JP4721589B2 - 流動層ボイラ用のダミーチューブ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダミーチューブ装置に係り、特に、流動層ボイラの火炉内に設置するダミーチューブ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
流動層ボイラとは、火炉底部に設けられた分散板から空気を均一に火炉内に吹き込むことにより、火炉内の石灰石などの流動媒体を流動させて流動層を形成するものであり、流動層に出現する気泡により流動媒体が活発に運動し浮遊流動化するため、ここに小粒径に粉砕した個体燃料または液体燃料などを投入すると、流動状態で効率良く燃料などを燃焼できるボイラである。火炉内での燃焼により発生した熱は、流動層内に配設された伝熱管内を通流する流体により、例えば蒸気などとして回収する。 ところで、伝熱管は、流動層内に水平方向に延在させて縦横に間隔をおいて設置された複数の伝熱管からなる伝熱管群として設置されているが、伝熱管群を構成する伝熱管の本数は、要求される流動層ボイラの熱交換量に対して必要とされる伝熱面積により決まる。このため、流動層内全体に均一に伝熱管を設置しようとすると、伝熱面積が過剰となる場合があり、流動層内全体に均一に伝熱管を配置することができない場合が生じる。伝熱管群の伝熱管の配置が不均一になると、例えば、部分的に縦方向の伝熱管の数、つまり伝熱管の段数が異なる部分が生じることによって伝熱管群の底部が凹凸状になるなど、伝熱管群の底部に伝熱管を設置していない周囲よりも最下段の伝熱管が引っ込んだ状態の空間などができる。
【0003】
このような伝熱管を設置していない空間部分では、気泡が伝熱管に衝突しないため、伝熱管による気泡の分断効果がなく、伝熱管が設置されている部分よりも気泡は大きく成長しながら流動層内を上昇する。この大きく成長した気泡の上昇に伴い、流動媒体が、伝熱管を設置していない空間部分を、伝熱管を設置している部分よりも激しく吹き抜けるため、この伝熱管を設置していない空間部分上方や空間部分に周囲などに位置する伝熱管を摩耗させることがある。
【0004】
これに対して、伝熱管を設置していない空間部分に熱回収を行わない非冷却のダミーチューブ、例えば伝熱管の形状に対応した形状の丸鋼や両端を閉塞した鋼管などを伝熱管の代わりに設置することにより、伝熱管群の伝熱管の配置を均一化し、伝熱管を設置していない空間部分上方や空間部分に周囲などに位置する伝熱管の摩耗を抑制することが考えられている。従来考えられているダミーチューブ装置は、複数の貫通穴が形成された略方形の板状の管板サポート、そしてダミーチューブなどで構成されている。管板サポートは、伝熱管に間隔をおいて固定されており、また支持するダミーチューブの段数に応じて貫通穴が形成されている。ダミーチューブは、この伝熱管に固定された複数の管板サポートの対応する貫通穴間に挿通されて管板サポートによって支持されている。このとき、ダミーチューブと管板サポートの貫通穴とは固定されておらず、ダミーチューブの外周面と貫通穴の内周面との間には、ダミーチューブが延在方向に移動可能な程度の隙間を有している。
【0005】
このような構成の従来のダミーチューブ装置では、伝熱管の摩耗を抑制するのに加えて、例えば800〜900℃といった温度になる流動層内で生じる伝熱管とダミーチューブとの熱伸び量の差を吸収できるようにしている。すなわち、熱交換を行う伝熱管と熱交換を行わない非冷却のダミーチューブとでは、非冷却のダミーチューブの方が熱伸び量が多いため、ダミーチューブは、管板サポートの貫通穴内をスライドして伸びる。これにより、伝熱管よりもダミーチューブの熱伸び量が多い分を吸収し、伝熱管よりもダミーチューブの熱伸び量が多いことによって発生するダミーチューブや管板サポートの破損などを回避することを考えている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のダミーチューブ装置では、管板サポートの貫通穴とダミーチューブとの隙間に流動媒体が挟まることによって、ダミーチューブの動きが拘束され管板サポートの貫通穴内をスライドできなくなる場合がある。ダミーチューブが管板サポートの貫通穴内をスライドできなくなり、ダミーチューブが乾板サポートに固定されたような状態になると、熱伸びによってダミーチューブが座屈変形したり、管板サポートが変形してしまうなど、ダミーチューブ装置が破損する可能性がある。
