例えば、2台のウインチのうちの一方を単独で運転し、また2台のウインチを同時に運転することを可能ならしめるようにしたウインチのシリーズ油圧回路(一般的な公知技術である)を備えてなるクレーンが知られている。以下、一般的な公知技術になる従来例1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路を、添付図面を順次参照しながら説明する。
図9は従来例1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路であり、図10は従来例1に係り、第1油圧モータのモータ容量を制御するための第1容量制御機構C1の詳細構成説明図であり、また図11は従来例1に係り、第2油圧モータのモータ容量を制御するための第2容量制御機構C2の詳細構成説明図である。
即ち、この従来例1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路は、油圧ポンプPから作動油タンクTに連通する圧油供給基流路L1を備えている。この圧油供給基流路L1の油圧ポンプP側には、6ポート3位置の上流側方向制御弁V1が介装されると共に、この上流側方向制御弁V1と作動油タンクTとの間に、前記上流側方向制御弁V1と同構成になる下流側方向制御弁V2が介装されている。また、前記油圧ポンプPから作動油タンクTに連通する油戻し流路L2を備えている。この油戻し流路L2に前記圧油供給基流路L1に送給する圧油の圧力を制御するリリーフ弁V3が介装され、このリリーフ弁V3からリリーフするリリーフ油が作動油タンクTに戻されるように構成されている。
前記圧油供給基流路L1の上流側方向制御弁V1から上流側巻上げ用流路6および上流側巻下げ用流路7が分岐しており、前記上流側方向制御弁V1は前記上流側巻上げ用流路6および上流側巻下げ用流路7を介して、第1容量制御機構C1により容量が制御され、図示しない第1ウインチを駆動する第1油圧モータ(可変容量型油圧モータ)1に連通している。ここで、前記上流側方向制御弁V1はシリーズ回路用のファンクションで回路構成されており、その切り換わり位置にて第1油圧モータ1からの戻り油が前記圧油供給基流路L1の下流側に流れていくように構成されている。なお、前記上流側巻上げ用流路6中の上流側方向制御弁V1と前記第1油圧モータ1との間に介装されてなるものは、周知の構成になるカウンタバランス弁6aである。
また、前記圧油供給基流路L1の下流側方向制御弁V2から下流側巻上げ用流路16および下流側巻下げ用流路17が分岐しており、前記下流側方向制御弁V2は前記下流側巻上げ用流路16および下流側巻下げ用流路17を介して、第2容量制御機構C2により容量が制御され、図示しない第2ウインチを駆動する、前記第1油圧モータ1と同構成になる第2油圧モータ(可変容量型油圧モータ)11に連通している。ここで、前記下流側方向制御弁V2はシリーズ回路用のファンクションで回路構成されており、その切り換わり位置にて第2油圧モータ11からの戻り油が前記圧油供給基流路L1の下流側から作動油タンクTに戻されるように構成されている。なお、前記下流側巻上げ用流路16中の下流側方向制御弁V2と前記第2油圧モータ11との間に介装されてなるものは、周知の構成になるカウンタバランス弁16aである。
前記第1油圧モータ1のモータ容量は、図示しない斜板の傾転角が前記第1容量制御機構C1で変更されることにより制御されるように構成されている。より詳しくは、図10に示すように、この第1油圧モータ1は、対抗配置された小ピストンと大ピストンとからなる油圧式ピストン4で押されて斜板の傾転角が連結手段5を介して変わると、この第1油圧モータ1の図示しないピストンのストロークが変わり、モータ容量が変わるように構成されている。この第1油圧モータ1のモータ容量を制御するための前記第1容量制御機構C1は、前記第1油圧モータ1と一体的に構成されており、連結手段5を介して斜板の傾転角を制御する前記油圧式ピストン4の他、上流側巻上げ用流路6の巻上げ圧Paと上流側巻下げ用流路7の巻下げ圧Pbとの差圧(Pa−Pb)で作動する圧力補償弁2、スプール弁3等から構成されている。
前記スプール弁3のパイロット室に、図示しないパイロット圧供給源からオペレータの操作によって任意に設定されたパイロット圧Ppを作用させるパイロット流路9が連通している。また、前記上流側巻上げ用流路6から分岐した流路8が前記圧力補償弁2のポンプポートに連通し、またこの圧力補償弁2のアクチュエータポートが流路8aを介して前記スプール弁3のポンプポートに連通している。そして、前記スプール弁3のアクチュエータポートは流路8bを介して、斜板の傾転角を小さくして前記第1油圧モータ1のモータ容量を小さくする前記油圧式ピストン4の大ピストンの圧力室に連通している。
前記流路8から上流側巻上げ用パイロット流路8cが分岐すると共に、この上流側巻上げ用パイロット流路8cは前記圧力補償弁2のセットスプリング2aに相対抗する側に設けられたスプール作動ピストン2bの小ピストンの圧力室に連通している。また、この上流側巻上げ用パイロット流路8cから流路8dが分岐しており、この流路8dは斜板の傾転角を大きくして前記第1油圧モータ1のモータ容量を大きくする前記油圧式ピストン4の小ピストンの圧力室に連通している。そして、前記スプール作動ピストン2bの大ピストンの圧力室には、上流側巻下げ用流路7から分岐した上流側巻下げ用パイロット流路7aが連通している。ここで、前記スプール作動ピストン2bの小ピストン側圧力室と大ピストン側圧力室における受圧面積は同一になるように構成されており、これにより、前記圧力補償弁2が上流側巻上げ用流路6の巻上げ圧Paと上流側巻下げ用流路7の巻下げ圧Pbとの差圧(Pa−Pb)によるスプール作動ピストン2bの推力とセットスプリング2aのスプリング力の関係で切り換わり作動するようになっている。
前記第2油圧モータ11のモータ容量は、図示しない斜板の傾転角が前記第2容量制御機構C2で変更されることにより制御されるようになっている。即ち、この第2油圧モータ11では、油圧式ピストン14の対抗配置された小ピストンと大ピストンで押されて斜板の傾転角が変わると、第2油圧モータ11のピストンストロークが変わり、モータ容量が変わるように構成されている。この第2油圧モータ11のモータ容量を制御するための前記第2容量制御機構C2は、前記第1容量制御機構C1と全く同構成になるものであって、第2油圧モータ11と一体的に構成されており、連結手段15を介して斜板の傾転角を制御する前記油圧式ピストン14の他に、下流側巻上げ用流路16の巻上げ圧Paと下流側巻下げ用流路17の巻下げ圧Pbとの差圧(Pa−Pb)で作動する圧力補償弁12、スプール弁13等から構成されている。
