドの吸水槽入口部側の面およびそれに対向した面に不織布フィルタが設けられていることを特徴とする前記(3)項に記載の方法、および
(6)前記吸水槽入口部に不織布フィルタを設けることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法
を提供するものである。
また、本発明の方法によれば、浚渫作業区域を枠体で囲っているので、浚渫作業中にファームポンド底部の泥土が拡散しない。また、底部に間隙を有する枠体を用いることで、当該間隙がノズルの役割を果たし、枠体内に水が流入する際に発生するノズルジェット流によって、枠体内のファームポンド底部に沈着した泥土をはがすことができ、効率的にファームポンド底部の堆積物を排出することができる。
また、本発明の方法によれば、不織布フィルタによって泥土や小さなゴミを除去することで、泥土や小さなゴミが農業用水に混入して農作物に泥土がかかったりゴミ等がスプリンクラーに詰まったりすることを防止することができる。
また、本発明の方法によれば、吸水口の位置が低いファームポンドにおいては、吸水槽と不織布フィルタを備えた枠体とで囲むことによって一定量の清浄な水を確保しておくことで、農地への農業用水の供給を停止することなく浚渫作業ができ、ファームポンドの水位が吸水口よりも高い状態であってもショベルローダー等の集土手段を利用してさらに効率的にファームポンド底部の堆積物を排出することができる。
本発明は、枠体を利用して、農地への農業用水の供給を停止することなく、ファームポンド底部の堆積物を除去するものである。
本発明の第1の好ましい実施態様では、枠体底部とファームポンド底部との間に間隙を有する枠体を用いて、ファームポンドの水位をファームポンドに設けられた吸水口よりも高い状態に維持したまま、ファームポンドの所望の箇所に枠体を設置して枠体内のファームポンド底部の堆積物を吸引除去する。
また、本発明の第2の好ましい実施態様では、吸水口の位置が低いファームポンドにおいて、枠体底部と前記ファームポンドの底部との間に間隙を有さずかつ側面に不織布フィルタを備えた枠体を用いて、吸水槽と不織布フィルタを備えた枠体とで囲むことによって一定量の清浄な水を確保しておき、ファームポンドの水位をファームポンドに設けられた吸水口よりも高い状態に維持したまま、枠体内のファームポンド底部の堆積物を吸引除去する一方、枠体外のファームポンド底部の堆積物をショベルローダー等の集土手段により除去する。
図1は、本発明に用いられる枠体の好ましい一実施態様の平面図、図2は正面図である。また、図3は、本発明に用いられる枠体の別の好ましい一実施態様を示す正面断面図である。図1〜3中、11は枠体を、12はパネルを、13は支柱を、14は脚部を、16はタイヤを表し、15は枠体と地面90との間の間隙を表す。
また、図4は、本発明の第1の好ましい実施態様について説明する平面図であり、図5は、図4のB−B断面拡大図である。図4及び5中、30はファームポンドを、31はファームポンドの堤を、32は吐水口を、33は吸水パイプを、34は吸水口を、35は金網を、50は吸水槽を、51は吸水槽側壁を、52は吸水槽入口部を、53は格子状スクリーンを、54は不織布フィルタを表す。
枠体11は、上下に縦貫した筒状のものであるが、その形状は特に限定されない。上から見た形状が円形、四角形、六角形などいかなる形状であってもよいが、複数の枠体を配列する場合や枠体の組立・分解を考慮すると四角形のものが好ましい。例えば、上から見た形状が縦3m×横3mの正方形の枠体を用いることができる。
また、ファームポンドの壁際や吸水槽に隣接した領域について浚渫作業を行う場合には、上から見た形状がコの字型の枠体を用いることもできる。
また、脚部14は伸縮自在な構成としてもよく、脚部14が枠体11内部に収容されることで、枠体11底部とファームポンド底部との間の間隙の大きさを調節することができる。この駆動方法としてはジャッキや油圧ポンプ等の任意の装置を用いることができる。図3に例示した構成はジャッキを用いたものであり、ジャッキのハンドル17を矢印A方向に動かすことで脚部14を伸縮することができる。
