JP4719690B2 - シュタケ(P.cinnabarinus)の一核株によって所定の組換えタンパク質を過剰生成する方法 - Google Patents
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Description
−前述のシュタケ属の一核株を培養する過程であって、前記株が、所定の組換えタンパク質をコードする遺伝子を有する発現ベクターによって形質転換されており、その発現が、構成的または誘導的な、前述の菌の内因性プロモーターに対応するプロモーターあるいはそうでないプロモーター(外因性プロモーターとも呼ばれる)の制御下に置かれていることを特徴とする過程と、
−誘導的プロモーターであれば、場合によっては前述のプロモーターを誘導する過程と、
−培地で生成した所定の組換えタンパク質を回収し、場合によっては精製すること、
を含んでいる。
−以下のシュタケ属の内因性タンパク質:
*ラッカーゼあるいはチロシナーゼのような金属酵素、
*または、セロビオースデヒドロゲナーゼ、キシラナーゼ、βグリコシダーゼ、インベルターゼもしくはαアミラーゼ、
−以下から選択される外因性タンパク質:
*チロシナーゼの生成に用いるシュタケ属株がヒイロタケとは異なっている場合のヒイロタケのチロシナーゼのような、前記組換えタンパク質の生成に用いるシュタケ属株とは異なるシュタケ属株のチロシナーゼ、
*halocyphina villosa(好塩性担子菌)のラッカーゼのような、シュタケ属以外の担子菌類のラッカーゼ、
*クロコウジカビ(Aspergillus niger)のシンナモイルエステラーゼA(番号EMBL Y09330)およびB(番号EMBL ANI309807)、
に対応するものであることを特徴としている。
−シュタケ属の一核株を培養する過程であって、該株は、場合によってはシュタケ属の内因性ラッカーゼをコードする遺伝子を欠いており、場合によっては標識されたシュタケ属のラッカーゼをコードする遺伝子を有する発現ベクターによって形質転換されており、その発現が、このラッカーゼの内因性プロモーターに対応するプロモーターの制御下に置かれていることを特徴とする過程と、
−前述のプロモーターを誘導する過程であり、とりわけ、エタノールの添加によって、または、麦藁、トウモロコシの糠およびビートの果肉のようなリグノセルロースを含んだ農業副産物の添加によって、あるいは、2,5−キシリジン、ベラトルム酸、グアヤコール、ベラトリルアルコール、シリンガルダジン、フェルラ酸、カフェー酸およびリグノスルホン酸塩のような、芳香族化合物を添加することによって誘導する過程と、
−培地において生成した、とりわけ、Sigoillot J.C.,Herpoel I., Frasse P.,Moukha S.,Lesage−Meessen L.,Asther M.,1999、「Laccase production by a monokaryotic strain Pycnoporus cinnabarinus derived from a dikaryotic strain」、『World Journal of Microbiology and Biotechnology』15、481−484に記載されている方法によって生成した、前述のシュタケ属の内因性ラッカーゼに対応し、場合によっては標識されている組換えラッカーゼを回収し、場合によっては精製すること、
を含んでいる。
−シュタケの一核株を培養する過程であって、該株が、場合によってはシュタケの内因性ラッカーゼをコードする遺伝子を欠いており、場合によっては標識されている、とりわけHis−tagというタグによって標識されているSEQ ID NO:2で表される組換えラッカーゼをコードするヌクレオチド配列(または核酸配列)SEQ ID NO:1を有する発現ベクターによって形質転換されており、その発現が、前述のラッカーゼの内因性プロモーターに対応するpLacプロモーターの制御下に置かれ、前記pLacプロモーターの配列がSEQ ID NO:3で表されることを特徴とする過程と、
−前述のpLacプロモーターをエタノールによって誘導する過程と、
−培地において、とりわけ前述のSigoillot J.C.,et al.(1999)に記載された方法によって生成する、SEQ ID NO:2によって表され、場合によっては標識されている組換えラッカーゼを回収し、場合によっては精製すること、
を含んでいることを特徴としている。
−シュタケ属の一核株を培養する過程であって、該株が場合によってはシュタケ属の内因性ラッカーゼをコードする遺伝子を欠き、シュタケ属のラッカーゼをコードする遺伝子を有する発現ベクターによって形質転換されており、その発現が、
*ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:4で表される、スエヒロタケのグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の発現プロモーターgpd、
*または、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:5で表される、スエヒロタケのハイドロフォビンをコードする遺伝子の発現プロモーターsc3、
から選択される外因性プロモーターの制御下に置かれていることを特徴とする過程と、
−培地において、とりわけ前述のSigoillot J.C.,et al.(1999)に記載された方法によって生成する、前述のシュタケ属の内因性ラッカーゼに対応する組換えラッカーゼを回収し、場合によっては精製すること、
を含んでいることを特徴としている。
−シュタケの一核株を培養する過程であって、該株が場合によってはシュタケの内因性ラッカーゼをコードする遺伝子を欠き、場合によっては標識されている、とりわけHis−tagというタグで標識されているSEQ ID NO:2で表される組換えラッカーゼをコードするヌクレオチド配列SEQ ID NO:1を有する発現ベクターによって形質転換されており、その発現が外因性プロモーターgpdまたはsc3の制御下に置かれていることを特徴とする過程と、
−培地において、とりわけ前述のSigoillot J.C.,et al.(1999)に記載されている方法によって生成する、SEQ ID NO:2で表され、場合によっては標識されている組換えラッカーゼを回収し、場合によっては精製すること、
を含んでいることを特徴としている。
−シュタケの一核株を培養する過程であって、該株が、SEQ ID NO:16で表され場合によっては標識されている組換えチロシナーゼをコードするヌクレオチド配列SEQ ID NO:15を有する発現ベクターによって形質転換されており、配列SEQ ID NO:15が、好適には、SEQ ID NO:2における最初の21個のアミノ酸によって画定されたシュタケのシグナルペプチドをコードする、SEQ ID NO:1の128位および190位のヌクレオチドによって画定されたヌクレオチド配列の後ろにあり、また、その発現が、シュタケのラッカーゼの内因性プロモーターに対応するpLacプロモーターの制御下に置かれ、前記pLacプロモーターの配列がSEQ ID NO:3で表されることを特徴とする過程と、
−前述のpLacプロモーターをエタノールで誘導する過程と、
−培地で生成した、SEQ ID NO:16で表され、場合によっては標識されている組換えチロシナーゼを回収し、場合によっては精製すること、
を含んでいることを特徴としている。
−シュタケの一核株を培養する過程であって、該株が、場合によってはシュタケの内因性ラッカーゼをコードする遺伝子を欠き、SEQ ID NO:18で表され場合によっては標識されている組換えラッカーゼをコードする、図12に示したヌクレオチド配列(SEQ ID NO:17)を有する発現ベクターによって形質転換されており、その発現がシュタケのラッカーゼの内因性プロモーターに対応するpLacプロモーターの制御下に置かれ、前記pLacプロモーターの配列がSEQ ID NO:3で表されることを特徴とする過程と、
−前述のpLacプロモーターをエタノールによって誘導する過程と、
−培地において生成した、SEQ ID NO:18で表され、場合によっては標識されている組換えラッカーゼを回収し、場合によっては精製すること、
を含むことを特徴としている。
−以下のシュタケ属の内因性タンパク質:
*ラッカーゼもしくはチロシナーゼのような金属酵素、
*または、セロビオースデヒドロゲナーゼ、キシラナーゼ、βグリコシダーゼ、インベルターゼもしくはαアミラーゼ、
−以下から選択される外因性タンパク質:
*チロシナーゼの生成に用いるシュタケ属株がヒイロタケとは異なる場合のヒイロタケのチロシナーゼのような、前記組換えタンパク質の生成に用いるシュタケ属株とは異なるシュタケ属株のチロシナーゼ、
*halocyphina villosa(好塩性担子菌)のラッカーゼのような、シュタケ属以外の担子菌類のラッカーゼ、
*クロコウジカビのシンナモイルエステラーゼAおよびB、
に対応するタンパク質であることを特徴としている。
この過程は、有益な遺伝子を発現させるための宿主として用いる、糸状菌であるシュタケの性分化した胞子に由来する半数体の細胞株を単離し、選別することを目的としている。シュタケは野生の状態では二核の形態(細胞ごとに対になっていない二つの核)である自家不和合性の菌であり、該菌から、潜在的により安定で、したがって遺伝形質の転換に有用な、一核株(細胞ごとに一つの核)を選別する。この研究の枠組みにおいて、本発明者らは、ラッカーゼ活性のない(lac-)一核株を選別するようにした。二核状態では、菌は無性生殖することができる(図1)。しかし、特殊な環境条件の影響下で、研究所では、子実体の形成を誘導することができる。担子器と呼ばれる分化した菌糸の中では核融合(核の合体)が起こり、その後、性分化した四つの胞子、すなわち遺伝的に異なる半数体の担子胞子の形成を引き起こす減数分裂が起こる。発芽後、各担子胞子は一核菌糸体を生成する。簡単な比色分析試験によって、ラッカーゼ活性のない株のみを選別することが可能になる。