前記スプール弁13のパイロット室に、図示しないパイロット圧供給源からオペレータの操作により任意に設定されたパイロット圧Ppを作用させるパイロット流路19が連通している。また、前記上流側巻上げ用流路16から分岐した流路18が前記圧力補償弁12のポンプポートに連通し、またこの圧力補償弁12のアクチュエータポートが流路18aを介して前記スプール弁13のポンプポートに連通している。そして、前記スプール弁13のアクチュエータポートは流路18bを介して、斜板の傾転角を小さくして前記第2油圧モータ11のモータ容量を小さくする前記油圧式ピストン14の大ピストンの圧力室に連通している。
前記流路18から上流側巻上げ用パイロット流路18cが分岐すると共に、この上流側巻上げ用パイロット流路18cは前記圧力補償弁12のセットスプリング12aに相対抗する側に設けられたスプール作動ピストン12bの小ピストンの圧力室に連通している。また、この上流側巻上げ用パイロット流路18cから流路18dが分岐しており、この流路18dは斜板の傾転角を大きくして前記第2油圧モータ11のモータ容量を大きくする前記油圧式ピストン14の小ピストンの圧力室に連通している。そして、前記スプール作動ピストン12bの大ピストンの圧力室には、上流側巻下げ用流路17から分岐した上流側巻下げ用パイロット流路17aが連通している。ここで、前記スプール作動ピストン12bの小ピストン側圧力室と大ピストン側圧力室における受圧面積は同一になるように構成されており、これにより、前記圧力補償弁12が上流側巻上げ用流路16の巻上げ圧Paと上流側巻下げ用流路17の巻下げ圧Pbとの差圧(Pa−Pb)によるスプール作動ピストン12bの推力とセットスプリング12aのスプリング力の関係で切り換わり作動するようになっている。この第2油圧モータ11を駆動する流路等の構成は、以上の説明から良く理解されるように、前記第1油圧モータ1を駆動する流路等の構成と全く同構成になるものである。
上記構成になるクレーンウインチのシリーズ油圧回路によれば、第1ウインチと第2ウインチとを同時に駆動、つまり第1油圧モータ1と第2油圧モータ11を同時に駆動する場合には、第1油圧モータ1から排出された作動油が第2油圧モータ11に供給される。
ところで、前記第1油圧モータ1および第2油圧モータ11は、上記のとおり、可変容量モータである。従って、ウインチに作用する吊荷重に基づく負荷が大きくなると、第1容量制御機構C1と第2容量制御機構C2とにより、前記第1油圧モータ1と前記第2油圧モータ11との駆動圧(差圧=入口側圧力−出口側圧力)が、前記第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のスプリングセット圧(以下、CHP設定圧という)と、前記第2容量制御機構C2の圧力補償弁12のセットスプリング12aのCHP設定圧と同圧になるようにモータ容量が自動調整されることによって圧力補償される。なお、前記第1ウインチと前記第2ウインチとの用途は、例えば移動式クレーンの場合には、主巻/補巻、主巻/ブーム起伏、補巻/ブーム起伏等、如何なる組み合わせであっても良いものである。
次に、従来例2に係るクレーンウインチのシリーズ回路を、そのシリーズ回路(以下、シリーズ油圧回路という)の図12を参照しながら説明する。即ち、この従来例2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路は、可変容量モータ(可変容型油圧モータ)51を駆動する油圧回路と、他のアクチュエータ55を駆動する油圧回路とを備えたシリーズ油圧回路において、圧力補償回路58を介して油圧ポンプ57の吐出圧を、可変容量モータ51の容量制御用カットオフ弁(圧力補償弁に相当する)52のパイロット部に供給して、この可変容量モータ51の圧力補償を行うように構成されている。
なお、図12に示す符号51aは、容量制御用ピストン(油圧式ピストンに相当する)であり、また符号51bはパイロット圧Piにより制御可能なサーボ弁(スプール弁に相当する)であり、符号53,54は方向制御弁であり、符号56は可変容量モータ51、アクチュエータ55に供給する最大油圧を設定するためのリリーフ弁である。
この従来例2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路における圧力補償回路58の場合には、油圧ポンプ57の吐出圧がリリーフ圧を越えないように可変容量モータ51の圧力補償を行うことができる。従って、たとえ可変容量モータ51に対して外部指令が小容量側に指令されていたとしても、シリーズ油圧回路を構成する他のアクチュエータと同時駆動(同時負荷)する場合に、可変容量モータ51が最大容量に制御されるまでリリーフ弁56のリリーフが防止され、可変容量モータ51その他のアクチュエータ55により駆動される作業機械が突如急停止するような危険を回避することができる(例えば、特許文献1参照。)。
特開平11−51005号公報
上記従来例1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路では、第1ウインチと第2ウインチとを同時に駆動させる場合、第1油圧モータ1の駆動圧と、第2油圧モータ11の駆動圧の合計が油圧ポンプPの吐出圧となる。圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長(弾発力)で設定する第1油圧モータ1のモータ容量を制御するためのCHP設定圧と、圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長(弾発力)で設定する第2油圧モータ11のモータ容量を制御するためのCHP設定圧とを、単独で駆動する場合にウインチに必要なトルクと速度が得られるように、できるだけ高出力が得られる高い圧力に設定したい。