枠体11は任意の方法で製造することができる。例えば、縦3m×横3m×高さ1.3m程度で、かつ、底部に高さ3cmの間隙15が設けられた直方体型アルミニウム製枠体11は、縦1.3m×横3mのアルミニウムパネル12を4枚及び1.33mの支柱13を4本用意し、パネル12の短辺同士の角度が90度となるように、ボルトとナット等の固着手段によってパネル12の短辺を支柱13に固定することで製造することができる。
本発明が適用されるファームポンドは特に限定されず、図7に示した一般的な開放式ファームポンドに適用することもできる。特に、中規模又は小規模のファームポンドに好ましく適用することができる。また、前記枠体は作業用土台として利用されるため安定して設置されることが好ましく、ファームポンド底部は概ね水平であることが好ましい。
ファームポンドの水位は、前記吸水口34よりも高い位置にさえあれば特に限定されない。例えば、上述した小規模のファームポンドの場合、120cmの水位で作業を行うことができる。
不織布フィルタ54は、目詰まりにより水の流通が悪くなるのを防ぐため、交換可能に設置されるのが好ましい。例えば、図5に示したように、吸水槽50の入口部52に設置する場合には、前記不織布フィルタ54に滑車を取り付け、傾斜して設けられている格子状スクリーン53の上からリンクチェーン55を用いて前記フィルタ54を吊り下げ、上下に滑動可能に設置する。フィルタ交換時にはリンクチェーン55を巻いて前記フィルタ54を引き上げてフィルタ交換を行う。
まず、あらかじめ用意しておいた枠体11の高さがファームポンド30の水深よりも高いことを確認する。枠体11は作業者が水上で作業するための土台として利用されるため、枠体11が完全に水没しないようにする必要があるからである。
次に、ワイヤ21の両端を滑車22を通してファームポンドの堤31に固定して、ファームポンド30上にワイヤ21を張る。一方、枠体11にワイヤ23を固定し、滑車24を通して前記ワイヤ21に枠体11を吊るす。ワイヤ21に吊るした枠体11を作業箇所の上空に移動させてから、作業箇所に枠体11を沈設させる。枠体11は複数使用することができる。図4では8個の枠体を配置している。また、枠体11を1つずつ隣接するように配置してもよく、複数の枠体11をあらかじめ連結させておいてからこれを沈設させてもよい。
ファームポンドから泥水を吸引する手段は任意のポンプを用いることができ、例えばロータリーポンプを用いることができる。ロータリーポンプとしては、例えば、フォーゲルサンロータリーポンプ(商品名、太平洋機工(株)社製)を用いることができる。
凝集剤は泥土を水から沈降分離することができるものであれば特に制限されない。ただし、後述するように分離した水をファームポンドに戻し、分離した土を農地に利用する観点から、凝集分離スピードが速く、かつ、人体に無害で安全な凝集剤を用いることが好ましく、特に、水道局などでの浄水処理に用いられている凝集剤のように、沈降速度が速く、生化学的酸素要求量(BOD)や全窒素、全リン、大腸菌などを低減することができる凝集剤が好ましい。このような凝集剤としては、例えばオクトクリーンパウダー(商品名、オクト社製)等を用いることができる。
分離した上水部の水は、必要に応じてpH中和処理した後に、ファームポンドに戻す。沈降したフロックについては脱水装置に搬送して脱水処理を行う。
脱水処理は、一般的には、布袋にフロックを詰め込み、これを絞ることで行うことができる。脱水処理は効率よく短時間で行うことが好ましく、この観点から例えば上記のマジカルベコップシリーズ(商品名、オクト社製)を脱水装置として用いることが好ましい。この脱水装置は、布袋に泥土を圧入するのと同時に泥土中の液体を吸引するダイヤフラムポンプを用いた脱水タンクを備えており、少ない動力かつ短時間で効率的に脱水することができる(特許第3510237号公報参照)。
また、脱水装置は、脱水圧力を適宜変更できるものが好ましい。高圧で脱水して得られた脱水ケーキを産業廃棄物として処理することもできるが、資源リサイクルの観点から、含水率約30%の土が得られるように圧力を調節して脱水し、得られた土を農地に利用することが好ましい。脱水された水はファームポンドに戻すことが好ましい。