子実体の培地は2%(P/V)の麦芽エキスと寒天(1.6%P/V)で構成される。培養物をシャーレに接種し、暗所で15日間、30℃で維持した後、室温で2〜3週間日光にさらした。子実体はオレンジ〜赤色に見えた。そして単胞子を、滅菌水でシャーレのふたに採取した。懸濁液を希釈し、コロニーを単離するために、MA2培地(2%P/Vの麦芽および2%P/Vの寒天)を入れたシャーレで培養した。単離した純粋培養物をMA2培地に釣菌し、30℃で5日間維持し、4℃で保存した。
菌糸体を少量シャーレに置き、0.1%(P/V)のシリンガルダジンのエタノール溶液の液滴で覆った。15分後、色の変化が観察された。また、ラッカーゼ活性を検出するための基質として2,2−アジノ−ビス−[3−エチルチアゾリン−6−スルホナート](ABTS)を用いることもできる。
前培養したものから接種菌を採取するのだが、該前培養したものは、200mLの合成培地を含むルー瓶において10日間30℃で生育させたもので、該合成培地は、1Lあたり、以下の組成を有している。マルトース(20g)、酒石酸ジアンモニウム(1.84g)、酒石酸ジナトリウム(2.3g)、KH2PO4(1.33g)、CaCl2・H2O(0.1g)、MgSO4・7H2O(0.5g)、FeSO4・7H2O(0.07g)、ZnSO4・7H2O(0.046g)、MnSO4・H2O(0.035g)、CuSO4・5H2O(0.1g)、酵母エキス(1g)、Tatum et al.(「Biochemical mutant strains of Neurospora produced by physical and chemical treatment」『American Journal of Botany』37、38−46、1950)によるビタミン溶液(1mL/L)。二つの瓶の菌糸体を回収し、100mLの滅菌水と混合し、Ultraturaxホモジナイザーで60秒間ホモジナイズした。ラッカーゼを生成するために、合成培地に1mLの菌糸体懸濁液を接種した。次に、培地(100mL)を、250mLのバッフル付き三角フラスコにおいて30℃で撹拌しながら(120rpm)インキュベートした。
所定の組換えタンパク質の過剰生成には、真核生物の発現系、より具体的には、糸状菌の担子菌類であるシュタケの発現系が問題となる。選択した研究モデルはシュタケのラッカーゼのモデルである。現状では、二つの菌類モデルが主要な産業グループによって好んで用いられている。それはアスペルギルスとトリコデルマであり、これらは不完全菌類に属している。したがって、この発現システムは完全に新規なものであり、産業界の要求(細胞外培地で分泌タンパク質を大量生産すること、および、発酵槽で生産者である菌類を培養することの可能性)を満たす担子菌類の発現系の開発に関する不備を埋めるものとなる。
第一の過程において、本発明者らは、ラッカーゼをコードする遺伝子の断片を、縮重ヌクレオチドプライマーを用いて増幅した(図2)。上流の縮重プライマーF2(SEQ ID NO:6;CAYTGGCAYGGRTTCTTCC)および下流の縮重プライマーR8(SEQ ID NO:7;GAGRTGGAAGTCRATGTGRC)はそれぞれ、類似の菌のラッカーゼの銅IおよびIVへの結合領域から誘導し、シュタケI−937のゲノムDNAを用いてのPCR反応(ポリメラーゼ連鎖反応)に用いた。10μlの反応混合物に、100ngのゲノムDNA、0.2mMのdATP、dCTP、dTTPおよびdGTP、25pmolの各ヌクレオチドプライマー、10分の1の体積の10×Pfuポリメラーゼバッファー(100mMのTris−HCl、15mMのMgCl2、500mMのKCl、pH8.3)、ならびに1UのPfuポリメラーゼを添加した。混合物は5分間、94℃で加熱し、その後、ポリメラーゼを加えた。反応条件は、94℃で5分、55℃で30秒、そして72℃で4分を5サイクル、次いで、94℃で30秒、55℃で30秒、そして72℃で3分を25サイクルである。反応を終えるため、72℃で10分間の過程を行う。ラッカーゼ遺伝子の中央部分に対応する1.64kbpのバンドが得られた。この遺伝子部分をシーケンシングするために、DNA配列をpGEM−Tでクローニングした。