ところが、前記第1油圧モータ1のモータ容量を制御するためのCHP設定圧と、前記第2油圧モータ11のモータ容量を制御するためのCHP設定圧との合計をリリーフ弁V3の設定圧を超える圧力に設定した場合、前記第1油圧モータ1と第2油圧モータ11とを同時に駆動すると油圧ポンプPの吐出圧がリリーフ弁V3の設定圧を超え、駆動中においてリリーフ弁V3のリリーフにより第1油圧モータ1と第2油圧モータ11との駆動が停止する。従って、第1ウインチと第2ウインチとが急停止するという不具合が発生するので、CHP設定圧を高く設定することができない。
そこで、前記第1油圧モータ1と前記第2油圧モータ11とを同時駆動した場合におけるリリーフ弁V3のリリーフを防止するためにCHP設定圧を低く抑えると、ウインチを単独で駆動する場合には、リリーフ圧まで余裕があるにもかかわらず、高負荷時の巻上げ操作においては、巻上げ用流路から巻上げ圧Paが油圧式ピストンの小ピストン側の油室に作用する一方、油圧式ピストンの大ピストン側の油室内の作動油がスプール弁、圧力補償弁を介して作動油タンクに戻され、油圧モータのモータ容量が大きくなってしまうために、吊荷重の巻上げ速度が遅くなるという問題があった。
また、上記従来例2に係るウインチ用の可変容量モータの容量制御用カットオフ弁は、上記従来例1で説明したような差圧制御型にするのが好ましいが、この容量制御用カットオフ弁は絶対圧型で、下記のような問題があるためウインチ用には不向きである。
(1)この構成では、実用上カットオフ(過負荷防止)機能が働かない場合がある。
可変容量モータがウインチ用として用いられ、カウンタバランス弁が装着されている場合の巻下駆動時には、モータ負荷圧(巻下げ時保持圧)が高いが、ポンプの吐出圧が低い状態が発生するため、カットオフ(過負荷防止)が機能しない場合がある。
(2)無負荷巻下げ開始時の巻下げ速度加速性が悪い場合がある。
即ち、無負荷巻下げ操作する場合、巻上げ側流路に発生する吊荷重保持に必要なモータ保持圧は低圧となる。一方、巻下げ操作開始時は、巻上げ側流路に介装されているカウンタバランス弁のダンピング性能のために暫くの間、カウンタバランス弁のスプール開度が小開度のままとなり、カウンタバランス状態になるまでに時間がかかる。つまり、吊荷重によって巻上げ側流路に作用するモータ保持圧が低圧である場合、カウンタバランス弁のスプール開口部の前後差圧も小さいため、ポンプ流量(モータ供給流量)とバランスする大きなスプール開度になるまでに時間を要する。この間は、モータの出口側が絞られた状態となるので、ポンプの吐出圧が高圧状態になる。従って、吊荷重による負荷が小さいにもかかわらず、圧力補償回路からカットオフ弁のパイロット室に高圧が導入されて一定圧力制御が作用してしまう結果、可変容量モータのモータ容量が最大化するからである。
上記従来例2(特許文献1)では、圧力補償弁がカットオフ弁で構成されている。カットオフ弁はカットオフ圧力にて可変容量モータの容量を最大容量化する弁であり、中間容量では駆動できないため、油圧モータの出力という観点からは好適ではない。よって、圧力補償弁としては従来例1のような一定圧力制御型の弁を用いるのが好適である。ところが、従来例2の場合に一定圧力制御型の圧力補償弁を用いると、単独駆動時にはこの一定圧力制御が機能するものの、複数のアクチュエータを同時駆動した場合には、必ずしも一定圧力制御が機能せず、カットオフ弁として機能してしまう場合(例えば、ポンプの吐出圧が既にカットオフ圧力に達している状態で可変容量モータを駆動した場合。)がある。
よって、複数のアクチュエータを同時駆動した場合には油圧モータの出力を最適化することができないことがあり、好ましくない。
従って、本発明の目的は、2台のウインチの一方を単独駆動する場合にはCHP設定圧を高く設定して油圧モータに十分な出力を発揮させ、また2台のウインチを同時駆動する場合にはCHP設定圧の合計をリリーフ弁のリリーフ圧以下に設定してリリーフ弁のリリーフ作用により駆動中の油圧モータが停止することを防止し得るクレーンウインチのシリーズ油圧回路を提供することである。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路が採用した手段は、油圧ポンプ、回路圧を制御するリリーフ弁、第1ウインチを駆動する上流側の第1油圧モータ、第2ウインチを駆動する下流側の第2油圧モータ、第1方向制御弁および第2方向制御弁が介装されてなる回路を備えてなり、前記第1油圧モータおよび/または前記第2油圧モータの巻上げ圧Paと巻下げ圧Pbとの差圧(Pa−Pb)が所定の設定圧に達したことに基づいて切換作動する圧力補償弁により可変容量域における前記差圧(Pa−Pb)が所定圧を超えないようにモータ容量を一定圧力制御する容量制御機構を備えたクレーンウインチのシリーズ油圧回路において、前記油圧ポンプの吐出圧を検出するポンプ圧検出センサを設け、このポンプ圧検出センサからポンプ吐出圧が入力されるコントローラを設けると共に、前記吐出圧がリリーフ弁のリリーフ設定圧以下の予め設定した目標圧Aを超えないように、前記コントローラにより制御され、前記第1油圧モータおよび/または前記第2油圧モータの容量制御機構の圧力補償弁のスプリングセット圧を制御する圧力補償弁設定圧変更手段を設けたことを特徴とするものである。
従って、本発明の請求項1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路によれば、単独駆動する場合には十分な巻上げトルク、速度で吊荷重を巻上げることができるようにウインチを駆動することができ、しかも同時駆動する場合でもリリーフ弁のリリーフ作用を防止することができるから、駆動中のウインチが急停止するという不具合の発生を防止することができる。また、複数のウインチを同時駆動した場合であっても油圧モータの出力を最適化することができる。
