JP4713931B2 - 化学発熱組成物 - Google Patents
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Description
本明細書において、含塩有機物とは、塩分を含有する有機性物質をいう。例えば、塩分(食塩)を含有する食品(例えば、味噌、醤油、塩辛、塩昆布など)、塩分を含有する有機性廃棄物(以下、「含塩有機性廃棄物」あるいは、単に「含塩廃棄物」ということがある)などが挙げられるが、これらに制限されない。資源の有効利用という観点からは、含塩有機性廃棄物が好ましく用いられる。含塩有機物は、有価物として購入する、無償で入手する、お金を貰って入手する(逆有償購入)などの方法で入手できる。あるいは、これらの方法を組み合わせて入手してもよい。
含塩有機物(例えば、含塩廃棄物)の炭化物は、後述する含塩有機物の一次処理で得られた炭化物、および一次処理で得られた炭化物をさらに処理(二次処理)して得られる活性炭化物、並びに含塩有機物を薬品賦活法で処理して得られる活性炭化物など、種々の方法で得られる炭化物が含まれる。含塩炭化物は、粉末であることが好ましい。あるいは、粉末の含塩炭化物を種々の形状に成型したものを用いてもよい。含塩炭化物を粉末にする方法は、当業者に周知の炭化物の粉末化方法が適用される。
含塩有機物の炭化(一次処理)は、含塩有機物を好ましくは100〜1000℃、より好ましくは650〜850℃の温度で焼成することにより、行われる。100℃未満では、この含塩炭化物を含む発熱性混合物の発熱特性が悪くなる傾向にあり、1000℃を超えると炭化物中の食塩が揮発するおそれがある。得られた含塩炭化物は粉末としてもよい。
二次処理は、上記一次処理で得られた含塩炭化物にさらに活性化処理を行う処理である。活性化処理には、大きくガス賦活法と薬品賦活法とがある。どちらの方法を用いてもよい。ガス賦活法は、炭化された原料に、水蒸気、二酸化炭素、酸素(空気)、これらのガスと燃焼ガスとの混合ガス、燃焼ガスなどを高温で接触反応させる方法である。本発明においては、一次処理して得られた含塩炭化物に、例えば、水蒸気、空気(酸素)、二酸化炭素などを添加しながら600〜1000℃、好ましくは800〜900℃の温度で処理する方法(ガス賦活法)を用いて、行われる。あるいは、含塩有機物を一次処理よりも低い温度、例えば、300〜500℃の温度で焼成して得られる炭化物を二次処理してもよい。二次処理の温度が600℃未満では炭化物の活性化が不十分となる場合があり、1000℃を超えると活性炭化物中の食塩が揮発するおそれがある。
薬品賦活法は、原料に賦活薬品を均等に含浸させて、不活性ガス雰囲気中で加熱(焼成)し、薬品による脱水および酸化反応により、活性炭化する方法である。賦活薬品としては、塩化亜鉛、リン酸、塩化カルシウム、硫化カルシウム、水酸化カリウムなどの脱水性、酸化性あるいは侵食性を有する化合物が挙げられる。最も好ましくは、塩化亜鉛である。薬品賦活法によって含塩有機物の活性炭化物を得る方法は、例えば、100〜200℃で数時間乾燥した含塩有機物に、上記記載の賦活薬品(例えば、塩化亜鉛)の飽和水溶液を添加、混合し、賦活薬品を含塩有機物に含浸させ、さらに不活性ガス雰囲気中で100〜200℃で数時間乾燥(焼成)させる方法である。薬品賦活法における賦活薬品と乾燥含塩有機物との質量比(賦活薬品含浸質量/乾燥含塩有機物質量)は、使用する賦活薬品および含塩有機物により異なるが、一般的には、0.5〜5であり、好ましくは、1〜4である。なお、質量比は以下の式で表される。
X:賦活薬品を含浸する前の含塩有機物の乾燥質量
Y:賦活薬品を含浸した後の含塩有機物の乾燥質量
本発明の化学発熱組成物用添加剤は、上記の含塩炭化物からなる。含塩炭化物は粉末状、あるいは、固形状であり得る。このような化学発熱組成物用添加剤は、化学発熱組成物における必須成分である、食塩成分かつ活性炭成分および/または保水材成分として好適に使用される。なお、含塩炭化物としては、一次処理で得られる炭化物、これに二次処理を施した含塩有機物の活性炭化物(以下、単に活性炭化物という)、一次処理よりも低温で焼成処理した後、二次処理を行って得られる活性炭化物、薬品賦活法で得られた活性炭化物など含む。これらの含塩炭化物は、単独で用いてもよく、適宜混合して用いても良い。