ラッカーゼの遺伝子配列から、本発明者らは、先に遺伝子の単離に用いたものと同じ方法を用いて、つまり、制限酵素BglIIによって今回は切断したゲノムDNA断片(3.5kbp)に対するインバースPCR技術によって、この遺伝子のプロモーターをクローニングした(図5)。このようにして、ラッカーゼ遺伝子の前方の2527kbpをインバースPCRでクローニングし、シーケンシングした。このプロモーターを、細菌におけるプロモーターのサブクローニングのためのアンピシリン耐性と、菌における選択マーカーとして用いるフレオマイシン耐性を有するベクターに組み込んだ。スエヒロタケのハイドロフォビンsc3をコードする遺伝子のターミネーターを、転写過程を終わらせるために下流に置いた。pELPと呼ばれるこのベクターを、ラッカーゼの同種の発現に用いる(図6)。他の二つの異なったプロモーターをこの研究では用いた。それらは、スエヒロタケのグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(gpd)をコードする遺伝子のプロモーターとハイドロフォビン(sc3)をコードする遺伝子のプロモーターであり(図6)、それぞれ、発現ベクターpEGTおよびpESCを構成する。ベクターpEGT(SEQ ID NO:12)、pESC(SEQ ID NO:13)およびpELP(SEQ ID NO:14)のヌクレオチド配列の全体を、プロモーター、選択マーカーおよびターミネーターの位置とともに図7、図8および図9に示した。
1)プロトプラストを得るための菌糸体の調製
固形培地で培養した(10日間)コロニーの四分の一を、50mlのYM培地(1リットルあたり、10gのグルコース、5gのペプトン、3gの酵母エキス、3gの麦芽エキス)において一分間、ホモジナイザー(Ultraturaxタイプ、低速度)を用いてホモジナイズした。ホモジネートを、50mlのYM培地を入れた250mlの滅菌した三角フラスコに移し、次に、30℃で、撹拌しながら(225rpm)20時間にわたってインキュベートした。培養物を改めて1分間ホモジナイズし(低速度)、100mlのYM培地を加えた。ホモジネートを500mlの三角フラスコに移し、30℃で一晩培養した。
菌の培養物を振動型ローター(50mlのチューブ)において、2000rpmで10分間遠心分離した。16g(湿重量)を、40mlの、0.5MのMgSO4溶液または0.5Mのスクロース溶液で洗浄した。スクロースを用いる場合、細胞壁を消化するために用いる溶解酵素をスクロースで希釈する。次に、菌糸体を2000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。菌の細胞壁の溶解に関しては、50mlの培養物に由来する菌糸体に、0.5MのMgSO4溶液で1mg/mlに希釈した10mlの溶解酵素(Glucanex、Sigma社)を加えた。消化は、500mlの三角フラスコにおいて、3〜4時間にわたる弱い撹拌のもと、30℃で行った。このインキュベーションの間、プロトプラストの出現を顕微鏡で確認した。10mlの滅菌水を加え、穏やかに混合した。プロトプラストを10分間、水と平衡する間放置した(プロトプラストは表面に浮かぶようになる)。次に該プロトプラストを、振動型ローターにおいて、2000rpmで10分間遠心分離した。プロトプラストを含む上澄みを慎重に50mlの新しい容器に移した。底に残った塊を0.5MのMgSO4溶液25mlで再びインキュベートすることで、最大量のプロトプラストを回収することができる(このとき遠心分離過程を繰り返す)。プロトプラストの調製物の量に等しい量の1Mソルビトールを加えた。10分間、液体中でプロトプラストを凝集させた。次に、この調製物を2000rpmで10分間遠心分離した。上澄みを除去し、少量のソルビトールが残った。プロトプラストを新しいチューブに移した。前のチューブを1Mのソルビトール溶液ですすぎ、回収されたプロトプラストを新しいチューブに加えた。プロトプラストを計数し、2000rpmで10分間遠心分離した。次に、プロトプラストを1Mのソルビトール溶液で、1mlあたり2×107個のプロトプラストを含む濃度に希釈した。0.5MのCaCl2溶液(1/10)をプロトプラストに加えた。
形質転換のために、滅菌した10mlのチューブにおいて、100μlのプロトプラストを5〜10μgのベクター(最大量で10μl)で形質転換した。該プロトプラストを氷中で10〜15分間インキュベートした。一定量の40%PEG4000溶液を加え、混合し、プロトプラストを室温で5分間インキュベートした。2.5mlの再生培地(100mlあたり、2gのグルコース、12.5gのMgSO4・7H2O、0.046gのKH2PO4、0.1gのK2HPO4、0.2gのバクト(bacto)ペプトン、0.2gの酵母エキス)をプロトプラストに加え、該プロトプラストを30℃で一晩インキュベートした。選択用ケース(7μg/mlのフレオマイシンを含むYM培地、四角のケース)を37℃に予め加熱した。7.5mlのトップアガーの混合物(7〜10μg/mlのフレオマイシンを含むYM培地で希釈した1%低融点アガロース)を、プロトプラストを含む再生培地に加え、予め加熱した選択用ケースに入れた。トップアガー溶液が固化すると、ケースを30℃で4日間インキュベートした。そうして、形質転換体を新しい選択用ケースに移した。
