JP4715728B2 - 現像ローラの製造方法、現像ローラ、現像装置および画像形成装置 - Google Patents
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Description
現像工程では、例えば、静電的な潜像を担持する感光体に、トナーを担持する現像ローラを接触させた状態で、帯電したトナーを現像ローラから潜像へ付与し、潜像をトナー像として可視化する。
かかる現像ローラは、一般に金属管を用いて製造される。そして、金属管の外周面に前述のような表面処理を施すことにより、外周面に凹部を形成してなる現像ローラが得られる。このような現像ローラでは、凹部にトナーを担持した状態で回転することにより、トナーを感光体に付与することができる。
この転造法では、金属管911の外周面911aに形成すべき凹部902の形状に対応した凸部913aを、外周面に備えた円柱状のダイス913を用いる。そして、このダイス913を、図8(a)に示すように、金属管911の外周面911aに押し当てて、ダイス913の凸部913aを金属管911の外周面911aに食い込ませることにより、凹部902を形成する。
現像ローラの外周面にこのような段差部(角部)があると、現像工程の際に、この段差部にトナーが固着(フィルミング)し易くなる。これにより、固着したトナーによって、現像ローラから感光体へのトナーの移動や、現像ローラへのトナーの供給が阻害される。その結果、現像ムラ等の現像不良が発生する。
なお、金属管911の外周面911aに凹部902を形成した後、その外周面911aと凹部902上に表面層を形成することもあるが、これによっても、上記の問題は解決されない。
本発明の現像ローラの製造方法は、外周部にトナーを保持する凹部を備えた現像ローラの製造方法であって、
金属製の管体の外周面上に、主として金属材料で構成され、前記管体より硬度が高い表面層を形成する表面層形成工程と、
該表面層形成工程の後、転造法により、前記表面層を形成した管体の外周部に、前記凹部を形成する凹部形成工程とを有することを特徴とする。
これにより、凹部の縁部にトナーが固着するのを防止し、担持したトナーを安定的に感光体に付与することができる現像ローラを容易に製造することができる。また、均一な厚さの前記表面層を備え、前記表面層の剥離を確実に防止し得る現像ローラを製造することができる。
メッキ法によれば、厚さを厳密に制御しつつ、前記表面層を効率よく形成することができる。また、前記表面層を形成する際に、前記管体に熱的負荷を及ぼすことがないので、前記管体の変質・劣化を確実に防止することができる。
これにより、前記管体より硬度が高い前記表面層がもたらす効果を十分に発揮させつつ、前記凹部を効率よく確実に形成することができる。
本発明の現像ローラの製造方法では、前記表面層と前記管体との硬度差は、ビッカース硬度HVで100〜900であることが好ましい。
これにより、前記凹部の縁部にトナーが付着するのをより確実に防止することができる。
炭素鋼は、比較的展延性に優れているので、炭素鋼で構成された前記管体は、転造法により前記凹部を高い寸法精度で形成するのに適したものとなる。
本発明の現像ローラの製造方法では、前記炭素鋼中の炭素の含有率は、0.3質量%以下であることが好ましい。
これにより、前記管体は、特に展延性に優れ、より高い寸法精度で前記凹部を形成するのに好適に供されるものとなる。
ニッケルは、非金属元素と反応することにより、特に硬度の高い化合物を生成することができる。これにより、前記管体より硬度が高い前記表面層がもたらす効果をより顕著に発揮させることができる。
これらの元素は、特に、ニッケルと高硬度の化合物を生成することができる。このため、特に硬度の高い前記表面層を得ることができる。
本発明の現像ローラの製造方法では、前記表面層中における前記添加物の含有率は、1〜15wt%であることが好ましい。
これにより、前記表面層を構成する金属材料と、前記添加物とが化合して、特に硬度の高い化合物を生成することができる。
これにより、前記表面層中の結晶化が促進されること等により、前記表面層の硬度が高くなる。その結果、前記表面層と前記管体との硬度差が拡大する。
