JP4717669B2 - ガスバリアフィルムおよびこれを用いた有機デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、ガスバリア性に優れたフィルムおよびこれを用いた有機デバイスに関するものであり、特に各種の有機デバイスの基板や被覆フィルムに好適な積層型のガスバリアフィルムに関する。さらには、前記ガスバリアフィルムを用いた、耐久性およびフレキシブル性に優れた有機デバイス、特に有機EL素子に関するものである。
近年、液晶表示素子や太陽電池、エレクトロルミネッセンス(EL)素子等の有機デバイスにおいて、重くて割れやすいガラス基板に代わり、薄くて軽く柔軟性に優れた透明なプラスチックフィルムを基板に用いることが検討されている。透明プラスチック基板は、大面積化が容易であり、ロールトゥロール(Roll to Roll)の生産方式を適用することも可能であることから、ガラスよりも生産性がよくコストダウンの点でも有利である。
しかし透明プラスチック基板は、ガラスと比較してガスバリア性に劣るという問題がある。有機デバイスは、一般に構成材料が水や空気によって劣化や変質を起こしやすい。例えば、液晶表示素子の基板にガスバリア性が劣る基材を用いると、液晶セル内の液晶を劣化させ、劣化部位が表示欠陥となって表示品位を低下させてしまう。
このような問題を解決するためには、上述のようなプラスチックフィルム基板自身にガスバリア機能を付与するか、或いはガスバリア性を持った透明なプラスチックフィルムでデバイス全体を封止すればよい。ガスバリア性フィルムとしては、一般にプラスチックフィルム上に金属酸化物薄膜を形成したものが知られている。液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしては、例えば、プラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や、酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)がある。これらは、いずれも水蒸気透過率1g/m2/day程度の水蒸気バリア性を有する。しかし近年では、より高いバリア性が要求される有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイなどの開発が進んでおり、これらに使用可能な透明性を維持し且つ高バリア性、特に水蒸気バリア性で水蒸気透過率0.1g/m2/day未満の性能をもつ基材が要求されるようになっている。
そこで高いガスバリア性の実現するために、より緻密な薄膜となる窒化珪素膜をプラスチックフィルム上に成膜する方法が開示されている(特許文献3)。しかしながら、窒化珪素膜を用いることで高いガスバリア性を実現できるものの、窒化珪素膜は透明性が高くなく、透明性が要求されるディスプレイ用途での利用は難しかった。酸化珪素膜は透明性が高いことから、高いガスバリア性と透明性を両立させる目的で酸化窒化珪素膜を用いる方法も開示されており(特許文献4)、スパッタリング法において酸化窒化珪素膜をプラスチックフィルム上に成膜する方法も開示されている(特許文献5、6)。但し、前記のスパッタリング法で成膜したガスバリアフィルムはガスバリア性が高くなく、より緻密な薄膜が成膜できる化学気相堆積法(CVD法)により酸化窒化珪素膜をを用いたガスバリアフィルムの開発が望まれていた。
特公昭53−12953号公報(第1頁〜第3頁) 特開昭58−217344号公報(第1頁〜第4頁) 特開平6−136159号公報(第1頁〜第5頁) 特開2002−100469号公報(第1頁〜第5頁) 特開2003−206361号公報(第1頁〜第4頁) 特開2004−276564号公報(第1頁〜第13頁)
上述の諸問題を解決すべく、本発明は、高いバリア性と透明性とを有し、且つ膜応力が小さくてバリア性の経時安定性に優れたガスバリアフィルムを提供することを目的とし、さらにこのフィルムを用いて、長期間使用しても劣化しにくい有機デバイス(例えば、有機EL素子や色素増感型太陽電池など)を提供することを目的とする。
前記の課題は、以下の手段で解決することができる。
[1] 透明な可撓性支持基板と、40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.09g/m2/day以下である酸化窒化珪素薄膜Aからなるガスバリア層を少なくとも1層有しており、前記酸化窒化珪素薄膜Aの元素組成が、珪素に対する窒素比率(N/Si、係数Xa)が0.1〜0.9の範囲にあり、珪素に対する酸素比率(O/Si、係数Ya)が0.65〜1.85の範囲にあり、且つ下記式(1)により得られる係数Zaが1以下であることを特徴とするガスバリアフィルム。
(式1) Za = 4−(3Xa+2Ya)
[2] 前記バリアフィルムが、前記酸化窒化珪素薄膜Aからなるガスバリア層と、薄膜Aと異なる元素組成比の酸化窒化珪素薄膜Bからなるガスバリア層をそれぞれ少なくとも1層以上有しており、薄膜Bを構成する酸化窒化珪素の元素組成が、珪素に対する窒素比率(N/Si、係数Xb)が0〜0.4の範囲にあり、珪素に対する酸素比率(O/Si、係数Yb)が0.9〜2.0の範囲にあり、且つ下記式(2)により得られる係数Zbが1以下であることを特徴とする[1]に記載のガスバリアフィルム。
(式2) Zb = 4−(3Xb+2Yb)
[3] 前記酸化窒化珪素薄膜Aが化学気相堆積法(CVD法)により形成されたことを特徴とする[1]または[2]に記載のガスバリアフィルム。