【0007】
さらに、流動媒体の流動によってダミーチューブに発生する振動により、ダミーチューブの管板サポートの貫通穴の内周面に接触する部分にフレッティング摩耗が発生する可能性がある。フレッティング摩耗によってダミーチューブの外周面が削れることにより、管板サポートの貫通穴の内周面とダミーチューブの外周面との隙間が大きくなって流動媒体が挟まり易くなり、さらに、ダミーチューブの外周面が削れた部分に管板サポートの貫通穴の内周面が引っかかることにより、ダミーチューブのスライドつまり移動が拘束される可能性が大きい。したがって、従来のダミーチューブ装置を備えた流動層ボイラでは、ダミーチューブ装置の保守点検や、交換などを頻繁に行う必要が生じるため、従来のダミーチューブ装置では、流動層ボイラの信頼性を低下させてしまう可能性がある。
【0008】
本発明の課題は、流動層ボイラの信頼性を低下させずに流動層ボイラの伝熱管の摩耗を抑制することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のダミーチューブ装置は、流動層ボイラの火炉内に設けられた伝熱管に固定される固定部材と、この固定部材に連結されてダミーチューブを支持する支持部材とを有し、この支持部材は、ダミーチューブの延在方向を含む面内で回動可能に軸支された構成とすることにより上記課題を解決する。
【0010】
また、流動層ボイラの火炉内に設けられた伝熱管に固定される固定部材と、連結部材を介して固定部材に連結されてダミーチューブを支持する支持部材とを有し、支持部材は、ダミーチューブの延在方向を含む面内で回動可能に連結部材に軸支され、連結部材は、ダミーチューブの延在方向を含む面内で回動可能に固定部材に軸支された構成とすることにより上記課題を解決する。
【0011】
このような構成とすれば、ダミーチューブが伝熱管よりも多く熱伸びする分を支持部材または連結部の回動で吸収でき、従来のようにダミーチューブと管板サポートの貫通穴との隙間を有していない構成であるため、ダミーチューブと管板サポートの貫通穴との隙間に流動媒体が挟まることによってダミーチューブの熱伸びを吸収できなくなることがない。さらに、ダミーチューブの振動によりフレッティング摩耗が発生することもない。したがって、ダミーチューブ装置の損傷が発生し難く、流動層ボイラの信頼性を低下させずに流動層ボイラの伝熱管の摩耗を抑制できる。
【0012】
さらに、支持部材は、少なくとも一部にねじが切られた棒状に形成されたロッド部を有し、ダミーチューブは、ロッド部に挿通可能な筒状のスリーブに固定されており、ロッド部がこのスリーブに挿通され、ロッド部に切ったねじに対応するナットをロッド部に螺合させることでダミーチューブが支持部材に固定された構成とすれば、ダミーチューブを交換する必要が生じた場合でも容易にダミーチューブを交換できるので好ましい。
【0013】
支持部材が上下方向に並ぶ複数段のダミーチューブを支持し、伝熱管の延在方向に対応して同じ段に複数のダミーチューブが延在しているとき、同じ段の隣り合うダミーチューブ間の隙間の位置を各段毎に交互にずらした構成とする。このような構成にすれば、支持部材が上下方向に並ぶ複数段のダミーチューブを支持し、伝熱管の延在方向に対応して同じ段に複数のダミーチューブが延在しているとき、同じ段の隣り合うダミーチューブ間の隙間が上下方向に連続した状態にならないため、気泡の成長を抑制し、伝熱管の摩耗を一層抑制することができる。
【0014】