本発明の請求項2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路が採用した手段は、油圧ポンプ、回路圧を制御するリリーフ弁、第1ウインチを駆動する上流側の第1油圧モータ、第2ウインチを駆動する下流側の第2油圧モータ、第1方向制御弁および第2方向制御弁が介装されてなる回路を備えてなり、前記第1油圧モータおよび前記第2油圧モータの巻上げ圧Paと巻下げ圧Pbとの差圧(Pa−Pb)が所定の設定圧に達したことに基づいて切換作動する圧力補償弁により可変容量域における前記差圧(Pa−Pb)が所定圧を超えないようにモータ容量を一定圧力制御する容量制御機構を備えたクレーンウインチのシリーズ油圧回路において、前記油圧ポンプの吐出圧を検出するポンプ圧検出センサ、および前記第2油圧モータの入口圧を検出するモータ入口圧検出センサを設け、これら検出センサから入力されるポンプ吐出圧とモータ入口圧から各油圧モータの前記差圧(Pa−Pb)を演算するコントローラを設けると共に、このコントローラにより制御され、前記第1油圧モータの差圧(Pa−Pb)が前記リリーフ弁のリリーフ設定圧以下の予め設定した目標圧Aから前記第2油圧モータの差圧(Pa−Pb)を引いた差圧以下になるように、前記第1油圧モータの容量制御機構の圧力補償弁のスプリングセット圧を制御し、かつ前記第2油圧モータの差圧(Pa−Pb)が前記目標圧Aから前記第1油圧モータの差圧(Pa−Pb)を引いた値以下になるように、前記第2油圧モータの容量制御機構の圧力補償弁のスプリングセット圧を制御する圧力補償弁設定圧変更手段を設けたことを特徴とするものである。
従って、本発明の請求項2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路によれば、2台の油圧モータの駆動回路はシリーズ回路であるが、単独駆動する場合に十分な巻上げトルク、速度で吊荷重を巻上げることができるようにウインチを駆動することができ、しかも同時駆動する場合でもリリーフ弁のリリーフ作用を防止することができるから、駆動中におけるウインチの急停止を防止することができる。また、第1油圧モータと第2油圧モータをランダムに繰返し駆動する場合には、後で駆動する方の油圧モータのモータ容量が予め大きくなるように制御される。よって、先に駆動した方の油圧モータのモータ容量は変化せず、後で駆動した方の油圧モータによる急激な速度変化がないから、安全である。
本発明の請求項3に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路が採用した手段は、請求項1または2のうちの何れかの項に記載のクレーンウインチのシリーズ油圧回路において、前記容量制御機構の圧力補償弁が巻上げ圧Paと巻下げ圧Pbとの差圧(Pa−Pb)に応じて作動する差圧制御型の圧力補償弁であることを特徴とするものである。
従って、本発明の請求項3に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路によれば、ウインチの操作状態の如何にかかわらず、差圧制御型の圧力補償弁設定圧変更手段により油圧ポンプの吐出圧がリリーフ弁のリリーフ設定圧以下の予め設定した目標圧Aを超えないように容量制御機構が制御されるため、ウインチの巻下駆動時でも確実に過負荷防止が機能する。また、無負荷巻下げ開始時にウインチに加速性不良が発生するような恐れもない。
本発明の請求項1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路では、ポンプ圧検出センサから油圧ポンプの吐出圧が入力されるコントローラにより、吐出圧がリリーフ弁のリリーフ設定圧以下の予め設定した目標圧Aを超えないように、第1油圧モータおよび/または第2油圧モータの容量制御機構の圧力補償弁のスプリングセット圧(CHP設定圧)を制御する圧力補償弁設定圧変更手段が設けられている。
従って、本発明の請求項1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路によれば、単独駆動する場合には十分な巻上げトルク、速度で吊荷重を巻上げることができるようにウインチを駆動することができ、しかも同時駆動する場合でもリリーフ弁のリリーフ作用を防止することができるから、駆動中のウインチが急停止するという不具合の発生を防止することができる。また、複数のウインチを同時駆動した場合であっても油圧モータの出力を最適化することができる。
本発明の請求項2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路では、ポンプ圧検出センサとモータ入口圧検出センサから入力されるポンプ吐出圧とモータ入口圧から各油圧モータの巻上げ圧Paと巻下げ圧Pbとの差圧(Pa−Pb)を演算するコントローラにより、第1油圧モータの差圧(Pa−Pb)がリリーフ弁のリリーフ設定圧以下の予め設定した目標圧Aから第2油圧モータの差圧(Pa−Pb)を引いた差圧以下になるように、第1油圧モータの容量制御機構の圧力補償弁のスプリングセット圧(CHP設定圧)を制御し、かつ第2油圧モータの差圧(Pa−Pb)が目標圧Aから第1油圧モータの差圧(Pa−Pb)を引いた値以下になるように、第2油圧モータの容量制御機構の圧力補償弁のスプリングセット圧(CHP設定圧)を制御する圧力補償弁設定圧変更手段が設けられている。
従って、本発明の請求項2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路によれば、2台の油圧モータの駆動回路はシリーズ回路であるが、単独駆動する場合に十分な巻上げトルク、速度で吊荷重を巻上げることができるようにウインチを駆動することができ、しかも同時駆動する場合でもリリーフ弁のリリーフ作用を防止することができるから、駆動中におけるウインチの急停止を防止することができる。また、第1ウインチと第2ウインチをランダムに繰返し駆動する場合、つまり第1油圧モータと第2油圧モータをランダムに繰返し駆動する場合には、後で駆動する方の油圧モータのモータ容量が予め大きくなるように制御される。よって、先に駆動した方の油圧モータのモータ容量は変化せず、後で駆動した方の油圧モータによる急激な速度変化がないから、安全である。
本発明の請求項3に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路では、容量制御機構の圧力補償弁が巻上げ圧Paと巻下げ圧Pbとの差圧(Pa−Pb)に応じて作動する差圧制御型の圧力補償弁である。
従って、本発明の請求項3に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路によれば、ウインチの操作状態の如何にかかわらず、差圧制御型の圧力補償弁設定圧変更手段により油圧ポンプの吐出圧がリリーフ弁のリリーフ設定圧以下の予め設定した目標圧Aを超えないように容量制御機構が制御されるため、ウインチの巻下駆動時でも確実に過負荷防止が機能する。また、無負荷巻下げ開始時にウインチに加速性不良が発生するような恐れもない。