現像ローラがこのような複数の溝を有していると、トナーと溝とが干渉する頻度が多くなる。その結果、帯電特性は向上するものの、現像ローラにトナーが固着する問題が多発する懸念が増大するが、このような現像ローラを形成する場合においても、トナーの固着をより顕著に防止することができる。
互いに平行であり、かつ、前記外周部の周方向に対して傾斜する方向に形成された複数の第1の溝と、
互いに平行であり、かつ、前記外周部の周方向に対して傾斜する方向に形成され、前記各第1の溝と交差する複数の第2の溝とを有することが好ましい。
これにより、転造の際に、前記各溝の縁部が転造方向に対して傾斜した方向に沿って形成されるため、前記各溝の縁部に段差が形成され難くなる。したがって、前記各溝の縁部が丸みを帯びた形状になり易い。これにより、トナーの固着をより確実に防止し得る現像ローラが得られる。
本発明の現像ローラの製造方法では、前記管体の外周面において、前記複数本の溝が占める面積率は、前記外周面の面積の40〜90%であることが好ましい。
これにより、かぶりが少なく、ムラのない高画質な印字が可能な現像ローラが得られる。
これにより、前記凹部の縁部にトナーが固着するのを防止し、担持したトナーを安定的に感光体に付与することができる現像ローラが得られる。
本発明の現像ローラでは、前記凹部の縁部が、丸みを帯びていることが好ましい。
これにより、前記凹部の縁部にトナーが固着するのを防止し、担持したトナーを安定的に感光体に付与することができる現像ローラが得られる。
本発明の現像ローラでは、前記縁部の縦断面の曲率半径は、前記トナーの平均半径より大きいことが好ましい。
これにより、前記縁部上をトナーが転がり易くなる。このため、前記縁部にトナーが干渉しにくくなり、トナーの固着がより確実に防止される。
これにより、現像ムラ等の現像不良を確実に防止し得る現像装置が得られる。
本発明の画像形成装置は、本発明の現像装置を備えることを特徴とする。
これにより、印字ムラ等の印字不良を確実に防止し得る現像装置が得られる。
図1は、本発明の画像形成装置の概略構成を示す模式的断面図、図2は、本発明の現像装置の概略構成を示す模式的断面図である。なお、以下の説明では、図1、2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
まず、図1に基づいて、画像形成装置の一例としてレーザビームプリンタ(以下、単に「プリンタ」と言う。)10について説明する。
図1に示すように、プリンタ10は、潜像を担持し図中矢印方向に回転する感光体20を有し、その回転方向(時計方向)に沿って帯電ユニット30、露光ユニット40、現像ユニット50、一次転写ユニット60および中間転写体70、クリーニングユニット75がこの順に配設されている。また、プリンタ10は、図1の下部に、紙などの記録媒体P1を給紙する給紙トレイ92を有し、該給紙トレイ92からの記録媒体P1の搬送方向下流に向かって、二次転写ユニット80、定着ユニット90が順次配設されている。
露光ユニット40は、図示しないパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータから画像情報を受け、これに応じて、一様に帯電された感光体20にレーザ光を所望のパターンで照射することにより、感光体20の外周面に静電的な潜像(静電潜像)を担持(形成)させる装置である。
中間転写体70は、エンドレスのベルトで構成されており、図1に示す矢印方向に、感光体20とほぼ同じ周速度にて回転駆動(循環)される。中間転写体70上には、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのうちの少なくとも1色のトナー像が担持され、例えばフルカラー画像の形成時に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4色のトナー像が順次重ねて転写されて、フルカラーのトナー像が形成される。
定着ユニット90は、前記トナー像の転写を受けた記録媒体P1を加熱および加圧することにより、前記トナー像を記録媒体P1上に融着させて永久像として定着させるための装置である。
クリーニングユニット75は、一次転写ユニット60と帯電ユニット30との間で感光体20の表面に当接するゴム製のクリーニングブレード76を有し、一次転写ユニット60によって中間転写体70上にトナー像が転写された後に、感光体20上に残存するトナーをクリーニングブレード76により掻き落として除去するための装置である。