また、火炉内に配設された複数の伝熱管からなる伝熱管群の伝熱管が設置されていない空間または伝熱管群の下部に上記いずれかの構成のダミーチューブ装置が設けられた流動層ボイラとすれば、流動層ボイラの信頼性を向上できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用してなるダミーチューブ装置の一実施形態について図1乃至図9を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなるダミーチューブ装置の概略構成を示す正面図である。図2は、本発明を適用してなるダミーチューブ装置の概略構成を分解した状態で示す側面図である。図3及び図4は、スリーブとダミーチューブの構成を示す平面図である。図5は、スリーブとダミーチューブの構成を示す正面図である。図6は、本発明を適用してなるダミーチューブ装置の概略構成を示す側面図である。図7は、図6のVII部分の拡大図である。図8は、流動層ボイラの概略構成と動作を模式的に示す断面図である。図9は、流動層内での気泡の成長を説明する模式図である。なお、図1、図5及び図7における伝熱管及びダミーチューブ、図2における支持部材は、断面で記されている。
【0016】
本実施形態のダミーチューブ装置1は、図1に示すように、流動層ボイラの火炉内に形成される流動層内に位置する伝熱管3に固定される固定部材5、丸鋼または両端を閉塞した鋼管などからなるダミーチューブ7、ダミーチューブ7を支持する支持部材9、そして固定部材5と支持部材9とを連結する連結部材11などで構成されている。固定部材5は、垂直方向に隣り合う2本の伝熱管3に対応する位置に伝熱管3の約半分を覆うような2箇所の凹部を形成した帯状の鋼板2枚を向かい合わせにして伝熱管3を挟み込むものである。このような固定部材5を2つ、固定部材5を形成する2枚の鋼板を溶接したり、ボルト止めすることなどで水平方向に隣り合う伝熱管3に固定する。
【0017】
連結部材11は、固定部材5の下端部間に挟み込まれた水平方向に延在するピン13、ピン13が設けられた板状のリンク部15などで構成されており、2つの固定部材5の下端部にピン13を軸として回動可能に軸支されている。ピン13は、リンク部15の一つの縁寄りに設けられており、リンク部15のピン13が設けられている側の縁に対向する縁は、面取りされており、さらに、この縁は、弧状に形成されている。また、この弧状に形成されたリンク部15の縁寄りには貫通穴が形成されている。支持部材9は、図1及び図2に示すように、連結部材11のリンク部15の弧状に形成された縁側部分に嵌合する溝17が形成された凹形状のサポート部19、凹形状のサポート部19の外側底面に突設されたロッド部21などで構成されている。支持部材9のサポート部19に形成された溝17の両側壁の中央部分には、各々、連結部材11のリンク部15の弧状に形成された縁側寄りに形成された貫通穴に対応する位置及び大きさの貫通穴23が形成されている。
【0018】
支持部材9は、サポート部19に形成された溝17に連結部材11のリンク部15の弧状に形成された縁側部分を嵌合させ、連結部材11のリンク部15に形成された貫通穴とサポート部19に形成された貫通穴23との位置を合わせた状態で2つの貫通穴23間にボルト25を挿通し、ボルト25の軸にこの軸に対応するナット27を螺合させることで連結部材11に連結されている。したがって、支持部材9は、ボルト25を軸として回動可能に連結部材に軸支されている。このように、連結部材11は、ダミーチューブ7の延在方向を含む面内で回動可能に固定部材5に軸支され、支持部材9は、ダミーチューブ7の延在方向を含む面内で回動可能に連結部材11に軸支されている。
【0019】
支持部材9のロッド部21には、ねじが切られている。ダミーチューブ7は、ダミーチューブ7の延在方向に貫通し、支持部材9のロッド部21を挿通可能な穴を有する円筒状のスリーブ29、31に固定されている。ダミーチューブ7のスリーブ29、31への固定方法は異なっている。スリーブ29では、図2及び図3に示すように、スリーブ29の外周面の対向する位置部分に、各々ダミーチューブ7が溶接されている。したがって、スリーブ29は、1本のダミーチューブ7の途中にスリーブ29を設けた構成になっている。