[4] 前記酸化窒化珪素薄膜Aおよび薄膜Bからなるガスバリア層が、交互に積層されていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
[5] 40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.04g/m2/day以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
[6] 波長450nmの光透過率が70%以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
[7] [1]〜[6]のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを用いたことを特徴とする有機デバイス。
[8] [1]〜[6]のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムで封止されたことを特徴とする有機デバイス。
本発明によれば、高いバリア性と透明性とを有し、且つ膜応力が小さくてバリア性の経時安定性に優れるという特性を併せ持つガスバリアフィルムを提供することができる。また、本発明によれば、長期間使用しても劣化しにくい有機デバイスを提供することができる。
以下において、高いバリア性と透明性とを有し、バリア性能の経時安定性に優れた本発明のガスバリアフィルムについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
《ガスバリアフィルム》
本発明のガスバリアフィルムは、透明な可撓性支持基板と、40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.09g/m2/day以下である酸化窒化珪素薄膜Aからなるガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、該酸化窒化珪素薄膜Aの元素組成が特定の範囲内に制御されていることを特徴とする。
本発明のガスバリアフィルムは、以上のような構成とすることで40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率を0.09g/m2/day以下とすることができ、好ましくは0.04g/m2/day以下、より好ましくは0.02g/m2/day以下、最も好ましくは0.01g/m2/day以下とすることができる。また本発明のガスバリアフィルムは、高い光透過率を有しており、波長450nmの光透過率は70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。
(ガスバリアフィルムの構成)
まず、本発明のガスバリアフィルムの構成について説明する。本発明のガスバリアフィルムは、透明な可撓性支持基板上に、上記の条件を満たす酸化窒化珪素薄膜Aからなるガスバリア層を少なくとも1層有するものであれば、その他の構成は特に制限されない。例えば、酸化窒化珪素薄膜Aとは異なる元素組成を有するガスバリア層をさらに有するものであってもよく、特に上記の条件を満たす酸化窒化珪素薄膜Bからなるガスバリア層を少なくとも1層有するものであることが好ましい。また、さらにプライマー層、無機薄膜層、吸湿性層、帯電防止層、導電層等を有するものであってもよい。これらの構成層の配置順は特に制限されない。可撓性支持基板の片面のみに層を有するものであってもよいし、両面に層を有するものであってもよい。両面に層を有する場合は、両面の層配置が同じであっても異なっていてもよく、また両面にガスバリア層を有するものであってもよい。
図1および図2は、本発明のガスバリアフィルムの好ましい構成例を示す断面図である。図1の構成例では、本発明のガスバリアフィルム1は、透明可撓性支持基板2と、酸化窒化珪素で構成された薄膜Aからなるガスバリア層3aとを有する。また図2の構成例では、本発明のガスバリアフィルム1は、透明可撓性支持基板2と、酸化窒化珪素薄膜Aからなるガスバリア層3a、酸化窒化珪素薄膜Bからなるガスバリア層3b、酸化窒化珪素薄膜Aからなるガスバリア層3aをこの順で積層したガスバリア層3とを有する。
透明可撓性支持基板2は、透明な可撓性のプラスチックフィルム等で構成することができ、その上に設けられる各層を保持するために用いられる。
ガスバリア層3は、酸化窒化珪素の無機薄膜からなる層であり、ガス分子の透過を抑制する層である。ガスバリア層3は、少なくとも1層の酸化窒化珪素薄膜Aからなるガスバリア層3aを有するものであり、酸化窒化珪素薄膜Bからなるガスバリア層3bやその他のガスバリア層をさらに有していてもよい。ガスバリア層3の構成層の種類と数は、目的に応じて適宜決定することができる。
ガスバリア層3bは、ガスバリア層全体の脆性とバリア性を向上させるために設けられる。ガスバリア層3bは、図2に示すように複数のガスバリア層3aの間に設けたり、透明可撓性支持基板2とガスバリア層3aとの間に設けたりすることが好ましい。さらにガスバリア層3aと3bは、交互に積層されていることがガスバリア性の向上やガスバリアフィルムの機械的強度を向上させる観点から好ましい。
以下、各層について詳細に説明する。
(ガスバリア層)