まず、図示しないホストコンピュータからの指令により、感光体20、現像ユニット50の各現像装置51、52、53、54に対応して設けられた後述の現像ローラ510(図2、図3参照)、および中間転写体70が回転を開始する。そして、感光体20は、回転することによって帯電ユニット30により順次帯電される。
感光体20上に形成された潜像は、感光体20の回転に伴って現像位置に至り、イエロー現像装置54によってイエロートナーで現像される。これにより、感光体20上にイエロートナー像が形成される。このとき、現像ユニット50は、イエロー現像装置54が、前記現像位置にて感光体20と対向している(図1参照)。
一方、記録媒体P1は、給紙トレイ92から、給紙ローラ94、レジローラ96によって二次転写ユニット80へ搬送される。
一方、感光体20は、一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット75のクリーニングブレード76によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット75内の残存トナー回収部(図示しない)に回収される。
次に、現像ユニット50の現像装置51、52、53、54について詳細に説明するが、これらは、ほぼ同一の構成であるため、以下、図2に基づき、イエロー現像装置54を代表的に説明する。
図2に示すイエロー現像装置54は、イエロートナーであるトナーTを収容するハウジング540と、トナー担持体たる現像ローラ510と、この現像ローラ510にトナーTを供給するトナー供給ローラ550と、現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制する規制ブレード560とを有している。
本実施形態では、規制ブレード560の自由端部、すなわち、ブレード支持板金562に支持されている側とは逆側の端部は、その端縁で現像ローラ510に接触せずに、端縁から若干離れた部位で現像ローラ510に接触している。また、規制ブレード560は、その先端が現像ローラ510の回転方向の上流側に向くように配置されており、いわゆるカウンタ当接している。
なお、現像ユニット50の現像装置51、52、53の各部の構成、作用、効果も、前記現像装置54と同様である。
次に、図3〜図6に基づき、現像ローラ510について詳細に説明する。
図3は、現像ローラの概略構成を示す平面図、図4は、図3に示す現像ローラに形成された溝の拡大平面図、図5は、図4中のA−A線断面図、図6は、図4の斜視図である。
この現像ローラ510の本体300は、図5に示すように、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄鋼等のような金属材料を主材料として構成された金属管511と、この金属管511の外周面511aを覆うように設けられた表面層512とで構成されている。この表面層512については、後に詳述する。
また、本体300の直径は、特に限定されないが、例えば、10〜30mmであるのが好ましく、15〜20mmであるのがより好ましい。
この溝2は、平面および断面において、いかなる形状をなしていてもよいが、本実施形態では、一例として、溝2が、図3〜図6に示すように、複数の第1の溝21と、各第1の溝21と直交(交差)する複数の第2の溝22とで構成されている場合について説明する。現像ローラ510にこのような複数の溝2が形成されていると、トナーTと溝2とが干渉する頻度が多くなる。その結果、帯電特性は向上するものの、現像ローラ510にトナーが固着する問題が多発する懸念が増大するが、このような現像ローラ510を形成する場合において、本発明の現像ローラの製造方法の効果がより顕著に発揮される。
なお、溝2は、例えば、多数のすり鉢状の凹部のような溝形状以外の凹部形状で代替されてもよい。
また、図4に示すように、複数の第2の溝22も、複数の第1の溝21と同様に、互いに平行であり、それぞれ、外周部301の周方向に対して傾斜する方向に略等間隔で形成されている。そして、本実施形態では、図4および図6に示すように、第2の溝22は第1の溝21と直交している。
なお、第1の溝21と第2の溝22のそれぞれの形状は、ほぼ同一であるため、以下、第1の溝21を代表的に説明する。