【0020】
一方、スリーブ31は、図2乃至図5に示すように、スリーブ31の外周面の対向する位置部分に、各々耳状に形成したベルト33が設けられており、このベルト33によってダミーチューブ7を動かないようにスリーブ31に固定している。したがって、スリーブ31は、スリーブ31を挟むように2本のダミーチューブ7を支持した構成となっている。このようにダミーチューブ7が固定されたスリーブ29とスリーブ31を、図1及び図2に示すように、支持部材9のロッド部21に交互に挿入して固定している。
【0021】
すなわち、スリーブ29を支持部材9のロッド部21に挿入した後、支持部材9のロッド部21に切られたねじに対応するナット35をロット部21に螺合させてスリーブ29を支持部材9のロッド部21に固定する。さらに、スリーブ31を支持部材9のロッド部21に挿入した後、支持部材9のロッド部21に切られたねじに対応するナット35をロッド部21に螺合させてスリーブ31を支持部材9のロッド部21に固定する。このような固定をスリーブ29とスリーブ31の固定を繰り返すことで、図1に示すように、伝熱管3が横断面で見たときに千鳥配置となっている場合に対応して、ダミーチューブ7をその横断面で見たときに千鳥配置になるようにして支持部材9にダミーチューブ7を支持している。
【0022】
このような本実施形態のダミーチューブ装置1では、図6に示すように、例えば6段にわたって千鳥配置されたダミーチューブ7の両端部を支持部材9で支持している。すなわち、連結部材11を介して連結された固定部材5と支持部材9からなる組みを2組用いることで複数段のダミーチューブ7を支持している。さらに、伝熱管3には、このような本実施形態のダミーチューブ装置1が複数固定されており、ダミーチューブ7が、ダミーチューブ7の軸方向に複数並んだ状態になっている。つまり、伝熱管3の延在方向に対応して同じ段に複数のダミーチューブ7が延在している状態になっている。
【0023】
そして、1つのダミーチューブ装置1において、ダミーチューブ7を段毎に交互にずらし、ダミーチューブ7の端部が段毎に出入りした凹凸状態にしている。このようにダミーチューブ7を支持したダミーチューブ装置1が伝熱管3に沿って複数配置された状態となっているため、隣り合うダミーチューブ装置1のダミーチューブ7の端部間における隙間は、各段毎に交互にずれた状態になっており、ダミーチューブ装置1を下から見上げた場合、ダミーチューブ7の端部間に伝熱管3に向けて連続する隙間または空間がない状態にしている。
【0024】
なお、ダミーチューブ7として鋼管を用いる場合、図7に示すように、ダミーチューブ7の端部の開口は、閉止蓋37により略密閉することが望ましい。これは、流動媒体中に燃料の未燃分か含まれているため、端部が開口した鋼管のままでは、鋼管内部に未燃分を含んだ流動媒体が流入するため、流動層ボイラ運転時に鋼管内部に流入した未燃分が熾き火燃焼して鋼管が焼損するのを防ぐためである。さらに、流動媒体が鋼管内部に詰まることにより、ダミーチューブの重量が重くなるのを防ぐこともできる。鋼管からなるダミーチューブ7を略密閉状態にした場合、流動層ボイラ運転時には鋼管内部の空気が膨張し内圧が上昇するが、通常の鋼管サイズで充分強度は保たれるので問題ない。
【0025】