本発明の実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路を、添付図面を順次参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路であり、図2は第1油圧モータのモータ容量を制御するための第1容量制御機構C1の詳細構成説明図であり、図3は第2油圧モータのモータ容量を制御するための第2容量制御機構C2の詳細構成説明図である。また、図4,5は本発明の実施の形態1に係り、コントローラによるCHP設定圧の制御フロー説明図である。
なお、本発明の実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路の主要構成は上記従来例1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路の主要構成と同構成で、その相違は、油圧ポンプの吐出圧を検出するポンプ圧検出センサと、このポンプ圧検出センサで検出された吐出圧が吐出圧信号として入力されるコントローラと、このコントローラで制御される圧力補償弁設定圧変更手段の有無にある。従って、本発明の実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路の構成については、上記従来例1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路と同一のものには同一符号を付した図1乃至図3を参照しながら、主としてその相違する点について説明する。
前記圧油供給基流路L1の油圧ポンプPと上流側方向制御弁V1との間には、前記油圧ポンプPの吐出圧を検出するポンプ圧検出センサGppが設けられている。また、このポンプ圧検出センサGppにより検出された吐出圧が吐出圧信号として入力されるコントローラCtが設けられている。そして、このコントローラCtから出力される指令電気信号(電流値)により圧力補償弁設定圧変更手段20が制御されるように構成されている。この圧力補償弁設定圧変更手段20は、第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のセットスプリング2aと、第2容量制御機構C2の圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長を加圧することで変更するスプリングセットパイロット室22,24の圧力を制御し、スプリングセット圧(CHP設定圧)を可変制御する第1電磁比例減圧弁21と第2電磁比例減圧弁23とを備えている。
前記第1電磁比例減圧弁21は、前記コントローラCtからソレノイド21Sに指令電気信号(電流値)が入力されない場合には、前記ソレノイド21Sの対抗側に設けられたスプリング21aの弾発力により、油圧源POと圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長を変更するスプリングセットパイロット室22とを遮断し、かつスプリングセットパイロット室22を作動油タンクTに連通させる。一方、前記コントローラCtからソレノイド21Sに指令電気信号が入力される場合には、入力される指令電気信号に基づいて作動して、前記スプリングセットパイロット室22内の圧力を前記指令電気信号に応じた二次パイロット圧に調整する働きをするものである。
また、前記第2電磁比例減圧弁23は、前記第1電磁比例減圧弁21と同構成になるものである。即ち、前記コントローラCtからソレノイド23Sに指令電気信号が入力されない場合には、前記ソレノイド23Sの対抗側に設けられたスプリング23aの弾発力により、油圧源POと圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長を変更するスプリングセットパイロット室24とを遮断し、かつスプリングセットパイロット室24を作動油タンクTに連通させる。一方、前記コントローラCtからソレノイド23Sに指令電気信号が入力される場合には、入力される指令電気信号に基づいて作動して、前記スプリングセットパイロット室24内の圧力を前記指令電気信号に応じた二次パイロット圧に調整する働きをするものである。
本発明の実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路では、第1ウインチと、第2ウインチを同時に駆動する場合、上記のとおり、第1油圧モータ1と、第2油圧モータ11の駆動圧の合計が油圧ポンプPの吐出圧となる。第1油圧モータ1のモータ容量を制御する第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のセットスプリング2aで設定するCHP設定圧と、第2油圧モータ11の第2容量制御機構C2の圧力補償弁12のセットスプリング12aで設定するCHP設定圧は、リリーフ弁V3のリリーフ作用による駆動中の急停止を防止するために、油圧ポンプPの吐出圧がリリーフ弁V3のリリーフ設定圧を超えないように設定される。
即ち、圧力補償弁のCHP設定圧の設定圧が低く、油圧モータの単独駆動においてウインチで必要なトルク、巻上げ速度を得ることができない場合には、本実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路は極めて有効である。以下、添付図面の図4,5を順次参照しながら、本発明の実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路の油圧モータのモータ容量を制御するための第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長、および第2容量制御機構C2の圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長を、コントローラCtからの指令電気信号により変更してCHP設定圧を設定する制御の仕方を説明する。
ステップ1において、ポンプ圧検出センサGppからコントローラCtの演算部に油圧ポンプPの吐出圧Bが入力される。次いで、ステップ2において、入力された吐出圧Bと、コントローラCtの記憶部から取込んだ予め設定されているリリーフ弁V3のリリーフ設定圧以下の目標圧Aとの大小が比較される。そして、吐出圧Bよりも目標圧Aが大きくて高圧(B<A)であると判定されたYesの場合には、吐出圧Bが目標圧Aになるまで上昇し得るように、ステップ3において、Δi1だけ電流値を大きくした、第1電磁比例減圧弁21のソレノイドに出力する電流値S1(=i1+Δi1)を演算し、またΔi2だけ電流値を大きくした、第2電磁比例減圧弁23のソレノイドに出力する電流値S2(=i2+Δi2)を演算して、ステップ6に進む。