ここで、第1の溝21の最大幅A1は、隣り合う前記凸部同士の離間距離の50〜90%であることが好ましく、60〜80%であることがより好ましい。
一方、第1の溝21の最大幅A1が前記上限値よりも大きければ、第1の溝21にトナーTが大量に収容され、トナーT漏れを引き起こす。また、上記好ましい範囲の場合よりも、外周面301aとの接触面が小さくなり、帯電性が低下する。
一方、第1の溝21の最大深さD1が、トナーTの粒子の平均直径(平均粒径)の前記上限値よりも大きければ、第1の溝21内をトナーTが転動しにくくなる。よって、トナーTの搬送性が低下し、帯電性も悪くなる。
トナーTの平均粒径が前記下限値よりも小さければ、第1の溝21にトナーTが積み重なって収容され、トナーTの帯電が不均一となる。
一方、トナーTの平均粒径が前記上限値よりも大きければ、トナーTが適切に外周面301aを転動せず、帯電性が悪くなる可能性がある。
また、深さD1と深さD2との比D2/D1は、特に限定されないが、例えば、0.5〜2であるのが好ましく、0.8〜1.5であるのがより好ましい。これにより、現像ローラ510の外周面301aが段差のない滑らかな形状となるため、トナーTが当該外周面301aを滑らかに転動することができる。
このときの第1の溝21の底面212の曲率半径は、トナーT粒子の平均粒径の半分より大きいことが好ましく、0.6〜10倍であることがより好ましい。より具体的には、第1の溝21の底面212の曲率半径は、0.5μmよりも大きいことが好ましく、0.6〜50μmであることがより好ましい。
これにより、トナーT粒子が第1の溝21中で転動し易い溝形状となり、トナーTと外周面301aが接触することにより、トナーT粒子が良好に帯電される。
一方、第1の溝21の底面212の曲率半径が前記上限値よりも大きければ、第1の溝21内をトナーTが滑らかに転動せず、トナーTの帯電性が悪くなる。
また、図5に示すように、第1の溝21のU字形状は、左右対称に形成されている。これにより、トナーT粒子の第1の溝21への収容、離脱がスムーズに進行し、トナーTを滑らかに搬送することができる。したがって、トナーTが外周面301aと接することにより、トナーTを均一に帯電させることができる。
角度θが前記下限値未満であると、現像ローラ周方向の凹凸の数が多くなるため、回転時にトナーTと凹凸の接触機会が多くなり過ぎるおそれがある。このため、トナーTの帯電量が高くなり過ぎてトナーTの飛翔性が悪くなり、十分な量のトナーTを感光体20に付与するのが困難となる可能性がある。
角度θが前記上限値を超えると、現像ローラ周方向の凹凸の数が少なくなるため、回転時にトナーTと凹凸の接触機会が少なくなるおそれがある。これにより、トナーTが十分に帯電されないため、そのトナーTがかぶりの原因となり、無駄となるトナーTの量が多くなる可能性がある。
第1の溝21同士の間隔は、略等間隔で形成される。具体的には、後述するC1の長さの範囲であることが好ましい。かかる範囲内であれば、外周面301aに対して適度な間隔で第1の溝21が形成され、適正な量のトナーTを搬送することができる。また、外周面301aとの接触により、トナーTが均一に帯電される。したがって、かぶりの少ない、高画質な印字が可能となる。
第2の溝22は、その各部の寸法、形状について、前記第1の溝21のものと同様である。また、その作用、効果も同様である。
凸部3は、その頂面31が略平面で形成され、凸部3全体として截頭錐体状の形状をなしている。頂面31を平面とすることで、トナーTや規制ブレードとの摩擦により表面が磨耗しにくくなり、現像ローラ510の性能が長期にわたり維持される。また、頂面31をトナーTが転動するため、トナーTの帯電性を上げることができる。
なお、凸部3は現像ローラ510の外周面301a上に形成されているので、その頂面31は現像ローラ510の外径の曲率半径と略同程度に湾曲している。この程度の湾曲は、前記「略平面」に含まれるものとする。
また、凸部3の頂面31の中心を通り第1の溝21と平行な方向の頂面31の長さをC2としたとき、C2は10〜50μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。