ここで、このような構成のダミーチューブ装置1を取り付ける流動層ボイラの概略構成と本発明の特徴部について説明する。流動層ボイラとは、図8に示すように、火炉39の底部に設けられた多孔板などからなる分散板41から空気43を火炉39に均一に吹き込むことにより石灰石などの流動媒体を流動させて流動層45を形成し、流動層45に出現する気泡47により流動層45を形成している流動媒体が活発に運動し浮遊流動化しているため、ここに、例えば小粒径に粉砕した個体燃料または液体燃料などを投入すると流動状態で効率良く燃焼を行うことができるものである。火炉39内で発生した熱は、流動層45内に水平に延在する複数本の伝熱管3内を通流する流体、例えば水や蒸気などにより回収する。 このように、流動層ボイラでは、流動層45内に伝熱管3を設置して熱回収を行うが、複数本の伝熱管3の表面積の合計である伝熱面積は、流動層ボイラに要求される熱交換量により決定される。このため、流動層45内全体に均一に複数本の伝熱管3を設置しようとすると伝熱面積過剰になるなどの理由のため、流動層45内全体に均一に複数本の伝熱管3を配置することは困難な場合がある。例えば、図9に示すように、異種の流体が通流される伝熱管群3aと伝熱管群3bとが横方向に隣接して交互に流動層45内に配置されており、各伝熱管群3a、3bは、伝熱管3の本数が格段毎に2本と1本と言ったように交互に変わり、伝熱管3が、その横断面で見たときに千鳥配置に設けられている。このとき、伝熱面積過剰などの理由で伝熱管3の表面積の合計を減らすため、伝熱管群3bの段数が制限されていると、伝熱管群3aに対して伝熱管群3bの段数がすく内分、伝熱管群3bの最下段の伝熱管3下方に伝熱管群3aに囲まれた伝熱管3が設置されていない空間47が生じる。
【0026】
このような伝熱管3が設置されていない空間47では、伝熱管群3a、3bの下方にある分散板2から上昇してくる気泡49を伝熱管3によって分断できないため、気泡49は、伝熱管3で気泡49を分断できる伝熱管群3aが設置されている部分に比べて大きく成長しながら上昇する。つまり、気泡49は上昇するにしたがって大きくなるため、伝熱管3が設置されていない空間47でも気泡49は上昇するにしたがってさらに大きくなる。加えて、空間47では、気泡49が流れ易いと言う特性がある。したがって、気泡49によって吹き上げられ流動する流動媒体51は、伝熱管群3bの下方の伝熱管3が設置されていない空間47において、伝熱管群3aが設置されている部分に比べて激しく吹き抜ける。このため、伝熱管3が設置されていない空間47の上方にある伝熱管群3bの最下段の伝熱管3や、空間47を囲んでいる伝熱管群3aの伝熱管3などに摩耗が生じてしまう場合がある。
【0027】
したがって、本実施形態では、図1に示すように、伝熱管群3bを構成する伝熱管3に固定部材5を固定することで、伝熱管群3aに比べて伝熱管3の段数が少ない伝熱管群3bの下方に、伝熱管群3aと同じ段数及び配置にダミーチューブ7を配設できるダミーチューブ装置1を設置している。ダミーチューブ装置1のダミーチューブ7により、伝熱管群3aが設置された部分と同様に、気泡49が分断されるため、気泡49の成長が妨げられ、伝熱管群3bの最下段の伝熱管3や伝熱管群3aの伝熱管3などで生じる摩耗を抑制することができる。
【0028】
ところで、従来考えられていたダミーチューブ装置53は、図10及び図11に示すように、方形状の鋼板に伝熱管3への固定用の貫通穴とダミーチューブ7を挿通する貫通穴55を必要な段数分形成した管板サポート57、そして管板サポート57の貫通穴55に挿通されたダミーチューブ7などで構成されている。管板サポート57は、伝熱管3を貫通穴に挿通して溶接することなどで、伝熱管3に固定される。ダミーチューブ7は、例えば2枚の管板サポート57の貫通穴55間に挿通されることで、管板サポート57に固定されることなく支持される。さらに、管板サポート57の貫通穴55は、ダミーチューブ7が移動できるような径に形成されており、貫通穴55の内周面とダミーチューブ7の外周面との間には隙間がある。
【0029】
したがって、流動層45内が800℃〜900℃といった高温になると、内部に熱を回収する流体が通流している冷却される伝熱管3に対して非冷却のダミーチューブ7が多く熱伸びする分をダミーチューブ7が管板サポート57の貫通穴55をスライドすることで吸収している。しかし、ダミーチューブ装置53は、高濃度の粉粒体である流動媒体51からなる流動層45中に設置されているため、管板サポート57の貫通穴55の内周面とダミーチューブ7の外周面との隙間に流動媒体51が挟まり、ダミーチューブ7が管板サポート57の貫通穴55をスライドするのを拘束する場合が生じる。ダミーチューブ7のスライドつまり移動が拘束されると、ダミーチューブ7が座屈変形したり、管板サポート57が変形し、ダミーチューブ装置53が破損してしまう場合がある。
