JP4715194B2 - 有機無機複合体の製造方法 - Google Patents
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また、本発明では該有機無機複合体を安価な無機原料をもちいつつ、常圧室温下の短時間の反応で容易に得ることができる製造方法を提供することにある。
本発明の、ポリウレタンおよびポリ尿素からなる群から選ばれる有機ポリマーと、酸化アルミニウム微粒子とを有する有機無機複合体であって、前記酸化アルミニウム微粒子が短軸径5nm以下、アスペクト比3以上の形状を有する有機無機複合体は、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、アルミン酸アルカリと、ジアミンとを含有する塩基性の水溶液(B)とを混合攪拌し反応させることにより得ることができる。
本発明の有機無機複合体の合成に用いられる水溶液(B)は水と、無機原料であるアルミン酸アルカリと、ジアミンとから構成される。
本発明での水溶液(B)に使用するアルミン酸アルカリは、XAlO2(メタアルミン酸アルカリ)やX3AlO3(オルトアルミン酸アルカリ)およびこれらの共溶物であり、Xがアルカリ金属であるものが挙げられる。これらの例として、アルミン酸ナトリウム(ソーダ)、アルミン酸カリウム、アルミン酸リチウム等が例示できる。特にアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムは水溶性が高いため特に好ましく用いられる。また、これらは水に溶解させて用いるため、液体であっても水和物であっても好適に用いることができる。加えてアルミン酸ナトリウムは土壌改良剤、セメント添加剤等として大量に用いられている極めて安価な材料であり、このような材料を無機成分の原料として用いることも本発明の特徴のひとつである。本発明での、有機溶液(A)中のモノマー(ジクロロホーメート化合物、ホスゲン系化合物)と水溶液(B)中のジアミンとの反応は、ジカルボン酸ハロゲン化物とジアミンとの混合によりポリアミドを合成する反応に比べ反応性がやや低い。そのため前記反応を促進するためには、水に溶解したときに高いpHを示す無機原料を用いることが好ましい。本発明で用いられるアルミン酸アルカリは一般的に水溶時にpH12以上の高いpHを示すため、いずれも好ましく用いられる。
アルミン酸アルカリに含まれるアルカリ金属は、ジアミンとジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物との重合により、ポリウレタンまたはポリ尿素が生成する際に発生する酸の除去剤として作用することで、ポリウレタンまたはポリ尿素の重合反応をさらに促進する。アルカリ金属が除去されたアルミン酸はアルミノール基を経由し、脱水縮合しつつ相互に結合しナノサイズの酸化アルミニウム微粒子を形成する。このとき、モノマーからポリウレタンまたはポリ尿素への重合とアルミン酸アルカリから酸化アルミニウムへの化学変化が並行、且つ相補的に進行するため、片方の生成物が優先的に析出することを抑制し、ナノ微分散構造が形成される。特に、その際、アルミニウムイオンが3価であることに起因し、析出反応が二次元方向に優先的に進行し、二次元構造すなわち板状の酸化アルミニウムが生成すると推定される。
本発明では、有機無機複合体に複合化する酸化アルミニウムを含有する無機化合物の比率を、用いる原料により容易に制御することができる。アルミン酸アルカリの上記化学式のAl2O3/X2Oの数値が大きいもの、すなわちXに対するAlの量が大きいアルミン酸アルカリを用いることで、複合化する酸化アルミニウムの比率を高めることができる。また反対に、複合化する酸化アルミニウムの比率を低くしたい場合には、Al2O3/X2Oの数値が小さいものを用いるほかに、水溶液(B)中に導入するアルミン酸アルカリ量を少なくすると同時に重縮合反応時に生じるハロゲン化水素の中和を目的として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの酸受容体を水溶液(B)に添加してもよい。
水溶液(B)中のジアミンとしては、有機溶液(A)中の各モノマーと反応し、有機ポリマーを生成するものであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタンなどの脂肪族ジアミン;m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレンなどの芳香族ジアミン;あるいは芳香環の水素をハロゲン原子、ニトロ基、またはアルキル基などで置換した芳香族ジアミンなどが例として挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、水溶液(B)に溶解状態で共存できる他のアルカリ金属複合酸化物(例えば、亜鉛酸アルカリ、スズ酸アルカリ、マンガン酸アルカリ、モリブデン酸アルカリ、タングステン酸アルカリ、ニオブ酸アルカリ、アンチモン酸アルカリ等)をさらに水溶液(B)に溶解させることで、無機微粒子の成分に酸化アルミニウム以外の金属酸化物を酸化アルミニウム単独の複合体と同様の形状を有する範囲内で他の金属酸化物を導入しても良い。本方法により、無機成分の粒子形状や複合化状態が酸化アルミニウム単独の複合体と大差ない、有機無機複合体を提供することもできる。