C1およびC2のそれぞれが前記下限値よりも小さければ、長時間の使用により規制ブレードやトナーとの摩擦で凸部が磨耗しやすくなり、トナー搬送量、帯電量を維持することができなくなる。
なお、凸部3の高さは、第1の溝21の深さD1および第2の溝22の深さD2と同じである。
一方、隣り合う凸部3との離間距離dが前記上限値よりも大きければ、第1の溝21の最大幅A1が大きくなり、トナーT漏れを引き起こしてしまう恐れがある。また、トナーTと外周面301aとの接触する面が上記好ましい範囲よりも小さくなるため、トナーTの帯電性が悪くなる。
一方、溝形成部320の面積率が外周面301aの面積の前記上限値より大きければ、第1の溝21から凸部3へと転動する割合が少なくなるため、トナーTの帯電性が悪くなる。また、トナーTと外周面301aとの接触する面が上記好ましい範囲よりも小さくなるため、トナーTの帯電性が悪くなる。
なお、図5、図6では、第1の溝21および第2の溝22は、それぞれほぼ同じU字形状をなしていたが、それそれ、異なるU字形状であってもよい。また、第1の溝21または第2の溝22の一部の部位のU字形状が他の部位のU字形状と異なっていてもよい。
図7は、本発明の現像ローラの製造方法を説明するための模式図である。
現像ローラ510を製造する方法は、金属管(金属製の管体)の外周面上に、金属材料で構成され、金属管より硬度が高い表面層を形成する表面層形成工程と、この表面層形成工程の後に、転造法により、表面層を形成した金属管の外周部に、凹部を形成する凹部形成工程とを有する。以下、各工程について、順次説明する。
この金属管511には、いかなる方法で製造されたものでも用いることができるが、例えば、金属板を、成形ロールで連続的に管状に成形(ロール成形)する方法、スパイラル状に成形(スパイラル成形)する方法、U字状にプレス成形した後、O字状にプレス成形(UOプレス成形)する方法等の各種成形方法で成形した後、突き合わせた金属板の端部同士、または、重ね合わせた金属板の端部同士を溶接することにより製造されたものを用いることができる。
このような金属材料の中でも、特に、炭素鋼、クロム鋼のような合金鋼、特殊鋼、高張力鋼、ステンレス鋼のような耐食鋼等の鉄鋼材料が好ましく、炭素鋼がより好ましい。炭素鋼は、比較的展延性に優れているので、炭素鋼で構成された金属管511は、転造法により凹部を高い寸法精度で形成するのに適したものとなる。
また、金属管511のビッカース硬度HVは、70〜300程度であるのが好ましく、100〜200程度であるのがより好ましい。金属管511の硬度が前記範囲内であれば、転造により、高い寸法精度の溝2を形成するのに十分な展延性を金属管511が有することとなる。
これにより、金属管511の外周面511a上が、金属管511の縦断面を図示した図7(b)に示すように、表面層512で覆われる。
外周面511a上に表面層512を形成する方法としては、例えば、メッキ法、溶射法、物理的蒸着法、化学的蒸着法等の方法を用いることができる。
メッキ法としては、例えば、無電解メッキ法、電解メッキ法等が挙げられるが、特に、無電解メッキ法を用いるのが好ましい。無電解メッキによれば、金属管511の導電性にかかわらず、表面層512を確実に形成することができる。また、形成された表面層512は、金属管511の形状によらず、外周面511a上に均一な厚さで形成される。
このような表面層512は、主として金属材料で構成される。
この金属材料には、例えば、遷移金属を主成分とする金属材料を用いることができるが、特に、ニッケルを主成分とする金属材料が好ましく用いられる。ニッケルは、非金属元素と反応することにより、遷移金属の中でも特に硬度の高い化合物を生成することができる。これにより、後述する凹部形成工程において得られる効果がより顕著なものとなる。
このうち、表面層512は、ホウ素およびリンのうちの少なくとも1種を添加物として含むのが好ましい。これらの元素は、特に、ニッケルと反応して、高硬度の化合物を生成することができる。このため、特に硬度の高い表面層512を得ることができる。
ここで、前記金属材料と前記添加物との組み合わせとしては、例えば、Ni−P、Ni−B、Ni−P−B、Ni−P−Co等が挙げられる。
このように表面層512を構成する材料の組成を適宜設定することにより、表面層512がトナーTを帯電させる特性(帯電特性)を高めることができる。