【0030】
さらに、流動媒体51の流動によりダミーチューブ7に発生する振動により、図12に示すように、ダミーチューブ7の管板サポート57の貫通穴55の内周面に接触する部分にフレッティング摩耗59が発生する可能性がある。フレッティング摩耗によってダミーチューブ7の外周面が削れることにより、管板サポート57の貫通穴55の内周面とダミーチューブ7の外周面との隙間が大きくなって流動媒体が挟まり易くなり、また、ダミーチューブ7の外周面が削れた部分に管板サポート57の貫通穴55の内周面が引っかかることにより、ダミーチューブ7のスライドつまり移動が拘束される可能性が大きくなる。しかも、フレッティング摩耗の発生は、設置したダミーチューブ7の本数分の管板サポート57での支持箇所全てが該当し、隙間が大きくなった部分一箇所でもダミーチューブ7のスライドを拘束するとダミーチューブ装置53が破損につながる可能性があるため、保守点検作業も時間を要し、また頻繁に保守点検作業を行う必要が生じる。
【0031】
加えて、ダミーチューブ装置53に上記のような問題が発生した場合、補修を要する。また、ダミーチューブ7は非冷却で設置されるため、流動層ボイラの運転時にはダミーチューブ7のメタル温度は流動層45の温度と同じ800〜900℃になり、高温によるクリープ変形が蓄積される。このため、上記のような問題が発生しなくても、長期的にはダミーチューブ7の補修を行う必要が発生する。しかし、ダミーチューブ装置53では、管板サポート57を切断する必要があるなど補修作業が複雑になる。また、ダミーチューブ7は、伝熱管3が設置されていない空間47に設置されることになるため、点検や補修作業のためにダミーチューブ7にアクセスできないといった問題が発生し、特に、補修時には隣接する伝熱管群も撤去し作業する必要が生じる場合もあり、この点でも補修作業が複雑になる上、補修作業の工期が長くなってしまう。
【0032】
これに対して本実施形態のダミーチューブ装置1では、ダミーチューブ7が伝熱管3よりも多く熱伸びする分を、支持部材9と連結部材11のダミーチューブ7の延在方向を含む面内での回動により吸収することができる。つまり、従来のようにダミーチューブ7と管板サポート57の貫通穴55との間の隙間などを有していない構成であるため、ダミーチューブ7と管板サポート57の貫通穴55との隙間に流動媒体が挟まることによってダミーチューブの熱伸びを吸収できなくなることがない。さらに、ダミーチューブ7は、支持部材9のロッド部21に挿入されたスリーブ29、31に確実に固定されているため、ダミーチューブ7の振動によりフレッティング摩耗が発生することもない。したがって、ダミーチューブ装置の損傷が発生し難く、流動層ボイラの信頼性を低下させずに流動層ボイラの伝熱管の摩耗を抑制できる。
【0033】
さらに、従来のようにダミーチューブ7と管板サポート57の貫通穴55との間の隙間などを有していない構成であり、また、ダミーチューブ7の振動によりフレッティング摩耗が発生することがない。加えて、ダミーチューブ7が何本有ろうとも、伝熱管3との温度差によってダミーチューブ7の熱伸びが多い分は、一箇所の支持部材9と連結部材11の回動で吸収することができ、しかも回動による移動量は、従来のダミーチューブ装置53のダミーチューブ7のスライドによる移動量よりも少なくて済む。このように、部材の移動量が少ないため、流動媒体51による抵抗が小さく、部材の移動を拘束する、すなわちダミーチューブ7の伝熱管3よりも熱伸びが多い分を吸収できなくなるトラブルが生じ難く、また、保守点検作業の頻度を低減できる。
【0034】