本発明で有機無機複合体の合成に用いられる有機溶液(A)は、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物とこれを溶解させる有機溶媒より構成される。
有機溶液(A)中のジクロロホーメート化合物としては、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール類の水酸基を全てホスゲン化処理によりクロロホーメート化したもの;レゾルシン(1,3−ジヒドロキシベンゼン)、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、ビスフェノールS、ビスフェノールA、テトラメチルビフェノール等、1個または2個以上の芳香環に水酸基を2個持つ2価フェノール類の水酸基を全てホスゲン化処理によりクロロホーメート化したものが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機溶液(A)中のホスゲン系化合物としては、例えばホスゲン、ジホスゲンおよびトリホスゲンを挙げることができる。これらは単独で、または両種を組み合わせて使用することができる。
本発明においては、有機溶液(A)中のモノマーを選択することにより、複合体のマトリクスである有機ポリマーの種類を変えることができる。モノマーとしてジクロロホーメート化合物を用いた場合はポリウレタンを、ホスゲン系化合物を用いた場合にはポリ尿素を、水溶液(B)中のジアミンとの反応によって得ることができる。
本発明での有機溶液(A)に用いる有機溶媒としては上記の有機溶液(A)中の各種モノマーやジアミンとは反応せず、有機溶液(A)中の各種モノマーを溶解させるものであれば特に制限なく用いることができる。このうち水と非相溶の有機溶媒としてはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類を挙げることができる。また、水と相溶する有機溶媒としては、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸アルキルなどを代表的な例として挙げることができる。
複合体の製造に用いられる製造装置としては、有機溶液(A)と水溶液(B)とを良好に接触させることができる装置であればとくに限定されず、連続式、バッチ式のいずれの方式でも可能である。しかしながら、重縮合反応には数分〜30分の時間を要するため、十分な反応時間を確保するためバッチ式攪拌装置を用いることが好ましい。バッチ式の装置としては、有機溶液(A)と水溶液(B)との接触を良好に行わせる必要があるので、プロペラ状翼、マックスブレンド翼、ファウドラー翼等を持つような汎用の攪拌装置を用いることができる。
本発明により得られた有機無機複合体は、補強成分となる無機微粒子はアスペクト比を有する板状である上に粒径が極めて小さく且つ含有率も高くできるため、ポリマーに混練、分散させることによりポリマーの補強剤として用いることができる。この場合、球状の微粒子を有する有機無機複合体を用いた場合に比べて温度変化等に対する寸法安定性、各種機械強度の補強効果を高くできる特徴がある。また、該複合体は有機成分に起因する加工性を有するため加圧成型することができ、各種構造材として用いることもできる。また、該複合体は高い無機分率と有機成分が有する極性基により、極性溶媒を多量(複合体の自重に対して10倍以上)に保持する、極性溶媒吸収体としても用いることができる。また、特に極性溶媒が電解液である場合は、電解液を保持した電池セパレータ、キャパシタのセパレータ、エレクトロクロミック型表示素子のセパレータ等の電気化学ディバイスとしても用いることができる。
イオン交換水38.5部に1,4−ジアミノブタン1.21部、浅田化学(株)製アルミン酸ナトリウム粉末P−100(Al2O3,54質量%、Na2O,36質量%)2.43部を加え、25℃で15分間攪拌し、均質透明な水溶液(B)を得た。室温下でこの水溶液(B)を300mlセパラフラスコ中に仕込み、アンカー翼を用いて毎分300回転で攪拌しながら、トリホスゲン1.34部をトルエン44.4部に溶解させた有機溶液(A)を20秒かけて滴下した。攪拌開始後5分後より白色綿状物が徐々に析出しだした。15分以降は生成量に増加は見られなかったため、攪拌開始後25分で合成操作を終了した。この操作で得られた白色生成物が分散した液を、直径90mmのヌッチェを用い目開き4μmのろ紙上で減圧濾過した。ヌッチェ上の生成物をメタノール100部に分散させスターラーで30分間攪拌し減圧濾過することで洗浄処理を行った。引き続き同様な洗浄操作を蒸留水100部を用いて行い減圧濾過することで、白色の酸化アルミニウム/ポリ尿素複合体のウエットケーキを得た。
実施例1の水溶液(B)で用いたアルミン酸ナトリウムを浅田化学(株)製アルミン酸ナトリウム溶液#2019(Al2O3,20質量%、Na2O,19質量%)4.60部に、用いたジアミンを1,6−ジアミノヘキサン1.53部に、用いたイオン交換水の量を45.5部に変更した以外は実施例1に記載した方法と同様にして、白色の有機無機複合体ウエットケーキを得た。
(ジクロロホーメート化合物の合成)