本発明の化学発熱組成物は、上記炭化物からなる化学発熱組成物用添加剤、および金属粉を含有する。必要に応じて、水、保水材、あるいは含塩炭化物以外の炭素粉末(以下、単に炭素粉末ということがある)を含有する。水は、特に化学カイロ(使い捨てカイロ)などの用途に使用する場合には、含有させる方が好ましい。
上記の化学発熱組成物のうち、金属粉、含塩炭化物および水を含有し、必要に応じて、炭素粉末あるいは保水材を含有する化学発熱組成物は、化学カイロ(使い捨てカイロ)として、好ましく用いられる。化学カイロに用いる場合、金属粉としては、鉄粉が好ましく用いられる。鉄粉の比表面積、表面の凹凸状態、粒径などは、適宜選択される。必要に応じて、鉄粉の種類や粒径の異なるものを組み合わせて用いてもよい。化学カイロ用の化学発熱組成物は、適切な包装材料に充填されて、化学カイロとして使用され得る。包装材料としては、当業者が化学カイロ用に通常用いる通気孔を有する包装材料が用いられる。このような化学カイロは、さらに化学カイロの包装に通常用いられる非通気性の包装材料で密封される。
(実施例1:醤油粕炭化物の調製)
醤油粕150g(湿質量)を無酸素条件下、800℃で、45分間電気炉内で焼成し、粉末化して、醤油粕炭化物を得た。得られた粉末状の醤油粕炭化物の性状を表1に示す。
醤油粕を無酸素条件下、400℃、45分間電気炉内で焼成し、醤油粕炭化物を得た。この醤油粕炭化物300gを、再度電気炉に入れ、無酸素条件下にて水蒸気を添加しながら、800℃、1時間電気炉内で焼成し、粉末化して、活性化醤油粕炭化物を得た。得られた活性化醤油粕炭化物の性状を表1に併せて示す。
(実施例3)
上記実施例2で得られた活性化醤油粕炭化物6gに水5gを混合した。活性化醤油粕炭化物と水との混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。これに鉄粉(和光純薬製、平均粒径150メッシュ以下)10gを混合して化学発熱組成物を調製した。調製後、直ちに耐火煉瓦上に置いたティーバッグ用のパックに化学発熱組成物を封入してカイロ1を調製した。経時的にカイロの温度を測定した。各成分の配合量を表2に、そしてカイロ1の発熱特性を図1に示す。
上記実施例2で得られた活性化醤油粕炭化物を10gおよび水を6g用いたこと以外は、上記実施例3と同様にしてカイロ2を調製し、発熱特性を検討した。活性化醤油粕炭化物と水との混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。各成分の配合量を表2に、そしてカイロ2の発熱特性を図1に示す。
上記実施例2で得られた活性化醤油粕炭化物1gおよび木炭粉末を2g混合し、水を7g加えて混合した。混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。これに、鉄粉(和光純薬製、平均粒径150メッシュ以下)10gを混合して化学発熱組成物を調製した。上記実施例3と同様にしてカイロ3を調製し、発熱特性を検討した。活性化醤油粕炭化物と水との混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。各成分の配合量を表2に、そしてカイロ3の発熱特性を図1に示す。
上記実施例1で得られた醤油粕炭化物を1g、水を6g、および木炭粉末を3g用いたこと以外は、上記実施例5と同様にしてカイロ4を調製し、発熱特性を検討した。醤油粕炭化物、木炭粉末および水との混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。各成分の配合量を表2に、そしてカイロ4の発熱特性を図1に示す。
比較例として市販のカイロを3種類購入し、それぞれ、市販カイロ1、市販カイロ2、および市販カイロ3として、発熱特性を測定した。発熱特性を図1に示す。
(実施例7)