本発明における「ガスバリア層」とは、酸化窒化珪素薄膜で構成されるガス分子の透過を抑制しうる緻密な構造を持ち、高い光透過率を有する薄膜である層を意味し、異なる元素組成比の酸化窒化珪素の薄膜AとBからなるものが好ましい。ここで酸化窒化珪素薄膜Aの元素組成は、珪素に対する窒素比率(N/Si、係数Xa)が0.1〜0.9の範囲にあり、0.3〜0.85が好ましく、0.4〜0.8が最も好ましい。また珪素に対する酸素比率(O/Si、係数Ya)が0.65〜1.85の範囲にあり、0.7〜1.55が好ましく、0.8〜1.4が最も好ましい。さらに下記式(1)により得られる係数Zaが1以下であり、0.2〜1.0が好ましい。
(式1) Za = 4−(3Xa+2Ya)
酸化窒化珪素薄膜Bの元素組成は、珪素に対する窒素比率(N/Si、係数Xb)が0〜0.4の範囲にあり、0〜0.3がより好ましく、0.1〜0.3が最も好ましい。また、珪素に対する酸素比率(O/Si、係数Yb)が0.9〜2.0の範囲にあり、1.05〜2.0が好ましく、1.05〜1.85が最も好ましい。さらに下記式(2)により得られる係数Zbが1以下で、0〜0.5が好ましい。酸化窒化珪素薄膜に含まれる窒素および酸素の比率は、ラザフォード後方散乱分光法やX線光電子分光法(ESCA)で測定することができる。
(式2) Zb = 4−(3Xb+2Yb)
前記ガスバリア層の成膜は、膜応力を低くするために化学気相堆積(CVD)法により行うことが適している。前記成膜方法としては、例えば、プラズマCVD法、熱CVD法、光CVD法などが挙げられる。また、前記ガスバリア層の厚みについては特に限定されないが、厚すぎると曲げ応力によるクラックのおそれがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれもガスバリア性が悪くなる傾向がある。このため、各ガスバリア層の厚みは、それぞれ5nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは10nm〜1000nmであり、最も好ましくは10nm〜200nmである。本発明のガスバリアフィルムが酸化窒化珪素薄膜Aと酸化窒化珪素薄膜Bとを有するとき、酸化窒化珪素薄膜Aの総厚と酸化窒化珪素薄膜Bの総厚の比(A/B)は特に制限されない。
(可撓性支持基板)
本発明のガスバリアフィルムに用いられる透明な可撓性支持基板としては、透明で可撓性を有し、且つ前記各層を保持できる基板であれば特に制限はなく、例えば透明フィルムなどを使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記透明な可撓性支持基板を構成する材料としては、具体的に、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性カーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂のうち、好ましい例としては、ポリエステル樹脂で特にポリエチルナフタレート樹脂(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAr)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、フルオレン環変性カーボネート樹脂(BCF−PC:特開2000−227603号公報の実施例−4の化合物)、脂環変性ポリカーボネート樹脂(IP−PC:特開2000−227603号公報の実施例−5の化合物)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の実施例−1の化合物)等の化合物からなるフィルムが挙げられる。
本発明に用いられる可撓性支持基板は、有機デバイスの支持体に用いるため可視光に対して透明である。前記可撓性支持基板の透明度は、波長500nmの可視光を80%以上透過することが好ましい。前記透明な可撓性支持基板の厚みは、透明度を確保するために適宜調整することができる。可撓性支持基板の厚みは、好ましくは5μm〜500μmであり、より好ましくは10μm〜300μmであり、さらに好ましくは50μm〜200μmである。
(その他の機能層)
本発明のガスバリアフィルムは、透明な可撓性支持基板とガスバリア層との間に、公知のプライマー層または無機薄膜層を設置することができる。前記プライマー層としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂層、親水性樹脂共存下でゾルーゲル反応により形成する有機無機ハイブリッド層、無機蒸着層またはゾル−ゲル法による緻密な無機層を挙げることができる。前記無機蒸着層としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ等の蒸着層が好ましい。前記無機蒸着層は真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することができる。
また、水蒸気バリア性を向上させるために、吸湿性層を挿入してもよい。吸湿性層の脆弱性や吸湿後の体積膨張による変形の影響を少なくするという観点から、吸湿性層は2つのガスバリア層の間に配置されることが最も望ましい。
さらに本発明のガスバリアフィルムは、ガスバリア層以外に、種々の機能層を設置してもよい。該機能層の例としては、反射防止層、偏光層、カラーフィルター、および光取出効率向上層等の光学機能層;ハードコート層や応力緩和層等の力学的機能層;帯電防止層や導電層などの電気的機能層;防曇層;防汚層;被印刷層などが挙げられる。これらの機能層は、透明な可撓性支持基板またはガスバリア層に接して設置してもよく、ガスバリア層が設置された可撓性支持基板の反対側の面に設置してもよい。
《有機デバイス》