16gの菌糸体から、一般的にはおよそ1〜2×107個のプロトプラストが得られる。再生のパーセンテージは10%である。ベクターpESCに関しては、一核を、シュタケのラッカーゼをコードするcDNA(BRFM472、473および474)または遺伝子(BRFM470および471)を有するベクターで形質転換した(図10)。同様に、その他の一核を、ラッカーゼをコードする遺伝子を含んだプロモーターpEGT(GPD11、12および13)またはベクターpELP(12.3、12.7および12.8)によって形質転換した(図10)。結果を見ると、二つの形質転換体12.7およびGPD14は、同等の活性で他のものよりもぬきんでている。形質転換体GPD14および12.7については、活性を時間の経過を追って調査した(図11)。活性は3〜4日目から検出可能で、培地にエタノールを加えることで、12日目まで上昇し、およそ1200nkatal/ml、すなわち72000U/lに達した。
Claims (16)
- 所定の組換えタンパク質の調製方法であり、前記方法が、糸状菌である担子菌類のシュタケ属の一核株において、この所定のタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現させることによって行われ、また、
−前述のシュタケ属の一核株を培養する過程であって、前記株が、所定の組換えタンパク質をコードする遺伝子を有する発現ベクターによって形質転換されており、その発現が、SEQ ID NO:3で表されるpLac3プロモーターの制御下に置かれている過程と、
−前述のプロモーターを誘導する過程と、
−培地で生成した所定の組換えタンパク質を回収し、精製すること、
を含んでいる方法。 - 用いるシュタケ属の一核株がシュタケの株であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 過剰発現した所定の組換えタンパク質が、シュタケ属の内因性タンパク質に対応するか、または、前記組換えタンパク質の生成に用いるシュタケ属株とは異なるシュタケ属株の内因性タンパク質に対応する外因性タンパク質に対応することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 所定の組換えタンパク質が、
−以下のシュタケ属の内因性タンパク質:
*金属酵素、
*または、セロビオースデヒドロゲナーゼ、キシラナーゼ、βグリコシダーゼ、インベルターゼもしくはαアミラーゼ、
−以下から選択される外因性タンパク質:
*前記組換えタンパク質の生成に用いるシュタケ属株とは異なるシュタケ属株のチロシナーゼ、
*シュタケ属以外の担子菌類のラッカーゼ、ならびに
*クロコウジカビのシンナモイルエステラーゼAおよびB、
に対応することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 - シュタケ属の内因性タンパク質に対応する所定の組換えタンパク質の調製方法であり、用いるシュタケ属の一核株が、所定の組換えタンパク質が対応する内因性タンパク質をコードする遺伝子を欠いていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- シュタケ属の内因性タンパク質に対応する所定の組換えタンパク質の調製方法であり、用いるシュタケ属の一核株が、ヒスチジンタグによって標識された所定の組換えタンパク質をコードする遺伝子を有する発現ベクターによって形質転換されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- シュタケ属の内因性ラッカーゼに対応する組換えラッカーゼの調製方法であり、
−シュタケ属のラッカーゼをコードする遺伝子を有する発現ベクターによって形質転換されているシュタケ属の一核株を培養する過程であって、その発現がpLac3プロモーターの制御下に置かれている過程と、
−前述のプロモーターを誘導する過程であり、エタノール、またはリグノセルロースを含んだ農業副産物、または芳香族化合物の添加によって誘導する過程と、
−培地で生成した前述のシュタケ属の内因性ラッカーゼに対応する組換えラッカーゼを回収し、精製すること、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。 - シュタケ属の内因性ラッカーゼに対応する組換えラッカーゼの調製方法であり、