醤油粕140g(湿質量)を無酸素条件下、700℃で、45分間電気炉内で焼成し、醤油粕炭化物を得た。醤油粕炭化物2.5gおよび木炭7.5gを混合し、これに水10gを混合した。醤油粕炭化物、木炭および水の混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。これに鉄粉(パウダーテック社製RDH−3M)を25g混合して化学発熱組成物を調製した。調製後、直ちに耐火煉瓦上に置いたティーバッグ用のパックに化学発熱組成物を封入してカイロ5を調製した。経時的にカイロ5の温度を測定した。各成分の配合量および発熱組成物中の食塩濃度を表3に、そして発熱特性を図2に示す。なお、ナトリウム濃度(Na濃度)は、JIS K0102.48.1に基づくフレーム光度法で測定した。塩素濃度(Cl濃度)は、ポンプ燃焼法による塩素濃度とJIS K0102.35.3に基づくイオンクロマトグラフ法による燃焼性塩素濃度の加算値である。醤油粕炭化物中の食塩濃度は、Na濃度とCl濃度を加算した値である。
実施例7で得られた醤油粕炭化物を5g、木炭を5gおよび水を12.5g用いたこと以外は実施例7と同様にして、カイロ6を調製した。醤油粕炭化物、木炭および水の混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。経時的にカイロ6の温度を測定した。各成分の配合量および発熱組成物中の食塩濃度を表3に、そしてカイロ6の発熱特性を図2に示す。
実施例7で得られた醤油粕炭化物を7.5g、木炭を2.5g、および水を12.6g用いたこと以外は実施例7と同様にして、カイロ7を調製した。醤油粕炭化物、木炭および水の混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。経時的にカイロ7の温度を測定した。各成分の配合量および発熱組成物中の食塩濃度を表3に、そしてカイロ7の発熱特性を図2に示す。
醤油粕を無酸素条件下、400℃、45分間電気炉内で焼成して得られた醤油粕炭化物300gを、再度電気炉に入れ、無酸素条件下にて水蒸気を添加しながら、800℃、1時間電気炉内で焼成し、活性化醤油粕炭化物を得た。この活性化醤油粕炭化物を2.5g、木炭を7.5g、水を12g用いたこと以外は、実施例7と同様にして、カイロ8を調製した。活性化醤油粕炭化物、木炭および水の混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。経時的にカイロ8の温度を測定した。各成分の配合量および発熱組成物中の食塩濃度を表3に、そしてカイロ8の発熱特性を図2に示す。
実施例10で得られた活性化醤油粕炭化物を8g、木炭を7.5g、および水を15g用いたこと以外は、実施例10と同様にして、カイロ9を調製した。活性化醤油粕炭化物、木炭および水の混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。経時的にカイロ9の温度を測定した。各成分の配合量および発熱組成物中の食塩濃度を表3に、そしてカイロ9の発熱特性を図2に示す。
実施例10で得られた活性化醤油粕炭化物を10gおよび水を5.1g用いたこと以外は、実施例10と同様にして、カイロ10を調製した。このカイロ10では、木炭を使用していない。活性化醤油粕炭化物と水との混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。経時的にカイロ10の温度を測定した。各成分の配合量および発熱組成物中の食塩濃度を表3に、そしてカイロ10の発熱特性を図2に示す。
比較例として市販のカイロを2種類購入し、それぞれ、市販カイロ4、および市販カイロ5として、カイロ5〜10と同様に、発熱特性を測定した。発熱特性を図2に示す。
(実施例13)
市販の合わせ味噌(吉兆味噌(株)製、原料:米、大豆、食塩)を用いた。味噌を342g取り、これを小型焼成炉に投入し、700℃にて焼成した。700℃までの昇温時間は15分とし、その後20分間700℃に保持して炭化を行い、みそ炭化物Aを得た。みそ炭化物A中の食塩濃度は26%であった。
味噌を336gとり、炭化温度を600℃としたこと以外は実施例13と同様にして、みそ炭化物Bを得た。みそ炭化物B中の食塩濃度は24%であった。このみそ炭化物Bを用いて、水道水を9.1gとしたこと以外は実施例13と同様にして、カイロ12を調製した。みそ炭化物Bと水との混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。なお、カイロ12中の食塩濃度は2.7%であった。各成分の配合量を表4に、そしてカイロ12の発熱特性を図3に示す。