前記吐出圧Bが目標圧Aよりも大きくて高圧(B>A)であると判定されたNoの場合には、ステップ4において、前記吐出圧Bが目標圧Aよりも大きくて高圧(B>A)であるか、否かが判定される。前記吐出圧Bが目標圧Aよりも大きくて高圧であると判定されたYesの場合には、前記吐出圧Bが目標圧Aまで低下するように、ステップ5において、Δi1だけ電流値を小さくした、第1電磁比例減圧弁21のソレノイドに出力する電流値S1(=i1−Δi1)を演算すると共に、Δi2だけ電流値を小さくした、第2電磁比例減圧弁23のソレノイドに出力する電流値S2(=i2−Δi2)を演算して、ステップ6に進む。
また、前記吐出圧Bが目標圧Aよりも大きくなく高圧ではないと判定された場合、より具体的には、前記吐出圧Bと目標圧Aとが同圧であると判定されたNoの場合には、この吐出圧Bをそのまま維持し続けるためにステップ5′において、第1電磁比例減圧弁21のソレノイドに出力する電流値S1(=i1)を演算すると共に、第2電磁比例減圧弁23のソレノイドに出力する電流値S2(=i2)を演算して、ステップ6に進む。
なお、前記ステップ3およびステップ5において、電流値i1に対して加減する電流値Δi1と、電流値i2に対して加減する電流値Δi2との何れも一定の値であっても良い。
しかしながら、スプリングセットパイロット室22内の二次パイロット圧が指令電気信号に応じた二次パイロット圧に対してオーバーシュートとアンダーシュートとを繰返すという圧力の波動現象の発生を防止し、二次パイロット圧を確実に、しかも迅速に所定のCHP設定圧を得るために、加減する電流値Δi1,Δi2をPID制御等の制御手法によって制御するのが好ましい。
そして、ステップ6において、前記コントローラCtから入力される電流値i1=S1(i1+Δi1)、S1(i1−Δi1)またはS1(i1)に基づいて、第1電磁比例減圧弁21から前記電流値i1=S1(i1+Δi1)、S1(i1−Δi1)、またはS1(i1)に応じた二次パイロット圧Pi1が圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長を変更するスプリングセットパイロット室22に供給される。
詳しくは、電流値i1がS1(i1+Δi1)の場合には、増加した二次パイロット圧Pi1による圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長の縮小によりCHP設定圧が高圧に設定される。従って、第1ウインチへの負荷の作用により第1油圧モータ1の駆動圧P1がその時点のCHP設定圧を超えるような場合には、第1容量制御機構C1の作用によりモータ容量が大きくなり、駆動圧P1が設定後のCHP設定圧と等しくなるように第1油圧モータ1のモータ容量が制御される。また、電流値i1がS1(i1−Δi1)の場合には、減少した二次パイロット圧Pi1による圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長の伸長によりCHP設定圧が低圧に設定される。さらに、電流値i1がS1(i1)の場合には、二次パイロット圧Pi1による圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長がそのまま維持され、CHP設定圧が保持される。
また、ステップ6において、前記圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長の制御と並行して、前記コントローラCtから入力される電流値i2=S2(i2+Δi2)、S2(i2−Δi2)、またはS2(i2)に基づいて、第2電磁比例減圧弁23から前記電流値i2=S2(i2+Δi2)、S2(i2−Δi2)、またはS2(i2)に応じた二次パイロット圧Pi2が圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長を変更するスプリングセットパイロット室24に供給される。
より詳しくは、電流値i2がS2(i2+Δi2)の場合には、増加した二次パイロット圧Pi2による圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長の縮小によりCHP設定圧が高圧に設定される。従って、第2ウインチへの負荷の作用により、第2油圧モータ11の駆動圧P2がその時点のCHP設定圧を超えるような場合には、第2容量制御機構C2の作用によりモータ容量が大きくなり、駆動圧P2がCHP設定圧と等しくなるように第2油圧モータ11のモータ容量が制御される。また、電流値i2がS2(i2−Δi2)の場合には、減少した二次パイロット圧Pi2による圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長の伸長によりCHP設定圧が低圧に設定される。さらに、電流値i2がS2(i2)の場合には、二次パイロット圧Pi2による圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長がそのまま維持され、CHP設定圧が保持される。
第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長と、第2容量制御機構C2の圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長とを上記のように制御することにより、第1油圧モータ1の駆動圧P1と、第2油圧モータ11の駆動圧P2の合計となる油圧ポンプPの吐出圧Bはリリーフ弁V3のリリーフ設定圧以下の目標圧Aになるまで駆動可能になる。
本実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路では、第1ウインチと第2ウインチを同時に駆動する場合でも、圧力補償領域においては、第1油圧モータ1のモータ容量を制御するためのCHP設定圧と第2油圧モータ11のモータ容量を制御するためのCHP設定圧の合計がリリーフ弁V3のリリーフ設定圧以下の予め定めた目標圧Aになるようにモータ容量が制御される。従って、本実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路によれば、油圧ポンプPの吐出圧Bがリリーフ弁V3の設定圧を超えてしまうような恐れがない。また、各油圧モータ1,11のモータ容量を制御するためのCHP設定圧を、単独で駆動する場合に必要なウインチのトルクと速度が得られるCHP設定圧に設定することができて、負荷に対応したモータ容量になるため、十分なトルクが得られ、負荷に応じた速度で巻上げることができる。