−シュタケ属の一核株を培養する過程であって、該株が、シュタケ属の内因性ラッカーゼをコードする遺伝子を欠き、シュタケ属のラッカーゼをコードする遺伝子を有する発現ベクターによって形質転換されており、その発現がpLac3プロモーターの制御下に置かれている過程と、
−前述のプロモーターを誘導する過程であり、エタノール、またはリグノセルロースを含んだ農業副産物、または芳香族化合物の添加によって誘導する過程と、
−培地で生成した前述のシュタケ属の内因性ラッカーゼに対応する組換えラッカーゼを回収し、精製すること、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。 - SEQ ID NO:2で表されるシュタケの内因性ラッカーゼに対応する組換えラッカーゼの調製方法であり、
−SEQ ID NO:2で表される組換えラッカーゼをコードするヌクレオチド配列SEQ ID NO:1を有する発現ベクターによって形質転換されているシュタケの一核株を培養する過程であって、その発現が前述のラッカーゼの内因性プロモーターに対応するpLacプロモーターの制御下に置かれ、前記pLacプロモーターの配列がSEQ ID NO:3で表されることを特徴とする過程と、
−前述のpLacプロモーターをエタノールで誘導する過程と、
−培地で生成した、SEQ ID NO:2で表される組換えラッカーゼを回収し、精製すること、
を含んでいることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。 - SEQ ID NO:16で表されるヒイロタケのチロシナーゼに対応する組換えチロシナーゼの調製方法であり、
−SEQ ID NO:16で表される組換えチロシナーゼをコードするヌクレオチド配列SEQ ID NO:15を有する発現ベクターによって形質転換されているシュタケの一核株を培養する過程であって、配列SEQ ID NO:15が、ペプチドシグナルである、SEQ ID NO:2における最初の21個のアミノ酸のヌクレオチド配列の後ろにあり、また、その発現がシュタケのラッカーゼの内因性プロモーターに対応するpLacプロモーターの制御下に置かれ、前記pLacプロモーターの配列がSEQ ID NO:3で表されることを特徴とする過程と、
−前述のpLacプロモーターをエタノールによって誘導する過程と、
−培地において生成した、SEQ ID NO:16で表される組換えチロシナーゼを回収し、精製すること、
を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 - SEQ ID NO:18で表される、halocyphina villosaのラッカーゼに対応する組換えラッカーゼの調製方法であり、
−SEQ ID NO:18で表される組換えラッカーゼをコードするSEQ ID NO:17で表されるヌクレオチド配列を有する発現ベクターによって形質転換されているシュタケの一核株を培養する過程であって、その発現が、シュタケのラッカーゼの内因性プロモーターに対応するpLacプロモーターの制御下に置かれ、前記pLacプロモーターの配列がSEQ ID NO:3で表されることを特徴とする過程と、
−前述のpLacプロモーターをエタノールによって誘導する過程と、
−培地において生成した、SEQ ID NO:18で表される組換えラッカーゼを回収し、精製すること、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。 - 金属酵素がラッカーゼまたはチロシナーゼから選択されることを特徴とする、請求項
4に記載の方法。 - 前記タンパク質の生成に用いるシュタケ属株とは異なるシュタケ属株のチロシナーゼがヒイロタケのチロシナーゼであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
- シュタケ属以外の担子菌類のラッカーゼがhalocyphina villosaのラッカーゼであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
- リグノセルロースが、麦藁、トウモロコシの糠およびビートの果肉から選択されることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
- 芳香族化合物が、2,5−キシリジン、ベラトルム酸、グアヤコール、ベラトリルアルコール、シリンガルダジン、フェルラ酸、カフェー酸およびリグノスルホン酸塩から選択されることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
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