本発明の有機デバイスとは、例えば画像表示素子(円偏光板・液晶表示素子、電子ペーパーや有機EL素子)および色素増感型太陽電池、タッチパネルなどを指す。本発明のガスバリアフィルムの用途は特に限定されないが、該有機デバイスの基板や封止フィルムとして好適に用いることができる。
〈円偏光板〉
前記円偏光板は、本発明のガスバリアフィルム上に、λ/4板と偏光板とを積層することで作製することができる。この場合、λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
〈液晶表示素子〉
前記液晶表示装置は、反射型液晶表示装置と透過型液晶表示装置とに大別することができる。前記反射型液晶表示装置は、下方から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明のガスバリアフィルムは、前記透明電極および上基板として使用することができる。前記反射型液晶表示装置にカラー表示機能をもたせる場合には、さらにカラーフィルター層を前記反射電極と前記下配向膜との間、または、前記上配向膜と前記透明電極との間に設けることが好ましい。
また、前記透過型液晶表示装置は、下方から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明のガスバリアフィルムは、前記上透明電極および上基板として使用することができる。また、前記透過型液晶表示装置にカラー表示機能をもたせる場合には、さらにカラーフィルター層を前記下透明電極と前記下配向膜との間、または、前記上配向膜と前記透明電極との間に設けることが好ましい。
前記液晶層の構造は特に限定されないが、例えば、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型またはHAN(Hybrid Aligned Nematic)型、VA(Vertically Alignment)型、ECB(Electrically Controlled Birefringence)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、または、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)型であることが好ましい。
(タッチパネル)
前記タッチパネルとしては、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載されたものの基板に本発明のガスバリアフィルムを適用したものを用いることができる。
〈有機EL素子〉
以下、本発明での有機デバイスの代表例として「有機EL素子」(以下、単に「発光素子」と称する場合がある)について詳細に説明する。該有機EL素子は、基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に有機発光層(以下、単に「発光層」と称する場合がある。)を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極および陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
前記有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。また、発光層としては一層だけでもよく、また、第一発光層、第二発光層、第三発光層等に発光層を分割してもよい。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
次に、発光材料を構成する要素について、詳細に説明する。
(陽極)
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、またはこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流または高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
前記発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。が、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスチック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
(陰極)
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてはアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Cs等)、2属金属アルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属や2属金属アルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属または2属金属アルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種または2種以上を同時または順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
前記発光素子において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属または2属金属アルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