なお、表面層512の平均厚さが前記下限値を下回ると、後述する凹部形成工程において、金属管511より硬度が高い表面層512がもたらす効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、表面層512の平均厚さが前記上限値を上回ると、表面層512の剛性が著しく高くなり、凹部形成が困難になったり、長時間を要したりするおそれがある。
溝2を形成する方法には、転造法を用いる。
転造法は、金属管511の外周面511a、すなわち、表面層512の表面に形成すべき溝の形状に対応した凸部を、外周面に備えたダイスを、金属管511の外周面511aに押し付けて食い込ませることにより、溝2のような凹部を形成する加工方法である。
転造にあたっては、まず、表面層512を形成した金属管511を、図7(c)に示すように、円柱状をなすダイス513の外周面に接触させる。
なお、ダイス513の数は、1つまたは3つであってもよい。
次に、回転中の各ダイス513、513の間隙に、表面層512を形成した金属管511を挿入する。これにより、表面層512の表面に、各ダイス513、513の外周面がそれぞれ押し付けられる。この際、各ダイス513、513の外周面に設けられた凸部513aが、表面層512の表面に食い込むことにより、図7(d)に示すように、溝2が形成される。そして、この状態で、金属管511が、各ダイス513、513の外周面に沿って転がることにより、金属管511の外周面511a全体にわたって溝2が形成される。
ところが、トナーを保持した現像ローラに、規制ブレードが押し付けられた際、上記のような段差部(角部)があると、図8(b)に示すように、この段差部にトナーが固着(フィルミング)し易くなる。トナーが固着すると、現像ローラから感光体へのトナーの移動や、現像ローラへのトナーの供給が阻害される。その結果、従来、現像ムラ等の現像不良が発生していた。
また、従来、金属管の外周面に凹部を形成した後、その外周面上に表面層を形成することも行われた。しかしながら、段差部の形状が表面層の形状に反映されてしまうので、上記のような問題は解決されなかった。
ここで、表面層512が金属管511より硬度が高いため、表面層512の剛性が金属管511より高くなっている。このため、ダイス513の凸部513aが表面層512に食い込む際、凸部513aの縁部側では、ダイス513の外周面と表面層512の表面との間に隙間が生じる。これは、表面層512の剛性(硬度)が高いため、ダイス513の押し付けに対して、表面層512の追従性が低いことに起因するものと考えられる。
また、前記接続部514が丸みを帯びているので、トナーの変形・破壊が防止される。これにより、現像ローラ510へのトナーの固着を、より確実に防止することができる。
したがって、かかる現像ローラ510を備えた各現像装置51、52、53、54およびプリンタ10は、現像ムラ等の現像不良や、それに伴う印字ムラ等の印字不良を確実に防止し得るものとなる。
さらに、この丸みを帯びた形状により、トナーとの接触による前記接続部514の摩耗が抑制または防止される。このため、現像ローラ510の溝2の形状が長期にわたって維持されることとなり、現像ローラ510の耐久性の向上を図ることができるという利点もある。
また、金属管511の外周面511a上に表面層512を形成した後、この表面層512の表面上にダイス513を押し付けるようにしたので、均一な厚さの表面層512を備えた現像ローラ510が得られる。したがって、現像ローラ510の表面層512の剥離を確実に防ぐことができるという効果も得られる。
このようにして、円筒状の本体300が得られる。
また、表面層512のビッカース硬度HVは、金属管511より高ければよいが、500〜1100程度であるのが好ましく、600〜1000程度であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより確実に発揮される。
以上のような方法によれば、トナーの固着を防止し、担持したトナーを安定的に感光体に付与することができる現像ローラ510を容易に製造することができる。
なお、表面層形成工程と凹部形成工程との間に、表面層512を形成した金属管511に熱処理を施す熱処理工程を行うようにしてもよい。
その結果、前記第1実施形態に記載した効果がより顕著なものとなる。