さらに、前記第1容量制御機構C1と第2容量制御機構C2との圧力補償弁2,12は、何れも差圧制御型であるために、上記従来例2のような問題が生じるような恐れがない。
本発明の実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路においては、第1油圧モータ1と第2油圧モータ11の何れも可変容量油圧モータであり、これら油圧モータ1,11のモータ容量を共に制御するようにしている。しかしながら、これに限らず、何れか一方の油圧モータのモータ容量だけを制御するようにしても良い。また、モータ容量を制御しない方の油圧モータを固定容量型の油圧モータにすることもできる。なお、これら油圧モータ1,11のモータ容量を共に制御する構成で、何れか一方の油圧モータだけを駆動する場合には、駆動する油圧モータに最大の能力を発揮させるために、例えばCHP設定圧が目標圧Aを超えない最適値に固定されるように制御するのが好ましい。
次に、本発明の実施の形態2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路を、添付図面を順次参照しながら説明する。図6は本発明の実施の形態2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路であり、また、図7,8は本発明の実施の形態2に係り、コントローラによるCHP設定圧の制御フロー説明図である。
なお、本発明の実施の形態2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路の構成が、上記実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路の構成と相違するところは、第2油圧モータ11の入口圧を検出するモータ入口圧検出センサが設けられ、コントローラCtの機能の相違にある。従って、本発明の実施の形態2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路の構成については、上記実施の形態1に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路と同一のもの並びに同一機能を有するものに同一符号を付した図6を参照しながら、主としてその相違する点について説明する。
前記圧油供給基流路L1の上流側方向制御弁V1と下流側方向制御弁V2との間に、前記第2油圧モータ11のモータ入口圧を検出するモータ入口圧検出センサGmpが設けられている。また、このモータ入口圧検出センサGmpにより検出されたモータ入口圧(第1油モータ1の出口圧)がコントローラCtに入力されるようになっている。さらに、このコントローラCtには、圧油供給基流路L1の油圧ポンプPと上流側方向制御弁V1との間に設けられた油圧ポンプPの吐出圧を検出するポンプ圧検出センサGppから油圧ポンプPの吐出圧も入力されるようになっている。
そして、前記コントローラCtから出力される指令電気信号(電流値)により、第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長と、第2容量制御機構C2の圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長を変更することにより、スプリングセット圧(CHP設定圧)を制御する第1電磁比例減圧弁21と第2電磁比例減圧弁23とが制御されるように構成されている。
以下、図7,8を順次参照しながら、本発明の実施の形態2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路のコントローラCtによるCHP設定圧を設定するための第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長、および第2容量制御機構C2の圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長の制御を説明する。
ステップ1において、コントローラCtの演算部に、前記ポンプ圧検出センサGppから油圧ポンプPの吐出圧Bが入力され、またモータ入口圧検出センサGmpから第2油モータ11のモータ入口圧(第1油モータ1の出口圧)Cが入力される。次いで、ステップ2において、第1油圧モータ1の駆動圧P1=(B−C)、第2油圧モータ11の駆動圧P2=Cが演算される。
ステップ3(図7中の右側に示すフロー)において、コントローラCtの記憶部から取込んだ予め設定されたリリーフ弁V3のリリーフ設定圧以下の目標圧Aと、第1油圧モータ1を単独駆動する場合に設定されるCHP設定圧CHP(1)と第2油圧モータ11の駆動圧P2(=C)との合計値(CHP(1)+P2)との大小が比較される。目標圧Aよりも合計値(CHP(1)+P2)が大きいと判定されたYesの場合には、ステップ4に進んで第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のCHP設定圧CHP1を、A−P2(=A−C)としてステップ6に進む。また、目標圧Aよりも合計値(CHP(1)+P2)が小さいと判定されたNoの場合には、ステップ5に進んで第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のCHP設定圧CHP1を、CHP(1)のままとしてステップ6に進む。
ステップ6において、関数f(CHP1)を用いて電流値i1(f(CHP1):CHP設定圧から、その設定圧を得るために必要な電流値i1に変換するための関数である)が演算される。そして、演算された電流値i1が第1電磁比例減圧弁21のソレノイドに出力されるので、図8に示すように、電流値i1に応じた二次パイロット圧がスプリングセットパイロット室22に供給される。