味噌を365gとり、炭化温度を500℃としたこと以外は実施例13と同様にして、みそ炭化物Cを得た。みそ炭化物C中の食塩濃度は22%であった。このみそ炭化物Cを用いて、実施例13と同様にして、カイロ13を調製した。みそ炭化物Cと水との混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。なお、カイロ13中の食塩濃度は2.4%であった。各成分の配合量を表4に、そしてカイロ13の発熱特性を図3に示す。
味噌を339gとり、炭化温度を400℃としたこと以外は実施例13と同様にして、みそ炭化物Dを得た。みそ炭化物D中の食塩濃度は、20%であった。このみそ炭化物Dを用いて、水を9.1gとしたこと以外は実施例13と同様にして、カイロ14を調製した。みそ炭化物Dと水との混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。なお、カイロ14中の食塩濃度は2.2%であった。各成分の配合量を表4に、そしてカイロ14の発熱特性を図3に示す。
味噌を362gとり、炭化温度を300℃とし、保持時間を40分としたこと以外は実施例13と同様にして、みそ炭化物Eを得た。みそ炭化物E中の食塩濃度は18%であった。このみそ炭化物Eを用いて、水を9.1gとしたこと以外は実施例13と同様にして、カイロ15を調製した。みそ炭化物Eと水との混合は団塊を形成することなく、スムーズに行われた。なお、カイロ15中の食塩濃度は2.0%であった。各成分の配合量を表4に、そしてカイロ15の発熱特性を図3に示す。
(実施例18)
商業ごみ処理プラントで、450℃、1時間、無酸素状態で焼成を行った炭化物(都市ごみ炭化物F)を入手した。表5に都市ごみ炭化物Fの分析値を示す。
都市ごみ炭化物Fを焼成炉に投入し、15分で700℃に達するように昇温した。昇温後、20分間、700℃に保持し、冷却して、都市ごみ炭化物Gを得た。表5に都市ごみ炭化物Gの分析値を示す。
温度を800℃に代えたこと以外は実施例19と同様に処理して、都市ごみ炭化物Hを得た。表5に都市ごみ炭化物Hの分析値を示す。
都市ごみ炭化物Fを焼成炉に投入し、15分で850℃に達するように昇温し、850℃で、水蒸気を150g/時間の速度で供給しながら、1時間、活性化処理し、活性化都市ごみ炭化物Iを得た。表5に活性化都市ごみ炭化物Iの分析値を示す。
Claims (11)
- 食塩含有有機物の炭化物からなる、化学発熱組成物用添加剤。
- 前記食塩含有有機物の炭化物が、食塩含有有機物を400〜1000℃の温度で焼成して得られる炭化物である、請求項1に記載の化学発熱組成物用添加剤。
- 前記食塩含有有機物の炭化物が、食塩含有有機物を100〜1000℃の温度で焼成して得られる炭化物を、さらに300〜1000℃の温度で活性化処理して得られる炭化物である、請求項1または2に記載の化学発熱組成物用添加剤。
- 前記食塩含有有機物が、醤油粕、塩昆布廃棄物、佃煮廃棄物、味噌廃棄物、および漬物からなる群から選択される少なくとも一つの廃棄物である、請求項1から3のいずれかの項に記載の化学発熱組成物用添加剤。
- 請求項1から4のいずれかに記載の化学発熱組成物用添加剤、および金属粉を含有する、化学発熱組成物。
- さらに水を含有する、請求項5に記載の化学発熱組成物。
- さらに保水材および/または食塩含有有機物の炭化物以外の炭素粉末を含有する、請求項5または6に記載の化学発熱組成物。
- 金属粉25質量部に対して、前記食塩含有有機物の炭化物を0.1〜25質量部の割合で含む、請求項5から7のいずれかの項に記載の化学発熱組成物。
- 金属粉25質量部に対して、前記食塩含有有機物の炭化物を0.1〜25質量部および前記炭素粉末を0.1〜15質量部含む、請求項5から8のいずれかの項に記載の化学発熱組成物。
- 前記炭素粉末が、石炭系炭化物または木質系炭化物、これらの活性炭あるいは再生活性炭である、請求項9に記載の化学発熱組成物。
- 請求項5から10のいずれかの項に記載の化学発熱組成物を含む、化学カイロ。
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