(有機化合物層)
前記発光素子における有機化合物層について説明する。
該発光素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、有機発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
−有機化合物層の形成−
前記発光素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
――有機発光層――
有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子との再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。前記発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料との混合層とした構成でもよい。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、ドーパントは1種であっても2種以上であってもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
前記発光素子においては、相異なる二種類あるいは三種類以上の発光材料を用いることにより、任意の色の発光素子を得ることができる。中でも、発光材料を適切に選ぶことにより、高発光効率および高発光輝度である白色発光素子を得ることができる。例えば、青色発光/黄色発光や水色発光/橙色発光、緑色発光/紫色発光のように、補色関係にある色を発光する発光材料を用いて白色を発光させることができる。また、青色発光/緑色発光/赤色発光の発光材料を用いて白色発光させることもできる。なお、ホスト材料が発光材料の機能を兼ねて発光してもよい。例えば、ホスト材料の発光と発光材料の発光によって、素子を白色発光させてもよい。
前記発光素子においては、相異なる二種類以上の発光材料を同一発光層に含んでいてもよく、また、例えば、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層、あるいは青色発光層/黄色発光層のようにそれぞれの発光材料を含む層を積層した構造であってもよい。
発光層の発光色の調整手法には以下のような手法もある。これらの一または複数の手法を用いて発光色を調整することができる。
1)発光層よりも光取り出し側にカラーフィルターを設けて調整する手法。
カラーフィルターは、透過する波長を限定することで発光色を調整する。カラーフィルターとしては、例えば青色のフィルターとしては酸化コバルト、緑色のフィルターとしては酸化コバルトと酸化クロムとの混合系、赤色のフィルターとしては酸化鉄などの公知の材料を用い、例えば真空蒸着法などの公知の薄膜成膜法を用いて透明基板上に形成してもよい。
2)発光を促進したり阻害したりする材料を添加して発光色を調整する手法。
例えば、ホスト材料からエネルギーを受け取り、このエネルギーを発光材料へ移す、いわゆるアシストドーパントを添加し、ホスト材料から発光材料へのエネルギー移動を容易にすることができる。アシストドーパントとしては、公知の材料から適宜選択され、例えば後述する発光材料やホスト材料として利用できる材料から選択されることがある。
3)発光層よりも光取り出し側にある層(透明基板を含む)に、波長を変換する材料を添加して発光色を調整する手法。
この材料としては公知の波長変換材料を用いることができ、例えば、発光層から発せられた光を他の低エネルギー波長の光に変換する蛍光変換物質を採用することができる。蛍光変換物質の種類は目的とする有機EL装置から出射させようとする光の波長と発光層から発せられる光の波長とに応じて適宜選択される。また、蛍光変換物質の使用量は濃度消光を起さない範囲内でその種類に応じて適宜選択可能である。蛍光変換物質は1種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。複数種を併用する場合には、その組合せにより青色光、緑色光および赤色光以外に、白色光や中間色の光を放出することができる。
前記発光素子に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
また、前記発光素子に使用できる燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、および白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、および白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、およびガドリニウムが好ましい。
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
また、前記発光素子における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するものおよびアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであることが好ましく、5nm〜200nmであることがより好ましく、10nm〜100nmであることがさらに好ましい。
――正孔注入層、正孔輸送層――