また、枠体の側面には、枠体外から枠体内に水を流入させるために、不織布フィルタを設ける。これにより、枠体外の泥水がろ過されて、吸水槽と枠体とで囲んだ領域に一定量の清浄な水を確保しつつ、浚渫作業中に当該領域から農業用水を供給した場合であっても枠体外から不織布フィルタを通って清浄な水が当該領域に供給され一定量の清浄な水を確保することができる。
まず、図6に示すように、上から見た形状がコの字型で、開放した部分の幅が吸水槽50の幅に一致し、かつ、側面に不織布フィルタ12aを備えた枠体11を、吸水槽50の前に隣接して設置する。また、図6に示されていないが、枠体11は、枠体11底部と前記ファームポンドの底部30との間に間隙を有しない。枠体11の設置方法は、上記第1の好ましい実施態様と同様に行う。
集土手段61としては、ショベルローダー(タイヤ式又はクローラー式)やブルドーザー等の重機を用いることができ、これによりファームポンド底部の泥土をかき集めることができ、より効率的にファームポンドの底部の堆積物を排出することができる。集土手段61はクレーン等によりファームポンド30内に搬入することができる。
搬送手段62としては、クラムシェルやコンベヤー等の任意の搬送手段を用いることができ、これにより集土手段61でかき集めた泥土をファームポンド30外に排出することができる。
なお、このように集土手段61として重機を用いる場合には、ファームポンドの壁面や底部を破壊しないように注意する必要があり、例えば、壁面付近は重機によらず作業者がスコップでかき集めたり吸引ホースを用いて泥土を排出したりするのが好ましい。
12 パネル
12a 不織布フィルタ付きパネル
13 支柱
14 脚部
15 間隙
16 タイヤ
17 ハンドル
21、23 ワイヤ
22、24 滑車
25 作業者
26 作業板
27 吸引ホース
30 ファームポンド
31 堤
32 吐水口
33 吸水パイプ
34 吸水口
35 金網
40 水
50 吸水槽
51 吸水槽側壁
52 吸水槽入口部
53 格子状スクリーン
54 不織布フィルタ
61 ショベルローダー等の集土手段
62 コンベヤー等の搬送手段
70 ファームポンド
71 堤
72 吐水口
80 吸水槽
81 吸水槽側壁
82 吸水槽入口部
83 格子状スクリーン
Claims (6)
- ファームポンドの水位を該ファームポンドに設けられた吸水口よりも高い状態に維持したまま該ファームポンドの底部の堆積物を排出する方法であって、
高さが前記ファームポンドの水深よりも高くかつ枠体底部と前記ファームポンドの底部との間に間隙を有する枠体を前記ファームポンドに沈設して、前記枠体内のファームポンド底部の堆積物をポンプで吸引してファームポンド外に排出する
ことを特徴とするファームポンド底部の堆積物を排出する方法。 - 前記枠体を複数個用い、これらを配列して前記ファームポンドに沈設することを特徴とする請求項1記載の方法。
- ファームポンドの水位を該ファームポンドに設けられた吸水口よりも高い状態に維持したまま該ファームポンドの底部の堆積物を排出する方法であって、
前記ファームポンドの水位をできるだけ低く維持し、
高さが前記ファームポンドの水深よりも高く、側面に不織布フィルタを有し、かつ枠体底部と前記ファームポンドの底部との間に間隙を有しない枠体を前記ファームポンドの吸水槽入口部に隣接して沈設して、前記枠体内のファームポンド底部の堆積物をポンプで吸引し、
前記枠体外のファームポンド底部の堆積物を、集土手段により収集し、搬送手段によりファームポンド外に搬送する
ことを特徴とするファームポンド底部の堆積物を排出する方法。 - 前記枠体が、上から見た形状がコの字型で、その開放側が前記ファームポンドの吸水槽入口部に隣接して設置されることを特徴とする請求項3記載の方法。
- 前記枠体が、上から見た形状が四角形で、前記ファームポンドの吸水槽入口部側の面およびそれに対向した面に不織布フィルタが設けられていることを特徴とする請求項3記載の方法。
- 前記吸水槽入口部に不織布フィルタを設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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