すなわち、前記硬度差が拡大することにより、溝2の縁部(接続部514)において、より段差が生じ難くなり、丸みを帯びるようになる。これにより、現像ローラ510は、トナーの固着をより確実に防止し得るものとなる。
また、熱処理の加熱時間は、熱処理の温度に応じて若干異なるものの、10〜180分程度であるのが好ましく、30〜90分程度であるのがより好ましい。
また、熱処理における加熱後の平均冷却速度は、熱処理の温度に応じて若干異なるものの、20〜400℃/h程度であるのが好ましく、50〜300℃/h程度であるのがより好ましい。
なお、非酸化性雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、水素、一酸化炭素のような還元性ガス雰囲気、減圧雰囲気等が挙げられる。
例えば、本発明の現像ローラの製造方法は、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
また、金属管は、あらかじめ用意されたもの(例えば、市販の金属管等)を用いることができる。
また、前述したように、現像ローラの外周面に形成された溝の形状は、特に限定されず、いかなる形状であってもよい。なお、現像ローラの外周面に形成された溝の形状にかかわらず、前述のような本発明の現像ローラの製造方法における作用・効果が発揮される。
1.プリンタ(画像形成装置)の製造
(実施例1)
<1>まず、機械構造用炭素鋼鋼管STKM11Aを用意した。なお、鋼管中の炭素含有率は、0.05wt%であった。また、鋼管のビッカース硬度HVは、120であった。
<表面層の形成条件>
・形成方法 :無電解メッキ法
・組成 :Ni−P(Pの含有率:10wt%)
・平均厚さ :5μm
・表面層の硬度HV:550
<溝の各部の条件>
・D1・D2 :5μm
・θ :90°
・d :80μm
・A1・B1 :55μm
・C1・C2 :25μm
・溝の面積率:70%
これにより、現像ローラの本体を得た。
<5>次に、この現像ローラを組み込んだ図2に示す現像装置を得た。なお、現像装置のトナーカートリッジ中には、平均粒径5μm(平均半径2.5μm)のポリエステル系樹脂の組成のトナーを充填した。
<6>次に、この現像装置を組み込んだ図1に示すプリンタを得た。
表面層の平均厚さを10μmに変更した以外は、前記実施例1と同様にして現像ローラを製造し、この現像ローラを組み込んだ現像装置・プリンタをそれぞれ製造した。
(実施例3)
表面層中のPの含有率を6wt%とした以外は、前記実施例1と同様にして現像ローラを製造し、この現像ローラを組み込んだ現像装置・プリンタをそれぞれ製造した。なお、表面層のビッカース硬度HVは700であった。
表面層中のPの含有率を12wt%とした以外は、前記実施例1と同様にして現像ローラを製造し、この現像ローラを組み込んだ現像装置・プリンタをそれぞれ製造した。なお、表面層のビッカース硬度HVは500であった。
(実施例5)
表面層の組成をNi−B(Bの含有率2wt%)に変更した以外は、前記実施例1と同様にして現像ローラを製造し、この現像ローラを組み込んだ現像装置・プリンタをそれぞれ製造した。なお、表面層のビッカース硬度HVは750であった。
実施例1において、工程<2>と工程<3>との間に、以下に示す条件で行う熱処理工程を追加した以外は、前記実施例1と同様にして現像ローラを製造し、この現像ローラを組み込んだ現像装置・プリンタをそれぞれ製造した。なお、表面層のビッカース硬度HVは1000であった。
<熱処理の条件>
・温度 :400℃
・加熱時間 :60分
・雰囲気 :N2ガス雰囲気
・平均冷却速度:100℃/h
なお、熱処理後の表面層のビッカース硬度HVは1000であった。
実施例1において、工程<2>を省略した以外は、前記実施例1と同様にして現像ローラを製造し、この現像ローラを組み込んだ現像装置・プリンタをそれぞれ製造した。
(比較例2)
実施例1において、工程<2>と工程<3>の順序を入れ替えた以外は、前記実施例1と同様にして現像ローラを製造し、この現像ローラを組み込んだ現像装置・プリンタをそれぞれ製造した。
2.1 溝形状の評価
各実施例および各比較例で製造した現像ローラを軸線に沿って切断し、その断面を顕微鏡で観察した。