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン等を含有する層であることが好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのがさらに好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
――電子注入層、電子輸送層――
電子注入層、電子輸送層は、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体等を含有する層であることが好ましい。
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのがさらに好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
また、陰極と発光層との間のエネルギー障壁を緩和するために、陰極に隣接する層へアルカリ金属やアルカリ金属化合物をドーピングしてもよい。添加した金属や金属化合物により有機層が還元されてアニオンが生成するため、電子注入性が高まり、印加電圧が低くなる。アルカリ金属化合物としては、例えば酸化物、フッ化物、リチウムキレートなどが挙げられる。
――正孔ブロック層――
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。また、電子輸送層・電子注入層が正孔ブロック層の機能を兼ねていてもよい。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体等が挙げられる。正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。正孔ブロック層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
また、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層を、発光層と陽極側で隣接する位置に設けることもできる。正孔輸送層・正孔注入層がこの機能を兼ねていてもよい。
(EL保護層)
前記発光素子においては、素子全体をEL保護層によって保護されていてもよい。EL保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxOy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
EL保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
さらに、前記発光素子は、本発明のバリアフィルムと封止容器とを用いて素子全体を封止してもよい。また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤または不活性液体を封入してもよい。前記水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。前記不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
(素子の駆動)
前記発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。該発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号公報、同6−301355号公報、同5−29080号公報、同7−134558号公報、同8−234685号公報、同8−241047号公報、特許登録第2784615号公報、米国特許第5,828,429号明細書、同6,023,308号明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
透明な可撓性支持基板として、厚み120μmのPEN(帝人デュポン(株)製、Q65A)フィルムを採用し、その上にプラズマCVD法で酸化窒化珪素薄膜からなるガスバリア層を1層設けてガスバリアフィルム(試料No.1〜8)を作製した。具体的には、プラズマCVD装置の真空チャンバーを、油回転ポンプとターボ分子ポンプとで到達圧力4×10-3Paまで減圧した後に、表1の通りにチャンバー内に所定のシランガス(SiH4、窒素ガスで5%濃度に希釈)、および酸素(O2、窒素ガスで1%濃度に希釈)を導入し、所定の放電電力を印加して、成膜圧力が0.4Paで膜厚が100nmになるように一定時間成膜した。試料No.1〜8は、それぞれ酸化窒化珪素薄膜の元素組成が異なる。作製した各ガスバリアフィルムの物性を以下の方法で評価し、その結果を表1にまとめて示した。
<ガスバリアフィルムの物性評価>
(1)層構成(膜厚)
日立(株)製、走査型電子顕微鏡「S−900型」でフィルムサンプルの超薄切片を観察して確認した。
(2)水蒸気透過率(g/m2/day)
MOCON社製、「PERMATRAN−W3/31」(条件:40℃・相対湿度90%)を用いて測定した。また、前記MOCON装置の測定限界である0.01g/m2/day以下の値は、次の方法を用いて補完した。まず、ガスバリアフィルム上に直に金属Caを蒸着し、蒸着Caが内側になるよう該フィルムとガラス基板を市販の有機EL用封止材で封止して測定試料を作成した。次に該測定試料を前記の温湿度条件に保持し、ガスバリアフィルム上の金属Caの光学濃度変化(水酸化あるいは酸化により金属光沢が減少)から水蒸気透過率を求めた。
(3)ガスバリア層の元素組成