1.4−ブタンジオール2.583部にトリホスゲン2.835部を加え常温下で30分間攪拌することで、トリホスゲンを完全に溶解させた。さらにトリホスゲンを3.000g加え常温で30分間攪拌することで、粘調な淡黄色の透明液体を得た。該液体を攪拌しつつ0.02MPaで3時間減圧処理することで、残存した過剰のトリホスゲン及び、ジオールがホスゲン系化合物によりクロロホーメート化する際に発生する塩化水素を除去した。以上の操作により、1.4−ブタンジオールの両末端をクロロホーメート化した、ブタン−ビス−クロルギ酸エステルを得た。
有機溶液(A)として、ブタン−ビス−クロルギ酸エステル2.924部にトルエン44.4部を溶解させたものを用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、白色の酸化アルミニウム/ポリウレタン複合体のウエットケーキを得た。
(比較例1:溶融混練法により作成した酸化アルミニウム/ポリ尿素複合体)
(酸化アルミニウムを含まないポリ尿素の合成)
水溶液(B)中のアルミン酸ナトリウムの替わりに水酸化ナトリウム1.247部を用いた以外は実施例1と同様な方法で合成をおこなうことで、無機成分を一切含まないポリ尿素ウエットケーキを得た。得られたポリ尿素ウエットケーキを120℃で2時間乾燥させ、乾燥ポリ尿素を得た。このようにして得られたポリ尿素10部と平均粒径100nmの酸化アルミニウム粉末5.0部とを、ツバコー製小型2軸押し出し機MP2015中で200℃で溶融混練することで、ペレット状の有機無機複合体を得た。混練操作に先立つ原料仕込み操作は、酸化アルミニウムの粒径が極めて小さいことによる粉体の飛散が生じやすく極めて困難であった。
上記操作で得られた複合体について、以下の項目の測定行い、得られた結果を表1に示した。
各材料に含まれる無機化合物の含有率の測定法は以下の通りである。
各材料を120℃で2時間空気中で絶乾させることで、乾燥複合体を得た。これを精秤(複合体質量)したのち、空気中、600℃で3時間焼成し、有機ポリマー成分を完全に焼失させ、焼成後の質量を測定し灰分質量(=酸化アルミニウム質量)とした。下式により酸化アルミニウム含有率を算出した。
酸化アルミニウム含有率(質量%)=(灰分質量/複合体質量)×100
実施例1〜3で得られた複合体では焼成により有機ポリマーを除去しても、焼成前の形状を維持したのに対し、比較例1で得られた複合体では、原型を留めていなかった。
複合体を170℃、20MPa/cm2 の条件で2時間熱プレスを行い、厚さ約1mmの複合体からなる薄片を得た。これをマイクロトームを用いて厚さ75nmの超薄切片とした。得られた切片を日本電子社製透過型電子顕微鏡「JEM−200CX」にて観察した。実施例1および3では酸化アルミニウムは短軸径5nm以下でかつ一定以上のアスペクト比を有する直線状(断面が直線状であるため、無機微粒子は板状であると考えられる。の暗色の像として、明るい有機ポリマー中に存在しているのが観察された。その際、大多数の酸化アルミニウム微粒子は板の側面で他の微粒子と連結構造を有していた。一方、板の面同士が凝集した粒子は見られなかった。また実施例2は実施例1,3に比べて無機成分の含有率が低いことに起因して、短軸径5nm以下の酸化アルミニウムの粒子同士が独立した分散状態で存在したのが観察された。しかし一部の粒子については実施例1,3と同様に板側面で他の微粒子と連結構造を有しているものもあった。一方、比較例1では、酸化アルミニウムの大部分の粒子が凝集体を作り、1μm以上の粗大粒子としてポリマー中に存在していることが観察された。図1は、実施例1で合成した酸化アルミニウム/ポリ尿素複合体の透過型電子顕微鏡写真である。
1.平均短軸径:無機化合物粒子の短軸の長さをそれぞれ測定し、100個の粒子の平均値を本測定値とした。
2.粒子平均アスペクト比:無機化合物粒子の長軸と短軸の長さをそれぞれ測定し、長軸/短軸の数値を粒子毎に算出し、100個の粒子の平均値を本測定値とした。
また、これらに加えて測定を行った粒子の最大短軸径(厚さ)と、粒子最小アスペクト比と、更に無機微粒子の板側面での連結構造の有無についても表1に記載した。
また本発明では、以上の特徴を持つ有機無機複合体を、安価なアルミン酸ナトリウムを無機成分の原料として用い、常温常圧下で30分以下の短時間の操作で得ることができた。
Claims (3)
- ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる1種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、アルミン酸アルカリおよびジアミンを水に溶解した水溶液(B)とを接触、反応させることを特徴とする、ポリウレタンおよびポリ尿素からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機ポリマーと、酸化アルミニウム微粒子とを有する有機無機複合体の製造方法。
- 前記酸化アルミニウム微粒子が短軸径5nm以下、アスペクト比3以上である請求項1に記載の有機無機複合体の製造方法。
- 前記酸化アルミニウム微粒子が長軸方向に連結した構造を有する請求項1又は2に記載の有機無機複合体の製造方法。
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