その結果、各実施例で得られた現像ローラでは、溝の縁部が、丸みを帯びていた。なお、この丸みを帯びた部分の曲率半径は、7〜15μmであった。
一方、各比較例で得られた現像ローラでは、溝の縁部の断面形状に段差が認められた。
各実施例および各比較励で製造したプリンタにおいて、所定の印字パターンで30000枚の印字を行った。
そして、1000枚印字後、10000枚印字後、30000枚印字後におけるトナーのかぶりを計量した。そして、トナーのかぶりを、以下の基準にしたがって評価した。
◎:かぶりが非常に少ない
○:かぶりが少ない
△:かぶりがやや多い
×:かぶりが非常に多い
各実施例および各比較例で製造したプリンタにおいて、所定の印字パターンで30000枚の印字を行った。
そして、1000枚印字後、10000枚印字後、30000枚印字後において、フィルミングによる印字ムラについて、以下の基準にしたがい評価を行った。
◎:フィルミングによる印字ムラが全く認められなかった
○:フィルミングによる印字ムラがわずかに認められた
△:フィルミングによる印字ムラが認められた
×:フィルミングによる印字ムラが顕著に認められた
以上、2.1〜2.3の評価結果を、表1に示す。
一方、各比較例で得られたプリンタでは、比較的少ない印字枚数でも、印字ムラが多く認められた。
Claims (18)
- 外周部にトナーを保持する凹部を備えた現像ローラの製造方法であって、
金属製の管体の外周面上に、主として金属材料で構成され、前記管体より硬度が高い表面層を形成する表面層形成工程と、
該表面層形成工程の後、転造法により、前記表面層を形成した管体の外周部に、前記凹部を形成する凹部形成工程とを有することを特徴とする現像ローラの製造方法。 - メッキ法により前記表面層を形成する請求項1に記載の現像ローラの製造方法。
- 前記表面層の平均厚さは、1〜15μmである請求項1または2に記載の現像ローラの製造方法。
- 前記表面層と前記管体との硬度差は、ビッカース硬度HVで100〜900である請求項1ないし3のいずれかに記載の現像ローラの製造方法。
- 前記管体を構成する金属材料は、炭素鋼である請求項1ないし3のいずれかに記載の現像ローラの製造方法。
- 前記炭素鋼中の炭素の含有率は、0.3質量%以下である請求項5に記載の現像ローラの製造方法。
- 前記表面層は、ニッケルを主成分とする金属材料で構成される請求項1ないし3のいずれかに記載の現像ローラの製造方法。
- 前記表面層は、添加物として、ホウ素およびリンのうちの少なくとも1種を含む請求項7に記載の現像ローラの製造方法。
- 前記表面層中における前記添加物の含有率は、1〜15wt%である請求項8に記載の現像ローラの製造方法。
- 前記表面層形成工程と前記凹部形成工程との間に、前記表面層に熱処理を施すことにより、前記表面層と前記管体との硬度差を拡大する熱処理工程を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の現像ローラの製造方法。
- 前記凹部は、複数本の溝を有する請求項1ないし10のいずれかに記載の現像ローラの製造方法。
- 前記複数本の溝は、
互いに平行であり、かつ、前記外周部の周方向に対して傾斜する方向に形成された複数の第1の溝と、
互いに平行であり、かつ、前記外周部の周方向に対して傾斜する方向に形成され、前記各第1の溝と交差する複数の第2の溝とを有する請求項11に記載の現像ローラの製造方法。 - 前記管体の外周面において、前記複数本の溝が占める面積率は、前記外周面の面積の40〜90%である請求項11または12に記載の現像ローラの製造方法。
- 請求項1ないし13のいずれかに記載の現像ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする現像ローラ。
- 前記凹部の縁部が、丸みを帯びている請求項14に記載の現像ローラ。
- 前記縁部の縦断面の曲率半径は、前記トナーの平均半径より大きい請求項15に記載の現像ローラ。
- 請求項14ないし16のいずれかに記載の現像ローラを備えることを特徴とする現像装置。
- 請求項17に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
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