ガスバリア層の元素組成分析は、X線光電子分光分析装置(クレイトス社製、ESCA−3400)を用い、アルゴンイオン銃で試料をエッチングして、各層の中間部分の組成を求めることにより行った。X線源は、Mg−Kαを使用し、試料面に対して法線方向に検出器をセットして測定を行い適正な帯電補正を行った。得られた各組成のピーク面積に感度係数補正を施した後に、元素組成比を算出した。
(4)光透過率
島津製作所(株)製、分光光度計「UV3100PC」を用いて、波長450nmにおけるガスバリアフィルムの光透過率(%)を測定した。
Figure 0004717669

[比較例1]
実施例1と同じ透明な可撓性支持基板上に、プラズマCVD法とは異なる成膜方法であるRFスパッタリング法によって、酸化窒化珪素薄膜からなるガスバリア層を1層設けてガスバリアフィルム(試料No.9〜13)を作製した。具体的には、RFスパッタリング装置の真空チャンバーを油回転ポンプとターボ分子ポンプとで到達圧力3×10-4Paまで減圧し、ターゲットとして窒化珪素を使用し、アルゴン(Ar)ガスを30sccm、窒素ガス(N2)または酸素ガス(O2)を表2の通りにチャンバー内に導入し、周波数13.56MHzの高周波電力(投入電力1.2kW)を印加して、成膜圧力が0.25Paで膜厚が100nmになるように一定時間成膜した。試料No.9〜13は、それぞれ酸化窒化珪素薄膜の元素組成が異なる。作製した各ガスバリアフィルムの物性を実施例1と同じ方法で評価し、その結果を表2にまとめて示した。
Figure 0004717669
表1と表2から明らかなように、プラズマCVD法で成膜した本発明の酸化窒化珪素薄膜からなるガスバリアフィルム(試料No.1〜6)は、RFスパッタリング法で成膜したガスバリアフィルム(試料No.9〜13)よりも水蒸気透過率に優れている。また、プラズマCVD法で成膜したガスバリアフィルムであっても、ガスバリア層の係数Zaが1より大きいフィルム(試料No.7〜8)は光透過率が劣っており、本発明のガスバリアフィルムのみが光透過率と水蒸気透過率を両立し優れていることが確認された。
[実施例2]
実施例1と同じ透明な可撓性支持基板上に、酸化窒化珪素薄膜Aからなる層と酸化窒化珪素薄膜Bからなる層を表3に記載される層構成となるようにプラズマCVD法で成膜してガスバリアフィルム(試料No.14〜19)を作製した。薄膜Aは上記試料No.2と同じ成膜条件で、薄膜Bは試料No.5の成膜条件で作製した。試料No.14〜19は、それぞれ層構成と膜厚が異なる。作製した各ガスバリアフィルムの物性を実施例1と同じ方法で評価し、その結果を表3にまとめて示した。
[比較例2]
実施例1と同じ透明な可撓性支持基板上に、酸化窒化珪素薄膜A’からなる層と酸化窒化珪素薄膜B’からなる層を表3に記載される層構成となるようにRFスパッタリング法で成膜してガスバリアフィルム(試料No.20)を作製した。薄膜A’は上記試料No.9と同じ成膜条件で、薄膜B’は試料No.13の成膜条件で作製した。作製した各ガスバリアフィルムの物性を実施例1と同じ方法で評価し、その結果を表3に示した。
Figure 0004717669
表3から明らかなように、プラズマCVD法で成膜したガスバリア層を積層した本発明のガスバリアフィルムの方が、RFスパッタリング法で成膜し積層したガスバリアフィルムよりも水蒸気透過率に優れている。また本発明のガスバリアフィルムは、酸化窒化珪素からなる薄膜Aあるいは薄膜Bを複数層積層することで、さらに水蒸気透過率が良好となり、また積層する場合に薄膜AとBを交互に積層する方が、同じ膜を連続して積層するよりも水蒸気透過率の改善に効果があることが明らかである。
[実施例3]
上記実施例1および実施例2で作製したガスバリアフィルムの中で、光透過率が比較的高く同程度のフィルム5種(試料No.1、5、12、15および19)を選択し、これらを用いた有機EL素子の作製を行い発光評価を行った。
<有機EL素子の作製>
ガスバリアフィルム(試料No.1、5、12、15および19)のそれぞれを、真空チャンバー内に導入し、IZOターゲット(出光興産(株)製)を用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、厚み0.2μmのIZO薄膜からなる透明電極を無機ガスバリア層が積層された面に形成した。透明電極(IZO)より、アルミニウムのリ−ド線を結線し、積層構造体を形成した。
前記透明電極の表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分散液(BAYER社製、Baytron P:固形分1.3質量%)をスピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥し、厚み100nmのホール輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Xとした。
一方、厚み188μmのポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、スミライトFS−1300)からなる仮支持体の片面上に、下記組成を有する発光性有機薄膜層用塗布液を、スピンコーターを用いて塗布し、室温で乾燥することにより、厚み13nmの発光性有機薄膜層を仮支持体上に形成した。これを転写材料Yとした。
〔組成〕
・ポリビニルカルバゾール: 40質量部
(Mw=63000、アルドリッチ社製)
・トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体: 1質量部
(オルトメタル化錯体)(ケミプロ化成(株)製)
・ジクロロエタン: 3200質量部