さらに、本実施形態のダミーチューブ装置1では、支持部材9のロッド部21にはねじが切られており、ダミーチューブ7は、ロッド部21に挿通可能な筒状のスリーブ29、31に固定されている。そして、支持部材9をスリーブ29、31に挿通し、支持部材9に切ったねじに対応するナット35を支持部材に螺合することでダミーチューブ7が支持部材9のロッド部21に固定されている。このように、ダミーチューブ7はスリーブ29、31をロッド部21に挿入し、ナット35でナット締めするだけで固定されており、ナット35を外せば容易にダミーチューブ7を支持部材9から取り外すごとができる。したがって、万一ダミーチューブ7が座屈変形したり、高温によるクリープ変形が蓄積されるなどにより、ダミーチューブ7を交換する必要が生じた場合でも、容易にダミーチューブの交換が行え、また、アクセスし難い場所にダミーチューブが設置されていても、ナット35を取り外すことで簡単にダミーチューブを取り外して補修を行うことができ、補修作業が容易になる上、補修作業の工期も低減できる。
【0035】
加えて、本実施形態のダミーチューブ装置1では、1つのダミーチューブ装置1において、ダミーチューブ7を段毎に交互にずらし、ダミーチューブ7の端部が段毎に出入りした凹凸状態にしている。したがって、ダミーチューブ装置1が伝熱管3に沿って複数配置されたとき、隣り合うダミーチューブ装置1のダミーチューブ7の端部間における隙間が各段毎に交互にずれた状態になっている。このため、ダミーチューブ装置1を下方から見上げたときに、連続した隙間がないため、図7に示すように、最下段のダミーチューブ7間の隙間を通り上昇した気泡49は、次の段のダミーチューブ7に衝突し分断される。したがって、気泡49の成長が抑えられ、ダミーチューブ7そして伝熱管3の摩耗を一層抑制できる。
【0036】
さらに、本実施形態のダミーチューブ装置1を備えた流動層ボイラでは、伝熱管3の摩耗が抑制される上、ダミーチューブ装置1の破損などが生じ難いため、保守点検の頻度の低減や、補修作業を容易にできる。したがって、流動層ボイラの信頼性が低下しないだけでなく、流動層ボイラの信頼性を向上できる。
【0037】
また、本実施形態では、連結部材11を介して固定部材5と支持部材9とを連結した構成としたが、例えばダミーチューブ7の段数が少なく、横方向に連続して設置する場合などは、図13及び図14に示すように、ダミーチューブ11a・11bをロッド15に挿入し支持する構造は同じであるが、連結部材11を有しおらず、固定部材5にボルト25とナット27によって直接支持部材9を軸支した構成のダミーチューブ装置61にすることもできる。このような構成のダミーチューブ装置61は、比較的ダミーチューブ7が短く熱伸び量も少ない場合やダミーチューブ装置を設置するスペースの少ない場合などに適する。
【0038】
また、本実施形態では、各スリーブ29、31毎に、各々のスリーブ29、31を固定するためのナット35を設けているが、スリーブ29、31を連続して支持部材9のロッド部21に挿入し、ロッド部21の最下部にのみナット35を螺合させてスリーブ29、31を固定する構成にすることもできる。さらに、メンテナンス時に人力で取り扱えるようなダミーチューブの重量であれば、図15に示すように、スリーブ29、31を支持部材9のロッド部21の長さに対応した長さで一体に形成したスリーブ63を用いることもできる。
【0039】
また、本実施形態では、固定部材5は、垂直方向に隣り合う2本の伝熱管3に対応する位置に伝熱管3の約半分を覆うような2箇所の凹部を形成した帯状の鋼板2枚を向かい合わせにして伝熱管3を挟み込む所謂ハニカムサポート構造になっているが、固定部材は、これに限らず、伝熱管3に固定できれば様々な構成の固定部材を用いることができる。ただし、本実施形態の固定部材5のようなハニカムサポート構造の固定部材を用いれば、伝熱管3の振動に対するフレッティング摩耗を防止しながらダミーチューブ7の荷重を支持できる。
【0040】
また、本実施形態では、支持部材9のロッド部21は、サポート部19に固定された状態となっているが、ロッド部21をサポート部19にネジ込みにより連結する構成とすれば、保守点検や補修時にロッド部21をサポート部19から取り外せるようにすることも可能である。