従って、この二次パイロット圧に応じて第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のセットスプリング2aの設定長が変更されるため、第1油圧モータ1のモータ容量を制御するためのCHP設定圧が制御される。なお、CHP設定圧のCHP1がA−P2の場合の電流値i1の関数はf(CHP1)=f(A−P2)であり、またCHP設定圧CHP1がCHP(1)の場合の電流値i1の関数はf(CHP1)=f(CHP(1))である。
また、前記第1容量制御機構C1の圧力補償弁2のCHP設定圧の制御と並行して、第2容量制御機構C2の圧力補償弁12のCHP設定圧の制御が、下記のように行われる。
即ち、ステップ13(図7中の左側に示すフロー)において、第2油圧モータ11を単独駆動する場合に設定されるCHP設定圧CHP(2)と第1油圧モータ1の駆動圧P1(=B−C)との合計値(CHP(2)+P1)と、コントローラCtの記憶部から取込んだ予め設定されたリリーフ弁V3のリリーフ設定圧以下の目標圧Aとの大小が比較される。前記合計値(CHP(2)+P1)が目標圧Aよりも大きいと判定されたYesの場合には、ステップ14に進んで第2油圧モータ11のモータ容量を制御するためのCHP設定圧CHP2を、A−P1(=A−B+C)としてステップ16に進む。また、合計値(CHP(2)+P1)が目標圧Aよりも小さいと判定されたNoの場合には、ステップ15に進んで第2油圧モータ11のモータ容量を制御するためのCHP設定圧CHP2を、CHP(2)のままとしてステップ16に進む。
ステップ16において、関数f(CHP2)を用いて電流値i2(f(CHP2):CHP設定圧から、その設定圧を得るために必要な電流値i2に変換するための関数である)が演算される。そして、演算された電流値i2が第2電磁比例減圧弁23のソレノイドに出力されるために、図8に示すように、電流値i2に応じた二次パイロット圧がスプリングセットパイロット室24に供給される。
従って、この二次パイロット圧に応じて第2容量制御機構C2の圧力補償弁12のセットスプリング12aの設定長が変更されるため、第2油圧モータ11のモータ容量を制御するためのCHP設定圧が制御される。なお、第2油圧モータ11のモータ容量を制御するためのCHP設定圧CHP2がA−P1の場合の電流値i2の関数はf(CHP2)=f(A−P1)であり、またCHP設定圧CHP2がCHP(2)の場合の電流値i1の関数はf(CHP2)=f(CHP(2))である。
本発明の実施の形態2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路においては、第1ウインチと第2ウインチがランダムに繰返し駆動された場合、例えば、第2ウインチが先に駆動されている状態から第1ウインチと第2ウインチの同時駆動に移行した場合は後述するとおりである。即ち、第2油圧モータ11の駆動圧P2と、第1油圧モータ1を単独駆動する場合に設定されるCHP設定圧CHP(1)との合計値が目標圧Aを超えると判定された場合には、第1ウインチが駆動される前に第1油圧モータ1のCHP設定圧が自動的に(A−P2)に変更される。
従って、変更後に第1ウインチが駆動されるため第1油圧モータ1は(A−P2)のCHP設定圧で圧力補償される。逆に、第1ウインチが先に駆動されている状態から第1ウインチと第2ウインチの同時駆動に移行した場合には、第2ウインチが駆動される前に第2油圧モータ11のモータ容量を制御するためのCHP設定圧が自動的に(A−P1)に変更されることになるので、上記の場合と同様に、変更後に第2ウインチが駆動されても第2油圧モータ11は(A−P1)のCHP設定圧で圧力補償される。
上記のとおり、駆動中の油圧モータの駆動圧に応じて、未駆動の油圧モータのモータ容量を制御する容量制御機構のCHP設定圧を予め低圧に設定しておくことができるので、駆動中の油圧モータにより駆動されるウインチにより大重量の吊荷重を巻上げるに足りる十分なトルクを発生させることができる。
また、未駆動の油圧モータのモータ容量を制御する容量制御機構のCHP設定圧は、このCHP設定圧と駆動中の油圧モータの駆動圧との合計値がリリーフ弁V3のリリーフ設定圧以下の目標圧Aを超えないように制御される。従って、各油圧モータの圧力補償状態においては、各油圧モータの駆動圧の合計である油圧ポンプPの吐出圧がリリーフ弁V3のリリーフ設定圧を超えてしまうようなことがなく、リリーフ弁V3がリリーフするようなことがないから、同時駆動中に両ウインチが急停止するというような不具合の発生を大幅に低減させることができる効果を得ることができる。
なお、本発明の上記実施の形態1,2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路は、何れも本発明の具体例に過ぎないから、上記実施の形態1,2に係るクレーンウインチのシリーズ油圧回路の形態に限定されるものではなく、また本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内における設計変更等は自由自在である。
1…第1油圧モータ,2…圧力補償弁,2a…セットスプリング,2b…スプール作動ピストン,3…スプール弁,4…油圧式ピストン,5…連結手段,6…上流側巻上げ用流路,6a…カウンタバランス弁,7…上流側巻下げ用流路,7a…上流側巻下げ用パイロット流路,8…流路,8a…流路,8b…流路,8c…上流側巻上げ用パイロット流路,8d…流路,9…パイロット流路
11…第2油圧モータ,12…圧力補償弁,12a…セットスプリング,12b…スプール作動ピストン,13…スプール弁,14…油圧式ピストン,15…連結手段,16…下流側巻上げ用流路,16a…カウンタバランス弁,17…下流側巻下げ用流路,17a…下流側巻下げ用パイロット流路,18…流路,18a…流路,18b…流路,18c…下流側巻上げ用パイロット流路,18d…流路,19…パイロット流路
20…圧力補償弁設定圧変更手段,21…第1電磁比例減圧弁,21a…スプリング,21S…ソレノイド,22…スプリングセットパイロット室,23…第2電磁比例減圧弁,23a…スプリング,23S…ソレノイド,24…スプリングセットパイロット室
C1…第1容量制御機構,C2…第2容量制御機構
Ct…コントローラ
Gmp…モータ入口圧検出センサ
Gpp…ポンプ圧検出センサ
L1…圧油供給基流路,L2…油戻し流路
P…油圧ポンプ
PO…油圧源
T…作動油タンク
V1…上流側方向制御弁,V2…下流側方向制御弁,V3…リリーフ弁