前記基板Xのホール輸送性有機薄膜層の上面に転写材料Yの発光性有機薄膜層側を重ね、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、基板Xの上面に発光性有機薄膜層を形成した。これを基板XYとする。
また、25mm角に裁断した厚み50μmのポリイミドフィルム(UPILEX−50S、宇部興産(株)製)片面上に、パターニングした蒸着用のマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、約0.1mPaの減圧雰囲気中でAlを蒸着し、膜厚0.3μmの電極を形成した。Al23ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、Al23をAl層と同パターンで蒸着し、膜厚3nmとした。Al電極よりアルミニウムのリード線を結線し、積層構造体を形成した。得られた積層構造体の上に下記組成を有する電子輸送性有機薄膜層用塗布液をスピンコーター塗布機で塗布し、80℃で2時間真空乾燥することにより、厚み15nmの電子輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Zとする。
〔組成〕
・ポリビニルブチラール2000L: 10質量部
(Mw=2000、電気化学工業(株)製)
・1−ブタノール: 3500質量部
・下記構造を有する電子輸送性化合物: 20質量部
(特開2001−335776号公報に記載の方法にて合成)
Figure 0004717669
前記基板XYと前記基板Zとを用い、電極同士が発光性有機薄膜層を挟んで対面するように重ね合せ、市販の有機EL用封止材で封止した。
得られた有機EL素子にソースメジャーユニット2400型(東洋テクニカ(株)製)を用いて、直流電流を印加し発光させたところ、いずれの素子試料も良好に発光した。
次に、前記有機EL素子試料を40℃・相対湿度90%の環境に24時間放置した後に、同様にして素子を発光させたところ、本発明の試料No.1を用いた素子は、発光面積の10%をダークスポットが占有し、試料No.15の素子では5%を、試料No.19の素子では1%未満をダークスポットが占めた。試料No.5と11のでは、ダークスポットがそれぞれ20%と90%を占有した。このことから本発明により形成されたガスバリアフィルムは、ガスバリア性に優れ有機ELの経時安定性を向上させることが認められた。
本発明のガスバリアフィルムは、高いバリア性と透明性とを有し、且つ膜応力が小さくてバリア性の経時安定性に優れるという特性を併せ持っている。本発明のガスバリアフィルムを用いれば、長期間使用しても劣化しにくい有機デバイスを提供することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
本発明のガスバリアフィルムの構成を示す断面図である。 本発明のガスバリアフィルムの構成を示す断面図である。
符号の説明
1 ガスバリアフィルム
2 透明可撓性支持基板
3a、3b ガスバリア層

Claims (8)

  1. 透明な可撓性支持基板と、40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.09g/m2/day以下である酸化窒化珪素薄膜Aからなるガスバリア層を少なくとも1層有しており、前記酸化窒化珪素薄膜Aの元素組成が、珪素に対する窒素比率(N/Si、係数Xa)が0.4〜0.8の範囲にあり、珪素に対する酸素比率(O/Si、係数Ya)が0.8〜1.4の範囲にあり、且つ下記式(1)により得られる係数Zaが0.2〜1であることを特徴とするガスバリアフィルム。
    (式1) Za = 4−(3Xa+2Ya)
  2. 前記バリアフィルムが、前記酸化窒化珪素薄膜Aからなるガスバリア層と、薄膜Aと異なる元素組成比の酸化窒化珪素薄膜Bからなるガスバリア層をそれぞれ少なくとも1層以上有しており、薄膜Bを構成する酸化窒化珪素の元素組成が、珪素に対する窒素比率(N/Si、係数Xb)が0〜0.4の範囲にあり、珪素に対する酸素比率(O/Si、係数Yb)が0.9〜2.0の範囲にあり、且つ下記式(2)により得られる係数Zbが1以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
    (式2) Zb = 4−(3Xb+2Yb)
  3. 前記酸化窒化珪素薄膜Aが化学気相堆積法(CVD法)により形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
  4. 前記酸化窒化珪素薄膜Aおよび薄膜Bからなるガスバリア層が、交互に積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  5. 40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.04g/m2/day以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  6. 波長450nmの光透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを用いたことを特徴とする有機デバイス。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムで封止されたことを特徴とする有機デバイス。
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