【0041】
また、本発明は、本実施形態で説明した構成の流動層ボイラに限らず、様々な構成の流動層ボイラの様々な位置に設置することができる。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、流動層ボイラの信頼性を低下させずに流動層ボイラの伝熱管の摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用してなるダミーチューブ装置の一実施形態の概略構成を示す正面図である。
【図2】本発明を適用してなるダミーチューブ装置の一実施形態の概略構成を分解した状態で示す側面図である。
【図3】スリーブとダミーチューブの構成を示す平面図である。
【図4】スリーブとダミーチューブの構成を示す平面図である。
【図5】スリーブとダミーチューブの構成を示す正面図である。
【図6】本発明を適用してなるダミーチューブ装置の一実施形態の概略構成を示す側面図である。
【図7】図6のVII部分の拡大図である。
【図8】流動層ボイラの概略構成と動作を模式的に示す断面図である。
【図9】流動層内での気泡の成長を説明する模式図である。
【図10】従来のダミーチューブ装置の概略構成の一例を示す正面図である。
【図11】従来のダミーチューブ装置の概略構成の一例を示す側面図である。
【図12】図11のXII部分の拡大図である。
【図13】本発明を適用してなるダミーチューブ装置の変形例の概略構成を示す正面図である。
【図14】本発明を適用してなるダミーチューブ装置の変形例の概略構成を部分的に示す側面図である。
【図15】本発明を適用してなるダミーチューブ装置の別の変形例の概略構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1 ダミーチューブ装置
3 伝熱管
5 固定部材
7 ダミーチューブ
9 支持部材
11 連結部材
13 ピン
21 ロッド部
25 ボルト
27、35 ナット
29、31 スリーブ
Claims (5)
- 流動層ボイラの火炉内に設けられた伝熱管に固定される固定部材と、該固定部材に連結されてダミーチューブを支持する支持部材とを有し、該支持部材は、前記ダミーチューブの延在方向を含む面内で回動可能に軸支された流動層ボイラ用のダミーチューブ装置。
- 流動層ボイラの火炉内に設けられた伝熱管に固定される固定部材と、連結部材を介して前記固定部材に連結されてダミーチューブを支持する支持部材とを有し、前記支持部材は、前記ダミーチューブの延在方向を含む面内で回動可能に前記連結部材に軸支され、前記連結部材は、前記ダミーチューブの延在方向を含む面内で回動可能に前記固定部材に軸支された流動層ボイラ用のダミーチューブ装置。
- 前記支持部材は、少なくとも一部にねじが切られた棒状に形成されたロッド部を有し、前記ダミーチューブは、前記ロッド部に挿通可能な筒状のスリーブに固定されており、前記ロッド部が該スリーブに挿通され、前記ロッド部に切ったねじに対応するナットを前記ロッド部に螺合させることで前記ダミーチューブが前記支持部材に固定されたことを特徴とする請求項1または2に記載のダミーチューブ装置。
- 前記支持部材が上下方向に並ぶ複数段のダミーチューブを支持し、前記伝熱管の延在方向に対応して同じ段に複数のダミーチューブが延在しているとき、同じ段の隣り合う前記ダミーチューブ間の隙間の位置を各段毎に交互にずらしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダミーチューブ装置。
- 火炉内に配設された複数の伝熱管からなる伝熱管群の伝熱管が設置されていない空間または伝熱管群の下部に請求項1乃至4のいずれか1項に記載のダミーチューブ装置が設けられた流動層ボイラ。
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